説明

粒子材料及びその製造方法

【課題】三次元形状が制御された導電体材料や半導体材料の粒子を含む材料を提供する。
【解決手段】導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上を含む材料からなるワイヤ状体のネットワーク構造体を備える粒子を含む材料を提供する。ネットワーク構造体により粒子の三次元の外形形状が規定されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機質粒子、なかでも、サブミクロン程度からナノサイズレベルの無機質粒子は、その粒子径、形状等がその特性に大きく影響する。例えば、CdSは、II〜VI属半導体であるが、ナノサイズのCdS粒子は、ユニークな光学特性を発揮するようになり、ソーラーセル、センサ、光触媒等に有用であると考えられている。また、PtやAgはそれ自体触媒としても有用であるが、ナノ粒子化することでより高い触媒活性が期待される。
【0003】
DNAは、その高分子構造と顕著な自己集合能ゆえに、近年、金属などの無機材料の鋳型として用いられて、無機材料−DNA複合体が得られている。例えば、基板上の線状のDNAを鋳型として金属イオンをDNA上に集積させて、金属とDNAとのナノワイヤ複合体が得られている(非特許文献1)。また、銀イオンをDNAに供給した上で、還元することで、DNAを収縮させて銀−DNAの複合体粒子が得られることも報告されている(非特許文献2)。さらに、DNAを収縮後に、銀と複合化してコロイダルコイル状の複合体が得られることも報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H.Yan et al., Science, 301(2003), 1882
【非特許文献2】A. A. Zinchenko et al., Angew. Chem. Int. Ed. 43(2004), 2378
【非特許文献3】A. A. Zinchenko et al., Adv. Mater. 2005, 17, 2820-2823
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法によって得られる材料は、いずれも鋳型としてのDNAとの複合体であった。また、非特許文献2及び非特許文献3に記載の方法で得られる粒子は、DNAの収縮を利用して得られるものであるため、DNA上に集積された金属粒子のランダムな凝集体であり、その外形形状の制御や内部へのキャビティの導入など粒子の三次元構造を制御することは困難であった。
【0006】
そこで、本明細書の開示は、三次元形状が制御された導電体材料や半導体材料の粒子を含む材料及びその製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を実現するために種々検討し、固相に固定化されたDNAをテンプレートとして当該テンプレート上に金属を集積させてDNAに倣ってワイヤ構造体が得られたこと、及び微粒子にDNAを吸着させることにより、この微粒子の三次元形状に倣ったDNAテンプレートを形成できることを見出した。さらに、本発明者らは、三次元形状を有するDNAテンプレートに導電体材料を集積後、このテンプレートを一挙に除去しても、当初のテンプレートの三次元形状に依拠した三次元形状を備える導電体材料粒子が得られることを見出した。すなわち、DNAをテンプレートとして用いる導電体材料等の粒子の合成に関して、三次元形状が制御された粒子が得られるという知見を得ることができた。本明細書の開示は、これらの知見に基づき、以下の手段を提供する。
【0008】
本明細書の開示によれば、導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上を含む材料からなるワイヤ状体のネットワーク構造体を備える粒子を含む、材料が提供される。前記粒子は、前記ネットワーク構造体によってその三次元の外形形状が規定されていてもよい。さらに、前記粒子は、外表面の少なくとも一部に曲面状部を備える前記ネットワーク構造体を備えることもできる。また、前記粒子は、多孔質又は緻密質な前記ネットワーク構造体を備えていてもよい。前記粒子は、内部にキャビティを備えるシェル構造の前記ネットワーク構造体を備えていてもよい。
【0009】
前記粒子は、実質的に無機材料のみから構成されていてもよい。また、前記導電体は、Ag、Pt、Pd、Rh,Ru,Co,Ni,Fe,Cu,Ir及びOsら選択される1種又は2種以上であってもよい。さらに、前記半導体は、ZnS,CdS,CuO,SnS及びPbSから選択される1種又は2種以上であってもよい。
