説明

粉末状複合チーズの製造方法

【課題】原料である非粉末状チーズの風味及び食感を残しつつ、簡単に、粉末状のチーズ製品を製造するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明の粉末状複合チーズの製造方法は、非粉末状チーズと、水分含量が18重量%以下の粉末状チーズとを、水分含量の平均値が17重量%以上33重量%以下となるように混合し、両者を混合粉砕することを特徴とする。粉末状チーズの平均粒径は3mm以下であることが好ましく、混合粉砕後の粉末状複合チーズの平均粒径も3mm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナチュラルチーズ又はプロセスチーズのうち、特に水分含量が多く、軟らかいために、グレイター(おろし器)等で削って粉末化する事が困難なチーズから、簡単に、かつ、原料となるチーズ本来の風味を損なわずに、粉末化したチーズ製品を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルチーズ又はプロセスチーズを粉末化する方法としては、スプレードライヤーで噴霧乾燥する方法、ドラム乾燥させ粉砕し粉末化する方法、グレイター等で削り粉末化する方法、凍結乾燥させたチーズを粉砕して粉末化する方法等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、非晶質成分及び結晶質成分の両方を含む粉末α−セルロースと、ナチュラルチーズ又はプロセスチーズとを混合して、粉末状のチーズ組成物を製造する方法を開示している。
【0004】
また、特許文献2は、チーズにタンパク質及び/又は澱粉質を加えて混練した後、篩にかけて粒状に形成し、70℃以上で加熱乾燥させることにより、主としてふりかけの原料となる粒状チーズの製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−12949号公報
【特許文献2】特公昭42−15731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スプレードライ、ドラム乾燥又は凍結乾燥によってチーズを粉末化する従来技術は、大掛かりな装置が必要であり、しかも、チーズ本来の風味が飛散損失してしまうという問題があった。また、特許文献1又は2に開示されている製造方法も、チーズ以外の物質を混合するために、チーズ本来の風味が損なわれるという問題があった。
【0007】
特許文献1に開示されている粉末状のチーズ組成物は、水分含量が18重量%以下であることを特徴としている。また、特許文献2に開示されている粒状チーズも、水分含量が10重量%以下であることを特徴としている。このように、特許文献1又は2に開示されている技術では、水分含量が少なく、原料であるチーズのしっとりした食感を残すことは困難であった。
【0008】
本発明は、原料である非粉末状チーズの風味及び食感を残しつつ、簡単に、粉末状のチーズ製品を製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、原料である非粉末状チーズに、水分含量が少ない粉末状チーズを加えて粉砕することにより、上記課題を解決し得るのではないかと考え、鋭意研究を重ねた。その結果、水分含量の平均値が17重量%以上33重量%以下となるように両者を混合すれば、原料である非粉末状チーズを、水分含量が少ない粉末状チーズと同程度の粉末状に粉砕することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
具体的に、本発明は、
非粉末状チーズと、水分含量が18重量%以下の粉末状チーズとを、水分含量の平均値が17重量%以上33重量%以下となるように混合し、
両者を混合粉砕することを特徴とする、粉末状複合チーズの製造方法に関する。
【0011】
水分含量が高く、そのままではフードプロセッサー又はフードカッターのようなカッティング装置によって粉末化させることができないチーズであっても、水分含量の平均値が17重量%以上33重量%以下となるように粉末状チーズと混合することにより、カッティング装置によって粉末化させることが可能である。
【0012】
非粉末状チーズは、加熱したり、乾燥させたりすることがないため、原料チーズの風味をそのまま残すことが可能である。粉末状チーズは、非粉末状チーズと混合した後、水分含量の平均値が17重量%以上33重量%以下となるような添加量とすればよい。
【0013】
