説明

粉ふるい装置

【課題】粉収容ボックス内に収容されている粉体の吐出を脈動させることのない、吐出領域から定量的に吐出できる粉ふるい装置を提供し、さらに、簡易な構成で複数の吐出領域から粉体を吐出できる粉ふるい装置を提供すること。
【解決手段】粉体が吐出される第1の吐出領域及び第2の吐出領域を有し、前記粉体を収容する粉収容ボックスと、前記粉体を前記第1の吐出領域又は第2の吐出領域に供給するための溝が外周面に設けられ、前記第1の吐出領域及び第2の吐出領域に非接触で回転可能な回転ローラと、前記第1の吐出領域から吐出される粉量と前記第2の吐出領域から吐出される粉量とを調整できる吐出量調整手段と、を備え、前記吐出量調整手段により、前記回転ローラの外周面と前記第1の吐出領域との間の第1の最小隙間寸法と、前記回転ローラの外周面と前記第2の吐出領域との間の第2の最小隙間寸法と、が規定されることを特徴とする粉ふるい装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を吐出するための粉ふるい装置に関し、特に、パンの製造工程における手粉を吐出するための粉ふるい装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品を製造する際、粉体を吐出するための粉ふるい装置が利用されている。例えば、特許文献1は、麺に打ち粉を振り掛けるための打ち粉振掛け装置を開示する。この粉振掛け装置は、回転駆動する回転軸と、回転軸の両端に設けられた一対の回転円盤と、一対の回転円板の円周方向にそれぞれ形成された支持溝間に揺動状態で架橋された複数の攪拌シャフトと、を有する攪拌機構と、打ち粉を収容するためのホッパー部と、を備える。
【0003】
攪拌機構は、ホッパー部の底部を構成する開口板に近接して配置されている。一対の回転円盤が回転すると、攪拌シャフトは、開口板の上面を転がるように案内され、開口板の上面に堆積している打ち粉を圧縮し、開口板を貫通する粉落下口から打ち粉を吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−190493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の粉振掛け装置を含む粉ふるい装置の構成は、攪拌シャフトが粉落下口上を通過する時に、粉落下口上の打ち粉である粉体を攪拌シャフトにより押圧し吐出する構成である。従って、攪拌シャフトが粉落下口に無い時には、ほとんど粉体が吐出されない。結果として、攪拌シャフトの回転により吐出される粉体の吐出量が不均一となる脈動を生じる恐れがある。
【0006】
さらに、攪拌シャフトの円柱状の側面が、粉落下口が設けられた吐出領域を有する平面状の開口板を押圧することにより粉体が吐出されるため、粉体を吐出する領域は、攪拌シャフトの長手方向に沿って延在する直線形状で単一の吐出領域となる。従って、複数の吐出領域を設けるためには、もう一つの攪拌機構を備える必要があり、粉ふるい装置の構成が複雑化してしまう。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、粉収容ボックス内に収容されている粉体を凝固させることや、粉体の吐出を脈動させることのない、吐出領域から定量的に吐出できる粉ふるい装置を提供することを目的とする。さらに、粉収容ボックスの長手方向に関し、均一に吐出できるとともに、簡易な構成で複数の吐出領域から粉体を吐出できる粉ふるい装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の粉ふるい装置は、粉体が吐出される第1の吐出領域及び第2の吐出領域を有し、前記粉体を収容する粉収容ボックスと、前記粉体を前記第1の吐出領域又は第2の吐出領域に供給するための溝が外周面に設けられ、前記第1の吐出領域及び第2の吐出領域に非接触で回転可能な回転ローラと、前記第1の吐出領域から吐出される粉量と前記第2の吐出領域から吐出される粉量とを調整できる吐出量調整手段と、を備え、前記吐出量調整手段により、前記回転ローラの外周面と前記第1の吐出領域との間の第1の最小隙間寸法と、前記回転ローラの外周面と前記第2の吐出領域との間の第2の最小隙間寸法と、が規定される。
