説明

粉粒体の移送方法、オレフィン重合体の製造方法、移送配管及び製造装置

【課題】効率よく粉粒体を移送することができる移送方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る粉粒体の移送方法は、開閉弁2を有する移送配管1の一端部5側から他端部6側に粉粒体を移送する方法であって、上記開閉弁2を開いているとき及び閉じているときの何れのときにも、上記一端部5と上記開閉弁2との間から上記移送配管1内を洗浄するための気体を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体を移送する方法、及びこれを用いたオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合体を製造する方法として、流動床式反応器を用いる方法が知られている。このような重合法では、重合体の塊や板状物などの塊状物が発生することがあり、この塊状物は、流動床式反応器からオレフィン重合体の粒子を抜き出す際に、抜き出し用の配管を閉塞させることがある。
【0003】
このような配管の閉塞を防止するための粉粒体移送方法として、特許文献1には、反応器から粉粒体(オレフィン重合体の粒子)を移送する配管中に開閉弁を設け、粉粒体を間欠的に移送するとともに、開閉弁を閉じている間には、反応器と開閉弁との間の配管内に洗浄ガスを供給することにより、配管内の滞留粉粒体を反応器に戻すことで配管の閉塞を防ぐ方法が開示されている。また、特許文献2には、気相重合反応器間の粉粒体の移送であって、配管の洗浄ガスとして後段側の反応器内のガスを取り出し、配管の開閉弁を閉じている間に当該開閉弁の下流側から配管内に当該ガスを供給し、開閉弁が開いているときには当該ガスを反応器に直接戻す方法が開示されている。さらに、特許文献3には、気相重合反応器間の粉粒体の移送であって、高圧の洗浄ガスによる洗浄工程と、反応器内のガスによる洗浄工程とを用いて、間欠的にポリオレフィン粉粒体を移送する方法が開示されている。なお、特許文献3では、洗浄工程に供されるガスは何れも、移送用の配管の開閉弁が閉じられている時にのみ、当該開閉弁の下流側から配管内に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−163856号公報(1995年6月27日公開)
【特許文献2】特開2003−285928号公報(2003年10月7日公開)
【特許文献3】特開2005−68207号公報(2005年3月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粉粒体を連続的に効率よく移送するためには、さらなる改良が望まれている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、効率よく粉粒体を移送することができる移送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開閉弁を有する移送配管の一端部側から他端部側に粉粒体を移送する方法であって、上記開閉弁を開いているとき及び閉じているときの何れのときにも、上記一端部と上記開閉弁との間から上記移送配管内を洗浄するための気体を供給する移送方法である。
【0008】
また、本発明に係る粉粒体の移送方法は、上記開閉弁を閉じているときに、上記開閉弁と上記他端部との間から上記移送配管内を洗浄するための気体を供給することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る粉粒体の移送方法は、上記開閉弁を開いているとき及び閉じているときの何れのときにも、上記開閉弁と上記他端部との間から上記移送配管内を洗浄するための気体を供給することが好ましい。
【0010】
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、上記の移送方法を用いて、上記一端部に接続された第1の容器から、上記他端部に接続された第2の容器に、上記粉粒体としてのオレフィン重合体を移送する工程を有する製造方法である。
【0011】
また、本発明に係るオレフィン重合体の製造方法において、第1の容器は、オレフィンを重合するための反応器であり、第2の容器は、ホッパーであることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るオレフィン重合体の製造方法において、上記気体は、水素、窒素及びオレフィンの単量体からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るオレフィン重合体の製造方法において、上記開閉弁が閉じてから開くまでの時間は、5秒以上200秒以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るオレフィン重合体の製造方法において、上記開閉弁が閉じてから開き、次に閉じるまでの時間は、1800秒以上30000秒以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る移送配管は、粉粒体を移送するための移送配管であって、上記移送配管の一端部から他端部までの間に設けられた開閉弁と、上記一端部から上記開閉弁までの間に設けられた、上記移送配管内を洗浄するための気体を導入するための第1の導入管と、上記開閉弁から上記他端部までの間に設けられた、上記移送配管内を洗浄するための気体を導入するための第2の導入管とを備えているものである。
