説明

米飯成形装置およびその制御方法

【課題】成形不良を起こしにくく、形状の整った米飯成形物を大量に生産することができる米飯成形装置を提供する。
【解決手段】成形ローラ対41の対向面の間に向けて米飯Rを投入し、凹型面43内で米飯Rを仮圧縮したのち、成形ローラ41,41を圧縮成形とは逆方向に回転させて、米飯成形物の底面を押圧して凹部RDを形成するとともに、成形ローラ41,41を再び正方向に回転させて、米飯成形物を凹型面43内で本圧縮し、成形ローラ41,41の下流側から米飯成形物を放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すし飯からシャリ玉を成形する米飯成形装置およびその制御方法に関し、さらに詳しく言えば、成形不良を起こすことなく、期待通りの形状が整ったシャリ玉を成形して作る米飯成形装置を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
にぎり寿司用のシャリ玉を大量生産する方法の1つに米飯成形装置がある。例えば特許文献1に示すように、この米飯成形装置は、所定の水平回転軸を中心に互いに相反する方向に回転する一対の成形ローラを有し、各成形ローラの表面に形成された凹型面内にすし飯を充填して、成形ローラを回転させながら凹型面同士を付き合わせることで、内部のすし飯が圧縮されて俵型のシャリ玉が形成されるようになっている。
【0003】
これによれば、成形ローラの回転に伴い、シャリ玉が順次形成されて下流側からテーブルの上に放り出されるため、作業者は、このシャリ玉を回収してネタを乗せることで、にぎり寿司を短時間で大量に生産することができる。
【0004】
しかしながら、この成形プロセスでは、成形ローラの回転に合わせて米飯の「供給」、「成形」、「放出」の一連の動作を繰り替えすが、「成形」の際、成形ローラの回転に伴い、凹型面内の米飯にかかる圧力(いわゆる、内圧)が変化し、そのため、シャリ玉の底面側が凹型面に合わせた形状に成形されにくいことがあった。さらには、「放出」の際に、シャリ玉の頂部にバリが生じて見映えが悪くなることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−119361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、成形不良を起こしにくく、形状の整った米飯成形物を大量に生産することができる米飯成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、ホッパーから供給された米飯を圧縮しながら所定形状の米飯成形物に成形する成形部を含み、上記成形部は、水平回転軸を中心に互いに相反する方向に回転する2つの成形ローラと、上記成形ローラの回転を制御する制御手段とを有し、上記各成形ローラの外周面には、互いに向き合わせとなって上記米飯成形物を成形する凹型面が設けられ、上記成形ローラ同士を互いに向き合わせた状態で回転させながら、その成形ローラ対の上流側から上記米飯を投入し、上記凹型面内で圧縮成形して、上記成形ローラ対の下流側から上記米飯成形物を放出する米飯成形装置において、上記制御手段は、上記成形ローラ対を正方向に回転させて、上記凹型面内に上記米飯を取り込んで仮圧縮し、上記凹型面同士が完全に対向する前に、上記成形ローラ対を一旦逆方向に回転させてから、再び上記成形ローラ対を正方向に回転させて上記米飯を上記凹型面で本圧縮して上記米飯成形物を放出することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記凹型面の一方の端縁は、上記成形ローラ対を逆方向に回転させるときに、上記米飯成形物の底面側を押圧するように形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記成形ローラ対を逆方向に回転する際、上記凹型面内に収納されている上記米飯の上部が、次の上記凹型面に向けて投入される米飯によって押さえることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1,2または3において、上記凹型面は複数設けられており、上記仮圧縮から上記本圧縮に至る一連の動作を連続的に繰り返して、上記米飯成形物を連続生産することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、まずすし飯を仮圧縮したのち、成形ローラ対を逆転させて、シャリ玉の底面側を押し上げてから、本圧縮を行うことにより、底側部分が内圧による影響を受けても型崩れすることなく、綺麗なシャリ玉を大量に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る米飯成形装置の斜視図。
