説明

粉末成形方法および粉末成形装置

【課題】 生産性に優れた粉末成形方法およびその方法をコンパクトな構成で容易に実施できる粉末成形装置を提供する。
【解決手段】 粉末成形方法は、金属粉末14を金型13に充填する工程と、金属粉末14に衝撃力を印加することによって、成形体を形成する工程とを備える。成形体を形成する工程は、放電により水11中で衝撃波を発生させ、その衝撃波を水11を介して金属粉末14に作用させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、粉末成形方法および粉末成形装置に関し、より特定的には、水中放電により発生する衝撃波を利用した粉末成形方法および粉末成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量でリサイクル性に優れた材料として、マグネシウム合金が知られている。しかし、マグネシウムは、溶解すると酸素と激しく反応するため、溶解技術による合金開発が困難である。そこで、下記の非特許文献1には、高圧バルク通電焼結と呼ぶ、アモルファス合金粉末から成形体を得る方法が開示されている。その開示された方法によれば、マグネシウムを主成分とするアモルファス合金粉末を超硬合金製の型につめ、通電により200℃に加熱しながら、500MPaの圧力を付与する。
【非特許文献1】小林慶三,「高耐食性・高強度のスーパーマグネシウムを開発」,AIST Today(産総研広報誌),独立行政法人産業技術総合研究所,2002年9月,Vol.2,No.9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的な粉末成形の工程では、金属粉末にバインダーとなる樹脂を添加したり、粉末粒子間を結合させるため、成形工程の後に高温下の熱処理を実施したりしている。しかし、これらの工程は、成形体に要求される磁気的特性を劣化させたり、工程増加により生産性を損なわせたりしている。
【0004】
また、非特許文献1に開示された上述の高圧バルク通電焼結では、500MPa(5000気圧)という圧力でアモルファス合金粉末を加圧成形している。しかし、このような高圧力を発生させようとすると、装置が大掛かりになるため、大量生産には不向きである。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、生産性に優れた粉末成形方法およびその方法をコンパクトな構成で容易に実施できる粉末成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った粉末成形方法は、金属粉末を型に充填する工程と、金属粉末に衝撃力を印加することによって、成形体を形成する工程とを備える。なお、衝撃力とは、1/1000s以内の短時間で作用する力をさす。
【0007】
このように構成された粉末成形方法によれば、金属粉末に衝撃力を印加することによって、金属粉末同士が激しく擦れ合い、高い摩擦熱が発生する。その摩擦熱により、金属粉末間の粒界が瞬間的に溶解し、再び温度が下がることによって金属粉末同士が固着する。このように本発明では、衝撃力のエネルギーを熱エネルギーに変換させ、その熱エネルギーにより金属粉末同士を固着させて成形体を形成する。このため、生産性に優れた粉末成形方法を実現することができる。
【0008】
また好ましくは、金属粉末は、2以上の金属から構成された金属粉末である。なお、ここで言う金属粉末は、それぞれが異なる金属から形成された2以上の金属粉末の混合粉末であっても良いし、2以上の金属からなる合金粉末であっても良い。このように構成された粉末成形方法によれば、金属粉末から合金の成形体を得ることができる。
【0009】
また好ましくは、成形体を形成する工程は、放電により媒体中で衝撃波を発生させ、その衝撃波を媒体を介して金属粉末に作用させる工程を含む。このように構成された粉末成形方法によれば、放電による衝撃波を利用しているため、より大きな衝撃力を、コンパクトな構成で容易に金属粉末に印加させることができる。
【0010】
また好ましくは、粉末成形方法は、成形体を形成する工程の前に、金属粉末を加熱する工程をさらに備える。また好ましくは、成形体を形成する工程は、金属粉末を加熱しつつ、金属粉末に衝撃力を印加する工程を含む。このように構成された粉末成形方法によれば、予めまたは成形と同時に、金属粉末を加熱することにより、成形時に金属粉末同士の固着を促進させることができる。
【0011】
この発明に従った粉末成形装置は、処理容器と、処理容器を満たす媒体と、媒体中に配置された放電可能な電極と、金属粉末が充填される型とを備える。電極における放電により媒体中で発生した衝撃波が、媒体を介して金属粉末に作用する。