【0009】
また、本発明の粉ふるい装置の別の態様によれば、前記吐出量調整手段は、前記回転ローラの回転軸の軸心の前記粉収容ボックスに対する位置を調整する偏芯機構である。
【0010】
さらに、本発明の粉ふるい装置の一の態様によれば、前記第1の吐出領域及び前記第2の吐出領域は、前記回転ローラの回転軸の軸心を通る仮想の鉛直面に対して互いに対向するように配置されている。
【0011】
本発明の粉ふるい装置の別の態様によれば、第1の吐出領域若しくは第2の吐出領域で前記粉体に最大圧力が掛かるように、前記回転ローラの外周面と前記粉収容ボックスの内面とにより規定される空間が鉛直方向下方に向かい漸減する。
【0012】
また、本発明の粉ふるい装置の一の態様によれば、前記第1の最小隙間寸法と、前記第2の最小隙間寸法と、が異なる。
【0013】
さらに、本発明の粉ふるい装置の一の態様によれば、前記回転ローラの溝の逃げ角は、40度〜50度である。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる粉ふるい装置は、回転ローラの溝による吐出領域方向への粉体に対する付勢力と、粉体の自重に基づく押圧力により、粉体を吐出する構成であるので、脈動が生じることがない。さらに、本発明の粉ふるい装置は、吐出領域から回転ローラを離間させる構成なので、複数の吐出領域を容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る粉ふるい装置の主要要素を示す一部破断斜視図である。
【図2】(a)は、図1のII−II線矢視図であり、(b)は、図2(a)のIIb部の拡大図である。
【図3】実施形態に係る粉ふるい装置に装着された板部材の底面図である。
【図4】実施形態に係る粉ふるい装置の概略を示す平面図である。
【図5】(a)、(b)は、回転ローラの偏芯を説明するための図2(a)と同様の断面図である。
【図6】回転ローラと短手側壁部との位置関係を示すための、実施形態に係る粉ふるい装置の主要要素を示す部分破断正面図である。
【図7】(a)は、パンの製造ラインの一部を模式的に示す側面図であり、(b)は、パンの製造ラインの一部を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる粉ふるい装置の実施形態及び実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る粉ふるい装置1の主要要素を示す一部破断斜視図であり、図2(a)は、図1のII−II線矢視図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb部の拡大図であり、図3は、実施形態に係る粉ふるい装置1に装着された板部材39の底面図であり、図4は、実施形態に係る粉ふるい装置1の概略平面図であり、図5(a)、(b)は、回転ローラ20の偏芯を説明するための図2(a)と同様の断面図であり、図6は、回転ローラ20と短手側壁部2a1との位置関係を示すための、実施形態に係る粉ふるい装置の主要要素を示す部分破断正面図である。
【0018】
粉ふるい装置1は、図2(a)、(b)に示すように、主として、粉体(例えば、強力粉)が吐出される第1の吐出領域35及び第2の吐出領域37を有し、粉体を収容する粉収容ボックス2と、粉体を第1の吐出領域35又は第2の吐出領域37に供給するための溝20aが外周面に設けられ、第1の吐出領域35及び第2の吐出領域37に非接触で回転可能な回転ローラ20と、第1の吐出領域35から吐出される粉量と第2の吐出領域37から吐出される粉量とを調整する吐出量調整手段である、偏芯機構と、を備える。回転ローラ20の回転により第1の吐出領域35又は第2の吐出領域37の近傍に到達した粉体には、粉体の自重による付勢力と回転ローラ20による付勢力とが作用し第1の吐出領域35又は第2の吐出領域37から粉収容ボックス2の外部へ吐出される。以下に粉ふるい装置1の各構成要素について説明する。
【0019】
