説明

粉末スリミの製造方法

【課題】食品製造において、その作業効率を向上させ、製造される食品の品質のばらつきを少なくできる粉末スリミの製造方法を提供する。
【解決手段】食品の原料として用いられる粉末スリミの製造方法であって、魚肉スリミを冷凍して製造された冷凍スリミを削り小片状にする冷凍スリミ削り工程S8と、小片状の冷凍スリミに食塩を添加する食塩添加工程S9と、食塩が添加された冷凍スリミを撹拌・混合して調味スリミとする撹拌・混合工程S10と、調味スリミを冷凍して冷凍調味スリミとする冷凍工程S12と、冷凍調味スリミを凍結乾燥して乾燥スリミとする凍結乾燥工程S13と、乾燥スリミを粉砕して粉末スリミとする粉砕工程S14とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、特に練製品の原料として用いられる冷凍スリミを粉末状にした粉末スリミの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、練製品を製造する際には、原料として冷凍スリミを用いるのが一般的である。そして、例えば、特許文献1に記載されているように、練製品は、以下のようにして製造されている。まず、図4に示すように、冷凍スリミの塊を大まかに粗砕し(粗砕工程S101)、さらにこれを細砕した(細砕工程S102)後に、昇温、解凍する(昇温・解凍工程S103)。次に、解凍されたスリミに食塩、調味料、澱粉、水等を加えて(食塩等添加工程S104)、これを撹拌・混合して調味スリミとする(撹拌・混合工程S105)。さらに、この調味スリミをあらかじめ定められた形状に成型し(成型工程S106)、加熱(加熱工程S107)、冷却(冷却工程S108)、包装(包装工程S109)して練製品を得る。
なお、冷凍スリミとは、原魚から採肉して、水晒し、脱水、裏漉した後に、砂糖等を加えて混ぜ合わせ、これを急速冷凍することによって製造されるものをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−37741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図4に示すように、冷凍スリミを用いた練製品の製造においては、冷凍スリミを解凍する作業が必要であり、その解凍作業には時間がかかり、温度管理も必要となるため、作業効率が低下するという問題がある。また、冷凍スリミを用いた練製品では、原魚の状態により冷凍スリミの魚肉の質が大きく変化するため、製造された練製品の品質がばらつくという問題がある。
【0005】
また、特に冷凍スリミを用いた練製品では、製造メーカの製造規格によって一律に製造されたものであるため、顧客が、好みに合った特性、例えば、硬さを持った練製品を選択することができないという問題がある。その上、顧客は、製造直後の練製品を食することができないため、魚の良質な蛋白質を十分摂取できないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その目的は、食品製造において、その作業効率を向上させ、製造される食品の品質のばらつきを少なくできる粉末スリミの製造方法を提供することにある。
【0007】
加えて、練製品製造において、製造される練製品の特性を顧客の好みに合ったものにでき、しかも、良質な蛋白質を十分摂取できる練製品を製造できる粉末スリミの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る食品の原料として用いられる粉末スリミの製造方法は、魚肉スリミを冷凍して製造された冷凍スリミを削り小片状にする冷凍スリミ削り工程と、小片状の前記冷凍スリミに食塩を添加する食塩添加工程と、食塩が添加された前記冷凍スリミを撹拌・混合して調味スリミとする撹拌・混合工程と、前記調味スリミを冷凍して冷凍調味スリミとする冷凍工程と、前記冷凍調味スリミを凍結乾燥して乾燥スリミとする凍結乾燥工程と、前記乾燥スリミを粉砕して粉末スリミとする粉砕工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
