説明

粒子挙動解析装置、粒子挙動解析方法、及びコンピュータプログラム

【課題】 DEMを用いて粒子の挙動を解析するに際し、当該粒子が接触する構造物の形状を、計算負荷を増大させることなく正確に設定できるようにする。
【解決手段】 球状の壁用粒子(基準壁用粒子202、基準間壁用粒子203)を用いて構造物(壁)を表現する。壁用粒子の半径rwと表面粗さζとを設定することにより、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離Pを決定し、決定した距離Pで壁用粒子を設定することにより、壁の表面の凹凸を表現する。また、これらの壁用粒子に対して、ヤング率、ポアソン比、摩擦係数、速度等、DEMによる粒子(解析用粒子)の挙動を解析するために必要なパラメータを属性情報として設定する。このような壁用粒子を壁として取扱い、DEMによる粒子(解析用粒子)の挙動の解析の際に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子挙動解析装置、粒子挙動解析方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、DEM(Discrete Element Method;離散要素法)を用いて粒子の挙動を解析するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、DEMを用いて、各種の構造物の内側や外側を流れる粒子の挙動を解析することが行われている(特許文献1、2を参照)。このような解析を行う場合、構造物をモデル化する必要がある。DEMにおいて構造物をモデル化するための従来の手法として、構造物の表面の形状を数式で与え、当該数式で定められる構造物の表面と解析対象の粒子との接触判定を行う手法がある(非特許文献1を参照)。また、構造物の表面の形状をポリゴンで表現し、当該ポリゴンを構成する各微小三角形の平面と解析対象の粒子との接触判定を行う手法がある(非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−262453号公報
【特許文献2】特開2001−139116号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yasunobu Kaneko、Takeo shiojima、Masayuki Horio,「Powder Technology」,2000年,第108巻,p.55−64
【非特許文献2】M.Kremmer、J.F.favier,「INTERNATIONAL JOURNAL FOR NUMERICAL METHODS IN ENGINEERING」2001年,51巻,p.1407−1421
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高炉等のように産業レベルで使用される構造物の表面は、複雑な形状のものが多いため、このような構造物の表面の形状を単純な数式で表現することは困難である。また、多くの場合分けを行って、構造物の表面の形状を数式で表現することは可能である。しかしながら、このような数式をDEMに適用すると、プログラムが煩雑化するため、計算速度が大幅に遅くなる。
【0006】
また、構造物の表面に形成されている突起物や構造物の摩耗をポリゴンで表現しようとすると、非常に細かくポリゴンを作成する必要がある。さらに、解析対象の粒子との接触位置にある微小三角形を特定する必要がある。これらのため、ポリゴンを構造物としてDEMに適用すると、計算負荷が増大する。また、ポリゴンでエッジ(鋭部)を作成すると、解析対象の粒子が、ポリゴンの先端部に接触したり、ポリゴンの裏面へ回り込んだりする等、取扱いに不具合が生じる虞がある。よって、エッジにおける取扱いが必要になるため、プログラム中で多くの場合分けをする必要があり、計算負荷が増大する。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、DEMを用いて粒子の挙動を解析するに際し、当該粒子が接触する構造物の形状を、計算負荷を増大させることなく正確に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粒子挙動解析装置は、構造物が存在している領域にある複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する粒子挙動解析装置であって、前記構造物の表面の形状の概略を示す壁表面情報を取得する壁表面情報取得手段と、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面よりも内側に配置され、且つ、当該構造物の表面と接するように配置される球形状の壁用粒子の大きさを示す壁用粒子大きさ情報を取得する壁用粒子大きさ情報取得手段と、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値を示す表面粗さ情報を取得する表面粗さ情報取得手段と、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値が、前記表面粗さ情報で示される凹み量の最大値となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの壁用粒子を設定する壁用粒子設定手段と、前記複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する解析用粒子挙動解析手段と、を有し、前記解析用粒子挙動解析手段は、前記解析用粒子が前記壁用粒子設定手段により設定された前記壁用粒子と接触したと判定すると、前記壁用粒子から前記解析用粒子が受ける力を当該解析用粒子に作用させて、当該解析用粒子を動かすようにすることを特徴とする。
【0009】
