説明

粉体貯蔵容器

【課題】輸送時にはコンパクトにでき、使用時には粉体の貯蔵容量を大きくできる粉体貯蔵容器を提供する。
【解決手段】粉体取出し装置8を有する架台B上に載置して使用される粉体貯蔵容器Aであって、天板3と底枠1と複数枚の側板2と可撓性を有するシート4とから形成されており、側板2は、底枠1に対し直立した格納位置と外側に傾斜した拡張位置との間で傾動可能となるように蝶番21で取付けられており、天板3と各側板2との間の空間は、シート4を接合して密閉している。底枠1に横向きに取付けられた導入パイプ51と、導入パイプ51から上方に延びた縦パイプ52と、縦パイプ52の上端から横へ延びる複数本の排出パイプ53とで粉体をエアー搬送で導入できる。側板2が折り畳まれた格納状態では、全体の占有体積が小さいので運搬が容易であり、側板2を開いた拡張状態では、貯蔵容器内の容積が広がるので、粉体の収納容量を大きくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体貯蔵容器に関する。さらに詳しくは、セメント等の粉体を建設工事現場等で貯蔵し、随時取り出して使用するための貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事現場では、工事の規模に応じた量のセメントが使用されるが、工事の規模に応じてセメントの輸送、貯蔵体制は、つぎのように行われている。
【0003】
セメントの使用量が少ない工事現場では、1トン程度ずつ袋に詰めたセメントを工事現場に持ち込み、使用するのが一般的である。しかし、この袋は一回だけの使用で終り、後は産業廃棄物として処理されるが、石油製品なのでエネルギーの無駄と地球環境に対して大きな負荷となっている。また袋からセメントを取り出すときに相当な粉塵が発生し人体や環境に悪い影響を与えている。さらに袋を回収して再利用しようとしても袋に付着したセメントが粉塵となり飛散し作業は困難を伴う。
【0004】
大規模の建設工事現場でセメント等を貯蔵する場合は、鋼鉄製の容器を使用している。一般的には、貯蔵量が30トンのものが多く使用されており、その外形は円筒形が一般的で、直径が2.5m、高さ8m、重量は8.0トン程度と大きいものである。このような大形で重量物の容器を用いるときは、運搬と設置、また使用後の撤去に大型のトラックとクレーン車が必要である。そして、建設工事現場が発生する度に輸送、据付を繰り返して使用するが、その設置・撤去作業は非常な危険を伴う。また、住宅地での小規模の工事現場は道路幅も狭く大型のトラックやクレーン車が進入できない事も多い。
【0005】
工事現場の規模をさほど問わず使用できる従来技術としては、特許文献1の技術がある。
この従来技術は、図8に示すように、粉粒体を収容する複数のホッパー101を車両によって輸送して設置できるように、2種類の架台102、103を用いるものである。第1架台102及び第2架台103は、数個のホッパー101を載置可能にした枠組み構造のフレームからなる。第2架台103は、粉粒体を搬送する搬送体130および搬送された粉粒体を計量する計量器131を備えており、これは使用現場に設置しておく。第1架台102は、これを車両に搭載して、複数個のホッパー101を第1架台102に載置し、工事現場まで移動する。工事現場では、ホッパー101を第1架台102から第2架台103に移し替え、ホッパー101から必要量の粉粒体を供給したあと、空のホッパー101を第2架台103から第1架台102に移し替えるようにしている。
【0006】
しかるに、上記従来技術では、ホッパー101の形状が、下半分が先細りのテーパ形であるため粉体の収納容量が小さいという問題がある。また、ホッパー101自体の形状が変化しないものであり、輸送時にも使用時にも大きな占有体積を占めるという難点がある。
【0007】
【特許文献1】特開2001−80743号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、輸送時にはコンパクトにでき使用時には粉体の貯蔵容量を大きくでき、かつ軽量化することで設置と撤去が簡単に行える粉体貯蔵容器を提供することを目的とする。また、本発明は粉体の外部への飛散が防止でき、人や環境への悪影響を防止できる粉体貯蔵容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の粉体貯蔵容器は、粉体取出し装置を有する架台上に載置して使用される貯蔵容器であって、該貯蔵容器は、天板と底枠と複数枚の側板とから立方体に形成されており、前記天板、前記底枠および前記複数枚の側板同士を可撓性を有するシートで連結していることを特徴とする。
