説明

粉状洗剤

【課題】 製造が簡便で、水との接触時において凝集を抑制する、流動性および溶解性に優れた粉状洗剤を提供すること。
【解決手段】 少なくとも石鹸、ビルダーおよび水酸基を2個以上有する低分子量の有機化合物を配合してなることを特徴とする粉状洗剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性および溶解性のよい粉状洗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、洗濯機や洗浄装置の自動化が進み、洗剤等の自動投入の必要性が増し、粉粒体の流動性を改善するために、種々の方法が行われている。例えば、その形状をビーズ状にしたり、粒度を一定にするなどの物理的な方法、ゼラチンやデンプン等の天然高分子素材やポリ酢酸ビニル等の合成高分子素材による種々のマイクロカプセル化の方法が取られている。しかし、これらの方法では、水と接触しない条件で流動性はよいが、水と接触すると直ちに凝集したり、ゲル状ミセルを形成する欠点があった。特に、JIS規定により純石鹸分が、50%以上含まれる洗濯用粉石鹸では、洗濯機や業務用洗浄機の自動投入器の中に固まりを生じ、流動性を失う欠点があり、環境に良いものでありながら、その使用が制限される傾向にある。また、洗剤ビルダーとして用いられる炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム等の無機塩やCMC等の有機の添加剤も水と接触してバインダーとなって固化を助長するという問題があった。
【0003】
洗剤等の洗濯機や業務用洗浄機への自動投入の方法は、殆どの場合、張水する水によって洗剤投入器の中に入れた洗剤を流し出す方式であるため、まず最初の段階で水と接触する。したがって洗剤はその段階で粉粒体間の凝集を起こさせないものであって、しかもその後の限られた流水によって、そのすべてが残らず槽内に投入されるものでなければならない。しかも水に対する溶解性を損なうものであってはならない。
【0004】
そのような問題を解決するために、分子量2000以上のポリエチレングリコールで被覆されたカプセル化石鹸・洗剤が開示されているが(特許文献1)、その製造工程には加熱と冷却が必要であるため、製造が煩雑であった。
【特許文献1】特許第2865548号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製造が簡便で、水との接触時において凝集を抑制する、流動性および溶解性に優れた粉状洗剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は少なくとも石鹸、ビルダーおよび水酸基を2個以上有する低分子量の有機化合物を配合してなることを特徴とする粉状洗剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粉状洗剤は、水と接触しても直ちに凝集しないので、洗濯機または洗浄装置の自動投入器中で固化することなく、流動性の良い状態で槽内に投入が可能であり、溶解性にも優れている。しかも、水酸基を2個以上有する低分子有機化合物は洗浄率が高く、濯ぎ助剤としても有効に働く。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の粉状洗剤は、少なくとも石鹸、ビルダーおよび特定の有機化合物が配合されてなるものである。
【0009】
本発明において使用される石鹸(脂肪酸アルカリ金属塩)としては、従来より洗濯用または食器洗浄用粉状洗剤に含有される石鹸が使用可能であり、例えば、噴霧乾燥法で製造された粉末石鹸、炊き込み法で製造された粉末石鹸、更に粉末石鹸を種々の方法で造粒した粒状石鹸、連続法で製造された針状石鹸を破砕した粒状石鹸等が例示される。石鹸の配合量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、粉状洗剤全量に対して50重量%以上、特に50〜80重量%である。
【0010】
ビルダーとしては、例えば、軽質炭酸ナトリウム、重質炭酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム等が例示される。ビルダーの配合量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、粉状洗剤全量に対して15重量%以上、特に20〜40重量%である。
【0011】
本発明において配合される有機化合物は一分子中、水酸基を2個以上有する低分子量のものであり、好ましくは水酸基を2〜3個有する脂肪族有機化合物が使用される。分子量は当該有機化合物が常温(25℃)で液体状態を呈する程度の低分子量であればよく、例えば、500以下、好ましくは40〜500、より好ましくは40〜400が適当である。そのような有機化合物が配合されることによって、他に配合される粉粒体表面に当該有機化合物が被覆され、結果として洗剤全体としての流動性および溶解性が向上し、水との接触時において凝集が有効に抑制される。凝集の抑制メカニズムの詳細は明らかではないが、以下のメカニズムに基づくものと考えられる。
石けん分子間に水分子が介在することによって、ゲル状のミセル構造を形成する性質が、複数の極性基を有する低分子化合物の被覆によって抑制され、ゲル状化を防止するためと考えられる。
水酸基を1個しか有さない有機化合物を配合しても、水との接触時において粉状洗剤の凝集が起こるばかりでなく、揮発性であるため製品化ができない。また水酸基を2個以上有する有機化合物の分子量が大きすぎると、固体状態を呈するため、粉粒体表面への均一な被覆をするために加温と冷却が必要となり、製造が煩雑になる。
【0012】
そのような有機化合物の具体例として、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリンおよびペンタグリセリン等のポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、並びに1,5−ペンタンジオール等が例示される。これらのうち、人体や環境に対する安全性の観点から天然の有機化合物を使用することが好ましく、特にグリセリンが好ましい。
【0013】
上記低分子量有機化合物の配合量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、粉状洗剤全量に対して1〜7重量%、好ましくは2〜5重量%である。
【0014】
本発明においては、キレート剤、再汚染防止剤、香料等の他の添加剤が配合されてもよい。
キレート剤としては、例えば、EDTA、NTA、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム等が例示される。
再汚染防止剤として、例えば、CMC等が例示される。
【0015】
本発明の粉状洗剤は、少なくとも前記石鹸粒子表面への上記有機化合物の被覆が達成される限り、いかなる順序で混合されて製造されてもよい。例えば、石鹸、ビルダーおよび有機化合物等を含む全成分を一括混合してもよいし、石鹸と有機化合物とを予め混合した後で、残りの成分を追加添加し、混合してもよいし、または有機化合物以外の成分を予め混合したもの(例えば、従来の石鹸含有粉状洗剤)に有機化合物を添加し、混合してもよい。混合時の温度は特に制限されず、通常は常温25℃程度である。
【0016】
製造に際して使用される混合装置としては、特に制限されず、例えば、リボンミキサー、ナウタミキサー、ハイスピードミキサー、噴射式ミキサー、レイディゲミキサー等が例示される。
【実施例】
【0017】
以下に、実施例を示し、本発明を説明する。
【0018】
(実施例1)
噴霧乾燥してハイスピードミキサーで造粒した石鹸(直径約0.5〜1.5mm)3600gおよびポリグリセリン(分子量;388)150gを、軽質炭酸ナトリウム1000gおよびメタ珪酸ナトリウム400gからなる洗浄補助剤に加え、ハイスピードミキサー(深江パルテック社製)により25℃で5分間混合し、粉状洗剤を得た。
【0019】
(実施例2)
炊き込み法でケン化・塩析し、粉砕・造粒したコンパクト石鹸(直径約0.5〜1.5mm)3500gおよびエチレングリコール250gを、実施例1と同様の洗浄補助剤に加え、実施例1と同様の処理をおこなって、粉状洗剤を得た。
【0020】
(実施例3)
連続製造法(ペレタイザー)で製造した針状石鹸をパワーミルで破砕した粒子直径1.2mm以下の石鹸60重量%に重質炭酸ナトリウム20重量%および軽質炭酸ナトリウム20重量%を添加したもの5kgに、グリセリン150gを加え、粉体混合機(不二パウダル社製:RM−20)により25℃で5分間混合し、粉状洗剤を得た。
【0021】
(比較例1)
ポリグリセリンを加えなかったこと以外、実施例1と同様の方法により粉状洗剤を得た。
【0022】
(比較例2)
エチレングリコールを加えなかったこと以外、実施例2と同様の方法により粉状洗剤を得た。
【0023】
(比較例3)
グリセリンを加えなかったこと以外、実施例3と同様の方法により粉状洗剤を得た。
【0024】
【表1】