本発明の粒子挙動解析方法は、構造物が存在している領域にある複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する粒子挙動解析方法であって、前記構造物の表面の形状の概略を示す壁表面情報を取得する壁表面情報取得工程と、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面よりも内側に配置され、且つ、当該構造物の表面と接するように配置される球形状の壁用粒子の大きさを示す壁用粒子大きさ情報を取得する壁用粒子大きさ情報取得工程と、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値を示す表面粗さ情報を取得する表面粗さ情報取得工程と、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値が、前記表面粗さ情報で示される凹み量の最大値となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの壁用粒子を設定する壁用粒子設定工程と、前記複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する解析用粒子挙動解析工程と、を有し、前記解析用粒子挙動解析工程は、前記解析用粒子が前記壁用粒子設定工程により設定された前記壁用粒子と接触したと判定すると、前記壁用粒子から前記解析用粒子が受ける力を当該解析用粒子に作用させて、当該解析用粒子を動かすようにすることを特徴とする。
【0010】
本発明のコンピュータプログラムは、構造物が存在している領域にある複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記構造物の表面の形状の概略を示す壁表面情報を取得する壁表面情報取得工程と、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面よりも内側に配置され、且つ、当該構造物の表面と接するように配置される球形状の壁用粒子の大きさを示す壁用粒子大きさ情報を取得する壁用粒子大きさ情報取得工程と、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値を示す表面粗さ情報を取得する表面粗さ情報取得工程と、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値が、前記表面粗さ情報で示される凹み量の最大値となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの壁用粒子を設定する壁用粒子設定工程と、前記複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する解析用粒子挙動解析工程と、をコンピュータに実行させ、前記解析用粒子挙動解析工程は、前記解析用粒子が前記壁用粒子設定工程により設定された前記壁用粒子と接触したと判定すると、前記壁用粒子から前記解析用粒子が受ける力を当該解析用粒子に作用させて、当該解析用粒子を動かすようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構造物が存在している領域にある複数の解析用粒子の挙動を、DEMを用いて解析するに際し、球形状の壁用粒子を用いて構造物の表面を表現するようにした。したがって、DEMを用いて粒子の挙動を解析するに際し、当該粒子が接触する構造物の形状を、計算負荷を増大させることなく正確に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示し、粒子挙動解析装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、構造物を表現する方法の一例を概念的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離と、表面粗さの一例を概念的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、壁用粒子によって表された旋回シュートの一部分の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、相互に接触している2つの粒子(解析用粒子、壁用粒子)の様子の一例と、解析用粒子の挙動の一例を概念的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、壁用粒子を設定する際の粒子挙動解析装置100の処理の一例を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態を示し、解析用粒子の挙動を解析する際の粒子挙動解析装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態を示し、粒子の落下位置と、旋回シュートの表面粗度との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、粒子挙動解析装置100の機能的な構成の一例を示す図である。また、図2は、構造物を表現する方法の一例を概念的に示す図である。
【0014】
粒子挙動解析装置100は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、各種インターフェース、及びディスプレイ等を備えた情報処理装置(パーソナルコンピュータ)を用いることにより実現できる。以下に、粒子挙動解析装置100が備える機能を詳細に説明する。尚、本実施形態では、高炉のベルレス式炉頂装入装置用の旋回シュートを構造物として表現する場合を例に挙げて説明する。よって、挙動を解析する対象となる粒子(以下、この粒子を「解析用粒子」と称する)は、焼結鉱やコークスとなる。ただし、構造物や解析用粒子は、このようなものに限定されるわけではないということは勿論である。また、以下の説明では、「構造物(本実施形態では旋回シュート)」を必要に応じて「壁」と称する。
【0015】
(壁表面情報取得部101)
壁表面情報取得部101は、壁の表面の概略形状を示す壁表面情報を、例えばユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて取得する。このとき、壁表面情報取得部101は、ユーザが、壁の表面の座標そのものを入力すると、その座標を壁表面情報として取得してもよいし、CAD等で作成された壁表面情報(壁の表面を示す座標)をインポートしてもよい。尚、本実施形態では、座標の原点は、予め定められた一点であるとする(すなわち、以降の説明において「座標」と称した場合、当該「座標」の原点は、全て同一の点であるとする)。図2(a)は、壁の表面201の形状の一例を概念的に示す図である。図2(a)において、壁表面情報で示される壁の表面201の形状は、壁の表面の形状の概略を示すものであり、壁の表面の形状を忠実に示すものではない。
