説明

粉体塗料組成物

【課題】室外用途に用いても汚染が目立たないような耐汚染性に優れた塗膜を形成することができる粉体塗料を提供することである。
【解決手段】バインダー樹脂(A)、硬化剤(B)、
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である)
(C−2)下記一般式(2)で示される化合物と
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である)
の部分置換化合物(C)を含有し、
該部分置換化合物(C)のアセトンに対する水トレランスが300%以上であることを特徴とする粉体塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗料組成物に関し、詳しくは耐汚染性に優れた塗膜を形成することのできる粉体塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化やオゾン層破壊、酸性雨等の地球的規模の環境破壊問題が大きくクローズアップされ、国際的に地球環境汚染対策が叫ばれており、これに伴い、各国政府により、環境保護の観点から各種規制が行われるようになってきた。その中で、有機溶剤(VOC)の大気中への放出は大きな問題になっており、各業界においてもVOC規制強化の流れと共に脱溶剤化(脱VOC)への流れが活発になっている。塗料業界においても従来の溶剤型塗料に代わり得るものとして、VOCを全く含まないので、排気処理はもちろん廃水処理も必要としない環境適応塗料として粉体塗料への期待が高まっている。
【0003】
従来から、建設機械・資材や建造物外壁等の室外用途で使用される物品の雨ダレ汚染の防止や、耐汚染性が必要とされる分野においては粉体塗料が開発されているが(例えば、特許文献1及び2参照)、近年、メンテナンスフリーの観点から、更に高度の耐汚染性を示す粉体塗料の開発要求も高まっている。
【特許文献1】特開2002−180004号公報
【特許文献2】特開2003−105266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、室外用途に用いても汚染が目立たないような耐汚染性に優れた塗膜を形成することができる粉体塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従って、バインダー樹脂(A)、硬化剤(B)、
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である)
(C−2)下記一般式(2)で示される化合物と
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である)
の部分置換化合物(C)を含有し、
該部分置換化合物(C)のアセトンに対する水トレランスが300%以上であることを特徴とする粉体塗料組成物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、室外用途に用いても汚染が目立たないような耐汚染性に優れた塗膜を形成することができる粉体塗料を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0008】
本発明で用いるバインダー樹脂(A)としては、従来から粉体塗料の製造に用いられている各種の樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、例えば、ポリエステル−ウレタン硬化系樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル−β−ヒドロキシルアルキルアミド硬化系樹脂、エポキシ−ポリエステル硬化系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル−ウレタン硬化系樹脂、アクリル−メラミン硬化系樹脂、ポリエステル−メラミン硬化系樹脂等が挙げられ、これら樹脂を単独又は2種以上組み合わせで使用することができる。
【0009】
それらのなかでも、耐候性、機械的強度に優れたバランスのとれた塗膜を形成する粉体塗料のバインダー樹脂(A)としてはポリエステル樹脂が好ましく、特にはカルボン酸と多価アルコールとを通常の方法で反応させたものであって、水酸基価が20〜80mgKOH/gのものが好ましく、特には30〜60mgKOH/gの範囲のものが好適である。このように水酸基価を限定するのは、20mgKOH/gよりも低いと、塗膜に十分な機械的物性が得難いからであり、80mgKOH/gよりも高いと、それに見合う量の硬化剤を配合すればコストの上昇が大きくなり、また、それに見合うだけの塗膜性能の向上も期待できないからである。
【0010】
また、ここで用いるカルボン酸の例を挙げると、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、β−オキシプロピオン酸などがあり、多価アルコールの例を挙げると、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等がある。
【0011】