【0016】
本発明に係るオレフィン重合体の製造装置は、オレフィンを重合してオレフィン重合体を含む粉粒体を生じる反応器と、ホッパーと、上記粉粒体を、上記反応器から上記ホッパーに移送する移送配管と、を備えるオレフィン重合体の製造装置であって、上記反応器は、上記移送配管の一端部に接続されており、上記ホッパーは、上記移送配管の他端部に接続されており、上記移送配管は、上記一端部から上記他端部までの間に設けられた開閉弁と、上記一端部から上記開閉弁までの間に設けられた、洗浄するための気体を導入するための第1の導入管と、上記開閉弁から上記他端部までの間に設けられた、洗浄するための気体を導入するための第2の導入管とを備えているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る粉粒体の移送方法によれば、効率よく粉粒体を移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用されるオレフィン重合体の製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】図1に示す移送配管1を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る粉粒体の移送方法は、開閉弁を有する移送配管の一端部側から他端部側に粉粒体を移送する方法であって、上記開閉弁を開いているとき及び閉じているときの何れのときにも、上記一端部と上記開閉弁との間から上記移送配管内に洗浄するための気体(洗浄ガス)を供給することである。なお、ここで、粉粒体とは、粉体、粒子などの固体を含むものであればよい。
【0020】
以下、本発明に係る粉粒体の移送方法が適用されるオレフィン重合体の製造方法の一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明が適用されるオレフィン重合体の製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【0021】
本実施形態における移送配管1は、図1に示すように、その一端部側にオレフィンを重合するための気相重合反応器(第1の容器)11が接続されており、他端部側には、オレフィン重合体を回収するためのホッパー(第2の容器)12が接続されている。そして、気相重合反応器11からホッパー12に、オレフィン重合体の粒子を含む粉粒体を移送する。
【0022】
(粉粒体の移送方法)
次に、移送配管1を介して上記粉粒体を移送する方法について、図2を用いて詳細に説明する。図2は、図1に示す移送配管1を模式的に示す断面図である。
【0023】
粉粒体は、中空状の移送配管1の一端部5から他端部6へと移送される。
【0024】
移送配管1は、一端部5と他端部6との間に開閉弁2を有しており、その開閉によって、粉粒体の移送を開始したり停止したりすることができる。開閉弁2の位置は、移送する粉粒体の状態、移送配管の長さ及び太さ、などにより適宜選択されることが好ましいが、本実施形態においては、例えば一端部5から0.1m以上離れ、他端部6から0.5m以上離れた範囲内などに設定することができる。
【0025】
また、移送配管1には、一端部5と開閉弁2との間に、第1の導入管として導入管3が設けられている。導入管3は、移送配管1と、洗浄ガスタンク7とを連結しており、開閉弁8が設けられている。開閉弁8は、開閉弁2を開いているときと、閉じているときとのどちらにおいても開いており、導入管3を介して洗浄ガスタンク7から洗浄ガスを移送配管1内に供給する。
【0026】
導入管3が移送配管1に接続される位置は、開閉弁2の近傍であることが好ましい。導入管3と移送配管1との接続位置が開閉弁2に近いほど、該接続位置と開閉弁2との間に粉粒体の塊が生成する可能性が減少し、移送配管1内の閉塞を効果的に防ぐことができる。
【0027】
洗浄ガスとしては、例えば、水素、窒素、オレフィンの単量体などを含むガスを用いることができる。オレフィンの単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。また、洗浄ガスの圧力は、一端部5に接続された気相重合反応器11内の圧力よりも高いことが好ましく、例えば気相重合反応器11内の圧力よりも100kPa以上高いことがより好ましく、200kPa以上高いことがさらに好ましい。これにより、開閉弁2を閉じているときにも、洗浄ガスを一端部5へと効率よく流すことができる。さらに、洗浄ガスは、気相重合反応器11内の温度よりも低い温度にて供給されることが好ましい。
【0028】
洗浄ガスタンク7は、上述した圧力を有するガスを貯められるものであればよい。
【0029】
上記の構成により、開閉弁2を開いているときには、移送配管1の一端部5から他端部6まで粉粒体が移送されるとともに、一端部5と開閉弁2との間から移送配管1内に供給される洗浄ガスが、粉粒体を他端部6まで確実に移送させる。一方、開閉弁2を閉じているときには、一端部5と開閉弁2との間から供給される洗浄ガスが一端部5へと流れることとなり、移送配管1内が洗浄ガスにより洗浄される。したがって、移送配管1内の閉塞を防ぎ、効率よく粉粒体を移送することができる。