水分含量が18重量%以下の粉末状チーズは、公知の粉末チーズを使用することが可能であり、その製法及び種類は特に限定されない。非粉末状チーズと複合化して粉末状複合チーズとなるため、非粉末状チーズの味、香り又は食感を損なわないように、公知の粉末状チーズの中から選択すればよい。粉末チーズは、ナチュラルチーズに由来する種類であってもよく、プロセスチーズに由来する種類であってもよい。
【0014】
ここで、「非粉末状」とは、ブロック状、半固形状、ペースト状、塊状、球状又は顆粒状のような粉末状以外の状態を意味する。ただし、塊状、球状又は顆粒状のような粒状体の場合であっても、水分含量が18重量%以下の粉末状チーズよりも、その粒径は大きい。
【0015】
非粉末状チーズは、ナチュラルチーズであってもよく、プロセスチーズであってもよく、その種類は特に限定されないが、例えば、ゴーダチーズ、チェダーチーズ、エメンタールチーズ、グリエールチーズ、クリームチーズ、ゴルゴンゾーラチーズ、カマンベールチーズ、ニューシャテルチーズ又はカテージチーズは、本発明の非粉末状チーズとして使用し得る。
【0016】
また、「複合チーズ」とは、複数のチーズを原料として構成されるチーズを意味し、非粉末状チーズと粉末状チーズとが異なる種類のチーズである場合の他、非粉末状チーズと粉末状チーズとが同じ種類のチーズである場合も含まれる。例えば、非粉末状チーズがチェダーチーズであり、水分含量が18重量%以下の粉末状チーズもチェダーチーズである場合にも、本発明の粉末状複合チーズの製造方法によって得られる粉末状チーズは、「複合チーズ」である。
【0017】
粉末状チーズの平均粒径は、3mm以下であることが好ましい。非粉末状チーズを十分に粉末化するためには、粉末状チーズの平均粒径が小さいことが好ましいためである。なお、本願において、「平均粒径」は、50%粒子径(メディアン径)による平均粒径である。
【0018】
混合粉砕後の粉末状複合チーズの平均粒径は、3mm以下であることが好ましい。混合粉砕後の複合チーズを、粉末状のチーズとして利用し得るためには、平均粒径が3mm以下であることが好ましいためである。
【0019】
非粉末状チーズは、一辺30mm以下のサイコロ状にカットするか、又は直径30mm以下にミンチングした後、粉末状チーズと混合することが好ましい。例えば、非粉末状チーズが大きなブロック状又は塊状である場合には、そのままカッティング装置に投入して粉末状チーズと混合するよりも、予め一辺30mm以下のサイコロ状にカットするか、又は直径30mm以下にミンチングしてから粉末状チーズと混合する方が、混合粉砕に要する時間を短縮することが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粉末状複合チーズの製造方法によれば、柔らかく、そのままでは粉末化させることが困難である非粉末状チーズを原料とし、その風味を損ねることなく、簡単、かつ、短時間で粉末状の複合チーズを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は実施例1における非粉末状チーズの外観写真であり、(b)は実施例1において、粗粉砕した非粉末状チーズに粉末状チーズを添加した状態を撮影した外観写真である。
【図2】(a)は実施例1において、粉砕終了後のサイレントカッター内を撮影した写真であり、(b)は粉末状複合チーズを取り出して撮影した外観写真である。
【図3】(a)は実施例2における非粉末状チーズのミンチング作業を撮影した写真であり、(b)は実施例1において、サイレントカッター内に投入されたミンチングした非粉末状チーズと粉末状チーズを撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されない。
【0023】
[実施例1]
サイレントカッター(株式会社長沼製作所製高速フードカッター)に、非粉末状チーズとして、予め1辺が20〜30mmのサイコロ状に切断したチェダーチーズ(オーストラリア産ナチュラルチーズ、水分含量36重量%)を20kg投入した。次に、図1(b)に示されるように、スプレー方式によって得られた粉末状チェダーチーズ(プロセスチーズ、水分含量3重量%、平均粒径約50μm)10kgをサイレントカッターに投入した。
【0024】
サイレントカッターを、1450rpmで5〜10分間運転し、サイコロ状(非粉末状)のチェダーチーズと粉末状チェダーチーズとを混合粉砕した。図2(a)は、混合粉砕後の高速フードカッター内を撮影した写真を示す。また、図2(b)は、サイレントカッターから取り出した粉末状複合チーズの一部の外観写真を示す。得られた粉末状複合チーズは、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。また、スプレー方式にて得られた粉末状チェダーチーズと比較して、明らかにチェダーチーズの芳香が強く、しっとり感も有していた。