【0010】
本明細書の開示によれば、コア粒子と、導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上を含む材料からなるワイヤ状体のネットワーク構造体からなるシェルと、を備えるコアシェル型粒子を含む、コアシェル型粒子材料が提供される。前記コアシェル型粒子は、前記コア粒子表面にDNAを備えることができる。
【0011】
本明細書の開示によれば、所定の三次元形状を有する第1のテンプレートの表面に吸着したDNAからなる第2のテンプレートを準備する工程と、前記第2のテンプレートに導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上の材料を集積させて複合体を得る工程と、を備える粒子材料の製造方法が提供される。この製造方法は、さらに、前記複合体から前記第1及び前記第2のテンプレートを除去する工程を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本明細書に開示される粒子材料及びその製造工程の一例を示す図である。
【図2】実施例1におけるシリカビーズ及びCdS吸着ビーズの透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果を示す図である。
【図3】実施例1においてCdS吸着ビーズからシリカビーズを化学的に溶解除去し、洗浄後に得た固形物のTEMによる観察結果を示す図である。
【図4】実施例1において得た固形物のEDSによる表面分析結果を示す図である。
【図5】実施例1において用いたシリカビーズと最終的に得た固形物(シェル構造体)のTEMによる粒子サイズの測定結果に基づくヒストグラムを示す図である。
【図6】実施例2における実験概要を示す図であり、(a)実施例2のスキームを示し、(b)は、0.01mMCd(ClO及び0.01mMNaSによって1mMDNA上にCdSを集積させたときのTEM観察結果を示し、(c)は、0.1mMCd(NO及び0.1mMNaSによってDNA上にCdSを集積させたときのTEM観察結果を示す。
【図7】実施例3におけるCdS吸着後及びシリカビーズ溶解後のTEM観察結果を示す図であり、(a)及び(b)はCdS吸着後の正帯電シリカビーズ及び負帯電シリカビーズをそれぞれ示し、(c)及び(d)はシリカビーズ溶解後の正帯電シリカビーズ及び負帯電シリカビーズをそれぞれ示す。
【図8】金属吸着ビーズのシリカビーズ溶解後のTEM観察結果を示す図であり、(a)はAg粒子を示し、(b)はPt粒子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書の開示は、粒子を含有する粒子材料及びその製造方法に関する。本明細書に開示される粒子材料は、導電体材料及び半導体材料から選択される1種又は2種以上を含む材料からなるワイヤ状体のネットワーク構造体を備える粒子を含むことができる。本明細書の開示によれば、粒子がネットワーク構造体を備えることで、粒子の三次元の外形形状、内部キャビティの有無、多孔質性、緻密質性等が制御可能となっている。ネットワーク構造体は、硬い構造を有しており、形状を維持することができる。また、ネットワーク構造体は、本質的に多孔質であるが、圧縮により緻密化される。本明細書の開示によれば、こうしたネットワーク構造体を粒子の構造に導入することによって、三次元形状が制御された導電体材料や半導体材料の粒子を提供することができる。
【0014】
本明細書に開示される粒子材料の製造方法は、所定の三次元形状を有する第1のテンプレートの表面に吸着したDNAからなる第2のテンプレートを準備し、この第2のテンプレートに導電体材料等を集積させてコア−シェル型複合体を得ることを含んでいる。さらに、第1及び前記第2のテンプレートを溶解除去することによって得られる。本明細書の開示によれば、まず、第一に、第1のテンプレートの選択により粒子の三次元形状が制御される。第二に、その後、この複合体から、第1及び第2のテンプレートを除去する際の複合体の収縮程度により制御される。
【0015】
図1に本明細書に開示される粒子材料の一例について示す。図1には、内部にキャビティを有するシェル構造を備えるネットワーク構造体からなる粒子の例を示す。このネットワーク構造体は、それ自体メッシュ状であり多孔質性となっている。こうした粒子は、図1に示すように、所定の三次元形状を有する第1のテンプレートの表面に吸着したDNAからなる第2のテンプレートを準備し、この第2のテンプレートに導電体材料等を集積させてコア−シェル型複合体を得る。その後、この複合体から、シェル構造をほぼ維持して前記第1及び前記第2のテンプレートを除去することによって得られる。
