説明

粒子固定化コーティングおよびその使用

【課題】粒子固定化コーティングおよびその使用を提供する。
【解決手段】ポリマー性マトリクス中に固定化された微粒子を基材上に含む表面コーティングを記載する。該微粒子はまた、医療用途のような様々な用途に有用であり得る薬剤を含むことができる。本発明は、様々な用途に使用するための表面コーティングの分野に関する。より特には、本発明は、ドラッグデリバリー、イメージングに有用であり、そしてポリマー性マトリクスを介して固定化された微粒子を利用する表面コーティングに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な用途において使用するための表面コーティングの分野に関する。より特に、本発明は、薬剤配送、機器イメージングのために有用で、そしてポリマー性マトリクスを介して固定化された微粒子を利用する表面コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ材料および医療移植用機器の表面の官能化は、ホスト系との適合性を付与することができ、またはホスト系内における様々な利点を与えることができるので、益々慣用になっている。慣用の官能化材料は、広範囲の様々な医療用途において使用できる金属、セラミック、ポリマー、およびガラスを包含する。基材表面の変性は、表面の物理的トポグラフィに対する変化、例えば、表面の三次元特徴に対する変化、表面の生化学的特性に対する変化(例えば、薬剤配送における補助のため)、または表面の機械的および光学的特性における変化を包含できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
生命化学における進歩は、表面コーティングにおける新規かつ改良された技術についての増大した要求へと導かれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の要約
本発明は、一般に、微粒子でコートされた基材、そのような基材をコートする方法、および微粒子コートされた表面についての使用に関する。より特に、本発明は、ポリマー性材料と微粒子の混合物とで基材をコートする方法であって、該混合物が該基材の表面上に載置され、そして該粒子が該ポリマー性材料により形成されるマトリクス中に固定化される方法を記載する。
【0005】
1つの態様において、本発明は、ポリマー性材料と少なくとも1種の反応性基とを含むマトリクスを有する表面、例えば基材または機器の表面を提供する。該マトリクスは、該表面に該反応性基により共有結合される。該ポリマー性材料は、ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合わせであることができる。該マトリクス内で多数の微粒子が固定化される。該微粒子は、一般に、該ポリマー性材料により形成されるマトリクス中に固定化される。1つの態様において、該反応性基は光反応性基である。他の態様において、該マトリクスはまたポリマー架橋性化合物を含む。
【0006】
幾つかの場合において、前記微粒子は前記ポリマー性材料のマトリクス中に閉じ込めにより固定化され、そして該微粒子の閉じ込めは、該微粒子と前記ポリマー性材料との間のイオン結合または共有結合の形成に依存しない。幾つかの態様において、該微粒子は官能化剤にカップリングされており、それにより前記基材に、該官能化剤により与えられる望ましい特性を与えている。幾つかの場合において、該官能化剤は生物学的に活性な薬剤である、同様に、該微粒子は生物適合性材料からなることができ、そして幾つかの場合において崩壊性である。
【0007】
1つの態様において、本発明は、少なくとも1組みの微粒子とマトリクス形成性材料とを含む基材をコートするキットを提供する。該マトリクス形成性材料は、ポリマー性材料と1種以上の反応性基とを含む。該マトリクス形成性材料は、該基材の表面に1種以上の反応性基を介して共有結合され、そして該微粒子を該基材の表面上に固定化することができるように形成および設計されている。該キットはまた、コートされた表面を製造するための説明書を与える。
【0008】
1つの態様において、該基材は医療機器をなし、そして該医療機器上に固定化された微粒子は、生物学的に活性な薬剤にカップリングされるか、またはそれを取り込んでいる。他の態様において、該医療機器上にコートされた微粒子は、イメージング装置を使用して検出可能である。常磁性材料、気相材料、または同位元素材料を有する微粒子は、該医療機器の表面上にコートされ、そして適当なイメージング装置により検出できる。
【0009】
他の態様において、本発明は、ポリマー性材料と微粒子とで表面をコートする方法を提供する。ポリマー性材料と、反応性基と、微粒子との混合物を調製し、基材の表面上に載置し、そしてその後に処理して該ポリマーを該基材の表面に結合し、そして該微粒子を固定化する。1つの態様において、該ポリマーは光反応性基を含み、そして該混合物は電磁エネルギーで処理され、それにより該ポリマーを該基材に結合し、そして該ポリマーを架橋して該微粒子を固定化する。
【0010】
他の態様において、本発明は、少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を対象に投与する方法を提供する。これは、機器の表面に共有結合されたマトリクスを有する機器を準備することにより達成される。該マトリクスは、ポリマー性材料と少なくとも1種の反応性基とを含み、そして該マトリクスは該表面に該反応性基により共有結合される。該ポリマー性材料は、ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せを含む。少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を含む多数の微粒子が、該マトリクス中に固定化される。該生物学的に活性な薬剤は、該機器を対象中に配置するか、または該機器を対象に配送することにより、対象に利用可能となる。
【0011】
幾つかの態様において、多数の微小球は2組以上の微小球を含む。幾つかの場合、特定の環境では異なって相互に不適合性である第1の官能化剤および第2の官能化剤が、前記ポリマーマトリクス中に固定化された第1組の微粒子と第2組の微粒子とから配送される。
【0012】
他の態様において、第1の官能化剤と第2の官能化剤とは、異なる比率で第1組の微粒子および該第2組の微粒子からそれぞれ放出される。
【0013】
他の態様において、機器を検出する方法が提供される。該方法は、ポリマー性材料のマトリクスと、該マトリクス中に固定化された微粒子を有する機器を用いることを含む。該微粒子は、磁気共鳴、超音波イメージング、同位元素イメージング、またはフォトイメージングにより検出可能である。該機器は対象または物品の中に配置され、そして適当なイメージング装置を使用して検出される。幾つかの態様において、該機器は医療機器であり、そして該対象は患者である。
【0014】
他の態様において、細胞反応性表面が提供される。該生物反応性表面はポリマー性材料のマトリクスを有する表面を含み、それは細胞相互作用についてのトポグラフィを与えるように配置された微粒子を固定化して有する。幾つかの場合において、該表面は細胞の付着を促進または阻害し、そしてまた細胞の付着および成長を可能にする。幾つかの場合において、該微粒子は細胞表面タンパク質と反応性の分子にカップリングされている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、表面上に固定化されたポリマー性マトリクス中の微粒子のコーティングの図説である。
【図2a】図2aは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図2b】図2bは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図2c】図2cは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図2d】図2dは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図3a】図3aは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図3b】図3bは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図4a】図4aは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図4b】図4bは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図4c】図4cは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図4d】図4dは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図4e】図4eは、基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【図5】図5は、ポリウレタン基材上のポリマー性マトリクス内に固定化された微粒子の顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明の1つの観点において、微粒子とポリマー性材料とを含む混合物が調製され、そして該混合物が基材上に載置され、そして処理されて基材にポリマー性材料のマトリクス中に固定化された微粒子のコーティングを与える。本明細書中で使用されるとき、“ポリマー”および“ポリマー性材料”は、該マトリクスを形成するために使用できるポリマー、コポリマー、およびそれらの組み合わせを指す。該微粒子のコーティングは、該基材の表面に所望の特性を与えることができる。一般に、用語“固体支持体”または“基材”は、微粒子とポリマー性材料との混合物をコートできる材料を指す。典型的に、該基材は医療機器のような機器であり、そして該ポリマーマトリクス中の微粒子のコーティングは該機器に所望の特性を付与する。幾つかの態様において、該微粒子は1種以上の官能化剤にカップリングされるか、またはそれと一緒になる。本明細書中で使用されるとき、“官能化剤”は、該機器に有用な特性、例えば生物学的、化学的、または物理的に有用な特性を与える化合物または組成物を指す。
【0017】
1つの観点において、本発明は、種々の特性を有する表面を製造する単純かつ効率的な方法を提供するので特に有利である。例えば、本明細書中に記載される方法は、生物学的に有用な特性と検出可能な特性の双方を有することができる表面の製造を与える。他の例において、本明細書中に記載される方法は、1種の溶媒中では典型的に適合性でない医薬化合物類を配送できる表面の製造を与える。
【0018】
本発明はまた、正確な量の薬物または医薬剤を有する表面を製造する迅速かつ精密な方法を与えるので有利である。規定された量の薬物または医薬剤を有する微粒子は微粒子中に、例えば崩壊性微粒子中に含まれることができ、そして機器上でポリマー性マトリクス中にコートされて、微粒子内に含有された正確な量の薬物または医薬剤を有する機器の表面を与えることができる。
【0019】
好ましい態様において、ポリマー性材料と微粒子とを含有する前記混合物は基材の表面上に直接載置され、そしてその後、該微粒子を該表面上のマトリクス中に固定化するために、処理されてポリマー性マトリクスを形成する。他の態様において、該ポリマー性材料は基材上に載置され、そして処理され、続いて微粒子が該処理された材料上に実質的に載置され、そして該基材上に固定化される。
【0020】
基材
前記基材の組成は、生物学的または非生物学的な、有機または無機材料を包含できる。適した基材は、それらに制限されること無く、プラスチック、セラミック、樹脂、多糖、シリコン、またはケイ素をベースとする材料、ガラス、金属、フィルム、ゲル、膜、ナイロン、絹、羊毛および木綿のような天然繊維、並びにポリマーから作製される官能化および非官能化基材を包含する。ガラススライドまたはシリコンチップのような基材の表面もまた、例えばシラン化により変性でき、それは微粒子の固定化に有用であり得る。有用な基材はまた、細胞培養プレート、付着性および非付着性表面、組織エンジニアリングスカフォード、および細胞カラムを包含する。該基材はまた、何れの大きさまたは寸法でもあり得る。
【0021】
幾つかの態様において、該基材は医療機器の一部である。これらの態様において、該医療機器の表面は、典型的に、微粒子とポリマー性マトリクスとを含有する混合物でコートされる。基材として使用できる医療機器は、それらに制限されること無く、移植用医療機器、非移植用医療機器、および外科装置を包含する。非制限的な例は、ステント、カテーテル、ペースメーカー、胸部インプラント、静脈または動脈クリップ、ピン、ブレス、歯科複合物、心臓弁、人工心臓、細動除去器、プロテーゼ、人工関節、聴覚インプラント、神経刺激器、塞栓機器、閉塞装置、切除装置、生検装置、注入ポンプを包含するポンプ、バルーン、シーラント、コンタクトレンズ、止血鉗子、針、刃、鋸、および酸素またはグルコースモニターのようなモニターを包含する。
【0022】
他の態様において、前記基材は光学機器の一部であることができる。基材として使用できる光学機器は、それらに制限されること無く、例えば、光ファイバーケーブル、特に光ファイバーケーブルの端部、発光ダイオード、レンズ、光学ディスク、例えば書き込み可能および書き込み不可のコンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク、導波管、反射板、グレーチング、干渉ミラー等を包含する。
【0023】
他の態様において、前記基材は、食品調製において、または衛生プロセスにおいて使用される機器の一部であることができる。しかしながら、微粒子のコーティングが望ましい特性を付与できる他の機器または基材もまた本発明に包含される。
【0024】