壁表面情報取得部101は、例えば、CPUが、各種のインターフェースを介して入力された壁表面情報を、RAM等に記憶することにより実現される。尚、壁表面情報を取得することができれば、壁表面情報を取得する方法は、前述したものに限定されない。
【0016】
(壁用粒子半径情報取得部102)
本実施形態では、壁表面情報で示される壁の表面201の形状に合わせて複数の球形状の粒子を配置することによって壁を表現するようにしている。以下の説明では、この「球形状の粒子」を必要に応じて「壁用粒子」と称する。
壁用粒子半径情報取得部102は、壁用粒子の大きさの情報の一例として、壁用粒子の半径rw[m]を示す壁用粒子半径情報を、例えばユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて取得する。壁用粒子の半径rwを、例えば、壁の厚み(本実施形態では、旋回シュートの肉厚)の半分に対応する大きさにすることができる。
壁用粒子半径情報取得部102は、例えば、CPUが、各種のインターフェースを介して入力された壁用粒子半径情報を、RAM等に記憶することにより実現される。詳細は後述するが、本実施形態では、同じ半径の壁用粒子を配置するようにしている。
【0017】
(基準壁用粒子設定部103)
基準壁用粒子設定部103は、壁の内側に配置され、且つ、壁の表面201と接するように、壁の表面201の直線と近似できる領域の両端に、壁用粒子半径情報取得部102で取得された半径rwを有する壁用粒子を基準となる壁用粒子として設定する。本実施形態では、基準壁用粒子設定部103は、この基準となる壁用粒子の中心の座標を設定する。尚、以下の説明では、この「基準となる壁用粒子」を必要に応じて「基準壁用粒子」と称する。図2(b)は、基準壁用粒子202a〜202hが配置された様子の一例を概念的に示す図である。
【0018】
基準壁用粒子設定部103は、例えば、以下のようにして実現される。すなわち、まず、CPUは、壁表面情報と壁用粒子半径情報とをRAM等から読み出し、壁表面情報に基づいて、壁の表面201の直線と近似できる領域を識別する。そして、CPUは、識別した領域の両端内側において、壁の表面201に接するように、壁用粒子半径情報で示される半径の球を、基準壁用粒子202として配置したときの、当該基準壁用粒子202の位置(本実施形態では、基準壁用粒子202の中心の座標)を決定し、決定した位置を示す座標をRAM等に記憶する。
【0019】
尚、本実施形態では、壁の表面201の直線と近似できる領域の両端内側に基準壁用粒子202を配置するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、壁の表面201の直線と近似できる領域であるか否かに関わらず、摩擦抵抗が同じと近似できる領域の両端内側に基準壁用粒子202を配置するようにしてもよい。また、本実施形態では、基準壁用粒子202を自動的に設定するようにしたが、例えば、ユーザがユーザインターフェースを操作して基準壁用粒子202の位置を指定すると、その指定された位置を示す座標を基準壁用粒子202の位置として設定するようにしてもよい。
【0020】
(表面粗さ情報取得部104)
表面粗さ情報取得部104は、基準壁用粒子202を両端とする領域毎に、壁表面情報で示される壁の表面201からの凹み量の最大値(図3に示す表面粗さζ[m])を、壁の表面粗さを示す表面粗さ情報として、例えばユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて取得する。
表面粗さ情報取得部104は、例えば、CPUが、各種のインターフェースを介して入力された表面粗さ情報を、RAM等に記憶することにより実現される。
尚、本実施形態では、表面粗さ情報をユーザが手動で指定するようにした。しかしながら、表面粗さ情報を自動的に設定するようにしてもよい。このようにする場合には、例えば、壁(本実施形態では、旋回シュート)の表面の摩耗の状態を反映した物理量と、表面粗さ情報とを相互に関連付けて記憶したテーブルを作成しておき、実測から得られた当該物理量と壁の位置を示す情報とを入力すると、当該物理量に関連付けられて当該テーブルに記憶された表面粗さ情報を当該位置における表面粗さ情報として設定することができる。また、基準壁用粒子202を両端とする領域(壁の表面201の直線と近似できる領域)毎に表面粗さ情報を設定しなくてもよい。例えば、摩擦抵抗が同じと近似できる領域毎に表面粗さ情報を設定することができる。
【0021】
(壁用粒子間距離算出部105)
壁用粒子間距離算出部105は、壁用粒子半径情報取得部102で取得された壁用粒子半径情報(壁用粒子の半径rw)と、表面粗さ情報取得部104で取得された表面粗さ情報(表面粗さζ)とに基づき、以下の(1)式により、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離P[m]を算出する。
【0022】
【数1】

【0023】
図3は、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離Pと、表面粗さζの一例を概念的に示す図である。
壁用粒子間距離算出部105は、例えば、CPUが、RAM等から、壁用粒子半径情報(壁用粒子の半径rw)と、表面粗さ情報(表面粗さζ)とを読み出して(1)式の計算を行って、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離Pを算出し、算出した距離PをRAM等に記憶することにより実現できる。
