説明

粉末状又は顆粒状食品組成物

【課題】植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との複合体を含有することにより粉末又は顆粒の固結が防止される新規な粉末状又は顆粒状食品組成物を提供する。
【解決手段】植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との構成比が、卵黄リポ蛋白質1部に対して植物ステロール類5〜232部である複合体を、製品に対し0.01〜10%含有することを特徴とする粉末状又は顆粒状食品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物ステロール類を用いて、固結が防止された粉末状又は顆粒状食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末状又は顆粒状食品組成物は、空気中の水分を吸収して溶解すること等により固結するという問題がある。この問題は、吸湿性が高く固結しやすいエキス類や食塩等の調味料を含むふりかけ等の粉末状又は顆粒状食品組成物において顕著に表われ、商品価値を損ねるという問題があり、その改善が望まれている。
【0003】
そこで固結という問題を解決するために、二酸化ケイ素、デキストリンなどの乾燥状態にあって疎水性となる物質、いわゆる賦形剤を添加・混合する方法が知られている。また、油や親水性の乳化剤で表面コーティングする方法(特許文献1)などが知られている。
【0004】
上記のように粉末状又は顆粒状食品組成物の固結を防止する方法として様々な方法があるが、これらはいずれも生理活性物質を使用するものではない。生理活性物質で同様の効果を奏することが出来るならば、得られた粉末状又は顆粒状食品組成物は、当該粉末状又は顆粒状食品組成物の生理機能を併せ持つことが期待され一石二鳥である。
【0005】
そこで、本発明者らは、血中の総コレステロール濃度及び低密度リポ蛋白質−コレステロール濃度を低下させる機能を有することが知られている植物ステロール及び植物スタノール等の植物ステロール類に着目し検討を行なった。
【0006】
まず、単に植物ステロールのみを粉末状又は顆粒状食品組成物に用いて湿度の高い場所で長期間保存することを試みた。しかしながら、このように単に植物ステロールのみの配合では、ある程度固結が防止される傾向が見られるものの、十分に固結を抑制することができず満足できるものとは言い難いものであった。
【0007】
【特許文献1】特公昭55−50667号公報
【特許文献2】WO2005/041692
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、植物ステロール類を用いて、固結が防止された粉末状又は顆粒状食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、植物ステロールと卵黄リポ蛋白質との複合体を含有する粉末状又は顆粒状食品組成物は、意外にも固結が防止されることを見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との複合体を含有することを特徴とする粉末状又は顆粒状食品組成物、
(2)前記植物ステロール類と前記卵黄リポ蛋白質との構成比が、卵黄リポ蛋白質1部に対して植物ステロール類5〜232部である(1)記載の粉末状又は顆粒状食品組成物、
(3)前記複合体の含有量が、製品に対し0.01〜10%である(1)又は(2)記載の粉末状又は顆粒状食品組成物、
である。
【0011】
なお、本出願人は、既に植物ステロールと卵黄リポ蛋白質との複合体を出願しており(特許文献2)、前記複合体は以前から知られている。しかしながら、同文献には、植物ステロールと卵黄リポ蛋白質との複合体を粉末状又は顆粒状食品組成物に配合することにより、いわゆる固結という問題点が解決されるか否かについては全く示唆されていない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との複合体を配合することにより粉末又は顆粒の固結が生じ難いことから、より一層品位が向上し、粉末状又は顆粒状食品組成物の需要を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0014】
本発明の粉末状又は顆粒状食品組成物とは、食品原料を含み、常温で粉末状又は顆粒状の固体を呈していれば特に限定するものではないが、本発明によれば、固結が防止された粉末状又は顆粒状組成物が得られることから、抽出や分解により得られるエキス類や食塩等の吸湿性が高く固結しやすい調味料を含む粉末状又は顆粒状食品組成物において好適に実施できる。このような粉末状又は顆粒状食品組成物としては、例えば、ごま塩、ふりかけ、お茶漬けの素、チャーハンの素、から揚げ粉などが挙げられる。
