説明

粉末酢、その製造方法、及び粉末酢を用いた加工食品

【課題】 健康食品として好適に利用できる粉末酢、その製造方法、及び粉末酢を用いた加工食品を提供する。
【解決手段】 酢を含む酢類粉状体2の表面に油脂を含むコーティング層3が設けられたことを特徴とする粉末酢1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢の含有率を高め、健康食品として好適に利用し得る粉末酢、その製造方法、及び粉末酢を用いた加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
酢には、各種アミノ酸やミネラルが含まれる。特に、黒酢又は香醋等は、それらが豊富に含まれているため、近年では、健康増進を望む多くの人々によって飲用されている。しかし、液体のまま瓶詰めされて販売されているものは、可搬性に不便であり、かつ、輸送コストも大きい。そこで近年では、酢を加工してソフトカプセル化したものや錠剤型とした酢加工食品が種々販売されている。
【0003】
前記酢加工食品の製造工程では、一般に、原材料となる液状の酢を粉末化する工程、それに液状の油脂を配合して混練しペースト状物を得る工程及び該ペースト状物をソフトカプセルに充填したり又は錠剤に加工する工程を含む。酢の粉末は、非常に吸湿しやすく、そのままではすぐに空気中の水分を吸収して固結し、加工性及び商品化を損ねるため、上述のように、油脂が酢の粉末に配合される。
【0004】
しかしながら、このような酢加工食品は、加工性を高めるために多量の油脂が配合される傾向があり、その結果、単位重量当たりのアミノ酸等の含有率が低く、せいぜい30%程度のものが多い。このため、従来の酢加工食品では、酢の摂取効率が悪いという欠点がある。
【0005】
粉末酢に関して、先行する技術には次のものがある。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−164475号公報
【特許文献2】特開2004−275174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、高い耐湿性を有することにより生産性、加工性を向上しうるとともに、酢の含有率を高めうる粉末酢、その製造方法及び粉末酢を用いた加工食品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち請求項1記載の発明は、酢を含む酢類粉状体の表面に耐湿性のコーティング層が設けられたことを特徴とする粉末酢である。
【0009】
また請求項2記載の発明は、前記コーティング層は、油脂を含む請求項1記載の粉末酢である。
【0010】
また請求項3記載の発明は、前記酢は、黒酢又は香醋を含む請求項1又は2記載の粉末酢である。
【0011】
また請求項4記載の発明は、前記粉末酢は、前記コーティング層の重量が全重量の3〜40%である請求項1乃至3のいずれかに記載の粉末酢である。
【0012】
また請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載された粉末酢をカプセルに封止したことを特徴とする加工食品である。
【0013】
また請求項6記載の発明は、酢を含む酢類粉状体に油脂を含む油脂粉状体を衝突させることにより、前記酢類粉状体の表面に前記油脂粉状体を付着させて耐湿性のコーティング層を形成する工程を含むことを特徴とする粉末酢の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粉末酢は、酢を含む酢類粉状体の表面に耐湿性を有するコーティング層が設けられる。このようなコーティング層は、酢類粉状物と水分との接触を防止し、耐湿性を高める。また、コーティング層は、最小限の量で各酢類粉状物に耐湿性を高めることができるため、酢の含有率を大幅に高め得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1に概念的に示されるように、本発明の粉末酢1は、酢を含む酢類粉状体2の表面に耐湿性のコーティング層3が設けられたことを特徴とする。この粉末酢1は、空気中の水分と酢類粉状体2との接触をコーティング層3によって抑制する。従って、粉末酢1の吸湿による固結などを防止できる。また、コーティング層3は、最小限の量で各酢類粉状物2の吸湿性をブロックしうるため、酢の含有率を大幅に高め得る。
【0016】
このような粉末酢1は、健康増進を目的とした加工食品として特に好適であり、そのまま粉状体で提供されてもよいし、又は適量をゼラチン又はグリセリン等のカプセルに封止し飲用しやすいカプセル状として提供できる。
【0017】
前記酢は、食酢であれば特に限定されることなく種々のものを用いることができ、例えば穀物酢、果実酢及び/又は醸造酢を含む。とりわけ穀物酢、なかでも黒酢又は香醋が各種アミノ酸及びミネラルを豊富に含む点で最も好ましい。黒酢は、原材料として米又は大麦を使用し、かつ、長期発酵・熟成によって黒褐色化したものである。また、香醋は、米、大麦、コーリャンなどを壺で6ヵ月以上熟成して作られたものが好適である。
