説明

粉砕装置

【課題】 被粉砕物の粉砕時の発熱を極力抑えながらも、多くの粉砕時間を要する被粉砕物の粉砕を確実に行える粉砕装置を提供する点にある。
【解決手段】 被粉砕物を収容する凹部1が形成された石臼2と、この石臼2の上端開口部から内部に突入して収納された被粉砕物を粉砕するために上下動可能に構成された杆体3とからなる粉砕装置において、前記凹部1を、それの上端開口部側ほど狭くなる窄まり形状に構成したことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被粉砕物を粉砕する際に熱を発生しないように石臼を用いることによって、香気成分を逃がさないようにし、香気成分を反応させて熟成させるために長時間の粉砕時間を必要とする被粉砕物、例えばカレー粉を構成するターメリック、コリアンダー、クミン、フェネグリーク、コショウのうちの少なくとも2種以上の香辛料を混合したものを粉砕するものに特に有効となる粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記粉砕装置としては、例えば米、麦、豆などの被粉砕物を収容する円錐面状、上端開口部に対して底部が小さくなるように形成された凹部を備えた石臼と、この石臼の凹部内に突出して収容された被粉砕物を粉砕する上下動自在な杆体とから構成されたものが既に提案されている。これは、石臼の上面の一部を水平面に対して30度を越える傾斜角度を有する傾斜面からなる排出口を形成し、この排出口側の円錐面を他の部位の円錐面よりも傾斜度を大きく設定することによって、排出口から粉砕された粉砕物をスムーズに排出することができるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭58−163451号公報(図1、図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の粉砕装置では、粉砕された粉砕物の排出を迅速に行うことができるように改良されたものであるため、米などの粉砕時間をあまり必要としないものにおいては有利になるが、カレー粉を構成するターメリック、コリアンダー、クミン、フェネグリーク、コショウのうちの少なくとも2種以上の香辛料を混合したものを粉砕するものにおいて、カレー粉に適した粒度にまで微粉砕することができないことがあった。
【0004】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、被粉砕物の粉砕時の発熱を極力抑えながらも、多くの粉砕時間を要する被粉砕物の粉砕を確実に行える粉砕装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述の課題解決のために、被粉砕物を収容する凹部が形成された石臼と、この石臼の上端開口部から内部に突入して収納された被粉砕物を粉砕するために上下動可能に構成された杆体とからなる粉砕装置において、前記凹部を、それの上端開口部側ほど狭くなる窄まり形状に構成している。
従って、凹部内に収納された被粉砕物が凹部の上端開口部から突入した杆体にて粉砕されることになるが、杆体との接当により飛び散ったり、粉砕されて弾き飛ばされた粉砕物が狭くなった上端開口部から外部に排出され難くすることができ、粉砕時間を長くすることができる。
【0006】
前記上端開口部を形成する石臼の上面のうち、少なくとも一部を外方側ほど下方に位置する傾斜面に形成してもよい。
【0007】
前記傾斜面の角度を、水平面に対して20度以下の角度に設定してもよい。
【0008】
前記凹部の底部外周縁部の特定部位又は全周を外側へ向けてオーバーハングした増大収容部を備えさせてもよい。
【0009】
前記石臼の凹部内に突入した前記杆体にて弾き飛ばされる被粉砕物が該凹部の上端開口部から外部に排出されることを接当阻止するカバー部材を、該杆体に備えさせてもよい。
【0010】
前記杆体が、上下軸芯周りで回転しながら上下動する構成であり、前記上端開口部を形成する石臼の上面の一部のみを外方側ほど下方に位置する傾斜面に形成し、前記カバー部材を前記上端開口部を覆うことができるように水平部と傾斜部とからなり、前記杆体の最下降位置において、前記カバー部材が前記上端開口部を閉塞するように、該杆体の回転とカバー部材の上下動とを同期させてもよい。
【0011】
前記被粉砕物を、カレー粉を構成するターメリック、コリアンダー、クミン、フェネグリーク、コショウのうちの少なくとも2種以上の香辛料を混合したものから構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
石臼を利用して被粉砕物を粉砕することによって、被粉砕物の粉砕時の発熱を極力抑えることができる。しかも、石臼に形成される凹部を、それの上端開口部側ほど狭くなる窄まり形状に構成することによって、排出口から粉砕途中の粉砕物が直ちに排出されることがなく、長時間に渡って粉砕することができ、多くの粉砕時間を要する被粉砕物の粉砕を確実に行える粉砕装置を提供することができる。
【0013】
上端開口部を形成する石臼の上面のうち、少なくとも一部を外方側ほど下方に位置する傾斜面に形成することによって、凹部内の粉砕された粉砕物を外部に取り出し易くなり、粉砕作業を能率よく行うことができる。前記傾斜面の角度を、水平面に対して20度以下の角度に設定することによって、粉砕物の外部への取り出し作業の容易性と排出口から粉砕物の外部への排出の困難性とを同程度に図ることができる。