【0015】
本発明の粉末状又は顆粒状食品組成物は、植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との複合体を含有することを特徴とする。前記構成を有する本発明の粉末状又は顆粒状食品組成物は固結が防止されたものとなる。これに対し後述の比較例に示すように、前記複合体を含まない場合や植物ステロール類をそのまま含む場合は、固結を十分に防止することができない。
【0016】
本発明の粉末状または顆粒状食品組成物に含有する植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との複合体のうち卵黄リポ蛋白質は、卵黄蛋白質と、親水部分及び疎水部分を有するリン脂質、並びにトリアシルグリセロール、コレステロール等の中性脂質とからなる複合体である。当該複合体は、蛋白質やリン脂質の親水部分を外側にし、疎水部分を内側にして、中性脂質を包んだ構造をしている。卵黄リポ蛋白質は、卵黄の主成分であって、卵黄固形分中の約80%を占める。したがって、本発明の卵黄リポ蛋白質としては、当該成分を主成分とした卵黄を用いるとよく、食用として一般的に用いている卵黄であれば特に限定するものではない。例えば、鶏卵を割卵し卵白液と分離して得られた生卵黄をはじめ、当該生卵黄に殺菌処理、冷凍処理、スプレードライ又はフリーズドライ等の乾燥処理、ホスフォリパーゼA、ホスフォリパーゼA、ホスフォリパーゼC、ホスフォリパーゼD又はプロテアーゼ等による酵素処理、酵母又はグルコースオキシダーゼ等による脱糖処理、超臨界二酸化炭素処理等の脱コレステロール処理、食塩若又は糖類等の混合処理等の1種又は2種以上の処理を施したもの等が挙げられる。また、本発明では、鶏卵を割卵して得られる全卵、あるいは卵黄と卵白とを任意の割合で混合したもの、あるいはこれらに上記処理を施したもの等を用いてもよい。
【0017】
一方、本発明の植物ステロール類とは、コレステロール又は当該飽和型であるコレスタノールに類似した構造をもつ植物に脂溶性画分より得られる植物ステロール又は植物スタノール、あるいはこれらの構成成分のことであり、植物ステロール類は、植物の脂溶性画分に合計で数%存在する。また、市販の植物ステロール又は植物スタノールは、融点が約140℃前後で、常温で固体であり、これらの主な構成成分としては、例えば、β−シトステロール、β−シトスタノール、スチグマステロール、スチグマスタノール、カンペステロール、カンペスタノール、ブラシカステロール、ブラシカスタノール等が挙げられる。また、植物スタノールについては、天然物の他、植物ステロールを水素添加により飽和させたものも使用することができる。なお、本発明において植物ステロール類は、いわゆる遊離体を主成分とするが、若干量のエステル体を含有していてもよい。
【0018】
本発明に用いる植物ステロール類は、市販されている粉体あるいはフレーク状のものを用いることができるが、平均粒子径が50μm以下、特に10μm以下の粉体を使用することが好ましい。平均粒子径が50μmを超える粉体あるいはフレーク状の植物ステロール類を用いる場合には、卵黄と攪拌混合して複合体を製造する際に、均質機(T.K.マイコロイダー:特殊機化工業社製等)を用いて植物ステロール類の粒子を小さくしつつ攪拌混合を行うことが好ましい。これにより、植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との複合体が形成され易くなる。
【0019】
本発明の食品に含有する植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との複合体は、上述した植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質を主成分とする卵黄とを、好ましくは10μm以下の粉体状の植物ステロール類と卵黄を水系中で攪拌混合することにより得られる。具体的には、工業的規模での攪拌混合し易さを考慮し、卵黄リポ蛋白質として、卵黄を水系媒体で適宜希釈した卵黄希釈液を使用し、当該卵黄希釈液と植物ステロール類とを攪拌混合して製造することが好ましい。前記水系媒体としては、水分が90%以上のものが好ましく、例えば、清水の他に液状調味料(例えば、醤油、だし汁)等が挙げられる。