説明

粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機

【要約書】
本発明は、粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機であって、粉砕機のドラムのチャンバ内の粉砕媒体の前記運動が、振動装置及びドラムの回転によって引き起こされる粉砕機に関する。本発明による粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機はフレーム5に取り付けられる。粉砕機は、1つ又は複数のドラム1と、軸3又は8を有する振動装置と、ドラム1用の支持構造体2と、慣性力の釣合いウェイト9とを有する。粉砕機は歯車4も備える。ドラム1は、ドラム1の回転軸n2に対して偏心寸法e2だけ互いに交互にずらされた3つの平行なチャンバ13を有する。振動装置の軸8は、フレーム5のベアリングに取り付けられる。ドラム1の二重偏心軸3も、フレーム5のベアリングに取り付けられる。ドラム1の偏心軸3上に取り付けられたドラム1用支持構造体2が存在する。1つのドラム1を有する粉砕機の場合、慣性力の釣合いウェイト9は、フレーム5のベアリングに取り付けられる。本発明による粉砕機は、2つ以上のドラム1を含み、また偏心軸3上に取り付けられたドラム1用支持構造体2を備える。粉砕機は、粉砕機の第2及び次のドラム1の回転運動n2を生じさせる歯車4を備える。ドラム1は装入物10で充填され、方向ω1における前記ドラムの回転中、装入物は、振動装置によって生成される接線方向の力にさらされ、前記力は、ドラム1のチャンバ13の回転中心11まわりで方向ω2に沿って作用する。回転中心11は、チャンバ13の断面の中心点に関して寸法e2だけずらされ、これらの点はどちらも、ドラム1のチャンバの空き空間12内に位置する。ドラム1のチャンバ内部で循環する装入物10の層の厚さは、gからg+2eの範囲内になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機であって、粉砕機のドラム・チャンバ内の粉砕媒体の運動が、振動装置によって、またドラム自体の回転によって強制される粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
ポーランド特許出願第P.320538号に記載される振動式粉砕機は、ブラケット上に取り付けられた1つ又は複数のチャンバを含み、このブラケットにおいて、ブラケット・ベアリングの取り付け具がそれによって位置付けられる。前述の取り付け具はチャンバと共に振動式アセンブリを構成し、これは機械的且つ運動学的な振動装置によって駆動され、この振動装置は2つの軸を含み、これらの軸は、ベアリング内に位置すると共に、ベアリングを有する偏心器を備えている。この振動式アセンブリはまた、偏心したマス・ウェイト(mass weight)も備え、これらのマス・ウェイトの重心は、振動式アセンブリの重心に対して180°だけずらされている。1つ及び/又は2つの軸に対して少なくとも1対のベアリングが、ホルダに取り付けられた弾性要素の中に位置付けられる。振動装置の両方の軸上には少なくとも1つの容器が存在し、この容器は、負荷の小さい要素を構成する自由質量(free mass)の形の付加的なウェイトを収容する。
【0003】
ポーランド発明出願第P.359118号に記載される一連のチャンバを有する回転振動式粉砕機は、一方の側では入力枢軸のところで、他方の側では出力要素のところでベアリング上に支持されたドラムを含む。粉砕機の支持構造体が、組み合わせた基礎の上に取り付けられた6つの振動装置の上に配置される。粉砕機のドラムは、ドラムの回転軸線に対して互いに交互に偏心させた3つの円形チャンバを含む。チャンバの円形の断面並びにそれらの偏心率は、ドラムの回転中にこれら3つのチャンバにおいて生じる遠心力が互いに釣り合うように選択される。それらの回転軸線に対するドラム・チャンバの内側断面のこの偏心ずれによって、粉砕媒体並びに粉砕された材料の振動が引き起こされる。粉砕機のドラムの回転は、粉砕媒体及び粉砕された材料に影響を及ぼす遠心力が重力より数倍強くなるように選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周知の回転振動式粉砕機の構造の欠点は、その粉砕効率が低いことであり、それは、振動運動の鉛直方向の力しか粉砕媒体及び粉砕された材料に影響を及ぼさないことに起因する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機の構造の本質は、かなり大きい遠心力を発生させて、粉砕機のドラム内の装入物、すなわち粉砕媒体及び粉砕された材料に影響を及ぼすことである。前述の力は、ベアリングとドラムの支持構造体とに位置付けられた2つの偏心軸を含む機械的且つ運動学的な振動装置によって、並びに偏心した位置にあるチャンバを有するドラムの回転によって生成される。機械的且つ運動学的な振動装置は、円形の軌道に沿った運動を行う。機械的且つ運動学的な振動装置は、2つの偏心軸上に取り付けられたドラム用支持構造体を含む。