説明

粉体の検査方法

【課題】検査に要する手間を従来の検査方法に比べて削減しうる粉体の検査方法の提供を課題としている。
【解決手段】粉体の検査方法に係る本発明は、粉体の品質を管理すべく、粉体にガラス板を当接させ、該ガラス板を通して、粉体表面の色を測色計で測定する粉体検査方法であって、上部に開口が形成されており内部に前記粉体を収容可能な粉体収容器に前記開口を超えて上方側に盛り上がる状態となるように前記粉体を収容させる収容工程と、前記開口の縁部に沿った粉体の擦り切りを実施して前記開口の内側に前記粉体によって形成された平坦面を作製する擦り切り工程とを実施し、しかも、前記平坦面を形成している前記粉体が自然状態で収容されている状態となるように前記収容工程と前記擦り切り工程とを実施し、前記開口よりも小さなガラス板を前記平坦面に当接させた後、さらに、該ガラス板で粉体を前記平坦面よりも下方側に所定深さまで押し下げ、該押し下げられた粉体表面に対して前記測定を実施することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の品質を管理すべく、粉体にガラス板を当接させ、該ガラス板を通して、粉体表面の色を測色計で測定する粉体の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体の品質を管理すべく、その色彩を測定し、規定の色彩を有しているかどうか検査する検査方法が行われている。
例えば、LAB表色系におけるL*、a*、b*の基準値を定め、管理対象となる粉体の色彩を測色計で測定し、そのL*、a*、b*の各値を前記基準値と比較し、その差によって合否判定を下す方法が粉体の品質管理に採用されたりしている。
【0003】
このような粉体の品質管理は、コンクリート製品の作製などに用いられるセメント組成物の材料管理に適応することが検討されており、例えば、下記特許文献1には、フライアッシュの選別や、フライアッシュの使用量の決定のために、その色彩を測定することが記載されている。
また、下記特許文献2には、細骨材の色彩を測定し、得られた明度の値をもってその含水率を決定することが記載されている。
【0004】
ところで、測色計による色の測定は、通常、遮光筒によって被測定物の表面に直径数cmの円形領域を画定させて実施されるが、平板状の物体などと違って、粉体は、その領域内において凹凸が形成されやすく、しかも、同じ粉体に対して複数回の測定を行った場合に、その都度、凹凸の形成状態が異なることになるため、安定した測定が困難であることが知られている。
そして、下記特許文献3においては、円筒形状を有する容器に測定する粉体を一定量入れて、専用の振動装置を用いて該容器に振動を与えて粉体の充填状態を均一化させることが記載されているが、このような方法においては、専用の振動装置を必要とするばかりでなく、比重が異なる2種類以上の成分を含んだ混合粉体では、この混合粉体としての色の測定がなされずに軽比重成分の色が測定される結果となるおそれを有する。
このことに対し、先の特許文献2には、粉体表面にガラス板を当接させ、該ガラス板を通して測色を実施することで安定したデータを得られ易いことが記載されている(段落〔0017〕参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−14039号公報
【特許文献2】特開平10−59755号公報
【特許文献3】特開平7−270287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、粉体の色を測定するのに際して、上記のように安定した測定を行うことが検討されてはいるもののこれまでに再現性の高い測定を行う手法が十分確立されておらず、複数回の測定が必要になるなど粉体の検査に要する手間を削減することが困難な状況である。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、検査に要する手間を従来の検査方法に比べて削減しうる粉体の検査方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特許文献2記載の発明などにおいては、粉体のコンディションを整える特段の処理をせずに、例えば、山盛りにされた状態の粉体にガラス板を押し当てて該ガラス板を通しての色の測定が実施されるために、ガラス板と粉体との接触状態を測定領域内において均等化させることが困難で色の測定値にバラツキを発生させていることを見出した。