また、前記卵黄希釈液の濃度としては、その後、添加する植物ステロール類の配合量にもよるが、卵黄固形分として0.01〜50%の濃度が好ましく、攪拌混合時の温度は、常温(20℃)でもよいが、45〜55℃に加温しておくと複合体と攪拌混合し易く好ましい。攪拌混合は、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモゲナイザー、T.K.マイコロイダー(特殊機化工業社製)等の均質機を用いて、全体が均一になるまで行うとよい。また、上述の方法で得られたものは、複合体が水系媒体に分散したものであるが、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥処理を施して乾燥複合体としてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、複合体に他の原料を配合してもよい。
【0020】
本発明で用いる複合体は、当該原料である植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との構成比が、卵黄リポ蛋白質1部に対して植物ステロール類5〜232部であることが好ましく、当該構成比は、卵黄固形分中に卵黄リポ蛋白質は約8割存在するから、卵黄固形分1部に対して植物ステロール類4〜185部に相当する。後述で示すとおり水分散性を有する複合体は、卵黄リポ蛋白質1部に対して植物ステロール類が前記範囲で形成しているところ、植物ステロールが前記範囲より少ないと複合体を形成できなかった卵黄リポ蛋白質が残存し、一方、前記範囲より多いと水分散性を有した複合体が得られない。したがって、後述に示すとおり水分散性を有する複合体は、卵黄リポ蛋白質1部に対して植物ステロール類が前記範囲で形成していることから、植物ステロールが前記範囲より少ないと複合体を形成できなかった卵黄リポ蛋白質が残存して粉末状又は顆粒状食品組成物の風味が卵黄風味により損なわれる場合がある。一方、前記範囲より多いと植物ステロール類が水分酸性を有するを形成し難くなって本発明の効果が得られ難くなる。
【0021】
本発明の前記複合体の含有量は、固結を防止する効果がそれに比例して増大するわけではなく、粉末状又は顆粒状食品組成物の美味しさが損なわれる場合があることから、製品に対して乾物換算で0.01〜10%とすることが好ましく、0.1〜5%とすることがより好ましい。
【0022】
前記複合体を粉末状又は顆粒状食品組成物に含有させる方法として特に制限はなく、例えば、
1)前記複合体と、粉末状又は顆粒状食品組成物に含有する他の原料などとを粉体混合する方法、
2)前記複合体と粉末状又は顆粒状食品組成物に含有する他の原料などを水に分散或いは溶解させた液を噴霧乾燥し、粉末などにする方法、
3)前記複合体と粉末状又は顆粒状食品組成物に含有する他の原料などを混合し、流動層造粒乾燥機、或いは攪拌式混合・造粒機などで造粒する方法、
などが挙げられる。
【0023】
尚、本発明の粉末状又は顆粒状食品組成物には、所望により、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の固結防止剤、例えば、第三リン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウムまたはグルタミン酸マグネシウム、微粒二酸化ケイ素、デキストリン等を含有してもよい。また、食品添加物等として許容される他の成分、例えば酸化防止剤、着色料、pH調整剤、乳化剤、香料などを含有してもよい。
【0024】
以下、本発明の粉末状又は顆粒状食品組成物について、実施例、比較例及び試験例に基づき、具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0025】
[調製例1]:複合体の構成成分の解析及び複合体の植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との構成比
まず、卵黄液5g(卵黄固形分2.5g、卵黄固形分中の卵黄リポ蛋白質約2g)に清水95gを加え、攪拌機(日音医理科器機製作所社製、ヒスコトロン)で2000rpmで1分間攪拌して卵黄希釈液を調製した。次に5000rpmで攪拌しながら植物ステロール(遊離体97.8%、エステル体2.2%、平均粒子径約3μm)2.5gを添加し、さらに10000rpmで5分間攪拌し、植物ステロールと卵黄リポ蛋白質とから形成された複合体の分散液を得た(調製例1−1)。
【0026】