粉収容ボックス2は、図1に示されるように、平面視で矩形状の開口を画成する側壁部2aと、側壁部2aに連続し、側面視で先細り形状の底部2bと、を有する。底部2bは、回転ローラ20の一部が粉収容ボックス2から外部へ露出可能(図2(a)参照。)な開口を画成する底部開口部31(図2(a)、図6参照)を有する。また、側壁部2aの、長手方向に対向する一対の短手側壁部2a1には、回転ローラ20の回転軸3を回転自在に支持する貫通穴4(図4参照。)が設けられている。
【0020】
さらに、図2に示す粉収容ボックス2の底壁部2bの外面には、図3にも示すように第1の吐出領域35及び第2の吐出領域37が設けられた板部材39が取り外し可能にねじ34等の固定部材により固定されている。板部材39は、底壁部2bに取り付けられた状態の側面視(図2a参照)において、水平に延びる基部39aと、基部39aの両端部から、粉収容ボックス2の底壁部2bに平行に延びる一対の傾斜部39bと、を有する。板部材39は、アルミニウム等の金属材料を利用できる。
【0021】
一対の傾斜部39bには、それぞれ第1の吐出領域35及び第2の吐出領域37が形成されている。第1及び第2の吐出領域35、37には、傾斜部39bの厚さ方向に貫通する複数の開口33が設けられている。各吐出領域35、37の短手方向には、直線上に所定の穴ピッチ(隣り合う穴の中心間距離)で配列される複数の同一寸法の開口33から構成される群が、長手方向に互い違いに所定の行ピッチ(隣り合う、一群の開口の中心線と他の群の開口の中心線との最短距離)で複数配置されている。開口33を介して粉収容ボックス2内に収容されている粉体が外部へ吐出される。なお、本実施形態では、図3の左右方向に離間するねじ34の間には、板部材39を支持するための不図示のリブが延在するため開口33を設けていないが、本発明はこの構成に限定されず、開口33の形状、寸法、数、及び配列パターン等は適宜変更できる。
【0022】
回転ローラ20は、その回転軸3に連結された駆動モータ171等(図4参照。)の駆動手段により、回転中心O周りに回転される。また、回転ローラ20は、使用用途や吐出する粉量に応じて、アルミニウム等の金属材料やポリアセタール樹脂等の合成樹脂材料等から形成される。さらに、回転軸3の軸心Oは、図2(a)に示されるように、回転ローラ20の外周面と第1の吐出領域35との第1の最小隙間寸法t1が、回転ローラ20の外周面と第2の吐出領域35との第2の最小隙間寸法t2より長くなるように、長手側壁部2a2の内面2cから等距離にある仮想面Y(軸心Oを通る鉛直な仮想面に平行な面)に対して偏芯(オフセット)配置されている。ここで、最小隙間とは、回転ローラ20の外周面と第1の(又は第2の)吐出領域35(37)が設けられた傾斜部39bと内面39cとの最短距離である。
【0023】
なお、本実施形態及び後述する実施例において、第1及び第2とは、仮想面Yを基準として回転ローラ20の回転方向(図2(a)の矢印方向)上流側に位置する構成要素を第1の構成要素と称し、回転方向下流側に位置する構成要素を第2の構成要素と称する。例えば、第1及び第2の吐出領域35、37は、回転ローラ20の回転方向上流側及び回転方向下流側に位置する。
【0024】
回転軸3の軸心Oを仮想面Yに対してオフセットするための吐出量調整手段の一例である偏芯機構について説明する。図4に示すように、偏芯機構は、ハンドル157、ハンドル157からの回転力を伝達する連結軸161、一対のベベル組立体153、169、一対のネジ部材155、165、回転軸3の長手方向の両端を回転自在に支持する一対の軸受部材153、169と、一対の支持レール151、167、一対のネジ支持部173、175を備える。なお、一対の部材同士は、同形状、同寸法である。
【0025】
連結軸161が、粉収容ボックス2の長手側壁部2a2に沿って延びるとともに、粉収容ボックス2に回転可能に固定されている。連結軸161の一端部には、連結軸161を回転させるためのハンドル157が装着されている。また、連結軸161には、回転軸の角度をほぼ90度変えるベベル組立体159、163が連結されている。ベベル組立体159、163は、連結軸161と同心に回転する第1のベベルギア159a、163aと、連結軸161の軸心に対して直交する軸心を有する第2のベベルギア159b、163bと、から構成される。
【0026】