【0012】
このように構成された粉末成形装置によれば、媒体中では、比較的簡単に大きな衝撃波を発生させることができるため、本発明による粉末成形方法をコンパクトな構成で容易に実施することができる。
【0013】
また、型は、媒体中に配置されている。好ましくは、型には、型に充填された金属粉末と媒体とを隔てる隔膜が設けられている。このように構成された粉末成形装置によれば、隔膜を設けることによって、金属粉末が媒体に浸ることを防止できる。これにより、所望の状態で粉末成形を行なうことができる。また、衝撃波は、電極から媒体中を伝わって金属粉末に到達するため、粉末成形を安全に行なうことができる。
【0014】
また好ましくは、粉末成形装置は、媒体と金型との間に配置され、媒体および型に充填された金属粉末に接触する衝撃波収束部をさらに備える。このように構成された粉末成形装置によれば、電極の周りで発生した衝撃波を、媒体および衝撃波収束部を介して金属粉末に伝える。このため、金型を処理容器の外に配置することができる。これにより、金型に充填される金属粉末が媒体に浸るということがなく、大量生産に適した構成を得ることができる。
【0015】
また好ましくは、電極は、中心軸に沿って延在し、外周面を有する中心導電体と、中心導電体の外周面上に配置された絶縁部材と、絶縁部材を囲むように配置された外周導電体とを含む。外周導電体は、中心軸の延びる方向において互いに間隔を隔てて配置された複数の外周導電体部分を有する。
【0016】
このように構成された粉末成形装置によれば、電極にエネルギーを供給したときに、複数の外周導電体部分の間で放電を発生させることができ、また、電極の先端部において中心導電体と外周導電体との間においても放電を発生させることができる(つまり、一度に複数の放電を発生させることができる)。このように放電が起きる個所の数を増やすことにより、電極に投入する電流値を一定にした場合において、放電抵抗を増加させることができる。ここで、放電による衝撃波となって金属粉末の成形に利用されるエネルギーは、放電抵抗に比例する。したがって、成形に利用されるエネルギーを増大させ、成形能力の大きい粉末成形装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、この発明に従えば、生産性に優れた粉末成形方法およびその方法をコンパクトな構成で容易に実施できる粉末成形装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する図面では、同一またはそれに相当する部材には同じ参照番号が付されている。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における粉末成形装置を示す模式図である。図1を参照して、粉末成形装置10は、処理容器2と、処理容器2の内部に挿入された同軸電極1と、同軸電極1に電力を供給するパルスパワー源6と、パルスパワー源6に電気的に接続されたコントローラ30とを備える。処理容器2の内部には、同軸電極1の先端部を浸すように水11が配置されている。
【0020】
処理容器2は、たとえば、ステンレス鋼から形成されている。処理容器2の底壁上には、水11に浸漬された状態で金型13が配置されている。金型13には、上方に開口する加圧空間16が形成されており、その加圧空間16には、金属粉末14が充填されている。
【0021】
金属粉末14としては、たとえば、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)またはタングステン(W)などの粉末が挙げられる。また、金属粉末14は、合金粉末であっても良く、たとえば、鉄系合金の場合、鉄−シリコン(Si)系合金、鉄−窒素(N)系合金、鉄−ニッケル(Ni)系合金、鉄−炭素(C)系合金、鉄−ホウ素(B)系合金、鉄−コバルト(Co)系合金、鉄−リン(P)系合金、鉄−ニッケル(Ni)−コバルト系合金または鉄−アルミニウム−シリコン系合金などの粉末が挙げられる。また、金属粉末14は、複数種類の金属粉末の混合粉末であっても良く、たとえば、マグネシウムとアルミニウムとの混合粉末であっても良い。
【0022】
金型13の開口位置を塞ぐように、たとえば、アルミニウムから形成された厚みの薄い防水用金属板12が設けられている。この防水用金属板12により、金型13に充填された金属粉末14が水11に浸されることを防止している。このとき、金型13の開口位置をゴム板で覆って、金属粉末14の防水を行なっても良い。また、対象とする製品によっては、防水用金属板12を設けるかわりに、金型13の全体を包み込むようにビニール袋を設けても良い。この場合、1回しか利用できないが、金型13に充填された金属粉末14を確実に防水することができる。つまり、成形品が衝撃波の印加回数が1回で済むような形状を有する場合には、ビニール袋などの柔らかい物を用いて防水を行なっても良い。