尚、本実施形態では、壁用粒子の半径rwを一定にすると共に、壁の表面201の直線と近似できる領域毎に表面粗さζを設定するようにしたので、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離Pは、表面粗さζを設定した領域毎(壁の表面201の直線と近似できる領域毎)に算出される。そこで、本実施形態では、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離Pを、表面粗さζを設定した領域(壁の表面201の直線と近似できる領域)と相互に関連付けて記憶する。
【0024】
(基準間壁用粒子設定部106)
基準間壁用粒子設定部106は、相互に隣接する壁用粒子間の中心間の距離が壁用粒子間距離算出部105で算出された距離Pだけ離れ、且つ、壁の内側に配置され、且つ、壁の表面201と接するように、基準壁用粒子設定部103で設定された基準壁用粒子202の間に、壁用粒子半径情報取得部102で取得された半径rwを有する壁用粒子を、基準壁用粒子202の間の壁用粒子として設定する。本実施形態では、基準間壁用粒子設定部106は、この基準壁用粒子202の間の壁用粒子の中心の座標を設定する。尚、以下の説明では、この「基準壁用粒子202の間の壁用粒子」を必要に応じて「基準間壁用粒子」と称する。図2(c)は、基準間壁用粒子203a〜203oが配置された様子の一例を概念的に示す図である。図2(c)に示すように、本実施形態では、基準壁用粒子202と基準間壁用粒子203とにより壁用粒子が構成される。図4は、壁用粒子によって表された旋回シュートの一部分の一例を示す図である。図4に示す例では、極部的な陥没部401を壁用粒子によって表現している。
【0025】
基準間壁用粒子設定部106は、例えば、以下のようにして実現される。すなわち、まず、CPUは、RAM等から、壁の表面201の直線と近似できる領域の両端に設定されている2つの基準壁用粒子202の位置(本実施形態では、基準壁用粒子202の中心の座標)と、当該2つの基準壁用粒子202が存在する領域に関連付けられている距離Pと、壁用粒子半径情報と、壁表面情報とを読み出す。そして、CPUは、壁の内側において壁の表面201に接し、且つ、相互に隣接する壁用粒子間の中心の間の距離が距離Pとなるように、当該2つの基準壁用粒子202の間に、壁用粒子半径情報で示される半径rwの球を、基準間壁用粒子203として配置したときの、当該基準間壁用粒子203の位置(本実施形態では、基準間壁用粒子203の中心の座標)を決定し、決定した位置を示す座標をRAM等に記憶する。
【0026】
(属性情報設定部107)
属性情報設定部107は、基準壁用粒子設定部103で設定された基準壁用粒子202と、基準間壁用粒子設定部106で設定された基準間壁用粒子203とのそれぞれについて、壁(本実施形態では旋回シュート)の属性情報を、例えばユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて取得する。属性情報設定部107が設定する属性情報は、例えば、ヤング率、ポアソン比、摩擦係数、及び速度である。ここで、速度は、壁(本実施形態では旋回シュート)が動く場合に設定される。
属性情報設定部107は、例えば、CPUが、各種のインターフェースを介して入力された壁用粒子半径情報を、RAM等に記憶することにより実現される。尚、属性情報設定部107は、壁用粒子の1つ1つに対して、属性情報を個別に設定するようにしても、同一の物性を有すると近似できる領域(例えば、摩擦抵抗が同じと近似できる領域)に属する複数の壁用粒子に対して、属性情報を一括して設定するようにしてもよい。
【0027】
(解析用粒子挙動解析部108)
解析用粒子挙動解析部108は、球状の解析用粒子の挙動をDEMにより解析する。前述したように、本実施形態では、解析用粒子は、焼結鉱やコークスとなる。解析用粒子挙動解析部108は、例えば、ユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて設定された、解析用粒子の情報に基づいて、各解析用粒子を所望の位置に配置する。そして、解析用粒子挙動解析部108は、各解析用粒子が他の解析用粒子や壁用粒子と接触しているか否かを判定する。
解析用粒子が他の解析用粒子と接触している場合、解析用粒子挙動解析部108は、法線方向及びせん断方向の反発力を求めて並進の運動方程式を解くことと、重心周りの力のモーメントを求めて回転の運動方程式を解くことと、を各解析用粒子のそれぞれについて行い、その結果に基づいて各解析用粒子を移動させる。一方、解析用粒子が壁用粒子と接触している場合、解析用粒子挙動解析部108は、法線方向及びせん断方向の反発力を求めて並進の運動方程式を解くことと、重心周りの力のモーメントを求めて回転の運動方程式を解くことと、を解析用粒子についてのみ行い、壁用粒子については行わない。尚、壁用粒子についても、これらの運動方程式を解いてもよいが、壁用粒子については、当該運動方程式を解いた結果(すなわち力)を作用させないようにし、解析用粒子から受ける力によって動かないようにする。
尚、本実施形態では、壁用粒子については、解析用粒子から受ける力によって動かないようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、壁用粒子が解析用粒子からの力によって微小な振幅で振動するようにしてもよい。
【0028】
解析用粒子挙動解析部108は、このような接触判定処理と各解析用粒子の移動処理を所定の時間隔毎に行う。そして、その結果から各解析用粒子の解析時間における挙動を得る。尚、この解析時間において解析用粒子間に発生している力のバランスを崩す条件を与えることにより、解析用粒子が動くことになる。
【0029】
具体的に、解析用粒子挙動解析部108は、例えば、以下の(2)式により、解析用粒子i、jの接触領域における法線方向の反発力Fn,ijを求め、以下の(3)式により、解析用粒子i、jの接触領域におけるせん断方向の反発力Ft,ijを求め、以下の(4)式の並進の運動方程式を解き、以下の(5)式により回転の運動方程式を解く。
【0030】
【数2】

【0031】
図5は、相互に接触している2つの粒子(解析用粒子、壁用粒子)501、502の様子の一例(図5(a))と、解析用粒子503の挙動の一例(図5(b))を概念的に示す図である。図5を参照しながら、(2)式から(5)式のパラメータを説明する。