第2発明の粉体貯蔵容器は、第1発明において、前記側板は、前記底枠に対し直立した格納位置と外側に傾斜した拡張位置との間で傾動可能となるように蝶番で取付けられており、前記天板と前記各側板との間の空間は、前記シートを接合して密閉していることを特徴とする。
第3発明の粉体貯蔵容器は、第1発明において、前記貯蔵容器が、天板と底枠とこれらを連結する複数本の柱から形成されており、前記貯蔵容器の側面には、可撓性を有するシートを取付けていることを特徴とする。
第4発明の粉体貯蔵容器は、第2または第3発明において、前記貯蔵容器の内部へ外部から粉体を導入する導入手段が設けられており、該導入手段が、前記底枠に横向きに取付けられた導入パイプと、前記導入パイプから上方に延びた縦パイプと該縦パイプの上端から横へ延びる複数本の排出パイプとからなることを特徴とする。
第5発明の粉体貯蔵容器は、第2または第3発明において、前記底枠の中央部に支柱が立設され、該支柱の上部に前記天板が取付けられており、該天板には空気を排出するが粉体は排出しない空気抜きフィルターが取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、貯蔵容器の一部をシートで形成しているので容積の大きい割に軽量であり、設置と撤去も簡単で安全に行える。
第2発明によれば、側板が折り畳まれた格納状態では、全体の占有体積が小さいので運搬が容易である。そして、側板を開いた拡張状態では、貯留部内の容積が広がるので、粉体の収納容量を大きくできる。また、側板と天板とシートにより貯留部の側面も上面も密閉されるので、天候に左右されず粉体を保管でき、また粉塵が外部へ飛散しないので人体や環境へ悪い影響を与えることがない。
第3発明によれば、粉体を貯蔵する際に、粉体の重量で貯蔵容器の側面のシートが外側に膨らむので、側板を開くことなく収納容量を大きくできる。また、貯蔵容器の側面にはシートが固定されているだけなので大幅に軽量化することができ、蝶番が不要であるので構造がシンプルとなる。このため、粉体貯蔵容器のさらなる軽量化となり、設置、撤去および運搬が簡単で安全に行える。
第4発明によれば、貯蔵容器内への粉体の導入が貯蔵容器内にある導入パイプと縦パイプと排出パイプを通じて貯蔵容器内で粉体を上方から落下させることにより行えるので、粉体の詰りなどが生ずることなく、貯蔵容器内への粉体の貯蔵が行える。また、粉体の外部への飛散が防止でき、人や環境への悪影響を防止できる。
第5発明によれば、粉体を貯蔵容器内へエアー搬送による充填する際に、空気抜きフィルターにより貯蔵容器内の空気を排出して内圧を下げ、しかも粉体は排出しないので、効率よく粉体の充填が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る粉体貯蔵容器における不使用時の斜視図である。図2は図1の粉体貯蔵容器の縦断面図である。図3は図2におけるIII−III線断面図である。
【0012】
図1〜図3において、Aは粉体貯蔵容器であり、底枠1、側板2、天板3、シート4などを構成要素としている。
前記底枠1は、四角形の外縁部のみ有し、内部が空洞になっている底板11と、その上面に立設された枠板12とからなる。枠板12は四角形の枠を形作る4面を有している。
【0013】
前記側板2は概ね縦長の長方形であって4枚あり、それぞれの底端が蝶番21で前記枠板12に取付けられている。図1は、この側板2を垂直に立てて格納した状態を示しているが、図4に示すように外側に傾斜した拡張位置との間で自在に傾動することができる。
【0014】
前記天板3は、四角形の板であり、図2に示すように縦パイプ52が兼ねる支柱で支えられている。
そして、4枚の側板2の側縁同士の間と、天板3と側板2の上縁との間は、シート4でつなげられている。このシート4は、可撓性を有しており、折り畳んだり広げたり自由にできるシートであり、またセメント等の重量を受けても破れないだけの強度を有している。さらに、空気や水を透過せず、収容する粉体も透過しないものが用いられる。たとえば、このようなシートとしては、素材がゴムや合成樹脂(塩化ビニール、ポリアミドその他)などのシートが好適である。
【0015】
図1および図3に示すように、前記シート4における隣接する側板2同士の間の部分には、支え板41を取付けて、シート4の補強を行ってもよい。この支え板41も、その底端は蝶番21で底枠1の枠板12に取付けられる。なお、シート4の強度が充分であれば、この支え板41はなくともよい。
【0016】
