説明

粉粒体の定量供給装置

【課題】予め測定された流動特性データと定量供給データに基づいて、粉粒体の材質、粒径、管路の傾斜角度、振動数、振幅などの各種パラメータに応じて最も望ましい流動性の状態で微定量供給することが出来る粉粒体の微定量供給装置を得ることである。
【解決手段】粉粒体の定量供給装置Aは、垂直乃至傾斜状に保持された、長さ方向に同一径の管路1と、この管路1の下端に所定の微小隙間δを以って対向して置かれた底板3を有する流動部10と、上記管路1と底板3それぞれの部材に取り付けた振動手段13と、振動手段13の振動数、振幅を制御する振動・演算制御部20を備え、振動・演算制御部20から振動手段13のそれぞれに送信する制御信号を送信又は停止させて振動手段13を振動または停止させ、これにより上記微小隙間から粉粒体を排出、停止制御して微定量供給するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微粒子状の粉粒体を素材とする食品、機械、医薬、塗料、焼結体等の各種分野に利用される粉粒体の定量供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体は、金属、ガラス、トナー、塗料、合成樹脂等を原材料とする各種産業分野に利用されるが、この粉粒体の流動性は、一般に安息角、圧縮度、凝集度、スパチュラ角、均一度、ゆるめ等粉粒体の流動性を表す各種の測定値を総合した流動性指数等の値に基づいて評価され、例えばカー(Carr)の流動性指数を評価する指数値が用いられて評価される。また、金属粉という特定の粉粒体について、日本工業規格JIS Z 2502(2000)又はISO 4490には「金属粉−流動性試験方法」が規定されており、この試験方法では標準寸法の漏斗(ホールフローメータ)におけるオリフィスを50gの金属粉が通過して流れ出る時間をストップウオッチで測定し、この時間の長短で金属粉の流動性を測定する方法について規定している。
【0003】
粉粒体は、粒径が小さくなると、重力の影響に付随して付着力の影響が大きくなって、通常の粉粒体と異なる振る舞いをするようになる。このような粉粒体の流動性を相対評価する装置や、少量供給する定量供給装置が既に種々提案されている。粉粒体の流動特性を測定する装置の例として、特許文献1の「湿潤粉体の流動性の測定方法」が公知である。この発明では、篩い網を振動手段で振動させて、漏斗またはシュートを介して試料を落下させ、安息角、ゆるめ見掛け比重等の流動特性が測定される。
【0004】
粉粒体の流動性を相対評価する粉粒体流動評価装置及び粉粒体流動性評価方法については特許文献2により提案されている。この流動性評価装置は、評価対象の粉粒体を溜めるための貯槽と、粉粒体を排出する貯留部の排出口に流入口を接続し、下端を細管状に収縮させ、垂直又は傾斜状に保持した管と、この管に振動を与える振動部と、管の振幅を測定する振動測定部と、貯槽から前記細管を通過して落下した粉粒体の重量を測定する重量測定部と、振幅測定部によって測定された振幅及び重量測定部によって測定された重量に基づいて粉粒体の流動特性を評価する評価値を演算する評価演算部とを備えたものである。
【0005】
微粉体を定量供給する装置の例として、特許文献3の「微粉体の供給方法及び装置」が公知である。この供給方法は、垂直ないし傾斜した管路を有する合成の細管を通して、50μm以下の細管に10Hz以上の振動を与える方法であり、供給装置は垂直ないし傾斜した管路を有する剛性の細管と、この細管の上端が開口するように接続された粉体貯槽と、細管を10Hz以上の周波数で振動させる振動手段と、この振動手段による細管の振動状態を制御する振動制御手段とを備えたものである。
【特許文献1】特開2002−162329号公報
【特許文献2】国際公開公報WO2006/115145号
【特許文献3】特開平8−33839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の測定方法は、安息角、圧縮度、スパチュラ角、均一度等の数値を測定するそれぞれの装置を用いて測定を行い、評価するカーの流動性指数に基づいてホッパー等の設計に利用される。しかし、この方法は湿潤粉体という特定状態の粉粒体の測定をするだけで、粉粒体の流動後の結果としての状態を測定した安息角、圧縮度、凝集度等から粉粒体の流動性を評価できるが、動的な粉粒体の状態で粉粒体の流動性を評価するものではなく、このためこの評価方法では、粉粒体の流動性を正確に反映した評価が出来ない。
【0007】
特許文献2の装置は、振動する管を流動する粉粒体は、管の振幅の大きさに応じて流動の開始点及び単位時間当たりの流動量が変化することに基づいて、落下した粉粒体の重量と測定された振幅に基づいて粉粒体の流動特性を評価する表価値を演算し、評価するようにしたものであり、垂直又は傾斜状に保持された管から振動により落下する粉粒体の動的な流動特性を測定、評価するが、振動は管にのみ与える形式であり、粉粒体の小流量の流動性を評価することは出来るが、微粉体を微定量供給することを目的とする装置ではない。
【0008】
特許文献3の微粉体の供給方法および装置は、垂直ないし傾斜状の管路の下端を細管とし、内径0.5〜2.0mmの細管を通した落下方式で毎秒数mg乃至それ以下の微小量の微粉体供給を時間に比例して与える定量供給であり、支持された管の先端に10Hz以上の振動を加えて50μ以下の微粉体を落下させ、細管を通した通過粉体流速の一定化、或いは可変制御するというものであるが、落下方式の細管を通して定量又は可変供給するため、振動数と振幅の関係において落下供給できない範囲があり、微量供給には一定の限界がある。