【0025】
(評価)
全自動洗濯機AWD−B860(三洋電機(株)製)を使用し、以下の項目について評価した。
【0026】
1.流動性
得られた粉状洗剤40gを洗濯機の自動投入器に入れて、洗濯機を駆動させ、評価を行った。使用された全ての水は自動投入器を経由して洗浄槽に到達するようになっており、水は水温25℃のものを30Lで使用した。
自動投入器に残存する洗剤の量に基づいて流動性を、次の4段階で判定した。
◎:全く残存しない;
○:殆ど残存しない;
△:少量残存する;
×:多量残存する。
【0027】
2.溶解性
水温25℃および30L水量で空運転中の洗濯機に、粉状洗剤40gを投入し、15秒毎に茶こしにより溶解を確認し、次の4段階で判定した。茶こしで洗剤が採取されなくなった時点を溶解の完了時間とする。
◎:1分15秒未満で溶解完了;
○:1分15秒以上3分未満で溶解完了;
△:3分以上5分未満で溶解完了;
×:5分以上で溶解完了。
【0028】
3.洗浄率の試験法
ターゴトメーターによる洗浄条件
・反転数60cpm
・使用水50ppm人工硬水1000ml(洗浄・濯ぎともに同様)
・時間:洗浄10分、濯ぎ3分×2回
・温度:30℃(洗浄・濯ぎともに同様)
・汚染布:(財)洗濯科学協会、湿式人工汚染布(綿布)5×5cm、8枚使用
【0029】
【数1】

【0030】
:原白布の反射率
:汚染布の反射率
:洗浄後の汚染布の反射率
上記反射率は各汚染布における中央点の平均反射率である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の粉状洗剤は全自動洗濯機だけでなく、2槽式洗濯機にも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも石鹸、ビルダーおよび水酸基を2個以上有する低分子量の有機化合物を配合してなることを特徴とする粉状洗剤。
【請求項2】
前記有機化合物の配合量が粉状洗剤全量に対して1〜7重量%であることを特徴とする請求項1に記載の粉状洗剤。


【公開番号】特開2006−306934(P2006−306934A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128262(P2005−128262)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(592115733)澁谷油脂株式会社 (1)
【Fターム(参考)】