【0030】
また、開閉弁2を開いているとき、又は閉じているときに関わらず、洗浄ガスを連続的に供給することにより、導入管3内に粉粒体が入り込んで閉塞させることを防ぐことができる。
【0031】
なお、導入管3は、複数設けられていてもよい。導入管3が多いほど、洗浄ガスをより多く移送配管1内に供給することができ、移送配管1内の閉塞を防ぐことがさらに容易となる。
【0032】
また、移送配管1には、開閉弁2と他端部6との間に、第2の導入管として導入管4が設けられている。導入管4は、移送配管1と洗浄ガスタンク7とを連結しており、開閉弁9が設けられている。開閉弁2が閉じているときには、開閉弁9が開けられ、導入管4を介して洗浄ガスタンク7から洗浄ガスを移送配管1内に供給する。開閉弁9の開閉は、手動で行ってもよいが、制御装置などにより、開閉弁2の開閉とともに開閉弁9の開閉を制御してもよい。なお、開閉弁2を開いているときと、閉じているときとのどちらにおいても、開閉弁9を開けていてもよい。この場合には、洗浄ガスは導入管4を介して常に移送配管1内に供給されることとなる。
【0033】
導入管4が移送配管1に接続される位置は、開閉弁2の近傍であることが好ましい。導入管4と移送配管1との接続位置が開閉弁2に近いほど、該接続位置と開閉弁2との間に粉粒体の塊が生成される可能性が減少し、移送配管1内の閉塞を効果的に防ぐことができる。
【0034】
導入管4により供給される洗浄ガスは、本実施形態においては、上述した導入管3により供給される洗浄ガスと同一のものである。なお、導入管4により供給される洗浄ガスは、導入管3により供給される洗浄ガスと異なるガスを用いてもよい。この場合には、導入管4により供給される洗浄ガスが有する圧力は、少なくともホッパー12内の圧力より高いことが好ましい。これにより、導入管4から供給される洗浄ガスを他端部6へと効率よく流すことができる。
【0035】
上記の構成により、開閉弁2を閉じているときには、開閉弁2と他端部6との間から他端部6へと洗浄ガスが流れることとなり、開閉弁2の下流における粉粒体の移送が中断せず、移送配管1内に残っている粉粒体を確実に移送することができる。したがって、移送配管1内の閉塞を防ぎ、効率よく粉粒体を移送することができる。
【0036】
また、開閉弁2を開いているとき、又は閉じているときに関わらず、洗浄ガスを連続的に供給すれば、導入管4内に粉粒体が入り込んで閉塞させることを防ぐことができるとともに、粉粒体を他端部6まで確実に移送させる。
【0037】
なお、導入管4は、複数設けられていてもよい。導入管4が多いほど、洗浄ガスをより多く移送配管1内に供給することができ、移送配管1内の閉塞を防ぐことがさらに容易となる。
【0038】
開閉弁2の開閉は、手動で行ってもよいし、制御装置などによりシーケンシャルに制御してもよい。また、閉じている時間及び開いている時間の長さは、移送される粉粒体の状態、量などにより適宜選択されることが好ましい。例えば、本実施形態においては、開閉弁2が閉じてから開くまでの閉止時間を5秒以上200秒以下にすることが好ましく、また、開閉弁2が閉じてから開き、次に閉じるまでの時間を、1800秒以上30000秒以下にすることが好ましい。このような時間の間隔において、開閉弁2を定期的に開閉することがより好ましい。開閉弁2をこのように開閉することにより、開閉弁2が閉じているときには洗浄ガスにより移送配管1内を洗浄することができるため、移送配管1内の閉塞を効果的に防ぐことができ、また、開閉弁2が開いているときには、洗浄ガスが粉粒体とともに流れ、確実に移送させるため、効率よく粉粒体を移送させることができる。
【0039】
このように、本発明によれば、移送配管1内の閉塞を効果的に防ぐことができるので、開閉弁2を開けている時間を長くし、長時間にわたって粉粒体を連続的に移送させることができる。
【0040】
(オレフィンの重合方法)
次に、気相重合反応器11を用いてオレフィンを重合する方法について説明する。本実施形態においては、気相重合反応器11を用いてオレフィンを重合し、オレフィン重合体を製造する。
【0041】
オレフィン重合体は、オレフィンの単量体を重合させて得られる。本明細書において「重合」とは、単独重合のみならず、共重合を包含したものであり、また「重合体」とは、単独重合体のみならず共重合体を包含したものである。
【0042】
共重合体を構成し得るオレフィンの組み合わせとしては、例えば、エチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと4−メチル−1−ペンテン、エチレンと1−オクテン、プロピレンと1−ブテン、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセン、エチレンと1−ブテンと4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
【0043】