1つの態様において、前記基材は、ポリマー性材料と微粒子との混合物でコートされて、細胞反応性表面を与える。本明細書中で使用されるとき、“細胞反応性”は、コートされた基材と接触できる細胞、組織、または他の生物学的材料に影響を有するコートされた基材の能力を指す。細胞、組織、他の生物学的材料は、真核細胞、原核細胞、ウイルス、他の生物学的粒子、および細胞または粒子が製造し得る何れかの種類の生物学的材料、例えば細胞外材料を包含する。前記コートされた表面は、該表面への細胞の付着を促進または阻害するように調製でき、または該コートされた表面との細胞の消極的な相互作用により細胞反応を起こさせるために使用できる。該コートされた基材はインビボまたはインビトロで使用されて、様々な有用な機器、例えば細胞培養プレート、組織エンジニアリングスカフォード、細胞カラム、または人工リンパ節のようなインビボでの組織の発達のためのあらゆる核を与えることができる。該細胞反応性表面は、前記ポリマー性材料と微粒子とでコートされた表面の表面トポグラフィにより与えることができる。例えば、適当な寸法の微粒子は、微粒子の寸法が特定の細胞種の相互作用に寄与することが示されているので(メシュール,M.F.(1992)J Immunol、149:2402)、細胞の相互作用を促進または阻害するために使用できる。微粒子はまた、細胞表面タンパク質と反応性であり、かつ細胞反応を誘発できる様々な部分にカップリングできる。
【0025】
幾つかの場合において、前記基材は、ポリマーマトリクス中での微粒子の固定化を容易にできる化合物で予備コートされる。該基材は、該微粒子の付着前に、清浄化、前処理、または清浄化および前処理できる。1つの例において、該基材は、アセトン中の1%のp−トリジメチルクロロシラン(T−シラン)と1%のN−デシルジメチルクロロシラン(D−シラン、ユナイテッド・ケミカル・テクノロジー社製、ペンシルバニア、ブリストル)との混合液中に、1分間浸漬することにより、シラン処理される。空気乾燥後、該基材は、オーブン中、120℃で1時間硬化される。該基材はその後アセトンで洗浄され、次いで蒸留水中に浸漬される。該基材はさらにオーブン中で5〜10分間乾燥される。幾つかの態様において、他のシラン化試薬、例えばヒドロシラン誘導体が該基材を前処理するために使用できる。該基材はまたオルガノシラン材料でコートでき、そして、例えばオルガノシランコートのガラスまたはセラミックであることができる。他の前処理または洗浄の工程は、本開示の参照により明らかであろう。
【0026】
微粒子
本発明の微粒子は、基材上でポリマー性マトリクス内に固定化できるあらゆる三次元構造をなすことができる。幾つかの態様において、該微粒子はまた、少なくとも1種の薬剤と一緒になれる。これらの態様において、該微粒子と一緒になる薬剤または薬剤類は、該基材の表面に望ましい特性を付与できる。
【0027】
本発明によれば、前記微粒子はあらゆる不溶性または固体の材料から作成できる。適した材料は、例えば合成ポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)等;崩壊性ポリマー、例えばポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)およびキトサン(ポリ−[1→4]−β−D−グルコサミン)等;制御された多孔質ガラス(CPG)およびシリカ(非多孔質ガラス)を包含するガラス;金属、例えば金、鉄、銀、アルミニウム、シリコン、銅、酸化鉄等;セルロース、架橋アガロース、デキストラン、およびコラーゲンを包含する天然ポリマー;磁鉄鉱等を包含する。有用な微粒子の例は、例えば、フィッシャーズ、インディアナのバングス・ラボラトリーズ社からの“Microparticle Detection Guide”に記載されている。所望により、微粒子は、例えばバングス・ラボラトリーズ社(フィッシャーズ、インディアナ)、ポリサイエンセズ社(ドイツ国)、モレキュラー・プローブ社(ユージェーン、オレゴン)、デューク・サイエンティフィック・コーポレイション(パロアルト、カリフォルニア)、セラディン・パーティクル・テクノロジー社(インディアナポリス、インディアナ)、およびダイナル・バイオテック社(オスロ、ノルウェー)から市販で入手できる。
【0028】
幾つかの態様において、前記微粒子は、微粒子含有混合物の調製および該微粒子の前記基材上への載置の前に変性されない。これらの態様において、前記微粒子自身が、基材上のポリマー性マトリクス中に固定化されるとき、望ましいかまたは有用な特性を与えることができる。例えば、例えば酸化鉄からなる常磁性微粒子は常磁性を持つ基材の表面を与えることができ、シリカは反射特性を持つ基材の表面を与えることができ、そして金属微粒子は反射特性を持つ基材の表面を与えることができる。さらなる他の例において、適した寸法の微粒子は、様々な細胞種との相互作用に適した基材の表面を与えることができる。
【0029】
前記微粒子は何れの寸法でもあり得るが、好ましくは該微粒子は、直径において5nmないし100μmの範囲内、より好ましくは直径において100nmないし20μmの範囲内、そしてさらにより好ましくは直径において400nmないし20μmの範囲内である。
【0030】
1つの好ましい態様において、崩壊性微粒子が表面コーティングのために利用される。崩壊性微粒子は、例えばデキストラン、ポリ乳酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリホスファジン、ポリメチリデンマロネート、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルケン無水物、ポリペプチド、ポリ酸無水物、ポリエステル等を包含できる。本発明のために有用な崩壊性ポリマーは、例えばバーミンガム・ポリマーズ・インコーポレイテッド(バーミンガム、アラバマ35211)から入手できる。崩壊性ポリマーおよびその合成はまた、マイヤー,J.M.およびカプラン,D.L.(1994)Trends in Polymer Science 2:227〜235頁、およびジャガー−グロジンスキー,J.(1999)Reactive and Functional Polymers: Biomedical Application of Functional Polymers、39巻、99〜138頁を包含する様々な参考文献中に記載されている。幾つかの場合において、該崩壊性微粒子は、インビボで崩壊できる生物崩壊性微粒子である。例えば、該生物崩壊性微粒子は、体内の様々な酵素の作用により分解できる。
【0031】
幾つかの場合において、前記崩壊性微粒子は、崩壊性材料とプラスチックとの混合物であることができる。該崩壊性はまた好ましくは非毒性であるが、幾つかの場合において、該微粒子が原核細胞または真核細胞の成長の選択的な防止、または細胞の排除に有用な薬剤、例えば化学療法剤または抗微生物剤を含むことができる。崩壊性微粒子は、コートされた基材の表面から該微粒子の崩壊により放出できる生物学的に活性な薬剤を含むことができる。
【0032】
1つの態様において、前記崩壊性微粒子は、生物学的に活性な薬剤、例えば医薬剤またはプロドラッグを含有する。崩壊性微粒子は、確立された技術、例えば溶媒蒸発技術(例えば、ヴィチャート,B.およびローデワルド,P.、J Microencapsul.(1993)10:195参照)により様々な生物学的に活性な薬剤を取り込んで調製できる。該生物学的に活性な薬剤は、基材上の前記ポリマー性マトリクス中に固定化された該微粒子から、インビボでの該微粒子の崩壊により放出できる。生物学的に活性な薬剤を有する微粒子は、所定の時間の期間にわたり、所望量の薬剤を放出するように配合できる。該薬剤の放出および放出される量に影響する因子は、該微粒子の寸法、該微粒子中に取り込まれる薬剤の量、該微粒子を作製するに使用された崩壊性材料の種類、該基材上の単位面積当たりに固定化された微粒子の量等により変化できることが理解される。
【0033】
1つの態様において、本発明は、有利なことに、2種、または2種以上の異なる官能化剤であって、該官能化剤が、例えば、疎水性と親水性との薬剤が極性または非極性の溶媒中で非適合性であるように、特別な環境中で相互に非適合性である官能化剤を有する表面の調製を可能にする。異なる官能化剤はまた、プロトン性/非プロトン性溶媒またはイオン性/非イオン性溶媒に基く非適合性を示し得る。例えば、本発明は、疎水性薬物を含有する1組の崩壊性微粒子の調製、および親水性薬物を含有する他の組の崩壊性微粒子の調製、並びに前記ポリマーマトリクスを形成するために使用されるポリマー性材料中への該2つの異なる組の微粒子の混合、および基材の表面上への該混合物の載置を可能にする。疎水性および親水性の薬物の双方は、該コートされた基材の表面から同時に放出でき、または該崩壊性微粒子またはポリマー性マトリクスの組成は、一方の薬物が他方と異なる比率または時間で放出されるように変更できる。
【0034】
いくつかの場合において、疎水性または親水性の薬物の何れかにより適した組成を有する崩壊性微粒子を調製することが有利であることができる。例えば、疎水性薬物のための有用な崩壊性ポリマーまたは崩壊性コポリマーは、高ラクチド含量または高カプロラクトン含量を有し、一方、親水性薬物のために有用な崩壊性ポリマーまたは崩壊性コポリマーは、高グリコリド含量を有する。
【0035】
少なくとも2種の異なる官能化剤を載置することに向けた慣用のコーティング手順は、しばしば、該官能化剤を別々に置くことを必要としていた。例えば、疎水性薬物を非極性溶媒中に溶解し、基材の表面を該非極性混合物でコートし、該非極性混合物を乾燥し、親水性薬物を極性溶媒中に溶解し、乾燥した非極性混合物の層を該極性混合物でコートし、そしてその語該極性混合物を乾燥する。このプロセスは不十分であるかも知れず、また同様に望ましくない表面特性を生じるかもしれない(例えば、薬剤の層は、一方が放出される前に、他方の薬剤を放出させる。)。本発明によれば、2種、または2種以上の異なる官能化剤を有する表面を調製する方法は、特に、2種の異なる官能化剤が基材の表面から放出されるとき、基材をコートしそして該基材の表面から官能化剤を配送する慣用の方法を超える顕著な改良である。
【0036】
他の種類の非崩壊性微粒子もまた、コートされた機器の表面からの官能化剤の放出のために有用であることができる。そのような非崩壊性微粒子は細孔を含み、そして例えばシリカ微粒子であることができる。多孔質非崩壊性微粒子もまた、薬剤、例えば生物学的に活性な薬剤の取り込みのために使用することができる。特別な細孔寸法を有する微粒子は、該細孔中に取り込まれる薬剤の種類および寸法に基づいて選ぶことができる。一般に、細孔を有する微粒子は、所望の薬剤を含有する溶液中に浸されることができ、ここで該薬剤が、該微粒子の細孔中に拡散する。ポリマーマトリクス中のこれらの微小球のコーティングを有する基材を調製できる。該コートされた基材を液含有環境中、例えば対象中に配置することにより、該薬剤は該微粒子から放出され、そして該対象に配送できる。
【0037】
ポリマーの種類、並びに該ポリマーの濃度および前記ポリマーマトリクス中で架橋するポリマーの程度は、前記コートされた機器の表面からの生物学的に活性な薬剤の配送に影響を有することができる。例えば、帯電した部分を有するポリマー性マトリクス材料は、2者の間に吸引力または反発力が存在するか否かに依存して、帯電した生物学的に活性な薬剤の該コートされた機器の表面からの放出の比率を減少または増加できる。同様に、親水性および疎水性のポリマー性マトリクス材料もまた、親水性および疎水性の生物学的に活性な薬剤、特に親水性および疎水性の薬物の放出の比率に影響を有することができる。高濃度のポリマーを有するポリマー性材料中、またはポリマーが高度に架橋したマトリクス中では、該薬物の配送の比率は減少し得る。
【0038】
微粒子はまた、該微粒子と一緒になった薬剤または薬剤類のアベイラビリティを制御するために、外層コーティングを有することができる。例えば、微粒子は、該微粒子と一緒になった官能化剤の持続または制御されたアベイラビリティを与えることができるポリ(エチレングリコール)(PEG)の外層コーティングを含むことができる。これは、コートされた医療機器表面、特別に移植用医療機器に特に有用であることができる。他の有用な外層コーティングは、例えばシランまたはポリシロキサンのコーティングを包含できる。
【0039】
幾つかの用途において、膨潤性微粒子が前記官能化剤の混入のために用いられることができる。そのような膨潤性微粒子は、典型的に、ポリスチレン、ポリスチレンのコポリマーからなり、そして典型的に有機溶媒中で膨潤可能である。微粒子は、薬剤を該微粒子中に取り込むために、該官能化剤を含有する有機溶媒中に浸すことができる。該溶媒は前記ポリマー性微粒子を膨潤し、そして該官能化剤を微粒子コア中に浸透させる。過剰の溶媒はその後、例えば真空濾過により除去され、該官能化剤は該微粒子の疎水性内部領域中に閉じ込められる。1つの態様において、ポリ(メチルスチレン)−ジビニルベンゼン微粒子がジメチルホルムアミド中でリンスされる。ジメチルホルムアミド中に官能化剤を含有する溶液が、その後該微粒子に添加され、そして該微粒子および溶液は攪拌しながら一晩温置される。過剰の官能化剤は、ミリポア・カンパニー(ベッドフォード、マサチューセッツ)により提供されるもののようなメンブランフィルターを使用する真空濾過により懸濁物から除去される。該濾過された微粒子は、その後超音波処理され、そして該微粒子の外側の残存官能化剤を除去するために、遠心分離により0.01%トゥイーン20を含有する蒸留水中で洗浄される。
【0040】
幾つかの態様において、前記膨潤性微粒子が慣用のイメージング技術を使用して検出可能な官能化剤、例えばナノ粒子酸化鉄、Gd、またはMnのような常磁性材料、または同位元素が染み込んでいることが好ましい。これは、体内に移植され、または体内の一部を通して移動する医療機器の検出のために有用であり得る。そのようなコートされた医療機器は、常磁性共鳴イメージング、超音波イメージング、または他の適した検出技術により検出できる。他の例において、気相化学物質を含有する微粒子は、超音波イメージングのために使用できる。有用な気相化学物質は、ペルフルオロペンタンおよびペルフルオロヘキサンのようなペルフルオロハロカーボンを包含し、それらは米国特許第5558854号明細書(1996年9月24日発行)に記載され、超音波イメージングのために有用な他の気相化学物質は、米国特許第6261537号明細書(2001年7月17日発行)に見出すことができ、これら特許の教示は参照により取り込まれる。
