説明

粉体貯蔵容器およびその容器への気体貯蔵粉体の充填方法

【課題】気体を吸蔵又は発生する粉体を粉体容器に充填する容器及び充填方法において、特に水素貯蔵粉体を空気や水分との接触をさせずに、貯蔵容器内に短時間で均一に充填できる貯蔵容器を提供する。
【解決手段】気体を吸蔵又は発生する粉体を貯蔵する粉体容器と、前記粉体充填のための導管を接続可能な充填口と、前記粉体容器への接続部とを有する筒状部品であって、前記充填口と前記接続部間の粉体の流れを開放、又は遮断する開放・閉鎖手段を設けた筒状部品とからなり、前記筒状部品を、不活性ガス雰囲気下で、気体流通管を有する耐圧部品に取り替えて用いることを特徴とする粉体貯蔵容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体貯蔵容器およびその容器への気体貯蔵粉体の充填方法、特に、水素貯蔵容器およびその容器への水素貯蔵粉体の充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素貯蔵容器は、水素貯蔵粉体周囲に熱媒配管および水素再吸蔵時に水素貯蔵材と水素が十分に接触できるように水素導入配管を配し、水素貯蔵粉体粉体が容器外に飛散しないようにフィルターを具備した構造であり(特許文献1:特開2002−364943号公報)、場合によっては、水素吸放出の繰返しによる水素貯蔵材の凝集・過密化防止のために、容器内部がさらに、小部屋に仕切られている、水素吸蔵時に高圧水素圧力が容器にかかるため、耐圧容器となっている等、水素貯蔵材料の充填口が非常に狭い構造であった。
【0003】
充填口は通常はフランジなどで塞がれており、貯蔵粉体充填時にこれを開放するときは、酸素・湿分を避けるため不活性ガス雰囲気等が必要であり、例えば、充填工程自体をグローブボックス中に組み込み、ここで開放し、貯蔵粉体を充填する作業が必要であった。特に、無機錯体系などの水素貯蔵材料粉末は、空気や水分と接触すると酸化や水和を起こし劣化してしまうからである。従って、充填作業自体をグローブボックスでおこなう必要があり、その占有時間も長くなって、生産性も低下していた。
【0004】
また、貯蔵容器には水素吸蔵時に高圧の水素圧力がかかるため、耐圧容器となっており、貯蔵材料の充填口が狭いため、短時間で、貯蔵容器内に貯蔵材料均一に充填することは困難であった。
【特許文献1】特開2002−364943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、上記従来技術に鑑みて、気体を吸蔵又は発生する粉体を粉体容器に充填する容器及び充填方法において、特に水素貯蔵粉体を空気や水分との接触をさせずに、貯蔵容器内に短時間で均一に充填できる貯蔵容器並びに充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
気体を吸蔵又は発生する粉体を貯蔵する粉体容器と、前記粉体充填のための導管を接続可能な充填口と、前記粉体容器への接続部とを有する筒状部品であって、前記充填口と前記接続部間の粉体の流れを開放、又は遮断する開放・閉鎖手段を設けた筒状部品とからなり、前記筒状部品を、不活性ガス雰囲気下で、気体流通管を有する耐圧部品に取り替えて用いることを特徴とする粉体貯蔵容器。更に、前記粉体が水素貯蔵粉体であり、前記開放・封止手段が、バタフライ弁であることを特徴とする前記粉体貯蔵容器、を提供する。
【0007】
気体を吸蔵又は発生する粉体を粉体容器に充填する方法において、前記粉体充填のための導管を接続可能な充填口と、前記粉体容器への接続部とを有する管部であって、前記充填口と前記接続部間の粉体を流通可能に開放、又は遮断する開放・封止手段を設けた管部から、該粉体容器に粉体を充填し、充填完了後、前記開放・封止手段で封止した状態の前記管部に接続し、粉体を充填された前記粉体容器を不活性雰囲気中に置き、不活性ガス雰囲気下で、前記管部を、気体流通管を有する耐圧管部に取り替えることを特徴とする粉体充填方法。更に、前記粉体が水素貯蔵粉体であり、前記開放・封止手段が、バタフライ弁であることを特徴とする請求項2記載の粉体充填方法、を提供する。