振動装置は粉砕媒体の運動を生じさせ、粉砕媒体は円形の軌道に沿って振動し、こうして粉砕媒体と粉砕された材料の両方が、ドラム・チャンバ内で振動装置の運動の方向と反対の方向に運動するようになる。偏心した位置にあるチャンバを有するドラムの適切に選択された回転速度によって引き起こされる、ドラムそれ自体の偏心した軸線を中心にした別の回転運動により、粉砕媒体及び粉砕された材料に影響を及ぼす力がさらに増大する。偏心した軸線を中心にしてドラムが回転することよって生じる粉砕媒体の回転運動を伴う振動装置によって引き起こされる、回転する粉砕媒体の振動運動の組み合わせにより、粉砕媒体の遠心力は著しく増大し、またドラム・チャンバ内で粉砕された材料と共に回転する粉砕媒体の層が形成されるが、前記層の厚さはそれによって違いが生じるようになっている。回転する粉砕媒体及び粉砕された材料のこの異なる厚さにより、遠心力に加えてドラムの断面に接する方向の力が生じ、それが粉砕媒体と粉砕された材料の両方に影響を及ぼす。
【0006】
本発明の粉砕機に存在する高められた遠心力は、往復動によって粉砕された材料の粉末化を引き起こし、付加された接線方向の力は、粉砕機内にある材料の摩耗を引き起こす。
【0007】
本発明の粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機は、機械的且つ運動学的な振動装置、1つ又は複数のドラム、及び1つの歯車を含む。1つ又は複数のドラムはそれぞれ、装入物が充填される1つ又は複数のチャンバを含むことができる。円形の軌道に沿った運動を生じさせる機械的且つ運動学的な振動装置は、ベアリングによって2つの偏心軸上に取り付けられたドラム用の支持構造体で構成される。単一のドラムを含む粉砕機の場合、振動装置の回転によって生じる、ドラムの支持構造体に影響を及ぼす遠心力は、さらに取り付けられる釣合いウェイトの質量によって釣り合わされる。さらに多数のドラムを含む粉砕機の場合、個々のドラムそれぞれが、その支持構造体と共に、振動装置の1つの要素であるクランク軸に影響を及ぼす慣性力に対してそれ自体で釣合いウェイトを構成する。粉砕機が2つ以上のドラムを含み、ドラムのそれぞれが2つ以上のチャンバを有する場合、2つの部分からなる2つの二重偏心軸がベアリングに取り付けられる。二重偏心軸の2つの部分からなる構造によって、ベアリング及びドラムの支持構造体を取り付けることが可能になる。各ドラムは、ベアリングに回転自在に取り付けられる。単一チャンバのドラムの場合、チャンバの軸線は、2つの枢点によって画定されるドラムの回転軸に関して所定の偏心寸法だけずらされる。2つ以上のチャンバを有するドラムの場合、これらのチャンバは互いに平行に配置され、ドラムの回転軸線に関して所定の偏心寸法だけ互いに交互にずらされる。1つのドラム及びその支持構造体の慣性力に対する釣合いウェイトとして、2つ以上のドラムがその支持構造体と共に存在しており、それらの慣性力の合計は最初のドラムの慣性力に等しい。本発明のただ1つの粉砕機における粉砕機ドラムの大きさは任意であるが、振動装置の運動によって生じる、ドラムに影響を及ぼす発生した慣性力が互いに釣り合わされるように選択しなければならない。粉砕機の個々のドラムの偏心軸を中心にした回転は、任意の必要な粉砕のパラメータに従って自由に選択することができる。こうして、粉砕された材料の必要な粒径分布を達成することができる。その支持構造体を介してエンジンによって駆動される振動装置の軸の回転によって、ドラムの円形の軌道に沿った運動を生じさせ、それにより、粉砕媒体及び粉砕された材料の均一な円形運動が引き起こされる。粉砕機のドラムの個々の枢軸は、必要な回転の方向に応じて任意のベルト、チェーン、歯車又は他の伝動装置により振動装置の軸に接続され、それによって、粉砕機の1つ又は複数のドラムの偏心回転運動を生じさせることができる。各ドラムの個々のチャンバは、遮蔽膜によって隔てることが可能であり、ドラムの回転軸線に対して所定の偏心寸法だけ交互にずらされる。
【0008】
本発明で記載される粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機の利点により、これまでに知られている粉砕機に比べて、粉砕媒体及び粉砕された材料に影響を及ぼすかなり強い遠心力が得られる。ドラムのそれ自体の軸線のまわりの回転と組み合わせた、円形の軌道に沿った振動装置の振動運動により、これまでに知られている垂直方向の振動のみを用いる回転振動式粉砕機に比べて効果的な粉砕が得られる。
【0009】
粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機の実施に関する実例を図面に示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】2つのドラムを有する粉砕機の運動の仕組みを示す図である。
【図2】2つのドラムを有する粉砕機の運動の仕組みを横方向の投影図として示す図である。
【図3】3つのドラムを有する粉砕機の運動の仕組みを示す図である。