【0018】
前記酢類粉状体2は、原料となる酢から作られた粉状体である。酢の粉状化は、特に限定されないが、例えば噴霧乾燥法を用いることができる。噴霧乾燥法を用いる場合、例えばスプレイドライヤーの熱風の入口温度は、好ましくは110〜120℃、出口温度は、好ましくは70〜80℃が望ましい。
【0019】
また、前記酢類粉状体2の粒径は、特に限定されないが、大きすぎると食感が良くなく、逆に小さすぎても製造が困難になる。このような観点より、酢類粉状体2の粒径は、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上が望ましく、また、上限については、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下が望ましい。
【0020】
また、酢類粉状体2を生成するに際して、予め原料酢に各種の添加物を加えることができる。例えば、原料となる黒酢又は香醋に、クエン酸、デキストリン及び/又は酢酸等を添加することが好ましい。デキストリンは、粉状化に際して、その芯材として好適である。原料酢とデキストリンとは、重量比で例えば50.0〜97.5:50.0〜2.5程度の割合で配合するのが良い。また、クエン酸、酢酸は、酢類粉状体2の風味を整えるのに好適である。
【0021】
前記コーティング層3は、食用可能でかつ前記酢類粉状体2に吸湿性を付与するものであれば、特にその材料等は問わないが、好ましくは油脂が用いられる。該油脂としては、動物性油脂又は植物性油脂が好適であり、具体的には、牛脂、豚油、魚油、大豆油、菜種油、パーム油、ヤシ油、コーン油、サフラワー油、綿実油、米油、オリーブ油及び/又はゴマ油を挙げることができる。また、油脂には、これら以外にも、脂肪酸モノグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸、高級アルコール及び/又はワックス類等を挙げることができる。該油脂は、1種のみならず、2種以上の材料を用いても良い。特に好ましくは、常温でのコーティング層3の融解を防止するために、融点が40℃以上、より好ましくは50℃以上の油脂が最も好ましい。
【0022】
前記コーティング層3を形成する方法は、特に限定されないが、例えば図2(A)及び(B)に示されるように、前記酢類粉状体2に前記油脂からなる油脂粉状体4を衝突させることにより、該酢類粉状体2の表面にほぼ満遍なく前記油脂粉状体4を付着させて前記耐湿性のコーティング層3を有する粉末酢1を製造することができる。なお、酢類粉状体2は吸湿性が大きいため、粉末化された後は、すみやかにコーティング層3を形成する工程に供されるのが望ましい。
【0023】
前記油脂粉状体4は、原材料となる油脂を、例えば噴霧乾燥法又は凍結乾燥法などを用いて作ることができる。ここで、油脂粉状体4の粒径は、特に限定されないが、大きすぎると酢類粉状体2に付着し難くなり、逆に小さすぎてもコーティング層3の層厚さが小さくなり、いずれの場合も十分な吸湿性が得られない傾向がある。このような観点より、油脂粉状体4の粒径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上が望ましく、上限については例えば1000μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは40μm以下、最も好ましくは前記酢類粉状体2の粒径よりも小さいことが望ましい。
【0024】
前記酢類粉状体2及び油脂粉状体4の衝突は、例えば両粉状体を各種のミキサー、ボールミル、乳鉢又は粉体混合装置などに投入して混合することにより容易に行うことができる。特に好ましくは、両粉状体2及び4を予め混合した後、前記各種の装置で衝突させることが望ましい。これにより、酢類粉状体2への油脂粉状体4の付着性がより一層向上し、より強い耐湿性を持ったコーティング層3が得られる。
【0025】
各粉状体2及び4の粒径を限定するとともに、それらの衝突時間などをコントロールすることにより、記粉末酢1は、吸湿性を維持しつつ、全重量に対するコーティング層3の重量を50%以下、より好ましくは3〜40%、さらに好ましくは10〜25%程度まで減じ得る。このような粉末酢1は、少量にてより多くの酢を摂取することができ、酢の摂取効率を大幅に向上しうる。
【0026】
本実施形態の粉末酢1は、粒径が小さいため、容易に水に溶かすことができる。従って、例えばカプセル化されたものが飲みづらい利用者は、カプセルを割って粉末酢1を水に溶かして液体で飲用することができる。従って、本実施形態の粉末酢1は、利用者の好みのスタイルで容易に摂取され得る。
【0027】
図3には、本発明の他の実施形態を示す。