そして、ガラス板と粉体との接触状態を均等化させる簡便な方法について検討を行って本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
すなわち、粉体の検査方法に係る本発明は、粉体の品質を管理すべく、粉体にガラス板を当接させ、該ガラス板を通して、粉体表面の色を測色計で測定する粉体検査方法であって、上部に開口が形成されており内部に前記粉体を収容可能な粉体収容器に、前記開口を超えて上方側に盛り上がる状態となるように前記粉体を収容させる収容工程と、前記開口の縁部に沿った粉体の擦り切りを実施して前記開口の内側に前記粉体によって形成された平坦面を作製する擦り切り工程とを実施し、しかも、前記平坦面を形成している前記粉体が自然状態で収容されている状態となるように前記収容工程と前記擦り切り工程とを実施し、前記開口よりも小さなガラス板を前記平坦面に当接させた後、さらに、該ガラス板で粉体を前記平坦面よりも下方側に所定深さまで押し下げ、該押し下げられた粉体表面に対して前記測定を実施することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
従来の粉体検査方法においては、例えば、上記特許文献2の図2に記載されているように、山積みされた状態の粉体にガラス板を押し当てて色の測定が行われるため、ガラス板と粉体とが接する面内において、粉体がガラス板によって強く圧縮されている箇所と、殆ど圧縮されていない箇所とが形成されるおそれを有している。
場合によっては、ガラス板との間に空気を介在させてしまい、粉体と接触されない領域を形成させるおそれも有する。
【0010】
一方で、本発明によれば、擦り切り工程によって粉体による平坦面が形成され、該平坦面にガラス板を当接させた後、さらに、ガラス板で粉体を前記平坦面よりも下方側に押し下げて、粉体表面に対する色の測定が実施される。
しかも、ガラス板によって押し下げられる前に平坦面を形成している粉体が自然状態とされている。
なお、この“自然状態”とは、例えば、粉体に実質上の加圧操作などがなされていない状態を意味しており、圧力や振動を加えるなどのかさ密度を高める操作をせずに、自然落下によって粉体収容器に粉体を収容させることによって得られる状態を意味している。
なお、自然落下によって収容させた状態から、かさ密度が1.1倍となる程度までであれば、実質上の自然状態とみなすことができ、1.05倍以下であれば、より明確に自然状態とみなすことができるものである。
例えば、セメント粉末であれば、真比重が2.8〜3.3、ブレーン比表面積3000〜4500cm2/gの場合、かさ密度で1.05g/cm3以下であれば、粉体が“自然状態”であるとみなすことができる。
【0011】
このように、ガラス板に当接される表面が平坦面とされ、しかも、自然状態とされた粉体に対して色の測定を行うことで、ガラス板と粉体とが接する面内においてバラツキが生じるおそれを従来の方法に比べて抑制させ得る。
すなわち、色を測定する領域内におけるガラス板と粉体との接触状態の均一化を図り得る。
しかも、ガラス板を押し下げる深さを所定深さに定めることにより、複数回の測定を行う場合のバラツキが抑制されうる。
すなわち、本発明によれば、検査に要する手間を従来の検査方法に比べて削減しうる粉体の検査方法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態の粉体の検査方法を示す概略工程図。
【図2】他実施形態の粉体の検査方法を示す概略工程図。
【図3】他実施形態の粉体の検査方法を示す概略工程図。
【図4】他実施形態の粉体の検査方法を示す概略工程図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、粉体の検査方法としてセメント粉末の色を測定する事例を挙げて本発明の実施形態を説明する。
まず、図を参照しつつ用いる装置類について説明する。
なお、図1には、本実施形態に係る粉体の検査方法に用いる粉体収容器1の部分切欠断面図と測色装置2の正面図とを示すとともにこれらによってセメント粉末Cの色を測定する手順を示している。
【0014】