【0016】
以下、本明細書の開示の各種実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(粒子材料)
本明細書に開示される粒子材料に含まれる粒子は、導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上を含む材料からなるワイヤ状体のネットワーク構造体を備えている。以下、粒子に用いられる材料について説明し、その後、ネットワーク構造体について説明する。
【0018】
(導電体)
導電体としては、特に限定しないが、金属及び合金が挙げられる。Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Ta、W、Ir、Pt等の金属やこれらの合金が挙げられる。Ptを含むこれらの金属の場合、後述するようにテンプレート除去時における収縮を抑制してシェル構造を有するネットワーク構造体が得られやすい。
【0019】
(半導体)
半導体としては、P型半導体、N型半導体等、特にその種類を限定しないで用いることができる。Si、GeなどのIV族半導体のほか、ZnSe、CdS、ZnOなどのII〜VI半導体、GaAs、InP、GaNなどのIII−V族半導体、SiC、SiGeなどのIV族半導体、カルコバライト系などのI−III−V族半導体が挙げられる。好ましくは、SiC、CdS、GaAs、GaN、InN、InP、ZnO、ZnSe、GaP、AlGaAs、InGaAs等の半導体材料が挙げられる。
【0020】
ネットワーク構造体を構成するワイヤ状体は、こうした導電体及び半導体から選択された1種又は2種以上を含む材料から構成されている。好ましくは、導電体及び半導体のいずれか一方を含む材料が構成されている。
【0021】
(ネットワーク構造体)
粒子は、ワイヤ状体のネットワーク構造体を備えている。粒子はネットワーク構造体のみから構成されていてもよいし、さらに、他の成分ないし構造を備えていてもよい。以下、ネットワーク構造体の要素について説明する。
【0022】
ネットワーク構造体は、ワイヤ状体を含んでいる。ワイヤ状体とは、おおよそ一定断面形状で細長い線状体及び複数の微粒子が線状に連続し連なった状態の連続構造体をいう。ワイヤ状体は、直線状、曲線状のいずれであってもよく、これらの組合せであってもよい。
【0023】
ネットワーク構造体は、上記した材料のワイヤ状体が集積、交差、交絡、分岐、架橋又は編成されたかのように立体的に組み合わせられた三次元構造体をいう。ネットワーク構造体は、メッシュ状体という表現が適切な構造体も包含している。ネットワーク構造体は、本来的に多孔質性であるが、緻密質な形態も取り得る。ネットワーク構造体において、ワイヤ状体が十分に近接し密接すれば、その程度に応じネットワーク構造体も緻密質となるからである。
【0024】
ネットワーク構造体は各種の三次元形状を採り得、特に限定されない。例えば、その外形形状としては、球状、各種断面のロッド状、板状、ディスク状,チューブ状,ファイバ状であってもよい。ネットワーク構造体は、その表面の少なくとも一部に曲面状部を有することができる。曲面状部としては、例えば、球状面又はその一部が挙げられる。ネットワーク構造体の外形が球状など、曲面状部を主に備えるとき、ハンドリング性に優れる粒子材料として利用できる。多くの場合、ネットワーク構造体の三次元の外形形状は、粒子の三次元外形形状を規定することができる。後段で詳述するように、こうした三次元の外形形状は、第1のテンプレートの三次元形状に大きく依存している。
【0025】
ネットワーク構造体は、図1に示すように、各種の内部構造を採りうる。例えば、図1に示すように、内部にキャビティを有するシェル構造を採りうる。なお、図1に示すネットワーク構造体は例示であり、ネットワーク構造体は、各種の三次元形状を備えるとともに、緻密質でシェル構造も取りうるし、多孔質でシェル構造も取ることができる。
【0026】
粒子は、ネットワーク構造体のみからなってもよいし、さらに他の成分や構造を備えていてもよい。ネットワーク構造体のみからなる場合には、ワイヤ状体は、導電体及び/又は半導体から構成されるため、粒子は、無機材料のみからなる。
【0027】
粒子の大きさは特に限定しないが、平均粒径として、20nm以上3μm以下程度とすることができる。好ましくは、50nm以上1000nm以下であり、より好ましくは100nm以上500nm以下である。
【0028】
