説明

粒子凝集検出方法および装置

粒子懸濁液内の粒子凝集を検出および/または視覚化する方法であって、ある量の粒子懸濁液、個別の粒子を通過させることを可能にするように構成されたフィルタ上に置くステップと、凝集剤を含むある量の溶液または懸濁液を粒子懸濁液の位置に置くステップと、洗浄溶液を凝集物質の位置に場合によって置くステップと、表面を選択位置で粒子の存在について観察し、この存在により粒子の凝集が起こったことが示されるステップとを含む方法。また、一般に凝集反応、および特に血液型検査および交差適合性試験に使用されるような赤血球凝集反応の検出を行う方法が提供される。この方法は、全血、血液型検査試薬、および洗浄剤をフィルタに連続して垂直に追加することからなっている。赤血球凝集反応の場合、有色の、好ましくは赤色または赤みを帯びた点が洗浄後に見えるようになる。本発明に基づく装置およびキットが請求され、実験器具を必要とすることなく実験室でない環境においての血液型検査および適合を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に受容体配位子の相互作用の検出に関し、より詳細には、輸血に使用されるような血液型検査および適合性検査の目的での血液型抗原およびその抗体の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子凝集は、簡潔性、迅速性、および相対的感度(Riochet 1993年)により、抗原抗体相互作用を検出および視覚化するための広く採用されている免疫学方法である。一般に細胞、より詳細には赤血球は、様々な凝集方法の影響を受けやすい粒子である。このように、輸血前検査過程において重要な成分として血液型検査および適合性検査の際に赤血球の凝集(赤血球凝集反応)が、赤血球表面上の抗原およびこのような抗原に対する抗体の検出に利用されている(Rouger 1993年;Brecher 2002年)。血液の輸血前検査の目的は、ドナーとレシピエントの血球間の免疫不適合による血球の凝集または溶血から生じる有害反応を防ぐためのものである。「血液型検査」または「血液型適合性検査」は、ドナーの赤血球の抗原構成を検出し、このような抗体に対するレシピエントの反応を予測するのに使用される一連の検査である。
【0003】
最も臨床的に重要な抗原系はABO赤血球抗原系であり、これは、ヒト個人の大部分がこれらに対して能動的に免疫されることなく、これらの抗原に対する抗体を産生する点で、ユニークである。したがって、個人の赤血球は、A、BまたはAとB両方の抗原を示す可能性がある。人口の約40%は、これらの抗体のいずれも有しておらず、したがって「O」またはゼロとして型分けまたはグループ分けされる。グループOの個人の血液における血漿または血清は、AおよびB型両方の抗原に対する抗体を有する。しかし、グループABの個人の血液の血漿または血清は、AおよびB型の抗原のどちらかに対する抗体も有していない。したがって、グループAの個人の血液の血漿または血清はB型の抗原に対する抗体を有し、グループBの個人の血液の血漿または血清はA型の抗原に対する抗体を有する。
【0004】
ABO抗原系における不適合は強い有害反応につながるが、この有害反応はドナーをレシピエントに適合させることによって防ぐことができる。理想的にはドナーおよびレシピエントは同じ血液型に属しているべきであるが、理想的なドナーがいない場合、レシピエントの血漿および血清がドナーの赤血球に対する自然抗体を持っていない限り、代替の血液型も適切である。したがって、Oのグループは万能ドナーである。というのは、その赤血球は、他の全ての血液型に存在する抗A抗体および抗B抗体のいずれとも反応しないからである。グループABの個人は、全ての血液型から血液を受けることができる。というのは、どれに対しても抗体を有さないからである。
【0005】
Rhまたは「D」抗原も、上記「血液型検査」の一部として共に検査される。個人の赤血球は、Rh抗原を持っている可能性もあり(Rhまたは「Rhプラス」)、持っていない可能性もある(Rhまたは「Rhマイナス」)。ABO抗原系と異なり、抗Rh(抗D)抗体は、Rhマイナスの血液の個人には普通は存在しない。それにもかかわらず、このような抗体はRhプラスの血液の輸血、またはRhプラスの胎児の妊娠による免疫的増強作用に付随して、Rhマイナスの個人内で生じる。現代の輸血では、Rhマイナスの個人でのRh抗体の生成を防ぎ、抗Rh抗体を持つ個人での有害反応を防ぐためには、ABO適合性に加えて、ドナーとレシピエントの間のRhの適合性を要求する。
【0006】
A、BおよびRh抗原の他に、赤血球は様々な他の抗原を有することがあり(詳細はBrecher、2002年を参照)、これらは時に「血液型亜型」と呼ばれる。Rh抗原(および、実質上多くの抗原)と同様に、これらの抗原に対する抗体はヒトの血液には普通は存在しないが、以前の輸血、または抗原を有する胎児の妊娠により起こることがある。このような抗体は、「不規則」または「希少」と呼ばれる。このような抗原および抗体による有害反応は稀であるかまたは少ないが、ドナーの血液の供給に十分および適当である場合、先進工業国では、血液被供給者の不規則抗体、およびドナーの赤血球に関する関連抗原に対する検査が行われる。
【0007】
したがって、上記より、血液凝集過程が輸血、および各血液提供ユニットにおいて重要な役割を果たすことが明らかであり、血液提供の各潜在レシピエントは以下の全てまたは一部を含む可能性がある様々なレベルの検査を受ける。
【0008】
血液型検査:全ての提供された血液ユニット、および新しい入院患者および/または潜在的血液レシピエントの血液を、ABO/Rh抗原の存在について検査する。
【0009】
血液型裏試験:潜在的血液レシピエントは、ABO/Rh血液抗原に対する抗体の存在、および場合によっては血漿または血清における「不規則抗体」の存在について検査する。
【0010】
交差適合性試験:これは、レシピエントの血漿/血清を選択したドナーの血液ユニットの赤血球と反応させる、輸血前検査の最後の段階である。一部の国では、交差適合性試験は実験室では実際には行われず、コンピュータに記憶された検査データをマッチングさせることによって行われる。フランスなどの他の国では、交差適合性試験は看護職員によってレシピエントのベッド脇で行われる。
【0011】
上記検査は、様々な標準的な手動および自動粒子凝集方法によって実施することができる。全ての粒子凝集法は、血漿/血清であり得る凝集物質または人工的に生成された抗体試薬と粒子とを混合させるステップと、この混合物を様々な時間にわたりインキュベートするステップと、最後に、凝集した粒子の存在について混合物を観察するステップとを含む。全ての方法において、赤血球は、血液中の濃度の1:10以上に希釈し、血漿または血清痕跡を取り除くために血球を洗浄することが強く勧められるか、または徹底的に必要である。
【0012】
凝集の検出は、平らな表面に広がることが好ましい、混合物の裸眼観察によって実現することができる(Riochet、1993年)。別の方法では、凝集粒子と非凝集粒子の視覚的な相違点をはっきりさせるのに、様々な手段および器具が利用可能である。
【0013】
「スライド凝集反応」法は、器具を必要とすることなくほとんどどこでも行うことができる。少量の希釈赤血球を、顕微鏡用スライドの表面、またはあらゆる他の不透水性表面上で少量の血漿/血清/抗体と混合する。2つの成分は、棒で、またはスライドを数分間旋回させることによって混合し、凝集について注意深く観察される。この方法の欠点のいくつかとして、(a)数分間の混合が必要であること、(b)結果を主観的に視覚で測定すること、(c)乾燥によって偽陽性反応が生じること、および(d)スライドが保存できないことが挙げられる。
【0014】
「管凝集」法では、規定体積の希釈血球懸濁液を、円形底部またはV字形底部透明試験管内で規定体積の血漿/血清/抗体と混合する。陰性反応の場合、赤血球は管の底部の中心内にゆっくりと降下し、明らかな赤い「ボタン」を形成する。陽性反応の場合、凝集した赤血球は格子を形成し、明らかなボタンを形成することなく管の底部の表面上全てに広がる。代わりに、血球の「ローン(lawn)」が明確である。血球がゆっくり沈下するのを待つ代わりに、現在の慣行(Brecher、2002年;Gamma Biologicals、2001年)では、再懸濁によって抗体溶液と赤血球の混合物を遠心分離することを指示している。陽性凝集反応の場合、血球の塊が、明らかに見える。管凝集はまた、ミクロ滴定プレートのウェルで行うことができ、それによって試薬および血液の量が少なくなり、スループットが増加する。管凝集法の欠点の一部としては、(a)実験器具、職員および環境が必要であること、(b)結果を主体的に視覚的に測定すること、(c)血球の塊は免疫凝集物であると想定されるので、正しくない遠心分離速度または時間により偽陽性結果または偽陰性結果につながる可能性があること、(d)結果の直接の記録がないこと、(e)試験管がかさばること、および(f)破損および流出の危険があることが挙げられる。
【0015】
「ゲル濾過」法では、赤血球と血漿/血清/抗体の混合物を、(粒状物質である可能性がある)ゲル分離媒質のカラムにかける。この混合物は、遠心分離によってゲル内に押込まれる。凝集した赤血球は、ゲルに浸透することができず、ゲルの上部に留まる。凝集していない血球は、ゲルカラムに浸透し、その底部に到達する。小さな寸法の凝集物はゲルカラムに入ることができるが、その底部には到達しない。
【0016】