【0014】
凹部の底部外周縁部の特定部位又は全周を外側へ向けてオーバーハングした増大収容部を備えさせることによって、収納体積を増大させて粉砕能力を高めることができる。
【0015】
石臼の凹部内に突入した杆体にて弾き飛ばされる被粉砕物が凹部の上端開口部から外部に排出されることを接当阻止するカバー部材を、杆体に備えさせることによって、上端の開口部から粉砕された粉砕物が排出されることをより一層抑制することができる。
【0016】
杆体が、上下軸芯周りで回転しながら上下動する構成であり、上端開口部を形成する石臼の上面の一部のみを外方側ほど下方に位置する傾斜面に形成し、カバー部材を上端開口部を覆うことができるように水平部と傾斜部とからなり、杆体の最下降位置において、カバー部材が上端開口部を閉塞するように、杆体の回転とカバー部材の上下動とを同期させることによって、杆体が回転しながら下降して被粉砕物を粉砕する最下降位置においてカバー部材が上端開口部を覆った状態になっているため、上端の開口部から粉砕された粉砕物が排出されることを確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に、カレー粉を構成するターメリック、コリアンダー、クミン、フェネグリーク、コショウのうちの少なくとも2種以上の香辛料を混合した被粉砕物を粉砕するための粉砕装置(スタンプミルとも言う)を示している。前記粉砕装置は、被粉砕物を収容する複数(6個又は12個のものなどがあるが、何個であってもよい)の凹部1が円周に沿って所定間隔をおいて形成された石臼2(石臼の個数も何個であってもよい)と、この石臼2の上端開口部2Aから内部に突入して収納された被粉砕物を粉砕するために上下動可能に構成された複数の(凹部1の数と同数に設定されている)断面形状が円形で棒状の杆体3とを備えている。ここでは、円形の粉砕装置を示しているが、一列に凹部と杆体とが併設された横型の粉砕装置であってもよい。又、粉砕効率は低下するが、凹部1と杆体3とをそれぞれ1個のみ設けて実施することもできる。
【0018】
図1に示すように、前記石臼2を、基礎コンクリート4上に配置すると共に、該石臼2の外周部に該石臼から排出される粉砕物を搬送するための円型振動コンベア5を配置している。前記石臼2の外周縁上面の特定複数箇所から縦フレーム6を立設し、これら縦フレーム6の上下2箇所に上部フレーム7及び下部フレーム8を連結している。粉砕装置の中心部に上下方向に貫通する駆動回転軸9をそれの上下両端で回転自在に支持させ、図2に示すように、電動モータ10からの動力が第1伝導ベルト11、減速機12、第2伝導ベルト13を介して駆動回転軸9の上端に嵌着された大径プーリ14に伝達されることにより、駆動回転軸9を駆動回転するように構成している。前記駆動回転軸9の上下2箇所に、前記各杆体3に固定された円形の回転子15に接当して該回転子15を回転させながら上下方向に移動させることにより該杆体3を上下動させるための上下一対の回転カム16,17を該駆動回転軸9と一体回転自在に嵌合している。図1に示す18は、被粉砕物を貯留しておくためのホッパーであり、このホッパー18に貯留された被粉砕物を受け取って凹部1の投入口1Tに落下供給させるためのシュート19を各凹部1に対応させて設けている。図2に示すMは、前記円型振動コンベア5を駆動するための電動モータである。
【0019】
図3に示すように、前記凹部1を、それの上端開口部1K側ほど狭くなる窄まり形状に構成している。つまり、凹部1の上端部内面1Aを上側に位置するほど外側に膨出しながら内側に寄ってくるR処理を施して、杆体3の上下動によって粉砕される凹部1内の被粉砕物が、図3の矢印に示すように上方に移動し、凹部1の排出口1Hを介して外部に排出されることなく、凹部1の上端部内面1Aの案内作用により凹部1の中心部側に移動しながら下方へ落下するようになっている。図に示す1Bは、凹部1のほぼ中央に形成した窪み部であり、凹部1内に貯留された被粉砕物を窪み部1Bに集めることによって、粉砕効率を高めることができるようになっている。前記上端部内面1Aを外側に膨出する曲面とすることによって、凹部1内の被粉砕物が排出口1Hからより一層出にくくすることができるが、内側に膨出する曲面に構成してもよいし、又、上端開口部1K側ほど狭くなる構成であれば、曲面を直線にして実施してもよい。
また、前記上端開口部1Kを形成する石臼2の上面のうち、少なくとも一部、つまり排出口1H側の上面を外方側ほど下方に位置する傾斜面1Yに形成している。そして、前記投入口1T側の上面1Xは水平面になっている。
【0020】
図3では、傾斜面1Yの角度θを、水平面に対してほぼ30度の角度に設定したが、図4に示すように、水平面に対して20度以下(図では15度である)の角度θ1に設定することによって、粉砕された粉砕物が排出口1Hからさらに出にくくすることができる。
又、図5に示すように、上端開口部1K全体を傾斜面1Yとしてもよい。この場合の傾斜角度θ2は8度前後にしているが、何度であってもよいが、20度以下が好ましい。
【0021】
図6に示すように、前記凹部1の底部外周縁部の特定部位(図では左右の2箇所であるが、1箇所又は3箇所以上、あるいは全周でもよい)を外側へ向けてオーバーハングした増大収容部1C,1Cを備えさせて実施することもできる。