前記シート4は、図2および図3に示すように、側板2を垂直に格納した状態では、かなりのたるみが生ずる大きさ、寸法のものとされている。このため、後述するごとく、側板2を外側に倒すことができ、このときシート4は緊張状態に張られることになる。
【0017】
図2に示すように、前記天板3には、孔31を形成し、孔31の上部には、空気抜きフィルター32を取付けている。この空気抜きフィルター32は、布等で筒状に作られた部材であって、布の微少隙間から空気は抜けるが、セメント等の粉体は排出しないようにされたフィルターである。
なお、この空気抜きフィルター32には円筒形であって蛇腹式に伸縮するカバー33が被せられ、雨水が入らないようにされている。このカバー33の底部には空気排出用の孔が適数個設けられている。
【0018】
図4には、粉体の導入手段5が示されている。この導入手段5は、底枠1の枠板12を貫いて設けた横向きの導入パイプ51と、この導入パイプ51から上方に延びた縦パイプ52と、縦パイプ52の上端から横へ放射状に延びる複数本の排出パイプ53とから構成されている。
【0019】
前記導入パイプ51は、外端にフランジ54または適宜の接続口が設けられており、粉体を輸送する車両から延びるホースなどが接続できるようになっている。また、この導入パイプ51は、適宜の補強手段で底枠1に強固に固定されている。
前記縦パイプ52は前記天板3の下面まで延びており、天板3を支える支柱を兼ねている。前記排出パイプ53は放射状に延びた複数本のパイプで構成されている。
【0020】
つぎに、本実施形態の粉体貯蔵容器Aの使用方法を説明する。
図4および図5に示すように、全ての側板2を外側に倒すと、シート4も開いて、貯蔵容器内の内部容積はかなり大きくなる。このように拡張した位置の側板2の垂直線に対する角度は約30°位が好ましい。
この状態で、導入パイプ51のフランジ54に、粉体輸送車(図示省略)から引いてきたホースを連結し、エアー搬送によりセメント等の粉体を送り込むと、粉体は矢印で示すように、導入パイプ51から縦パイプ52を経て上昇し、排出パイプ53から放出されて、貯蔵容器内へ落下していく。
【0021】
上記のように、排出パイプ53の開口端は貯蔵容器の最上部にあるので、粉体をいくら充填していっても、開口部が粉体で埋ることはない。このため、粉体輸送車側のエアー搬送圧力を上げることなく、粉体を貯蔵容器内に充填することができる。
また、エアー搬送により送り込まれた貯蔵容器内の空気は、空気抜きフィルター32より抜けていくので、内圧の上昇は避けられ、貯蔵容器内に粉体が充満しきるまで、粉体のエアー搬送が可能となる。
【0022】
本実施形態の粉体貯蔵容器Aの貯蔵能力を、つぎに説明する。
図4および図5に示すように、側板2を拡張した場合の貯蔵容器内の容積は、つぎのように計算できる。
角錘台の体積Vは、下記式1で表わせる。
V=(H)×{S1+S2+√(S1×S2)}/3・・・式1
側板2を広げた場合の上端の大きさが4.7m×4.7mの四角形、側板2の底端の大きさが2m×2mの四角形、側板2の傾斜時の高さHが3mとすると、角錐台の上部面積S1=4.7×4.7=22、角錐台の下部面積S2=2×2=4である。これを上記式1に代入すると、
V=(3)×{22+4+√(22×4)}/3=35(立法メートル)
となる。セメントの見かけ比重は1.2であるから、貯蔵能力は35×1.2=42トンで40トン以上であり、鋼製の貯蔵容器と同等以上である。
【0023】
つぎに、本発明の粉体貯蔵容器Aの現場設置の要領を説明する。
図4および図5において、Bは架台である。この架台Bは、四角形の枠組に組んだフレーム6に断面V字形のホッパー7と、粉体の取出し装置8を組み込んだものである。粉体取出し装置8は、スクリュー8a,8bを内蔵した搬送筒8c,8dとからなる。これらの装置は、いずれも公知である。
この架台Bは、工事現場に設置しておき、貯蔵容器Aはトラック等で輸送してきて、クレーン車等で吊り上げて架台B上に固定する。貯蔵容器Aの架台B上への固定は、底板11と架台Bの上部の板とを公知のクランプで締めつけることによって固定できる。
【0024】
本発明の貯蔵容器Aをトラック等で輸送するときは、図1に示すように側板2を垂直に立てた格納状態としておくと、輸送時の占有体積を小さくでき、輸送がやりやすくなる。
そして、図5に示すように現場で設置したときは側板2を開いて拡張位置にしておくと、貯蔵容器の内容積が大きくなって、大量のセメント等を貯蔵することができる。また、シートを使っているので容積の大きい割に軽量であり、設置と撤去も簡単で安全に行える。さらに、側板2と、天板3とシート4により貯蔵容器の側面も上面も密閉されるので、天候に左右されず粉体を保管でき、また粉塵が外部へ飛散しないので人体や環境へ悪い影響を与えることがないという利点がある。