米国特許第5,338,689号に記載されたこのような方法の1つは、ゲル粒子のカラムを利用し、スイスDiaMed AGから市販されている血液型検査用の商業的に成功した製品ラインに発展した。この方法の利点は、(a)使用が比較的簡単であること、(b)結果の解釈が明確であること、(c)ゲル内への浸透に基づき凝集レベルを等級分けすることが可能であることである。欠点は、(a)実験器具、職員、および環境が必要であること、(b)結果の直接の記録がないこと、(c)試験ハードウェアがかさばること(製造メーカは、製品を「カード」と呼んでいるが、実際はホルダ内の一連の試験管であり、「カード」のように平らではない)、および(d)製造(細い管へのゲルの挿入)が複雑であり、費用が高くなることである。
【0017】
ある場合、赤血球を直接凝集させることができず、凝集を促進するために抗グロブリン抗体および/または抗補体抗体(ときに、「Coombs試薬」と呼ばれる。)を添加することが必要である点で、赤血球抗原に対する抗体は「不完全である」と考えられる(Coombs他、1945年;Brecher、2002年)。この現象は、血液亜型、および時には主な血液型の特定の変異型などの比較的弱い抗原に対する抗体を検出しようとする場合に、最も一般的である。上記の3つの方法は全て、抗体と反応した赤血球を、Coombs試薬にさらす追加のステップの影響を受けやすい。しかし、この過程は、かなりの量の手動操作を伴う。第1に、赤血球と不完全抗体の混合物は、反応混合物から未反応の免疫グロブリン全てを取り除くように、徹底的に洗わなければならない。その後、洗った抗体で覆われた赤血球をCoombs試薬と混合し、上記の方法の1つを利用して、凝集について検査する。
【0018】
赤血球以外の粒子を必要とする免疫試験では、凝集した粒子と凝集していない粒子を容易に分離するため、規定の孔径のフィルタを使用していた(例えば、米国特許第4,459,361号および第4,847,199号)。現在まで、この方法は、この方法が実現可能であるという一部の極めて初期の見解にもかかわらず、血液型検査および血液型適合性検査の手順において特に例示されたような、凝集された粒子としての赤血球での凝集方法は使用されていない。
【0019】
保存された細菌細胞でのCastaneda(1950年)の予備的観察に基づき、MaloneおよびStapleton(1951年)は、濾紙上の赤血球の横方向の移動は血液型抗血清の追加により影響を受け、それによって非関連抗血清と混合した赤血球(例えば、抗B血清と混合したA型血球)は、生理食塩水の追加の際に横方向に移動し、関連抗血清と混合した赤血球(抗A血清と混合したA型血球)はその位置に「定置」され、生理食塩水の追加後に移動しないことが示されている。1滴の高力価の抗血液型血清を、濾紙(元の用語では、「吸い取り紙」)の上に置くグループ分け方法が提案された。血清が広がった後、1滴の試料血液を同じ位置に置き、(「光沢がなくなったときに」)部分的に乾燥させる。最後に、2滴の生理食塩水を追加する。陽性反応は、陰性反応よりも小さな血液のスポットによって示される。抗血液型抗血清の力価を測定する逆の過程も提案され、1滴の血清を吸い取り紙の上に置き、次いで1滴の洗浄した赤血球を置く。部分的に乾燥させた後、2滴の生理食塩水を血液の上部に追加した。抗血清の力価は、血球の横方向への広がりの範囲に対して逆の関係であった。
【0020】
比較的簡単であるにもかかわらず、著者の実験室内(DunsfordおよびBowley、1955年、1967年)、および他の場所(FarrおよびGodwin、1955年)における抗血液型試薬の品質の推定を除いて、この方法は血液バンクにおいては実施されなかった。検査の最終ステップの前の試薬の乾燥を待つ必要があること、および赤円の寸法に基づく陽性反応と陰性反応の不明確な区別が主な欠点であり、この方法に対する継続した無関心の原因であろう。
【0021】
この技術の変形(Anderson、1970年)において、血液および抗血清を混合し、30分間インキュベートした。赤血球凝集は、濾紙のストリップをこの混合物に挿入し、ストリップへの混合物のウィッキング(すなわち、横方向の流れ)を追跡することによって検出された。陽性反応では、血球は流れの開始部位に残り、血球を含まない血清はストリップの端部に向かって前進するが、陰性反応では、血球はストリップに沿って血清と共に移動する。反応に必要な時間の長さ、および2つの別個のハードウェア構成部品(混合皿およびストリップ)が必要であることが欠点であり、過程を複雑にし、誤差を生じさせ得る。
【0022】
Akers Biosicences Inc.(米国、ニュージャージー州、Thorofare)が、Anderson(1970年)の考えを改良し、これをAkers Researchに譲渡された米国特許第5,231,035号および第5,565,366号に記載された、内蔵装置に開発した。カセット状装置は、装置の上部パネルの2つの開口部それぞれの内側に大きな液滴を配置し(一方はA型の判定用、もう一方はB型の判定用)、2分間待ち、その後1滴の生理食塩水を追加することによって患者の血液型を判定することが可能である。陰性反応の場合、血液は横方向に移動し、第2の開口部(窓)内に現れる。陽性反応の場合、赤血球は移動せず、第2の開口部はきれいなままである(または、生理食塩水洗浄の色を示す)。Akersの装置は、血液バンクの専門家でない人によって実験室の外で(例えば、ベッド脇で)利用できるような範囲まで血液型検査を簡単にするが、以下のようないくつかの欠点がある。(a)比較的大量の血液が必要であり、(b)操作者がステップの時間を計る必要があり、(c)交差適合性試験(ドナーの赤血球に対するレシピエントの抗体の活性を視覚化すること)ではなく前方向の血液型検査のみが可能であり、(d)結果の見かけが誤解を招く恐れがあり、陽性結果は結果窓内に赤色がないことで示され、陰性反応は赤色が現れて終了し、(e)結果は、生理食塩水洗浄の追加後のちょうど1分後に視覚化しなければならない。この要件により、反応した装置を安定した記録として記憶することが不可能になる。
【0023】
標準的な血液型検査および交差適合性試験は、かなり労力がかかり、誤差を生じやすく、実験室の環境においてこれらを行う専門家が必要であることが明らかである。血液バンクの専門的操作者ではない人(フランスでのベッド脇での交差適合性試験における看護婦など)によって、実験室の外で血液型検査過程を行う必要があるので、過程を簡単にし、操作誤差をなくすことを目的とした製品が開発された。これらの製品は実際にある程度、血液型検査過程を簡単にするが、完全に誤差がなくなったわけではなく、一部の人員にとっては複雑である可能性がある(RachelおよびPlapp、1990年;Migeot他、2002年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
背景技術は、利用に特別な訓練をほとんどまたは全く必要とせず、直接的に記録可能な結果を提供する、規定の孔寸法のフィルタを通した垂直方向の移動に基づく容易に持ち運び可能な装置を必要とする迅速、簡単、かつ正確な血液型検査過程を教示または呈示していない。
【0025】
本発明は、実験室でない環境において専門的でない職員による使用に適した、簡単な方法で様々な血液型検査および交差適合性試験を行う方法および装置を提供することによって、従来技術の欠陥を克服する。加えて、結果は場合によって将来の参照のため、直接保存、および記憶/保管することができる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の好ましい実地形態によると、粒子懸濁液内の粒子凝集を検出および/または視覚化する方法であって、ある量の粒子懸濁液および凝集物質を含むある量の溶液または懸濁液を、個別の凝集していない粒子を表面に垂直な方向に通過させることを可能にするように構成されたフィルタの表面上のほぼ同じ選択位置に置くステップと、洗浄溶液を凝集物質とほぼ同じ位置に場合によって置くステップと、表面を選択位置で粒子の存在について観察するステップとを含む方法が提供される。
【0027】
場合によっておよび好ましくは、ある量の粒子懸濁液を、凝集物質を含むある量の溶液または懸濁液を置く前に、選択位置に置かれる。
【0028】
場合によっておよび好ましくは、フィルタは多孔質体の多孔表面を備え、表面の孔は少なくとも個別の粒子の通過を可能にするような寸法である。
【0029】
場合によっておよびより好ましくは、多孔表面は本質的に吸収性がある、または吸収材料に取り付けられた多孔質層を備えている。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態によると、水溶性フィルムが、多孔質層と吸収材料の間に位置している。
【0031】
本発明の別の好ましい実施形態によると、この方法はさらに、フィルタを乾燥させるステップを含む。
【0032】
場合によっておよび好ましくは、ある量の粒子懸濁液およびある量の凝集物質の溶液または懸濁液はそれぞれ、供給可能な量で構成されている。場合によっておよびより好ましくは、供給可能な量は少なくとも1ミクロリットルで構成されている。
【0033】
場合によっておよび好ましくは、粒子懸濁液の粒子は、結合対の膜(MBP)で覆われている。場合によっておよびより好ましくは、凝集物質はMBPを含んでいる。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態によると、粒子は天然粒子または合成粒子の少なくとも一方を含んでいる。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態によると、粒子は検出可能な標識を含んでいる。場合によっておよび好ましくは、標識は、顔料、放射性材料、磁気または常磁性材料、フルオロフォアおよび発光性材料を含む群から選択される。
