説明

米飯、及び米飯の製造方法

【課題】もち米を原料とした米飯であって、もち臭が低減して食べやすい食味とされた従来にない米飯、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】もち米を含む原料米に、3糖以上の可溶性多糖類、及び有機酸を含む炊水を加えて炊飯して炊飯米を得る工程、次いで、得られた炊飯米にほぐし処理を施して米飯を得る工程を有する米飯の製造方法。少なくとも原料の一部としてもち米を用いた米飯であって、3糖以上の可溶性多糖類が配合されており、圧縮試験法で得られた米飯粒の粘りの測定値が300〜3000gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が100〜300gf/cmである米飯。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もち米を原料とした米飯であって、もち臭が低減して食べやすい食味とされた従来にない米飯、及び米飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
もち米は、うるち米に比べて加水量が少ない状態で喫食に適した状態となるため、一般的に、蒸して、途中一、二度振り水をすることにより調理される。通常、具を入れて、栗おこわ、山菜おこわ、赤飯などの米飯に調理されることが多い。
【0003】
上述のもち米を用いた米飯は、うるち米に比べて、弾力のあるいわゆるもち様の特有の食感を有し、さらに、特有のもち臭を有する。このもち様の特有の食感やもち臭は、ヒトによっては好まれない場合もある。したがって、もち米を用いた米飯としては、多様な消費者を想定した惣菜売り場で販売する場合、もち様の特有の食感やもち臭がある程度軽減され、幅広い消費者が美味しく喫食できる米飯を提供することが望まれる。
【0004】
もち臭を低減する技術としては、例えば、特開2003−33147号公報(特許文献1)には、発芽処理した糯玄米を使用することでもち臭を低減する技術が開示されている。しかしながら、この方法では、玄米にしか応用できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−33147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、もち米を原料とした米飯であって、もち臭が低減して食べやすい食味とされた従来にない米飯、及び米飯の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上述の目的を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の多糖類を配合したおこわは、もち臭が低減することを見出した。更に、このように特定の多糖類を配合するおこわにおいて、おこわを炊くときの水分含量を調整すること、炊いた後のほぐし処理で適度に水分を放散すること、及び有機酸を加えること等により米飯粒の表面状態と硬さを特定の状態に調整するならば、もち臭が低減している上に大変食べやすい食味の従来にないおいしさを有するおこわが得られることを見出した。そして、このような米飯粒の表面状態と硬さの調整の程度について、ねばりと表層硬さを表す特定の指標で規定できることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)、もち米を含む原料米に、3糖以上の可溶性多糖類、及び有機酸を含む炊水を加えて炊飯して炊飯米を得る工程、次いで、得られた炊飯米にほぐし処理を施して米飯を得る工程を有することを特徴とする米飯の製造方法、
(2)、少なくとも原料の一部としてもち米を用いた米飯であって、3糖以上の可溶性多糖類が配合されており、圧縮試験法で得られた米飯粒の粘りの測定値が300〜3000gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が100〜300gf/cmである米飯、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、もち米を原料とした米飯であって、もち臭が低減して食べやすい食味とされた従来にない米飯を提供できる。したがって、多様な消費者を想定した惣菜売り場等で販売しても、幅広い消費者が美味しく喫食できることから、米飯の更なる需要の拡大が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の米飯、及び米飯の製造方法を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
本発明は、米飯及び米飯の製造方法に係る発明であるが、最初に、本発明の米飯について説明する。本発明の米飯は、少なくとも原料の一部としてもち米を用いた米を、喫食状態となるように蒸し、又は炊飯等により調理したものである。また、本発明の米飯には、調味料や具材等を含んでいてもよい。このような米飯としては、例えば、白飯、赤飯、山菜おこわ、五目おこわ等が挙げられる。
【0012】