【図4】1つのドラムを有する粉砕機の運動の仕組みを示す図である。
【図5】動作中の粉砕機のチャンバにおける粉砕媒体及び粉砕された材料の位置する、チャンバの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機は、フレーム5と、1つ又は複数のドラム1と、偏心軸3を有する振動装置と、ドラム1用支持構造体2と、歯車4とを含む。単一のドラム1を含む本発明の粉砕機の場合、振動装置は、偏心軸8と、粉砕機の動作中にドラムの釣合いウェイト1を構成する、支持構造体2上に位置する付加質量9とを備える。ドラム1は3つの平行なチャンバ13を有し、それらのチャンバ13は、ドラム1の回転軸線に対して偏心寸法e2だけ交互にずらされている。エンジンによって駆動される軸3又は振動装置の軸8は、フレーム5のベアリングに取り付けられる。偏心軸3上のベアリングに偏心寸法「e1」で取り付けられたドラム1の支持構造体2が存在し、ドラム1は、その支持構造体上のベアリングに回転自在に取り付けられる。回転は、エンジンから偏心軸3へ、さらにはそれらの軸から歯車4を介して第2の次のドラム1の軸3へ伝えられる。3つのドラムを有する粉砕機の場合、より小さい直径の2つのドラム6が共通の支持構造体上に取り付けられており、それらは、追加の歯車7によってさらに結合することができる。2つ以上のドラム1からなる粉砕機の場合、ドラム1用の支持構造体2は偏心軸3上に取り付けられる。
【0012】
粉砕機の動作中、チャンバ13内の装入物10、すなわち粉砕媒体及び粉砕された材料の回転「ω2」は、ドラム1のチャンバ13の回転「ω1」と反対になる。チャンバ13が、点11を通り、チャンバ13の中心から偏心寸法「e2」だけずれた軸線を中心にして回転する間、装入物10の層の厚さは、gからg+2eの範囲内で変化する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕媒体の二重強制運動を伴う粉砕機であって、
1つ又は複数のチャンバを有するドラムと、
ベアリングに取り付けられた2つの軸によって作られる機械的且つ運動学的な振動装置であって、ベアリングを有する偏心器を備え、またウェイトも備えている振動装置と
を有する粉砕機において、
前記ドラムの複数の円形チャンバが、該ドラムの軸線に関して交互に偏心されており、前記粉砕機が、ベアリングによって回転自在に取り付けられた1つ又は複数のドラム(1)を含み、一方、前記1つ又は複数のドラム(1)は、円形の軌道に沿った該1つ又は複数のドラム(1)の振動と同時に、それ自体の偏心した軸線を中心にして回転し、さらに、この粉砕機は、機械的且つ運動学的な振動装置及び歯車(4)を含み、一方、円形の軌道に沿った振動運動を伴う前記機械的且つ運動学的な振動装置は、エンジンによって駆動される2つの偏心軸(3)上のベアリングに取り付けられた前記ドラム(1)の支持構造体(2)を含み、一方、前記振動装置は、偏心軸(3)を介して粉砕機のフレーム(4)上のベアリングに取り付けられ、一方、前記歯車(4)は、前記偏心軸(3)を前記ドラム(1)の枢軸と結合することを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
各ドラム(1)が偏心した位置にある1つ又は複数のチャンバ(13)を含み、該1つ又は複数のチャンバ(13)は、前記ドラム(1)の回転軸線に関して偏心寸法(e2)だけ交互にずらされ、一方、前記チャンバ(13)は装入物(10)で充填される、請求項1に記載の粉砕機。
【請求項3】
前記ドラム(1)の前記支持構造体(2)を通して前記ドラム(1)に影響を及ぼす、前記粉砕機に生じる慣性力が、前記粉砕機の残りのドラム(1)によって釣り合わされる、請求項1に記載の粉砕機。
【請求項4】
2つ以上のドラム(1)を含む粉砕機の場合、前記粉砕機の残りのドラム(1)がそれぞれ、任意の直径、任意の長さ及び任意の数のチャンバ(13)を有している、請求項1に記載の粉砕機。
【請求項5】
前記フレーム(5)内に位置する前記ベアリングに、2つの部分からなる、2つの二重偏心軸(3)が取り付けられる、請求項1に記載の粉砕機。
【請求項6】
前記粉砕機の各ドラム(1)の回転速度が異なることが可能である、請求項1に記載の粉砕機。
【請求項7】
前記歯車(4)が、前記偏心軸(3)の回転を前記1つ又は複数のドラム(1)の前記枢軸上に伝える、請求項1に記載の粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−538810(P2010−538810A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523977(P2010−523977)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【国際出願番号】PCT/PL2008/000063
【国際公開番号】WO2009/035353
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510065791)
【Fターム(参考)】