【0036】
場合によっておよび好ましくは、粒子懸濁液は第1の血液製物を含んでいる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の血液製物は全血液を含んでいる。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態によると、第1の血液製物は血液成分を含んでいる。
【0039】
場合によっておよび好ましくは、血液成分は懸濁液である。
【0040】
本発明の別の好ましい実施形態によると、第1の血液製物は赤血球を含んでいる。
【0041】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によると、第1の血液製物は、非洗浄赤血球、非希釈赤血球、または非洗浄非希釈赤血球を含む群から選択された少なくとも1つを含んでいる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によると、本発明の方法は、第1の血液製物を遠心分離、または第1の血液製物を懸濁液または凝集物質と予め混合することなく使用可能である。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によると、凝集物質は第2の血液製物を含んでいる。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態によると、凝集物質は血液型に対する抗体を含んでいる。
【0045】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によると、凝集物質は血漿または血清を含んでいる。
【0046】
本発明の別の好ましい実施形態によると、凝集物質を含むある量の溶液または懸濁液は、ある量の粒子懸濁液の定置前に、選択位置に定置される。
【0047】
場合によっておよび好ましくは、フィルタは凝集物質を含浸している。場合によっておよびより好ましくは、フィルタは抗グロブリン試薬および抗補体試薬を含む群から選択した試薬を含浸している。
【0048】
本発明の他の好ましい実施形態によると、試薬はCoombs試薬を含んでいる。
【0049】
本発明の別の好ましい実施形態によると、洗浄溶液は塩溶液である。場合によっておよび好ましくは、塩溶液は等張である。場合によっておよびより好ましくは、塩溶液は生理食塩水である。場合によっておよびより好ましくは、生理食塩水は緩衝化されている。場合によっておよびより好ましくは、緩衝生理食塩水はリン酸塩緩衝生理食塩水である。
【0050】
本発明の別の好ましい実施形態によると、洗浄溶液はさらに追加の洗浄成分を含んでいる。場合によっておよび好ましくは、追加の洗浄成分はポリマーを含んでいる。場合によっておよびより好ましくは、ポリマーはポリエチレングリコールおよびデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む群から選択される。場合によっておよびより好ましくは、ポリマーの濃度範囲は浸透圧平衡を維持するのに適切なものである。場合によっておよびより好ましくは、濃度範囲は約0.0001から約20%w/vまでである。
【0051】
本発明の別の好ましい実施形態によると、洗浄溶液はさらに、洗剤および界面活性材料の少なくとも1つを含んでいる。場合によっておよび好ましくは、洗剤はポリオキシエチレン−10−トリデシルエーテルを含んでいる。場合によっておよびより好ましくは、洗剤または界面活性剤は濃度が、0.0001から0.1%w/vまでの範囲内にある。場合によっておよび最も好ましくは、濃度が0.001から0.01%w/vまでの範囲内にある。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態によると、試料中の粒子凝集を検出および/または視覚化する装置であって、フィルタの表面上に配置された個別の凝集していない粒子を前記表面と垂直な方向に通過させることを可能にするように構成されたフィルタを備える装置が提供される。
【0053】
場合によっておよび好ましくは、この装置はさらに、フィルタの上側表面に配置された網目を備えている。
【0054】
本発明の好ましい実施形態によると、この装置はさらに、凝集物質を受け、凝集物質から粒子を取り除く追加のフィルタを備えている。場合によっておよび好ましくは、この追加のフィルタは、粒子含有凝集物質の追加の後で、粒子含有試料が第1のフィルタに追加される前に取り除かれる。
【0055】
場合によっておよび好ましくは、凝集物質は全血または血液成分内の抗体を含んでいる。
【0056】
本発明の別の好ましい実施形態によると、本発明の方法を実施するためのキットであって、試料を受けるフィルタと、またフィルタ上に置かれるための凝集物質と、場合によって凝集物質および試料の後にフィルタ上に配置される洗浄溶液とを含むキットが提供される。
【0057】
場合によっておよび好ましくは、キットはさらに、凝集反応を検出および/または測定するメータを備えている。場合によっておよびより好ましくは、メータは、フィルタの多孔表面の上に光を伝達する光源、および多孔表面によって反射または散乱された光を測定するように配置された光センサを有する光メータを備えている。
【0058】
場合によっておよび好ましくは、キットはさらに、測定した光を視覚信号に変換する変換器と、信号を表示するディスプレイとを備えている。
【0059】
キットは場合によって、少なくとも1つの追加の光センサおよび/または少なくとも1つの追加の光源を備えることができる。
【0060】
場合によっておよび好ましくは、キットは処理回路を備えている。
【0061】
場合によっておよび好ましくは、本発明のキットはさらに、フィルタ用ホルダを備えている。
【0062】
場合によっておよび好ましくは、光源は有色光を提供する。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によると、キットはさらに、凝集物質を受け、凝集物質から粒子を取り除く追加のフィルタを備えている。場合によっておよび好ましくは、追加のフィルタは取外し可能である。
【0064】
本発明の別の実施形態によると、本発明の方法を実施するキットであって、場合によって試薬に含浸させた、試料および凝集物質を受けるフィルタと、凝集溶液および試料の後にフィルタ上に場合によって配置される洗浄溶液とを含むキットが提供される。
【0065】
場合によっておよび好ましくは、試薬はCoombs試薬を含んでいる。
【0066】
場合によっておよび好ましくは、フィルタに含浸された試薬は凝集物質である。
【0067】
本発明の好ましい実施形態によると、複数の検査成分の間の凝集反応の有無を検出する装置であって、前記装置はフィルタを備え、前記フィルタは、上側表面を有し、前記検査成分の流れの方向が前記上側表面に垂直であるように構成されており、前記検査成分は、前記上側表面に適用され、場合によって洗浄され、凝集反応が起こった試験成分が前記上側表面上で検出可能である、前記装置が提供される。
【0068】
場合によっておよび好ましくは、検査成分は全血または血液の一部または血液成分の少なくとも1つを含んでいる。
【0069】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によると、この装置は場合によって1つまたは複数の層を備えてよいフィルタを有することを特徴とする。フィルタの寸法(厚さまたは面積の少なくとも一方を含むことが好ましい)は、検査成分の流れの方向をこれらの成分が適用される表面に垂直にすることができるように設計されていることが好ましい。この成分は場合によって、血液または血液の一部または成分であってもよく、場合によって分離される複数の異なる成分の混合物を含んでいてもよい。この成分は、フィルタの表面に適用する前または間に、反応の結果分離が別に起こるように反応させられることが好ましい。例えば、血液成分については、反応は場合によって凝集であってよく、それによって血液(またはその成分)が凝集したとき、検査成分はフィルタに入らない(または、短い距離だけしか入らない)。
【0070】
場合によっておよびより好ましくは、反応の有無は視覚的に、最も好ましくはフィルタを裸眼で見ることによって判定される。場合によって、メータを使用することができる。別の方法では、他のタイプの標識またはリポータを、例えば(場合によっておよび好ましくは)標識またはリポータの存在を検出するメータを用いて使用することができる。様々な例示的標識およびリポータを以下にさらに詳細に説明するが、あらゆる適切な標識またはリポータを当業者は使用することができ、選択することができる。メータは、当業者によって設計されるように、標識またはリポータがあってもなくても任意に使用することができることに留意すべきである。
【0071】
本発明の好ましい実施形態によると、結果の判定は場合によっておよび好ましくは、主観的な要因を伴わない、あるいはテスタ側の主観性をほとんど伴わないことが好ましい。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によると、この装置は場合によって容易に持ち運び可能である。
【0073】