前記手順によれば、製造される粉末スリミが粉末状態であるため、その粉末スリミを用いて食品を製造する際、従来行っていた冷凍スリミの解凍作業を行う必要がない。また、冷凍スリミ削り工程および撹拌・混合工程によって、小片状の冷凍スリミが混合されるため、冷凍スリミ(魚肉スリミ)の魚肉の質を平均化することができる。そして、冷凍工程によって、小片化され食塩が添加された冷凍スリミが再度冷凍されるため、冷凍スリミに含まれるミオシンが食塩によって活性化、すなわち、冷凍スリミが部分的にゲル化することが抑制され、魚肉の質の平均化状態が維持される。次に、凍結乾燥工程および粉砕工程によって、魚肉の質が平均化した冷凍スリミが凍結乾燥、粉砕され粉末状態(粉末スリミ)となるため、魚肉の質はさらに平均化される。その結果、その粉末スリミを用いて製造される食品の品質のばらつきが抑制される。
【0010】
加えて、練製品を製造する際、顧客サイドで粉末スリミに加水、撹拌・混合、成型、加熱工程を行うことによって、簡単に練製品を製造できる。その結果、顧客が製造直後の新鮮な練製品を食することができる。しかも、加水量等の調整を顧客が行うため、製造される練製品の特性、例えば、硬さが顧客の好みに合ったものとなる。
【0011】
本発明に係る粉末スリミの製造方法は、前記製造方法において、前記冷凍工程で製造された冷凍調味スリミの厚さが、4cm以下であることを特徴とする。
【0012】
前記手順によれば、冷凍調味スリミの厚さが所定値以下であるため、凍結乾燥工程において、冷凍調味スリミの冷凍状態が維持され、冷凍調味スリミに含有されるミオシンの食塩による活性化が抑制され、凍結乾燥状態が良好なものとなる。その結果、粉末スリミを用いて製造される食品の品質のばらつきが抑制される。
【0013】
加えて、練製品を製造する際、粉末スリミに加水、撹拌・混合工程を行うことによってはじめてミオシンが食塩によって活性化する。その結果、粉末スリミの水との混合がしやすくなり、均一な粘性物が製造され、その粘性物から製造される練製品の品質のばらつきが抑制される。
【0014】
本発明に係る粉末スリミの製造方法は、前記粉砕工程で製造された粉末スリミの粒径が500μm以下であることを特徴とする。
【0015】
前記手順によれば、粉末スリミの粒径が所定範囲であるため、食品の製造の際に、副原料と混合しやすくなる。その結果、粉末スリミを用いて製造される食品の品質のばらつきが抑制される。
【0016】
加えて、練製品を製造する際、撹拌・混合工程において、水との混合がしやすく、粉末スリミのだまが形成されにくい。その結果、均一な粘性物が製造され、その粘性物から製造される練製品の品質のばらつきが抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る粉末スリミの製造方法によれば、食品製造において、その作業効率を向上させ、製造される食品の品質のばらつきを少なくできる粉末スリミが製造される。加えて、練製品製造において、製造される練製品の特性を顧客の好みに合ったものにでき、しかも、良質な蛋白質を十分摂取できる練製品を製造できる粉末スリミが製造される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】冷凍スリミの製造方法を示す工程フローである。
【図2】本発明に係る粉末スリミの製造方法を示す工程フローである。
【図3】本発明に係る粉末スリミを用いて練製品を製造する際の工程フローである。
【図4】従来の冷凍スリミを用いて練製品を製造する際の工程フローである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る粉末スリミの製造方法について図面を参照して説明する。
本発明に係る製造方法は、食品の原料として用いられる粉末スリミを製造する方法(粉末スリミ製造工程SB(S8〜S14)、図2参照)であって、魚肉スリミを冷凍して製造された冷凍スリミを原料として用いるものである。