本明細書に開示される粒子材料は、以上説明した粒子を含んでいる。こうした粒子材料によれば、ネットワーク構造体により粒子の三次元形状が規定されているため、各種用途に適したサイズや形状を備えることができる。したがって、ソーラーセル、光触媒、センサ、水素吸蔵材料、ガス吸着材料等に有用である。
【0029】
(粒子材料の製造方法)
本明細書に開示される、粒子材料の製造方法は、所定の三次元形状を有する第1のテンプレートの表面に吸着したDNAからなる第2のテンプレートを準備する工程(第2のテンプレートの準備工程)と、前記第2のテンプレートに導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上の材料を集積させて複合体を得る工程(複合体取得工程)と、前記複合体から前記第1及び前記第2のテンプレートを除去する工程(テンプレート除去工程)を備えることができる。本製造方法によれば、本明細書に開示される粒子材料を製造することができる。すなわち、三次元構造を制御した粒子を製造できる。
【0030】
(第2のテンプレートの準備工程)
第2のテンプレートは、所定の三次元形状を有する第1のテンプレートの表面に吸着したDNAから構成されている。まず、第1のテンプレートについて説明する。
【0031】
(第1のテンプレート)
第1のテンプレートは、第2のテンプレートであるDNA及びネットワーク構造体を付与後に、ネットワーク構造体を残して除去できるものであればよい。こうした除去方法として、化学的な溶解処理や加熱焼成による消失処理が挙げられる。化学的な溶解処理に適した第1のテンプレートとしては、例えば、SiO2、Al23、Na2O、MgO、CaO,P25、及びB25並びにこれらの組み合わせが挙げられる。典型的にはガラス質材料が挙げられる。ガラス質材料は、常温でフッ素酸及び/又はフッ化アンモニウムによって容易に腐食されて溶解される一方、かかる条件では金属や半導体が侵されにくいからである。
【0032】
また、温度応答性ポリマーなどの刺激応答性ポリマーも第1のテンプレートの材料として用いることができる。温度応答性ポリマーとしては、例えば、ポリn−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)などが挙げられる。PNIPAAmなどの温度応答性ポリマーは、下限臨界溶解温度又は上限臨界溶解温度を有しており、当温度以下あるいは当該温度以上で水和して水に溶解するため、第1のテンプレートとして用いることができる。また、加熱焼成による消失処理の場合、粒子を構成する金属や半導体等が消失しない温度で焼成して消失するような材料であれば用いることができる。一般的な樹脂材料などの有機材料を用いることができる。なお、焼成処理によれば、金属や半導体が酸化されるため、適宜、還元処理を行う必要がある。また、焼成処理により熱分解される可能性もあるため、温度等が適宜調節される。
【0033】
第1のテンプレートの形状は、特に限定されないで各種形状を選択することができる。第1のテンプレートの外形形状は、粒子及びネットワーク構造体の外形形状を規定するとともに、内部形状を規定する場合もある。第1のテンプレートの外形形状は、粒子において意図する外形形状を考慮して決定される。第1のテンプレートの外形形状としては、例えば、球状、不定形状体、各種断面のロッド状体、板状体、線状体等が挙げられる。
【0034】
第1のテンプレートの大きさは、特に限定しないが、例えば、平均粒径として、50nm以上10μm以下程度とすることができる。好ましくは、100nm以上1000nm以下であり、より好ましくは100nm以上500nm以下である。
【0035】
第1のテンプレートの表面は正電荷に帯電していることが好ましい。後段の集積工程において、第2のテンプレートとなる、負に帯電したDNAを吸着させるためである。第1のテンプレートは、その材料が、例えばアミノ基などを表面に有していないなど、第1のテンプレートの材料自体が正電荷を帯びてない場合には、正電荷を有する化合物を第1のテンプレートの表面に付与することで、第1のテンプレートに正電荷を帯びさせることができる。典型的には、正荷電を有する化合物としては、アミノ基などの適当な官能基を有する化合物が用いられる。典型的には、ポリ−L−リジンなどが挙げられる。ポリ−L−リジンは、溶液で第1のテンプレート表面に供給し乾燥することで容易に膜化される。まだ、アミノ基などを有するシランカップリング剤などのカップリング剤等で表面処理してもよい。例えば、SiO2製粒子と3−アミノプロピルトリメチルエトキシシランとをよく撹拌して室温で6時間程度反応させることで、シランカップリング剤がSiO2製粒子上に導入される。
【0036】