第2のベベルギア159b、163bには、第2のベベルギアと同心に回転する外周にねじ部が形成されたねじ部材155、165が固定されている。従って、ねじ部材155、165の軸心は、連結軸161の軸心に直交する。ねじ支持部173、175には、ねじ穴173a、175aが設けられたねじ支持部173、175が螺合している。さらに、ねじ支持部173、175は、粉収容ボックス2の長手方向に沿って延びる回転軸3の両端を回転可能に支持する軸受部材153、169に装着されている。軸受部材153、169は、短手側壁部2a1に固定されている支持レール151、167に、粉収容ボックス2を横切る方向に摺動可能に装着されている。
【0027】
上記構成の偏芯機構において、ハンドル157を回転させると、その回転力は、連結軸161に伝達され、連結軸161の回転力は、ベベル組立体155、163を介して、ねじ部材155、165に伝達される。ねじ部材155、165の回転運動は、ねじ支持部173、175の粉収容ボックス2を横切る方向への直線運動に変換され、軸受部材153、169が移動する。結果として、軸心Oが、仮想面Yに対して直交する方向に移動する。
【0028】
図5(a)は、ハンドル157を回転させ、仮想面Yから所定距離δ1だけ軸心Oを偏心させた状態を示している。この場合には、第1の吐出領域35及び第2の吐出領域37(図2参照。)から、ほぼ等しい粉量を吐出される。また、第2の吐出領域37(図2参照。)からの粉量を少なくする場合には、軸心Oが仮想面Y上を通るように、偏心機構により設定することが可能である。さらに、第1の吐出領域35からの粉量を少なくする場合には、回転ローラ20に第1の吐出領域35が近接するように、仮想面Yの右側に軸心Oを移動させる。
【0029】
なお、本実施形態の偏芯機構は、手動により回転軸3の軸心Oを偏心する構成であるが、電動モータ等を用いることも可能である。さらに、上記偏芯機構は、X軸方向のみに軸心Oを偏芯する構成としたが、X軸方向に直交する方向(すなわち仮想面Yに沿った方向)又は、X軸方向及びX軸方向に直交する方向へ偏芯する構成としても良い。
【0030】
図2(b)に示すように、回転ローラ20の外周面は、回転ローラ20の外径を規定する円弧状面20bと、円弧状面20bの両端に連結し、周方向に等間隔に設けられた溝20aと、から構成されている。溝20aは、円弧状面20bに連続する2つの傾斜面31と、2つの傾斜面31の一端部を連結する底面32と、により規定される。円弧状面20bと傾斜面31との連結部における接線と、傾斜面31と、の間を成す角度(逃げ角Z)は、約40°〜約50°に設定される。従って、溝20aは、回転ローラ20の半径方向外方に向かい拡開している。なお、回転ローラ20の溝20aは、図6に示すように、回転ローラ20の長手方向における両端面20cまで延びている。また、粉収容ボックス2の底部開口部31の長手方向寸法と、回転ローラ20の長手方向寸法(両端面20c間の長さ)とは、ほぼ同じに寸法づけされている。
【0031】
さらに、回転ローラ20の外周面と、粉収容ボックス2の内面2cと、傾斜部39bの内面39cと、基部39aの内面39dとにより規定される空間内において、回転ローラ20の回転方向上流側においては、回転ローラ20の外周面と傾斜部39bの内面39cとが最小距離(第1の最小隙間寸法t1)となる内面39c上の点(第1の最大圧力点P1)で粉体に加わる圧力が最大値となるように構成要素が位置決めされている。すなわち、第1の吐出領域35に、第1の最大圧力点P1が位置する。そして、この第1の最大圧力点P1及びその近傍に延在する粉体が、その圧力により付勢され、第1の吐出領域35の開口33から粉体が吐出される。
【0032】
なお、発明者等は、第1の最大圧力点P1で粉体に対して最大付勢力が加わる理由は、粉収容ボックス2内に収容されている粉体の自重による圧力と、回転ローラ20の回転に伴う溝20aから粉体への付勢力とが生じるためであるという知見を得ている。
【0033】