本発明の好ましい実施形態によると、この装置は場合によって、専門ではない操作者によって容易に使用することができる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態によると、この方法は場合によっておよび好ましくは、反応成分の予備混合が必要ない。
【0075】
本発明の好ましい実施形態によると、場合によっておよび好ましくは、非洗浄全血を使用することができる。
【0076】
本発明の好ましい実施形態によると、場合によっておよび好ましくは、少量の試料血液が必要である。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によると、場合によっておよび好ましくは、遠心分離ステップは必要ない。
【0078】
本発明の好ましい実施形態によると、場合によって、反応停止のタイミングは必要ない。
【0079】
本発明の好ましい実施形態によると、結果の直接記録が場合によって得られる。
【0080】
本発明の追加の別の利点は、場合によっておよび好ましくは、血液型検査および交差適合性試験の両方に適していることである。
【0081】
本発明の特徴は、検査成分の流れの方向が多孔質体の表面に垂直であることが好ましいことである。
【0082】
本発明の利点は、方法および装置は使用するのが簡単であるということである。
【0083】
本発明の別の利点は、偽陽性結果が避けられるということである。
【0084】
本発明の別の利点は、結果が、好ましくは極めて少ない幅の誤差で迅速かつ正確に得られるということである。
【0085】
本明細書では、多くの用語は、説明する目的でのみ、限定する意図なく、以下で論じられる。そうでないと規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0086】
結合対(BP)−受容体配位子対、これに限らないが、抗原抗体、相補核酸、レクチンカーボハイドレイト対、酵素担体などを含む。
【0087】
結合対の膜(MBP)−結合対の膜、例えば、抗体は抗原抗体結合対のMBPである。
【0088】
血液型検査−本明細書の「血液型判定」を参照のこと。
【0089】
凝集物質−これに限らないが、粒子を互いに結合させるものを含む材料。
【0090】
液滴−場合によっておよび好ましくは、これに限らないが、例えばピペット、針、ボトルまたはあらゆる他の容器、薄い突起開口部を備える管または容器、または場合によっては堅い物体を含む、分配装置の開口部から単一の塊として落ちるのに十分重いある量の液体。ここにおいて、ある量の液滴は、必ずしもそうではないが、場合によっておよび好ましくは、量が約20から約50μLである。
【0091】
多孔質体−中に孔を有する材料の塊。多孔質体の限定的ではない例としては、これに限らないが、フィルタ、濾紙、吸収紙などが挙げられる。
【0092】
フィルタ−これに限らないが、懸濁した粒子物質の少なくとも一部から流体を分離させるためにこれを通して液体または気体を通過させることができる紙または砂を含む多孔質材料または塊、またはこれを通して液体または気体を通過させてこのように分離することができるあらゆる他の吸収材料を含む装置、あるいはこのような多孔質材料を入れた装置。
【0093】
横方向移動−これに限らないが、場合によっておよび好ましくは、平らな吸収(すなわち、多孔質あるいは吸収)物体(これに限らないが、膜、紙を含む)を含む物体の表面上またはその内側における、および物体の表面に平行な(場合によって、液体中に懸濁または分散された)、例えば液体および/または粒子の移動。
【0094】
垂直移動−これに限らないが、平らな吸収(すなわち、多孔質あるいは吸収)物体(これに限らないが、膜、紙を含む)を含む物体を通した、および物体の表面に垂直なこのような液体中に懸濁された、例えば液体および/または粒子の移動。
【0095】
貫通流れ−上記「垂直移動」を参照のこと。
【0096】
多孔表面−例えば気体または液体の通過を可能にし、液体または気体中に懸濁または溶解された粒子の少なくとも一部の通過を可能にしない孔または割れ目を備えた表面である。これら粒子は孔よりも大きな寸法をしているか、または孔の表面に付着するかの何れかである。
【0097】
血液型判定−これに限らないが、赤血球上のABO/Rh抗原の存在を血液標本で検査するステップを含む検査方法によって、またはAおよびB抗原に対する抗体の存在を血液標本で検査することによって、ABO/Rh血液型を判定すること。
【0098】
交差適合性試験−レシピエントの血漿/血清を、ドナーの血液または赤血球と反応させる、輸血前検査の最終段階。
【0099】
適合−上記「交差適合性試験」を参照のこと。
【0100】
輸血前交差適合性試験−上記「交差適合性試験」を参照のこと。
【0101】
血液型亜型−これに限らないが、ABO/Rh抗原系に属せず、ABO/Rh抗原とは別に遺伝された赤血球上の抗原を含む。
【0102】
不規則抗体−例えば、人間の血液の血漿/血清中に見られる非ABO/Rh抗原に対する抗体。
【0103】
標識−トレーサ;検出または視覚化を簡単にするように、例えば化学的、生物的、または物理的実体に加えられるまたは結合される比較的容易に検出可能な物質または部分。生物医学分野で利用される標識の例としては、これに限らないが、顔料、放射性材料、磁気または常磁性材料、フルオロフォア、発光性材料、酵素、粒子が挙げられる。
【0104】
同様の位置−これに限らないが、ある量の溶液または懸濁液が前に配置された位置にほぼ近いが、場合によって隣接または近接位置を含むこともできる位置を含むことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
(図面の簡単な説明)
本発明を、添付の図面を参照して、例示する目的でのみ本明細書に説明する。
図1は、本発明の教示により行われる血液型検査の結果を示す図である。
図2は、本発明の教示により構成された装置およびキットの概略図である。
【0106】
(発明の詳細な説明)
本発明は、例えば抗原抗体相互作用を検出するように、複数の検査成分の粒子凝集(凝集反応)を検出または視覚化する方法および装置を提供する。この装置は、上側表面を有するフィルタを有することを特徴とする。検査成分の流れの方向は主に、上側表面に垂直である。流れの垂直方向は、表面積を試料および洗剤の量に対して制限することによって維持されることが好ましい。非限定的な例として、約0.2から約0.25cmまでの表面積が場合によっておよび好ましくは、50μL以下の試料に利用することができる。試験成分が上側表面に適用され、それによって試験成分に凝集反応が起こったとき、リポータとして働く試験の可視および/または検出可能成分(例えば、本発明の好ましい実施形態による赤血球)は、フィルタに垂直方向に見えるようには浸透しない。したがって、場合による洗浄過程の後に、表面上で可視および/または検出可能である。
【0107】
場合によっておよび好ましくは、この方法は1滴の粒子の懸濁液をフィルタの表面上に配置するステップと、凝集物質を含む1滴の溶液または懸濁液を同じまたは同様の場所に置くステップと、場合によって洗浄溶液を同じまたは同様の場所に置くステップとを含む。このフィルタは、孔により、凝集の後の塊の血球ではなく、フィルタの表面に垂直な単一の血球の通過が可能になるように選択される。凝集した血球は、したがって、フィルタの表面上に残り、反応部位の赤点の存在によって検出可能である。凝集物質は検査試料(1つまたは複数の検査成分)とほぼ同じ選択位置に配置されていることが好ましく、それによって凝集物質は検査試料と反応することができることに留意すべきである。したがって、「ほぼ同じ選択位置」という用語は、凝集物質が検査試料と反応することが可能な位置のことを言う。
【0108】
あるいは、複数の垂直に重ねられたフィルタを、好ましくは少なくとも第1のフィルタと下の重なりにおける少なくとも1つのフィルタとの間の流体移動速度を制御する水溶性フィルムと共に、場合によって使用することができる。第1のフィルタは両方の結合対の膜(MBP)を受けている。MPBは、以下に詳細に示すように、抗原抗体、相補核酸、レクチン炭水化物対などの受容体配位子対である。したがって、凝集物質はMBPの相補部材であり得、それによって粒子凝集反応および装置を、結合対の膜の検出/測定に使用することができる。第1のフィルタは両方の膜を順に受けることが好ましい。凝集が起こると、洗浄溶液での第1のフィルタの洗浄により、第2のフィルタ上で第1のフィルタを通して垂直なMBPの洗浄は起こらない。凝集は場合によって、視覚的にまたは標識の検出により検出することができる。
【0109】
単一の十分厚いフィルタがまた、場合によってフィルタ内に埋め込まれた水溶性フィルムと共に使用され得る。フィルタは、フィルタに沿った横方向移動が最小限に抑えられるように選択され、それによって非凝集粒子の移動の少なくとも実質的部分は、フィルタの表面に対し垂直な方向に起こり、凝集粒子はフィルタの表面に残る。
【0110】
本発明を、血液型検査および交差適合性試験の目的で使用することができる。本発明は、専門的でない操作者によって実験室の外で使用することができ、反応成分の予備混合を必要とせず、洗浄していない全血を使用し、陽性反応の場合に明らかな色信号を提供し、記録として記憶することができる方法および装置を提供する。
【0111】