前記測色装置2は、測色計20とガラス板付ターゲットマスク21とによって構成されており、前記測色計20と前記ガラス板付ターゲットマスク21とを接続した状態で被測定物の色彩を測定し得るように形成されている。
前記測色計20は、通常、被測定物に測定光を照射するための光源を有し、該光源からの光の照射を行うとともに被測定物からの反射光を取り込むための円形の測定窓20aを有している。
前記ガラス板付ターゲットマスク21は、遮光筒となる筒状本体22と被測定物に接触されるガラス板23とによって構成されている。
より具体的には、前記筒状本体22は、その一端部22aから他端部22bにかけて縮径する円筒状に形成されており、全体的には円錐台形状を有している。
そして、前記ガラス板付ターゲットマスク21は、径大側となる前記一端部22aを前記測定窓20aに接続させて測色計20に装着可能とされており、径小側となる前記他端部22bには、前記測定窓20aよりも小さな円形の開口が形成されている。
前記ガラス板23は、他端部22bの開口よりも一回り大きな円板状に形成されており、前記開口を外側から覆う状態で前記筒状本体22に取り付けられている。
したがって、測色装置2は、当該ガラス板付ターゲットマスク21を前記測色計20に装着した状態で前記測色計20から測定光を照射することによりその先端部に設けられた前記開口から、当該開口を覆っている前記ガラス板23を通じて被測定物に光を照射し、この被測定物の表面から反射する光を前記ガラス板23を通じて筒状本体22の内部に取り込んで色彩の測定ができるように構成されている。
【0015】
前記測色計20については、「色彩計」、「色彩色差計」などとして市販のものを用いることができ、例えば、前記光源としてC光源、D65光源等を有するものが挙げられ、前記ガラス板付ターゲットマスク21としては、前記測色計に視野角2度となる測定を実施させ得るものなどが挙げられる。
この測色計20としては、JIS Z8729(2004)に基づく表色データを測定可能なものが通常用いられ得る。
より具体的には、いわゆるCIELAB、CIELUVなどと呼ばれるCIE(1976)L***色空間や、CIE(1976)L***の色空間における明度を示す値(L*)や、色相、彩度を示す値(a*、b*、u*、v*)を測定可能なもの、XYZ表色系、ハンター、マンセルなどの色表示における値を測定可能なものが採用可能であり、特に、CIELAB、CIELUVのL*値は、セメント粉末などの品質管理に特に有用であることから、このL*値を測定可能なものが好適である。
【0016】
本実施形態における前記粉体収容器1は、上部に開口1xを有する有底容器であり、略円形の底面11と、該底面11の周縁部から立設された周側壁12とによって内部に円柱状の収容スペースを形成させている。
また、前記周側壁12は、底面からその上縁12aまでの高さを全周において統一させており、その上縁12aを同一平面上に位置させている。
すなわち、前記周側壁12の上縁12aは、同一平面上において底面11と同じ円形をなしており、前記開口1xを前記円形に画定させている。
なお、前記前記粉体収容器1は、前記開口1xが、前記ガラス板付ターゲットマスク21の筒状本体22の他端部22bよりも径大でかつ一端部22a以下となる径を有しており、前記ガラス板付ターゲットマスク21を、前記開口1xから収容スペース内に侵入させた際に、その開口縁に筒状本体22のテーパー状の外周面を当接させてガラス板23を一定深さにて停止させ得るように形成されている。
【0017】
このような粉体収容器1と測色装置2とを用いてセメント粉体の色の測定は、前記粉体収容器1に、前記開口1xを超えて上方側に盛り上がる状態となるようにセメント粉末Cを収容させる収容工程と、前記開口1xの縁部(周側壁12の上縁12a)に沿った擦り切りを実施して前記セメント粉末Cによって形成された平坦面FSを前記開口1xの内側に作製する擦り切り工程とを実施した後に、測色計20に装着した前記ガラス板付ターゲットマスク21のガラス板23を前記平坦面FSに当接させて実施される。
【0018】
より具体的には、前記平坦面FSに前記ガラス板23を面接させた後、さらに、該ガラス板23でセメント粉末Cを押し下げるべく上方から下方に測色計20を移動させ、前記開口1xにターゲットマスク21の外周面を当接させることにより前記ガラス板23を所定深さ(例えば、5mm〜30mm深さ)に停止させたところで測色計の20による色の測定を実施する。