【図2】上記米飯成形装置を正面パネルを外した状態の正面図。
【図3】成形部の成形ローラの構造および配置を説明する断面図。
【図4】(a)〜(c)成形部の成形手順を説明する説明図。
【図5】(a)〜(c)成形部の成形手順を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこの限りではない。図1および図2に示すように、この米飯成形装置1は、シャリ玉の材料となる米飯(すし飯)Rが投入されるホッパー2と、同ホッパー2から送り出された米飯Rを圧縮しながら棒状に成形する圧縮部3と、棒状に成形されたすし飯Rを所定の形状に成形する成形部4と、成形部4で成形された米飯成形物(シャリ玉RB)を載置する搬送部5とを備えている。
【0014】
米飯成形装置1は、例えばテーブルなどの被設置面に設置される基台の上に矩形状の装置本体を備え、装置本体の上部にホッパー2が着脱可能に取り付けられている。装置本体は、内部に埃などが入り込まないようパネルによって覆い隠されており、メンテナンス時には、パネルを外すことにより、図2に示すような内部機構が現れるようになっている。
【0015】
米飯成形装置1の側面(この例では左側面)には、米飯成形装置1を操作するための、図示しない制御手段に接続される操作パネル6が設けられている。操作パネル6は、すし飯の量目やシャリ玉の成形数などを設定する各種設定ボタンのほか、成形数などをカウントする表示部や、電源スイッチや緊急停止スイッチなどの各種ボタン類が配置されている。
【0016】
ホッパー2は、装置本体の上部に向かって開放され、内部にすし飯Rが貯留される貯留部21と、同貯留部21内のすし飯Rを攪拌しながら下流へと押し流す攪拌部22とを備えている。貯留部21は、装置本体に対して着脱可能であり、その上部には、蓋23が設けられている。本発明において、ホッパー2の具体的な構成は任意であってよい。
【0017】
図2を参照して、圧縮部3は、ホッパー2の出口側に配置され、ホッパー2から送り出されたすし飯Rを圧縮する2つの上段圧縮ローラ31a,31aを有する上段圧縮ローラ対31と、上段圧縮ローラ対31の下流側に配置され、上段圧縮ローラ対31,31で圧縮されたすし飯Rをさらに圧縮して棒状に成形する2つの下段圧縮ローラ32a,32aを有する下段圧縮ローラ対32とを有する2段圧縮ローラ機構を備えている。
【0018】
上段圧縮ローラ対31は、水平回転軸(図2では紙面垂直方向)を中心に相反する方向(この例では、対向する方向に内回り)に回転する一対のローラからなり、所定間隔をもって互いに対向的に配置されている。上段圧縮ローラ対31は、図示しない駆動モータを介して互いの回転が同期されている。
【0019】
下段圧縮ローラ対32は、水平回転軸(図2では紙面垂直方向)を中心に相反する方向(この例では、対向する方向に内回り)に回転する一対のローラからなり、上段圧縮ローラ対31の間隔よりもさらに狭い間隔をもって互いに対向的に配置されている。下段圧縮ローラ対32も図示しない駆動モータを介して互いの回転が同期されている。
【0020】
この例において、圧縮部3は、上段圧縮ローラ対31と下段圧縮ローラ対32との2段圧縮機構が用いられているが、仕様に応じては一段のみであってもよいし、多段式であってもよい。さらには、ベルト式で圧縮しながら搬送するようにしてもよく、圧縮部3の具体的な構成は本発明において任意である。
【0021】
図3を併せて参照して、成形部4は、圧縮部3の下流側に配置される一対の成形ローラ41a,41aを含む成形ローラ対41を備えている。成形ローラ41a,41aの軸方向の両端には、成形ローラ41a,41aを挟み込んで支持する2枚の支持プレート42,42が設けられている。