得られた分散液1gを取り、0.9%食塩水4gを加え、真空乾燥機(東京理科器械社製、VOS−450D)で真空度を10mmHgにして1分間脱気し、遠心分離器(国産遠心分離器社製、モデルH−108ND)で3000rpmで15分間遠心分離を行い、沈澱と上澄みとを分離した。この上澄みを0.45μmのフィルターで濾過し、さらに0.2μmのフィルターで濾過し、複合体と、複合体を形成していない植物ステロールとを除去した。
【0027】
この濾液の吸光度(O.D.)を、分光光度計(日立製作所製、U−2010)を用いて、0.9%食塩水を対照とし、280nm(蛋白質中の芳香環をもつアミノ酸の吸収)で測定し、濾液中の蛋白質の量を測定した。
【0028】
植物ステロールの添加量を表1のように変え、同様に吸光度を測定した(調製例1−2〜調製例1−8)。この結果を表1に示す。
【0029】
また、調製例1−1の濾液と、調製例1−6の濾液については、更に440nmの吸光度を測定した。ここで、440nmは、卵黄リポ蛋白質中に含まれる油溶性の色素(カロチン)の吸収波長である。この結果を表2に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
複合体の構成比が卵黄リポ蛋白質1部に対し植物ステロールが5部以下であると、表1より、植物ステロールの割合が増えるに伴い、濾液中の蛋白質あるいはアミノ酸の含量の指標となる280nmの吸光度が小さくなっており、蛋白質あるいはアミノ酸の含量が減少することが分かる。また、表2より、濾液中の油脂含量の指標となる440nmの吸光度において、調製例1−1の濾液は調製例1−6に比べ吸光度が優位に高く、油脂含量が明らかに多いことが分かる。一方、複合体の構成比が卵黄リポ蛋白質1部に対し植物ステロールが5部以上であると、表1より、濾液中の蛋白質あるいはアミノ酸の含量の指標となる280nmの吸光度は略一定を示し、表2より、濾液中の油脂含量の指標となる440nmの吸光度において、調製例1−6の濾液は調製例1−1に比べ吸光度が優位に低く、油脂含量が明らかに少ないことが分かる。
【0033】
以上の結果より、複合体の構成比が卵黄リポ蛋白質1部に対し植物ステロールが5部以上であるものの分散液には、複合体以外に、卵黄リポ蛋白質でない遊離の蛋白質あるいはアミノ酸が存在し、一方、複合体の構成比が卵黄リポ蛋白質1部に対し植物ステロールが5部より少ないものの分散液には、前記遊離の蛋白質あるいはアミノ酸に加え、複合体を形成しなかった卵黄リポ蛋白質が存在しているものと推定される。したがって、卵黄リポ蛋白質1部を余すことなく複合体の形成に使用するためには、植物ステロール類が5部以上必要であることが分かる。
【0034】
[調製例2]:複合体の植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との構成比
鶏卵を工業的に割卵して得られた卵黄液(固形分45%)と清水の量と植物ステロールの量を表3の通りに変更して、植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質の複合体の分散液を調製し、この分散液の分散性から、植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との好ましい構成比を検討した。
【0035】
すなわち、鶏卵を割卵して取り出した卵黄液(固形分45%)に清水を加え、攪拌機(日音医理科器機製作所社製、ヒスコトロン)で2000rpm、1分間攪拌して卵黄希釈液を調製した後、45℃に加温し、次に5000rpmで攪拌しながら植物ステロール(調製例1と同じもの)を除々に添加し、添加し終えたところで、さらに10000rpmで攪拌して植物ステロールと卵黄リポ蛋白質の複合体の分散液を得た。
【0036】
また、分散液の分散性に関しては、植物ステロールと卵黄リポ蛋白質の複合体の分散液0.5gを試験管(内径1.6cm、高さ17.5cm)にとり、0.9%食塩水10mLで希釈し、試験管ミキサー(IWAKI GLASS MODEL−TM−151)で10秒間撹拌することにより振盪し、その後1時間室温で静置し、さらに真空乾燥機(東京理化器械社製、VOS−450D)に入れ、真空度を10mmHg以下にして室温(20℃)で脱気を行い、脱気後に浮上物が見られない場合を○、浮上物が見られた場合を×と判定した。これらの結果を表3に示す。
【0037】
なお、植物ステロールを加熱溶解し、冷却し、比重の異なるエタノール液に浸けて浮き沈みによりその比重を求めたところ、0.98であったことから、上述の分散性の試験での浮上物は植物ステロールであると考えられる。
【0038】
【表3】



【0039】
表3より、複合体の構成比が卵黄リポ蛋白質1部に対し植物ステロールが232部以下であると、複合体に良好な水分散性を付与できることが分かる。
【0040】