さらに、第1の吐出領域35を通過した粉体は、基部39a及び第2の吐出領域37へと回転ローラ20により導かれる。そして、回転ローラ20の外周面と、粉収容ボックス2の内面2cと、傾斜部39bの内面39cと、基部39aの内面39dとにより規定される空間内において、回転ローラ20の回転方向下流側においては、回転ローラ20の外周面と傾斜部39bの内面39cとが、最小距離(第2の最小隙間寸法t2)である内面39c上の点(第2の最大圧力点P2)で粉体に加わる圧力が最大値となるように構成要素が位置決めされている。すなわち、第2の吐出領域37に、第2の最大圧力点P2が位置する。そして、この第2の最大圧力点P2及びその周辺に延在する粉体が、その圧力により付勢され、第2の吐出領域37の開口33から粉体が吐出される。
【0034】
第1の最大圧力点P1と同様に、発明者等は、第2の最大圧力点P2の粉体に対して最大付勢力が加わる理由は、粉収容ボックス2内に収容されている粉体の自重による圧力及び、回転ローラ20の回転に伴う溝20aによる付勢力が生じるためであるという知見を得ている。なお、回転ローラ20は、円柱形状であるので、最大圧力点P1、P2は、内面39c上で回転ローラ20の軸方向に直線上に延在する。
【0035】
図2(a)に示されるように、回転軸3の軸心Oを通る水平線と、第1及び第2の最大圧力点P1、P2を通る水平線(不図示)と、回転ローラ20の外周面と、粉収容ボックス2の内面2cと、傾斜部39bの内面39cと、により形成される側面視における領域の面積が、鉛直方向下方に向かい漸減していくように構成されている。
【0036】
また、第1の最大圧力点P1では、重力と溝20aによる付勢力の鉛直成分は、鉛直方向下方で一致する。しかし、第2の最大圧力点P2では、溝20aによる付勢力の鉛直成分は、上方に生じるのに対し、重力は鉛直方向下方に作用する。従って、第2の最大圧力点P2における粉体に対する開口33方向への付勢力は、第1の最大圧力点P1における粉体に対する開口33方向への付勢力より小さくなる。
【0037】
従って、第2の最小隙間寸法t2を第1の最小隙間寸法t1より小さくすることで、第2の最大圧力点P2で生じる付勢力を、第1の最大圧力点P1における付勢力にほぼ等しくなるようにする。第1の最大圧力点P1及び第2の最大圧力点P2における粉体に対するう付勢力を同じにすることにより、第2の吐出領域37の開口33から吐出される粉量を、第1の吐出領域35の開口33から吐出される粉量とほぼ同じにできる。
【0038】
また、回転ローラ20の外周面をほぼ覆うような高さ(図2(a)の上下方向)で、水平面となるような量の粉体が、粉収容ボックス2内に収容されている限りは、第1及び第2の吐出領域35、37から吐出される粉量に変化はない、という知見を得ている。
【0039】
さらに、発明者等は、短手側壁部2a1と回転ローラ20の端面20c(回転ローラ20の回転軸3の軸心Oに直交する面)とが、所定の位置関係を有すると、回転ローラ20の長手方向における両端部において粉体が凝集又は凝固することを防止できるという知見を得ている。図6は、粉収容ボックス2の内部を粉体でほぼ満杯にした後、回転ローラ20の外周面上には粉体が無くなるまで粉体を吐出し、回転ローラ20の端面20cと、短手側壁部2a1との間にのみ粉体が残った状態を二点鎖線で示す。
【0040】
この状態のとき、粉体が回転ローラ20の外周面20aの端面20cと、外周面20aとの交点であって、端面20cの最上部20d(粉収容ボックス2の高さ方向(図6の上下方向)における端面20cの最も高い位置にある部位)において、以下の関係式(1)が成り立つように各構成要素を配置する。
【0041】
l=h/tanθ・・・(1)
【0042】
ここで、θは、粉体の安息角、lは、回転ローラ20の端面20cから短手側壁部2a1の内面2cまでの最短距離、hは、粉体の高さ寸法、tは、短手側壁部2a1の厚さ寸法を示す。
【0043】
回転ローラ20を回動すると、回転ローラ20の両端面20cと短手側壁部2a1の内面2cとの間の領域に延在する粉体には、回転ローラ20からの押圧力が加わる。しかし、上記関係式(1)が成り立つように構成することで、粉収容ボックス2の吐出領域35(37)の長手方向の両端部側に位置する開口33からの粉量は、粉収容ボックス2の当該吐出領域35(37)の長手方向中央部側(内面2cから離れた部位)に位置する開口33からの粉量に等しくできる。さらに、粉収容ボックス2内の短手側壁部2a1側にある粉体が圧迫され、粉体が凝集又は凝固することを防止できる。