本発明で用いるもち米は、一般的に例えば、常法により、精白したものを使用することができる。もち米の使用割合としては、特に制限はないが、本発明によればもち臭低減効果が得られることから、本発明は、もち米の使用割合の多い米飯において好適に実施できる。具体的には、本発明の米飯は、原料米に対するもち米の使用割合は、好ましくは30〜100%、より好ましくは50〜100%、さらに好ましくは80〜100%であり、原料米としてもち米のみを使用した米飯が特に好ましい。
【0013】
本発明の米飯は、まず、3糖以上の可溶性多糖類が配合されていることを特徴とする。前記可溶性多糖類が配合されていることにより、本発明の米飯は、もち米を原料としているにも拘わらず、もち臭が低減したものとなる。
【0014】
本発明で用いる上述の3糖以上の可溶性多糖類としては、食品に使用され、水に可溶性ものであれば特に制限はなく、例えば、大豆多糖類、ペクチン、カラギーナン、オリゴ糖、デキストリン、澱粉などが挙げられる。本発明においては、これら可溶性多糖類の中でももち臭低減効果が得られ易いことから、大豆多糖類及び/又はオリゴ糖を用いることが好ましい。これに対し、3糖以上の多糖類を使用せず例えばショ糖などを用いた場合はもち臭の低減効果が得られ難い。3糖以上の可溶性多糖類の配合量は、少なすぎてももち臭の低減効果が得られ難く、一方、多すぎても可溶性多糖類により米飯粒の表面のねばりが少なくなりすぎる場合があることから、もち米に対して、好ましくは0.01〜10%、より好ましくは0.1〜5%である。
【0015】
次に、本発明の米飯は、圧縮試験法で得られた米飯粒の粘りの測定値が300〜3000gf・cm/cm、好ましくは500〜3000gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が100〜300gf/cm、好ましくは100〜250gf/cmであることを特徴とする。圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値及び表層硬さの測定は、具体的には、テンシプレッサー(型名「MODEL TTP−50DX」、(有)タケトモ電機製)を使用し、下記手順により得ることができる。
手順:米飯粒3粒を無作為にサンプリングし、その米飯粒3粒をそれぞれ長径方向が水平になるように測定ステージ上に重ならないように並べる。次に、これら米飯粒を低圧縮・高圧縮の2バイト測定する。この際、圧縮率は、低圧縮時は30%、高圧縮時は90%とし、プランジャーは円柱状プランジャーを使用して測定する。表層硬さの測定値については、低圧縮時における反発力の最大値の測定値で評価し、米飯粒の粘りの測定値については、高圧縮時の付着力の測定値とその付着力が発生している時間の積で評価する。各米飯試料について、上記操作を10回繰り返しその平均値を測定値とする。
【0016】
前記本発明の米飯粒の粘りの測定値は、数値が高いほど粘りが強いことを示し、数値が低い程粘りが弱いことを示し、米飯粒の表層硬さの測定値は、数値が高いほど表層硬さが硬いことを示し、数値が低い程表層硬さがやわらかいことを示す。米飯粒の粘りの測定値及び表層硬さの測定値が前記特定範囲であることは、本発明の米飯が、粘りと表層硬さにおいて特定の範囲に調整されていることを意味する。
【0017】
本発明の米飯は、3糖以上の可溶性多糖類が配合されていることに加え、米飯粒の粘りの測定値及び表層硬さの測定値が前記特定範囲に調整されていることにより、もち臭が低減している上に大変食べやすい食味の従来にないおいしさを有する米飯となる。
【0018】
続いて、本発明の米飯の製造方法について説明する。上述した本発明の米飯は、上述の3糖以上の可溶性多糖類を配合し、更に、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値及び表層硬さの測定値を上述した特定範囲に調整する他は、その製造方法に特に制限は無いが、米飯粒の粘り及び表層硬さを上述した特定範囲に調整しやすいことから、以下の製造方法で製造することが好ましい。ずなわち、本発明の米飯の製造方法は、もち米を含む原料米に、3糖以上の可溶性多糖類、及び有機酸を含む炊水を加えて炊飯して炊飯米を得る工程、次いで、得られた炊飯米にほぐし処理を施して米飯を得る工程を有することが好ましい。
【0019】
まず、3糖以上の可溶性多糖類、及び有機酸を含む炊水を加えて炊飯して炊飯米を得る工程について説明する。前記3糖以上の可溶性多糖類を炊水に添加することにより、もち臭を低減することができる。炊水に用いる3糖以上の可溶性多糖類の配合量は、少なすぎてももち臭の低減効果が得られ難く、一方、多すぎても可溶性多糖類により米飯粒の表面のねばりが少なくなりすぎる場合があることから、原料のもち米に対して、好ましくは0.01〜10%、より好ましくは0.1〜5%である。また、有機酸を炊水に添加することにより、米飯粒に適度な硬さを付与することができる。ここで、本発明で用いる有機酸としては、食用に供されるものであれば特に制限はなく、例えば、アスコルビン酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸、等、あるいは、これらの混合物等が挙げられる。なお、これらの有機酸の一種以上を含有した食酢等を用いてもよい。前記炊水に用いる有機酸の配合量は、少なすぎても米飯粒に適度な硬さを付与する効果が得られ難く、一方、多すぎても風味を損なう場合があることから、原料のもち米に対して、好ましくは0.01〜5%、より好ましくは0.01〜1%である。