【0022】
図7に示すように、前記石臼2の凹部1内に突入した前記杆体3にて弾き飛ばされる被粉砕物が該凹部1の上端開口部1Kから外部に排出されることを接当阻止するための水平で平板状のカバー部材20を、該杆体3に備えさせてもよい。前記カバー部材20を、図7の2点鎖線で示す位置、つまり、杆体3の最下降位置(図の2点鎖線で示している)において、凹部1内に一部が入り込むようにカバー部材20の取付位置及び大きさを考慮して杆体3に取り付けることによって、排出口1Hをカバー部材20にてできる限り閉じることができるようにして、杆体3にて弾き飛ばされる被粉砕物が凹部1の上端開口部1Kから外部に排出されることを阻止することができるようにしている。
【0023】
前記石臼2が水平な上面1Xと傾斜面1Yとを備えている構成では、図7のように水平なカバー部材20では、排出口1Hを完全に覆うことができない。このため、図8に示すように、前記カバー部材20を、前記上端開口部1Kを覆うことができるように水平部20Aと傾斜部20B(傾斜面1Yとほぼ同一の傾斜角度を有する)とからなり、前記回転しながら上下動する杆体3の最下降位置(図に2点鎖線で示している)において、前記カバー部材20が前記上端開口部1Kをほぼ閉塞するように、該杆体3の回転とカバー部材の上下動とを同期させるタイミングに設定することによって、排出口1Hからの被粉砕物が外部に排出されることを確実に阻止することができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】粉砕装置の概略を示す全体縦断面図である。
【図2】粉砕装置の概略を示す全体平面図である。
【図3】第1の石臼の縦断面図である。
【図4】第2の石臼の縦断面図である。
【図5】第3の石臼の縦断面図である。
【図6】第4の石臼の縦断面図である。
【図7】杆体に第1のカバー部材を取り付けた第1の石臼の縦断面図である。
【図8】杆体に第2のカバー部材を取り付けた第1の石臼の縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 凹部
1Y 傾斜面
1K 上端開口部
1A 上端部内面
1X 上面
1T 投入口
1H 排出口
1B 窪み部
1C 増大収容部
2A 上端開口部
2 石臼
3 杆体
4 基礎コンクリート
5 円型振動コンベア
6 縦フレーム
7 上部フレーム
8 下部フレーム
9 駆動回転軸
10 電動モータ
11 伝導ベルト
12 減速機
13 伝導ベルト
14 大径プーリ
15 回転子
16,17 回転カム
18 ホッパー
19 シュート
20 カバー部材
20B 傾斜部
20A 水平部
θ,θ1,θ2 角度
M 電動モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被粉砕物を収容する凹部が形成された石臼と、この石臼の上端開口部から内部に突入して収納された被粉砕物を粉砕するために上下動可能に構成された杆体とからなる粉砕装置において、前記凹部を、それの上端開口部側ほど狭くなる窄まり形状に構成したことを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
前記上端開口部を形成する石臼の上面のうち、少なくとも一部を外方側ほど下方に位置する傾斜面に形成してなる請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記傾斜面の角度を、水平面に対して20度以下の角度に設定してなる請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記凹部の底部外周縁部の特定部位又は全周を外側へ向けてオーバーハングした増大収容部を備えさせてなる請求項1〜3のいずれかに記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記石臼の凹部内に突入した前記杆体にて弾き飛ばされる被粉砕物が該凹部の上端開口部から外部に排出されることを接当阻止するカバー部材を、該杆体に備えさせてなる請求項1〜4のいずれかに記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記杆体が、上下軸芯周りで回転しながら上下動する構成であり、前記上端開口部を形成する石臼の上面の一部のみを外方側ほど下方に位置する傾斜面に形成し、前記カバー部材を前記上端開口部を覆うことができるように水平部と傾斜部とからなり、前記杆体の最下降位置付近において、前記カバー部材が前記上端開口部を閉塞するように、該杆体の回転とカバー部材の上下動とを同期させてなる請求項5に記載の粉砕装置。
【請求項7】
前記被粉砕物が、カレー粉を構成するターメリック、コリアンダー、クミン、フェネグリーク、コショウのうちの少なくとも2種以上の香辛料を混合したものからなる請求項1〜6のいずれかに記載の粉砕装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−29780(P2007−29780A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212597(P2005−212597)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】