本発明で用いる硬化剤(B)としては、熱硬化性樹脂に通常使用される硬化剤を特に制限なく各種使用することができる。このような硬化剤としては、例えば、アミド化合物や、酸無水物、二塩基酸、グリシジル化合物、アミノプラスト樹脂、ブロックイソシアネート等があり、代表的なものにジシアンジアミド、酸ヒドラジド、トリグリシジルイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネートブロック体等が挙げられる。例えば、二塩基酸としては、アジピン酸や、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−エイコサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フタル酸、シクロヘキセン1,2−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0012】
上記バインダー樹脂(A)がポリエステル樹脂の場合の硬化剤(B)としてはブロックポリイソシアネートが好ましく、特には23℃〜25℃の室温条件下で固体のものが好ましい。該イソシアネートの例を挙げると、脂肪族、芳香族、及び芳香脂肪族のジイソシアネートと、活性水素を有する低分子化合物とを反応させて得たポリイソシアネートを、ブロック剤と反応させ、マスキングすることにより製造したものであって、その製造は容易である。
【0013】
また、ここで用いるジイソシアネートの例を挙げると、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等がある。
【0014】
また活性水素を有する低分子化合物の例を挙げると、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの他に、更に、イソシアヌレート、ウレチジオン、ヒドロキシル基を含有する低分子量ポリエステル、ポリカプロラクトン等がある。
【0015】
また、ブロック剤の具体例を挙げると、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、フェノール、クレゾーン等のフェノール類、カプロラクタム、ブチロラクタム等のラクタム類、シクロヘキサノン、オキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類がある。
【0016】
これらのブロックイソシアネートは、その軟化温度が10℃〜120℃、特に、40℃〜100℃であることが好ましい。軟化温度が10℃未満になると、粉体塗料が室温〜40℃の環境で硬化したり、粒状の塊が出来て好ましくない。また、逆に120℃を超えると粉体塗料を製造する際、ブロックイソシアネートを塗料中に均質に分散させることが難しくなり、得られた塗膜の平滑性、塗膜強度、耐湿性等の性能が損なわれる。
【0017】
これら硬化剤(B)のブロックポリイソシアネートは、バインダー樹脂(A)のポリエステル樹脂の水酸基に対してイソシアネート基が0.05〜1.5当量、特に0.8〜1.2当量となるように配合するのが好ましい。このように限定するのは、イソシアネート基が0.05当量未満の場合、塗料の硬化度が不足し、密着性、塗膜硬度、耐薬品性等の塗膜性能が低くなり、1.5当量を超えると、塗膜が脆くなり、しかも、過剰のイソシアネート化合物の影響で、耐熱性、耐薬品性、耐湿性等が劣ると共に、ブロックイソシアネート自身が高価なため、コスト的にも不利になるからである。
【0018】
本発明で用いる部分置換化合物(C)は、
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である)
(C−2)下記一般式(2)で示される化合物と、
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である)
の部分置換したものである。
【0019】
以下に、(C−1)と(C−2)について説明する。
【0020】
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物
Si(OR4−n (1)
式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である。
【0021】
上記一般式(1)において、Rの炭素数1〜8の有機基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ビニル基等を挙げることができる。このアルキル基は直鎖でも分岐したものでもよく、アルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基は、炭素数が1〜4個のものである。シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基や、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が好適に挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基等が挙げられる。
【0022】
上記各官能基は、任意に置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、塩素原子や、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子や、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、脂環式基等が挙げられる。