【0020】
上述の3糖以上の可溶性多糖類を配合すると、米飯粒の表面のねばりが少なくなりすぎる場合があるが、炊飯によりもち米を含む原料米を喫食状態に調製することで、米飯粒表面に適度なねばりを付与することができる。炊飯は、うるち米を用いた米飯の炊飯に準じて行えばよく、具体的には、好ましくは原料米を10分〜24時間程度水に浸漬して吸水させた後、炊き水を加え喫食状態となるように好ましくは80〜120℃で10〜60分間程度炊飯すればよい。炊き水の量は、適度な硬さが得られる程度に調整すればよく、炊飯前に水浸漬させた時間にもよるが、原料米100部に対して、好ましくは50〜150部、より好ましくは60〜120部である。
【0021】
次に、上述のようにして得られた炊飯米にほぐし処理を施して米飯を得る工程について説明する。ほぐし処理を施すことにより、米飯からの水分の放散量を高めて粘りを適度に低減するとともに適度な硬さを付与し、米飯粒の粘り及び表層硬さを上述した特定範囲に調整することができる。ほぐし処理は、具体的には、米飯用のほぐし装置を使用したり、しゃもじ等で撹拌すること等により、米飯粒の粘り及び表層硬さを上述した特定範囲になるように、好ましくは5秒〜10分間、より好ましくは10秒〜5分間程度行えばよい。
【0022】
なお、本発明の米飯には、調味料、添加剤、具材等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。このような原料としては、具体的には、例えば、醤油、砂糖、食塩、グルタミン酸ソーダ等の調味料、コショウ、唐辛子、パプリカ等の香辛料、ホタテエキス、椎茸エキス、酵母エキス等のエキス類、酸化防止剤等の他種々の添加材、肉、野菜等の具材等が挙げられる。
【0023】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づき、更に説明する。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
まず、もち米100部を1時間水に浸漬して吸水させた後、ザルに上げて水切りをした。また、小豆煮汁50部、食塩0.6部、大豆多糖類0.2部、デキストリン0.2部、ショ糖1部、食酢(酢酸濃度4%)1部及び清水22部を混合して調味液75部を製した。次に、炊飯器に、水切りしたもち米及び調味液を投入して炊飯した。続いて、炊飯後の米飯をほぐし器で3分間ほぐし処理を行った。得られた米飯は、段落[0015]に記載された圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が860gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が170gf/cmであった。また、これを喫食したところ、もち様の粘りが適度に抑制されている上に適度な硬さであり、さらに、もち臭があまり感じられなかったことから、大変食べやすい食味であった。
【0025】
[実施例2]
実施例1において、調味液の配合量を65部に減らした以外は同様にして、米飯を製した。得られた米飯は、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が2240gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が170gf/cmであった。また、これを喫食したところ、もち様の粘りが適度に抑制されている上に適度な硬さであり、さらに、もち臭があまり感じられなかったことから、大変食べやすい食味であった。
【0026】
[実施例3]
実施例1において、調味液の配合量を60部に減らした以外は同様にして、米飯を製した。得られた米飯は、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が2000gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が230gf/cmであった。また、これを喫食したところ、もち様の粘りが適度に抑制されている上に適度な硬さであり、さらに、もち臭があまり感じられなかったことから、大変食べやすい食味であった。
【0027】
[実施例4]
実施例1において、調味液の配合量を60部に減らし、さらに、アラビアガム0.1部を追加した以外は同様にして、米飯を製した。得られた米飯は、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が1000gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が120gf/cmであった。また、これを喫食したところ、もち様の粘りが適度に抑制されている上に適度な硬さであり、さらに、もち臭があまり感じられなかったことから、大変食べやすい食味であった。
