説明

粉粒体の移送配管、オレフィン重合体の製造装置、粉粒体の移送方法及びオレフィン重合体の製造方法

【課題】簡便な方法により、効率よく粉粒体を移送することができる移送配管を提供する。
【解決手段】本発明に係る粉粒体の移送配管1は、一端部5側から他端部6側に粉粒体を移送するための移送配管であり、上記一端部5から上記他端部6までの間に、当該一端部5側から当該他端部6側に向かって内径が縮小している縮小管部2を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体を移送するための移送配管、及びこれを用いたオレフィン重合体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合体を製造する方法として、流動床式反応器を用いる方法が知られている。このような重合法では、重合体の塊や板状物などの塊状物が発生することがあり、この塊状物は、流動床式反応器からオレフィン重合体の粒子を抜き出す際に、抜き出し用の配管を閉塞させることがある。
【0003】
配管の閉塞を防止するために、特許文献1には、流動床反応器から重合体粉末を抜き出す粉末抜き出しラインの上流部に、重合体の塊状物を解砕する解砕装置を配置して、重合体粉末に含まれる重合体の塊状物を解砕する重合方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−139614号公報(2001年5月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、より簡便な方法によって、効率よく重合体を含む粉粒体を移送できる新たな方法が望まれている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、簡便な方法により、効率よく粉粒体を移送することができる移送配管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粉粒体の移送配管は、上記課題を解決するために、一端部側から他端部側に粉粒体を移送するための移送配管であり、上記一端部から上記他端部までの間に、当該一端部側から当該他端部側に向かって内径が縮小している縮小管部を備えている。
【0008】
本発明に係る粉粒体の移送方法は、上述した移送配管を用いて粉粒体を移送する方法であって、上記一端部側から上記他端部側に粉粒体を移送する第1工程と、上記縮小管部を洗浄する第2工程とを有する。
【0009】
また、本発明に係る粉粒体の移送配管は、上記縮小管部を挟んで、第1の開閉弁と、第2の開閉弁とをさらに備えており、上記縮小管部は、第1の開閉弁と第2の開閉弁との間において取り外し可能に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る粉粒体の移送方法は、上記の移送配管を用いて粉粒体を移送する方法であって、上記一端部側から上記他端部側に粉粒体を移送する第1工程と、上記第1の開閉弁及び第2の開閉弁を閉じ、上記縮小管部を取り外して洗浄する第2工程とを有することが好ましい。
【0011】
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、上述した移送方法を用いて粉粒体としてのオレフィン重合体を移送する工程を有する。
【0012】
本発明に係るオレフィン重合体の製造装置は、一端部側から他端部側にオレフィン重合体を移送するための第1の移送配管及び第2の移送配管と、上記一端部に接続されたオレフィンを重合するための反応器と、上記他端部に接続された容器とを備えるオレフィン重合体の製造装置であって、上記第1の移送配管は、上記一端部から上記他端部までの間に設けられた、当該一端部側から当該他端部側に向かって内径が縮小している縮小管部と、上記縮小管部を挟んで、第1の開閉弁と、第2の開閉弁とを備え、上記縮小管部は、第1の開閉弁と第2の開閉弁との間において取り外し可能に設けられている。
【0013】
また、本発明に係るオレフィン重合体の製造装置では、上記縮小管部は、上記一端部側から上記他端部側に向かって、テーパー率が1/50以上1/5以下の範囲内のテーパー形状であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るオレフィン重合体の製造装置では、第1の開閉弁は、上記一端部と上記縮小管部との間であって、かつ上記一端部から1.0m以内に設けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るオレフィン重合体の製造装置では、上記縮小管部の長さが0.1m以上1m以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