【0025】
[実施例2]
非粉末状チーズとして、実施例1と同じチェダーチーズ20kgを、図3(a)に示されるように、予めミートチョッパーを用いて直径10mmにミンチングした。そして、ミンチングしたチェダーチーズを、サイレントカッター(株式会社長沼製作所製高速フードカッター)に投入した。次に、図3(b)に示されるように、実施例1と同じ粉末状チェダーチーズ10kgをサイレントカッターに投入した。
【0026】
サイレントカッターを、1450rpmで5〜10分間運転し、非粉末状のチェダーチーズと粉末状チェダーチーズとを混合粉砕した。得られた粉末状複合チーズは、実施例1と同様に、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。また、原料である粉末状チェダーチーズと比較して、明らかにチェダーチーズの芳香が強く、しっとり感も有していた。
【0027】
[実施例3]
非粉末状チーズとして、ゴーダチーズ(オランダ産ナチュラルチーズ、水分含量41重量%)18kgを用い、粉末状チーズとして、スプレー方式によって得られた粉末状ゴーダチーズ(プロセスチーズ、水分含量3重量%、平均粒径50μm)8kgを用いること以外、実施例2と同様に操作した。得られた粉末状複合チーズは、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。また、スプレー方式にて得られた粉末状ゴーダチーズと比較して、明らかにゴーダチーズの芳香が強く、しっとり感も有していた。
【0028】
[実施例4]
非粉末状チーズとして、ゴルゴンゾーラチーズ(イタリア産ナチュラルチーズ、水分含量48重量%)16kgを、予めミートチョッパーを用いて直径10mmにミンチングした。そして、ミンチングしたゴルゴンゾーラチーズを、高速切断混合ミキサー(KK愛工舎製作所社製高速カッターミキサー)に投入した。次に、実施例1と同じ粉末状チェダーチーズ14kgを高速切断混合ミキサーに投入した。
【0029】
高速切断混合ミキサーを、1800rpmで1〜2分間運転し、ミンチングした(非粉末状の)ゴルゴンゾーラチーズと粉末状チェダーチーズとを混合粉砕した。得られた粉末状複合チーズは、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。また、ゴルゴンゾーラチーズの特有の風味に優れて、しっとり感も有していた。
【0030】
[実施例5]
非粉末状チーズとして、低塩国産チェダーチーズ(ナチュラルチーズ、水分含量52重量%)10kg及びエメンタールチーズ(オーストリア産ナチュラルチーズ、水分含量37重量%)10kgを、予めミートチョッパーを用いて直径10mmにミンチングした。そして、ミンチングした低塩国産チェダーチーズ及びエメンタールチーズを、ステファン釜(Stephan社製高速回転チーズ乳化釜)に投入した。次に、実施例1と同じ粉末状チェダーチーズ10kgを投入した。
【0031】
ステファン釜を1〜3分間撹拌し、ミンチングした(非粉末状の)チェダーチーズ及びエメンタールチーズと、粉末状チェダーチーズとを混合粉砕した。得られた粉末状複合チーズは、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。また、チェダーチーズ及びエメンタールチーズに特有の風味に優れて、しっとり感も有していた。
【0032】
[実施例6]
非粉末状チーズとして、予めミートチョッパーを用いて直径10mmにミンチングしたカマンベールチーズ(国産ナチュラルチーズ、水分含量52重量%)13.5kgを用い、粉末状チーズとして、実施例1と同じ粉末状チェダーチーズ16.5kgを用いること以外、実施例4と同様にして粉末状複合チーズを得た。得られた粉末状複合チーズは、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。また、カマンベールチーズ特有の風味に優れて、しっとり感も有していた。
【0033】
[実施例7]
非粉末状チーズとして、チェダーチーズ(オーストラリア産ナチュラルチーズ、水分含量36重量%)12kg及びスモークチーズ(六甲バター製プロセスチ−ズ、水分含量43重量%)8kgを用い、粉末状チーズとして、実施例1と同じ粉末状チェダーチーズ8kgを用いる以外、実施例2と同様にして粉末状複合チーズを得た。得られた粉末状複合チーズは、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。また、チェダーチーズの風味にスモークチーズの風味が相まった、風味に優れたチーズ製品であり、しっとり感も有していた。
