説明

粉塊混合物からの試料採取方法及びその装置

【課題】 ベルトコンベアによって搬送される粉塊混合物から試料を採取する際に、ベルトコンベアの搬送方向並びに全幅の双方に対して、採取する試料に偏りがなく、均一な試料を効率よく採取できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】 ベルトコンベア1の搬送方向前端部から粉塊混合物10を落下させるとともに、ベルトコンベア1の下方で且つその搬送方向と直交する方向に試料採取用バケット3を往復移動させ、落下する粉塊混合物10から試料採取用バケット3内に往路及び復路で試料を採取する。試料採取用バケット3はベルトコンベア1の幅方向両端よりも外側で折り返し、その折り返し点付近で試料採取用バケット3内の試料を試料用ホッパ6に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塊混合物中の成分や含有量などを調べるために、ベルトコンベアによって搬送される粉塊混合物から試料を採取する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場などにおいて粉塊混合物中の成分や含有量などを調べる場合、最も簡単な方法としては、作業者の手作業によって試料を採取することが行われている。しかし、手作業による採取では、粉塊混合物の中から取りやすい試料を採取してしまうため、偏りの無い試料の採取は困難であった。
【0003】
粉塊混合物から試料を機械的に採取する手段として、例えば特開2000−283898号公報には、粉塊混合物を搬送するベルトコンベアの乗り継ぎ部に採取板を配置し、採取板が上下運動を行って粉塊混合物から試料を採取する装置が記載されている。この装置では、ベルトコンベアの全幅から試料を採取できるため、ベルトコンベアの全幅方向での試料の偏りは生じないが、ベルトコンベアの搬送方向に対しては、間欠的な採取となることから試料に偏りが生じていた。
【0004】
また、特開平09−243528号公報には、ベルトコンベアの搬送方向前端部から粉塊混合物を落下させながら、落下する粉塊混合物を横切るように試料採取用バケットを一方向に移動させて、粉塊混合物から試料を採取する方法が記載されている。この方法では、ベルトコンベアの全幅方向での試料の偏りは生じないが、試料採取用バケットが一方向のみに移動するため、試料を採取する時間間隔が長くなり、ベルトコンベアの搬送方向に対しては、間欠的な採取となることから、採取した試料に偏りが生じていた。
【特許文献1】特開2000−283898号公報
【特許文献2】特開平09−243528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、ベルトコンベアによって搬送される粉塊混合物から試料を採取する際に、粉塊混合物を搬送するベルトコンベアの搬送方向並びにベルトコンベアの全幅方向の双方に対して、採取する試料に偏りがなく、均一な試料を効率よく採取することができる方法、及びそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明が提供する試料採取方法は、ベルトコンベアによって搬送される粉塊混合物から試料を採取する方法であって、ベルトコンベアの搬送方向前端部から粉塊混合物を落下させるとともに、ベルトコンベアの下方で且つその搬送方向と直交する方向に試料採取用バケットを往復移動させ、落下する粉塊混合物から試料採取用バケット内に往路及び復路ともに試料を採取することを特徴とするものである。
【0007】
上記本発明の試料採取方法においては、試料採取用バケットは往復移動を繰り返し、ベルトコンベアの幅方向両端よりも外側で且つ往復移動の折り返し点又はその付近で試料採取用バケット内の試料を排出することができる。
【0008】
また、本発明が提供する試料採取装置は、ベルトコンベアによって搬送される粉塊混合物から試料を採取する装置であって、ベルトコンベアの搬送方向前端部下方にベルトコンベアの搬送方向と直交する方向に設置された駆動用ベルトと、駆動用ベルトに固定された試料採取用バケットと、駆動用ベルトを駆動する正回転と逆回転が可能なモーターとを備え、試料採取用バケットがモーターの正逆回転に伴って駆動用ベルトとともに往復移動し、落下する粉塊混合物から試料採取用バケット内に往路及び復路ともに試料を採取することを特徴とする。
【0009】