【0041】
本発明の微粒子は、1種以上の所望の特性、例えば取り扱いの容易さ、寸法安定性、光学特性、所望量の薬剤または薬剤類を基材に充分にカップリングするために十分な寸法および多孔性等を有することができる。該微粒子は、さらなる所望の属性、例えば十分な密度、例えば基材への該微粒子の適用において使用される水または他の溶媒より大きい密度を与えるように選ぶことができる。
【0042】
カプラー
1つの態様において、前記微粒子は、官能化剤の該微粒子へのカップリングを可能にできる“カプラー”を含む。本明細書中で使用されるとき、“カプラー”、“カップリング化合物”、または“カップリング部分”は、官能化剤を該微粒子に結合させるあらゆる種類のものを指す。該カプラーは、1種の構成員または1種以上の構成員を有することができる。例えば、該カプラーは小分子であることができ、または1種以上の大分子からなる結合対、例えば相互作用性タンパク質の対であることができる。
【0043】
前記微粒子は、反応基を有するカプラーを含むように調製できる。反応基を有するカプラーは、1種以上の官能化剤を該微粒子に、例えば生物学的に活性な薬剤または光学特性を与える官能化剤をカップリングするために使用できる。他の態様において、該微粒子上に与えられる反応基は、該微粒子を前記ポリマー性材料にカップリングするために、または該微粒子を前記基材の表面にカップリングするために、または前記のあらゆる組み合せに使用できる。適した反応基は、該微粒子にカップリングされる官能化剤の性質に従って選ぶことができる。適した反応基の例は、それらに制限されること無く、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、亜リン酸、アルデヒド基、アミン基、チオール基、チオール反応性基、エポキシド基等を包含する。例えば、カルボキシレート変性微粒子は、水溶性カルボジイミド試薬を使用するタンパク質または他のアミン含有分子の共有結合のために使用できる。アルデヒド変性微粒子は、穏やかな条件下で該微粒子をタンパク質および他のアミンにカップリングするために使用できる。アミン変性微粒子は、該微粒子を様々なアミン反応性部分、例えばハプテンおよび薬物のスクシンイミジルエステルおよびイソチオシアネート、またはタンパク質のカルボン酸にカップリングするために使用できる。他の用途において、サルフェート変性微粒子は、使用者がタンパク質、例えば子ウシ血清アルブミン(BSA)、IgG、アビジン、ストレプトアビジン等を受動的に吸収することを望むときに使用できる。
【0044】
他の態様において、前記反応基は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA等のような結合基を包含できる。これらおよび他の変性微粒子は、モレキュラー・プローブ,インコーポレイテッド(ユージーン、オレゴン)を包含する多数の販売元から市販で入手可能である。
【0045】
本発明のカップリング部分のための他の方法は、本明細書中では、チュムラ等(2001、Proc. Natl. Acad. Sci.98:8480)に記載されるように“化学的親和性”相互作用として言及される化学的および親和性相互作用の組み合わせを通してである。高い結合特異性および無視し得る解離定数を有する結合対は、該結合対の各構成員を、該対の親和性結合物の近傍において、反応して共有結合を形成する基で官能化することにより作製できる。例えば、各官能化構成員の構成要素は、例えばミヒャエラ付加または吸核置換により反応して、共有結合、例えばチオエーテル結合を形成できる。
【0046】
前記微粒子の表面はまた架橋性化合物でコートされることもできる。様々な官能化剤が、該微粒子に架橋剤を介してカップリングできる。例えば、ピース・ケミカル・カンパニー(ロックフォード、イリノイ)から入手される市販で入手可能な架橋剤が、該微粒子を官能化剤にカップリングするために、例えば該微粒子の表面に与えられたアミン基を介してカップリングするために使用できる。有用な架橋性化合物は、ホモ2官能性およびヘテロ2官能性の架橋剤を包含する。例えばアミン基が存在する微粒子に使用できる架橋性化合物の2つの例は、ジ−スクシンイミジルスベレートおよび1,4−ビス−マレイミドブタンである。
【0047】
官能化剤
幾つかの態様において、前記微粒子は官能化剤にカップリングされるか、またはそれと一緒になる。本明細書中で使用されるとき、“官能化剤”は、典型的に、該微粒子にカップリングできるか、またはそれと一緒になれる化合物であって、コートされた基材の表面にその化合物により付与される特性を与えることができる1種以上の化合物を指す。有用な官能化剤は、生物学的に活性な化合物、常磁性化合物のような検出可能特性を有する化合物、および光学特性を持つ化合物を包含する。本発明の微粒子は、局所的または全身的な効果を生じる何れかの物理学的に活性な基材にカップリングできるか、またはそれと一緒になれる。
【0048】
1つの態様において、該微粒子は前記微粒子は、生物学的に活性な化合物、例えば医療状態を治療するために使用できる医薬または他の化合物にカップリングされる。特に有用な生物学的に活性な化合物の1つの群は“血液活性”化合物である。本明細書中で使用されるとき、“血液活性”は、体内の血行停止、即ち、血液凝固/凝結に関わる事象および血液凝固溶解プロセスに影響できる化合物を指す。これらの事象は、それらに制限されること無く、血管収縮、血小板活性化、血小板凝集、活性凝集因子、およびフィブリン凝固の溶解を包含する。有用な血液活性剤は、トロンボン因子、例えばプラスミノーゲンアクチベーター(TPA)およびストレプトキナーゼ;凝固カスケード因子、例えばプロテインS;抗血液凝固化合物、例えばヘパリンおよびナドロパリン(低分子量ヘパリン)、およびワーファリン、抗血小板、例えばチクロピジン等を包含する。
【0049】
他の群の有用な生物学的に活性な化合物は抗生物質である。抗生物質の例は、ペニシリン、テトラサイクリン、クロルアンフェニコル、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、バンコマイシン、バシトラシン、カナマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、エリトロマイシンおよびセファロスポリン類を包含する。セファロスポリン類の例は、セファロチン、セファピリン、セファゾリン、セファレキシン、セフラジン、セファドロキシル、セファマンドール、セホキチン、セファクロール、セフロキシム、セホニシド、セホラニド、セフィタキシム、モキサラクタム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、およびセホペラゾンを包含する。
【0050】
他の群の有用な生物学的に活性な化合物は防腐剤である。防腐剤の例は、銀スルファジアジン、クロロヘキシジン、グルタルアルデヒド、過酢酸、ナトリウムハイポクロライト、フェノール、フェノール性化合物、ヨウ素担体化合物、第4アンモニウム化合物、および塩素化合物を包含する。
【0051】
他の群の有用な生物学的に活性な化合物は抗ウイルス剤である。抗ウイルス剤の例は、a−メトリル−P−アダマンタンメチルアミン)、ヒドロキシ−エトキシンエチル−グアニン、アダマンタンアミン、5−ヨード−Tデオキシウリジン、トリフルオロチミジン、インターフェロン、およびアデニンアラビノシドを包含する。
【0052】
他の群の有用な生物学的に活性な化合物は酵素阻害剤である。酵素阻害剤の例は、シドロフォニウムクロリド、Nメチルフィソスチグミン、ネオスチグミンブロミド、フィソスチグミンサルフェート、タクリンHCL、タクリン、1−ヒドロキシマレエート、ヨードツベルシジン、p−ブロモテトラアミソール、10−(アジエチルアミノプロピオニル)−フェノチアジンヒドロクロリド、カルミダゾリウムクロリド、ヘミクロリニウム−3,3,5−ジニトロカテコール、ジアシルIグリセロールキナーゼ阻害剤1、ジアシルIグリセロールキナーゼ阻害剤II、3−フェニルプロパルギルアミン、N−モノメチル−L−アルギニンアセテート、カルビドーパ、3−ヒドロキシベンジルIヒドラジンHG、ヒドララジンHQ、クロルギリンHCl、デプレニルHQ,L(−)、デプエニルHG,D(+)、ヒドロキシルアミンHQ、イプロニアジドホスフェート、6MeO−テトラヒドロ−9H−ピリド−インドール、ニアラミド、パルギリンHQ、キナクリンHCl、セミカルバジドHQ、トラニルサイプロマインHQ、N,N−ジエチルアミノエチル−2,2−ジフェニルバレレートヒドロクロリド、3−イソブチル−1−メチルキサンテン、パパベリンHCl、インドメタシン、2−シクロエチル−2−ヒドロキシエチルアミンヒドロクロリド、2,3−ジクロロ−アメチルベンジルアミン(DCMB)、8,9−ジクロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンザゼピンヒドロクロリド、p−アミノグルテチミド、p−アミノグルテチミドタートレート,R(+)、p−アミノグルテチミドタートレート,S(−)、3−ヨードチロシン、アルファ−メチルチロシン,L(−)、アルファ−メチルチロシン,DL(−)、セタゾールアミド、ジクロイフェナミド、6−ヒドロキシ−2ベンゾチアゾールスルホンアミド、およびアロプリノールを包含する。
【0053】
他の群の有用な生物学的に活性な化合物は解熱剤および消炎剤である。そのような薬剤の例は、アスピリン(サリチル酸)、インドメタシン、ナトリウムインドメタシン3水和物、サリチルアミド、ナプロキセン、コルチシン、フェノプロフェン、スリンダック、ジフルニサル、ジクロフェナック、インドプロフェンおよびナトリウムサリチルアミドを包含する。局所麻酔剤は、局所領域において麻酔効果を有する物質である。そのような麻酔剤の例は、プロカイン、リドカイン、テトラカインおよびジブカインを包含する。
【0054】
本発明において使用可能な他の生物学的に活性な化合物または医薬は、それらに制限されること無く、抗増殖剤、例えばタキソール、ラパマイシン、およびビノレルビン;成長因子、例えばインスリン様成長因子(IGF−1)および変態成長因子−ベータ1(TGF−beta1)、および他の薬剤、例えば抗微生物剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、栄養剤、ビタミン、ステロイド、鬱血除去剤、縮瞳剤、鎮静剤、催眠剤、トランキライザー、エストロゲン、プロゲステロン剤、体液性剤、プロスタグランジン、抗痙攣剤、抗マラリア剤、および抗高血圧剤を包含する。同様に包含されるものは、対象中にあるとき、活性化形態に転換できる非荷電分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミド等のような形態である。
【0055】
加えて、抗原またはワクチン、例えばペプチド抗体は、前記微粒子にカップリングできるか、またはそれと一緒になれ、そして該微粒子の表面から免疫応答を引き起こすために使用できる。例えば、特異的T細胞応答を促進するために使用できる独特のペプチドが、MHC4分割複合体中で微粒子上に存在できる。当該技術において既知である様々な他の免疫調節化合物は、免疫応答を促進または停止するために、該微粒子にカップリングできる。
【0056】
各個々の微粒子上に与えられる官能化剤の量は、所望の効果を達成するために、使用者により調節できる。これに影響できる因子は、例えば、医療機器については、抗凝集剤活性の量、または、例えば細胞培養機器については、細胞付着因子または成長因子の量であることができる。該微粒子にカップリングされるか、またはそれと一緒になる官能化剤の密度は変化でき、そして例えば前記基材上に与えられるように意図された特別の生物学的に活性な薬剤の投薬量に依存できる。生物学的に活性な薬剤は、該微粒子により適用のために適した範囲内で与えられることができる。他の例において、タンパク質分子が微粒子により与えることができる。例えば、存在するタンパク質分子の量は、微粒子の直径1μm当たり1〜250000分子の範囲内であることができる。しかしながら、微粒子の原料および調製方法に依存して、該微粒子にカップリングされるか、またはそれと一緒になる薬剤の量は変化できる。
【0057】
基材上の該微粒子自身の量および組織はまた、例えば光学機器またはイメージング機器について、該基材に所望の特性を付与できる。常磁性共鳴または超音波イメージングの用途については、機器上に固定化された微粒子の数は、直接に、イメージング信号強度と相関できる。イメージング信号強度を増加するために、高密度の微粒子が該機器上の局所範囲に固定化できる。さもなくば、該基材上の微粒子の密度は変化でき、それにより該機器の異なる領域を区別して画像化することを可能にする。これは、該機器の異なる領域を、異なる微粒子の濃度を持つ2種以上の異なるコーティングスラリーでコートすることにより達成できる。光学用途においては、該表面上の微粒子の組織は、有用な特性を持った機器を与えることができる。ポリマー性材料と微粒子との混合物が載置され、そしてパターン形成されたマスクを通して照射することにより表面上にパターンを形成し、グレーチングを生成できる。該グレーチングの間隔は、該マスクの寸法および該基材上の微粒子の寸法のような因子により決定できる。加えて、他の光学機器は、微粒子の密なパッキングで生成できる。そのような機器は、濃縮された混合物中の微粒子をマトリクス形成の前に基材上で集成することにより生成できる。そのようなコーティングのパッキングおよび結果としての光学特性は微粒子直径に依存する。
【0058】