【0034】
(試験例1)
非粉末状チーズとして実施例2と同じチェダーチーズを用い、粉末状チーズ又はその代替物として(A) スプレー方式によって得られた粉末状チェダーチーズ(プロセスチーズ、水分含量3重量%、平均粒径50μm);(B) 加工澱粉(水分含量18重量%、平均粒径30μm);又は(C) 脱脂粉乳(水分含量4.5重量%、平均粒径45μm)を使用した。実施例2と同様の操作を行い、粉末状複合チーズ又はその類似物を得た。これらは、いずれも、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。得られた粉末状複合チーズ又はその類似物について、(1) 粉末状態、及び(2) 風味を3段階に評価した。
【0035】
粉末状態は、以下の基準によって評価された。
○:塊にならず良好に粉末化できている
△:やや塊になるが粉末化可能
×:塊になって粉末化できない
【0036】
また、風味は、以下の基準によって評価された。
○:ナチュラルチーズ風味が十分生きて良好
△:ナチュラルチーズ風味が弱い
×:粉末チーズ又はその代替物の風味が強くナチュラルチーズ風味がかなり弱い
【0037】
表1は、その結果を示す。なお、表1における「粉末比率」は、原料(非粉末状チーズと粉末状チーズ又はその代替物(加工澱粉又は脱脂粉乳))中における粉末状チーズ又はその代替物の重量比率(重量%)を意味する。水分含量(重量%)は、絶乾法によって測定された、非粉末状チーズと粉末状チーズ又はその代替物の水分含量(重量%)の平均値を意味する。
【0038】
【表1】

【0039】
表1より、粉末状チーズを混合した(A)の場合、粉末比率が10重量%〜60重量%(水分含量の平均値が16重量%以上33重量%以下)であれば、2項目の評価がすべて「△」又は「○」となり、実用性を有していた。また、粉末比率が25重量%〜50重量%(水分含量の平均値が20重量%以上28重量%以下)であれば、2項目の評価がどちらも「○」となった。また、粉末比率が10重量%〜60重量%の粉末状複合チーズを試食したところ、その食感及び味は、グレイターを用いて手作業で少量だけ粉末化した原料チェダーチーズと、原料の粉末状チェダーチーズを同じ割合で混合した粉末状複合チーズとではほとんど変わらなかった。
【0040】
これに対して、加工澱粉を混合した(B)の場合、粉末比率が35重量%以上では粉末状態が「○」となったが、この粉末比率ではナチュラルチーズ風味が弱く、加工澱粉の風味が強くなった。また、粉末比率が35重量%以上の粉末状複合チーズ類似物を試食したところ、その食感及び味は、(A)の粉末状複合チーズとは大きく異なり、澱粉の食感及び味がして、粉末状チーズとしての実用性が低いと判断された。
【0041】
脱脂粉乳を混合した(C)の場合は、粉末比率が25重量%〜30重量%の場合に2項目の評価がどちらも「△」となったが、この粉末状複合チーズ類似物を試食したところ、その食感及び味は、(A)の粉末状複合チーズとは大きく異なり、脱脂粉乳の食感及び味がして、粉末状チーズとしての実用性が低いと判断された。
【0042】
(試験例2)
非粉末状チーズとして実施例4と同じエメンタールチーズを用い、粉末状チーズ又はその代替物として、試験例2の(A)〜(C)と同じ粉末状チーズ又はその代替物を使用した。試験例1と同様の操作を行い、粉末状複合チーズ又はその類似物を得た。これらは、いずれも、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。得られた粉末状複合チーズ又はその類似物の(1) 粉末状態、及び(2)風味について、3段階に評価した。評価方法は、試験例1と同様である。表2は、その結果を示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2より、粉末状チーズを混合した(A)の場合、粉末比率が10重量%〜60重量%(水分含量の平均値が17重量%以上34重量%以下)であれば、2項目の評価がすべて「△」又は「○」となり、実用性を有していた。また、粉末比率が25重量%〜45重量%(水分含量の平均値が22重量%以上29重量%以下)であれば、2項目の評価がどちらも「○」となった。また、粉末比率が10重量%〜60重量%の粉末状複合チーズを試食したところ、その食感及び味は、グレイターを用いて手作業で少量だけ粉末化した原料エメンタールチーズと、原料の粉末状チェダーチーズを同じ割合で混合した粉末状複合チーズとではほとんど変わらなかった。