、上述したオレフィン重合体の製造装置を用いた、オレフィン重合体の製造方法であって、上記反応器から上記容器に第1の移送配管を介してオレフィン重合体を移送する第1工程と、第1の開閉弁及び第2の開閉弁を閉じ、上記縮小管部を取り外して洗浄する第2工程と、第2工程を行う間に、第2の移送配管を用いて上記反応器から上記容器にオレフィン重合体の移送を行う第3工程とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る粉粒体の移送配管であれば、効率よく粉粒体を移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用されるオレフィン重合体の製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】図1に示す移送配管1を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る粉粒体の移送配管は、一端部側から他端部側に粉粒体を移送するための移送配管であり、上記一端部から上記他端部までの間に、当該一端部側から当該他端部側に向かって内径が縮小している縮小管部を備えている。なお、ここで、粉粒体とは、粉体、粒子などの固体を含むものであればよい。
【0020】
以下、本発明に係る移送配管が適用されるオレフィン重合体の製造装置の一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明が適用されるオレフィン重合体の製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【0021】
本実施形態におけるオレフィン重合体の製造装置は、図1に示すように、移送配管(第1の移送配管)1と、予備配管(第2の移送配管)7と、これらの配管の一端部側に接続されたオレフィンを重合するための気相重合反応器(反応器)11と、他端部側に接続されたオレフィン重合体を回収するためのホッパー(容器)12とにより構成されている。そして、気相重合反応器11からホッパー12に、移送配管1及び予備配管7を介して粉粒体としてのオレフィン重合体を移送する。
【0022】
なお、移送配管1及び予備配管7は、それぞれ複数設けられていてもよい。
【0023】
(移送配管1の構造)
次に、移送配管1の構造について、図2を用いて詳細に説明する。図2は、図1に示す移送配管1を模式的に示す断面図である。
【0024】
移送配管1は、一端部5から他端部6までの中空状の管であり、一端部5と他端部6との間に縮小管部2と、2つの開閉弁3及び4とを備えている。また、移送配管1は、一端部5側から他端部6側にオレフィン重合体を移送する。
【0025】
縮小管部2は、一端部側から他端部側に向かって内径が縮小している管であればよい。また、縮小管部2の内壁は、一端部側から他端部側に向かってテーパー形状であることが好ましく、すなわち一端部5側から他端部6側にかけて内径が一定の割合で縮小する形状であることが好ましい。またそのテーパー率は1/50以上であることが好ましく、1/30以上であることがより好ましい。上記の構成であれば、塊を捕捉しやすくすることができる。またテーパー率は1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましい。上記の構成であれば、移送配管1を流れる流体(オレフィン重合体を含む粉粒体や同伴されるガスなど)の流れが乱れて澱み点が発生し、その部位において塊が生成される可能性を低くすることができる。本明細書においてテーパー率とは、縮小管部2の長さ(m)に対する、内径が縮小する長さ(m)であり、内径が縮小する長さ(m)/縮小管部2の長さ(m)にて表される。内径が縮小する長さとは、縮小管部2における最も一端部5側の内径と、最も他端部6側の内径との差である。
【0026】
また、縮小管部2の最も他端部6側における内径は、最も一端部5側における内径より10%以上縮小していることが好ましく、20%以上縮小していることがより好ましい。さらにまた、縮小管部2の長さは0.1m以上であることが好ましく、また、2.0m以下であることが好ましく、さらに1.0m以下であることがより好ましい。上記の構成により、例えば縮小管部2において0.05m以上の長さの塊が捕捉される場合であっても、充分に捕捉可能であり、かつ、縮小管部2の取り扱い、移送配管1の配置などを容易に行うことができる。
【0027】
本実施形態における移送配管1が縮小管部2を備えていることにより、移送配管1内を移送されるオレフィン重合体に、移送配管1の閉塞を引き起こすおそれがある塊状物が含まれている場合には、その塊状物が縮小管部2に留まる可能性が高くなる。したがって、移送配管1が閉塞しやすい箇所を縮小管部2に特定することができる。