上記本発明の試料採取装置においては、前記試料採取用バケットはベルトコンベアの幅方向両端よりも外側で折り返し、折り返し点又はその付近で試料採取用バケット内から試料を排出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベルトコンベアの下方で且つその搬送方向に対して直交する方向に往復移動する試料採取用バケットによって、ベルトコンベアの搬送方向前端部から落下する粉塊混合物を採取するため、ベルトコンベアの搬送方向及び全幅方向の双方に対して偏りのない、従来に比べて均一な試料を効率よく採取することができる。従って、本発明により採取した均一な試料を用いることにより、粉塊混合物の品位を正確に評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を、図面を参照して具体的に説明する。本発明の試料採取装置は、例えば図1〜2に示すように、粉塊混合物10を搬送するベルトコンベア1の搬送方向前端部の下方に、ベルトコンベア1の搬送方向と直交する方向に往復移動する試料採取用バケット2を備えている。この試料採取用バケット2は駆動用ベルト3に固定され、駆動用ベルト3は正回転と逆回転が可能なモーター4に接続されている。そして、モーター4の正回転と逆回転に伴って、試料採取用バケット2は駆動用ベルトとともに往復移動するようになっている。尚、試料採取用バケット2の移動速度は、ベルトコンベア1の移動速度よりも遅くすることが望ましい。
【0012】
一方、粉塊混合物10はベルトコンベヤ1により搬送され、ベルトコンベア1の搬送方向前端部から落下して、下方の収集用ホッパ5に入るようになっている。この粉塊混合物から試料を採取する際には、ベルトコンベア1の搬送方向前端部から粉塊混合物10を落下させながら、ベルトコンベア1の搬送方向と直交する方向に試料採取用バケット2を往復移動させる。ベルトコンベア1から落下する粉塊混合物10は下方の収集用ホッパ5に入るが、その一部は往復移動する試料採取用バケット2内に試料として採取される。試料採取用バケット2は往復移動を繰り返し、往路と復路の両方で試料を連続的に採取する。
【0013】
また、駆動用ベルト3により往復移動する試料採取用バケット2は、図2に示すように、ベルトコンベア1の幅方向両端よりも外側で折り返す。その際、折り返し点又はその付近において、試料採取用バケット2から試料11を排出して、収集用ホッパ5の両側に設けた試料用ホッパ6、6にそれぞれ投入することができる。この図2においては、試料採取用バケット2がエンドレスの駆動用ベルト3とともに往復移動し、折り返し点付近で試料採取用バケット2が徐々に傾斜して、折り返し点では反転して完全に下向きとなることで、試料11が完全に排出される。
【0014】
ただし、試料採取用バケットからの試料の排出手段は、上記図2の方法に限らず、例えば、試料採取用バケットの一部を開放するなどの方法によっても、往復移動の折り返し点又はその付近において試料を排出することができる。また、このような試料の排出方法によれば、試料採取用バケットが往復移動の折り返し点又はその付近に達する毎に排出するのではなく、往復移動が所定の回数に達するまで採取を続け、所定回数に達したときに、複数往復分の試料をまとめて折り返し点又はその付近で排出することも可能である。
【0015】
図3に、上記試料採取用バケットの移動状態、即ち、ベルトコンベア1の搬送方向前端部から粉塊混合物10が落下しているとき、駆動用ベルト3上に固定された試料採取用バケット2が往復移動する過程を示す。まず、図3(A)は、試料採取用バケット2がベルトコンベア1の幅方向右端に位置している状態であり、粉塊混合物10は試料採取用バケット2に入ることなくそのまま落下する。
【0016】
次に、図3(B)〜(c)に示すように、モーターが正回転することにより、駆動ベルト3の移動に伴って試料採取用バケット2は左方向へ移動しながら、落下する粉塊混合物10の中から試料を採取する。そして、図3(D)に示すように、試料採取用バケット2はベルトコンベア1の幅方向左端に移動した後、エンドレスの駆動ベルト3の動きに伴って折り返し点付近で反転し、試料採取用バケット2から試料用ホッパに採取した試料を排出する。
【0017】
その後、モーターの回転が逆回転することで、図3(E)に示すように、駆動ベルト3に固定された試料採取用バケット2は、折り返し点から右方向へ移動を開始する。図3(F)〜(G)に示すように、更に試料採取用バケット2は右方向へ移動しながら、落下する粉塊混合物10の中から再び試料を採取する。
【0018】