【0019】
このことによって、前記ガラス板23と、該ガラス板23によって平坦面FSから下方に押し下げられたセメント粉末Cとの接触面に空気などが介在することを抑制させることができ、接触ムラを抑制させ得る。
なお、本実施形態に係る粉体の検査方法においては、ガラス板23を進入させる前に平坦面FSを形成しているセメント粉末Cが自然状態で粉体収容器1に収容されていることが重要である。
このことによって、ガラス板23とセメント粉末Cとの接触圧力を、前記ガラス板23の進入深さによって調整することができる。
すなわち、より一層安定した測定結果を得るために、ガラス板23を進入させる前に平坦面FSを形成しているセメント粉末Cが自然状態で粉体収容器1に収容されていることが重要である。
【0020】
より詳しく説明すると、収容工程における粉体収容器1へのセメント粉末Cの収容に際して、セメント粉末Cを押し込むように上部から加圧したり、粉体収容器1に振動を与えてセメント粉末Cの充填密度を増大させる操作を行ったりすると、別のセメント粉末を測定するのに際して、このときと同じ加圧状態で粉体収容器1にセメント粉末を収容させることが実質上不可能であることから、後に、ガラス板を接触させた際に、その接触状態をこのセメント粉末Cと別のセメント粉末とで異ならせることとなる。
【0021】
また、擦り切り工程についても同様であり、前記平坦面FSを、一定のコンディションで形成させることが、バラツキの少ない測定を行う点において重要な要素となる。
【0022】
このような状態でセメント粉末Cを粉体収容器1に収容させるには、例えば、セメント粉末Cを前記開口1xの上部から自然落下させ、あるいは、必要に応じて凝集物を解すための金網などを通過させて粉体収容器1に収容させる収容工程を実施し、前記擦り切り工程においてセメント粉末Cを加圧することなく余分のセメント粉末Cを除去する方法が挙げられる。
また、この擦り切り工程は、例えば、ブレードやヘラなどの平板状部材Bを、その面が上下方向となるように立てた状態で、粉体収容器1に上側から当接させ、その状態で前記開口1xを形成させている周側壁12の上縁12aに沿って移動させることにより実施可能であり、この平板状部材Bによって前記開口1xの上側に盛り上げられていたセメント粉末を除去することで平坦面FSを形成させることができる。
【0023】
なお、収容工程においては、粉体収容器1の内部を全て自然状態とさせる必要は無く、例えば、粉体収容器1の底面11の近くにおいては、セメント粉末Cを加圧充填させていても測定結果の安定性に与える影響は低い。
したがって、少なくとも平坦面FSから、ガラス板23を進入させる深さまでの間のセメント粉末Cを自然状態で収容させればよく、このような測定に影響与えない場所において加圧充填されているような場合も本発明の粉体の検査方法として意図する範囲のものである。
【0024】
なお、安定した測定結果を得るためには、この自然状態で収容させるセメント粉末Cの深さをある程度以上確保させることが好ましい。
例えば、まさしくガラス板23の進入深さ以下の部分を加圧充填させた場合には、その加圧充填の際の圧力のかけ方による違いが、色の測定結果に影響を与えるおそれを有する。
このようなことから、ガラス板23の進入深さの1.5倍以上、好ましくは、2倍以上の深さまではセメント粉末Cを自然状態で収容させていることが好ましい。
【0025】
このようにしてガラス板23を通じて測色計20によって測定されるセメント粉末Cの表面の色は、測定ごとのデータにおけるバラツキが抑制され、安定した測定結果となって観察されることとなる。
したがって、本発明によれば、測定結果の信頼性を確認するために余分な測定を実施したり、誤差を低減させるために数多くの測定を実施して平均化したりすることを省略でき、検査に要する手間を削減しうる。
また、製造ロットの異なるセメント粉末を測定し、それぞれの測定結果を相対比較の材料として利用するのに際しても信頼性の高いデータを提供できる。
特に、CIELAB又はCIELUVのL*値は、セメント粉末のコンディションによってその値を変化させやすいことから本発明のような粉末の検査方法を実施することによって、セメント粉末自体や、細骨材などと他の粉体と混合されたセメント組成物などの品質管理を行う際の管理項目として有用である。
【0026】