【0028】
また、縮小管部2を挟んで、第1の開閉弁として開閉弁3と、第2の開閉弁として開閉弁4と、が設けられている。したがって、開閉弁3及び4の開閉によって、移送配管1を介するオレフィン重合体の移送を開始したり停止したりすることができる。
【0029】
さらに、縮小管部2は、開閉弁3と開閉弁4との間において取り外し可能に設けられていることが好ましい。これにより、縮小管部2を取り外して内部を洗浄することが可能である。また、開閉弁3及び4を閉じている間は移送配管1を介するオレフィン重合体の移送が停止するが、その間に他の配管を介してオレフィン重合体の移送を続けることができる。したがって、縮小管部2が開閉弁3と開閉弁4との間にあることにより、オレフィン重合体の移送を停止せずに縮小管部2を洗浄することができる。
【0030】
なお、縮小管部2の内部を洗浄するために、例えば、移送配管1に取り付けたままの状態で縮小管部2の近傍から縮小管部2内にガス等を吹き込むための手段を備えていてもよい。
【0031】
開閉弁3の位置は、一端部5から1.0m以内であることが好ましく、0.4m以内であることがより好ましい。また、開閉弁3の位置は、一端部5にできるだけ近いことが好ましい。これにより、一端部5から他端部6に向けて速度を上げてオレフィン重合体を移送する場合には、移送配管1内の一端部5に近い部位において閉塞しやすくなるが、このような閉塞を防ぐことができる。また、開閉弁3は、2個以上設けられていてもよい。
【0032】
縮小管部2は、開閉弁3から他端部側2.0m以内に設けられていることが好ましく、0.5m以内に設けられていることがより好ましい。これにより、一端部5から他端部6に向けて速度を上げてオレフィン重合体を移送する場合には、移送配管1内の一端部5に近い部位において閉塞しやすくなるが、このような閉塞を防ぐことができる。また、縮小管部2と開閉弁3との距離を短くすることによって、閉塞しやすい箇所をより小さい範囲に限定することができる。
【0033】
開閉弁4の位置は、縮小管部2から他端部側2.0m以内に設けられていることが好ましい。これにより、閉塞しやすい箇所をより小さい範囲に限定することができる。また、開閉弁4は、2個以上設けられていてもよい。
【0034】
本実施形態における移送配管1は、閉塞しやすい箇所を縮小管部2に特定することができるので、例えば、定期的に縮小管部2を洗浄したり、移送配管1が閉塞したときに縮小管部2の閉塞物を除去したりすること等により、移送配管1による移送を簡便な方法により良好に維持することができる。
【0035】
(予備配管7)
次に、予備配管7について図1を参照して以下に説明する。
【0036】
予備配管7は、移送配管1と切り替えて使用するための予備の配管として用いられる。すなわち、移送配管1を用いているときには予備配管7による移送を停止しており、移送配管1による移送を停止させるときには予備配管7による移送を開始させることが好ましい。
【0037】
本実施形態における予備配管7は、図1に示すように、上述した移送配管1と同様の構成からなっており、縮小管部8と、2つの開閉弁9及び10とを備えている。
【0038】
なお、予備配管7としては、オレフィン重合体を移送することができる配管であればどのようなものを用いてもよいが、移送配管1と切り替えて使用するためには、移送の停止及び開始を行うことができる配管を用いることが好ましい。予備配管7は、例えば開閉弁を少なくとも1つ備えた配管等であってもよい。
【0039】
また、移送配管1と予備配管7とは、それぞれ複数設けられていてもよい。これにより、移送するオレフィン重合体の量が多い場合にも、効率よく移送することができる。
【0040】
(オレフィン重合体の移送方法)
次に、図1を参照して、本実施形態におけるオレフィン重合体の移送方法について説明する。本実施形態においては、移送配管1及び予備配管7を用いて気相重合反応器11からホッパー12にオレフィン重合体を移送する。
【0041】
まず、第1工程として、開閉弁3及び4を開け、移送配管1を介してオレフィン重合体を移送する。なお、ここでは予備配管7における開閉弁9及び10を閉じていることが好ましい。
【0042】
次に、第2工程として、開閉弁3及び4を閉じ、縮小管部2の洗浄を行う。縮小管部2の洗浄には、例えば、縮小管部2を取り外して縮小管部2の内部を洗浄する方法、取り外さずに縮小管部2内にガス等を吹き込んで洗浄する方法、等を用いることができる。また、縮小管部2の洗浄とは、縮小管部2を、内部の残留物が除去された状態にすればよく、例えば、使用した縮小管部2と別の縮小管部2とを交換してもよい。
【0043】
なお、第2工程は、第1工程において移送配管1が閉塞したときに行ってもよいが、第1工程を一定の時間行った後に定期的に行ってもよい。