前記微粒子載置の前に、前記官能化剤を該微粒子にカップリングすること、または該官能化剤を該微粒子と一緒にすることは、基材コーティングにおいて利点を与えることができる。例えば、薬剤を基材に直接にカップリングすることと比較して、基材の表面積当たりのより高濃度の薬剤が、最初に官能化剤を該微粒子にカップリングすることにより達成できる。同様に、溶液状の薬剤の該微粒子へのカップリングは、一般に、基材への官能化剤の直接カップリングより効率的であり、カップリング手順の間の官能化剤の喪失がより少ない。加えて、溶液状の官能化剤の微粒子へのカップリングは、一般に、カップリングプロセスの間のより多くの変更を可能にする。例えば、カップリング溶液の掻き混ぜ、例えば攪拌を必要とするカップリング手順は、攪拌された溶液中の微粒子を使用して容易に達成できる。加えて、微粒子当たりにカップリングされた官能化剤の量の決定は、該微粒子の一部について、該官能化剤へのカップリングに続き、例えば免疫蛍光フローサイトメトリーまたはタンパク質アッセイ、例えばBCAアッセイを行うことにより容易に達成できる。一旦該微粒子が所望の量および所望の種類の官能化剤とカップリングすると、これらの官能化剤カップリング微粒子は、その後、適したポリマー性材料を含有する混合物中に含まれることができるか、またはポリマー性材料でコートされた基材上に載置できる。
【0059】
幾つかの態様において、前記官能化剤は、前記微粒子とカップリングする前に変性できる。言い換えれば、前記カプラーの一部は、該官能化剤が該微粒子にカップリンする前に、該官能化剤に付着させることができる。例えば、該官能化剤は結合対の一方の構成員を含み、また該微粒子は結合対の他の構成員を含むことができる。適した結合対は、アビジン:ビオチン、ストレプトアビジン:ビオチン、抗体:ハプテン、例えば抗ジゴキシゲニンAb:ジゴキシゲニンまたは抗トリニトロフェニルAb:トリニトロフェニルを包含する。例えば、該官能化剤は、例えば当該技術に既知の方法を使用してビオチンを官能化剤に架橋することによりビオチニル化できる。ビオチニル化薬剤またはビオチニル化薬剤類は、その後、該微粒子の表面に与えられたストレプトアビジンとカップリングできる。該結合対の構成員は、上記したように化学親和性相互作用を与えるために官能化できる。
【0060】
マトリクス
本発明によれば、前記微粒子はポリマー性材料を含むマトリクスを介して基材上に固定化される。該マトリクスは、一般に、該微粒子を固定化するために十分な厚さを有するポリマー性材料の層(本明細書中では同様に“層”)である。本明細書中で使用されるとき、“固定化”は、微粒子が基材の表面上に形成されるマトリクス内、またはその上に位置的に固定されるようになるプロセスを指す。本明細書中で使用されるとき、用語“ポリマー性マトリクス中”および“ポリマー性マトリクス内”は、微粒子が該ポリマー性材料により完全に取り囲まれている配置、および微粒子が該ポリマー性材料により部分的に取り囲まれているが、非化学結合相互作用により本来マトリクスに保持される配置を包含する。幾つかの微粒子は、微粒子がポリマー性材料により完全に取り囲まれていなくとも、該マトリクスと安定に一緒になることが観察されている。理論により拘束することを意図しないが、これらの微粒子は該マトリクスの細孔中に留まるようになると思慮される。
【0061】
表面上のマトリクス中での微粒子の固定化は、取り囲むポリマー性材料の存在無しに結合により表面上に粒子を固定化することを超える利点を与える。例えば、表面上に作用する剪断力は、該微粒子と表面との間の結合を破壊し、該表面からの該粒子の喪失を生じ得る。ポリマー性材料のマトリクスの存在はこれらの力からの保護を与え、従って、より大きな安定性を有する表面コーティングを与える。
【0062】
好ましい態様において、該微粒子は、基材上にポリマー性マトリクス中での閉じ込めにより固定化される。本明細書中で使用するとき、“閉じ込め”は、位置の固定がポリマー性ストランドのネットワークによる微粒子の物理的束縛のためであり、そして該微粒子と該基材との間または該微粒子と該ポリマーとの間の共有結合またはイオン結合の相互作用に依存しない、該基材上のポリマー性マトリクス内での微粒子の位置の固定を指す。閉じ込められた微粒子の例を図1に図示し、該図において、ポリマー性材料106が基材102上に載置され、そしてポリマー性材料106内に微粒子104を閉じ込め、それによりコートされた基材を形成している。
【0063】
他の態様において、前記微粒子は、a)該微粒子についてのポリマー性材料のマトリクスの物理的束縛(即ち、“閉じ込め”)と、b)該微粒子とポリマー性材料のマトリクスの一部との間のあらゆる種類の化学結合(例えば、イオン結合、共有結合、配位結合、水素結合またはファン・デア・ワールス結合、またはそれらの組み合わせ)との双方により固定化される。
【0064】
1つの態様において、固定化は、微粒子をポリマー性材料と混合して混合物を生成し、該混合物を基材上に載置し、そしてその後、該混合物がマトリクスを形成して、該微粒子が該マトリクス内または該マトリクス上で位置的に固定されるように該混合物を処理することにより行われる。
【0065】
他の態様において、該ポリマー性材料は最初に基材上に載置され、そして処理される。該処理に続いて、微粒子が該処理された材料上に置かれ、そして該マトリクス上に固定される。この態様は、例えば、該微粒子または該微粒子にカップリングされるか、もしくはそれと一緒になる薬剤が、選択された貯蔵条件でのみ安定なときに有利であることができる。
【0066】
前記マトリクスは、前記微粒子の固定化を可能にする様々なポリマー性材料からなることができる。本明細書中で使用されるとき、“ポリマー”または“ポリマー性材料”は、該マトリクスを形成するために使用できるポリマー、コポリマー、およびそれらの組み合せを指す。該マトリクスの形成のために使用されるポリマー性材料はまた、“マトリクス形成性材料”、または“マトリクス形成性ポリマー性材料”としても言及できる。幾つかの場合において、該ポリマー性材料は、“可溶性ポリマー”として言及される。ポリマー性材料のマトリクスのために好ましい材料は、それらに制限されること無く、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポリ(HEMA)等を包含する合成親水性ポリマー;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルメタクリレート(PBMA)、ポリウレタン等のような合成疎水性ポリマー;それらのコポリマー、またはポリマーおよびコポリマーの何れの組み合せでもあり得る。天然ポリマーもまた使用でき、そして多糖、例えばポリデキストラン、グリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸、およびポリペプチド、例えばアルブミンおよびアビジンのような可溶性タンパク質、およびこれら天然ポリマーの組み合わせを包含する。天然および合成のポリマーの組み合わせもまた使用できる。
【0067】
1つの好ましい態様において、上記したようなポリマーおよびコポリマーは、反応性基、例えば熱反応性基または光反応性基を含む。該反応性基は、前記ポリマー性ストランドの末端部分(端部)で存在でき、または該ポリマーの長さに沿って存在できる。1つの態様において、該光反応基は、該ポリマーの長さに沿ってランダムに配置される。
【0068】
幾つかの態様において、ポリマー架橋性化合物、例えば光反応性または熱活性化のポリマー架橋剤がポリマー性材料に添加でき、そして前記マトリクスを形成するために処理できる。本明細書中で使用されるとき、“ポリマー架橋性化合物”は、ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合わせを一緒に架橋するために使用できる化合物を指す。該ポリマー架橋性化合物は1種以上の反応性基を含むことができ、そしてそれらの基は該ポリマーを架橋するために使用でき、そしてまた該ポリマーを前記基材の表面に結合するためにも使用できる。有用なポリマー架橋性化合物の1つの例はビスアシルアミドである。ポリマー性材料のマトリクスを形成する際に、微粒子、該ポリマー、およびポリマー架橋性化合物を含む混合物を該基材に適用し、そしてその後、該ポリマーを架橋するために処理できる。該ポリマーは、例えば、該ポリマーにより与えられる反応性基の活性化により架橋できる。ポリマー架橋性化合物の添加は、ポリマー性材料のマトリクスに使用条件に対してより耐久性を持たせることに役立つことができ、また同様により小さな微粒子を閉じ込めることが可能なより小さな細孔寸法を持つマトリクスを生成できる。
【0069】
幾つかの態様において、前記ポリマーに与えられる反応性基は光反応性基であることができ、そして該光反応性ポリマーは照射により架橋できる。該微粒子は、該ポリマーのポリマー架橋により形成されるポリマー性材料のマトリクス中に閉じ込められることとなる。該光反応性基はまた、該光反応性基の活性化により、該ポリマーを該基材の表面に結合するためにも役立つ。ポリマーの濃度およびポリマー間の架橋の程度は、ポリマー性材料のマトリクス中に閉じ込められる微粒子の寸法に従って調節できる。
【0070】
この態様によれば、光反応性基はポリマー上に与えることができる。本明細書中で使用されるとき、“光反応性ポリマー”は1種以上の“光反応性基”を含むことができる。“光反応性基”は、放射線のような特別に適用される外部エネルギー源に応答して、例えばニトレン、カルベンおよび励起ケトン状態のような活性種を生成し、結果として隣接する標的化学構造への共有結合を伴う1種以上の反応性部分を包含する。そのような光反応性基の例は、米国特許第5002582号明細書(ガイル等、本発明の譲受人により共有されている)に記載されており、その開示は、その全体が本明細書中に取り込まれる。光反応性基は、電磁スペクトルの様々な部分、典型的には、該スペクトルの紫外部分、可視部分または赤外部分に反応性であるように選ぶことができる。“照射”は、表面への電磁放射線の適用を指す。
【0071】
光反応性アリールケトンは、前記光反応性ポリマーについて好ましい光反応性基であり、そして、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、およびアントロン状へテロ環(即ち、N、O、またはSを10位に有するもののようなアントロンのヘテロ環類似物)、またはそれらの置換(例えば、環置換)誘導体であることができる。好ましいアリールケトンの例は、アクリドン、キサントンおよびチオキサントンを包含するアントロンのヘテロ環式誘導体、およびそれらの環置換誘導体を包含する。特に好ましいのは、約360nmより大きい励起波長を有するチオキサントン、およびその誘導体である。
【0072】
アジドもまた前記光反応性ポリマーについての光反応性基の適した分類であり、そしてフェニルアジドそして特に4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジドのようなアリールアジド(C653)、エチルアジドホルメートのようなアシルアジド(−CO−N3)、フェニルアジドホルメート、ベンゼンスルホニルアジドのようなスルホニルアジド(−SO2−N3)、およびジフェニルホスホリルアジドおよびジエチルホスホリルアジドのようなホスホリルアジド(RO)2PON3を包含する。
【0073】
ジアゾ化合物は、前記光反応性ポリマーについての光反応性基の他の適した分類をなし、そしてジアゾメタンおよびジフェニルジアゾメタンのようなジアゾアルカン(−CHN2)、ジアゾアセトフェノンおよび1−トリフルオロメチル−1−ジアゾ−2−ペンタノンのようなジアゾケトン(−CO−CHN2)、t−ブチルジアゾアセテートおよびフェニルジアゾアセテートのようなジアゾアセテート(−O−CO−CHN2)、および3−トリフルオロメチル−3−フェニルジアジリンのようなベータ−ケト−アルファ−ジアゾアセテート(−CO−CN2−CO−O−)、およびケテンおよびジフェニルケテンのようなケテン(−CH=C=O)を包含する。
【0074】
例示的な光反応性基を以下に示す。
【表1】

【0075】
前記光反応性ポリマーは、幾つかの態様において、光反応性コポリマーを含む。該ポリマーまたはコポリマーは、例えばポリアクリルアミド骨格を有するか、またはポリエチレンオキシドをベースとするポリマーまたはコポリマーであることができる。光反応性ポリマーの1つの例は、ビニルピロリドンとN−[3−(4−ベンゾイルベンズアミド)プロピル]メタクリルアミドとのコポリマー(BBA−APMA)を含み、他の例はアクリルアミドとBBA−APMAとのコポリマーである。
【0076】
前記光反応性ポリマーの反応性基は、前記基材と前記光反応性ポリマーとの間の共有結合の形成を可能にし、それにより該ポリマーを該基材の表面に結合する。該光反応性ポリマーの光反応性基はまたポリマー性ストランドを一緒に架橋して、前記微粒子を閉じ込めることができるマトリクスとして役立つ共有結合で架橋したポリマー性ストランドのネットワークの形成を可能にするために役立つことができる。幾つかの態様において、非光反応性架橋剤が架橋したポリマー性ストランドの形成を促進するために使用できる。ポリマー架橋剤の使用は、例えば、該ポリマー性ストランド上に存在する光反応性基の位置および数に依存できる。該光反応性基のための標的であり得るか、該ポリマーのさらなる重合を開始できるか、または熱化学的に活性化できるポリマー架橋剤、例えばDSS(N,N−ジスクシンイミジルスベレート)架橋剤を添加できる。該架橋剤は、さらに、該ポリマーの他の部分に結合することにより該マトリクスを固化できる。
【0077】
前記マトリクスは様々な材料から形成でき、また好ましくは、本発明の微粒子の閉じ込めを可能にする細孔寸法を有することができる。例えば、2.5μmの平均直径を持つ微粒子を閉じ込める場合、50nmないし2.5μmの範囲内、またより好ましくは100nmないし1μmの範囲内の細孔寸法を有するのが有用である。
【0078】
好ましい態様において、ポリマー性材料の前記マトリクスは、様々な化合物に透過性であり、該化合物は、典型的に、該マトリクス中に固定化される最小の微粒子よりも小さい。例えば、少なくとも部分的に疎水性ポリマー性材料を含むポリマー性マトリクス中で、タンパク質およびタンパク質より小さい他の分子を含むことができる水溶液は、該マトリクスを通して自由に拡散できる。
【0079】
1つの好ましい態様において、マトリクスは、本発明の微粒子を閉じ込めるために十分で、かつまた該マトリクス内外の分子の拡散を可能にするために十分なポリマー性材料から形成される。この態様において、該マトリクスは、少なくとも100nmの直径である微粒子の固定化を可能にし、かつ50nm未満、またより好ましくは25nm未満である分子の該マトリクス内外での拡散を可能にする。