第1のテンプレートに吸着させるDNAは、1本鎖であっても二本鎖であってもよい。また、長さは特に限定しないが、例えば、1000mer(bp)以上100.000mer(bp)以下である。好ましくは、5000mer(bp)以上20.000mer(bp)以下である。DNAの塩基配列や塩基組成は、特に限定しない。
【0037】
第1のテンプレートの表面にDNAを吸着させることで、第1のテンプレートの表面形状に依拠したDNAからなる第2のテンプレートを得ることができる。第1のテンプレートに対するDNAの吸着は、静電的結合によることができる。第1のテンプレートに対するDNAの吸着は、第1のテンプレートのアミノ基等が陽イオン化し、DNAのリン酸基が陰イオン化するようなpH条件下で、これらを数分から数時間程度接触させる。第1のテンプレートに対するDNA量等を調節することで、第1のテンプレートに対するDNAの吸着量を調節することができる。DNAの吸着量が多ければ、後段の複合体の取得工程において複合体における金属又は半導体が高度に集積化される。吸着工程は繰り返し実施して、DNAの吸着量を高めることもできる。第1のテンプレートにDNAを吸着後、第1のテンプレートを遠心分離等の公知の固液分離手段により分離することで、第1のテンプレートの表面上に形成された第2のテンプレートを取得できる。
【0038】
こうして得られる第2のテンプレートは、DNA鎖のネットワーク構造体を構成している。この第2のテンプレートは、最終的に粒子を構成する金属等のワイヤ状体のネットワーク構造体のテンプレートとなる。
【0039】
(複合体取得工程)
複合体取得工程は、第2のテンプレートに導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上の材料を集積させて複合体を得る工程である。導電体及び半導体に関しては、既に説明したとおりである。DNA上にこのような材料を集積化させる方法は、非特許文献1〜3を始め当業者において公知である。金属を集積化させるには、例えば、硝酸銀や塩化白金などの、集積させようとする金属原子の塩を第2のテンプレートであるDNAと接触させて、金属イオンをDNAと反応させる。例えば、反応は、室温で数時間程度であり、弱い撹拌を伴うことができる。その後、NaBHなどの還元剤により、金属イオンを還元し、金属を析出させる。反応は、酢酸ナトリウムバッファ(pH4.0)などのDNAのリン酸陰イオンが解離するpH緩衝下で行うことが好ましい。また、アルコールなどの還元剤の存在下、硝酸銀に対してUV光を照射して銀を析出させることもできる(Chemistry Letters,Vol.37, No.10(2008))。
【0040】
また、CdSのような半導体を集積させるには、例えば、次亜塩素酸カドミウム等のカドミウム塩と第2のテンプレートであるDNAと接触させて、金属イオンをDNAと反応させる。例えば、反応は、4℃程度の低温で数時間程度である。反応液は、静置しておくことが好ましい。その後、硫化ナトリウム(Na2S)と反応させることで、CdSを析出させる。析出反応は、同様に低温で数時間から十数時間程度とすることができる。
【0041】
複合体取得工程においては、第2のテンプレートの量(換言すれば第1のテンプレートの量でもある)に対する、金属原料や半導体原料の供給量を調節することで、第2のテンプレートに対する複合体の集積量を調節することができる。例えば、第2のテンプレートの陰イオンのモル数(具体的にはリン酸基のモル数)に対して等モル以上の金属原料又は半導体原料を用いることが好ましい。より好ましくは10倍以上であり、さらに好ましくは100倍以上である。10倍以上であると、第2のテンプレート上におおよそ連続的に金属原子等を集積させることができる。100倍以上であると、金属原子等を第2のテンプレートに対して緻密に集積させることができる。
【0042】
また、CdSのような半導体にも、第2のテンプレート上のリン酸基のモル数に対して10倍以上、好ましくは100倍以上の濃度でCdイオン及びSイオンを供給することが好ましい。さらに、Cd2+イオンに対するS2−イオンのモル比を1以上とすることが好ましく、より好ましくは、2以上とする。このモル比を1以上とすることで、第2のテンプレートに対してCdSの粒子がおおよそ連続するように粒子の連続体のように集積させることができる。このモル比を2以上とすることで、より一層均一かつ連続的に、すなわち、CdSを線状体のように集積させることができる。
【0043】
第2のテンプレートに対して、金属及び半導体から選択される1種又は2種以上を含む材料を集積させることで、これらの複合体を得ることができる。複合体は、第1のテンプレートによって規定される外形形状を有するDNAのネットワーク構造体(第2のテンプレート)と材料とが一体化された複合化ネットワーク構造体を備えている。