【0044】
なお、本実施形態では、回転ローラ20の最上部20dから粉収容ボックス2の上縁部までの寸法と粉体の高さhとが一致している。しかし、本発明は、本実施形態の構成に限定されず、上式(1)を満たす限り、回転ローラ20の最上部20dから粉収容ボックス2の上縁部までの寸法を適宜変更できることは言うまでもない。
【実施例】
【0045】
以下に、実施形態に係る粉ふるい装置1をパンの製造工程に適用した実施例について、図7を参照しつつ説明する。図7(a)は、パンの製造ラインの一部を模式的に示す側面図であり、図7(b)は、パンの製造ラインの一部を模式的に示す正面図である。パン生地を所定の寸法に分割してから所定の形状に成形するまでのパン製造工程では、パン生地を加工するための装置にパン生地が付着することを防止しパン生地に手粉を振る必要がある。本実施例の製造ラインは、手粉を振るために粉ふるい装置1を利用している。この製造ラインでは、扁平球状のパン生地101を伸展し平坦状のパン生地103に成形するための構成である。
【0046】
搬送手段である第1のベルトコンベア(無端ベルト)109は、図7(a)の紙面の表裏方向に延在している。第1のベルトコンベア109は、その両端が、それぞれ駆動ローラ108及び従動ローラ(不図示)に支持されており、扁平球状のパン生地101を、図7(a)の矢印123方向に回転する一対の成形ローラ105、107の間(図7(b)の矢印121方向)に搬送する。一対の成形ローラ105、107により成形された平坦状のパン生地103は、その所望の側の平坦面が第2のベルトコンベア111に接するようにガイド部材115、117により誘導され、第2のベルトコンベア111上に落下する。第2のベルトコンベア(無端ベルト)111は、その両端がそれぞれ駆動ローラ113及び従動ローラ(不図示)に支持されており、平坦状のパン生地103を、次工程(矢印125方向)に搬送する。なお、成形ローラ105、107の外周面にガイド部材115、117の尖端部が接しているので、平坦状のパン生地103が、成形ローラ105、107のいずれかに付着した場合であっても、成形ローラ105、107からパン生地103が剥離され、ベルドコンベア113に確実に落下する。
【0047】
成形ローラ105、107の上方に配置される粉ふるい装置1は、パン生地101を平坦化するための成形ローラ105、107の表面に手粉を散布するために用いられる。回転ローラ(図1、2の参照符号20参照。)が回転することにより、第1の吐出領域35から吐出される手粉は、成形ローラ105へ、そして、第2の吐出領域37から吐出される手粉(図7の破線で示す)は、成形ローラ107へ、それぞれ散布される。本実施例では、図7(a)中、右側の成形ローラ105に左側の成形ローラ107より多くの手粉を付与し、成形された平坦状のパン生地103の下面、すなわち第2のベルドコンベア113に接触している面に多くの手粉を付与する構成である。
【0048】
第1及び第2の吐出領域35、37から吐出される粉量は、実施形態に関連して記載した通り、回転軸3の軸心Oの、仮想面Yからのオフセット量を適宜変更することにより調整する。なお、実施形態に関連して記載した通り、第1及び第2の吐出領域35、37から吐出される粉量を同一にする場合には、回転軸3の軸心Oの、仮想面Yからのオフセット量を適宜設定する。
【0049】
上記実施例のように、粉ふるい装置1をパン製造ラインに適用することにより、成形ローラ105、107の両方に所定量の粉体を定量的に吐出できるので、成形ローラ105、107にパン生地101が付着することなく、パン生地の所与の伸展性を発揮させることができる。また、成形ローラ105、107を介して平坦状のパン生地103の両面に所定量の粉体を付与することができる。従って、パン生地の搬送中にパン生地同士が付着したり、ベルトコンベアといった搬送手段にパン生地が付着することを防止できる。
【0050】
また、本実施例は、単一のパン生地101を加工する構成であるが、回転ローラ20の長手方向に沿って、複数のパン生地101を供給する構成としても良い。この場合には、回転ローラ20の長手方向に関し、粉体を均一に吐出できるので、パンの製造効率を上げることが可能である。