ここで、食品とは、蒲鉾等の練製品、魚肉成分を含有する製品(粉末製品、ケーキまたは医療食)等が挙げられ、特に練製品に好適に用いられる。
【0020】
まず、粉末スリミ製造工程SB(具体的には粉末スリミ削り工程S8)の原料として用いられる冷凍スリミの製造方法について説明する。
冷凍スリミは、図1に示すように、採肉工程S1と、水晒し工程S2と、脱水工程S3と、裏漉し工程S4と、細肉化工程S6と、冷凍工程S7とを含む製造方法(冷凍スリミ製造工程SA)で製造される。また、必要に応じて、細肉化工程S6の前に添加物混入工程S5が行われる。
【0021】
採肉工程S1は、原魚から、頭、内臓、骨、皮を除去して魚肉を採取する工程である。このとき、水洗しながら除去作業を行ってもよい。原魚としては、従来使用されて来た物であれば全て使用できるが、スケソーダラ、タイ、アジ、シイラ等が好適に用いられる。
【0022】
水晒し工程S2は、前記工程S1で採取された魚肉を水に晒し、脂分、水溶性蛋白を洗い流す工程である。脂分、水溶性蛋白質が除去されることによって、食品、例えば、練製品を製造する際に(図3参照)、粘性物に十分な粘り(硬さ)を出すことができ、成型工程S18における成型作業がしやすくなる。
【0023】
脱水工程S3は、前記工程S2で水に晒した魚肉の余分な水分を、スクリュープレス等を用いて除去する工程である。水分量82質量%以下まで水分を除去することが好ましい。水分量が82質量%を超えていると、次工程(冷凍工程)S7において冷凍が不十分なものが発生しやすくなる。
【0024】
裏漉し工程S4は、前記工程S3で水分が除去された魚肉から、ふるい等で狭雑物を除去する工程である。ふるい等のメッシュは、冷凍スリミを用いて製造される食品によって異なるが、一般的に、1mm程度メッシュのものが用いられる。
【0025】
添加物混入工程S5は、前記工程S4で狭雑物が除去された魚肉に、ショ糖、ソルビット、トレハロース、リン酸塩等の冷凍変性防止剤を、必要に応じて、適量混入する工程である。
【0026】
細肉化工程S6は、前記工程S4またはS5で狭雑物が除去された魚肉(必要に応じて冷凍変性防止剤が混入された魚肉)を、ボールカッター等を用いて細切り(ミンチがけ)しながら、粘りがでるまで練り込み、魚肉スリミとする工程である。
【0027】
冷凍工程S7は、前記工程S6で製造された魚肉スリミを、容器である冷凍パンに所定量(例えば、容量:10kg)とり、冷凍機で冷凍して冷凍スリミ(例えば、厚さ5.5cmの冷凍スリミ)とする工程である。冷凍条件としては、−28〜−30℃が好適に用いられ、冷凍スリミ中の氷の粒を均一化するために急速冷凍することが好ましい。
【0028】
<粉末スリミの製造方法>
図2に示すように、本発明に係る粉末スリミの製造方法は、冷凍スリミ削り工程S8と、食塩添加工程S9と、撹拌・混合工程S10と、冷凍工程S12と、凍結乾燥工程S13と、粉砕工程S14とを含むものである。また、必要に応じて、冷凍工程S12の前に副原料混合工程S11をさらに含み、また、粉砕工程S14の後に包装工程S15をさらに含むものである。以下、各工程について説明する。
【0029】
(冷凍スリミ削り工程S8)
冷凍スリミ削り工程S8は、前記冷凍スリミ製造工程SA(S1〜S7、図1参照)で魚肉スリミを冷凍して製造された冷凍スリミを、スライサー等を用いて削り、所定サイズの小片状にする工程である。ここで、所定サイズとは、例えば、1〜300mm(長さ)×1〜50mm(幅)×1〜6mm(厚さ)のものをいう。
【0030】
冷凍スリミは、−28〜−30℃で保管され、保管期間が2年以内のものが好ましい。また、冷凍スリミは、スライサー等を用いて削る前に、冷凍温度を前記温度(−28〜−30℃)から−4〜−8℃にまでゆるめることが好ましい。−4〜−8℃の冷凍スリミを用いることよって、スライサー等での削り作業が効率よく行われる。なお、冷凍スリミは、魚肉スリミを冷凍して製造されたものであれば、前記冷凍スリミ製造工程SAで製造されたものに限定されない。