なお、上記においては、有底容器を粉体収容器として用いる場合を例示しているが、このような有底の容器に限らず、例えば、上部に開口が形成されているものであれば、図2に示すような筒状の粉体収容器1’も利用可能である。
【0027】
この図2は、筒状の粉体収容器1’を用いる工程を側面から見た様子を示すもので、例えば、この図2に示すように、セメント粉末Cを自然状態で堆積させて前記粉体収容器1’よりも高い山を形成させ、このセメント粉末Cの山に対して、前記粉体収容器1’を上から差し込んで、周側壁12’の上縁12a’よりも上方に前記セメント粉末Cが達するまで前記粉体収容器1’を下方に移動させた後に、図1に例示の方法と同様に擦り切り工程を実施すれば、自然状態のセメント粉末Cによって前記開口1x’の内側に平坦面を形成させ得る。
そして、この平坦面に対して、ガラス板付ターゲットマスクを所定深さに進入させて色の測定を実施することで、安定した測定結果が得られる点については、上記例示の粉体の検査方法と同じである。
【0028】
なお、図1に示す態様においては、ガラス板23の進入深さを一定状態に規制することが簡単に実施可能となる点において前記ガラス板付ターゲットマスク21の筒状本体22の他端部22bよりも径大でかつ一端部22a以下となる径を有している開口1xが形成されている粉体収容器1を用いているが、例えば、図3に示すように、筒状本体22の一端部22aよりも大きな開口1xを有する粉体収容器1を用いて、前記平坦面FSにガラス板23を接触させた後に、一定の移動距離で測色計を下方に移動させて、ガラス板23の進入深さを一定に保つようにしてもよい。
また、上記に説明した、図1、図2においては、上下方向に収容スペースの大きさに変化のない粉体収容器1、1’を例示しているが、例えば、図1の有底の粉体収容器1に代えて、図4に示すような、底部に向かって収容スペースが狭くなるように形成されたダイスカップ状の粉体収容器1”を用いることも可能である。
さらに、図1、図2に示す事例においては、測色計にガラス板付ターゲットマスクを装着させて、測色計とガラス板とを一体構成としているが、図4に示すように、単体のガラス板23xを擦り切り工程後の平坦面FSに当接させて、当該ガラス板23xを操作して粉体を下方に押し下げ、その後、ガラス板の装着されていない遮光筒22xを装着した測色計20を用いて、前記遮光筒22xの先端を前記ガラス板23xの上面に当接させて粉体の色を測定するような場合も本発明の粉体の検査方法として意図する範囲である。
【0029】
さらには、これら以外における各種の改良を加えることもでき、従来、粉体の色を測色計によって測定する際に有用な技術事項を、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において採用することが可能である。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(測色装置)
測色計としては、コニカミノルタ製の色彩色差計「CR−400」を用い、これに、ガラス板付ターゲットマスク「CR−A33f」を装着して測色装置を構成させた。
なお、この「CR−A33f」は、図1に示すガラス板付ターゲットマスクと同様にガラス板の装着された先端部に向けて縮径する形状に形成されているものである。
【0032】
(測定対象)
明度の異なる2種類の粉体(粉体A、粉体B)を用意し、下記5種類の混合比率(質量割合)で混合粉体を作製し、上記測色装置によって色(明度)を測定する対象とした。
混合粉体1:(A:B)=79:21
混合粉体2:(A:B)=74:26
混合粉体3:(A:B)=69:31
混合粉体4:(A:B)=64:36
混合粉体5:(A:B)=59:41
【0033】
(粉体収容器)
上記混合粉体を収容させる粉体収容器として、上記のガラス板付ターゲットマスク「CR−A33f」の先端部よりも径大で、色彩色差計「CR−400」への取り付け側の径以下となる開口を有する100ml目盛り付ポリカップ(実質容積132ml)を用意した。
【0034】
(実施例)
本発明の実施例として、以下のようにして混合粉体の色の測定を実施した。
まず、上記混合粉体を、上記ポリカップに収容させ、しかも、その上部開口よりも上側に盛り上がるように混合粉体を収容させた後に、金属製の薄板によって形成されたヘラを、その側縁をポリカップの開口縁に当接させた状態で左右にスライドさせることにより、混合粉体の擦り切りを行ってポリカップの開口の内側に混合粉体による平坦面を形成させた。