【0025】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態に係る粉体貯蔵容器Cの斜視図である。粉体貯蔵容器Cは、底枠1と天板3と、これらを連結する4本の柱41と、さらに柱41をつなぐ梁42とから立方体に構成されている。柱41や梁42としては、角パイプ等が用いられる。
この貯蔵容器Cの側面は、可撓性を有する複数枚の側板シート2aが用いられ、これらの各側板シート2aはそれぞれ帯板2bで柱41や梁42に取付けられている。この取付けは、帯板2bでシート材を挟んでボルト止めする等の、液密性を有するものであればよい。側板シート2aには前記第1実施形態のシート4と同様の可撓性を有するシートが用いられる。前記側板シート2aは平たんなシートを用いてもよいが、予め折りぐせを付けておくと、大きく外側に膨らむので、貯蔵容器Cの収容量を増やすことができる。
なお、側板シート2aを外側に膨らます適当な突張り手段を用いると、側板シート2aの膨らみを最適形状に規制できるので、収容量の増加と強度の確保に好ましい。その余の構成は第1実施形態とほぼ同じであるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
図7に示すように、粉体貯蔵容器Cに粉体を貯蔵する際には、粉体の重量によって側板シート2aが外側に膨らむことにより、その分だけ貯蔵容器内の内部容量が大きくなる。このため、側板2を倒す操作をすることなく内部容量を大きくすることができる。
【0027】
また、貯蔵容器Cは枠体であり側板シート2aが固定されているだけなので、全体を板材で構成したときよりも大幅に軽量化することができ、蝶番が不要であるので構造がシンプルとなる。このため、粉体貯蔵容器のさらなる軽量化となり、設置、撤去および運搬が簡単で安全に行える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る粉体貯蔵容器における不使用時の斜視図である。
【図2】図1の粉体貯蔵容器の縦断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図4の粉体貯蔵容器の縦断面図である。
【図5】図1の粉体貯蔵容器における使用時の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る粉体貯蔵容器の斜視図である。
【図7】図6の粉体貯蔵容器の縦断面図である。
【図8】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
A 粉体貯蔵容器
1 底枠
2 側板
2a 側板シート
2b 帯板
3 天板
4 シート
5 導入手段
B 架台
C 粉体貯蔵容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体取出し装置を有する架台上に載置して使用される貯蔵容器であって、
該貯蔵容器は、天板と底枠と複数枚の側板とから立方体に形成されており、
前記天板、前記底枠および前記複数枚の側板同士を可撓性を有するシートで連結している
ことを特徴とする粉体貯蔵容器。
【請求項2】
前記側板は、前記底枠に対し直立した格納位置と外側に傾斜した拡張位置との間で傾動可能となるように蝶番で取付けられており、
前記天板と前記各側板との間の空間は、前記シートを接合して密閉している
ことを特徴とする請求項1記載の粉体貯蔵容器。
【請求項3】
前記貯蔵容器が、天板と底枠とこれらを連結する複数本の柱から形成されており、
前記貯蔵容器の側面には、可撓性を有するシートを取付けている
ことを特徴とする請求項1記載の粉体貯蔵容器。
【請求項4】
前記貯蔵容器の内部へ外部から粉体を導入する導入手段が設けられており、
該導入手段が、前記底枠に横向きに取付けられた導入パイプと、前記導入パイプから上方に延びた縦パイプと該縦パイプの上端から横へ延びる複数本の排出パイプとからなる
ことを特徴とする請求項1または2記載の粉体貯蔵容器。
【請求項5】
前記底枠の中央部に支柱が立設され、該支柱の上部に前記天板が取付けられており、
該天板には空気を排出するが粉体は排出しない空気抜きフィルターが取付けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載の粉体貯蔵容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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