【0044】
さらに、第2工程を行う間に、第3工程として、開閉弁9及び10を開けて、予備配管7を介してオレフィン重合体を移送する。
【0045】
なお、第3工程は、第2工程と同時進行して行うことができる。第3工程は、例えば、第2工程の開始と同時に開始してもよく、第2工程において開閉弁3及び4を閉じた直後又は同時に開始してもよい。これにより、オレフィン重合体の移送を停止させず連続して行うことができるので、気相重合反応器11における重合状態を良好に保ち、安定的にオレフィン重合体を製造することができる。
【0046】
オレフィン重合体の移送方法は、例えば、第1工程を行い、移送配管1が閉塞したときにのみ第2工程及び第3工程を行ってもよい。また、例えば、第1工程と、第2工程及び第3工程と、を定期的に交互に行ってもよい。第1工程を行う時間は、オレフィン重合の条件、移送配管1の構造、等により適宜選択することが好ましい。また、第2工程及び第3工程を行う時間は、縮小管部2の洗浄に要する時間等により適宜選択することが好ましい。
【0047】
(オレフィンの重合方法)
次に、オレフィン重合体を重合する方法について、以下に説明する。本実施形態においては、気相重合反応器11を用いてオレフィンを重合し、オレフィン重合体を製造する。
【0048】
オレフィン重合体は、オレフィンの単量体を重合させて得られる。本明細書において「重合」とは、単独重合のみならず、共重合を包含したものであり、また「重合体」とは、単独重合体のみならず共重合体を包含したものである。
【0049】
共重合体を構成し得るオレフィンの組み合わせとしては、例えば、エチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと4−メチル−1−ペンテン、エチレンと1−オクテン、プロピレンと1−ブテン、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセン、エチレンと1−ブテンと4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
【0050】
本発明において製造されるオレフィン重合体としては、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体が好ましく、中でも、ポリエチレン結晶構造を有するエチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体がより好ましい。α−オレフィンとしては、炭素原子数3〜8のα−オレフィンがより好ましく、例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0051】
気相重合反応器11としては、いわゆる流動床式のものを用いることができる。例えば、特開昭58−201802号公報、特開昭59−126406号公報、特開平2−233708号公報、特開平4−234409号公報、特開平7−62009号公報などに記載された公知の気相流動床式反応器などを用いることができる。
【0052】
本実施形態における気相重合反応器11では、オレフィンの単量体を含む気体、触媒、オレフィン重合体の粒子などを含む混合相が形成され、気相重合反応器11の下部から導入される循環ガスによって流動化され、流動床となる。循環ガスは、気相重合反応器11の下部に備えられたガス分散板16を通過して分散されて導入されるため、流動床は効率よく流動することとなる。流動床を通過した循環ガスは、気相重合反応器11の上方部に設けられている減速領域において流速が減速された後、気相重合反応器11の上部に設けられたガス出口を介して、循環ガスライン15に排出される。そして、循環ガスは、循環ガスライン15を介して気相重合反応器11内に下部から吹き込まれて戻される。
【0053】
循環ガスは、例えばオレフィンの単量体を含んでいるものが好ましい。また、循環ガスに、例えば水素、不活性ガスなどをさらに共存させてもよい。
【0054】
循環ガスライン15には、循環ガスとして用いる上述したような気体を導入するための導入管を設けていてもよい。
【0055】
また、循環ガスライン15には、循環ガスを圧縮するためにコンプレッサー13が設置されており、さらに、循環ガスを冷却するために、熱交換器14が設置されている。したがって、循環ガスは、循環ガスライン15においてコンプレッサー13により圧縮され、熱交換器14により冷却されて気相重合反応器11に導入される。このため、気相重合反応器11に導入される循環ガスは、重合反応熱が除去されたものとなる。
【0056】