本実施形態の粉末酢1は、コーティング層3が、酢類粉状体2側に配された内層部3aと、その外側に配された外層部3bとを含む。前記外層部3bは、前記油脂粉状体4で作られており、主として前記耐湿性を酢類粉状体に確保させる。また、前記内層部4は、例えば水溶性の粉状体5を、酢類粉状体2の表面に付着させることで形成される。このような内層部3aは、前記油脂粉状体4の油脂について付着性をより一層向上でき、例えばアミノ酸又は蛋白質などが好適である。
【0028】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は例示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の効果を具体的に述べる。粉末酢の実施例及び比較例は次の通りである。
【0030】
(実施例1)
噴霧乾燥法により、香醋を用いた原料液から酢類粉状体を得た(平均粒径100μm)。原料液の配合は次の通りとした。また、噴霧乾燥法は、スプレイドライヤーの熱風の入口温度を114℃、出口温度を75℃の条件とした。次に、酢類粉状体200kgにヤシ油の微粉末(平均粒径10μm、融点68℃、日本油脂株式会社製)10kgを混合し、ミキサーにて約5分間混合することにより、前記酢類粉状体の表面にヤシ油の微粉末が付着した耐湿性のコーティング層を有する粉末酢を製造した。
【0031】
原材料 配合(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−
香醋 100.0
デキストリン 9.2
クエン酸 5.7
【0032】
(実施例2)
質量200kgの前記酢類粉状体に、前記ヤシ油の微粉末を30kgを混合するとともに、該混合物をミキサーにて10分間混合することにコーティング層を有する粉末酢を製造した。
【0033】
(比較例)
実施例1の噴霧乾燥法で得た酢類粉状体をそのまま粉末酢として使用した。従って、耐湿性のコーティング層が設けられていない。
【0034】
上記各供試粉末酢を温度40℃、相対湿度80%の環境下に48時間保存し、重量の増加から吸湿率を測定した。結果は、次の通りである(比較例の吸湿率を100とする指数表示であり、数値が小さいほど吸湿率が小さいことを示す。)
【0035】
サンプル 吸湿率指数
−−−−−−−−−−−−−−−
比較例 100
実施例1 31
実施例2 18
【0036】
次に、実施例及び比較例の粉末酢や従来品(背景技術にて述べたペースト状のものをソフトカプセルに封止した酢加工食品)について、単位重量当たりの香醋の含有率、油脂の含有率をそれぞれ測定した。測定結果は次の通りである。
【0037】
サンプル 香醋含有率(重量%) 油脂含有率(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
比較例 100.0 0
実施例1 70.0 5.5
実施例2 64.5 11.0
従来品 19.0 47.0
【0038】
以上のテストの結果、実施例の粉末酢は、吸湿率が低く、高い耐湿性を具えていることが確認できる。また、単位重量当たりの酢(香醋)の含有率が非常に高く、かつ、油脂の成分が少ないことも確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の粉末酢の一実施形態を模式化して示す断面図である。
【図2】(A)、(B)はその製造方法を説明する断面略図である。
【図3】本発明の粉末酢の他の実施形態を模式化して示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 粉末酢
2 酢類粉状体
3 コーティング層
3a 内層部
3b 外層部
4 油脂粉状体
5 水溶性の粉状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢を含む酢類粉状体の表面に耐湿性のコーティング層が設けられたことを特徴とする粉末酢。
【請求項2】
前記コーティング層は、油脂を含む請求項1記載の粉末酢。
【請求項3】
前記酢は、黒酢又は香醋を含む請求項1又は2記載の粉末酢。
【請求項4】
前記粉末酢は、前記コーティング層の重量が全重量の3〜40%である請求項1乃至3のいずれかに記載の粉末酢。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された粉末酢をカプセルに封止したことを特徴とする加工食品。
【請求項6】
酢を含む酢類粉状体に油脂を含む油脂粉状体を衝突させることにより、前記酢類粉状体の表面に前記油脂粉状体を付着させて耐湿性のコーティング層を形成する工程を含むことを特徴とする粉末酢の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−217893(P2006−217893A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36433(P2005−36433)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(500265305)株式会社 マイスキィ (1)
【Fターム(参考)】