【0080】
他の態様において、前記微粒子の固定化は、該微粒子の前記マトリクスへの、および該マトリクスの前記基材への化学結合により行うことができる。様々な結合が、該微粒子と該マトリクス材料との間、および該マトリクス材料と該基材との間に形成できる。これらの結合は、例えばイオン結合、共有結合、配位結合、水素結合およびファン・デア・ワールス結合を包含する。この態様において、共有結合が好ましく形成される。
【0081】
1つの態様において、ポリマー性材料と、官能化剤にカップリングできるか、またはそれと一緒になれる微粒子とを含むスラリーが、前記基材の表面上にディップコートされて、コートされた表面を形成できる。他の態様において、該ポリマー性材料がディップコートされて、コートされた表面を形成する。さもなくば、該ポリマー性材料は圧電性ポンプの利用によりジェット印刷により該基材の表面に適用できる。印刷技術は、該基材の表面上の正確な位置での比較的少量の混合物の適用を可能にできる。他の態様において、ポリマー性材料が基材上に載置され、そして処理され、該微粒子はその後該基材上に置かれて、処理された材料を介して固定化される。
【0082】
前記混合物のコーティングは、前記基材の表面の一部を覆うように処理できる。微粒子のコーティングは、該基材の表面上の様々な位置でパターン形成できる。各コートされる部分のポリマー性材料のマトリクスの厚さは変化でき、そして該マトリクス中に固定化される微粒子の寸法に依存できる。好ましくは、該基材上のポリマー性材料のマトリクスの厚さは、該基材上に載置される最大の微粒子の直径より大きい。幾つかの用途において、該基材は、ポリマー性材料と微粒子との混合物での1以上のコーティング工程および処理工程を受け、それにより該基材表面上に多層の形成を可能にする。
【0083】
マトリクス中の固体化された微粒子の表面コーティングを生成するために、前記ポリマー性材料を含む混合物は、典型的に、該混合物が該基材上に載置された後に処理される。1つの態様において、光ポリマーを含む該ポリマー性材料は、電磁エネルギー、例えばUV光で処理されて、該ポリマーの光反応性基を活性化し、そして該ポリマーを該基材に結合するか、または架橋を介して該ポリマーストランドを一緒に結合するか、または双方を行う。幾つかの用途において、該ポリマー性材料はマスクを用いて電磁エネルギーで処理されて、該基材上に処理された材料のパターンを形成する。
【0084】
1つの態様において、該微粒子は、生物学的に活性な薬剤にカップリングされるか、またはそれと一緒になり、そして基材の表面上のポリマー性材料のマトリクスを介して固定化される。幾つかの場合において、このコーティング技術は、所望量の生物学的に活性な薬剤を基材の表面、例えば医療移植用機器または外科装置の表面に与えるために有用である。そのような機器または装置の例は上記した。
【0085】
生物学的に活性な薬剤を含む微粒子でコートされた機器の有用性の例は下記する。
【0086】
コートされた基材のための用途
ヘパリンは、しばしば、その抗凝結特徴のために、患者の体内に導入された異物が血液凝固の発生につての部位になり得る状況において使用される。血液凝固の発生は、血管の閉塞を生じるのみならず、遠位で血管閉塞を生じる塞栓の発生源を与え得る。ヘパリンにカップリングされ、そしてポリマー性材料のマトリクスを介して固定化された微粒子は、通常凝結の傾向がある表面上の凝固形成を防止できる。
【0087】
1つの例において、心臓弁を、ポリマー性材料と、ヘパリンまたは他の抗凝結剤またはトロンボン性化合物にカップリングされた微粒子とを含有する混合物でコーティングできる。この抗凝結剤またはトロンボンのコーティングは、該弁の表面がしばしば血栓症および結果としての栓塞の原因であるので有用である。同様に、動脈血管症の診療および治療における血管内カテーテルのための様々な用途もある。これらのカテーテルもまた、ポリマー性材料と、生物学的に活性な化合物にカップリングされるか、またはそれと一緒になった微粒子との混合物でコートできる。これらのコートされたカテーテルは、例えば、心臓疾患の診断および管理において重要な器具である心臓カテーテル法において使用できる。コートされたカテーテルはまた、カテーテル法手順において、深静脈血栓症のような様々な末梢血管障害を診断および治療するためにも使用できる。動脈瘤の診断および治療のために、血管内カテーテル法が通常必要とされる。通常、遠位から、例えば大腿静脈から動脈瘤の位置へのカテーテルの配置、その後の捩込みを伴う手順は、凝固形成の高い危険性を生じる。カテーテルの先端および長さに沿って、ポリマー性材料のマトリクス中のヘパリンカップリング微粒子でコートされた表面を有するカテーテルは、この発生に対して保護できる。さらなる他の例において、先天性および後天性の血管奇形は、同様の凝固および栓塞の形成の課題を持つ動脈瘤について上記したように処理できる。
【0088】
他の医薬的に活性な化合物にカップリングされるか、またはそれと一緒になった微粒子を含有するポリマー性材料のマトリクスでコートされた移植用医療機器もまた有用である。局所的(または部分的)癲癇は、脳中の局所範囲の異常な化学/電気活性の結果である。抗痙攣剤薬物は癲癇を治療する最も頻繁に使用される手段である。作用の機構は、異常な迷走性電気活性の抑止またはそのような活性の広がりの予防を含み、そしてそれ故、患者が臨床的癲癇発作を起こす公算を減少すると考えられている。抗癲癇剤薬物は、通常、経口により与えられ、腸から血流中に吸収され、そしてその後、有効となるには血管−脳障壁を超える。比較的不透過性の血管−脳障壁を横切るためには、高い投薬量が与えられなければならず、それにより臨床毒性および他の器官への損傷の公算が増大する。本発明は、より指向的な治療のための機構を与えることができる。例えば、微粒子は、患者の癲癇に適した抗癲癇剤薬物にカップリングできるか、それと一緒になれる。好ましくは、該薬剤は、該微粒子から所望の時間の期間放出できるか、またはそのカップリングされた形態で医薬的に活性であり得る。これらの医薬カップリング微粒子を含むポリマー性材料のマトリクスは、医療移植用機器、例えばチップの表面上にコートされ、そして神経外科の分野において標準である技術により発作の起源の部位であると示された脳の領域中に配置できる。他の例において、パーキンソン病は、黒質のニューロン中でのドーパミンの減少した結果である。置換療法はしばしば効果的であるが、これらを経口により与える必要のために、薬物からの副作用が一般的である。本発明の微粒子は、ドーパミンまたはドーパミンの前駆体にカップリングできるか、またはそれと一緒になれ、そしてポリマー性材料のマトリクスを医療移植用機器、例えばチップの表面上にコートし、そして減少または欠如したドーパミンを補足する脳の領域中に配置できる。
【0089】
多数の癌は化学療法剤の投与により治療できる。全身性化学療法において使用されるこれらの薬剤の多くは、他の器官系には毒性である。医療移植用機器の表面上のポリマー性材料のマトリクス中の化学療法剤にカップリングされるか、またはそれと一緒になった微粒子の固定化は、腫瘍の部位で、例えば腹部、骨盤、または頭蓋内の領域中に位置付けでき、そして、該部位への直接化学療法を与え、この治療の全身性副作用の多くを回避できる。これは、癌がしばしば初期段階において局在化している領域、例えば前立腺、睾丸、肝臓、または結腸で有用であり得る。
【0090】
多数の感染症は、抗生物質または抗ウイルス薬物の持続投薬を必要とする。抗生物質は、しばしば、膿瘍中の活性な感染の領域を取り囲む炎症組織または繊維状組織を容易に透過しない。他の用途において、抗生物質は、本発明の微粒子にカップリングされるか、またはそれと一緒になれ、そしてこれらの微粒子とポリマー性材料とを含有する混合物が、カテーテルまたは同様な機器の上にコートでき、それらがその後、当業者に既知の標準外科技術により膿瘍の周囲または内部に配置される。これは、薬物の全身性効果を回避しつつ、安定かつ持続した抗生物質の投与を確実にする。膿瘍は、しばしば、容易に接近可能でないか、または限定された血液供給を有する領域中、例えば骨内に見出される。抗生物質投薬はまた、マイクロビースを適当な抗生物質にカップリングし、そして微粒子を含有するポリマー性混合物をカテーテルチップのような基材上にコートすることによっても達成できる。そのようなカテーテルは、感染プロセスが識別された領域、例えば膀胱中に配置でき、そして該抗生物質は徐々に放出される。
【0091】
本発明は、マトリクス中に固定化された微粒子でコートされた表面を製造する方法、このコートされた表面からこの化合物を配送する方法、および該表面自身を意図する。
【実施例】
【0092】
実施例1
光ポリマーマトリクスを使用した基材上での微粒子の閉じ込め
微粒子を基材の表面上にマトリクス中での該微粒子の閉じ込めにより固定化した。この固定化方法は、化学結合が該微粒子とポリマー性材料のマトリクスとの間に形成されないので、微粒子の表面官能性と干渉しない。特に、該微粒子は、光ポリマーのベンゾフェノンが反応して安定な新規結合を形成できる標的基を全く与えない。従って、該微粒子上の表面の化学的性質は変化しない。ポリマー分子間の共有結合は、微粒子とポリマー性材料とを含有する混合物を機器上にコートした後に形成する。光ポリマーの照射はポリマーをそれ自身と架橋させ、該微粒子を包み込むが、微粒子に結合した生物分子を変化させない。
【0093】
この固定化方法を説明するために、4つの異なる直径(0.4μm、0.9μm、5.0μm、および9.9μm)の普通のシリカ微粒子を異なる濃度の光ポリマーマトリクス中に固定化した。光ポリマーの最低の濃度では、形成したポリマー性マトリクスは、試験した寸法の微粒子を物理的に固定化するために十分ではなかった。さらなる対照として、幾つかの光ポリマーコーティングを照射せず、それは微粒子の周囲での不十分な架橋を生じ、そして該コーティングからの微粒子喪失を導いた。洗剤および高塩溶液の中、高温での厳格なリンスを使用して、光ポリマーコーティングが丈夫であることを確証した。
【0094】
100mg/mlアリコートの各400nm、970nm、5μm、および9.9μmのシリカ微粒子溶液(それぞれ、カタログ番号SS02N、SS03N、SS05N、およびSS06N、バングス・ラボラトリーズ社製、フィッシャー、イリノイ)20μLを、遠心分離によりペレット化した。これらのペレットを、個々に、ビニルピロリドン(VP)とN−[3−(4−ベンゾイルベンズアミド)プロピル]メタクリルアミド(BBA−APMA)とのコポリマーである(BBA−APMA:VP)−Iの100μL連続希釈液中に再懸濁した。希釈列は、(BBA−APMA:VP)−Iの10、5、2.5、1.25、0.6、0.3、0.15、0.08、0.04および0.02mg/mL濃度試料からなった。微粒子の最終濃度は、全ての寸法について20mg/mLであった。従って、400nm微粒子溶液は、9.9μm微粒子溶液がするよりも顕著に多い微粒子を含有したが、しかしながら、全ての微粒子用液は同じ百分率の固形分を含有した。
【0095】
ポリプロピレンおよびシラン化ガラススライド(1×3インチ×1mm)を基材として使用した。ガラス製顕微鏡スライドを、ポートスミス、ニューハンプシャーのエリー・サイエンティフィック社から入手した(カタログ番号2950−W)。このソーダ石灰ガラス顕微鏡スライドを、各々アセトン中の1%v/vのp−トルイルジメチルクロロシラン(T−シラン)と1%v/vのn−デシルジメチルクロロシラン(D−シラン、ユナイテッド・ケミカル・テクノロジーズ社製、ブリストル、ペンシルバニア)の混合液中に1分間浸漬することにより処理した。空気乾燥後、スライドをオーブン中、120℃で1時間硬化した。該スライドをその後アセトンで洗浄し、次いで脱イオン水中に浸漬した。該スライドをさらにオーブン中5〜10分間乾燥した。ポリプロピレンスライドを製造し、そしてカジラック・プラスチクス社(ミネアポリス、ミネソタ)から入手した。シラン化ガラスまたはプロピレンスライドをその後、アセトンまたはイソプロパノール中で洗浄した。
【0096】
各微粒子−(BBA−APMA:VP)−I溶液5μLを、ガラススライド上の凡そ10mm×2mmの範囲中に置き、そして空気乾燥させた。乾燥したならば、該コーティングを2分間、幅広いスペクトルの紫外線(320〜390nm)で、2mW/cm2の典型的なパワー出力を有するダイマックス・ライト・ウェルダーPC−2(ダイマックス・エンジニアリング・アドヘシブ社製、トリントン、コネチカット)を使用して照射した。該ランプは、コートした表面から凡そ10cmで位置させた。第2組の試料は照射せず、光ポリマーマトリクスを架橋することが微粒子を含有するために必要であるか否かを決定するための対照として役立てた。
【0097】
前記微粒子がポリマーコーティング中に十分に閉じ込められたか否かを決定するために、コートしたスライドを1X PBS−0.1%トゥイーン−20溶液中、穏やかな振盪と共に1時間洗浄し、次いで脱イオン水で2回リンスした。コーティングをその後顕微鏡により再検査し、そして微粒子喪失を評価した。高い塩の第2の洗浄条件をより高い温度でその後行った。微粒子コートした小片を温置し、そして0.1%SDSを伴う4X SSC緩衝液中で45分間、45℃で振盪し、その後脱イオン水で2度洗浄し、そして微粒子コーティングにおける変化について顕微鏡により検査した。最後に、0.1%SDSを伴う5X SSC緩衝液中で2時間、45℃でのスライド温置、および続く減じた濃度のSSCの4回のリンスを伴う、より長い高塩洗浄工程を行った。該微粒子コーティングを、50×倍率での品質上の顕微鏡検査(オリンパスBX60、東京、日本)により検査し、そして変化を表にした。結果を表2および表3に示す。
【0098】
図2a〜2dは最終洗浄後の微粒子の存在を示す。図2aは400nm微粒子を有するコーティングを示し、図2bは970nm微粒子を有するコーティングを示し、図2cは5μm微粒子を有するコーティングを示し、そして図2dは9.9μm微粒子を有するコーティングを示す。