【0022】
一方の支持プレート42は、装置本体側に着脱自在に設けられており、他方の支持プレート42は、図示されていないが前面パネルの一部に設けられている。本発明において、支持プレート42,42の具体的な構成は任意であってよいため、その説明は省略する。
【0023】
成形ローラ41,41はともに同一形状で、互いに外接円同士が接するように配置されている。以下においては、いずれか一方のみを説明し、他方についての説明は省略する。成形ローラ41は、合成樹脂製の円筒ローラであって、その外周面にはすし飯Rをシャリ玉RBに成形する凹型面43が設けられている。
【0024】
図3に示すように、凹型面43は、成形ローラ41の外表面から中心に向かってシャリ玉RBのほぼ半分に相当する容積を有する半俵型の凹部からなり、成形ローラ41の円周方向に所定の間隔、この例では60°間隔で6箇所設けられている。
【0025】
凹型面43は、シャリ玉RBの側面を成形する側壁面431と、シャリ玉RBの上面を形成する上壁面432と、シャリ玉RBの底面を形成する下壁面433と、シャリ玉RBの前後端面を形成する端壁面434,434とを備えている。
【0026】
側壁面431は、断面船底状であって、一端側(回転方向の後側)が鈍角的な角度を持って上壁面432に延長されている。側壁面431の他端側(回転方向の前側)は、ほぼ垂直に切り立った状態で下壁面433が一体的に形成されている。
【0027】
再び図1を参照して、搬送部5は、図示しない駆動モータによって駆動される円盤状のターンテーブル51を有し、このターンテーブル51の上にシャリ玉RBが連続的に放出されることで、シャリ玉RBが装置本体の手前に運ばれるようになっている。
【0028】
この例において、搬送部5はターンテーブル51からなるが、これ以外にベルトコンベア方式やキャッチアーム方式などであってもよいし、駆動機構を持たないテーブルであってもよい。本発明において、搬送部5の具体的な構成は、任意的事項である。
【0029】
次に、図1、図4および5を参照して、本発明の米飯成形装置1の成形手順の一例について説明する。まず、すし飯Rが保管された保存容器21をホッパー2の上部に取り付けたのち、電源スイッチを入れることで、ホッパー2内に設けられた図示しない攪拌ロッドによってすし飯Rが攪拌され解される。
【0030】
次に、操作パネル6を操作して、すし飯Rの量目やシャリ玉RBの成形数などの項目を設定した後、作業開始ボタンを押す。この作業開始信号を受けて、図示しない制御手段は、まず、装置全体の初期化を行った後、エラー信号が出ていないか、すし飯Rが切れていないかなどをチェックする。
【0031】
チェックが完了すると、制御部は、圧縮部3の上段圧縮ローラ対31および下段圧縮ローラ対32とを駆動して、ホッパー2から送り出されたすし飯Rを圧縮しながら成形部4へと送り出す。
【0032】
成形部4の上流にすし飯Rが到達すると、制御部は圧縮部3の動作を止め、スタンバイ状態になる。成形部4のスタンバイが完了すると、制御部は、成形ローラ41,41を駆動すると同時に、圧縮部3の各圧縮ローラ対31,32を駆動して、すし飯Rを成形部4に送り出す(米飯投入工程)。
【0033】
成形ローラ41,41が正方向に回転するのに伴い、図4(a)に示すように、成形ローラ41,41の間にすし飯Rが投入される。このとき、各成形ローラ41,41に形成された凹型面43は、開放端側がV字状に開くように向き合うため、すし飯Rを確実に受け止めることができる。
【0034】
凹型面43,43内に取り込まれたすし飯Rは、成形ローラ41,41の回転に伴い、凹型面43,43内で仮圧縮される(仮圧縮成形工程)。図4(b)に示す位置、すなわち、成形ローラ41,41の上流側の開放端が完全に閉じる前、この例では下壁面43同士が互いに向き合った段階で、制御部は、駆動モータを逆方向に回転させる。
【0035】
これにより、図4(c)に示すように、凹型面43,43内に取り込まれたすし飯Rは、下壁面433によって持ち上げられる。その際、下壁面433の先端側がすし飯Rの底面に向かって押し込まれる。
【0036】