(2)式において、Knは、法線方向のばね定数であり、例えば図5(a)の距離Hやδnに応じて設定することができる。ただし、Knは、予め設定された一定値にすることもできる。Δun,ijは、2つの粒子i、j間の重心の法線方向における相対的な並進変位である。ηnは、法線方向の粘性定数であり、予め設定されるものである。nijは、法線方向の単位ベクトルである。Δtは、所定の時間隔であり、予め設定されるものである。
【0032】
(3)式において、min[A,B]は、AとBのうち小さい方を採用することを意味する。μは、摩擦係数であり、予め設定された値にすることができる。ただし、μは、状態等に応じて異ならせることもできる。tijはせん断方向の単位ベクトルである。Ktは、せん断方向のばね定数であり、例えば図5(a)の距離Hやδn、δtに応じて設定することができる。ただし、Ktは、予め設定された一定値にすることもできる。Δut,ijは、2つの粒子i、j間の重心のせん断方向における相対的な並進変位である。Δφijは、粒子の回転に起因する接触領域の相対的な回転変位であり、例えば、図5(a)の粒子501の回転変位φiと粒子502の回転変位φjとの差により表すことができる。ηtは、せん断方向の粘性定数であり、予め設定されるものである。Δtは、所定の時間隔であり、予め設定されるものである。
尚、構造物(本実施形態では旋回シュート)の属性情報として、壁用粒子(基準壁用粒子202、基準間壁用粒子203)に設定されているヤング率やポアソン比は、(2)式に示すKn、ηnや、(3)式に示すKt、ηtを決定する際に使用されるものである。
【0033】
(4)式において、vは、解析用粒子の速度である(図5を参照)。vの上に付されている・は時間微分を表す。Fは、せん断方向及び法線方向の反発力の総和である。mは、解析用粒子の質量であり、予め設定されるものである。gは、重力加速度である。尚、解析用粒子が他の解析用粒子や壁用粒子と接触していない場合、(4)式の右辺の第1項は0(ゼロ)になる。
(5)式において、ωは、解析用粒子の角速度である(図5を参照)。ωの上に付されている・は時間微分を表す。Mは、力のモーメントの総和であり、せん断方向及び法線方向の反発力Fn,ij、Ft,ijから求められる。Iは、慣性モーメントであり、予め設定されるものである。
【0034】
尚、解析用粒子の挙動を解析する手法(解析用粒子挙動解析部108が実行する解析手法)は、DEMにおける粒子の挙動についての種々の公知の解析手法を適用することができ、前述した(2)式〜(5)式を用いた手法に限定されるものではない。
解析用粒子挙動解析部108は、例えば、CPUが、RAM等から、解析用の粒子の情報を読み出して前述した演算処理を実行し、実行した結果をRAM等に記憶することにより実現される。
【0035】
(解析用粒子挙動表示部109)
解析用粒子挙動表示部109は、解析用粒子挙動解析部108により解析された「各解析用粒子の挙動」をディスプレイに表示する。
解析用粒子挙動表示部109は、例えば、CPUが、HDD等から、各解析用粒子の挙動の解析結果の情報を読み出してディスプレイに表示するための処理を行い、ディスプレイが、解析対象時間における各解析用粒子の挙動を表示することにより実現される。
【0036】
次に、図6のフローチャートを参照しながら、壁用粒子を設定する際の粒子挙動解析装置100の処理の一例を説明する。
まず、ステップS1において、壁表面情報取得部101は、壁の表面の形状を示す壁表面情報を、ユーザによるユーザインターフェースの操作等に基づいて取得する。
次に、ステップS2において、壁用粒子半径情報取得部102は、壁用粒子の半径rwを示す壁用粒子半径情報を、ユーザによるユーザインターフェースの操作等に基づいて取得する。
【0037】
次に、ステップS3において、基準壁用粒子設定部103は、ステップS1で取得された壁表面情報と、ステップS2で取得された壁用粒子半径情報(壁用粒子の半径rw)とに基づいて、基準壁用粒子202の中心の座標を設定する。
次に、ステップS4において、表面粗さ情報取得部104は、壁の表面粗さζを示す表面粗さ情報を、ユーザによるユーザインターフェースの操作等に基づいて取得する。
次に、ステップS5において、壁用粒子間距離算出部105は、ステップS2で取得された壁用粒子半径情報(壁用粒子の半径rw)と、ステップS4で取得された表面粗さ情報(表面粗さζ)とに基づき、(1)式により、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離P[m]を算出する。
【0038】
次に、ステップS6において、基準間壁用粒子設定部106は、ステップS1で取得された壁表面情報と、ステップS2で取得された壁用粒子半径情報(壁用粒子の半径rw)と、ステップS3で設定された基準壁用粒子202の中心の座標と、ステップS5で算出された相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離Pとに基づき、基準間壁用粒子203の中心の座標を設定する。
次に、ステップS7において、属性情報設定部107は、ステップS3で設定された基準壁用粒子202と、ステップS6で設定された基準間壁用粒子203とのそれぞれについて、属性情報(ヤング率、ポアソン比、摩擦係数、及び速度)を、ユーザによるユーザインターフェースの操作等に基づいて取得する。そして、図6のフローチャートによる処理を終了する。
【0039】
次に、図7のフローチャートを参照しながら、解析用粒子の挙動を解析する際の粒子挙動解析装置100の処理の一例を説明する。尚、ここでは、解析用粒子が既に配置されているものとして説明を行う。
まず、ステップS11において、解析用粒子挙動解析部108は、解析時間tをΔtに設定する。このΔtは、(2)式及び(3)式のΔtに対応するものである。
次に、ステップS12において、解析用粒子挙動解析部108は、解析用粒子を1つ選択する。
次に、ステップS13において、解析用粒子挙動解析部108は、ステップS12で選択した解析用粒子が壁用粒子(基準壁用粒子202又は基準間壁用粒子203)と接触しているか否かを判定する。この判定の結果、解析用粒子が壁用粒子と接触している場合には、ステップS14に進む。一方、解析用粒子が壁用粒子と接触していない場合には、ステップS14を省略して後述するステップS15に進む。