フィルタの上の検査成分の横方向の流れに依存した上に論じた従来技術の方法に対して、本発明者は、移動の方向がフィルタを通る場合(すなわち、方向がフィルタの表面に対して垂直である場合)、フィルタは有利には既存の方法を凌ぐ以下に述べるいくつかの明らかな利点を備えた(血液型検査および適合を含む)赤血球凝集に利用することができることを発見した。(a)凝集および非凝集の区別がはっきりしており、陽性反応の場合は赤色の点が現れ、陰性反応(または無反応)の場合は点が発生しない。(b)赤血球および凝集物質は、フィルタ上に置く前に、混合するおよび/またはある期間培養する必要はない。(c)結果の視覚化を簡単にするため、非凝集赤血球から凝集赤血球を分離させるのに遠心分離は必要ない。(d)洗浄した赤血球の希釈(場合によっておよび好ましくは、約1から約5%まで)懸濁液の代わりに、全血を利用することができる。(e)反応フィルタを乾燥させ、反応および結果の明確な記録として記憶/保管することができる。本発明のシステムにおいて使用されるフィルタは、少なくともかなりの割合の粒子移動が、フィルタの表面に垂直な方向に起こることを確実にするのに適切な寸法および性状を有する。
【0112】
本発明の好ましい実施形態によると、粒子凝集を検出/視覚化する方法であって、1滴の粒子の懸濁液を多孔質体の多孔表面上に配置するステップ(ここにおいて、前記表面の寸法および孔は個別の粒子の垂直方向への通過を可能にするように選択されている。)と、凝集物質を含む1滴の溶液または懸濁液を同じまたは同様の場所に置くステップと、場合によって洗浄溶液を液滴と同じまたは同様の場所に置くステップと、粒子の存在をこの位置の表面で観察し、存在は粒子の凝集が起こったことを示すステップとを含む方法が提供される。多孔質材料を場合によって乾燥させることによって、乾燥材料を記録として記憶させることができる。
【0113】
本発明の他の実施形態によると、前の実施形態の最初の2ステップの順番を逆にすることができ、それによってこの血液型検査方法は、1滴の血液型抗原に対する抗体を含む溶液を多孔表面上に配置するステップ(ここにおいて、前記表面の孔および寸法は、個別の赤血球の少なくとも垂直方向への通過を可能にするようにされている。)と、1滴の赤血球の懸濁液を場合によって1滴の抗体溶液と同じまたは同様の場所に置くステップと、洗浄溶液を表面上に、場合によって液滴と同じまたは同様の場所に置くステップと、赤色の存在をこの位置の表面で観察するステップとを含んでいる。
【0114】
洗浄溶液は、場合によっておよび好ましくは浸透性溶液であり、より好ましくは等浸透圧性溶液である。洗浄溶液は生理食塩水溶液であることがより好ましく、緩衝化された生理食塩水溶液であることが最も好ましい。本発明の好ましい実施形態によると、洗浄溶液はリン酸塩緩衝生理食塩水を含んでいる。
【0115】
洗浄溶液は場合によっては、追加の洗浄成分、またはポリマー、洗剤、または界面活性剤を含む別の成分を含むことができる。追加の洗浄成分は、フィルタに対する不特定結合を減少させるのを助けることができることが好ましい。場合によって使用されるポリマーは、ポリエチレングリコールおよびデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む群から選択されることが好ましい。場合によっておよび好ましくは、浸透圧平衡を維持するのに適切である濃度範囲で場合によって使用されるポリマーが加えられる。濃度は約0.0001から約20%w/vまでの範囲にあることがより好ましい。場合によって、この洗浄溶液はさらに、より好ましくは0.0001から0.1%w/vまでの濃度範囲内にある、洗剤および/または1つまたは複数の界面活性剤を含むことができる。この洗剤または界面活性剤の濃度は、0.001から0.01%w/vまでの範囲内にあることが最も好ましい。
【0116】
場合によって、粒子は結合対(MBP)で覆うことができる。MBPは、抗原抗体、相補核酸、レクチン炭水化物対などの受容体配位子対である。したがって、凝集物質はMBPの相補部材であり得、それによって粒子凝集反応および装置を、結合対の膜(検査成分)の検出/測定に使用することができる。
【0117】
場合によって、粒子は天然(例えば、細胞または細胞部分)または合成(ラテックス、金属、酸化金属、炭素、顔料)であってもよい。この粒子は、容易な検出または視覚化を簡単にするため、顔料、放射性材料、磁気または常磁性材料、フルオロフォア、発光性材料で標識されていることが好ましい。
【0118】
本発明の好ましい実施形態において、この粒子は赤血球細胞である。このような実施形態において、MBP中の抗原は場合によって、赤血球表面にあるABO/Rh抗原系などの血液型抗原であり、抗体は場合によっておよび好ましくは血液の液体画分中に存在する対応する抗血液型抗体である。
【0119】
本発明のさらに別の実施形態において、凝集性粒子として働く赤血球の懸濁液は、場合によっておよび好ましくは、全血を含んでいる。全血を利用することにより、多孔表面上に1滴の赤血球の懸濁液を置くステップ(ここにおいて、前記表面の孔および寸法は表面の平面に垂直に個別の赤血球を少なくとも通過させることを可能にするように選択されている。)と、血液型抗原に対する抗体を含む1滴の溶液を、場合によって1滴の赤血球懸濁液と同じまたは同様の位置に置くステップと、赤色の存在をこの位置の表面で観察し、この色により赤血球が抗体と反応し、これらの赤血球が抗体が対象とする抗原を持ち、および/または赤血球が抗体に対応する血液型であることが示されるステップとによって、血液型検査を行うことが可能になる。
【0120】
これ以後、「赤色」は、これに限らないが、赤い色調を有するまたは赤みを帯びた、または赤色と同様に見える、および/または赤血球および/または赤色ないし血が呈し得るあらゆる色を提供するあらゆる他の血液成分の存在を示す色を含む。
【0121】
多孔質体の多孔表面は場合によっては吸収性である、あるいは吸収材料に取り付けられた多孔質層である。多孔質層および取り付けられた吸収材料は場合によって、平らなカードの形状を取ることができる。多孔質層は、多孔質膜(例えば、セルロース、セルロースアセテート、または硝酸塩、Nuceleopore(登録商標))、繊維(例えば、スイスRuschlikonのSefarによって供給されるようなもの)、網、吸い取り紙(例えば、英国、MaidstoneのWhatmanから入手可能な紙など)、デプス濾過媒体(例えば、米国、ペンシルベニア州のAhlstromから入手可能なガラスファイバ紙など)から作ることができる。グラスファイバ、特に、例えば米国、ペンシルベニア州Mount Holley SpringsのAhlstromによって供給されるような、結合剤で強化されたような紙が好ましい。
【0122】
この実施形態の変形形態において、多孔質材料は、抗体に含浸させ、血液型検査を行う前に乾燥させ、一定期間保存することができ、それによってすぐ使用できる装置を、場合によって新しい抗体試薬を必要とすることなく、血液標本の検査に対してすぐに配備されるように利用可能にする。多孔質材料への抗体の含浸は受動的である、すなわち、単に抗体溶液を多孔質材料に加え、これを室温または高い温度で、大気圧または真空で乾燥させることによって行われるものである。別の方法では、含浸は場合によっては(これに限らないが)、様々な材料、臭化シアン、塩化シアヌルに対するグルタルアルデヒド媒介結合、または多糖類系材料に対する過ヨウ素酸塩媒介結合、ガラスに対するシラン媒介結合などの、当業界でよく知られている様々な過程によって多孔質材料の基質に対する抗体の能動的化学結合を伴うこともある。加えて、抗体は場合によって、粒子(例えば、ラテックス)に最初に結合させることができ、このような抗体被覆粒子はその後多孔質材料に埋め込まれる。これらおよび追加の方法は、DentおよびAslam、1998年、Dean他、1985年およびその他によって詳述されている。
【0123】
本発明は、血液型に対する抗体に含浸された多孔表面上に1滴の赤血球の懸濁液を置くステップと、洗浄溶液を液滴の位置に置くステップと、赤色の存在をその位置の表面で観察するステップとを含む血液型検査方法を提供する。
【0124】
上記の血液型検査の実施形態はまた、赤血球の血液型抗原の判定、または規定の血液型の赤血球が利用される場合には、特定の抗血液型抗体の存在を判定する方法を提供する。いずれの組合せでも、本発明の実施形態により、洗浄および/または希釈した赤血球懸濁液の代わりに、分離されていない全血を使用することが可能になる。
【0125】
本発明の血液型検査応用の好ましい実施形態では、本発明は輸血前交差適合性試験に利用することができる。交差適合性試験は、実際の輸血前の最終の検査ステップである。この検査では、医療スタッフが、ドナーの血液に対する抗体がレシピエントの血液に存在するかどうかを検査する。
【0126】
本発明の方法は、ドナーの血液からの洗浄および/または希釈赤血球とレシピエントの血漿または血清が適合するかどうかを検査するのに利用することができる。しかし、検査過程は、レシピエントの血漿または血清との交差適合性試験に、赤血球源としてドナーからの未処理全血を利用することによってかなり単純化することができ、それによって交差適合方法は場合によっておよび好ましくは、1滴のレシピエントの血漿または血清を多孔表面上に置くステップ(ここにおいて、前記表面の孔は個別の赤血球の垂直方向への通過を可能にするような寸法をしている。)と、1滴のドナーの血液を表面上に、1滴のレシピエントの血液と場合によって同じまたは同様の位置に置くステップと、洗浄溶液を血液の液滴の位置に置くステップと、赤色の存在をその位置の表面で観察し、このような色は赤血球の凝集が起こりドナーの血液はレシピエントの血液に適合しないことを示すステップとを含んでいる。