【0044】
(テンプレート除去工程)
テンプレート除去工程は、複合体から第1及び第2のテンプレートを除去する工程である。この工程によれば、これらのテンプレートを除去することで、本明細書に開示される粒子を得ることができる。テンプレートの除去方法は、特に限定されないで、第1のテンプレートの種類と残すべき導電体等の粒子構成材料の種類等に基づいて選択される。例えば、既に説明した化学的な溶解や焼成による消失などの手法を用いることができる。また、刺激応答性ポリマーを第1のテンプレートとして用いたときには、必要な外部刺激を付与して、ポリマーを溶解させる。
【0045】
こうした手法は、第一に、複合体から、第1のテンプレートを溶解ないし消失させることができる。第2のテンプレートであるDNAも、吸着先である第1のテンプレートの溶解又は消失に伴って、溶解又は消失するか、あるいは、それまで吸着していた足場を喪失して、複合体から分離される。
【0046】
テンプレート除去工程後には、第1のテンプレート及び第2のテンプレートが除去されて、導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上の材料からなるワイヤ状体のネットワーク構造体を備える粒子が得られる。このネットワーク構造体(以下、粒子におけるネットワーク構造体を最終ネットワーク構造体という。)は、テンプレート除去工程前において複合体が備える複合化ネットワーク構造体に基づいている。すなわち、最終ネットワーク構造体の形態は、外形的には第2のテンプレートのネットワーク構造体に由来し、最終ネットワーク構造体のワイヤ状体の形態は、第2のテンプレートのDNAの存在形態に由来している。
【0047】
図1に示すように、複合化ネットワーク構造体は、テンプレート除去工程を通じて、その三次元形状を維持する場合があるほか、収縮する場合がある。したがって、本製造方法によれば、外形的には第2のテンプレートと相同又は相似の範囲で粒子形状を制御できる。また、内部キャビティの有無や大きさ、さらに、内部のキャビティの大きさなどについても制御できる。
【0048】
例えば、複合化ネットワーク構造体がその三次元形状、すなわち、第1のテンプレートの表面形状に倣ったシェル状体を維持する場合には、テンプレート除去後に得られる粒子は、第1のテンプレートの外形形状に倣った内部キャビティを有し、複合化ネットワーク構造体に依拠する多孔質な最終ネットワーク構造体を備えることとなる。一方、複合化ネットワーク構造体が収縮する場合には、その収縮程度によって異なる最終ネットワーク構造体を備えることとなる。複合化ネットワーク構造体の収縮程度が小さい場合には、最終ネットワーク構造体は内部にキャビティを有し、収縮程度が大きい場合には、最終ネットワーク構造体はキャビティの残存程度が小さくなる。複合化ネットワーク構造体の収縮程度によって、最終ネットワーク構造体の多孔質性も異なる。収縮程度が大きいほど、緻密質な最終ネットワーク構造体となる。
【0049】
複合化ネットワーク構造体の収縮程度は、最終ネットワーク構造体を構成する材料によっても異なる。例えば、CdSの場合はSiO2からなる第1のテンプレートの溶解除去に伴い複合化ネットワーク構造体の収縮傾向があるが、最終ネットワーク構造体は、内部にキャビティを維持しうる程度であり、しかも、多孔質である。たとえば、平均粒子径が450nmの第1のテンプレート粒子を用いたとき、最終ネットワーク構造体の平均粒子径は、150nm程度である。また、最終ネットワーク構造体の構成材料が銀(Ag)のとき、テンプレートの溶解除去に伴い、収縮する傾向が大きい。一方、前記構成材料が白金(Pt)のとき、複合化ネットワーク構造体はテンプレートの溶解除去を通じて、ほぼその形態を維持し、内部に第1のテンプレートに依拠したキャビティを有し、かつ多孔質の最終ネットワーク構造体となる。
【0050】
テンプレート除去工程を通じて、複合化ネットワーク構造体が収縮するかどうか及びその程度(収縮率)は、ビーズ表面上のDNA質量に依存すると推論できる。したがって、塩濃度変化に依存するDNA吸着量を調整することにより、ネットワーク構造体収縮程度を制御できると考えられる。
【0051】
以上説明したように、本明細書に開示される粒子材料の製造方法によれば、第1のテンプレートの三次元形状に由来する外形形状を備える最終ネットワーク構造体を得て、外形状が制御された粒子を得ることができる。また、材料の選択等により、内部のキャビティの大きさや内部構造が制御された粒子を得ることができる。