気相重合反応器11内の圧力は、オレフィンの単量体の全て、又は少なくとも1部が気体として存在し得る圧力であればよく、例えば0.1〜5.0MPaが好ましく、1.5〜3.0MPaがより好ましい。気相重合反応器11内の温度は、使用する触媒、反応器内の圧力、重合するオレフィンの種類等により適宜選択されることが好ましく、一般的には30〜110℃であることが好ましい。また、気相重合反応器11内における循環ガスの流速は、10〜100cm/秒であることが好ましく、20〜70cm/秒であることがより好ましい。
【0057】
なお、気相重合反応器11には、オレフィンの重合用の触媒を添加することが好ましい。触媒としては、例えば、チーグラー型触媒、フィリップス型触媒、メタロセン系化合物を用いたメタロセン系触媒などを用いることができる。また、触媒として、メタロセン系触媒を用いることがより好ましい。
【0058】
チーグラー型触媒としては、例えば、特開昭59−8706号公報、特開昭59−22907号公報、特開昭59−22908号公報、特開昭59−64611号公報、特開昭59−71309号公報、特開昭60−42404号公報、特開昭60−133011号公報、特開昭60−215006号公報、特開昭62−232405号公報、特開昭62−297304号公報、特開平1−256502号公報、特開平1−289809号公報、特開平3−81303号公報、特開平3−88808号公報、特開平3−93803号公報、特公昭56−18132号公報、特公昭56−15807号公報、特公昭61−50964号公報、特公昭61−363号公報、特公昭62−56885号公報、特開平11−322833号公報、特開2002−187909号公報などに開示されている方法により製造されたものを用いることができる。
【0059】
また、触媒として、例えば特開2001−342211号公報などに開示されているように、少量のオレフィンを重合(予備重合)して得られる粒子を用いることができる。
【0060】
このように予備重合して得られるメタロセン系触媒としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物などの助触媒成分とメタロセン系化合物とを粒子状担体に担持させてなる固体触媒成分(例えば、特開昭61−108610号公報、特開昭61−296008号公報、特開昭63−89505号公報、特開平3−234709号公報、特開平6−336502号公報などに記載されている固体触媒成分)などを用い、必要に応じて有機アルミニウム化合物、ホウ素化合物などの助触媒成分を併用して、少量のオレフィンを予備重合して得られる粒子などを用いることができる。また、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物などの助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体触媒成分(例えば、特開2003−171412号公報などに記載されている固体触媒成分)などを用い、メタロセン系化合物と、有機アルミニウム化合物などの触媒成分とを併用して、少量のオレフィンを予備重合して得られる粒子などを用いることができる。
【0061】
気相重合反応器11内において重合して得られたオレフィン重合体は、移送配管1に排出される。
【0062】
気相重合反応器11から移送配管1にオレフィン重合体を排出する方法としては、例えば特開2001−139605号公報(2001年5月22日公開)に記載されている方法を用いることができる。また、オレフィン重合体を連続的に排出することが好ましく、これには例えば特表2002−530441号公報(2002年9月17日公開)に記載されている方法を用いることができる。また、例えば特開2008−143929号公報(2008年6月26日公開)に記載されているように、オレフィン重合体を、連続的に排出する手段と間歇的に排出する手段との両方を用いて排出してもよい。
【0063】
オレフィン重合体は、移送配管1を通って次工程におけるホッパー12に移送される。気相重合反応器11からホッパー12へのオレフィン重合体の移送は、気相重合反応器11内の圧力をホッパー12内の圧力よりも高くし、圧力差を用いて行うことが好ましい。例えば、気相重合反応器11内の圧力を2.0MPaGなどとし、ホッパー12内の圧力を0.2MPaGなどとすることができる。
【0064】
ホッパー12では、オレフィン重合体が回収される。また、ホッパー12に導入されるオレフィン重合体に混入する未反応の原料ガス、洗浄ガスなどが回収され、リサイクルガスとして再利用される。
【0065】
なお、本実施形態においては、オレフィン重合体が移送される容器としてホッパー12を用いたが、本発明における容器は、特にこれに限定されず、例えばさらなる気相重合反応器等であってもよい。
【0066】