【0127】
交差適合方法はまた場合によって、上記の最初の2ステップの順番を逆にすることができる。したがって、本発明の別の実施形態は、1滴のドナーの赤血球懸濁液を多孔表面上に置くステップであって、表面の孔は個別の赤血球の垂直方向への通過を可能にするような寸法をしているステップと、1滴のレシピエントの血清または血漿を表面上に、場合によって1滴のドナーの赤血球懸濁液と同じまたは同様の位置に置くステップと、1滴の抗グロブリンまたは抗補体試薬を含む溶液を表面上に、場合によって1滴の赤血球懸濁液と同じまたは同様の位置に置くステップと、洗浄溶液を液滴の位置に置くステップと、赤色の存在をその位置の表面で観察するステップとを含むことが好ましい、不規則血液型に対する輸血前交差適合性試験を提供する。
【0128】
レシピエントの血液から血漿または血清を分離するのに遠心分離機などの実験室装置が利用可能ではない、ベッド脇での使用により適切であるように手順をさらに簡単にするために、以下の方法は、ドナーおよびレシピエントからの全血標本を使用し、全血のうちの血球の通過を防ぐ第1のフィルタを第2のフィルタの多孔表面の上に置くステップ(ここにおいて、第2のフィルタの孔は個別の赤血球の通過を可能にするような寸法を有している。)と、レシピエントの全血の1滴を第1のフィルタ上に置き、標本の少なくとも一部が第1のフィルタに入るおよび/またはこれによって吸収されるのを待ち、それによって全血の濾液が第2のフィルタの表面を湿らせるステップと、第1のフィルタを取り除くステップと、ドナーの血液の1滴を表面上に、場合によって取り除く前の第1のフィルタと同じ位置または同様の位置に置くステップと、洗浄溶液を1滴の血液の位置に置くステップと、赤色の存在をその位置の表面で観察し、このような色が赤血球の凝結が起こり、ドナーの血液がレシピエントの血液に適合しないことを示すステップとを含んでいる。
【0129】
不規則または弱い血液型抗原および抗体を検出するために、血液型検査および交差適合性過程は、このような抗原および抗体から可視凝集を得るように、抗グロブリン試薬(または、Coombs試薬という)または抗補体試薬の追加が必要である。本発明の別の実施形態により、このような試薬を血液型検査および交差適合方法に単純に組み込むことが容易になる。したがって、本発明による血液型検査方法は、場合によって、1滴の赤血球の懸濁液を多孔表面上に置くステップ(ここにおいて、前記表面の孔は個別の赤血球の垂直方向の通過を可能にするような寸法をしている。)と、血液型抗原に対する抗体を含む1滴の溶液を表面上に、1滴の赤血球懸濁液と場合によって同じまたは同様の位置に置くステップと、抗グロブリンまたは抗補体試薬を含む1滴の溶液を表面上に、場合によって1滴の赤血球懸濁液と同じまたは同様の位置に置くステップと、洗浄溶液を表面上に、場合によって液滴と同じまたは同様の位置に置くステップと、赤色の存在をその位置の表面で観察し、この色は赤血球の凝集が起こり、これらの赤血球は抗体が対象とする抗原を持っていることを示すステップとを含んでいる。
【0130】
Coombs試薬を含む上記方法では、本発明の性能を損なうことなく、最初の3つのステップの順序を変更することができる。本発明の別の実施形態では、Coombs試薬はフィルタ中に予め含浸され、血液型検査または交差適合性試験が行われる前に、乾燥され、一定期間保存され、それによってすぐ使用できる装置を、新しい抗体試薬を必要とすることなく、血液標本の検査に対してすぐに展開されるように利用可能にされる。この実施形態によると、Coombs試薬での血液型検査または交差適合性試験の方法は、1滴のレシピエントの血漿または血清をCoombs試薬で予め含浸された多孔表面上に置くステップ(ここにおいて、前記表面の孔は個別の赤血球の通過を可能にするような寸法をしている。)と、1滴のドナーの赤血球を表面上に、1滴のレシピエントの血漿または血清と場合によって同じまたは同様の位置に置くステップと、洗浄溶液を表面上に、場合によって液滴と同じまたは同様の位置に置くステップと、赤色の存在をその位置の表面で観察するステップとを含んでいることが好ましい。また、この実施形態は場合によって取外し可能な赤血球フィルタに適合させることができ、それによってレシピエントの全血を最初のステップで使用することができる。
【0131】
この方法の説明の上記の例全てにおいて、(血液または血漿/血清または抗体試薬の)「1滴」を、ピペット、ミクロピペット、毛細血管、スポイト、スポイト瓶、注射器、ループ、開ループおよび/または流体処理のためのあらゆる他の機構、容器または装置の1つまたは複数などの装置で運ばれる規定量の液体と交換することができる。これらの装置は、検査を実施するのに必要な液体を全量運ぶのを簡単にするように、多孔表面に接触させることができる。
【0132】
図2を参照すると、装置100およびキットは、場合によって、本発明の教示により構成することができる。この装置は、上部のフィルタ104(多孔質層)と、任意の吸収剤層106と、任意の背面カバー108と、検査成分をフィルタ内に迅速に入れること、およびこれらの検査成分を混合するのを簡単にするフィルタ層104の上の任意の網目層109と、検査標本を置き、検査を行う位置を画定する孔112を備えた任意の上部カバー110とから形成されたカード102の構造を取ることができる。上部カバーの孔112は、壁面で囲まれていてもよく、それによって規定量のくぼみが作り出されて、規定量の洗浄溶液(図示せず)で反応を洗浄することが簡単になる。加えて、水溶性フィルムを場合によって、フィルタ(図示せず)を通る液体流の速度を減少させるようにフィルタと吸収剤層の間に配置することができ、それによって弱い抗原および/または低レベルの抗体に対する本発明の感度を良くすることができる。
【0133】
装置の好ましい実施形態では、カードは検査を行うための多数の位置を有し、これらの位置は、形状の印刷、切り抜き形状を備えた粘着フィルムなどの様々な方法によって場合によって標識することができる。カード全体は場合によってケース114で囲むこともできる。装置100はまた、使用後の解体を可能にするように構成することができ、それによって反応区域を備えたフィルタを取り除き、乾燥させ、結果の記録として保管/保存することができる。このカードは場合によって、レシピエントおよびドナー識別表示、日、装置識別表示などの様々な項目の情報を書き込む領域を有することができる。1つまたは複数のカード、および必要な試薬、洗浄溶液、制御溶液、および器具の全てまたは一部を含むキットは、本発明の別の実施形態である。
【0134】
本発明の好ましい実施形態では、抗血液型抗体および/または抗グロブリンおよび抗補体試薬の全てまたは一部を、湿ったまたは好ましくは乾燥した形態で、多孔表面に含浸させることができる。したがって、単一または多数の抗血液型および/または抗グロブリンおよび/または抗補体試薬を備えた検査カードは、誤差を防ぎ、手動動作の数を少なくしながら、血液型の微分識別を簡単にするように利用可能にすることができる。このような装置は場合によって、陽性および陰性制御検査領域を含むことができる。陰性制御領域は場合によって、フィルタをその位置で非免疫血清(例えば、輸血を受けていないAB/Rhマイナスの男性からの血清など)に含浸させることによって達成することができる。陽性制御領域は場合によって、フィルタをその位置で抗赤血球抗血清または抗体(例えば、抗グリコホリン抗体)に含浸させることによって達成することができる。
【0135】
本発明のさらに別の実施形態では、多数の検査領域(単一の標本の血液型検査用などのもの)を備えた装置が提供される。この装置は、検査標本、および場合によっては洗浄溶液が全ての検査領域の上で1つのステップにより広がるのを簡単にするように構成することができる。このような実施形態は、(a)好ましくは親水性の1片の網目で全ての検査領域を覆うこと、(b)非吸収カバーを全ての検査領域の上に置くことによって検査領域上に毛細管空間を作り出すことなどの様々な設計要素によって実現することができる。
【0136】
この装置はさらに、人間の視覚評価を必要とすることなく、検査結果を知らせる可能性のある任意のメータ116を備えることができる。メータ116は、メータ116が凝集反応を検出するのに使用される標識またはリポータを測定することが可能なように、カード102を受けることが好ましい。場合によって、メータ116は、光学レポータであり、標本が置かれた位置から反射または散乱され、そこを通して伝達される光の量を測定し、それにしたがって結果を判定する。最も基本的な形態では、このメータは、(a)入射光119のビームを標本が置かれた位置の上に向ける光源118と、(b)多孔表面から反射/散乱される、またはそこから伝達される光121を測定/検出するように配置された光センサ120と、(c)光センサから来る信号を表示する装置または回路122とを備えている。
【0137】
本発明の別の実施形態では、赤血球の検出を改善するために、光源は場合によって色が付いている。多孔反応表面が白色である場合、赤血球が白色表面からの反射/散乱光の量を少なくするように、光は場合によっておよび好ましくは赤色ではなく、より好ましくは青色であるべきである。逆に、表面が赤色でない、または場合によっておよび好ましくは黒色または青色であり、光が赤色である場合、赤血球は反射/散乱光の量を増加させる。
【0138】