【0052】
(コアシェル型粒子材料)
本明細書に開示されるコアシェル型粒子材料は、所定の三次元形状を有するコア粒子と、導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上を含む材料からなるワイヤ状体のネットワーク構造体からなるシェルと、を備えるコアシェル型粒子を含むことができる。このコアシェル型粒子材料は、本明細書に開示される粒子材料の製造方法の複合体取得工程で得られる複合体である。すなわち、コア粒子は、本製造方法の第1のテンプレートに相当し、シェルは本製造方法の複合化ネットワーク構造体に相当している。また、コアシェル型粒子は、そのコア粒子表面にDNAを備えることができる。このDNAは、本製造方法における第2のテンプレートに相当している。
【0053】
かかるコアシェル型粒子材料は、最終ネットワーク構造体を備える粒子を含む材料を得るのにも有用であるほか、それ自体、ソーラーセル、センサ、光触媒、水素吸蔵材料、ガス吸着材料等、本明細書に開示される粒子材料と同様の用途に適用される。
【実施例】
【0054】
以下、本明細書の開示を実施例を挙げて具体的に説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、限定するものではない。
【0055】
(試薬等)
以下の実施例で用いる試薬について説明する。
DNAとして、二重鎖DNA(9090 bp)(和光純薬工業株式会社)をさらに精製することなく用いた。SiO2粒子(平均粒子径約500nm)(Micro Particles GmbH)は、5質量%の懸濁液として入手し、そのまま用いた。3−アミノプロピルとりメトキシシラン(APTMS)(シグマ−アルドリッチ社)を入手し、そのまま用いた。次亜塩素酸カドミウム6水和物((Cd(ClO4)2 6H2O) 及び硫化ナトリウム (Na2S)(和光純薬工業株式会社)から入手した。
【0056】
酢酸ナトリウムバッファ原液は、0.1M847mLの酢酸と0.1M153mLの塩化ナトリウムを1000mlに溶解し、最終濃度として85mM酢酸及び15mM酢酸ナトリウム(Na濃度1.25M)とした。このバッファは、pH7及び4にぞれぞれ調整した。各種塩濃度の酢酸ナトリウムバッファ溶液は水で原液を希釈して調製した。
【実施例1】
【0057】
(二つのテンプレートを用いた溶液中でのキャビティを有するCdS粒子の製造例)
平均粒経が約500nmのシリカビーズの5質量%懸濁液1mlを2回水で洗浄した。100μlのシリカビーズに対してAPTMS0.1mlを添加して激しく撹拌し、その後、室温で6時間放置した。約0.5質量%のAPTMS処理シリカビーズをエタノールで1回精製後、さらに遠心分離と洗浄と水への分散を三回繰り返して精製した。APTMS処理シリカビーズは、正に帯電しており、負に帯電したDNAと静電的な相互作用がDNA鎖の吸着を引き起こすと考えられる。DNAの吸着は、0.05質量%のシリカビーズを2〜16 nM 9090 bp DNA の10mM酢酸バッファ(pH4.0)溶液に懸濁させ、室温で15分間インキュベートして行った。その後、6000gで3分間遠心した。取得したDNA吸着ビーズは、バッファで3回洗浄し、バッファに再懸濁した。DNAは、シリカビーズ上に吸着されて、CdSを集積させるためのテンプレートとして利用できることが期待された。
【0058】
0.1mMのCd(ClO2溶液5μlを500μlの0.1mMのDNA吸着ビーズと4℃で3時間インキュベーションした。さらに、0.1mMの硫化ナトリウムを添加し、4℃でさらに12時間インキュベートした。その後、1時間エージングすると、CdSが吸着したビーズを黄色の沈殿として目視で確認できた。シリカビーズ及びCdS吸着ビーズの透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果を図2に示す。
【0059】
図2に示すように、滑らかな表面を有するシリカビーズに対して、DNA及びCdSが吸着されたシリカビーズの表面は、CdSが集積されて形成された構造体が付与されていた。すなわち、シリカビーズの表面にDNAのネットワーク構造体とCdSとが複合化された複合化ネットワーク構造体が形成されていることがわかった。
【0060】
その後、CdS吸着ビーズからシリカビーズを化学的に溶解除去した。すなわち、CdS吸着ビーズを酢酸塩バッファ(10mM、pH4)に懸濁した。このビーズ懸濁液100μlをフッ化アンモニウム(8M)とフッ化水素(sM)のバッファ混合液(pH5)200μlに20℃で5分懸濁し、その後、pHがバッファのpHと同じになるまで洗浄した。洗浄後に得た固形物のTEMによる観察結果を図3に示し、EDSによる計測結果を図4に示す。また、TEMによる粒子サイズの測定結果に基づくヒストグラムを図5に示す。