【0023】
の炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖でも分岐したものでもよい。アルキル基としては、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、好ましいアルキル基は、炭素数が1〜3個のものであり、同一でも、異なっていてもよい。
【0024】
上記式(1)で示されるシラン化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシランや、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、トリエトキシメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピル、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどが挙げられるが、好ましくは、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランである。これらのシラン化合物は、一種単独で使用することも、二種以上混合して使用することもできる。
【0025】
また、シラン化合物としては、以上説明したシラン化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。該部分加水分解縮合物の縮合度は水トレランス値、相溶性の観点から2〜25であることが好ましく、特には5〜20が適当である。縮合度が2より小さい場合は、水トレランス値が小さくなり、水との相溶性が上がるため、ブロッキング等の安定性が劣り、25より大きい場合は、バインダー樹脂(A)、硬化剤(B)との相溶性が劣る。シラン化合物の部分加水分解縮合物は、珪素原子に結合した−OH基や−OR基を1個以上、好ましくは、3〜50個有するものが適当である。
【0026】
このような縮合物の市販品としては、例えば、商品名は「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」(以上三菱化学(株)製)、「エチルシリケート40」「エチルシリケート48」(以上コルコート(株)製)、「SR2402」(東レ・ダウコーニング(株)製)、「KR−211」、「KR−212」、「KR−213」、「KR−214」、「KR−216」、「KR−218」(以上信越化学工業(株)製)、「TSR−145」、「TSR−160」、「YR−3187」(以上東芝GEシリコーン(株)製)等が挙げられる。
【0027】
(C−2)下記一般式(2)の化合物
HO(CHRCHO) (2)
式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である。
【0028】
上記一般式(2)の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノベンジルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリプロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノベンジルエーテル、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0029】
前記部分置換化合物(C)は、アセトンに対する水トレランスが300%以上であることが必須であり、400%以上であることが好ましい。水トレランスが300%未満であると水との相溶性が下がるため、得られる塗膜の、耐汚染性が劣る。
【0030】
水トレランスとは、樹脂1g当たりに対する水の溶解率である。この水トレランスは、次の方法によって測定することができる。すなわち、樹脂1gを100ミリリットルの三角フラスコに秤量し、アセトン10mlを添加し、樹脂を溶解させて試料溶液を作製する。三角フラスコの下に9ptの大きさの文字を書いた紙を置き、試料溶液の温度を25℃に保ち撹拌しながら水を滴下してゆき、樹脂水溶液が白く濁り上から文字が読めなくなったところを終点とし、滴下した水の量を測定する。そして、水トレランスは、水トレランス(%)=(水の量÷樹脂量)×100で、表すことができる。
【0031】
本発明の粉体塗料は、バインダー樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計100重量部に対して、部分置換化合物(C)を1〜5重量部含有することが好ましい。部分置換化合物(C)が1重量部未満では、耐汚染性の持続性に問題が生じ易く、逆に5重量部を超えると、ブロッキング等粉体塗料の安定性を損うことになり好ましくない。
【0032】
また、本発明の粉体塗料は、必要に応じてレベリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、垂れ防止剤、表面調整剤、架橋促進触媒、脱泡剤等の各種添加剤を配合することができる。粉体塗料の平均粒径は10〜60μmが好ましく、より好ましくは15〜45μmである。