ここに、バタフライ弁とは、通常円筒形の弁箱内で、円板状の弁体が、直径部分に設けた駆動軸により回転して開閉する弁である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、水素貯蔵粉体を空気や水分との接触をさせずに、短時間で均一に充填できる貯蔵容器並びに充填方法が提供される。貯蔵用容器とは別に、前記貯蔵粉体充填のための導管を接続可能な充填口と、前記貯蔵用容器10との接続部とを有する容器20であって、前記充填口と前記接続部間で粉体の開放・閉鎖手段を設けた容器20を有するため、この容器は、耐圧性を必要とせず、大きな開口手段を設けられ、容器20を取り付けた状態で、不活性雰囲気下で操作できるため、作業性が格段に向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、気体を吸蔵又は発生する気体貯蔵粉体を充填する貯蔵用容器10と、前記貯蔵粉体充填のための導管を接続可能な充填口21と、前記貯蔵用容器10との接続部22とを有する容器20であって、前記充填口21と前記接続部22間で粉体の開放・閉鎖手段23を設けた容器20とを含み、前記容器20を、不活性ガス雰囲気下で、気体流通管31を有する別の容器30に取り替えた後、気体の吸蔵又は発生に用いることを特徴とする粉体貯蔵容器100、を示す。
【0010】
バタフライ弁等を有する容器20において、前記貯蔵粉体充填のための導管を接続可能な充填口21には、ロータリーバルブを接続しても良く、中間部が筒状である容器20とすることが好ましい。容器20は貯蔵容器10に粉体である貯蔵材料を効率よく充填するために充填口21を大きくし、口径の大きいバルブを供えている。気体貯蔵粉体を充填する貯蔵容器10に付けて使用しないので、耐圧性や耐熱性は特に問題とならない。材質は、樹脂も使用可能であるが、金属(スチール、SUS、アルミなど)が耐久性の面で望ましい。
【0011】
バタフライ弁の一例を図2に示す。円筒状の弁箱231、円板状の弁体232、弁体の回転軸となりこれを開閉するための弁棒233、回転軸を駆動し、弁箱の外部に設置された弁体の開閉駆動装置(図示せず)、弁体232と弁箱231とのシールのための弁体シール部材234を含むことが好ましい。また、貯蔵用容器10の充填口の径に近い円板状弁体が効率がよい。シール部材は、常温常圧の使用にあたってのリーク防止が可能なものを用いる。バタフライ弁は、耐圧性が低いが、開口部が大きく取れ、粉体の投入に特に向いている。
【0012】
気体流通管を有する別の容器30は、前記容器20に置き換えられ、貯蔵用容器10の蓋の機能を有することとなる。貯蔵用容器10にフランジやねじ込み方式で接続する。後の気体の吸蔵又は発生に用いるため、耐圧構造であることが好ましい。上部に水素ガスの吸蔵、放出のための気体流通管31と耐圧バルブが付いており、流通管または容器上部に貯蔵材料の飛散を防ぐためのフィルターを付属することが好ましい。
【0013】
貯蔵用容器10は、一般的に円筒状で内部が空洞となっており、この内部に水素貯蔵粉体を充填する。また、水素吸蔵又は放出時に水素貯蔵粉体と水素が十分に接触でき、効率良く加熱するために、水素導入配管、熱媒配管などを具備した構造を有している。水素吸蔵時に水素圧力が容器にかかるため、耐圧構造となっている。材質は、圧力と温度によって決まり、SUSやアルミニウム(アルミニウム合金も含む)などが適時選択される。
【0014】
図3は、粉体貯蔵容器100へ気体を吸蔵又は発生する粉体を粉体容器に充填する具体的な方法を例示する。前記粉体充填のための導管を、容器20の充填口に接続し、前記充填口から前記気体貯蔵粉体を貯蔵用容器10に充填し、開放・閉鎖手段で閉鎖し、不活性雰囲気中に置き、不活性ガス雰囲気下で、前記容器20を、気体流通管を有する別の容器30に取り替えた後、気体を吸蔵又は発生させることを特徴とする粉体充填工程の概略図である。
【0015】