【0009】
また、振動は管路の下端の細管にのみ付与する形式であり、細管の内径の設定が1mm以下の場合、静止状態では振動を付与しなければ微粉体が落下せず、内径が大きくなると振動を停止しても落下する、即ち落下を停止できないことがあり、従って振動を停止させるだけでは供給を停止することが出来ず、微粉体の微量供給と停止の動作を微粉体の粒径や細管の内径の大きさ、あるいは振動の周波数、振幅、時間により一義的に制御できないという問題がある。
【0010】
この発明は、上記の問題に留意して、予め測定された流動特性データと定量供給データに基づいて、粉粒体の材質、粒径、管路の傾斜角度、振動数、振幅などの各種パラメータに応じて最も望ましい流動性の状態で微定量供給することが出来る粉粒体の微定量供給装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記の課題を解決する手段として、垂直乃至傾斜状に保持された、長さ方向に同一径の管路と、この管路の下端に所定の微小隙間δを以って対向して置かれた底板を有する流動部と、上記管路と底板それぞれの部材に取り付けた振動手段と、振動手段の振動数、振幅を制御する振動・演算制御部を備え、振動・演算制御部から振動手段のそれぞれに送信する制御信号を送信又は停止させて振動手段を振動または停止させ、これにより上記微小隙間から粉粒体を排出、停止制御して微定量供給するようにした粉粒体の定量供給装置の構成としたのである。
【0012】
上記の構成としたこの発明による粉粒体の定量供給装置によれば、演算制御部から振動手段のそれぞれに送信する制御信号を送信又は停止させて振動手段を振動または停止させ、これにより上記微小隙間から粉粒体を排出、停止制御して微定量供給することが出来る。振動・演算制御部により粉粒体の微定量供給をする場合、定量供給すべき粉粒体の材質、粒径やその粒子に適する傾斜角度θを流動性評価用データ記憶部の流動性評価プログラムにより評価したデータを表示器に表示し、その評価に基づいて定量供給パラメータ設定部により必要な各種パラメータ値を設定し、必要な制御信号を微定量供給演算部により演算する。
【0013】
上記測定データは、粉粒体の材質、粒径、管路の傾斜角度θ、所定隙間δ、振動数、振幅の6つの設定値をパラメータ値として、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)の累積値のデータから測定したデータが使用される。なお、測定されたデータについてパラメータ値が異なる場合、補完法により単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)と単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)の累積値についてのデータを演算して作成する。
【0014】
これらのデータを用いて制御に必要な信号を生成し、必要な制御信号が生成されると、傾斜角度θを所定の角度状態に、微小隙間δを所定の状態に調整して制御信号を振動手段に送信し、そのオン、オフ信号で上記微小隙間δから粉粒体を排出、停止制御する。上記微定量供給の制御データは、補完法による未測定のデータであっても、連続した時間定量供給し得るデータであって、測定時間の経過の途中で、或いは振動手段への制御信号を送信しても粉粒体が供給されないという不都合がなく、所望の粉粒体の連続的な供給ができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の粉粒体の定量供給装置は、長さ方向に同一径の管路とこの管路の下端に対向して置かれた底板を有する流動部と、上記各部材に取り付けた振動手段と、振動手段の振動数、振幅を制御する振動・演算制御部を備え、振動・演算制御部から振動手段のそれぞれに送信する制御信号を送信又は停止させて振動手段を振動または停止させ、これにより上記微小隙間から粉粒体を排出、停止制御して微定量供給するようにしたから、制御部からの制御信号又はその停止信号により粉粒体の供給、停止を自在に、かつ効率的に制御でき、粉粒体という特殊な流動性物質の微定量供給を可能とするという顕著な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は実施形態の粉粒体の定量供給装置の全体概略図である。図示の粉粒体の定量供給装置Aは、上端に開放状の漏斗部2を有する垂直乃至傾斜状に保持された、長さ方向に同一径の管路1、及びこの管路1の下端に所定の微小隙間δを以って対向して置かれた底板3を有する流動部10と、上記それぞれの部材に取り付けた振動手段13(13a、13b)(振動付与手段)と、振動手段13による振動数、振幅を制御すると共に、測定される管路1の振動の状態を表す信号から流動・供給状態を演算、制御する振動・演算制御部20(パソコン又はマイクロコンピュータ)を備えている。なお、流動部10は上記部材1〜3と下記の部材〜9を含む。
【0017】
上記管路1は、全長が長さ方向に同一径のストレート形状の管から形成され、基台6上に垂直な支持柱5に取り付けた水平な支持部材4a、4aによりその途中を保持している。管路1の管の内径は、粉粒体の微定量供給に適合する径に相当する寸法であり、通過する粉粒体の種別(材質)や粒径(大きさ)に応じて適宜設定され、管路1の管の外径は振動手段13による振動で破損しない程度の強度を有する厚さの適宜径に設定される。管路1の長さは、振動手段13による振動が管路全体に伝播すれば特定長さに限定されず、粉粒体の種別や粒径に応じて適宜長さに設定されるが、装置の小型化の観点から数百ミリ程度のものが好ましい。