【0040】
ステップS14に進むと、解析用粒子挙動解析部108は、壁用粒子からステップS12で選択した解析用粒子に作用する力(せん断方向及び法線方向の反発力)を(2)式及び(3)式により求め、その結果に基づいて、解析用粒子の速度vを(4)式により、解析用粒子の角速度ωを(5)式により、それぞれ求める。このとき、解析用粒子から壁用粒子には力が作用しないものとする。
そして、ステップS15に進むと、解析用粒子挙動解析部108は、ステップS12で選択した解析用粒子が他の解析用粒子(基準壁用粒子202又は基準間壁用粒子203)と接触しているか否かを判定する。この判定の結果、解析用粒子が他の解析用粒子と接触している場合には、ステップS16に進む。一方、解析用粒子が他の解析用粒子と接触していない場合には、ステップS16を省略して後述するステップS17に進む。
【0041】
ステップS16に進むと、解析用粒子挙動解析部108は、他の解析用粒子からステップS12で選択した解析用粒子に作用する力(せん断方向及び法線方向の反発力)を(2)式及び(3)式により求め、その結果に基づいて、解析用粒子の速度vを(4)式により、解析用粒子の角速度ωを(5)式により、それぞれ求める。
そして、ステップS17に進むと、解析用粒子挙動解析部108は、全ての解析用粒子を選択したか否かを判定する。この判定の結果、全ての解析用粒子を選択していない場合には、ステップS12に戻り、解析用粒子挙動解析部108は、未選択の解析用粒子を1つ選択する。
【0042】
一方、全ての解析用粒子を選択すると、ステップS18に進む、ステップS18に進むと、解析用粒子挙動解析部108は、ステップS14、S16の計算の結果に基づいて、解析用粒子を移動させる。
次に、ステップS19において、解析用粒子挙動解析部108は、解析時間tが解析終了時間Tになったか否かを判定する。尚、解析終了時間Tは、例えば、ユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて、予め設定されている。
この判定の結果、解析時間tが解析終了時間Tになっていない場合には、ステップS20に進み、解析用粒子挙動解析部108は、解析時間tをΔtだけ進めて解析時間tを更新する。そして、ステップS12に戻り、更新後の解析時間tにおける各解析用粒子の挙動を求める。
一方、解析時間tが解析終了時間Tになった場合には、ステップS21に進み、解析用粒子挙動表示部109は、解析開始時間(解析時間t=0)から解析終了時間Tまでの各解析用粒子の挙動をディスプレイに表示する。そして、図7のフローチャートによる処理を終了する。
【0043】
図8は、粒子の落下位置と、旋回シュートの表面粗度との関係を示す図である。ここで、粒子は、焼結鉱やコークスである。また、粒子の落下位置は、高炉の内壁面からの距離であり、この値が小さいほど、旋回シュートから粒子の落下位置までの水平方向の距離は大きくなる。
図8において、グラフ801は、旋回シュートの傾動角を38.8[°]としたときの、粒子挙動解析装置100における解析結果を示すものである。また、グラフ802は、旋回シュートの傾動角を51.1[°]としたときの、粒子挙動解析装置100における解析結果を示すものである。また、値811は、旋回シュートの傾動角を38.8[°]としたときの、時期Aにおける実測値を示す図であり、値812は、旋回シュートの傾動角を51.1[°]としたときの、時期Aにおける実測値を示す図である。また、値813は、旋回シュートの傾動角を38.8[°]としたときの、時期Bにおける実測値を示す図であり、値814は、旋回シュートの傾動角を51.1[°]としたときの、時期Bにおける実測値を示す図である。時期Bは時期Aよりも後の時期である。
【0044】
図8に示すように、粒子挙動解析装置100の解析結果から、旋回シュートの表面の凹凸が増加するに従って(表面粗度が大きくなるに従って)、粒子の落下位置は、高炉の内壁面から遠くなることが分かる。一般的に、旋回シュートの表面の磨耗が進行すると、粒子の落下位置は、炉中心方向に移動することが知られている。また、旋回シュートの傾動角が大きい程、粒子の落下位置は、炉壁方向に移動する。さらに、時期Aと時期Bとの間に、旋回シュートを取り替えているため、時期Aのときの摩耗量(表面粗度が約2.0[mm]程度)よりも時期Bのときの摩耗量(表面粗度が約0.75[mm]程度)の方が小さくなる。図8に示すように、グラフ801、802は、これらの傾向を反映している。よって、本実施形態のようにして粒子の挙動を解析すれば、壁用粒子の半径rwと、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離Pとを変更して旋回シュートの表面の凹凸を変更することにより、粒子の挙動を再現することが可能であることが分かる。
【0045】
以上のように本実施形態では、球状の壁用粒子(基準壁用粒子202、基準間壁用粒子203)を用いて構造物(壁)を表現する。この壁用粒子の半径rwと表面粗さζとを設定することにより、相互に隣接する壁用粒子の中心の間の距離Pを決定し、決定した距離Pで壁用粒子を設定することにより、壁の表面の凹凸を表現する。また、これらの壁用粒子に対して、ヤング率、ポアソン比、摩擦係数、速度等、DEMによる粒子(解析用粒子)の挙動を解析するために必要なパラメータを属性情報として設定する。このような壁用粒子を壁として取扱い、DEMによる粒子(解析用粒子)の挙動の解析の際に使用する。したがって、壁用粒子の並べ方を変更するだけで、壁に生じている陥没や突起物等、壁の任意の表面形状を表現することができる。また、壁の場所に応じて属性情報を変えることができるので、例えば、壁に生じている突起物の物性を考慮してDEMによる解析を行うことができる。また、壁用粒子に対して速度を設定することにより、壁自体の運動を容易に表現することができる。また、ゲート弁等のエッジ(鋭部)における解析用粒子との接触や、解析用粒子の壁の裏側への回り込みに対しても容易に対応することができる。さらに、解析用粒子と壁用粒子とが接触しているか否かの判定は、解析用粒子同士が接触しているか否かの判定と同じアルゴリズムで実現できると共に、壁の表面の形状(エッジ、突起物、陥没等)によって、アルゴリズムを場合分けする必要がなくなる。よって、計算負荷を大幅に削減することができる。以上のように、本実施形態では、DEMを用いて粒子の挙動を解析するに際し、当該粒子が接触する構造物の形状を、計算負荷を増大させることなく正確に設定することができる。