【0023】
図2は、図1中の同軸電極の先端部を示す断面図である。図1および図2を参照して、同軸電極1は、円柱状の外観を有しており、図2に示すように、円柱状の中心電極20と、絶縁体21と、外周電極22とを備える。絶縁体21は、中心電極20の外周上であって、中心電極20を囲むように配置されている。外周電極22は、絶縁体21の外周上に、絶縁体21を囲むように配置されている。処理容器2の蓋部2mには、筒状の絶縁部材17が設けられている。同軸電極1は、その絶縁部材17に挿入された状態で、処理容器2内の所定位置に位置決めされている。
【0024】
同軸電極1には、その後端部に接続部15が配置されている。接続部15には、パルスパワー源6と同軸電極1とを電気的に接続するための同軸ケーブル5の一方端が接続されている。同軸ケーブル5の他方端は、パルスパワー源6の回路に接続されている。同軸電極1の中心電極20および外周電極22は、接続部15および同軸ケーブル5を介して、パルスパワー源6に接続されている。
【0025】
パルスパワー源6は、ギャップスイッチ7、コンデンサ8および電源9などを含む回路を備える。また、パルスパワー源6には、コンデンサ8への電源9の接続、切断、さらにギャップスイッチ7のON/OFFの制御、コンデンサ8へ電荷を供給する電源9の電圧の制御などを行なうためのコントローラ30が接続されている。なお、このコントローラ30は、パルスパワー源6と一体に配置されていても良いし、図示したように接続線を介してパルスパワー源6に接続することで、パルスパワー源6と別の場所に配置してもよい。
【0026】
この発明の実施の形態1における粉末成形装置10は、処理容器2と、処理容器2を満たす媒体としての水11と、水11中に配置された放電可能な電極としての同軸電極1と、金属粉末14が充填される型としての金型13とを備える。同軸電極1における放電により水11中で発生した衝撃波が水11を介して金属粉末14に作用する。
【0027】
なお、本実施の形態では、処理容器2を満たす媒体として水11を用いたが、本発明はこれに限定されず、たとえば、水のかわりに油を用いても良い。また、金型13には、ヒータが設けられていても良い。この場合、後に説明する粉末成形方法の工程において、金型13に充填された金属粉末14を加熱することができる。
【0028】
続いて、本実施の形態における粉末成形方法について説明を行なう。図3は、図1中の粉末成形装置を用いて実施する粉末成形方法の工程を示すフローチャートである。
【0029】
図1から図3を参照して、まず、金型13の加圧空間16に金属粉末14を充填する。(S10)。次に、金属粉末14が充填された金型13を、処理容器2の内部に設置する。金型13の開口部を防水用金属板12によって塞ぎ、処理容器2の内部に水11を注ぐ(S20)。次に、同軸電極1の先端部(放電が発生する部分)が水11に浸されるように、同軸電極1を処理容器2内の所定位置に設置する(S30)。なお、以上に説明したS10からS30の工程は、場合によっては互いに前後しても良く、たとえば、処理容器2の内部に金型13を設置した後、金属粉末14を金型13の加圧空間16に充填しても良い。また、処理容器2の内部に水11を注ぐ前に、同軸電極1を処理容器2内に設置しても良い。
【0030】
次に、同軸電極1へ投入するエネルギー値など、放電を発生させるための条件を調整する(S40)。この工程では、たとえば、コンデンサ8に電荷を蓄積するための充電電圧の設定値などを変更する。放電条件の設定が完了した後、コンデンサ8へ電源9を接続することにより、コンデンサ8に所定量の電荷を蓄積する。
【0031】
次に、パルスパワー源6のギャップスイッチ7を閉にして、コンデンサ8に蓄えられた電荷を同軸電極1に導入する(S50)。これにより、同軸電極1の先端部において、中心電極20の端部と外周電極22の端部との間で放電を発生させ、アークを形成する。この放電に起因する衝撃波が水11を介して金属粉末14へと伝わると、金属粉末14に衝撃力が加えられる。この衝撃力により、金属粉末14の粉末間で高い摩擦熱が発生し、粒界がその摩擦熱によって溶解する。結果、金属粉末14同士が固く結合して、成形体が形成される。
【0032】
この際、金型13に設けられたヒータに通電することで、金属粉末14を加熱しながら、衝撃波を作用させても良い。これにより、金属粉末14の粒界が溶解しやすくなるため、金属粉末14同士をより強固に結合させることができる。また、金型13に充填する前、予め金属粉末14に加熱を施しても良く、この場合にも同様の効果を得ることができる。