【0018】
なお、管の材料として図示の例ではガラス管を使用しているが、ガラス以外にも硬質の合成樹脂材、又は金属(鋼、銅等)のいずれとしてもよい。管路1の上端には漏斗部2が形成され、この漏斗部2に対してレベルセンサ16が適宜位置に取り付けられており、簡略表示されている補助ホッパーHから供給される粉粒体が漏斗部2内で常に所定レベルに保持されているかを監視している。補助ホッパーHは、傾斜状の供給ホッパーHから図示しない駆動部により定量的に粉粒体が供給されるものとする。また、1aは、保護管である。
【0019】
レベルセンサ16は、例えばレーザ光を照射し、その反射光の受光信号からレベルの高さを測定できる光センサ方式、或いはこれに相当する手段を用いる。上記管路1の下端に対向して設けられている底板3は、粉粒体を微少定量供給可能とするため、図2に示すように、底板の取付け部3aにより数mmレベル又はそれより小さい微小隙間δを以って設置されている。この底板の取付け部3aには、隙間調整ダイヤル3bが取り付けられており、ダイヤルゲージ(図示せず)を見ながら隙間を調整可能に構成されている。なお、図示の例では、微小隙間δは、隙間調整ダイヤル3bにより手動で調整されるが、これをシリンダー等の駆動部を有し、制御信号により駆動する電気、機械駆動形式のものとしても良い。
【0020】
なお、支持部材4a及び底板3は、図1に示す例では支持柱5に対して水平状に取り付けた状態で示しているが、支持柱5に対して回転基板9が取り付けられており、この回転基板9を介して支持柱5を除く流動部10の全体を任意の傾斜角度に傾斜自在に取り付け、制御部からの支持により所定角度に保持可能としている。この場合、図示していないが、回転基板9にはモータ又はこれに相当するアクチュエータ(例えばシリンダー又は電磁ソレノイドとリンク部材の組み合わせにより直線運動を回転運動に変換するユニット等)を有する回転駆動部を備え、後述する振動・演算制御部20からの制御信号により傾斜角度θを所定の角度に設定できるようにしている。この傾斜角度θは設定すべきパラメータ値の一つでもある。
【0021】
ただし、必ずしもこの回転基板9と回転駆動部は設けなくてもよい。その場合は、図示していないが、上端の接続端の角度がそれぞれ異なる傾斜角度の傾斜接続部材を基台6上に取り付け、上記支持柱5を所望の傾斜角度を有する傾斜接続部材にその都度接続、固定して、その傾斜接続部材により設定される所定角度に固定し、それぞれ所望の傾斜状となるように取り付けるようにしてもよい。これにより、支持柱5や管路1、底板3を含む流動部10の全体を必要に応じて所定の傾斜角度θの傾斜状に設定できる。
【0022】
上記いずれの場合も、管路1の下端と底板3との間の微小隙間δを通過した粉粒体の重量を測定できるように基台6上には電子天秤7が設置されている。振動手段13として、図示の例では、圧電素子が取り付けられている。振動手段13の具体的手段としては、圧電素子に限らず、所定範囲内の低振動数の振動を発生することが出来る電磁式バイブレータ、静電式バイブレータ、電歪式バイブレータ、或いは超音波発振装置のいずれを用いてもよい。振動手段13は、図示の例では、管路1の下端付近と底板3にそれぞれ垂直方向の同一直線状で上下に並設しているが、図3に示すように互いに取り付け状態の位相を90度ずらして取り付けても良い。
【0023】
振動・演算制御部20は、この振動・演算制御部20からの信号に基づき信号発生装置11で制御信号を生成し、この制御信号を増幅器12(ドライバ)に送信し、そのオン、オフ信号を介してこの振動手段13(13a、13b)の圧電素子を振動させ、上記流動部10の管路1の下端と底板3の微小隙間δから粉粒体を排出、停止制御するように構成されている。この場合、振動数、振幅は下記の少なくとも6つのパラメータを自動設定(または一部手動設定)することにより所定の範囲内で、かつ所定の供給状態となるように可変設定できる。
【0024】
上記振動・演算制御部20にはA/D変換器15を介してレーザ振動測定器14が接続されており、このレーザ振動測定器14は管路1の下端付近での管路1の振動数、振幅を測定するように設置され、このレーザ振動測定器14による振動の振動数、振幅を測定した結果に基づいて微定量供給に必要な制御が行われる。この粉粒体の排出(供給)、停止制御を行うための微定量供給の制御については、後で制御プログラムによる制御内容と共に説明する。
【0025】
レーザ振動測定器14は、所定パルス間隔のパルス光をそれぞれ管路1の下端付近に照射し、その対象物の反射光から振動の振幅、周期を所定のサンプリング間隔で測定し、その測定信号をA/D変換器15を介してディジタル信号に変換し、その信号を振動・演算制御部20へ送信するように配置されている。なお、基台6に設置された電子天秤7からも粉粒体の重量を測定した信号がディジタル信号に変換されて振動・演算制御部20へ送信され、必要に応じて重量が測定される。また、定量供給の制御をする際には、気温、湿度、圧力、表面粗度、密度、付着力など定量供給に関係するパラメータ値もあるが、この発明ではその影響は小さいものとして取り扱うものとする。
【0026】