【0033】
本発明の粉体塗料は、従来の粉体塗料の塗装の場合と同様に、静電スプレーガン、流動浸漬、摩擦帯電ガン、インモールド等を使用して被塗物、例えば、鋼板等の被塗物に塗装し、熱風炉、赤外炉、誘導加熱炉等で焼付けることにより、塗膜を形成することができる。塗料膜厚は特に限定されないが、例えば30〜100μmとすることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について、実施例及び比較例により、更に詳細に説明する。なお、製造例、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、重量を基準である。
【0035】
(合成例1)
反応器に、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物[縮合度5、「エチルシリケート40」(コルコート社製商品名)]を80部と、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル[「ノイゲンXL−140」、(第一工業製薬(株)製商品名)]を20部とを加え、混合した後、反応触媒として1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7[「DBU」(サンアプロ(株)製商品名)]を0.15部加え120℃で8時間、生成したエタノールを除去しながら加熱攪拌した。反応終了後、精製し部分置換化合物(1)を得た。得られた部分置換化合物(1)の水トレランスは510%であった。
【0036】
(合成例2〜8)
各成分を、以下の表1に示す割合で混合し、120℃で8時間、生成するアルコールを除去しながら加熱攪拌し、反応終了後、精製することにより、部分置換化合物(2)〜(8)を得た。
【0037】
また、各々の水トレランスも表1に示す。水トレランスは3回測定し、その平均値としている。
【0038】
【表1】

1)コルコート社製 テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物 縮合度5
2)コルコート社製 テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物 縮合度10
3)東レ・ダウコーニング(株) メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物 縮合度7
4)東レ・ダウコーニング(株) フェニルジメチルポリシロキサン 縮合度14
5)第一工業製薬(株)製 ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル
6)日本乳化剤(株)製 ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル
7)日本乳化剤(株)製 ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル
8)日本乳化剤(株)製 ポリエチレングリコールモノメチルエーテル
9)サンアプロ(株)製 1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7
【0039】
(実施例1)
水酸基価31mgKOH/gの熱硬化性ポリエステル樹脂[「ユピカコートGV500」(日本ユピカ社製商品名)]55部にIPDI(イソホロンジイソシアネート)ε−カプロラクタムブロックのポリイソシアネート樹脂[「ベスタゴンB−1530」(HULS社製商品名)]10部、脱泡剤としてベンゾイン0.2部、部分置換化合物(1)2部、酸化チタン30部を混練、粉砕し200メッシュで分級を行い、平均粒径30μmの粉体塗料を作製した。結果を表2に示す。
【0040】
(実施例2)
実施例1の中で、部分置換化合物(1)を部分置換化合物(2)とした以外は同様にして作製した。結果を表2に示す。
【0041】
(実施例3)
実施例1の中で、部分置換化合物(1)を部分置換化合物(3)とした以外は同様にして作製した。結果を表2に示す。
【0042】
(実施例4)
実施例1の中で、部分置換化合物(1)を部分置換化合物(4)とした以外は同様にして作製した。結果を表2に示す。
【0043】
(実施例5)
実施例1の中で、部分置換化合物(1)を部分置換化合物(5)とした以外は同様にして作製した。結果を表2に示す。
【0044】
(実施例6)
水酸基価94mgKOH/gの熱硬化性アクリル樹脂[「JC587」(ジョンソンポリマー社製商品名)]45部にIPDI(イソホロンジイソシアネート)ε−カプロラクタムブロックのポリイソシアネート樹脂[「ベスタゴンB−1530」(HULS社製商品名)]21部、脱泡剤としてベンゾイン0.2部、部分置換化合物(1)2部、酸化チタン30部を混練、粉砕し200メッシュで分級を行い、平均粒径30μmの粉体塗料を作製した。結果を表2に示す。
【0045】
(実施例7)
水酸基価46mgKOH/gの熱硬化性フッ素樹脂[「ルミフロンLF710F」(旭硝子社製商品名)]55部にIPDI(イソホロンジイソシアネート)ε−カプロラクタムブロックのポリイソシアネート樹脂[「ベスタゴンB−1530」(HULS社製商品名)]13部、脱泡剤としてベンゾイン0.2部、部分置換化合物(4)2部、酸化チタン30部を混練、粉砕し200メッシュで分級を行い、平均粒径30μmの粉体塗料を作製した。結果を表2に示す。