本発明において製造されるオレフィン重合体としては、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体が好ましく、中でも、ポリエチレン結晶構造を有するエチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体がより好ましい。α−オレフィンとしては、炭素原子数3〜8のα−オレフィンがより好ましく、例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0044】
気相重合反応器11としては、いわゆる流動床式のものを用いることができる。例えば、特開昭58−201802号公報、特開昭59−126406号公報、特開平2−233708号公報、特開平4−234409号公報、特開平7−62009号公報などに記載された公知の気相流動床式反応器などを用いることができる。
【0045】
本実施形態における気相重合反応器11では、オレフィンの単量体を含む気体、触媒、オレフィン重合体の粒子などを含む混合相が形成され、気相重合反応器11の下部から導入される循環ガスによって流動化され、流動床となる。循環ガスは、気相重合反応器11の下部に備えられたガス分散板16を通過して分散されて導入されるため、流動床は効率よく流動することとなる。流動床を通過した循環ガスは、気相重合反応器11の上方部に設けられている減速領域において流速が減速された後、気相重合反応器11の上部に設けられたガス出口を介して、循環ガスライン15に排出される。そして、循環ガスは、循環ガスライン15を介して気相重合反応器11内に下部から吹き込まれて戻される。
【0046】
循環ガスは、例えばオレフィンの単量体を含んでいるものが好ましい。また、循環ガスに、例えば水素、不活性ガスなどをさらに共存させてもよい。
【0047】
循環ガスライン15には、循環ガスとして用いる上述したような気体を導入するための導入管を設けていてもよい。
【0048】
また、循環ガスライン15には、循環ガスを圧縮するためにコンプレッサー13が設置されており、さらに、循環ガスを冷却するために、熱交換器14が設置されている。したがって、循環ガスは、循環ガスライン15においてコンプレッサー13により圧縮され、熱交換器14により冷却されて気相重合反応器11に導入される。このため、気相重合反応器11に導入される循環ガスは、重合反応熱が除去されたものとなる。
【0049】
気相重合反応器11内の圧力は、オレフィンの単量体の全て、又は少なくとも1部が気体として存在し得る圧力であればよく、例えば0.1〜5.0MPaが好ましく、1.5〜3.0MPaがより好ましい。気相重合反応器11内の温度は、使用する触媒、反応器内の圧力、重合するオレフィンの種類等により適宜選択されることが好ましく、一般的には30〜110℃であることが好ましい。また、気相重合反応器11内における循環ガスの流速は、10〜100cm/秒であることが好ましく、20〜70cm/秒であることがより好ましい。
【0050】
なお、気相重合反応器11には、オレフィンの重合用の触媒を添加することが好ましい。触媒としては、例えば、チーグラー型触媒、フィリップス型触媒、メタロセン系化合物を用いたメタロセン系触媒などを用いることができる。また、触媒として、メタロセン系触媒を用いることがより好ましい。
【0051】
チーグラー型触媒としては、例えば、特開昭59−8706号公報、特開昭59−22907号公報、特開昭59−22908号公報、特開昭59−64611号公報、特開昭59−71309号公報、特開昭60−42404号公報、特開昭60−133011号公報、特開昭60−215006号公報、特開昭62−232405号公報、特開昭62−297304号公報、特開平1−256502号公報、特開平1−289809号公報、特開平3−81303号公報、特開平3−88808号公報、特開平3−93803号公報、特公昭56−18132号公報、特公昭56−15807号公報、特公昭61−50964号公報、特公昭61−363号公報、特公昭62−56885号公報、特開平11−322833号公報、特開2002−187909号公報などに開示されている方法により製造されたものを用いることができる。
【0052】
また、触媒として、例えば特開2001−342211号公報などに開示されているように、少量のオレフィンを重合(予備重合)して得られる粒子を用いることができる。
【0053】
このように予備重合して得られるメタロセン系触媒としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物などの助触媒成分とメタロセン系化合物とを粒子状担体に担持させてなる固体触媒成分(例えば、特開昭61−108610号公報、特開昭61−296008号公報、特開昭63−89505号公報、特開平3−234709号公報、特開平6−336502号公報などに記載されている固体触媒成分)などを用い、必要に応じて有機アルミニウム化合物、ホウ素化合物などの助触媒成分を併用して、少量のオレフィンを予備重合して得られる粒子などを用いることができる。また、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物などの助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体触媒成分(例えば、特開2003−171412号公報などに記載されている固体触媒成分)などを用い、メタロセン系化合物と、有機アルミニウム化合物などの触媒成分とを併用して、少量のオレフィンを予備重合して得られる粒子などを用いることができる。