【0099】
全3回の洗浄の前後の微粒子の顕微鏡写真を表す図を図3に示す。図3aは洗浄前の0.3mg/mL(BBA−APMA:VP)−Iマトリクス中での9.9μm微粒子を示し、そして図3bは洗浄後の0.3mg/mL(BBA−APMA:VP)−Iマトリクス中での9.9μm微粒子を示す。結果を表2および表3に示す。表1及び2で示されるように:N=喪失無し、S=僅かな喪失、M=中程度の喪失、H=重大な喪失、C=完全な喪失、PBST=室温での1X PBS−0.1%トゥイーン−20洗浄1時間、4X SSC=45℃での4X SSC−0.1%SDS洗浄45分間、最終=45℃での5XSSC−0.1%SDS洗浄2時間。
【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
上記の表2および3で示されるように、微粒子喪失は照射されていない試料において顕著に増加した。同様に、上記の表2および3で示されるように、微粒子喪失はポリマーの濃度が減少するときに増加した。微粒子喪失はより小さな寸法の微粒子がポリマー製材料のマトリクス中で使用されるときに増加した。このデータは、照射が、微粒子の周囲での包み込みポリマー性ネットワークの形成を促進することを示す。このデータは、同様に、微粒子が化学結合よりむしろ、ポリマー性材料のマトリクスの物理的束縛により固定化されることを示す。
【0103】
基材上にコートされるとき、より小さな微粒子を有するスラリーが、多層の微粒子でより密に充填したコーティングを与え、一方、より大きな微粒子を有するスラリーは、数/10の1ミリメートル毎に疎に配置した微粒子を有するコーティングを与える。より低い微粒子の密度を示すコーティングは、密な濃度を持ったものと洗浄条件に対して同程度に安定である。
【0104】
実施例2
基材上に光ポリマーマトリクスを介して閉じ込められた微粒子のパターン形成コーティング
この実施例では、コートした基材を、減じた濃度の光反応性ポリマーを用いるが、光ポリマーのパターン化コーティングを伴う実施例1の手順を使用して生成した。光反応性ポリマーのより低い濃度では、穏やかなリンス後、もはやポリマー性マトリクスは微粒子をその場に保持しなかった。
【0105】
5mg/mLの(BBA−APMA:VP)−Iのスラリーを、2.5、1.25、0.625、0.313mg/mLに脱イオン水中で希釈し、そして1.0μmの蛍光ポリスチレン微粒子(バングス・ラボラトリーズ社製、フィッシャー、インディアナ)の0.25mg/mLの溶液を各希釈液に添加し、連続希釈(BBA−APMA:VP)−I溶液の各45μLを、脱イオン水中で40mg/mLの微粒子5μLに添加してスラリーを生成し、微粒子の最終濃度は、全部で50μLの各混合物中で4mg/mLであった。
【0106】
該スラリーは全て、マイクログリッドIIアレイヤー(バイオロボティクス社製、ケンブリッジ、イギリス国)上に接触印刷し、そしてその後、2分間紫外線で実施例1で詳述したように(ダイマックス・ライト・ウェルダーPC2、ダイマックス・エンジニアリング・アドヘシブ社製、トリントン、コネチカット)、315nmカットオフフィルター(エレクトロ−ライト・コーポレイション、ダンブリーコネチカット)を通して照射した。コートした基材をその後、3回、0.1%トゥイーン−20を伴う1X PBSで、および脱イオン水でリンスした。生じたスポットを、蛍光顕微鏡(オリンパスBX60、東京、日本)で、100×倍率を使用してイメージ化した。図4に表されるように、(BBA−APMA:VP)−Iポリマー性マトリクスは、微粒子をポリマー性マトリクスからリンスして遊離させたときに、濃度が0.625mg/mL以下に低下するまで微粒子を固定化した(図4d)。図4aは5mg/mL(BBA−APMA:VP)−I中に固定化した微粒子を表し、図4bは2.5mg/mL(BBA−APMA:VP)−I中に固定化した微粒子を表し、図4cは1.25mg/mL(BBA−APMA:VP)−I中に固定化した微粒子を表し、図4dは0.625mg/mL(BBA−APMA:VP)−I中に固定化した微粒子を表し、図4eは0.313mg/mL(BBA−APMA:VP)−I中に固定化した微粒子を表す。
【0107】
実施例3
光ポリマーマトリクスを使用したヘパリンコートした微粒子の基材上での閉じ込め
表面または表面等を、ポリマー性材料と、薬剤または薬剤類にカップリングするか、またはそれらと一緒になった微粒子とを含有するスラリーでコートし、そして従って、薬剤、例えば生物学的に活性な薬剤を持つ表面を与えることができる。例えば、親水性ポリマー中でヘパリンコート微粒子を固定化することは、抗凝結活性を表面に与え、そのような微粒子−ポリマーコーティングを、血液適合性が要求される医療機器用途に適したものとすることができる。
【0108】
この例において、ストレプトアビジンコート微粒子を、ビオチニル化アルブミン−ヘパリン結合体にカップリングしてヘパリンコート微粒子を生成した。これらの微粒子をその後、光反応性ポリ(ビニルピロリドン)のヒドロゲル中に閉じ込め、そしてポリウレタン棒上にコートした。コートしたポリウレタン棒を医療機器に使用できた。該コートした棒は洗浄条件に対して安定であり、そして微粒子は顕微鏡分析を介しての検出、およびヘパリン上のスルホネート基を検出するトルイジン・ブルーO染料での染色による検出の双方で検出できた。
【0109】
5.23μmのストレプトアビジンコートシリカ微粒子(CS01N、バングス・ラボラトリーズ社製、フィッシャー、インディアナ)10mgを、900μLの1X PBSで洗浄し、遠心分離して該微粒子をペレット化し、そしてその後、1X PBS中の35μg/mLのビオチニル化アルブミン−ヘパリン(H−4016、シグマ社製、セントルイス、ミズーリ)の溶液中に再懸濁した。この反応混合物を、一晩、エンド−オーバー−エンド混合しながら温置し、その後該微粒子を2回、1mLのPBSで洗浄し、ペレット化し、そして脱イオン水中の50mg/mLの(BBA−APMA:VP)−I150μL中に再懸濁した。最終コーティング溶液は、ヘパリンコート微粒子66.7mg/mLと、(BBA−APMA:VP)−I50mg/mLとからなった。
【0110】
長さ2インチ、直径0.118インチのポリウレタン棒の小片(テコフレックスEG−60D、サーモディクス・ポリマー・プロダクツ社製、ウォーバーン、マサチューセッツ)をイソプロパノールリンスで清浄化し、脱イオン水で2回リンスし、そして空気乾燥した。該棒をその後、一方の端部を上記コーティング溶液中に凡そ1cmの深さで浸漬し、そしてその後、45℃で乾燥することによりコートした。該棒上のポリマー性マトリクスを2分間、各側で、実施例1で詳述したような紫外線光源(ライト・ウェルダーPC2、ダイマックス・エンジニアリング・アドヘシブ社製、トリントン、コネチカット)で照射し、そして脱イオン水でリンスした。上記コーティング手順をさらに3回行った。該ポリウレタン棒は、ヘパリンコート微粒子(BBA−APMA:VP)−Iコーティングの4つのコートを含んだ。最後の水リンス後、該棒を顕微鏡(オリンパスBX60、東京、日本)により50×および200×の倍率で、図1に表したように画像化した。
【0111】
前記ポリウレタン棒上のヘパリンコーティングをまた、トルイジンブルーO染料(19816−1、アルドリッチ社製、ミルウォーキー、ウィスコンシン)での染色により検査した。該棒を脱イオン水中の0.02%w/vのトルイジンブルー(TBO)の溶液中に試験管中で10分間、室温で置いた。TBO染色溶液を吸引により除去し、そして該棒を2回、脱イオン水2mLで洗浄した。該染色した棒を清浄な試験管に移し、そして50mMトリス緩衝生理食塩水中の8M尿素500μLを添加した。この溶液を、15分間室温で温置し、そして該TBO染料を該染色した棒から除去させた。得られた尿素溶液の吸光度を650nmで測定し、そして該棒により吸着された染料の量を示した。より吸光度が高い程、より多くの染料が該棒を染色し、そして結果としてより多くのヘパリンが該棒の表面にある。対照を同様に、未コートポリウレタン棒の清浄、ポリウレタン棒の50mg/mLの(BBA−APMA:VP)−I溶液のみでのコート、およびポリウレタン棒の上記微粒子−(BBA−APMA:VP)−I溶液であって、該微粒子がビオチニル化ヘパリン−アルブミンにカップリングされておらず、始めのストレプトアビジンコーティングのみを有する溶液でのコートを包含する上記の手法で染色した。結果を表4にまとめ、ヘパリンコート微粒子は顕著に染色され、一方、全ての対照コーティングは最小限にしか染色されなかったことを表す。この例は、ゲル閉じ込め技術を使用する単純なヘパリンコート表面を説明する。
【0112】
【表4】

【0113】
実施例4
光ポリマーマトリクス上での戴置による微粒子の閉じ込め
異なるポリマー性材料を基材上での微粒子の固定化のために使用した。最初に、異なるポリマーを基材上に戴置および処理して、マトリクスを形成した。これに次いで、微粒子を該マトリクスを介して固定化される基材上に戴置した。4種の異なる光反応性ポリマーを、9.9μm直径のシリカ微粒子を基材上に固定化するために使用した。(BBA−APMA:AA)−Iおよび(BBA−APMA:AA)−IIは、アクリルアミド(AA)とN−[3−(4−ベンゾイルベンズアミド)プロピル]メタクリルアミド(BBA−APMA)との、BBA−APMA:AAの比率が異なるコポリマーである。同様に、(BBA−APMA:VP)−Iおよび(BBA−APMA:VP)−IIは、ビニルピロリドン(VP)とN−[3−(4−ベンゾイルベンズアミド)プロピル]メタクリルアミド(BBA−APMA)との、BBA−APMA:VPの比率が異なるコポリマーである。加えて、対照材料、非ポリマー性光反応性化合物であるBBDQ(エチレン(4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)ジブロミド、1988年2月3日に発行され、本発明の譲受人により共有されるスワン等への米国特許第5714360号明細書に記載、その開示は疎の全てにおいて本明細書中に組み込まれる)を評価した。
【0114】
各光反応性化合物を脱イオン水中に2.5mg/mLの濃度で溶解した。各溶液を、25ゲージ使い捨て針(プレシジョン・グライド・ニードルス、ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー製、フランクリンレイクス、ニュージャージー)およびx−yプログラム可能ステージ(CAMM−3、ローランド・デジタル・グループ社製、アーバイン、カリフォルニア)で、実施例1でのようにシランで官能化したガラス顕微鏡スライド上、およびアクリル性スライド(カーディラック・プラスチクス、ミネアポリス、ミネソタ)上に印刷した。この印刷は、凡そ300〜400μm直径のスポットのパターンを基材上に形成した。
【0115】
パターン形成したスライドを2分間、実施例1で詳述したような紫外線で照射した。照射後、2mg/mLの9.9μm直径のシリカ微粒子(SS06N、バングス・ラボラトリーズ社製、フィッシャー、インディアナ)の水溶液500μLを、パターン化した範囲上に1分間置き、該微粒子と一緒にし、そしてポリマーマトリクス中に閉じ込めさせた。該スライドをその後、0.1%v/vトゥイーン−20水溶液でリンスして、全ての遊離微粒子を除去した。
【0116】
これに次いで、アレイを洗浄して、弱く結合した微粒子を除去した。該アレイを3回、0.1%トゥイーン−20を有する1X PBS(pH7.4)で洗浄し、そしてその後、脱イオン水でリンスした。この時点で、各々を蛍光顕微鏡(オリンパスBX60、東京、日本)で画像化して、様々な光反応性ポリマーマトリクス中での微粒子喪失を決定した。画像化後、該アレイを0.1Mトリスおよび50mMエタノールアミン(T/E)洗浄緩衝液の溶液中で1時間、50℃で温置し、次いで脱イオン水で2回リンスした。ミクロアレイをその後、4X SSC/0.1%SDSの溶液中で2時間、50℃で温置し、そして脱イオン水中でリンスした。これが、それぞれのポリマーを評価するために画像化を行う最終工程である。結果を表5にまとめる。
【0117】
【表5】

*試料は洗浄の間に他のスライドに接触した。
【0118】
実施例5
基材上の光ポリマーマトリクスを介して閉じ込められた微粒子の印刷コーティング
各々異なるポリマーと微粒子とを含有するスラリーを調製した。これらのスラリーをその後基材上に置き、そして微粒子が固定化されたマトリクスを形成するために処理した。異なるポリマー性材料を基材上に微粒子を固定化するために使用した。4種の異なる光反応性ポリマーを、9.9μm直径のシリカ微粒子を基材上に固定化するために使用した:(BBA−APMA:AA)−I、(BBA−APMA:AA)−5、(BBA−APMA:VP)−I、および(BBA−APMA:VP)−II。BBDQ(実施例4に記載される)非ポリマー性光反応性材料を同様にこの実施例において使用した。
【0119】
(BBA−APMA:AA)−I、(BBA−APMA:AA)−5、(BBA−APMA:VP)−I、(BBA−APMA:VP)−II、およびBBDQを脱イオン水中に2.5mg/mLの濃度で溶解した。光反応性化合物を含有する各溶液100μLを、脱イオン水で3回洗浄した9.9μm直径のシリカ微粒子(SS06N、バングス・ラボラトリーズ社製、フィッシャー、インディアナ)2mgのペレットに添加して混合物を生成した。各混合物の最終濃度は、光反応性化合物2.5mg/mLおよび微粒子20mg/mLであった。各混合物を、25ゲージ使い捨て針(プレシジョン・グライド・ニードルス、ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー製、フランクリンレイクス、ニュージャージー)およびx−yプログラム可能ステージ(CAMM−3、ローランド・デジタル・グループ製、アーバイン、カリフォルニア)で、実施例1で詳述したようにシランで官能化したガラス顕微鏡スライド上、およびアクリルスライド(カーディラック・プラスチクス、ミネアポリス、ミネソタ)上に印刷した。この印刷は、凡そ300〜400μm直径のスポットのパターンを基材上に形成した。
【0120】