粉体の充填に先立って、貯蔵用容器10の充填口11に容器20を取り付けた。取り付けは、フランジやねじ込み方式等である。次いで、容器20をレシーバータンク40(貯蔵材料を充填している)に、フランジや密閉式のカップラー等(図示せず)で接続する。図3では、レシーバータンク40内の貯蔵材料が空気と接触しないように、レシーバータンク40下部にも弁がついている。更に、ロータリーバルブ50を介して接続することも望ましい。接続後、レシーバータンク40と容器20の間を真空ポンプで減圧にして空気を排除することが望ましい。真空ポンプで減圧する代わりに、レシーバータンク40の下に設置した弁とロータリーバルブ50を通して、容器20のバタフライ弁にいたるまでの空間を窒素ガスで置換し、空気と貯蔵材料との接触を避けることが望ましい。
【0016】
空気排除後、レシーバータンク40側の弁を開け、バタフライ弁を開放し、貯蔵用容器10に振動を与えながら、貯蔵用容器10に、貯蔵材料を充填する。この場合、貯蔵材料は重力による自然落下で貯蔵用容器10に充填しても良いが、計量可能なロータリーバルブ50により充填することが望ましい。効率的、定量的に充填が可能だからである。充填後、バタフライ弁を閉状態とし、ロータリーバルブ50下部の弁を閉じ、容器20をレシーバータンク40と分離する。
【0017】
次に、容器20と貯蔵用容器10接続した状態で、不活性ガス(窒素、アルゴン等)で満たしたグローブボックス内に入れ、前記ボックス内で容器10と容器20を分離し、容器10に気体流通管を有する別の容器30を取り付け、粉体貯蔵容器100とした。その後、グローブボックス外へ容器100を取り出し、気体を吸蔵又は発生させるのに用いた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明である粉体貯蔵容器100を簡略化して示した図である。
【図2】本発明における容器20を構成するバタフライ弁の一例を示す概略図である。
【図3】本発明である粉体貯蔵容器への気体貯蔵粉体の充填方法を示す工程の概略図である。
【符号の説明】
【0019】
10;粉体貯蔵容器
11;接続部
20;容器
21;充填口
22;接続部
23;開放・閉鎖手段
23a;バタフライ弁
231;弁箱
232;弁体
233;弁棒
234;弁体シール
235;弁箱シール
30;気体流通管を有する別の容器
31;気体流通管
40;レシーバータンク
50;ロータリーバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸蔵又は発生する気体貯蔵粉体を充填する貯蔵用容器10と、
前記貯蔵粉体充填のための導管を接続可能な充填口と、前記貯蔵用容器10との接続部とを有する容器20であって、前記充填口と前記接続部間で粉体の開放・閉鎖手段を設けた容器20とを、
接続した状態で前記気体貯蔵粉体を充填し、充填後、前記貯蔵用容器10と前記容器20を接続した状態で、不活性ガス雰囲気下に移動させ、
前記容器20を、不活性ガス雰囲気下で、気体流通管を有する別の容器30に取り替えた後、気体の吸蔵又は発生に用いることを特徴とする粉体貯蔵容器100。
【請求項2】
気体を吸蔵又は発生する気体貯蔵粉体を粉体貯蔵容器100に充填する方法において、
前記気体貯蔵粉体充填のための導管を接続可能な充填口と、前記貯蔵用容器10への接続部とを有する容器20であって、前記充填口と前記接続部間で粉体の開放・閉鎖手段を設けた容器20と前記貯蔵用容器10を接続し、前記充填口から前記気体貯蔵粉体を貯蔵用容器10に充填し、
前記開放・閉鎖手段で閉鎖し、
不活性雰囲気中に置き、
不活性ガス雰囲気下で、前記容器20を、気体流通管を有する別の容器30に取り替えた後、気体を吸蔵又は発生させることを特徴とする粉体充填方法。
【請求項3】
前記気体貯蔵粉体が水素貯蔵粉体であり、前記開放・閉鎖手段が、バタフライ弁であることを特徴とする請求項1記載の粉体貯蔵容器。
【請求項4】
前記粉体が水素貯蔵粉体であり、前記開放・閉鎖手段が、バタフライ弁であることを特徴とする請求項2記載の粉体充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−8394(P2008−8394A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179090(P2006−179090)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】