【0031】
(食塩添加工程S9)
食塩添加工程S9は、前記工程S8で小片状にされた冷凍スリミに食塩を添加する工程である。具体的には、次工程(撹拌・混合工程S10)で用いられるボールカッター等に、小片状になった冷凍スリミと共に投入する。また、食塩と共に、水または氷を添加(投入)してもよい。
【0032】
食塩の添加量は、冷凍スリミ(魚肉スリミ)の質に時期によって変化があるため一定にすることがむずかしいが、次工程S10で製造される調味スリミ(塩ズリスリミ)での塩分濃度が1.0〜2.5質量%(好ましくは1.1〜1.2質量%)となるように、適量を添加することが好ましい。また、水または氷の添加量も、食塩と同様に、調味スリミ(塩ズリスリミ)の水分濃度が85〜90質量%(好ましくは86〜88質量%)となるように、適量を添加することが好ましい。
【0033】
塩分濃度が1.0質量%未満であると、食品、例えば、練製品を製造する際に(図3参照)、撹拌・混合工程S17において粘性物の粘りが弱く(硬さが柔らかく)なり、成型工程S18での成型作業がしにくくなる。また、塩分濃度が2.5質量%を超えると、粘性物の粘りが強く(硬さが硬く)なり、成型工程S18で成型不良(ヒビ割れ等)が発生しやすくなる。同時に食品としての塩分許容を過ぎてしまう。
【0034】
水分濃度が85質量%未満であると、次工程(冷凍工程)S12において冷凍作業に時間がかかり作業効率が低下しやすくなる。また、水分濃度が90質量%を超えると、冷凍工程S12において氷の粒が均一になりにくくなる。
【0035】
(撹拌・混合工程S10)
撹拌・混合工程S10は、前記工程S9で食塩が添加された冷凍スリミを、ボールカッター等で撹拌・混合して調味スリミである塩ズリスリミとする工程である。そして、撹拌・混合速度は1600回転/分以上(例えば、3000回転/分)であることが好ましい。撹拌・混合速度が1600回転/分未満であると塩ズリスリミのなめらかさが低下しやすい。また、撹拌・混合温度は6℃以下(例えば、0℃)であることが好ましい。撹拌・混合温度が6℃を超えると、塩ズリスリミに含有されるミオシンが食塩によって活性化され、塩ズリスリミの粘性が増加(ゲル化)して、撹拌・混合作業がしにくくなる。さらに、塩ズリスリミの酸化を防止するために、撹拌・混合作業は真空状態で行うことが好ましい。なお、前記したように、製造される塩ズリスリミは、塩分濃度が1.0〜2.5質量%、水分濃度が85〜90質量%であることが好ましい。また、さらに好ましくは、塩分濃度が1.1〜1.2質量%、水分濃度が86〜88質量%である。
【0036】
前記したように、冷凍スリミ削り工程S8および撹拌・混合工程S10によって、小片状の冷凍スリミが混合されるため、冷凍スリミの魚肉の質が原魚の状態によってばらついていても、冷凍スリミの魚肉の質が平均化される。
【0037】
(副原料混合工程S11)
副原料混合工程S11は、必要に応じて、前記工程S10で製造された調味スリミ(塩ズリスリミ)に、澱粉、調味料、水または氷等の副原料を混合する工程である。具体的には、ボールカッター中の塩ズリスリミに所定量の副原料を投入する。副原料を混合することによって、塩ズリスリミの粘度(硬さ)、味が調整される。また、副原料の混合量は、製造される食品によって異なるが、例えば、澱粉は2.0〜20.0質量%、調味料は0.03〜0.3質量%、水または氷は86〜88質量%が好ましい。
なお、本発明においては、撹拌・混合工程S10で製造された塩ズリスリミと、副原料混合工程S11において塩ズリスリミに副原料を混合して製造されたものの両者を調理スリミと称する。
【0038】
(冷凍工程S12)
冷凍工程S12は、前記工程S10、S11で製造された調味スリミを、所定サイズの容器である冷凍パンに投入し、冷凍機で冷凍して冷凍調味スリミとする工程である。冷凍条件は、冷凍調味スリミ中の氷の粒を均一化するために、−40〜−50℃で急速冷凍することが好ましい。また、このように調味スリミを冷凍することによって、調味スリミ(冷凍スリミ)に含まれるミオシンが食塩によって活性化、すなわち、冷凍スリミが部分的にゲル化することが抑制されるため、魚肉の質の平均化状態が維持される。