コートした基材を2分間、実施例1で詳述したような紫外線で照射した。該コートした基材をその後、蛍光顕微鏡(オリンパスBX60、東京、日本)で画像化して、パターン化が成功したことを確証した。
【0121】
これに次いで、コートした基材を洗浄して、弱く結合した微粒子を全て除去した。該コートした基材を3回、0.1%トゥイーン−20を有する1X PBS(pH7.4)で洗浄し、脱イオン水でリンスした。この時点で、各々を再度前記蛍光顕微鏡で画像化して、様々な光反応性ポリマーマトリクス中での微粒子喪失を決定した。画像化後、該コートした基材をT/E洗浄緩衝液の溶液中で1時間、50℃で温置し、次いで脱イオン水で2回リンスした。該コートした基材をその後、4X SSC/0.1%SDSの溶液中で2時間、50℃で温置し、そして脱イオン水中でリンスした。洗浄工程の前後での微粒子の存在を表6にまとめる。
【0122】
【表6】

*試料は洗浄の間に他のスライドに接触した。
【0123】
実施例6
ポリマー性マトリクス中の磁気共鳴検出可能微粒子のコーティングを有する基材の調製
常磁性酸化鉄と一緒になった微粒子は、常磁性共鳴イメージング(MRI)技術により検出できる。従って、固定化された常磁性微粒子を含むコーティングは、例えば外科手順またはインビボ機器観察の間の体内での医療機器の画像化を可能にできる。酸化鉄で官能化した微粒子は、様々な寸法で例えば、バングス・ラボラトリーズ社(フィッシャー、インディアナ)から市販で入手可能であり、そしてこの用途に使用できる。
【0124】
1μm直径の常磁性ポリスチレン微粒子(CM01F、バングス・ラボラトリーズ社製、フィッシャー、インディアナ)を脱イオン水で3回洗浄し、そしてその後、新たな脱イオン水中に再懸濁した。該洗浄に次いで、微粒子10mgのペレットを、50mg/mLの(BBA−APMA:VP)−I250μL中に再懸濁して、基材をコートするための混合物を生成した。低密度ポリエチレンまたはポリウレタンのような材料からなる医療機器または医療機器基材をその後、光反応性ポリマー中の常磁性微粒子の混合物でディップコートできた。空気乾燥に次いで、コートした小片を実施例1で詳述したように紫外線で少なくとも2分間照射した。この照射は、該微粒子の周囲にそれを閉じ込めるマトリクスを形成し、並びにポリマー性材料を該医療機器基材に共有結合するために役立つことができた。
【0125】
前記常磁性コーティングは、直接MRIによるか、またはNMR分光計、例えば400MHzブルカーNMRを用いて前記機器の表面上の微粒子に一緒にさせた酸化鉄粒子のT1寿命を検査することにより評価できた。肯定的な信号が体液に対する暗いコントラストとして観察できた。
【0126】
実施例7
ポリマー性マトリクス中の磁気共鳴検出可能微粒子のコーティングを有する基材の製造のための他の方法
常磁性酸化鉄微粒子はまた使用者により調製でき、そして常磁性共鳴イメージング(MRI)技術により検出できる。
【0127】
常磁性酸化鉄微粒子は、濃水酸化アンモニウム水溶液での第1または第2塩化鉄塩の混合物の沈殿により生成できる。沈殿後、常磁性微粒子は透析により精製して、望ましくない塩および塩基を除去できる。該微粒子はその後、真空乾燥により濃縮できる。乾燥は該微粒子を僅かに一緒に凝集させることができ、それは磁性の喪失無しに平均寸法を増加する。0.1ないし5mg/mLの範囲内の濃度での常磁性酸化鉄微粒子を、光反応性ポリビニルピロリドン(BBA−APMA:VP)−Iまたは(BBA−APMA:VP)−IIの混合物中に取り込むことができる。該混合物は、(BBA−APMA:VP)−Iまたは(BBA−APMA:VP)−IIを、高濃度で、1ないし40mg/mLの範囲内で、実施例4に詳述されるようなBBDQのような水溶性光反応性架橋剤の所望の添加を伴って含むことができる。直径が例えば1ないし50nmの範囲内である、より小さな第2酸化鉄微粒子は、細孔寸法を減少させるために、光ポリマーマトリクスのさらなる架橋を必要とし得る。さらなる架橋剤を、反応性ポリマーと、第2酸化鉄粒子と、架橋剤との最終混合物中に0.1ないし5mg/mLの範囲内で添加できる。混合物コーティングは、コートする医療機器、または医療機器基材、例えば低密度ポリエチレンを該混合物に浸漬し、そして空気乾燥することにより適用できる。該コーティングは、少なくとも2分間、実施例1で詳述したように紫外線で照射できる。コートしたならば、該機器または機器基材を脱イオン水、および0.1%v/vトゥイーン−20を有するホスフェート緩衝生理食塩水でリンスできる。コートした小片は、常磁性共鳴イメージング信号について、核磁気共鳴分光計(NMR)でT1信号寿命を評価することにより、またはMRI装置で直接イメージングすることにより試験できる。
【0128】
実施例8
ポリマー性層中のデキサメタゾン−PLGA微粒子でコートした基材の製造およびその表面からのデキサメタゾンの放出
抗炎症剤を含有する崩壊性微粒子を調製し、そしてその後、基材表面上でポリマー性マトリクス中に固定化した。該微粒子コート基材をその後媒体中に置き、そして該抗炎症剤の該基材の表面からの放出をある期間にわたり定量した。
【0129】
デキサメタゾンを含むポリ(ラクチド−コ−グリコシド)(PLGA)微粒子を、オイル−イン−ウォータ乳液/溶液蒸発技術(ヴィチャート,B.およびローデワルド,P.(1993)J. Microencapsul.10:195)により調製した。該油相は、9:1ジクロロメタン:メタノール5mL中に溶解したデキサメタゾン(アルドリッチ社製、セントルイス、ミズーリ)20mgと、PLGA(50:50ラクチド:グリコリド、平均MW50000〜75000、アルドリッチ社製、セントルイス、ミズーリ)100mgとからなった。この油相を、0.2%(w/v)のポリビニルアルコール(PVA)水溶液(アルドリッチ社製、セントルイス、ミズーリ)100mLに、カフラモ機械式攪拌機(モデルRZR1、VWRサイエンティフィック社製、シカゴ、イリノイ)での激しい攪拌下で、30分間、攪拌設定番号4で滴下添加した。該攪拌をその後、最も低い設定に減じ、そして該有機溶媒を室温で16時間蒸発させた。形成したデキサメタゾン−PLGA微粒子を含有するPVA混合物を8000rpmで遠心分離して、該微粒子をペレット化した。該微粒子を2回脱イオン水で洗浄し、そして凍結乾燥した。微粒子74mgを回収した(74%収率)。該微粒子のデキサメタゾン含有を確認するために、微粒子2.5mgを9:1ジクロロメタン:メタノール5mL中に溶解し、そして吸光度を250nmで島津分光光度計(モデルUV−1601、コロンビア、メリーランド)で測定した。該微粒子は5.85%(w/w?)のデキサメタゾンを含有すると決定した。
【0130】
光反応性ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー(BBA−APMA:VP)−IIの2mg/mL水溶液400μL中の10mgのデキサメタゾン−PLGA微粒子のスラリーを調製し、そして該スラリーを1”×3”ポリスチレンシート(ゴア・プラスチクス社製、ジェーンスビル、ウィスコンシン)の凡そ半分の範囲上に流延した。該ポリスチレンシート上に形成したフィルムを1時間、室温で乾燥させ、次いでUV線(ダイマックス社製、ライト・ウェルダーPC2、トリントン、コネチカット)で4分間照射した。コートしたポリスチレンシートをその後、pH=7.4の10mMホスフェート緩衝生理食塩水20mL中に浸漬し、そして37℃で所定の時間の期間、サイエンスウェア・スインドライブ楕円振盪機(ペクアノック、NJ)上で振盪した。緩衝媒体を完全に除去し、そして該ポリスチレンシートを水でリンスした。緩衝媒体およびリンス水を収集し、集め、そして回転蒸発させた。フラスコ中の蒸発残渣を、ジクロロメタン:メタノール(90:10)混合液5mLで室温で抽出した。ジクロロメタン:メタノール抽出物のUV吸光度を250nmで測定して、該緩衝媒体中に浸されていた時間の間に放出されたデキサメタゾンの量を定量した。該ポリスチレンシートをその後、新たな緩衝媒体20mL中に浸漬し、そして該プロセスを3週間にわたる薬物放出の定量のために繰り返した。経時的にビーズから放出されたデキサメタゾン(DEX)の量を表7に表す。
【0131】
【表7】

【0132】
実施例9
ポリマー性層中のクロロヘキシジン−PLGA微粒子でコートした基材の製造およびその表面からのクロロヘキシジンの放出
抗微生物剤を含有する微粒子を調製し、そしてその後、基材表面上でポリマー性材料中に実施例8で記載したように固定化した。該微粒子コート基材をその後媒体中に置き、そして該抗微生物剤の該基材の表面からの放出をある期間にわたり定量した。
【0133】
3.95%のクロロヘキシジンジアセテートを含有するポリ(ラクチド−コ−グリコシド)(PLGA)微粒子を、実施例8に記載した同じオイル−イン−ウォータ/溶液蒸発技術に従い、僅かな変更を加え調製した。ジクロロメタン:メタノール(90:10)混合液10mL中にクロロヘキシジンジアセテート(ICNバイオメディカルズ社製、オーロラ、オハイオ)58mgと、PLGA300mgとを含有する油相を調製した。該油相を、20mMホスフェート緩衝生理食塩水中の0.2%(w/v)のポリビニルアルコール(PVA)100mLに、激しい攪拌下で滴下添加した。該有機溶媒を16時間、該混合物を室温で攪拌しつつ蒸発させた。形成したクロロヘキシジン−PLGA微粒子を含有する混合物を8000rpmで遠心分離して、該微粒子をペレット化した。該微粒子を複数回脱イオン水で洗浄し、そして凍結乾燥した。該微粒子の9:1ジクロロメタン:メタノール中での溶解および260nmでのクロロヘキシジンのUV吸光度の測定により決定した3.95%(w/w)のクロロヘキシジン含量を有する微粒子210mgを回収した。ライカ・モデルDMLM顕微鏡(ウェッツラー、ドイツ)を用いた光学顕微鏡観察は、直径24ないし52μmに範囲する粒度を示した。
【0134】
クロロヘキシジン含有粒子を伴う光反応性ポリマーフィルムを流延するプロセスおよび薬物放出の決定は、実施例8で記載したのと同様であった。1mg/mLの光反応性ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー(PV05)400μL中のクロロヘキシジン含有PLGA粒子13.8mgのスラリーを、1”×3”ポリスチレンシート上に流延した。該微粒子コーティングを1時間、室温で乾燥させ、そして4分間、実施例8でのように紫外線で照射することにより、その場に固定した。該コーティングからのクロロヘキシジン放出を、260nmでの紫外吸光度により、実施例8と同様な手法で観察した。時間にわたりビーズから放出されたクロロヘキシジンジアセテートの量を表8に示す。
【0135】
【表8】

【0136】
実施例10
ポリマー性層中のクロロヘキシジン−キトサン微粒子でコートした基材の調製およびその表面からのクロロヘキシジンの放出
抗微生物剤を含有する崩壊性キトサン微粒子を調製し、そしてその後、基材表面上でポリマー性材料中に実施例8で記載したように固定化した。該微粒子コート基材をその後媒体中に置き、そして該抗微生物剤の該基材の表面からの放出をある期間にわたり定量した。
【0137】
クロロヘキシジンジアセテート含有キトサン粒子を、噴霧乾燥手順により調製した。この実験では、クロロヘキシジンジアセテート(ICNバイオメディカルズ社製、オーロラ、オハイオ)1.0mgを0.03N塩酸中のキトサン溶液(0.5%w/v)(アルドリッチ社製、セントルイス、ミズーリ)1リットル中に溶解し、そしてその後、ラブプラント・モデルSD−05噴霧乾燥機(フッダースフィールド、W.ヨークシャー、イギリス国)中で噴霧乾燥した。クロロヘキシジン含量は20%(w/w)で計算した。
【0138】
光反応性ポリマーフィルムをクロロヘキシジン含有粒子で流延するプロセスおよび薬物放出の速度決定は、実施例8で記載したのと同様であった。クロロヘキシジン含有キトサン微粒子11mgを、1.4mg/mLの光反応性ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー(BBA−APMA:VP)−II600μL中に分散し、そして1”×3”ポリスチレンシート上に流延した。コートしたポリスチレンを4分間、紫外線ランプ(ダイマックス社製、ライト・ウェルダーPC2、トリントン、コネチカット)で照射して、微粒子をその場に固定した。該コーティングからの薬物放出を、PBS緩衝溶液20mLのアリコート中への抽出により、実施例8でのように観察した。クロロヘキシジンジアセテートの260nmでの吸光度を定量のために使用した。経時的にビーズから放出されたクロロヘキシジンジアセテートの量を表9に示す。
【0139】
【表9】

【0140】
実施例11
ポリマー性層中のクロロヘキシジン−ガラス微粒子でコートした基材の製造およびその表面からのクロロヘキシジンの放出
抗微生物剤を含有する非崩壊性多孔質ガラス微小球を製造し、そしてその後、基材表面上でポリマー性材料中に実施例8で記載したように固定化した。該微粒子コート基材をその後媒体中に置き、そして該抗微生物剤の該基材の表面からの放出をある期間にわたり定量した。
【0141】
2ないし25μmの範囲内の直径、600nmの平均細孔寸法、および0.75cc/gの平均細孔体積を有するシリカビーズの混合物(バングス・ラボラトリーズ社製、フィッシャー、インディアナ、アメリカ国)を水で繰り返し洗浄し、そしてエタノール中に分散した。エタノール中に分散したビーズ300mgを5mLの無水エタノール中のクロロヘキシジンジアセテート108.5mgと混合し、そして16時間室温で攪拌した。該エタノールを蒸発させ、そして該粒子を室温で乾燥した。クロロヘキシジン含浸ガラスビーズ、30mgを、pH7.4の0.1Mホスフェート緩衝生理食塩水(PBS)中で調整した1.33mg/mLの光反応性コポリマー(BBA−APMA:VP)−II300μLと混合した。ビーズ−ポリマー混合物をシラン化ガラススライド(実施例1で記載したように製造)上に流延し、1時間室温で乾燥し、そしてその後、UV光源(ダイマックス社製、ライト・ウェルダーPC2)を使用して4分間硬化した。2インチ長の中圧(200ワット/インチ)鉄ドープ水銀蒸気バルブからのUV線の強度は、該バルブから20cmの距離で1.4ワット/cm2であった。コートしたガラススライドをその後、pH=7.4の10mMホスフェート緩衝生理食塩水20mL中に浸漬し、そして37℃で所定の期間振盪した。緩衝媒体を完全に除去し、そして該ガラススライドを水でリンスした。該緩衝媒体およびリンス水を収集し、集め、そして回転蒸発させた。フラスコ中の蒸発残渣を、ジクロロメタン:メタノール(90:10)混合液5mLで室温で抽出した。ジクロロメタン:メタノール抽出物のUV吸光度を260nmで測定し、該緩衝媒体中に浸されていた時間の間に放出されたクロロヘキシジンの量を定量した。該ガラススライドを新たな緩衝媒体20mL中に浸漬し、そしてクロロヘキシジンの放出を経時的に、さらなる放出が検出できなくなるまで定量した。経時的にビーズから放出されたクロロヘキシジンジアセテートの量を表10に示す。