【0046】
尚、本実施形態のように、基準壁用粒子202を設定した後、基準間壁用粒子203を設定するようにすれば、壁の状態が同一であると見なせる領域毎に壁用粒子を設定することができるので好ましいが、必ずしもこのようにする必要はない。壁用粒子の半径rwと表面粗さζとに応じて、基準壁用粒子202と基準間壁用粒子203とを区別することなく、壁用粒子を設定するようにしてもよい。
また、本実施形態では、壁用粒子の大きさの情報として、壁用粒子の半径rwを用いるようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。半径の代わりに直径を用いるようにしてもよい。
また、本実施形態のように、壁用粒子の大きさを全て同じにすれば、計算負荷をより軽減することができるので好ましいが、必ずしもこのようにする必要はない。表面粗さζだけでなく、壁用粒子の半径rwを、壁の表面の状態等に応じて異ならせるようにしてもよい。
【0047】
尚、本実施形態では、例えば、壁表面情報取得部101を用いることにより壁表面情報取得手段が実現される。また、例えば、壁用粒子半径情報取得部102を用いることにより壁用粒子大きさ情報取得手段が実現される。また、例えば、表面粗さ情報取得部104を用いることにより表面粗さ情報取得手段が実現される。また、例えば、基準壁用粒子設定部103及び基準間壁用粒子設定部106を用いることにより壁用粒子設定手段が実現される。また、例えば、解析用粒子挙動解析部108を用いることにより解析用粒子挙動解析手段が実現される。また、例えば、壁用粒子間距離算出部105を用いることにより壁用粒子間距離算出手段が実現される。また、例えば、基準壁用粒子設定部103を用いることにより基準壁用粒子設定手段が実現される。また、例えば、基準間壁用粒子設定部106を用いることにより基準間壁用粒子設定手段が実現される。また、例えば、属性情報設定部107を用いることにより属性情報設定手段が実現される。
【0048】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
100 粒子挙動解析装置
101 壁表面情報取得部
102 壁用粒子半径情報取得部
103 基準壁用粒子設定部
104 表面粗さ情報取得部
105 壁用粒子間距離算出部
106 基準間壁用粒子設定部
107 属性情報設定部
108 解析用粒子挙動解析部
109 解析用粒子挙動表示部
201 壁の表面
202 基準壁用粒子
203 基準間壁用粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物が存在している領域にある複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する粒子挙動解析装置であって、
前記構造物の表面の形状の概略を示す壁表面情報を取得する壁表面情報取得手段と、
前記壁表面情報で示される前記構造物の表面よりも内側に配置され、且つ、当該構造物の表面と接するように配置される球形状の壁用粒子の大きさを示す壁用粒子大きさ情報を取得する壁用粒子大きさ情報取得手段と、
前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値を示す表面粗さ情報を取得する表面粗さ情報取得手段と、
前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値が、前記表面粗さ情報で示される凹み量の最大値となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの壁用粒子を設定する壁用粒子設定手段と、
前記複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する解析用粒子挙動解析手段と、を有し、
前記解析用粒子挙動解析手段は、前記解析用粒子が前記壁用粒子設定手段により設定された前記壁用粒子と接触したと判定すると、前記壁用粒子から前記解析用粒子が受ける力を当該解析用粒子に作用させて、当該解析用粒子を動かすようにすることを特徴とする粒子挙動解析装置。
【請求項2】
前記壁用粒子大きさ情報で示される壁用粒子の大きさと、前記表面粗さ情報で示される凹み量の最大値とに基づいて、相互に隣接する前記壁用粒子の中心の間の距離を算出する壁用粒子間距離算出手段を有し、
前記壁用粒子設定手段は、相互に隣接する前記壁用粒子の中心の間の距離が、前記壁用粒子間距離算出手段により算出された距離となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの壁用粒子を設定することを特徴とする請求項1に記載の粒子挙動解析装置。
【請求項3】
前記壁用粒子の大きさは、同じ大きさであることを特徴とする請求項2に記載の粒子挙動解析装置。
【請求項4】
前記壁用粒子設定手段は、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面の状態が同一であると見なせる領域の両端に、基準となる壁用粒子として、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの基準壁用粒子を設定する基準壁用粒子設定手段と、
前記基準壁用粒子設定手段により基準壁用粒子が設定された後に、前記基準壁用粒子の間に設定される壁用粒子として、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの基準間壁用粒子を設定する基準間壁用粒子設定手段と、を有し、
前記基準間壁用粒子設定手段は、相互に隣接する前記基準壁用粒子と前記基準間壁用粒子との中心の間の距離、及び、相互に隣接する前記基準間壁用粒子同士の中心の間の距離が、前記壁用粒子間距離算出手段でされた距離となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの前記基準間壁用粒子を設定することを特徴とする請求項2又は3に記載の粒子挙動解析装置。