メータは場合によって、加えて、(1つまたは複数の)結果を提示するディスプレイおよび/またはプリンタ、多数の光センサおよび場合によって多数の反応領域を計測する多数の光センサ、センサが発した信号を分析する処理回路(場合によって、プロセッサおよび補助電子装置を含むことができる)、フィルタまたは検査カード用ホルダ、電池、充電池、記憶メモリ、日時機能、バーコードリーダまたはそのインターフェイス、光学文字認識、通信能力、および医療診断装置の設計者および製造者によく知られている他の特徴などの特徴の1つまたは複数を有することができる。メータはさらに、表示された結果を見るための透明または半透明窓を備えていることが好ましい。
【実施例】
【0139】
以下の実施例は、本発明による方法およびシステムの実施を例示するものである。これらの実施例は、いかなる場合でも限定することを意図したものではない。
【0140】
(実施例)
洗浄溶液
実施例を行うのに使用された洗浄溶液は以下の通りである。
イスラエル、Beit Ha’emekのBiological Industriesから入手した、Dulbecco’sリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)。
4%w/vポリエチレングリコール(PEG)15000−20000MW(Fluka)および0.3%w/vデキストラン硝酸ナトリウム塩(Amersham Biosciences)の水内の1:1希釈PBSでできた溶液。
0.001〜0.01%w/vポリエチレン−10−トリデシルエーテル(Sigma)のDulbecco’sリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)。
【0141】
(実施例2)
血液型検査
0.5x0.5cm片のAhlstrom#142濾紙を吸収パッドの上に置く。2μLの全血を、フィルタの中心にピペットでたらし、2μLの抗血液型試薬(米国、テキサス州、HoustonのGamma Biologicals Inc.)をその後にたらす。フィルタをその後、数滴の(スポイト瓶からの)洗浄溶液で洗浄し、乾燥させる。別な方法では、4mm直径円のAhlstrom#142濾紙、10μLの血液、および10μLの抗血液型試薬を実施例1による数滴の洗浄剤Cの後に使用する。
【0142】
この検査を、様々な血液型の多数の血液標本(イスラエル、Tel Hashomer、Israel Red Magen Davidのthe Central Blood Servicesから受け取り、そこで予備検査を行ったもの)で繰返し、それぞれ抗A、抗B、抗ABおよび抗D(=Rh)血液型試薬で検査する。Aの血液は、抗Aおよび抗AB試薬でのみ赤点を生じる。Bの血液は、抗体Bおよび抗AB試薬で点を生じる。ABの血液は、抗A、抗B、および抗AB試薬と反応する。Oの血液は、どの試薬とも反応せず、Oの血液は抗D試薬のみと反応する。
【0143】
(実施例3)
乾燥させた試薬での血液型検査
0.5x0.5cm片のAhlstrom#142濾紙を、非吸収表面(空の使い捨てシャーレの底部)に置く。50μLの抗血液型試薬(米国、テキサス州、HoustonのGamma Biologicals Inc.)を濾紙の各片の上にピペットでたらす。フィルタ片を含む抗血液型試薬をのせたシャーレを、37℃で一晩培養する。フィルタ片はその時乾燥する。
【0144】
全血標本の血液型を正しく特定するように、乾燥した抗体含浸片の能力を検査するため、吸収パッドの上にのせ、1μLの検査血液を一連のフィルタパッドのそれぞれのほぼ中心におく。一連のものはそれぞれ抗A、抗B、または抗D(=Rh)試薬の何れか1つに含浸されたパッドを含んでいる。
【0145】
余分な血液を、洗浄剤AまたはBの何れかを5〜10滴たらすことによって、フィルタパッドから洗浄する。フィルタ片はその後、記録保存のため空気乾燥する。その結果を図1に示す。Aの血液は抗A試薬に含浸されたフィルタ片でのみ点を生じることが明らかである。Bの血液は抗B試薬に含浸されたフィルタ片で点を生じる。ABの血液は抗Aおよび抗B試薬フィルタ片に反応する。Oの血液は、どのフィルタとも反応せず、2つのOの血液検体は抗D試薬が含浸されたフィルタ片のみと反応する。
【0146】
この手順に対する以下の変更形態は信号の改善につながると考えられ、場合によっておよび好ましくは、本発明に含まれる。
1.フィルタと下の吸収パッドの間の流体伝達速度を制御するため、水溶性フィルムをフィルタ四角形の下に置く。
2.フィルタ片毎の抗血液型抗血清の量:25μL
3.フィルタ片毎の血液標本の量:10μL
4.洗浄過程:2滴の洗浄溶液B(実施例1)、次いで数滴のPBSをたらす
【0147】
上記量は、例示的な例のみを意図したものであり、いかなる場合でも本発明を限定するものではないことに留意すべきである。
【0148】
(実施例4)
交差適合性試験
ABO/Rh型に対して予備検査した全血標本を、イスラエル、Tel Hashomer、Israel Red Magen Davidのthe Central Blood Servicesから入手した。血漿画分は、血液標本の一部から得たものであり、血液レシピエント標本用のモデルとして働く。
【0149】
0.5x0.5cm片のAhlstrom#142濾紙を、吸収パッドの上に置く。2μLのドナー全血標本を、フィルタの中心にピペットでたらし、その後10μLのレシピエントの血漿をたらす。フィルタをその後、数滴の(スポイト瓶からの)洗浄溶液で洗浄し、乾燥させる。以下の表にしたがって、レシピエントとドナーの間に不一致があった場合にのみ、洗浄後に赤い血の点がフィルタ上に残る。
【0150】
【表1】

【0151】
したがって、これらの結果は、本発明は十分な感度と、血液型検査および/または血液型検査に有用な十分な再現性および信頼性の両方を有することを明らかに示している。
【0152】
本発明を特定の実施形態と合わせて説明したが、多くの代替形態、変更形態、および変形形態は当業者には自明のことであることが明らかである。したがって、頭記の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれるこのような代替形態、変更形態、および変形形態全てを含むことを意図している。本明細書で記載した全ての刊行物、特許および特許出願は、各個別の刊行物、特許または特許出願が参照により特におよび個別に明細書に組み込まれるのと同じ程度に、本明細書に参照によりその全体を組み込む。加えて、本出願におけるあらゆる引用文献の言及または識別は、このような引用文献が本明細書の従来技術として利用可能であるということの承認として解釈されるべきものではない。
【0153】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の教示により行われる血液型検査の結果を示す図である。
【図2】本発明の教示により構成された装置およびキットの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある量の粒子懸濁液および凝集物質を含むある量の溶液または懸濁液を、個別の凝集していない粒子を表面に垂直な方向に通過させることを可能にするように構成されたフィルタの表面上のほぼ同じ選択位置に置くステップと、
洗浄溶液を前記凝集物質とほぼ同じ位置に場合によって置くステップと、および
粒子の存在について前記表面を前記選択位置で観察するステップと
を含む粒子懸濁液中の粒子凝集を検出するおよび/または視覚化する方法。
【請求項2】
前記ある量の前記粒子懸濁液が、前記ある量の凝集物質を含む溶液または懸濁液を置く前に、前記選択位置に置かれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルタが、多孔質体の多孔表面を備え、前記表面の孔は少なくとも個別の粒子の通過を可能にするような寸法である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔表面が、本質的に吸収性があり、または吸収材料に取り付けられた多孔質層を備えている請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質層と前記吸収材料の間に位置している水溶性フィルムをさらに備える請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルタを乾燥させるステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ある量の前記粒子懸濁液および前記ある量の前記凝集物質の溶液または懸濁液がそれぞれ、供給可能な量で構成されている請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記供給可能な量が、少なくとも1ミクロリットルである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子懸濁液の粒子が、結合対の膜(MBP)で覆われている請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記凝集物質がMBPを含んでいる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子が天然粒子または合成粒子の少なくとも一方を含んでいる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子が検出可能な標識を含んでいる請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記標識が、顔料、放射性材料、磁気または常磁性材料、フルオロフォアおよび発光性材料を含む群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子懸濁液が第1の血液製物を含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の血液製物が全血を含んでいる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の血液製物が血液成分を含んでいる請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記血液成分が懸濁液中である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の血液製物が赤血球を含んでいる請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の血液製物が、非洗浄赤血球、非希釈赤血球、または非洗浄非希釈赤血球を含む群から選択された少なくとも1つを含んでいる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の血液製物を遠心分離することなく、または前記第1の血液製物を前記懸濁液または前記凝集物質と予備混合することなく実行され得る請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記凝集物質が第2の血液製物を含んでいる請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記凝集物質が血液型に対する抗体を含んでいる請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記凝集物質が血漿または血清を含んでいる請求項21に記載の方法。
【請求項24】
凝集物質を含む前記ある量の溶液または懸濁液が、前記ある量の粒子懸濁液を置く前に、前記選択位置に置かれる請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記フィルタが凝集物質に含浸されている請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記フィルタが、抗グロブリン試薬および抗補体試薬を含む群から選択される試薬に含浸されている請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記試薬がCoombs試薬を含んでいる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記洗浄溶液が塩溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記塩溶液が等張である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記塩溶液が生理食塩水である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記生理食塩水が緩衝化されている請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記緩衝生理食塩水がリン酸塩緩衝生理食塩水である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記洗浄溶液がさらに追加の洗浄成分を含んでいる請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記追加の洗浄成分がポリマーを含んでいる請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリマーが、ポリエチレングリコールおよびデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む群から選択される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマーの濃度範囲が、浸透圧平衡を維持するのに適切である請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記濃度範囲が、約0.0001から約20%w/vまでである請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記洗浄溶液がさらに、洗剤および界面活性材料の少なくとも1つを含んでいる請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記洗剤がポリオキシエチレン−10−トリデシルエーテルを含んでいる請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記洗剤または界面活性剤が、0.0001から0.1%w/vまでの範囲の濃度を有している請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記濃度が0.001から0.01%w/vまでの範囲内にある請求項40に記載の方法。
【請求項42】
フィルタの表面上に配置された個別の凝集していない粒子を表面と垂直な方向に通過させることを可能にするように構成されたフィルタを備える、試料中の粒子凝集を検出するおよび/または視覚化する装置。
【請求項43】
さらに、フィルタの上側表面に配置された網目を備える請求項42に記載の装置。
【請求項44】
さらに、前記凝集物質を受け、前記凝集物質から粒子を取り除く追加のフィルタを備える請求項42に記載の装置。
【請求項45】
前記凝集物質が全血または血液成分中の抗体を含んでいる請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記追加のフィルタが、前記粒子含有凝集物質の追加の後であって、粒子含有試料を前記第1のフィルタに追加する前に、取り除かれる請求項44に記載の装置。
【請求項47】
試料を受けるためのフィルタと、
前記フィルタ上に置かれるための凝集物質と、
場合によって、前記凝集物質および試料の後に前記フィルタ上に置かれるための洗浄溶液と
を含む請求項1に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項48】
さらに、凝集反応を検出および/または測定するメータを備える請求項47に記載のキット。
【請求項49】
前記メータが、(a)前記フィルタの前記多孔表面の上に光を伝達する光源と、(b)前記多孔表面によって反射または散乱された光を測定するように配置された光センサとを有する光メータを備える請求項48に記載のキット。
【請求項50】
さらに、前記測定した光を視覚信号に変換する変換器と、前記信号を表示するディスプレイとを備える請求項49に記載のキット。
【請求項51】
少なくとも1つの追加の光センサをさらに備える請求項49に記載のキット。
【請求項52】
少なくとも1つの追加の光源をさらに備える請求項49に記載のキット。
【請求項53】
さらに処理回路を備える請求項49に記載のキット。
【請求項54】
前記フィルタ用ホルダを備える請求項49に記載のキット。
【請求項55】
前記光源が有色光を提供する請求項49に記載のキット。
【請求項56】
さらに、前記凝集物質を受け、前記凝集物質から粒子を取り除く追加のフィルタを備える請求項49に記載のキット。
【請求項57】
前記追加のフィルタが取外し可能である請求項56に記載のキット。
【請求項58】
場合によって試薬に含浸させた、試料および前記凝集物質を受けるフィルタと、
前記凝集溶液および試料の後に前記フィルタ上に場合によって配置される洗浄溶液とを含む請求項1に記載の方法を実施するキット。
【請求項59】
前記試薬がCoombs試薬を含んでいる請求項58に記載のキット。
【請求項60】
フィルタに含浸された前記試薬が凝集物質である請求項58に記載のキット。
【請求項61】
複数の検査成分の間の凝集反応の有無を検出する装置であって、前記装置はフィルタを備え、前記フィルタは、上側表面を有し、前記検査成分の流れの方向が前記上側表面に垂直であるように構成されており、前記検査成分は、前記上側表面に適用され、場合によって洗浄され、凝集反応が起こった試験成分が前記上側表面上で検出可能である、前記装置。
【請求項62】
前記検査成分が全血または血液の一部または血液成分の少なくとも1つを含んでいる請求項61に記載の装置。
【請求項63】
凝集物質反応の有無が視覚的に検出される請求項61に記載の装置。
【請求項64】
前記有無が、裸眼でフィルタを見ることによって検出される請求項63に記載の装置。
【請求項65】
凝集反応の有無を検出するメータをさらに備える請求項61に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−526993(P2007−526993A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518496(P2006−518496)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000618
【国際公開番号】WO2005/003787
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(302044591)インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (38)
【Fターム(参考)】