また、本実施形態においては、移送配管1の一端部5に気相重合反応器11を接続し、他端部6にホッパー12を接続して、気相重合反応器11からホッパー12に粉粒体としてオレフィン重合体を移送する方法について説明したが、特にこれに限定されず、本発明は、配管を閉塞させるおそれのある粉粒体を移送させるあらゆる場合に好適に適用させることができる。
【0067】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【0068】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【実施例】
【0069】
本実施例及び比較例において、以下の項目について測定を行った。各項目において用いた方法を説明する。
【0070】
(1)密度(単位:kg/m
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料に対して、JIS K6760−1995に記載されたアニーリングを行った。
【0071】
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件において測定した。
【0072】
〔実施例1〕
実施例1においては、流動床式の気相重合反応器と、重合体を回収するための後処理系のホッパーと、これらを連結する2つの移送配管及び予備配管とを備えた重合体製造装置を用いた。気相重合反応器においては、エチレンと1−ブテンとの共重合を行い、エチレン−1−ブテン共重合体(オレフィン重合体)を製造した。
【0073】
重合の条件として、重合温度を87℃とし、圧力を2.0MPaGとし、循環ガスの組成をエチレン56.7mol%、水素7.5mol%、1−ブテン20.5mol%、窒素13.2mol%及びヘキサン2.1mol%とし、循環ガスの流速を55cm/秒とした。このとき、マグネシウム、ハロゲン、チタン及び電子供与体を含む固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを用いて、固体触媒成分上で少量のオレフィンを予備重合して得られる、オレフィンの気相重合用の予備重合触媒(特開2001−342211号公報における実施例2を参照)を、気相重合反応器に供給した。さらに、生成する重合体1トンに対して5.5molの割合でトリエチルアルミニウムを供給した。
【0074】
その後、気相重合反応器とホッパーとを連結する2つの移送配管を介して、ホッパーに、共重合体を含む粉粒体を移送した。移送配管のうち、1つの移送配管からは粉粒体を連続的に移送させ、他の移送配管からは間歇的に移送させた。連続的に粉粒体を移送させる移送配管(図1の移送配管1に相当)には、気相重合反応器(図1の気相重合反応器11に相当)に接続された一端部から、0.35mの位置に開閉弁(図1の開閉弁3に相当)、0.45mの位置から他端部側に長さ0.3mを有する縮小管部(図1の縮小管部2に相当)、及び1.1mの位置に開閉弁(図1の開閉弁4に相当)を設置した。移送配管の内径は、気相重合反応器から縮小管部までは0.053mであり、縮小管部において0.041mまで縮小し、縮小管部からホッパー(図1の第1の容器12に相当)までは0.041mであった。このように、縮小管部において、最も他端部側の内径は、最も一端部側の内径に対して約22%縮小しており、テーパー率は1/25であった。
【0075】
重合されたエチレン−1−ブテン共重合体の密度は920.8kg/mであり、MFRは1.05g/10分であった。このようにして重合体製造装置を運転した。
【0076】
運転中、上記の連続的に移送させる移送配管が閉塞したため、縮小管部の両側にある開閉弁を閉止し、予備配管に切り替えた。その結果、重合状態の乱れは発生しなかった。その後、縮小管部を開放して洗浄し、閉塞物を除去した後に、予備配管から上記の移送配管に切り替えて運転を続けた。重合状態の乱れは見られず、安定的な運転を継続することができた。
【0077】
〔実施例2〕
(1)予備重合触媒の調製
実施例2においては、まず予備重合触媒の調製を行った。
【0078】
予め窒素置換した撹拌機付き反応器に、常温下においてブタンを投入し、次にラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドを投入した。反応器内の温度を50℃まで上昇させ、2時間撹拌した後に、反応器内の温度を30℃まで降温させた。
【0079】
次に、ジエチル亜鉛、ペンタフルオロフェノール、水及びシリカを接触させて得られる固体成分と、ジエチル亜鉛、3,4,5−トリフルオロフェノール及び水とを接触させて得られる粒子からなる助触媒担体(特開2005−68170号公報の実施例1(1)〜(3)に記載されている成分(A)を参照)を投入した。このとき、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドは、助触媒担体1kgに対して50mmolであった。