その際、凹型面43,43内のすし飯Rの上部側は、次に充填されるすし飯Rが乗っているため、凹型面43,43内のすし飯Rは、押さえ付けられ、上部に逃げることがない。したがって、凸部435がすし飯Rの底部に確実に押し込まれて凹部RDが形成される(凹部成形工程)。
【0037】
凹部成形工程を行ったのち、制御部は、成形ローラ41,41を再び正方向に回転させる。これにより、図5(a)および(b)に示すように、凹型面43,43内のすし飯Rは、再び凹型面43,43によって下側から上側に向かって本圧縮される(本圧縮成形工程)。
【0038】
その際、成形ローラ41,41の回転に伴い、凹型面43,43に係る内圧が下側から上側に向かって変化する。上部側の内圧が高まると、内圧の低い底部側に圧が逃げようとするため、底部側が変形しやすいが、凹部成形工程によって凹部RDが形成されているため、底部に逃げる応力を凹部RDで受け止め、底部が変形することなく、凹型面43の形状にきれいに成形することができる。
【0039】
しかるのち、図5(c)に示すように、成形ローラ41,41はさらに回転し続けることにより、底部側が開放され、そこからシャリ玉RBが搬送部5の上に投下される。併せて、次の凹型面43,43の内部にすし飯Rが投入され、次の成形工程が開始される。なお、図4の仮圧縮行程と図5の本圧縮行程とは、連続的に行われる。
【0040】
以上の一連の工程を繰り返すことで、搬送部5の上に一定間隔でシャリ玉RBが投下され、最後に作業者がそれらを回収することで、全ての作業は完了する。この例において、米飯成形装置1は、すし飯Rからシャリ玉RBを成形する工程について説明したが、シャリ玉RB以外にも例えば、おにぎりの成形技術などに用いられてもよいし、コロッケやクッキーなどの他の食品成形に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 米飯成形装置
2 ホッパー
3 圧縮部
4 成形部
41,41 成形ローラ
42 支持プレート
43 凹型面
5 搬送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパーから供給された米飯を圧縮しながら所定形状の米飯成形物に成形する成形部を含み、上記成形部は、水平回転軸を中心に互いに相反する方向に回転する2つの成形ローラと、上記成形ローラの回転を制御する制御手段とを有し、上記各成形ローラの外周面には、互いに向き合わせとなって上記米飯成形物を成形する凹型面が設けられ、上記成形ローラ同士を互いに向き合わせた状態で回転させながら、その成形ローラ対の上流側から上記米飯を投入し、上記凹型面内で圧縮成形して、上記成形ローラ対の下流側から上記米飯成形物を放出する米飯成形装置において、
上記制御手段は、上記成形ローラ対を正方向に回転させて、上記凹型面内に上記米飯を取り込んで仮圧縮し、上記凹型面同士が完全に対向する前に、上記成形ローラ対を一旦逆方向に回転させてから、再び上記成形ローラ対を正方向に回転させて上記米飯を上記凹型面で本圧縮して上記米飯成形物を放出することを特徴とする米飯成形装置。
【請求項2】
上記凹型面の一方の端縁は、上記成形ローラ対を逆方向に回転させるときに、上記米飯成形物の底面側を押圧するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の米飯成形装置。
【請求項3】
上記成形ローラ対を逆方向に回転する際、上記凹型面内に収納されている上記米飯の上部が、次の上記凹型面に向けて投入される米飯によって押さえることを特徴とする請求項1または2に記載の米飯成形装置。
【請求項4】
上記凹型面は複数設けられており、上記仮圧縮から上記本圧縮に至る一連の動作を連続的に繰り返して、上記米飯成形物を連続生産することを特徴とする請求項1,2または3に記載の米飯成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−29617(P2012−29617A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171552(P2010−171552)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】