【0033】
なお、衝撃波は、減衰の速さが速いため、金型13に充填された金属粉末14の厚みが大きい場合には、一度の放電で、その厚み方向の全ての位置において粉末を結合させることは難しい。しかし、ひとたび粉末同士が結合すると、次の衝撃波が入射した際には、金属粉末14は、単に衝撃波を伝える媒体として機能する。このため、金属粉末14の厚みが比較的大きい場合には、上述のコンデンサ8に電荷を蓄積する工程と、その電荷を同軸電極1に導入する工程とを、繰り返し実施すれば良い。これにより、衝撃波を金属粉末14に作用させる度に、粉末同士が固着した部分の厚みを増大させていくことができる。
【0034】
次に、成形体を金型13から取り出す(S60)。具体的には、同軸電極1を処理容器2の内部から取り出し、さらに、処理容器2の内部から金型13を取り出す。最後に、その金型13から成形体を取り外すことで、金属粉末14からなる成形体を得ることができる。
【0035】
この発明の実施の形態1における粉末成形方法は、金属粉末14を金型13に充填する工程(S10)と、金属粉末14に衝撃力を印加することによって、成形体を形成する工程(S50)とを備える。粉末成形方法は、成形体を形成する工程(S50)の前に、金属粉末14が充填された金型13を、水11中に配置する工程(S20)をさらに備える。成形体を形成する工程(S50)は、放電により水11中で衝撃波を発生させ、その衝撃波を水11を介して金属粉末14に作用させる工程を含む。
【0036】
このように構成された粉末成形方法および粉末成形装置10によれば、同軸電極1の放電により発生した衝撃波を利用しているため、油圧ピストン等、機械的な手段を用いて成形を行なう場合と比較して、小型な装置で、容易に大きい成形圧力を得ることができる。また、水11中で発生した衝撃波は、そのまま水11中を伝わって金属粉末14に到達するため、成形工程を安全に実施することができる。
【0037】
また、金属粉末14に衝撃波を作用させると、粒界で瞬間的に溶解が生じ、金属粉末14同士を強固に結合させることができる。このため、本実施の形態では、金属粉末14に粉末間を接合するためのバインダーを添加しておらず、成形工程の後に、成形体に高温の熱処理も実施していない。このため、これらバインダーの添加や熱処理の実施により、磁気的特性などに挙げられる成形体の特性が劣化するということがない。
【0038】
なお、本実施の形態では、バインダーの添加や熱処理を実施しなかったが、本発明による粉末成形方法は、これらの工程を排除するものではなく、たとえば、成形工程の後に、歪み取りのための熱処理を行なっても良い。
【0039】
(実施の形態2)
図4は、この発明の実施の形態2における粉末成形装置を示す模式図である。図5は、図4中に示す同軸電極の模式断面図である。本実施の形態における粉末成形装置は、実施の形態1における粉末成形装置10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0040】
図4および図5を参照して、本実施の形態では、同軸電極1の外周電極22が複数の外周電極部分25aから25dにより構成されている。同軸電極1の先端部には、図5からも分かるように中心電極20と電気的に接続された先端電極部分26が配置されている。先端電極部分26および外周電極部分25aから25dは、同軸電極1が延びる方向(中心電極20の中心軸方向)において、互いに間隙を隔てて配置されている。先端電極部分26および外周電極部分25aから25dの間の間隙では、絶縁体21の外周表面が露出した状態となっている。このような同軸電極1は、複数の間隙(ギャップ)を有するため、マルチギャッププローブとも呼ばれる。
【0041】
このように同軸電極1では複数のギャップが形成されているので、同軸電極1に電力を投入すると、当該複数のギャップにおいてそれぞれ放電が発生する。つまり、複数箇所でほぼ同時に放電を発生させることができるので、より効率的に放電に起因する衝撃波を形成できる。つまり、実施の形態1における粉末成形装置10の場合より、同軸電極1に投入されるエネルギーのうち、放電に用いられるエネルギーの割合(すなわち、衝撃波として金属粉末14の成形に寄与するエネルギーの割合)を高くすることができる。
【0042】
この発明の実施の形態2における粉末成形装置では、電極としての同軸電極1は、中心軸に沿って延在し、外周面を有する中心導電体としての中心電極20と、中心電極20の外周面上に配置された絶縁部材としての絶縁体21と、絶縁体21を囲むように配置された外周導電体としての外周電極22とを含む。外周電極22は、中心軸の延びる方向において互いに間隔を隔てて配置された複数の外周導電体部分としての外周電極部分25aから25dを有する。