【0039】
製造される冷凍調味スリミは、その厚さを4cm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは1〜3cm、最適には1〜2cmである。厚さの調整は、冷凍パンのサイズを調整することによって行う。厚さが4cmを超えると、次工程(凍結乾燥工程)S13において、冷凍調味スリミの冷凍状態を維持することがむずかしく、冷凍調味スリミに含有されるミオシンが食塩によって活性化され、冷凍調味スリミの部分的なゲル化がはじまり、乾燥状態が不十分なものが生じやすくなる。なお、厚さが1cm未満であると、量産がむずかしく、製造コストが高くなる。
【0040】
(凍結乾燥工程S13)
凍結乾燥工程S13は、前記工程S12で製造された冷凍調味スリミを、凍結乾燥機を用いて凍結乾燥して乾燥スリミとする工程である。凍結乾燥条件は、冷凍調味スリミの厚さによって適宜選択され、冷凍調味スリミが凍結乾燥できれば特に限定されるものではないが、冷凍調味スリミの厚さが1〜4cmの場合には、圧力:0.1〜0.5mb(ミリバール)、コールドトラップ温度:−35〜−50℃、処理時間:22〜24時間で行う。
【0041】
(粉砕工程S14)
粉砕工程S14は、前記工程S13で製造された乾燥スリミを、粉砕機を用いて所定サイズに粉砕して粉末スリミとする工程である。
【0042】
製造される粉末スリミの粒径は、500μm以下が好ましい。なお、粒径の測定は、JISで定められたふるいを用いて行う。粒径:500μmは、サイズ:40メッシュのふるいを通過するものに相当する(40メッシュパス)。粉末スリミの粒径が500μmを超えると、食品の製造の際に、副原料と混合しにくくなる。例えば、練製品を製造する際(図3参照)の撹拌・混合工程S17において、水との混合がしにくくなり、粉末スリミのだまが形成されやすくなる。その結果、粘性物の均一性が保てず、粘性物から製造される練製品の品質がばらつきやすくなる。
【0043】
前記したように、凍結乾燥工程S13および粉砕工程S14によって、魚肉の質が平均化した冷凍スリミ(冷凍調味スリミ)を凍結乾燥、粉砕して粉末状態とするため、魚肉の質はさらに平均化される。
【0044】
(包装工程S15)
包装工程S15は、前記工程S14で製造された粉末スリミを、従来公知の包装形態で包装する工程である。包装形態は、粉末スリミが包装できれば特に限定されないが、防湿性の観点から、防湿性に優れたアルミニウムシートによるピール包装が好適に用いられる。また、食品の製造を連続して行う場合には(図3参照)、包装工程S15を行わなくてもよい。
【0045】
次に、粉末スリミの使用方法、すなわち、粉末スリミを用いて食品を製造する製造方法について、練製品を例にとって説明する。練製品は、図3に示すように、加水工程S16と、撹拌・混合工程S17と、成型工程S18と、加熱工程S19と、冷却工程S20とを含む製造方法で製造される。そして、各工程S16〜S20は、顧客サイドで行われるものである。
【0046】
加水工程S16は、粉末スリミに所定量の水を加える工程である。このように、顧客サイドで粉末スリミに水を加えるため、顧客サイドで加水量を調整でき、顧客の好みに合った練製品を製造できる。
ここで、粉末スリミは、前記粉末スリミ製造工程SB(S8〜S14、図2参照)において冷凍スリミから製造されたものである。また、冷凍スリミは、前記冷凍スリミ製造工程SA(S1〜S7、図1参照)で製造されたものである。
【0047】
加水量は、粉末スリミ:100重量部に対して、水:150〜500重量部を加えることが好ましい(250〜400重量部がさらに好ましい)。水が150重量部未満であると、加水量が少なく、次工程(撹拌・混合工程)S17において粉末スリミのだまが生じやすく、均一な粘性物が得られにくくなる。また、水が500重量部を超えると、加水量が多く、撹拌・混合工程S17で製造される粘性物の粘りが弱く(硬さが柔らかく)、次工程(成型工程)S18における成型作業がしにくくなる。