そして、図3(H)に示すように、試料採取用バケット2はベルトコンベア1の幅方向右端に移動した後、折り返し点付近で反転して試料採取用バケット2から試料を排出する。試料を排出するとモーターの回転が正回転となり、駆動ベルト3に固定された試料採取用バケット2は図3(A)の位置に戻る。
【0019】
このように試料採取用バケットが往復移動を繰り返して試料を連続的に採取する結果、図4(a)に示すように、本発明によれば、ベルトコンベア1上の矢印で示した範囲から試料を採取することができる。一方、上述した特開平9−243528号公報記載の方法では図4(b)に示す範囲、及び特開2000−283898号公報記載の方法では図4(c)に示す範囲での試料採取となる。従って、本発明においては、採取する試料に偏りがなく、従来よりも一層均一に試料を採取することができる。
【実施例】
【0020】
図1〜2に示す試料採取装置を使用して、貴金属を含有する粉砕されたスクラップである粉塊混合物10から試料の採取を行った。粉塊混合物10はベルトコンベヤ1により毎分35〜40mの速度で搬送され、ベルトコンベア1の搬送方向前端部から収集用ホッパ5内に落下する。ベルトコンベア1の搬送方向前端部下方には、ベルトコンベア10の搬送方向と直交する方向に、正逆回転可能なモーター4により駆動する駆動用ベルト3が設けてある。試料採取用バケット2は駆動用ベルト3に固定され、モーター4の正逆回転に伴って往復移動を繰り返すようになっている。
【0021】
この試料採取用バケット2を毎分36m以下の速度で往復移動させることによって、ベルトコンベア1から落下する粉塊混合物10から試料を連続的に採取した。また、試料採取用バケット2は、ベルトコンベア1の幅方向両端より外側の折り返し点付近で反転して逆さまになり、往路及び復路で採取した試料11をそれぞれの試料用ホッパ6、6に排出した。このようにして、試料採取用バケット2が往復移動を繰り返して行うことにより、往路及び復路において試料を連続的に採取し且つ排出することができ、図4(a)に示すベルトコンベア1上の矢印で示す範囲の試料を効率よく採取することができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の試料採取装置の具体例を示す概略の斜視図である。
【図2】本発明の試料採取装置の具体例を示す概略の正面図である。
【図3】本発明の試料採取用バケットの移動状態を示す説明図である。
【図4】本発明及び従来例によるベルトコンベア上の試料採取範囲を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ベルトコンベア
2 試料採取用バケット
3 駆動用ベルト
4 モーター
5 収集用ホッパ
6 試料用ホッパ
10 粉塊混合物
11 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアによって搬送される粉塊混合物から試料を採取する方法であって、ベルトコンベアの搬送方向前端部から粉塊混合物を落下させるとともに、ベルトコンベアの下方で且つその搬送方向と直交する方向に試料採取用バケットを往復移動させ、落下する粉塊混合物から試料採取用バケット内に往路及び復路ともに試料を採取することを特徴とする試料採取方法。
【請求項2】
前記試料採取用バケットは往復移動を繰り返し、ベルトコンベアの幅方向両端よりも外側で且つ往復移動の折り返し点又はその付近で試料採取用バケット内の試料を排出することを特徴とする、請求項1に記載の試料採取方法。
【請求項3】
ベルトコンベアによって搬送される粉塊混合物から試料を採取する装置であって、ベルトコンベアの搬送方向前端部下方にベルトコンベアの搬送方向と直交する方向に設置された駆動用ベルトと、駆動用ベルトに固定された試料採取用バケットと、駆動用ベルトを駆動する正回転と逆回転が可能なモーターとを備え、試料採取用バケットがモーターの正逆回転に伴って駆動用ベルトとともに往復移動し、落下する粉塊混合物から試料採取用バケット内に往路及び復路ともに試料を採取することを特徴とする試料採取装置。
【請求項4】
前記試料採取用バケットはベルトコンベアの幅方向両端よりも外側で折り返し、折り返し点又はその付近で試料採取用バケット内から試料を排出することを特徴とする、請求項3に記載の試料採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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