【0043】
このように構成された粉末成形装置によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。加えて、放電が起きる個所の数を増やすことにより、同軸電極1に投入する電流値を一定にした場合において、成形に利用されるエネルギーを大きくできる。この結果、同軸電極1で発生した衝撃波による成形能力を増大させることができる。
【0044】
(実施の形態3)
図6は、この発明の実施の形態3における粉末成形装置を示す模式図である。本実施の形態における粉末成形装置は、実施の形態2における粉末成形装置と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0045】
図6を参照して、本実施の形態では、処理容器2の底面側から、アルミニウムから形成された衝撃波収束部32が接続されている。衝撃波収束部32は、処理容器2に満たされた水11に接触するように設けられている。衝撃波収束部32は、水11に接触する位置から離れるに従って、その離れる方向の直交方向に切断した時に得られる断面積が徐々に小さくなるように形成されている。衝撃波収束部32は、水11に接触する位置から離れるに従って収束するように傾斜する傾斜面を有する。
【0046】
金型13は、衝撃波収束部32を挟んで水11の反対側に位置するように、処理容器2の外部に設けられている。衝撃波収束部32と、金型13の加圧空間16に充填された金属粉末14とが、接触している。
【0047】
衝撃波収束部32を形成するアルミニウムの音響インピーダンスは、17×10(N・s/m)であり、水11の音響インピーダンスは、1.5×10(N・s/m)である。つまり、衝撃波収束部32は、水11の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有する。
【0048】
一般的に、所定の音響インピーダンスを有する媒体から、その所定の音響インピーダンスとは大きく異なる音響インピーダンスを有する媒体へと衝撃波が伝達すると、その境界面における衝撃波の透過率は小さくなる。このため、水11と金属粉末14との間に介在する衝撃波収束部32をアルミニウムから形成することによって、水11から金属粉末14に向けて伝わる衝撃波を効率良く金属粉末14に到達させることができる。なお、衝撃波収束部32を形成する材料として、6×10(N・s/m)の音響インピーダンスを有するウレタンを用いても良い。
【0049】
このように構成された粉末成形装置によれば、実施の形態1および2に記載の効果と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施の形態では、衝撃波収束部32が衝撃波を水11から金属粉末14に伝達する役割を果たすため、金型13を処理容器2の外部に配置することができる。これにより、金型13に防水を施したり、成形工程の完了ごとに金型13を水11中から取り出す必要がないため、大量生産に適した構成を得ることができる。
【0050】
(実施の形態4)
図7は、この発明の実施の形態4における粉末成形装置を示す模式図である。本実施の形態における粉末成形装置は、実施の形態3における粉末成形装置と比較して、基本的に同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
【0051】
図7を参照して、本実施の形態では、処理容器2と、処理容器2の底面側から接続された衝撃波収束部32とによって、回転楕円体形状の内部空間35が形成されている。内部空間35は、処理容器2および衝撃波収束部32の湾曲する内壁によって形成されている。内部空間35は、水11によって満たされている。
【0052】
このように構成された粉末成形装置によれば、実施の形態1から3に記載の効果と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施の形態では、同軸電極1の周りで発生した衝撃波が、内部空間35を形成する内壁に反射されながら金属粉末14に向けて進むため、衝撃波を効率良く金属粉末14に到達させることができる。
【0053】
なお、幅広の加圧空間16を有する金型13に金属粉末14を充填し、以上に説明した実施の形態1から4のいずれかに記載の粉末成形装置を用いて成形工程を実施すると、金属粉末14が成形されてなる板材を得ることができる。また、金属粉末同士の結合のみならず、板材と金属粉末との結合も可能である。
【0054】