【0048】
撹拌・混合工程S17は、加水された粉末スリミを、撹拌・混合して均一な粘性物を得る工程である。撹拌・混合手段としては、顧客サイドで手軽に準備できるマドラー等を用いて行う。
【0049】
成型工程S18は、粘性物の所定量(例えば、100g)を、所定形状の容器に充填する。容器は、顧客サイドで手軽に準備できる耐熱容器や紙製トレー等を用いる。
【0050】
加熱工程S19は、粘性物を加熱して、粘性物の水分を除去すると共に、粘性物を固化させる工程である。加熱方法としては、蒸す、焼く、揚げる、煮る等がある。すなわち、粘性物の蛋白質に65℃以上の熱をかけて、熱変成させ、粘性物を固めれば良いのである。例えば、蒸す場合はセイロに粘性物を容器と共に入れて約30分蒸し上げる。焼く場合は鉄板等の上に粘性物をのばしてコテで押さえながら焼く。揚げる場合は170℃〜180℃の油中に粘性物を入れて2分間揚げる。煮る場合はなべ物等の中に粘性物を入れて煮る。また、電子レンジでの加熱も用いることができ、例えば、粘性物100gを容器と共に500Wの電子レンジに入れ、40〜60秒間加熱する。
【0051】
冷却工程S20は、固化した粘性物を、必要に応じて容器から取り出し、冷却することによって練製品とする工程である。冷却方法としては、粘性物が冷却できれば特に限定されないが、自然放置等が好ましい。
【0052】
このように、顧客サイドで練製品を製造することができるため、顧客は新鮮な状態、すなわち、練製品に含まれる蛋白質の変性が少ない状態の練製品を食することができる。その結果、顧客は、練製品に含まれる良質な蛋白質を十分に摂取できる。
【0053】
また、粉末スリミを用いて魚肉成分を含有する製品(粉末製品、ケーキまたは医療食)を製造する場合についても、練製品の場合と同様に、所定の副原料に所定量の粉末スリミを混合することによって、製造作業効率が向上した、しかも、品質のばらつきが少ない魚肉成分を含有する製品(粉末製品、ケーキまたは医療食)を製造することができる。
【符号の説明】
【0054】
S8 冷凍スリミ削り工程
S9 食塩添加工程
S10 撹拌・混合工程
S12 冷凍工程
S13 凍結乾燥工程
S14 粉砕工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の原料として用いられる粉末スリミの製造方法であって、
魚肉スリミを冷凍して製造された冷凍スリミを削り小片状にする冷凍スリミ削り工程と、
小片状の前記冷凍スリミに食塩を添加する食塩添加工程と、
食塩が添加された前記冷凍スリミを撹拌・混合して調味スリミとする撹拌・混合工程と、
前記調味スリミを冷凍して冷凍調味スリミとする冷凍工程と、
前記冷凍調味スリミを凍結乾燥して乾燥スリミとする凍結乾燥工程と、
前記乾燥スリミを粉砕して粉末スリミとする粉砕工程とを含むことを特徴とする粉末スリミの製造方法。
【請求項2】
前記冷凍工程で製造された冷凍調味スリミの厚さが、4cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粉末スリミの製造方法。
【請求項3】
前記粉砕工程で製造された粉末スリミの粒径が500μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉末スリミの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−273590(P2010−273590A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128304(P2009−128304)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(595127687)株式会社土佐蒲鉾 (1)
【出願人】(391019049)宮坂醸造株式会社 (8)
【Fターム(参考)】