【0051】
実施形態及び実施例では、製パン工程において用いる強力粉を散布するための粉ふるい装置としたが、本発明による粉ふるい装置は、そばの打ち粉やトルティーヤ等の種々の食品に用いる粉体を吐出するための手段に適用することができる。
【0052】
また、本実施形態及び実施例に係る粉ふるい装置は、第1及び第2の吐出領域を設ける構成としたが、本発明の粉ふるい装置は、単一又は3つ以上の吐出領域を備える構成としても良い。さらに、粉収容ボックス2と板部材39とを別体としたが、一体的構成としても良い。
また、本実施形態及び実施例では、吐出量調整手段として回転軸の軸心の位置を変更する偏芯機構を用いたが、回転軸の軸心位置を固定にし、第1の吐出領域35及び第2の吐出領域37を、回転ローラの外周面に対して調整できる機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 粉ふるい装置
2 粉収容ボックス
2a 側壁部
2a1 短手側壁部
2a2 長手側壁部
2b 底壁部
2c 内面
3 回転軸
20 回転ローラ
20a 溝
31 底部開口部
33 開口
34 ねじ
35 第1の吐出領域
37 第2の吐出領域
39 板部材
39a 基部
39b 傾斜部
39c 内面
101 扁平球状のパン生地
103 平坦状のパン生地
105、107 成形ローラ
109 第1のベルトコンベア
111 第2のベルトコンベア
108、113 駆動ローラ
151、167 支持レール
153、169 軸受部材
155、165 ねじ部材
159、163 ベベル組立体
161 連結軸
171 駆動モータ
173、175 ねじ支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体が吐出される第1の吐出領域及び第2の吐出領域を有し、前記粉体を収容する粉収容ボックスと、
前記粉体を前記第1の吐出領域又は第2の吐出領域に供給するための溝が外周面に設けられ、前記第1の吐出領域及び第2の吐出領域に非接触で回転可能な回転ローラと、
前記第1の吐出領域から吐出される粉量と前記第2の吐出領域から吐出される粉量とを調整できる吐出量調整手段と、を備え、
前記吐出量調整手段により、前記回転ローラの外周面と前記第1の吐出領域との間の第1の最小隙間寸法と、前記回転ローラの外周面と前記第2の吐出領域との間の第2の最小隙間寸法と、が規定されることを特徴とする粉ふるい装置。
【請求項2】
前記吐出量調整手段は、前記回転ローラの回転軸の軸心の前記粉収容ボックスに対する位置を調整する偏芯機構であることを特徴とする請求項1に記載の粉ふるい装置。
【請求項3】
前記第1の吐出領域及び前記第2の吐出領域は、前記回転ローラの回転軸の軸心を通る仮想の鉛直面に対して互いに対向するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉ふるい装置。
【請求項4】
第1の吐出領域若しくは第2の吐出領域で前記粉体に最大圧力が掛かるように、前記回転ローラの外周面と前記粉収容ボックスの内面とにより規定される空間が鉛直方向下方に向かい漸減することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の粉ふるい装置。
【請求項5】
前記第1の最小隙間寸法と、前記第2の最小隙間寸法と、が異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の粉ふるい装置。
【請求項6】
前記回転ローラの溝の逃げ角は、40度〜50度であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の粉ふるい装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−87499(P2011−87499A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242859(P2009−242859)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000128728)株式会社オシキリ (40)
【Fターム(参考)】