振動・演算制御部20は、粉粒体を微定量供給するための下記の少なくとも6つのパラメータ値を記憶・設定する定量供給パラメータ設定部23、レーザ振動測定器14からの測定信号により振動数、振幅のデータをCPU(中央演算部)21で算出して記憶する振動測定データ記憶部24、流動性評価用データを記憶する流動性評価用データ記憶部25、微定量供給するために必要なデータを読み出して振動手段13を制御するための制御信号を演算する微定量供給演算部26などの各種制御プログラムを固定記憶部(ROM)に記憶して備えている。なお、27は制御回路全体に必要な電源を供給する電源回路部である。
【0027】
なお、図4に示すように、振動・演算制御部20には入力手段17(キーボード、マウス等)がI/Oインターフェース22を介して接続され、上記各パラメータ値を入力信号により指定して粉粒体の微定量供給を設定する。また、振動・演算制御部20がパソコンの場合は、その表示器を利用し、マイコンの場合は図示の表示器18が接続され、それぞれの表示器に上記6つのパラメータ値や測定したデータ、評価データが表示される。
【0028】
上記入力手段17を介して、又は表示器18の表示値をクリックすることによりパラメータ値が入力されると、この所望の微定量供給に適合するパラメータ値に対応する、固定記憶部(ROM)に記憶された上記各種プログラムにおける対応するパラメータ値や測定データ、評価データに基づいてCPU21により一時記憶部(RAM)を介して演算をし、所望の微定量供給の振動を生じるに必要な制御信号を上記各種制御プログラムにより生成し、その信号を微定量供給演算部26から信号発生装置11へ送り出す。
【0029】
上記振動・演算制御部20による微定量供給を、各記億部や演算部、制御部のプログラムの説明と共に以下説明する。振動・演算制御部20おける定量供給パラメータ設定部23は、粉粒体を微定量供給するためのパラメータ値として、この供給装置で供給される粉粒体の材質、粒径、管路1の傾斜角度θ、底板3との隙間δ及び管路1と底板3の圧電素子(振動手段13)による振動数、振幅の6つのパラメータ値を、上記入力手段17を介して設定する。
【0030】
上記パラメータ値の設定は、粉粒体の材質、粒径、管路1の傾斜角度θ、所定隙間δ、振動数、振幅のそれぞれの値を個別に入力手段17からその都度入力しても良いが、これらの入力すべきパラメータ値の組み合わせは膨大な数となるため、入力すべきパラメータ値をリスト形式で設定するプログラムを別途記憶させておき、その入力パラメータ値のリストを表示器の画面上に表示させ、その表示画面上で指定することにより所定の微定量供給状態を指定することが出来るようにしておくと、効率的である。
【0031】
振動測定データ記憶部24は、レーザ振動測定器14からの測定信号により管路1の下端付近の振動数、振幅のデータをCPU(中央演算部)21で算出して記憶する。そして、実際に微定量供給の制御をする際には、この記憶部に記憶されたデータは、その応答のずれが所定の範囲以内であるかを判定するのに用いられる。即ち、振動手段13による振動入力に対する管路1全体の振動状態を表す応答信号として参照され、下記の微定量供給演算部26で演算する際に予め測定されたデータに基づいて所望の微定量供給を実行できるように制御対象の粉粒体の振動数、振幅が設定される。
【0032】
さらに、電子天秤7からも粉粒体の重量を測定した信号がディジタル信号に変換されて
振動・演算制御部20へ送られ、そのCPU(中央演算部)21を介して処理されて重量信号として振動測定データ記憶部24に記憶され、微定量供給の制御をする際に振動測定データ記憶部24に記憶された重量に関するデータを、その応答のずれが所定の範囲以内であるかを判定するのに用いられる。即ち、重量が単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)の累積値等のデータとして適切な範囲内のデータであるかを、測定されたデータを基準として判定するのに用いられる。
【0033】
流動性評価用データ記憶部25は、さらに上記各種のパラメータ値のうち予め測定されたデータによる流動性を評価する流動性評価プログラムを有する。ただし、この流動性評価プログラムは、特許文献2に記載された評価プログラム部分を含み、かつ測定方式が異なることによる影響として、底板3と管路1の下端との微小隙間δ、傾斜角度θによる流動性の影響を加味して評価されるものとする。
【0034】
なお、上記微定量供給の制御に使用されるデータは、上記流動性評価プログラムにおいて予め流動性の評価がされ、振動手段13による振動の振動数と振幅の関係において振幅の変動が比較的少ない約250〜300Hz前後の範囲の振動数を中心に、粉粒体の材料とその微粒径により管路1の傾斜角度を最適な状態に設定して、予めその粉粒体の所望の微定量に適合する管路1の傾斜角度θ、及び振動手段13へ付与する振動数、または振幅を設定するのに基準となるデータとする。このデータは表示器18に表示され、定量供給パラメータ設定部23によるパラメータの設定に参照される。
【0035】
微定量供給演算部26は、上記定量供給パラメータ設定部23により設定された各種パラメータ値に基づき、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)の累積値等のデータに対応する振動数、振幅となるように制御するための信号を、予め粉粒体の材質、粒径、傾斜角度θ、微小隙間δに対して測定されたデータに基づき演算して生成し、その信号を信号発生装置11へ送り出す。この信号発生装置11からの制御信号は増幅器12により増幅されて振動手段13へ印加される。
【0036】