【0054】
気相重合反応器11内において重合されて得られたオレフィン重合体を含む粉粒体は、移送配管1に排出される。
【0055】
気相重合反応器11から移送配管1に粉粒体を排出する方法としては、例えば特開2001−139605号公報(2001年5月22日公開)に記載されている方法を用いることができる。また、粉粒体を連続的に排出することが好ましく、これには例えば特表2002−530441号公報(2002年9月17日公開)に記載されている方法を用いることができる。また、例えば特開2008−143929号公報(2008年6月26日公開)に記載されているように、粉粒体を、連続的に排出する手段と間歇的に排出する手段との両方を用いて排出してもよい。なお、本発明に係る粉粒体の移送方法は、気相重合反応器11から粉粒体を連続的に排出する場合に好適に用いることができる。
【0056】
粉粒体は、移送配管1を通って次工程におけるホッパー12に移送される。気相重合反応器11からホッパー12へのオレフィン重合体の移送は、気相重合反応器11内の圧力をホッパー12内の圧力よりも高くし、圧力差を用いて行うことが好ましい。例えば、気相重合反応器11内の圧力を2.0MPaGなどとし、ホッパー12内の圧力を0.2MPaGなどとすることができる。
【0057】
ホッパー12では、オレフィン重合体が回収される。また、ホッパー12に導入される粉粒体に混入する未反応の原料ガス、洗浄ガスなどが回収され、リサイクルガスとして再利用される。
【0058】
本実施形態においては、移送配管1の一端部5に気相重合反応器11を接続し、他端部6にホッパー12を接続して、気相重合反応器11からホッパー12に粉粒体を移送する方法について説明したが、特にこれに限定されず、本発明は、配管を閉塞させるおそれのある粉粒体を移送させるあらゆる場合に好適に適用させることができる。
【0059】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【0060】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【実施例】
【0061】
本実施例及び比較例においては、流動床式の気相重合反応器と、重合体を回収するための後処理系のホッパーと、これらを連結する2つの移送配管とを備えた重合体製造装置を用いた。
【0062】
気相重合反応器においては、エチレンと1−ブテンとの共重合を行い、エチレン−1−ブテン共重合体を作製した。このとき、マグネシウム、ハロゲン、チタン及び電子供与体を含む固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを用いて、固体触媒成分上で少量のオレフィンを予備重合して得られる、オレフィンの気相重合用の予備重合触媒(特開2001−342211号公報における実施例2を参照)を、気相重合反応器に供給した。さらに、生成する重合体1トンに対してトリエチルアルミニウムを5.5molの割合で供給した。
【0063】
その後、気相重合反応器とホッパーとを連結する2つの移送配管を介して、ホッパーに、共重合体を含む粉粒体を移送した。1つの移送配管は粉粒体を連続的に移送させ、他の移送配管は間歇的に移送する方法により移送させた。
【0064】
本実施例において、以下の項目について測定を行った。各項目において用いた方法を説明する。
【0065】
(1)密度(単位:kg/m
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料に対して、JIS K6760−1995に記載されたアニーリングを行った。
【0066】
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件において測定した。
【0067】
〔実施例1〕
実施例1においては、重合の条件として、重合温度を87℃とし、圧力を2.0MPaGとし、循環ガスの組成をエチレン56.5mol%、水素8.7mol%、1−ブテン21.9mol%、窒素11.5mol%及びヘキサン1.4mol%とし、循環ガスの流速を56cm/秒とした。
【0068】
さらに移送配管において、連続的に重合体を移送させる移送配管(図1の移送配管1に相当)は、気相重合反応器(図1の気相重合反応器11に相当)に接続された一端部から0.35mの位置に開閉弁(図1の開閉弁2に相当)を有しており、この開閉弁に対して、20秒間閉じた後に開く操作を1時間に1回の頻度で行った。また、この移送配管の該一端部から0.25mの位置に設けられた導入管(図1の導入管3に相当)と、0.90mの位置に設けられた導入管(図1の導入管4に相当)とから、それぞれ洗浄ガスとしてエチレンを50kg/時間にて常時移送配管内に供給した。
【0069】
また、重合されたエチレン−1−ブテン共重合体の密度は919.1kg/mであり、MRFは0.91g/10分であった。このようにして重合体製造装置を運転した。
【0070】
同一の品質を維持して1ヶ月以上運転を続けたが、移送配管の閉塞は観察されず、安定な運転が確認できた。