調製例1及び調製例2の結果より、複合体が良好な水分散性を有し、しかも卵黄リポ蛋白質1部を余すことなく複合体の形成に使用するためには、複合体の構成比が卵黄リポ蛋白質1部に対して植物ステロール類5〜232部の範囲であることが分かる。
【0041】
[調製例3]
清水17.5kgに殺菌卵黄(固形分45%、キユーピー(株)製)0.5kgを加え、攪拌機(日音医理科器機製作所社製、ヒスコトロン)で2000rpm、1分間攪拌して卵黄希釈液を調製した後、50℃に加温し、次に5000rpmで攪拌及び真空度350mmHgで脱気しながら植物ステロール(調製例1と同じもの)2kgを除々に添加し、添加し終えたところで、さらに同回転数で30分間攪拌して植物ステロールと卵黄リポ蛋白質の複合体の分散液を得た。得られた複合体の分散液を噴霧
乾燥機を用いて、送風温度170℃、排風温度70〜75℃の条件で乾燥し、乾燥複合体を得た。なお、複合体の構成比は、卵黄固形分1部に対し植物ステロール8.9部であり、卵黄リポ蛋白質1部に対し植物ステロール11.1部である。また、複合体の植物ステロール含有量は92%である。
【0042】
[実施例1]お茶漬けの素
表4に示す組成で、鮭エキスパウダー、わさびパウダーを混合し造粒機で押出造流した後、食塩、グルタミン酸ナトリウム、及び調製例3で得られた乾燥複合体をV型混合機にて混合し攪拌する。これにフリーズドライした鮭フレーク、あられ、のりを加えて更に混合し、顆粒状鮭茶漬けを得た。尚、得られた顆粒状鮭茶漬けの複合体含有量は製品に対して2%である。
【0043】
【表4】



【0044】
[比較例1]
実施例1において乾燥複合体を配合しない他は、実施例1と同じ配合と製法で顆粒状鮭茶漬けを作製した。
【0045】
[比較例2]
実施例1において乾燥複合体に換えて植物ステロール(調製例1と同じもの)を用いた他は、実施例1と同じ配合と製法で顆粒状鮭茶漬けを作製した。
【0046】
[試験例1]
実施例1、比較例1及び2で得られた顆粒状鮭茶漬けを各々10gを袋に詰め、温度30℃、湿度80%RHの条件下で30日間放置した。結果を表5に示す。尚、前記袋の層構成・厚さ・大きさは、外側から内側にかけてアルミ蒸着PET(12μm)、PE(50μm)であり、横幅50mm、縦幅120mmである。
【0047】
【表5】



植ステ:植物ステロール
[表中の評価の記号]
○:固結していない
△:やや固結している
×:固結している
【0048】
表5の結果から明らかのように、植物ステロールと卵黄リポ蛋白質との複合体を含有した状態で長期保存させた実施例1の顆粒状鮭茶漬けは、前記複合体を添加しなかった比較例1、及び複合体の原料である植物ステロールを添加した比較例2の顆粒状鮭茶漬けに比べ固結が防止されていることが理解される。なお、ここでは示していないが、複合体の原料である植物ステロールを植物スタノールに変更した場合も同様な結果となった。
【0049】
[実施例2]ごま塩
表6に示す組成で、各原料の粉体をV型混合機にて混合し粉末状ごま塩を得た。尚、得られた粉末状ごま塩の複合体含有量は製品に対して2%である。次いで、得られた顆粒状ごま塩10gを袋に詰め、温度30℃、湿度80%RHの条件下で30日間放置した。尚、前記袋の層構成・厚さ・大きさは、外側から内側にかけてアルミ蒸着PET(12μm)、PE(50μm)であり、横幅50mm、縦幅120mmである。
【0050】
【表6】



【0051】
その結果、植物ステロールと卵黄リポ蛋白質との複合体を含有した状態で長期保存させた実施例2の粉末状ごま塩は、上記方法で前記複合体を添加しなかった粉末状ごま塩、及び複合体の原料である植物ステロールを添加した粉末状ごま塩に比べ固結が防止された。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物ステロール類と卵黄リポ蛋白質との複合体を含有することを特徴とする粉末状又は顆粒状食品組成物。
【請求項2】
前記植物ステロール類と前記卵黄リポ蛋白質との構成比が、卵黄リポ蛋白質1部に対して植物ステロール類5〜232部である請求項1記載の粉末状又は顆粒状食品組成物。
【請求項3】
前記複合体の含有量が、製品に対し0.01〜10%である請求項1又は2記載の粉末状又は顆粒状食品組成物。


【公開番号】特開2007−259825(P2007−259825A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92663(P2006−92663)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】