上記の振動・演算制御部20により所定の粉粒体の微定量供給をする場合、定量供給すべき粉粒体の材質、粒径やその粒子に適する傾斜角度θを流動性評価用データ記憶部25の流動性評価プログラムにより評価したデータを表示器18に表示し、その評価に基づいて定量供給パラメータ設定部23により必要な各種パラメータ値を設定し、そのデータに基づき必要な制御信号を微定量供給演算部26により演算するが、この演算は予め粉粒体の材質毎に測定されたデータから所望の微定量供給量に対応するデータを読み出す、或いは未測定のデータであっても測定済みのデータから補完法によりデータを作成して生成するものとする。
【0037】
即ち、後述するように測定データは、粉粒体の材質、粒径、管路1の傾斜角度θ、所定隙間δ、振動数、振幅の6つの設定値をパラメータとして、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)の累積値のデータから測定状態のままであれば、そのデータをそのまま使用できるが、パラメータ値が異なる場合、例えば傾斜角度θの設定状態が測定された25度以外の20度などの場合は、10度と25度のデータを用いて補完法により単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)と単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)の累積値についてのデータを演算して作成する。
【0038】
そして、これらのデータを用いて制御に必要な信号を信号発生装置11、増幅器12を介して生成する。制御信号が生成されると、まず回転基板9の回転駆動部に角度設定信号送信して傾斜角度θを所定の角度状態に設定する。なお、微小隙間δは表示器18の表示データにより手動で調整する。次に、振動を制御する制御信号を振動手段13、13に送信し、そのオン、オフ信号で上記微小隙間δから粉粒体を排出、停止制御して微定量供給する。また、電子天秤7による粉粒体の重量を測定した信号は、常に予め測定された基準データと比較され、所定範囲内の重量であるかを監視している。
【0039】
上記微定量供給の制御をする際に、設定された粉粒体の材質、粒径、管路1の傾斜角度θ、所定隙間δ、振動数、振幅の各種パラメータ値に対して、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)の累積値のデータは、未測定のデータであっても、連続した時間定量供給し得るデータである。従って、特許文献2の評価装置における測定のように、測定時間の経過の途中で、あるいは振動手段への制御信号を送信しても粉粒体が供給されないという不都合が生じることなく、所望の粉粒体の連続的な供給が可能である。
【0040】
なお、上記粉粒体の定量供給装置Aは、粉粒体の微定量供給装置として説明したが、上記振動・演算制御部20に接続された電子天秤7、レーザ振動測定器14、入力手段17からのデータに基づき記憶されたデータをCPU(中央演算部)21を介して処理し、流動性評価用データ記憶部25に記憶することにより粉粒体の定量供給装置Aを駆動するための評価装置としても使用することが出来る。この場合、測定され、かつ評価されたデータは、粉粒体の材質、粒径、管路1の傾斜角度θ、所定隙間δ、振動数、振幅の各種パラメータ値に対して、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)、単位時間当たりの粒子流動質量g/s(変化値)の累積値のデータを経過時間ごとに記録したデータである。
【実施例】
【0041】
以下、上述した実施形態の粉粒体の定量供給装置Aによる微定量供給のため、予め必要なデータを測定した測定結果の例を、図5A〜図5Fを参照して説明する。ただし、この装置では以下のデータを測定する際には、付設されている電子天秤7、レーザ振動測定器14からの信号に基づいて振動加速度や単位時間当たりの粒子流動量(g/s)の測定をするが、定量供給する際の制御時には一旦パラメータ値を設定すれば、電子天秤7、レーザ振動測定器14からの測定信号は必要がなく、一定電圧と管路1〜底板3間の微小隙間δを設定するだけで再現性の高い定量供給が出来る。
【0042】
まず、(1)図5Aは粉粒体としてシリカ粒子(酸化ケイ素粒子―SiO)(以下単にシリカという)の粒径が流動性に与える影響(粒子特性)を、振動加速度の単位でその振動状態を変化させ、単位時間当たりの粒子流動量(g/s)の変化の状態を測定して表したグラフである。横軸は振動加速度/重力加速度の比(ゲインdB)で振動状態を変化させ、縦軸をその時の単位時間当たり粒子流動質量(g/s)として測定した状態を示す。
【0043】
上記測定時の設定パラメータ値は、粒子種別:シリカ、管路1の傾斜角度θ:25度、所定隙間δ:250μ、振動数:310Hz、最大振幅 パイプ側:20μ、底板側:40μとしてシリカの粒径20μの流動特性を測定するために設定した値である。なお、上記パラメータ値の設定は、前述の特許文献2(WO2006/115145)に記載された粉粒体流動性評価装置による流動性の評価の結果を、装置の構成は異なるが、その結果はそのまま適用できることを前提として設定したものである。
【0044】
即ち、評価の際に振動数が、250〜300Hz前後の範囲では振幅が大きく変化しない、従って流動特性が安定しているから、この範囲に設定するのが好ましいとされているが、実際の調整上は共振点の振動数310Hzに設定すれば、最大振幅を利用できるため調整がし易く(効果が明確に認識できる)、定量供給の観点からはこの特定の振動数に設定してもよく、このため図示の例では傾斜角度θ、所定隙間δ、最大振幅は、この発明の粉粒体の定量供給装置Aにおいて後述する測定により得た結果から代表値として設定したものである。また、種々の粉粒体の流動特性は、所定の振動数を付与した状態で、その振幅と排出された重量の関係で評価できるとする結果を前提としている。