【0142】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)表面と、
b)ポリマー性材料と1種以上の反応性基とを含むマトリクスであって、該マトリクスは該表面に該反応性基により共有結合し、また該ポリマー性材料はポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せを含むマトリクスと、
c)該ポリマー性材料のマトリクス中に固定化された多数の微粒子
を含む基材。
【請求項2】
前記微粒子は5nmないし100μmの範囲内の寸法を有する、請求項1記載の基材。
【請求項3】
前記微粒子は100nmないし20μmの範囲内の寸法を有する、請求項2記載の基材。
【請求項4】
前記微粒子は官能化剤を含む、請求項1記載の基材。
【請求項5】
前記官能化剤は生物学的に活性な薬剤である、請求項4記載の基材。
【請求項6】
前記官能化剤は、磁気共鳴、超音波イメージング、同位元素イメージング、またはフォトイメージングにより検出可能な材料である、請求項4記載の基材。
【請求項7】
前記微粒子は細孔を有する、請求項1記載の基材。
【請求項8】
前記細孔は寸法において5nmないし20nmの範囲である、請求項7記載の基材。
【請求項9】
前記微粒子は崩壊性である、請求項1記載の基材。
【請求項10】
前記崩壊性微粒子は、デキストラン、ポリ乳酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリホスファジン、ポリメチリデンマロネート、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルケン無水物、ポリペプチド、ポリ酸無水物、およびポリエステルからなる群より選択される材料を含む、請求項9記載の基材。
【請求項11】
前記反応性基は光反応性基である、請求項1記載の基材。
【請求項12】
前記光反応性基は、アリールケトン、アリールアジド、アシルアジド、スルホニルアジド、ホスホリルアジド、ジアゾアルカン、ジアゾケトン、ジアゾアセテート、およびケテンからなる群より選択される、請求項11記載の基材。
【請求項13】
前記ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せは、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポリ(HEMA)、それらのコポリマー、およびそれらの組み合せからなる群より選択される、請求項1記載の基材。
【請求項14】
前記微粒子は前記マトリクス中に閉じ込めにより固定化され、該微粒子の閉じ込めは、該微粒子と前記ポリマー性材料との間のイオン結合または共有結合の形成に依存しない、請求項1記載の基材。
【請求項15】
前記マトリクスはある厚さを有し、また前記微粒子はある直径を有し、そしてその層の厚さは該微粒子の直径より大きい、請求項1記載の基材。
【請求項16】
前記微粒子より小さい多数の化合物が前記ポリマー性材料のマトリクス中に拡散可能である、請求項1記載の基材。
【請求項17】
前記表面は医療機器の表面をなす、請求項1記載の基材。
【請求項18】
前記マトリクスはポリマー架橋性化合物を含む、請求項1記載の基材。
【請求項19】
前記ポリマー架橋性化合物は少なくとも1種の光活性化可能な基を含む、請求項18記載の基材。
【請求項20】
基材の表面をポリマー材料のマトリクス中に固定化された多数の微粒子でコートするためのキットであって、該キットは、
a)少なくとも1組の微粒子と、
b)ポリマー性材料と1種以上の反応性基とを含むマトリクス形成材料であって、該ポリマー性材料はポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せを含み、そして該マトリクス形成性材料は、該基材の表面に1種以上の反応性基を介して共有結合され、そして該微粒子を該基材の表面上に固定化することができるように形成および配置されている、マトリクス形成材料と、
c)コートされた表面を製造するための説明書
を含む、キット。
【請求項21】
前記少なくとも1種の反応性基は光反応性基である、請求項20記載のキット。
【請求項22】
前記少なくとも1組の微粒子は官能化剤に結合されるように形成および配置されている、請求項20記載のキット。
【請求項23】
前記少なくとも1組の微粒子は官能化剤を含む、請求項20記載のキット。
【請求項24】
前記官能化剤は生物学的に活性な薬剤である、請求項23記載のキット。
【請求項25】
前記官能化剤は、磁気共鳴、超音波イメージング、同位元素イメージング、またはフォトイメージングにより検出可能な材料である、請求項20記載のキット。
【請求項26】
前記マトリクス形成性材料はポリマー架橋性化合物を含む、請求項20記載のキット。
【請求項27】
基材の表面をコートする方法であって、該方法は、
a)i)多数の微粒子とii)ポリマー性材料と少なくとも1種の反応性基とを含むマトリクス形成性材料とを含む混合物であって、該ポリマー性材料は、ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せからなる混合物を調製する工程と、
b)該混合物を該基材の表面上に載置する工程と、
c)該混合物を処理して該反応性基を活性化させ、それによりマトリクスを形成し、該ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せが該基材の表面に結合され、そして該微粒子が該基材上のマトリクス内に固定化される工程
からなる、方法。
【請求項28】
前記少なくとも1種の反応性基は光反応性基であり、そして前記処理の工程において、該光反応性基が電磁エネルギーにより活性化される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記調製の工程において、前記ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せは、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポリ(HEMA)、それらのコポリマー、およびそれらの組み合せからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記処理の工程において、前記微粒子は前記マトリクス中に閉じ込められ、該微粒子の閉じ込めは、該微粒子と前記ポリマー性材料との間のイオン結合または共有結合の形成に依存しない、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記調製の工程において、前記多数の微粒子は少なくとも2組の微粒子を含み、第1組の微粒子は第1の官能化剤を含み、また第2組の微粒子は第2の官能化剤を含み、そして該第1の官能化剤および第2の官能化剤は、特定の環境では異なって相互に不適合性である、請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記第1の官能化剤は前記第2の官能化剤より疎水性であり、また第1および第2の官能化剤の双方とも生物学的に活性な薬剤である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記調製の工程において、前記多数の微粒子は少なくとも2組の微粒子を含み、第1組の微粒子は第1の官能化剤を含み、また第2組の微粒子は第2の官能化剤を含み、そして該第1の官能化剤および第2の官能化剤は、異なる比率で該第1組の微粒子および該第2組の微粒子からそれぞれ放出される、請求項27記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を対象に投与する方法であって、
a)表面と該表面に共有結合したマトリクスとを有する機器であって、該マトリクスはポリマー性材料と少なくとも1種の反応性基とを含み、該マトリクスは該表面に該少なくとも1種の反応性基により共有結合され、該ポリマー性材料は、ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せを含み、多数の微粒子が該マトリクス中に固定化され、そして該微粒子は少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を含む機器を準備する工程と、
b)該機器を対象中に配置するか、または該機器を対象に配送し、該生物学的に活性な薬剤が該対象に利用可能となる工程
からなる、方法。
【請求項35】
前記微粒子は崩壊性であり、そして前記生物学的に活性な薬剤を取り込んでいる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記配置の工程において、前記生物学的に活性な薬剤は、前記微粒子の崩壊により、前記対象に利用可能となる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記準備の工程において、前記多数の微粒子は少なくとも2組の微粒子を含み、第1組の微粒子は第1の官能化剤を含み、また第2組の微粒子は第2の官能化剤を含み、そして該第1の官能化剤および第2の官能化剤は、特定の環境では異なって相互に不適合性である、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記準備の工程において、前記多数の微粒子は少なくとも2組の微粒子を含み、第1組の微粒子は第1の官能化剤を含み、また第2組の微粒子は第2の官能化剤を含み、そして該第1の官能化剤および第2の官能化剤は、異なる比率で該第1組の微粒子および該第2組の微粒子からそれぞれ放出される、請求項34記載の方法。
【請求項39】
機器を検出する方法であって、
a)表面と該表面に共有結合したマトリクスとを有する機器であって、該マトリクスはポリマー性材料と少なくとも1種の反応性基とを含み、該マトリクスは該表面に該少なくとも1種の反応性基により共有結合され、該ポリマー性材料は、ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せを含み、そして多数の微粒子が該マトリクス中に固定化され、該微粒子は磁気共鳴、超音波イメージング、同位元素イメージング、フォトイメージング、またはそれらの組み合わせにより検出可能である機器を準備する工程と、
b)該機器を対象または物品の中に配置する工程と、
c)該機器を検出する工程
からなる、方法。
【請求項40】
前記微粒子は常磁性材料を含み、そして前記検出の工程は磁気共鳴イメージングを利用することを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記微粒子は気相化学物質を含み、そして前記検出の工程は超音波イメージングを利用することを含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記微粒子は放射線放出を有する同位元素材料を含み、そして前記検出の工程は該放射線放出を検出することを含む、請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記機器は医療機器の少なくとも一部である、請求項39記載の方法。
【請求項44】
前記多数の微粒子は少なくとも2組の微粒子を含み、そして各組は異なる検出可能特性を有する、請求項39記載の方法。
【請求項45】
a)表面と、
b)ポリマー性材料と反応性基とを含むマトリクスであって、該ポリマー性材料はポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合せを含み、そして該反応性基は該マトリクスを該表面に共有結合するマトリクスと、
c)該マトリクス中に固定化され、細胞相互作用のためのトポグラフィを与えるように配置された多数の微粒子
を含む細胞反応性表面。
【請求項46】
前記ポリマー性材料のマトリクス中に固定化された多数の微粒子は、前記表面への細胞の付着を促進または阻害する、請求項45記載の細胞反応性表面。
【請求項47】
前記ポリマー性材料のマトリクス中に固定化された多数の微粒子は、細胞の付着および成長を可能にする、請求項45記載の細胞反応性表面。
【請求項48】
前記微粒子は細胞表面タンパク質と反応性の分子にカップリングされている、請求項45記載の細胞反応性表面。
【請求項49】
前記表面は医療機器の一部をなす、請求項45記載の細胞活性表面。
【請求項50】
前記表面は細胞培養機器の一部をなす、請求項45記載の細胞活性表面。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−115601(P2011−115601A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−24327(P2011−24327)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2003−533911(P2003−533911)の分割
【原出願日】平成14年9月30日(2002.9.30)
【出願人】(503024930)サーモディクス,インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】