【0080】
その後、助触媒担体1kgに対して、エチレンを0.15kg投入し、さらに水素を常温常圧において0.15リットル投入した。系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウムを4mol/mol投入し、予備重合を開始した。
【0081】
反応器内の温度を30℃とし、0.5時間運転した後、30分かけて50℃まで昇温させ、その後は50℃において予備重合を行った。予備重合開始後の最初の0.5時間は、助触媒担体1kgに対して、エチレンを1.0kg/時間の速度において供給し、また水素を常温常圧において1.0リットル/時間の速度において供給した。予備重合開始0.5時間後からは、助触媒担体1kgに対して、エチレンを5.0kg/時間、及び水素を15リットル/時間の速度において供給し、合計8時間の予備重合を行った。予備重合終了後、反応器内の圧力を0.5MPaGまでパージし、得られたスラリー状の予備重合触媒を乾燥器に移送し、窒素流通乾燥を行って、予備重合触媒を得た。この予備重合触媒中のエチレン重合体における予備重合量は、助触媒担体1gあたり26.6gであった。
【0082】
(2)流動床式気相重合
次に、流動床式の気相重合反応器と、重合体を回収するための後処理系のホッパーと、これらを連結する2つの移送配管とを備えた重合体製造装置を用いて、エチレンと1−ヘキセンとの共重合を行い、エチレン−1−ヘキセン共重合体(オレフィン重合体)を製造した。
【0083】
重合の条件として、重合温度を86℃とし、圧力を2.0MPaGとし、循環ガスの組成をエチレン56.7mol%、水素0.9mol%、1−ヘキセン0.9mol%、窒素11.5mol%及びヘキサン0.1mol%とし、循環ガスの流速を55cm/秒とした。このとき、上記(1)において得られた予備重合触媒を供給した。さらに、生成する重合体1トンに対して0.55molの割合でトリイソブチルアルミニウムを供給した。
【0084】
その後、気相重合反応器とホッパーとを連結する2つの移送配管を介して、ホッパーに、共重合体を含む粉粒体を移送した。2つの移送配管は、両方ともに粉粒体を間歇的に移送する方法により移送させた。上記2つの移送配管(図1の移送配管1に相当)には、気相重合反応器(図1の気相重合反応器11に相当)に接続された一端部から、0.35mの位置に開閉弁(図1の開閉弁3に相当)、1.30mの位置から他端部側に長さ0.5mを有する縮小管部(図1の縮小管部2に相当)、及び2.5mの位置に開閉弁(図1の開閉弁4に相当)を設置した。移送配管の内径は、気相重合反応器から縮小管部までは0.102mであり、縮小管部において0.066mまで縮小し、縮小管部からホッパー(図1の第1の容器12に相当)までは0.066mであった。このように、縮小管部において、最も他端部側の内径は、最も一端部側の内径に対して約36%縮小しており、テーパー率は9/125であった。
【0085】
重合されたエチレン−1−ヘキセン共重合体の密度は920.5kg/mであり、MFRは0.45g/10分であった。このようにして重合体製造装置を運転した。
【0086】
運転中、移送配管が閉塞したために、縮小管部の両側にある開閉弁を閉止し、予備配管に切り替えた。その結果、重合状態の乱れは発生しなかった。その後、縮小管部を開放して洗浄し、閉塞物を除去した後に、予備配管から上記の移送配管に切り替えて運転を続けた。重合状態の乱れは見られず、安定的な運転を継続することができた。
【0087】
〔比較例1〕
比較例1においては、流動床式の気相重合反応器と、重合体を回収するための後処理系のホッパーと、これらの連結する2つの移送配管とを備えた重合体製造装置を用いた。気相重合反応器においては、エチレンと1−ブテンとの共重合を行い、エチレン−1−ブテン共重合体を製造した。
【0088】
重合の条件として、重合温度を87℃とし、圧力を2.0MPaGとし、循環ガスの組成をエチレン54.3mol%、水素10.0mol%、1−ブテン20.8mol%、窒素12.8mol%及びヘキサン2.1mol%とし、循環ガスの流速を55cm/秒とした。このとき、マグネシウム、ハロゲン、チタン及び電子供与体を含む固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを用いて、固体触媒成分上で少量のオレフィンを予備重合して得られる、オレフィンの気相重合用の予備重合触媒(特開2001−342211号公報における実施例2を参照)を、気相重合反応器に供給した。さらに、生成する重合体1トンに対して5.5molの割合でトリエチルアルミニウムを供給した。
【0089】