【0071】
〔比較例1〕
比較例1においては、重合の条件として、重合温度を87℃とし、圧力を2.0MPaGとし、循環ガスの組成をエチレン54.3mol%、水素10.0mol%、1−ブテン20.8mol%、窒素12.8mol%及びヘキサン2.1mol%とし、循環ガスの流速を55cm/秒とした。
【0072】
また、重合されたエチレン−1−ブテン共重合体の密度は920.7kg/mであり、MRFは1.16g/10分であった。このようにして重合体製造装置を運転させた。
【0073】
その結果、気相重合反応器において、重合による発熱と、冷却器(熱交換器)による冷却とのバランスの崩れが観察された。冷却器による除熱を強化しても、重合温度が制御不能となり95℃以上に達したため、緊急失活剤を投入して重合を停止させた。このように重合温度が制御不能となった原因は、移送配管の閉塞であった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る粉粒体の移送方法によれば、配管の閉塞を防ぎ、効率よく粉粒体を移送することができるので、オレフィンなどの重合体の製造装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 移送配管
2 開閉弁
3 導入管(第1の導入管)
4 導入管(第2の導入管)
5 一端部
6 他端部
11 気相重合反応器(第1の容器)
12 ホッパー(第2の容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉弁を有する移送配管の一端部側から他端部側に粉粒体を移送する方法であって、
上記開閉弁を開いているとき及び閉じているときの何れのときにも、上記一端部と上記開閉弁との間から上記移送配管内を洗浄するための気体を供給する、粉粒体の移送方法。
【請求項2】
上記開閉弁を閉じているときに、上記開閉弁と上記他端部との間から上記移送配管内を洗浄するための気体を供給する、請求項1に記載の粉粒体の移送方法。
【請求項3】
上記開閉弁を開いているとき及び閉じているときの何れのときにも、上記開閉弁と上記他端部との間から上記移送配管内を洗浄するための気体を供給する、請求項1に記載の粉粒体の移送方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の移送方法を用いて、上記一端部に接続された第1の容器から、上記他端部に接続された第2の容器に、上記粉粒体としてのオレフィン重合体を移送する工程を有する、オレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
第1の容器は、オレフィンを重合するための反応器であり、
第2の容器は、ホッパーである、請求項4に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
上記気体は、水素、窒素及びオレフィンの単量体からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項4又は5に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
上記開閉弁が閉じてから開くまでの時間は、5秒以上200秒以下である、請求項4〜6の何れか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項8】
上記開閉弁が閉じてから開き、次に閉じるまでの時間は、1800秒以上30000秒以下である、請求項4〜7の何れか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
粉粒体を移送するための移送配管であって、
上記移送配管の一端部から他端部までの間に設けられた開閉弁と、
上記一端部から上記開閉弁までの間に設けられた、上記移送配管内を洗浄するための気体を導入するための第1の導入管と、
上記開閉弁から上記他端部までの間に設けられた、上記移送配管内を洗浄するための気体を導入するための第2の導入管とを備えている、移送配管。
【請求項10】
オレフィンを重合してオレフィン重合体を含む粉粒体を生じる反応器と、
ホッパーと、
上記粉粒体を、上記反応器から上記ホッパーに移送する移送配管と、を備えるオレフィン重合体の製造装置であって、
上記反応器は、上記移送配管の一端部に接続されており、
上記ホッパーは、上記移送配管の他端部に接続されており、
上記移送配管は、
上記一端部から上記他端部までの間に設けられた開閉弁と、
上記一端部から上記開閉弁までの間に設けられた、洗浄するための気体を導入するための第1の導入管と、
上記開閉弁から上記他端部までの間に設けられた、洗浄するための気体を導入するための第2の導入管とを備えている、オレフィン重合体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202701(P2010−202701A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46860(P2009−46860)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】