【0028】
[実施例5]
まず、もち米100部を1時間水に浸漬して吸水させた後、ザルに上げて水切りをした。また、小豆煮汁50部、食塩(酢酸濃度4%)0.5部、還元オリゴ糖3部、大豆多糖類0.1部、食酢1部及び清水20.4部を混合して調味液75部を製した。次に、炊飯器に、水切りしたもち米及び調味液を投入して炊飯した。続いて、炊飯後の米飯をほぐし器で3分間ほぐし処理を行った。得られた米飯は、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が720gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が130gf/cmであった。また、これを喫食したところ、もち様の粘りが適度に抑制されている上に適度な硬さであり、さらに、もち臭があまり感じられなかったことから、大変食べやすい食味であった。
【0029】
[実施例6]
実施例5において、還元オリゴ糖の配合量を2部に減らし、その減少分は清水の配合量を増やして補正した以外は同様にして調味液を製した。続いて、得られた調味液を用い同様にして米飯を製した。得られた米飯は、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が2300gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が140gf/cmであった。また、これを喫食したところ、もち様の粘りが適度に抑制されている上に適度な硬さであり、さらに、もち臭があまり感じられなかったことから、大変食べやすい食味であった。
【0030】
[実施例7]
実施例5において、調味液の配合量を65部に減らした以外は同様にして、米飯を製した。得られた米飯は、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が2600gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が190gf/cmであった。また、これを喫食したところ、もち様の粘りが適度に抑制されている上に適度な硬さであり、さらに、もち臭があまり感じられなかったことから、大変食べやすい食味であった。
【0031】
[比較例1]
実施例1において、大豆多糖類、デキストリン及び食酢を配合せず、その減少分は清水の配合量を増やして補正した以外は同様にして調味液を製した。続いて、得られた調味液を用い同様にして米飯を製した。得られた米飯は、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が3240gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が60gf/cmであり、これを喫食したところ、もち様の粘りが強い上に柔らかすぎる食感であり、また、もち臭が感じられ好ましくないものであった。
【0032】
[比較例2]
実施例1において、調味液の配合量を40部に減らした以外は同様にして、米飯を製した。得られた米飯は、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が300gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が310gf/cmであり、これを喫食したところ、もち様の粘りは適度に改善されていたものの硬すぎる食感であり好ましくないものであった。
【0033】
上述の実施例1乃至7により、3糖以上の可溶性多糖類を配合し、圧縮試験法で得られた米飯粒の粘りの測定値が300〜3000gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値100〜300gf/cmである米飯は、もち様の粘りが適度に抑制されている上に適度な硬さであり、さらに、もち臭があまり感じられなかったことから、大変食べやすい食味であることがわかる。これに対し、3糖以上の可溶性多糖類が配合されていない比較例1は、もち臭が感じられ好ましくないものであった。また、圧縮試験法による米飯粒の粘りの測定値が前記範囲よりも大きい場合(比較例1)は、もち様の粘りが強く好ましくない食味であり、圧縮試験法による米飯粒の表層硬さの測定値が前記範囲より小さい場合(比較例1)及び前記範囲より大きい場合(比較例2)は、いずれも食べやすい食味とならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
もち米を含む原料米に、3糖以上の可溶性多糖類、及び有機酸を含む炊水を加えて炊飯して炊飯米を得る工程、次いで、得られた炊飯米にほぐし処理を施して米飯を得る工程を有することを特徴とする米飯の製造方法。
【請求項2】
少なくとも原料の一部としてもち米を用いた米飯であって、3糖以上の可溶性多糖類が配合されており、圧縮試験法で得られた米飯粒の粘りの測定値が300〜3000gf・cm/cm、及び表層硬さの測定値が100〜300gf/cmであることを特徴とする米飯。