【0046】
(実施例8)
酸価35の熱硬化性ポリエステル樹脂[「クリルコートCC7642」(ダイセルサイテック社製商品名)]60部に、硬化剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミド[「プリミドXL552」(EMS−PRIMD社製商品名)]3部、脱泡剤としてベンゾイン0.2部、部分置換化合物(1)2部、酸化チタン30部を混練、粉砕し200メッシュで分級を行い、平均粒径30μmの粉体塗料を作製した。結果を表2に示す。
【0047】
(実施例9)
実施例2の中で、部分置換化合物(2)を4部とした以外は同様にして作製した。結果を表2に示す。
【0048】
(比較例1)
実施例1の中で、部分置換化合物(1)を部分置換化合物(6)とした以外は同様にして作製した。結果を表3に示す。
【0049】
(比較例2)
実施例1の中で、部分置換化合物(1)を部分置換化合物(7)とした以外は同様にして作製した。結果を表3に示す。
【0050】
(比較例3)
実施例1の中で、部分置換化合物(1)を部分置換化合物(8)とした以外は同様にして作製した。結果を表3に示す。
【0051】
(比較例4)
実施例1の中で、部分置換化合物(1)を除いた以外は同様にして作製した。結果を表3に示す。
【0052】
「試験片作製方法」
各々の塗料を冷間圧延鋼板に粉体塗装機(ランズバーグゲマ社製 PG−1)を用いて、荷電圧−80kvで塗装を行い、熱風乾燥炉内で190℃で20分間焼き付け処理し、膜厚60μmの塗膜を形成した。
【0053】
<光沢>
JIS K 5600−4−7に準拠して測定した。
【0054】
<耐汚染性>
塗膜の耐汚染性は2種類の評価方法すなわち(1)静的水接触角の測定及び(2)水性カーボン汚染試験によって評価した。
【0055】
以下に、各条件における各試験方法を説明する。
【0056】
1.試験板作製直後の静的水接触角の測定
上記実施例及び比較例で作製した全ての塗料を塗装し、焼き付けた試験板を、湿度95%以上および温度50±1℃に保った環境下で24時間放置後に、共和界面科学社製CBVP−A3型接触角測定装置を用いて、塗膜表面の水接触角を測定した。この水接触角が80°未満であれば、塗膜表面が十分に親水化されており、耐汚染性に優れていると評価できる。
【0057】
2.試験板作製直後の水性カーボン汚染試験
上記実施例及び比較例で作製した全ての塗料を塗装し、焼き付けた試験板を、前処理として、湿潤処理(温度50±1℃、相対湿度95%以上)を24時間行った後、恒温恒湿(温度23±2℃、相対湿度50±5%)で3日間乾燥を行う。その後、その試験片に、デグサ社製顔料用カーボンブラックFW−200P[商品名]5部、脱イオン水95部からなる懸濁液を、エアスプレー(エア圧0.4〜0.5Mpa)で、表面が均一に隠蔽するまで塗布する。そして、試験片を直ちに熱風乾燥炉にて60℃×1時間の条件で強制乾燥させ、室温まで放冷する。そして、流水下にて汚染面の汚れ物質をガーゼで落としながら洗浄し、室温で3時間乾燥させた後、汚染面の明度(L)をミノルタ(株)製色彩計CR−300[商品名]によって測定した。測定箇所は汚染面の上部、中央部、下部の3点とし、3点の平均を取る。汚れの程度は下式によって求める;
明度差(ΔL)=試験後の平均明度(L)−試験前の平均明度(L
この明度差(ΔL)が7.00以下であれば、耐汚染性に優れていると評価できる。
【0058】
<ブロッキング性>
実施例1〜9及び比較例1〜4にて作製した塗料を30℃の恒温室にて1週間放置後の粉体塗料の状態を目視にて次のように評価した。
○・・・初期状態から変化なし。
△・・・粉の一部が融着しているが攪拌すれば粉体に戻り、使用可能である。
×・・・粉同士が融着し固まっている。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)、硬化剤(B)、
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である)
(C−2)下記一般式(2)で示される化合物と
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である)
の部分置換化合物(C)を含有し、
該部分置換化合物(C)のアセトンに対する水トレランスが300%以上であることを特徴とする粉体塗料組成物。
【請求項2】
前記バインダー樹脂(A)及び前記硬化剤(B)の合計100重量部に対して、前記部分置換化合物(C)を1〜5重量部含有する請求項1に記載の粉体塗料組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される化合物の部分加水分解縮合物の縮合度が2〜25である請求項1又は2に記載の粉体塗料組成物。

【公開番号】特開2008−74960(P2008−74960A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255773(P2006−255773)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】