【0045】
上記測定例は、圧電素子の振動強さ(ゲインdB)を−60dB〜6dBとスイープさせ、その振動加速度/重力加速度gの値の変化に対応する単位時間当たりの粒子流動質量(g/s)の変化を上記代表的な粒径のシリカ粒子に対して3回測定し、そのアベレージの値を表示した測定結果である。グラフから理解されるように、粒径20μに対して振動加速度を増加するにつれて、単位時間当たりの粒子流動質量が大きくなるという流動特性が現れており、これにより流動特性を知ることが出来ると共に、その流動特性の所定の設定状態を用いて微定量供給をすることが出来ることが分かる。
【0046】
従って、シリカ粉粒体の微定量供給では、その粒子径に応じて所定の供給量が得られる振動加速度を付加する必要がある。すなわち、振動を付与する圧電素子の振動強さ(ゲインdB)の種類を粒径の大きさに応じて適宜設定することが必要となる。また、図示と説明を省略しているが、一般的に粉粒体の粒径が小さくなるほど単位時間当たりの粒子流動質量(g/s)は大きくなり、いずれの粒径の場合も単位時間当たりの粒子流動質量(g/s)は、圧電素子の振動強さ(ゲインdB)の増大と共に、ほぼ直線的に増大し、このため上記隙間δ、振幅を一定状態に設定、保持することにより、その隙間から流れ出る粉粒体の流量は時間が経過しても一定であり、微定量供給が可能である。
【0047】
(2)図5Bは、同じく粉粒体としてシリカ粒子(粒子径40μ)を選定し、管路1と底板3との隙間δが流動性に与える影響(粒子特性)を測定したグラフである。(a)図は横軸を隙間δ(単位mm)、縦軸を単位時間あたりの粒子流動質量(g/s)として、隙間δの変化に対応する流量の変化を表したものであり、(b)図は横軸に時間t(秒)、縦軸に粒子流動質量(g/s)を表し、隙間δをパラメータ値としてそれぞれの隙間δ(0.1、0.2、0.3・・・・2.4、2.6mm)毎に粒子流動質量(g)が時間tに対してどのように変化するかを測定したものである。(c)図に振動時の粒子の排出状態を示している。
【0048】
上記測定時の設定パラメータ値は、粒子種別:シリカ、管路1の傾斜角度θ:25度、所定隙間δ:可変パラメータ、振動数:310Hz、最大振幅は管路側:20μ、底板側:40μとして隙間δによる流動特性を測定するために設定した値である。図5Bの(a)図では、隙間δと流量との関係が0.1mmから0.8mmまでリニアに変化し、従って隙間δが0.1mmから2mmまではその隙間δが開くのに比例して流量が規則的に増えているが、隙間δが2.0mmを越えた時点から急激に流量が増大して、定量供給に適さなくなっている。一方、(b)図では隙間δを表示されたパラメータ値にそれぞれ設定すると、時間の経過に対して流量が変化しない、つまり定量供給されていることを示している。
【0049】
(3)図5Cは、同じく粉粒体としてシリカ粒子(粒子径40μ)を選定し、管路1と底板3との隙間δを100μに設定した状態で管路1の傾斜角度θが流動性に与える影響(粒子特性)を測定したグラフである。(a)図は横軸を流量測定時間(単位秒)、縦軸を単位時間(1秒)当たりの粒子流動質量(g/s)として、単位時間t当たりの流量の変化を所定の連続時間測定した結果を表したものであり、(b)図は横軸に測定時間(秒)、縦軸に単位時間(1秒)当たりの粒子流動質量(g)の累積値を表し、傾斜角度θをパラメータ値としてそれぞれの角度θ(0度、4度、10度、25度、40度)と変化させて粒子流動質量(g)の累積値が所定の連続測定時間tに対してどのように変化するかを測定したものである。(c)図は、角度を所定角度に設定して振動により粒子が排出される状態を示す。
【0050】
上記測定時の設定パラメータ値は、粒子種別:シリカ、管路1の傾斜角度θ:0〜40度(可変パラメータ)、所定隙間δ:100μ、振動数:310Hz、最大振幅は管路側:20μ、底板側:50μとして傾斜角度θによる流動特性を測定するために設定した値である。この測定では、傾斜角度θを0度、4度、10度、25度、40度とそれぞれに変化させると、角度毎に単位時間(1秒)当たりの粒子流動質量(g/s)は測定時間tの変化に対して一定であるが、傾斜角度θが増大するに連れて流動質量(g/s)が増加し、かつその変化はほぼ一定である。
【0051】
従って、その累積値も測定時間の経過につれて増大している。これは隙間δが傾斜角度θにより重力を受け流れやすい方向に傾くためと、管路1内の粉体に対して重力により押す力が減少することとの相対値で決まると考えられる。その影響は粒径、粒子によって違いがあると考えられるが、上記力のバランスによってある角度をピークに粒子の流量が最大を示すものと考えられる。
【0052】
(4)図5Dは、同じく粉粒体としてシリカ粒子(粒子径40μ)を選定し、連続時間の経過が流動性に与える影響(粒子特性)を測定したグラフである。(a)図は横軸を所定の連続時間(単位60秒)、縦軸を単位時間(60秒)当たりの粒子流動質量(g/s)として、連続時間の経過による流量の変化を表したものであり、(b)図は横軸に所定の連続時間t(秒)、縦軸に粒子流動質量(g/s)の累積値を表し、連続の長時間定量供給が可能かを測定したものである。
【0053】