なお、この実施例では、混合粉体の収容時に振動を加えたり、粉体を上方から下方に加圧したりすることなくポリカップに自然状態で混合粉体を収容させた。
また、ヘラによる擦り切りにおいても、形成される平坦面がヘラによって加圧された状態とならないように作業を実施した。
次いで、この平坦面に、前記ガラス板付ターゲットマスクのガラス板を当接させ、さらに、この測色計に装着されたガラス板付ターゲットマスクで、平坦面を形成している粉体を下方に押し下げ、ガラス板付ターゲットマスクがポリカップ上端部に密着したところで混合粉体の明度(CIELABのL*値)を測定した。
なお、この実施例においては粉体が、かさ密度で0.97〜0.99g/cm3となってポリカップに収容されており、自然状態となっていることが確認できた。
【0035】
(比較例)
ポリカップに対する混合粉体の収容時において、振動を加えてポリカップに対する混合粉体の充填密度を高めたこと以外は、上記実施例と同様に混合粉体の明度(CIELABのL*値)を測定した。
なお、この比較例においては粉体が、かさ密度で1.11〜1.15g/cm3となってポリカップに収容されていることが確認できた。
【0036】
前記混合粉体1〜5に対して、実施例、比較例ともそれぞれ各5回の測定を行った結果、ならびに、得られた5個のL*値のデータにおける標準偏差を求めた。
結果を下記表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
上記のように、本発明によれば、バラツキの少ない測定が可能であることがわかる。
また、単に、表面を平坦化して測定を実施するだけでは不十分で、粉体を自然状態で収容させた状態に調整することが重要であることが上記の結果からもわかる。
【符号の説明】
【0039】
1 粉体収容器
1’ 粉体収容器
1” 粉体収容器
1x 開口
2 測色装置
11 底面
12 周側壁
12a 上縁
20 測色計
20a 測定窓
21 ガラス板付ターゲットマスク
22 筒状本体
22a 一端部
22b 他端部
22x 遮光筒
23 ガラス板
23x ガラス板
B 平板状部材
C セメント粉末
FS 平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の品質を管理すべく、粉体にガラス板を当接させ、該ガラス板を通して、粉体表面の色を測色計で測定する粉体検査方法であって、
上部に開口が形成されており内部に前記粉体を収容可能な粉体収容器に、前記開口を超えて上方側に盛り上がる状態となるように前記粉体を収容させる収容工程と、前記開口の縁部に沿った粉体の擦り切りを実施して前記開口の内側に前記粉体によって形成された平坦面を作製する擦り切り工程とを実施し、しかも、前記平坦面を形成している前記粉体が自然状態で収容されている状態となるように前記収容工程と前記擦り切り工程とを実施し、前記開口よりも小さなガラス板を前記平坦面に当接させた後、さらに、該ガラス板で粉体を前記平坦面よりも下方側に所定深さまで押し下げ、該押し下げられた粉体表面に対して前記測定を実施することを特徴とする粉体の検査方法。
【請求項2】
筒状本体を有し、該筒状本体の一端部が前記測色計に装着可能に形成されているとともに他端部に前記測色計による測定領域を画定するための開口が形成されており、該開口がガラス板で覆われているガラス板付ターゲットマスクの少なくとも前記他端部を、上部に形成された前記開口から進入させうる前記粉体収容器を用いて前記収容工程と前記擦り切り工程とを実施して、測色計に装着した前記ガラス板付ターゲットマスクで前記平坦面を形成している粉体を下方側に押し下げて前記測定を実施する請求項1記載の粉体の検査方法。
【請求項3】
前記測色計によって、JIS Z8729に基づくCIELABまたはCIELUVのL*値を測定する請求項1または2記載の粉体の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−276535(P2010−276535A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131090(P2009−131090)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】