【0045】
これに対して、加工澱粉を混合した(B)の場合、粉末比率が20重量%以上では粉末状態が「△」又は「○」となり、35重量%以上では「○」となった。しかし、粉末比率45重量%以上ではナチュラルチーズ風味が少なくなった。粉末比率20重量%以上の粉末状複合チーズ類似物を試食したところ、その食感及び味は、(A)の粉末状複合チーズとは大きく異なり、澱粉の食感及び味がして、粉末状チーズとしての実用性が低いと判断された。
【0046】
脱脂粉乳を混合した(C)の場合は、粉末比率が15重量%以上では粉末状態が「△」又は「○」となり、25重量%の場合には2項目の評価がどちらも「○」となった。しかし、粉末比率15重量%以上の粉末状複合チーズ類似物を試食したところ、その食感及び味は、(A)の粉末状複合チーズとは大きく異なり、脱脂粉乳の食感及び味がして、粉末状チーズとしての実用性が低いと判断された。
【0047】
(試験例3)
非粉末状チーズとして実施例5と同じカマンベールチーズを用い、粉末状チーズ又はその代替物として、試験例2の(A)〜(C)と同じ粉末状チーズ又はその代替物を使用した。カマンベールチーズを、ミンチングした状態で高速フードカッターに投入すること以外、試験例1と同様の操作を行い、粉末状複合チーズ又はその類似物を得た。これらは、いずれも、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。得られた粉末状複合チーズ又はその類似物の(1) 粉末状態、及び(2)風味について、3段階に評価した。評価方法は、試験例1と同様である。表3は、その結果を示す。
【0048】
【表3】

【0049】
表3より、粉末状チーズを混合した(A)の場合、粉末比率が35重量%〜60重量%(水分含量の平均値が22重量%以上34重量%以下)であれば、2項目の評価がすべて「△」又は「○」となり、実用性を有していた。また、粉末比率が50重量%〜55重量%(水分含量の平均値が25重量%以上27重量%以下)であれば、2項目の評価がどちらも「○」となった。また、この粉末比率の粉末状複合チーズを試食したところ、その食感及び味は、グレイターを用いて手作業で少量だけ粉末化した原料カマンベールチーズと、原料の粉末状チェダーチーズを同じ割合で混合した粉末状複合チーズとではほとんど変わらなかった。
【0050】
なお、粉末状チーズを混合した(A)の場合について、粉末比率を60重量%超に増やして水分含量を17重量%とした試作品を製造したところ、粉末状態が「○」、風味が「△」であった。また、試食したところ、その食感及び味は、グレイターを用いて手作業で少量だけ粉末化した原料カマンベールチーズと、原料の粉末状チェダーチーズを同じ割合で混合した粉末状複合チーズとではほとんど変わらなかった。
【0051】
これに対して、加工澱粉を混合した(B)の場合、粉末比率が55重量%以上では粉砕混合状態が「○」となったが、その粉末比率ではナチュラルチーズ風味が少なかった。粉末比率55重量%以上の粉末状複合チーズ類似物を試食したところ、(A)の粉末状複合チーズとは大きく異なり、澱粉の食感及び味がして、粉末状チーズとしての実用性が低いと判断された。
【0052】
脱脂粉乳を混合した(C)の場合は、粉末比率が50重量%以上では粉末状態が「○」となったが、その粉末比率ではナチュラルチーズ風味が少なかった。粉末比率50重量%以上の粉末状複合チーズ類似物を試食したところ、(A)の粉末状複合チーズとは大きく異なり、脱脂粉乳の食感及び味がして、粉末状チーズとしての実用性が低いと判断された。
【0053】
(試験例4/加速試験)
試験例1と同じ原料を用い、同様の操作によって、粉末比率35重量%の粉末状複合チーズ又はその類似物(合計3種類)を得た。これらは、いずれも、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。得られた粉末状複合チーズ又はその類似物を、10週間、35℃の恒温器に保存して、粉末状態及び風味を1週間毎に評価した。表4は、その結果を示す。
【0054】
粉末状態は、以下の基準によって評価された。
○:塊がなく良好な粉末状態
△:少し塊になるがほぼ粉末状態
×:塊又は顆粒状態になって粉末でない
【0055】
また、風味は、以下の基準によって評価された。
○:ナチュラルチーズ風味に変化がない
△:ナチュラルチーズ風味が弱い