上記測定時の設定パラメータ値は、粒子種別:シリカ、管路1の傾斜角度θ:25度、所定隙間δ:100μ、振動数:315Hz、最大振幅は管路側:30μ、底板側:18μとして連続時間の経過による流動特性の変化を測定するために設定した値である(気温17度、湿度50%)。この測定時間の経過に対する測定データは、(a)単位時間として60秒毎の流量(g/60秒)をプロットしており、供給誤差も±0.001g/秒以下(詳しくは±0.05g/60秒)と安定している。また、(b)では粒径40μの粉体の供給がリニアに行われているのが分かる。即ち、微定量供給することが可能であることを示している。
【0054】
(5)図5Eは、同じく粉粒体としてシリカ粒子を選定し、この粉粒体のナノ単位の粒径が流動性に与える影響(粒子特性)を測定したグラフである。(a)図は横軸を所定の連続時間(単位秒)、縦軸を単位時間(秒)当たりの粒子流動質量(g/s)として、所定時間の経過による流量の変化を表したものであり、(b)図は横軸に所定の時間t(秒)、縦軸に粒子流動質量(g/s)の累積値を表し、ナノ単位での粒径の所定の時間定量供給が可能かを測定したものである。
【0055】
上記測定時の設定パラメータ値は、粒子種別:シリカ(粒径=12n)、管路1の傾斜角度θ:4度、所定隙間δ:100μ、振動数:310Hz、最大振幅 パイプ側:50μ、底板側:46μと設定されている。この場合、グラフに示すように、(a)所定の測定時間の経過に対して単位時間(1秒)当たりの粒子流動質量(g/s)は、ほぼ一定の範囲内で変動し、(b)従って、その時間の累積値は所定の直線状に変化し、超微粒子である粒径12nのシリカ粒子の定量供給が可能であることを示している(気温18度、湿度56%)。上記測定データから、サブμからナノ粒子までの微量定量供給が可能であることがわかる。
【0056】
(6)図5Fは、同じく粉粒体としてシリカ粒子を選定し、この粉粒体のナノ単位の粒径と振動手段13の設定位置による流動性に与える影響(粒子特性)を測定したグラフである。上記測定時の設定パラメータ値も上記(5)のナノ粒径の流動性の測定時の場合と同じであり、従ってグラフの縦、横軸の説明、パラメータ値の設定については説明を省略する。上記測定では振動手段13の2つの圧電素子を上下平行に取り付けた場合と、相互に90度ずらして取り付けた場合の影響を測定している。
【0057】
この測定値のグラフから、圧電素子を上下平行に取り付けた場合と、相互に90度ずらして取り付けたいずれの場合であれ、(a)測定時間の経過に対して単位時間当たりの粒子流動質量(g/s)の変化は、ほぼ一定であり、(b)時間の変化に対するそれぞれの累積値の変化もほぼ一定である。ただし、上下平行に取り付けた場合の方が粒子流動質量は高くなっている。(c)図は、2つの振動手段13(13a,13b)の取付け角度を上下同位置とした場合と、互いに90度ずらして取り付けた場合の粒子の排出状態を示す(気温18度、湿度56%)。
【0058】
(7)図6Aは粉粒体の材質が異なる例として、ガラスビーズ粒子の流動性を測定した結果をグラフにしたものである。この場合は、横軸、縦軸の単位は図5C〜5Fの場合と同様であるが、ガラスビーズは上記シリカの粒径より粗大な粒径=550μ粒子が用いられている。パラメータ値の設定は、所定隙間δ:600μ、傾斜角度θ:25度、振動数:310Hz、最大振幅は測定Aでは管路側、底板側共に40μ、測定Bでは管路側:20μ、底板側:40μである。所定隙間δは、粒径を大きくしたのに対応して大きく設定している(気温17度、湿度50%)。
【0059】
測定A、Bでは、測定Aの振動の振幅を管路側で40μ、測定Bでは20μとAのほうを大きく設定したため、同じ材質の粒子であっても測定Aのほうが測定Bの場合より流動性が高くなっており、またそのいずれの場合も、単位時間当たりの粒子流動質量の変動には粒径が大きいため1個当たりの重量が重く誤差が大きくなって、若干の変動幅(ばらつき)があるが、その変動は粒子流動質量の累積値で見る限り、ほぼ一定と見做せる範囲内の変動であり、微定量供給が可能であることが分かる。
【0060】
図6Bは同じ材質のガラスビーズを用いて粒径の違いによる影響を測定したグラフである。この場合、図6Aの粒径の半分以下の粒径=220μ、所定隙間δ:250μとし、他の測定条件は図6Aの場合と全く同じとして測定した結果である(気温19度、湿度48%)。図から分かるように、粒径が小さくなると、図6Aの場合より単位時間当たりの粒子流動質量の変動が小さく、変動値の累積値が直線状に変化しており、その変動が小さく、安定した微定量供給が行えることを示している。この場合の流量誤差は±0.0025g/秒以下(詳しくは±0.05g/20秒)である。累積値のグラフでは直線的に増加し、安定した微定量供給が可能であることが分かる。
【0061】
図7に粉粒体の材質が異なる他の例として、アルミナ粒子の流動性を測定した結果をグラフにしたものである。この場合も、横軸、縦軸の単位は図5C〜5Fの場合と同様であるが、アルミナ粒子の粒径=0.3μの粒子が用いられている。パラメータ値の設定は、所定隙間δ:250μ、傾斜角度θ:25度、振動数:215Hz、最大振幅は管路側:45μ、底板側:20μである(気温20度、湿度51%)。この例でも単位時間当たりの粒子流動質量の変動が小さく、累積値のグラフでは直線的に増加し、安定した微定量供給が可能であることが分かる。
【0062】
図8は比較例として、ポリマー粒径40μの粒子を用いて管路側のみ、あるいは底板側のみを振動させた場合の流動特性を測定した結果を示す。パラメータの設定値は、傾斜角度θ:20度、振動数:300Hz、所定隙間δ:250μである(気温18度、湿度46%)。グラフから分かるように、管路側のみ、あるいは底板側のみを振動させたいずれの場合も、単位時間当たりの粒子流動質量の変動が大きく安定せず、(b)図に示すように、粒子流動質量の累積値が180秒で停止し、測定できなくなった。従って、片側のみの振動では微定量供給は困難であることが分かる。