図8は、板材と金属粉末との結合を説明するため、粉末成形装置の一部を拡大して示した断面図である。図8を参照して、板材41上に、枠状の金型13が配置されている。金型13の加圧空間16には、板材41の表面41aに接触するように金属粉末14が充填されている。金属粉末14を挟んで板材41の反対側には、衝撃波収束部32が金属粉末14に接触して設けられている。
【0055】
このような構成された粉末成形装置において、衝撃波を衝撃波収束部32に入射させると、その衝撃波が衝撃波収束部32内を伝わって金属粉末14に到達する。これにより、金属粉末14と板材41の表面41aとの界面にて反応が生じ、表面41aを覆うように金属粉末14の層を形成することができる。金属粉末14と板材41とは、同一材料から形成されていても良いし、異なる材料から形成されていても良い。金属粉末14と板材41との組み合わせとしては、溶接等による接合が困難な材料同士、たとえば、金属粉末14および板材41の双方が、マグネシウム合金から形成されている組み合わせが挙げられる。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の実施の形態1における粉末成形装置を示す模式図である。
【図2】図1中の同軸電極の先端部を示す断面図である。
【図3】図1中の粉末成形装置を用いて実施する粉末成形方法の工程を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2における粉末成形装置を示す模式図である。
【図5】図4中に示す同軸電極の模式断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3における粉末成形装置を示す模式図である。
【図7】この発明の実施の形態4における粉末成形装置を示す模式図である。
【図8】板材と金属粉末との結合を説明するため、粉末成形装置の一部を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 同軸電極、2 処理容器、10 粉末成形装置、11 水、12 防水用金属板、13 金型、14 金属粉末、20 中心電極、21 絶縁体、22 外周電極、25a,25b,25c,25d 外周電極部分、32 衝撃波収束部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末を型に充填する工程と、
前記金属粉末に衝撃力を印加することによって、成形体を形成する工程とを備える、粉末成形方法。
【請求項2】
前記金属粉末は、2以上の金属から構成された金属粉末である、請求項1に記載の粉末成形方法。
【請求項3】
前記成形体を形成する工程は、放電により媒体中で衝撃波を発生させ、その衝撃波を前記媒体を介して前記金属粉末に作用させる工程を含む、請求項1または2に記載の粉末成形方法。
【請求項4】
前記成形体を形成する工程の前に、前記金属粉末を加熱する工程をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の粉末成形方法。
【請求項5】
前記成形体を形成する工程は、前記金属粉末を加熱しつつ、前記金属粉末に衝撃力を印加する工程を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の粉末成形方法。
【請求項6】
処理容器と、
前記処理容器を満たす媒体と、
前記媒体中に配置された放電可能な電極と、
金属粉末が充填される型とを備え、
前記電極における放電により前記媒体中で発生した衝撃波が、前記媒体を介して前記金属粉末に作用する、粉末成形装置。
【請求項7】
前記型は、前記媒体中に配置されており、
前記型には、前記型に充填された金属粉末と前記媒体とを隔てる隔膜が設けられている、請求項6に記載の粉末成形装置。
【請求項8】
前記媒体と前記金型との間に配置され、前記媒体および前記型に充填された金属粉末に接触する衝撃波収束部をさらに備える、請求項6に記載の粉末成形装置。
【請求項9】
前記電極は、
中心軸に沿って延在し、外周面を有する中心導電体と、
前記中心導電体の外周面上に配置された絶縁部材と、
前記絶縁部材を囲むように配置された外周導電体とを含み、
前記外周導電体は、前記中心軸の延びる方向において互いに間隔を隔てて配置された複数の外周導電体部分を有する、請求項6から8のいずれか1項に記載の粉末成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−83413(P2006−83413A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267233(P2004−267233)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】