×:風味の変化が激しいか、粉末チーズ又はその代替物の風味が強くてナチュラ
ルチーズ風味がかなり弱い
【0056】
【表4】

【0057】
表4より、粉末状チーズを混合した(A)の場合、6週間経過時まで粉末状態及び風味が良好であることが確認された。これに対して、加工澱粉を混合した(B)の場合、風味は製造直後から「△」であり、1週間経過時に粉末状態も「△」となった。また、脱脂粉乳を混合した(C)の場合は、粉末状態は10週間経過時においても「○」であったが、風味は2週間経過時に「△」、4週間経過時に「×」となった。
【0058】
このように、粉末状チーズを混合した(A)の粉末状複合チーズは、保存性にも優れていることが確認された。
【0059】
(試験例5/加速試験)
試験例2と同じ原料を用い、同様の操作によって、粉末比率35重量%の粉末状複合チーズ又はその類似物(合計3種類)を得た。これらは、いずれも、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。得られた粉末状複合チーズ又はその類似物を、試験例5と同様に保存し、粉末状態及び風味を1週間毎に評価した。表5は、その結果を示す。
【0060】
【表5】

【0061】
表5より、粉末状チーズを混合した(A)の場合、6週間経過時まで粉末状態及び風味が良好であることが確認された。これに対して、加工澱粉を混合した(B)の場合、風味は製造直後から「△」であり、1週間経過時に粉末状態も「△」となった。また、脱脂粉乳を混合した(C)の場合は、粉末状態は10週間経過時においても「○」であったが、風味は2週間経過時に「△」、4週間経過時に「×」となった。
【0062】
このように、粉末状チーズを混合した(A)の粉末状複合チーズは、保存性にも優れていることが確認された。
【0063】
(試験例6/加速試験)
試験例3と同じ原料を用い、同様の操作によって、粉末比率35重量%の粉末状複合チーズ又はその類似物(合計3種類)を得た。これらは、いずれも、平均粒径500μm以下の微細で均質な粉末であった。得られた粉末状複合チーズ又はその類似物を、試験例5と同様に保存し、粉末状態及び風味を1週間毎に評価した。表6は、その結果を示す。
【0064】
【表6】

【0065】
表6より、粉末状チーズを混合した(A)の場合、1週間経過時まで粉末状態及び風味が良好であることが確認された。これに対して、加工澱粉を混合した(B)の場合、風味は製造直後から「×」であり、1週間経過時に粉末状態も「×」となった。また、脱脂粉乳を混合した(C)の場合は、粉末状態は10週間経過時においても「○」であったが、風味は製造直後から「△」であった。
【0066】
このように、粉末状チーズを混合した(A)の粉末状複合チーズは、試験例4及び5で得られた(A)の粉末状複合チーズと比較すると保存性に劣るものの、チーズ製品の通常の保存条件である冷蔵保存では、実用的な保存性があると推定された。
【0067】
上述したように、本発明の粉末状複合チーズの製造方法は、水分含量が高く、柔らかいために粉砕しにくいチーズであっても、風味を損なわず、簡単に粉末化することができる。また、チーズ以外の添加物を使用しないため、原料となるチーズの食感も損なわない。さらに、製造された粉末状複合チーズは、加工澱粉又は脱脂粉乳を添加物として使用する類似製品と比較して、保存性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の粉末状複合チーズの製造方法は、食品分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非粉末状チーズと、水分含量が18重量%以下の粉末状チーズとを、水分含量の平均値が17重量%以上33重量%以下となるように混合し、
両者を混合粉砕することを特徴とする、粉末状複合チーズの製造方法。
【請求項2】
粉末状チーズの平均粒径が3mm以下である、請求項1に記載の粉末状複合チーズの製造方法。
【請求項3】
混合粉砕後の粉末状複合チーズの平均粒径が3mm以下である、請求項1又は2に記載の粉末状複合チーズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−130288(P2012−130288A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285473(P2010−285473)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000252182)六甲バター株式会社 (6)
【Fターム(参考)】