その後、気相重合反応器とホッパーとを連結する2つの移送配管を介して、ホッパーに、共重合体を含む粉粒体を移送した。1つの移送配管は粉粒体を連続的に移送させ、他の移送配管は間歇的に移送する方法により移送させた。
【0090】
重合されたエチレン−1−ブテン共重合体の密度は920.7kg/mであり、MFRは1.16g/10分であった。このようにして重合体製造装置を運転させた。
【0091】
その結果、気相重合反応器において、重合による発熱と、冷却器(熱交換器)による冷却とのバランスの崩れが観察された。冷却器による除熱を強化しても、重合温度が制御不能となり95℃以上に達したため、緊急に失活剤を投入して重合を停止させた。このように重合温度が制御不能となった原因は、移送配管の閉塞であった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る粉粒体の移送方法によれば、効率よく粉粒体を移送することができるので、オレフィンなどの重合体の製造装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
1 移送配管(第1の移送配管)
2 縮小管部
3 開閉弁(第1の開閉弁)
4 開閉弁(第2の開閉弁)
5 一端部
6 他端部
7 予備配管(第2の移送配管)
11 気相重合反応器(反応器)
12 ホッパー(容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部側から他端部側に粉粒体を移送するための移送配管であり、
上記一端部から上記他端部までの間に、当該一端部側から当該他端部側に向かって内径が縮小している縮小管部を備えている、粉粒体の移送配管。
【請求項2】
上記縮小管部を挟んで、第1の開閉弁と、第2の開閉弁とをさらに備えており、
上記縮小管部は、第1の開閉弁と第2の開閉弁との間において取り外し可能に設けられている、請求項1に記載の移送配管。
【請求項3】
一端部側から他端部側にオレフィン重合体を移送するための第1の移送配管及び第2の移送配管と、
上記一端部に接続されたオレフィンを重合するための反応器と、
上記他端部に接続された容器とを備えるオレフィン重合体の製造装置であって、
上記第1の移送配管は、
上記一端部から上記他端部までの間に設けられた、当該一端部側から当該他端部側に向かって内径が縮小している縮小管部と、
上記縮小管部を挟んで、第1の開閉弁と、第2の開閉弁とを備え、
上記縮小管部は、第1の開閉弁と第2の開閉弁との間において取り外し可能に設けられている、オレフィン重合体の製造装置。
【請求項4】
上記縮小管部は、上記一端部側から上記他端部側に向かって、テーパー率が1/50以上1/5以下の範囲内のテーパー形状である、請求項3に記載の製造装置。
【請求項5】
第1の開閉弁は、上記一端部と上記縮小管部との間であって、かつ上記一端部から1.0m以内に設けられている、請求項3又は4に記載の製造装置。
【請求項6】
上記縮小管部の長さが0.1m以上1m以下である、請求項3〜5の何れか1項に記載の製造装置。
【請求項7】
請求項1に記載の移送配管を用いて粉粒体を移送する方法であって、
上記一端部側から上記他端部側に粉粒体を移送する第1工程と、
上記縮小管部を洗浄する第2工程とを有する、粉粒体の移送方法。
【請求項8】
請求項2に記載の移送配管を用いて粉粒体を移送する方法であって、
上記一端部側から上記他端部側に粉粒体を移送する第1工程と、
第1の開閉弁及び第2の開閉弁を閉じ、上記縮小管部を取り外して洗浄する第2工程とを有する、粉粒体の移送方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の移送方法を用いて粉粒体としてのオレフィン重合体を移送する工程を有する、オレフィン重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項3〜6の何れか1項に記載の製造装置を用いた、オレフィン重合体の製造方法であって、
上記反応器から上記容器に第1の移送配管を介してオレフィン重合体を移送する第1工程と、
第1の開閉弁及び第2の開閉弁を閉じ、上記縮小管部を取り外して洗浄する第2工程と、
第2工程を行う間に、第2の移送配管を用いて上記反応器から上記容器にオレフィン重合体の移送を行う第3工程とを有する、オレフィン重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202702(P2010−202702A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46861(P2009−46861)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】