【0063】
以上はこの発明の粉粒体の定量供給装置の測定装置部材により測定された測定データを列挙したものであるが、図8の結果から分かるように、振動手段13(圧電素子)を管路1と底板3の双方に取り付けないと、ストレート管路と底板の組み合わせ方式の定量供給装置では粉粒体の供給が行われないという結果が理解される。しかし、この方式では両部材に振動手段13を取り付けることにより、制御信号を送信して振動手段を振動させれば粉粒体の供給ができ、制御信号の送信を停止すれば供給を停止できるという結果から、従来の下端が細管方式の評価装置を定量供給装置として利用することが出来ないのに対して、この発明の方式の装置は定量供給装置として利用できることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明は、粉粒体の定量供給装置は、長さ方向に同一径の管路とこの管路の下端に対向して置かれた底板を有する流動部と、上記各部材に取り付けた振動手段と、振動手段の振動数、振幅を制御する振動・演算制御部を備え、上記微小隙間から粉粒体を排出、停止制御して微定量供給するようにしたものであり、各種粉粒体の定量供給、分散、移送を必要とする機械装置、処理装置などの各種の産業機器に広く利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施形態の粉粒体の定量供給装置の全体概略構成図
【図2】管路の下端部付近の拡大断面図
【図3】振動手段(圧電素子)の取付け状態の説明図
【図4】振動・演算制御部の回路の概略構成図
【図5A】測定状態の説明図(粒径の影響度、シリカ)
【図5B】測定状態の説明図(微小隙間の影響度、シリカ)
【図5C】測定状態の説明図(傾斜角度の影響度、シリカ)
【図5D】測定状態の説明図(連続測定の影響度、シリカ)
【図5E】測定状態の説明図(ナノ粒子の影響度、シリカ)
【図5F】測定状態の説明図(振動手段の取付け方向の影響度、シリカ)
【図6A】測定状態の説明図(異なる材質の影響度、ガラスビーズ)
【図6B】測定状態の説明図(粒径の影響度、ガラスビーズ)
【図7】測定状態の説明図(異なる材質の影響度、アルミナ)
【図8】測定状態の説明図(異なる材質の影響度、ポリマー)
【符号の説明】
【0066】
1 管路
2 漏斗部
3 底板
3a 取付け部
3b 隙間調整ダイヤル
4a 支持部材
5 支持柱
6 基台
7 電子天秤
9 回転基板
10 流動部
11 信号発生装置
12 増幅器(ドライバ)
13a、13b 振動手段
14 レーザ振動測定器
15 A/D変換器
16 レベルセンサ
17 入力手段
18 表示器
20 振動・演算制御部
21 CPU(中央演算部)
22 I/Oインターフェース
23 定量供給パラメータ設定部
24 振動測定データ記憶部
25 流動性評価用データ記憶部
26 微定量供給演算部
27 電源回路部
A 定量供給装置
H 補助ホッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直乃至傾斜状に保持された、長さ方向に同一径の管路1と、この管路1の下端に所定の微小隙間δを以って対向して置かれた底板3を有する流動部10と、上記管路1と底板3それぞれの部材に取り付けた振動手段13と、振動手段13の振動数、振幅を制御する振動・演算制御部20を備え、振動・演算制御部20から振動手段13のそれぞれに送信する制御信号を送信又は停止させて振動手段13を振動または停止させ、これにより上記微小隙間から粉粒体を排出、停止制御して微定量供給するようにした粉粒体の定量供給装置。
【請求項2】
前記管路1と底板3に振動手段13を、互いに同一直線状で上下に、又は90度位相をずらして取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の粉粒体の定量供給装置。
【請求項3】
前記流動部10を所定の傾斜角度に可変設定自在、又は傾斜接続部材を介して手動により設定可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉粒体の定量供給装置。
【請求項4】
前記微小隙間δを隙間調整ダイヤル3bによりダイアルゲージの表示により可変調節するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の粉粒体の定量供給装置。
【請求項5】
前記振動・演算制御部20が、粉粒体を微定量供給するための少なくとも6つのパラメータ値を記憶・設定する定量供給パラメータ設定部23、レーザ振動測定器14からの測定信号により振動数、振幅のデータをCPU(中央演算部)21で算出して記憶する振動測定データ記憶部24、流動性評価用データを記憶する流動性評価用データ記憶部25、微定量供給するために必要なデータを読み出して振動手段13を制御するための制御信号を演算する微定量供給演算部26を含む各種制御プログラムを固定記憶部(ROM)に記憶して備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の粉粒体の定量供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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