【請求項5】
前記壁用粒子設定手段により設定された壁用粒子に、当該壁用粒子が配置される領域に応じた構造物の属性情報を設定する属性情報設定手段を有し、
前記解析用粒子挙動解析手段は、前記解析用粒子が前記壁用粒子設定手段により設定された前記壁用粒子と接触したと判定すると、前記壁用粒子から前記解析用粒子が受ける力を、前記属性情報設定手段により設定された属性情報を用いて求めることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の粒子挙動解析装置。
【請求項6】
構造物が存在している領域にある複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する粒子挙動解析方法であって、
前記構造物の表面の形状の概略を示す壁表面情報を取得する壁表面情報取得工程と、
前記壁表面情報で示される前記構造物の表面よりも内側に配置され、且つ、当該構造物の表面と接するように配置される球形状の壁用粒子の大きさを示す壁用粒子大きさ情報を取得する壁用粒子大きさ情報取得工程と、
前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値を示す表面粗さ情報を取得する表面粗さ情報取得工程と、
前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値が、前記表面粗さ情報で示される凹み量の最大値となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの壁用粒子を設定する壁用粒子設定工程と、
前記複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する解析用粒子挙動解析工程と、を有し、
前記解析用粒子挙動解析工程は、前記解析用粒子が前記壁用粒子設定工程により設定された前記壁用粒子と接触したと判定すると、前記壁用粒子から前記解析用粒子が受ける力を当該解析用粒子に作用させて、当該解析用粒子を動かすようにすることを特徴とする粒子挙動解析方法。
【請求項7】
前記壁用粒子大きさ情報で示される壁用粒子の大きさと、前記表面粗さ情報で示される凹み量の最大値とに基づいて、相互に隣接する前記壁用粒子の中心の間の距離を算出する壁用粒子間距離算出工程を有し、
前記壁用粒子設定工程は、相互に隣接する前記壁用粒子の中心の間の距離が、前記壁用粒子間距離算出工程により算出された距離となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの壁用粒子を設定することを特徴とする請求項6に記載の粒子挙動解析方法。
【請求項8】
前記壁用粒子の大きさは、同じ大きさであることを特徴とする請求項7に記載の粒子挙動解析方法。
【請求項9】
前記壁用粒子設定工程は、前記壁表面情報で示される前記構造物の表面の状態が同一であると見なせる領域の両端に、基準となる壁用粒子として、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの基準壁用粒子を設定する基準壁用粒子設定工程と、
前記基準壁用粒子設定工程により基準壁用粒子が設定された後に、前記基準壁用粒子の間に設定される壁用粒子として、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの基準間壁用粒子を設定する基準間壁用粒子設定工程と、を有し、
前記基準間壁用粒子設定工程は、相互に隣接する前記基準壁用粒子と前記基準間壁用粒子との中心の間の距離、及び、相互に隣接する前記基準間壁用粒子同士の中心の間の距離が、前記壁用粒子間距離算出工程でされた距離となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの前記基準間壁用粒子を設定することを特徴とする請求項7又は8に記載の粒子挙動解析方法。
【請求項10】
前記壁用粒子設定工程により設定された壁用粒子に、当該壁用粒子が配置される領域に応じた構造物の属性情報を設定する属性情報設定工程を有し、
前記解析用粒子挙動解析工程は、前記解析用粒子が前記壁用粒子設定工程により設定された前記壁用粒子と接触したと判定すると、前記壁用粒子から前記解析用粒子が受ける力を、前記属性情報設定工程により設定された属性情報を用いて求めることを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の粒子挙動解析方法。
【請求項11】
構造物が存在している領域にある複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記構造物の表面の形状の概略を示す壁表面情報を取得する壁表面情報取得工程と、
前記壁表面情報で示される前記構造物の表面よりも内側に配置され、且つ、当該構造物の表面と接するように配置される球形状の壁用粒子の大きさを示す壁用粒子大きさ情報を取得する壁用粒子大きさ情報取得工程と、
前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値を示す表面粗さ情報を取得する表面粗さ情報取得工程と、
前記壁表面情報で示される前記構造物の表面からの凹み量の最大値が、前記表面粗さ情報で示される凹み量の最大値となるように、前記壁用粒子大きさ情報で示される大きさの壁用粒子を設定する壁用粒子設定工程と、
前記複数の解析用粒子の挙動を離散要素法により解析する解析用粒子挙動解析工程と、をコンピュータに実行させ、
前記解析用粒子挙動解析工程は、前記解析用粒子が前記壁用粒子設定工程により設定された前記壁用粒子と接触したと判定すると、前記壁用粒子から前記解析用粒子が受ける力を当該解析用粒子に作用させて、当該解析用粒子を動かすようにすることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−37937(P2012−37937A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174795(P2010−174795)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】