【0061】
図3に示すように、TEM観察によって、メッシュ状で表面が球状のシェル構造体を観察できた。また、図4に示すように、CdとSとがCdSの化学組成に一致する1:1の原子比で存在しており、他の原子の存在を確認できなかった。すなわち、シリコンビーズ及びDNAが完全に除去されていることがわかった。
【0062】
また、図5に示すように、洗浄後に得られたシェル構造体のサイズは当初のシリカビーズのサイズとは大きく異なっていた。シェル構造体のサイズは、131±34nmであり、当初のシリカビーズのサイズ422±25nmから大きく減少していた。しかしながら、シェル構造体はその三次元形状は当初ビーズと相似形であり、球状の外形形状は維持されていた。シェル構造体におけるサイズの減少は、ビーズの表面におけるCdSとDNAとのネットワーク複合体が硬いシリカビーズの溶解除去工程で収縮する傾向があることに由来していると考えられた。この現象は、DNAの吸着時におけるDNA鎖間の反発によってビーズ上においてDNAが本質的に多孔質体となることにより説明できる。シェル構造体の収縮は、CdSのネットワーク構造体の凝集を招くと考えられる。422nmのシリカビーズ上のCdSの体積と最終的に得られたシェル構造体サイズとを単純に比較すると、体積が1.4×10nmのビーズ表面に厚み2nmの連続的なシェル構造体が、体積が1.2×10nmで131nm直径のシェル構造体に匹敵していた。
【実施例2】
【0063】
(シリカビーズなしでのDNA上へのCdSの集積)
本実施例では、図6(a)に示すように、シリカビーズなしで、DNA上にCdSを集積させた。まず、0.01mM Cd(ClO及び0.01mM NaSによって1mMDNA上にCdSを集積させた。集積反応は、Cd(ClOとDNAとを混合して4℃で一晩インキュベートし、さらに、NaSを加えてさらに4℃で24時間インキュベートした。これらのTEM観察結果を図7(b)及び(c)に示す。
【0064】
図6(b)及び(c)に示すように、それぞれ2〜3μmの長さで、2〜5nmの均一なサイズのCdS粒子を備えるDNAワイヤを観察した。図6(b)には、個別のワイヤを観察したが、図6(c)に示すように、架橋したように組み合わされたワイヤ状のネットワーク構造体を観察した。図6(c)に示す、ミクロ〜サブミクロンオーダーで組み合わされたDNAとCdSのワイヤのネットワーク構造体は、十分に硬いCdSの骨格を形成でき、シリカビーズの溶解除去後においてもシェル構造体を維持できることが期待できた。
【実施例3】
【0065】
(シェル構造体の作製におけるDNAの有用性)
本実施例では、シェル構造体の作製時においてシリカビーズ上のDNAがテンプレートとして以外の役割について評価した。すなわち、DNA吸着工程を実施しないで、APTMS処理シリカビーズ(正帯電)と未処理のシリカビーズ(負帯電)に対して、実施例1と同様にして吸着させた。さらに、その後、シリカビーズを溶解除去した。各シリカビーズに対してCdS吸着後及びシリカビーズ溶解後のTEM観察結果を図8(a)〜(d)に示す。
【0066】
図7(a)及び(b)には、CdS吸着後の正帯電シリカビーズ及び負帯電シリカビーズをそれぞれ示す。これらの図に示すように、溶液中でシリカビーズ上でCdSを生成・集積させると、ビーズは酷く凝集した。CdSは、負に帯電したシリカビーズ上で生じているとともにその外部においても生じている一方、正に帯電したシリカビーズ上ではほとんど生成せず、CdSは、ビーズから離れてモノリス構造体として生成される傾向があった。
【0067】
図7(c)及び(d)には、シリカビーズ溶解後の正帯電シリカビーズ及び負帯電シリカビーズをそれぞれ示す。これらの図に示すように、シリカの溶解後のCdSの構造は、ビーズ上でのCdSの集積の様子を反映していた。すなわち、正帯電シリカビーズを用いた場合には、500nm程度の直径の球状キャビティを有するCdSのネットワーク状構造体が観察され、負帯電シリカビーズを用いた場合には、同様のキャビティを有するマイクロメーターサイズのCdSのモノリス構造体が観察された。以上の結果から、DNAは、CdSを堆積させたビーズとCdSナノ構造体の安定化及び中空状のシェルの形成に重要な役割を果たしていることがわかった。
【0068】
以上の実施例から、シリカコアとDNAとの2つのテンプレートとの利用が以下のことに有効であることをわかった。すなわち、シリカビーズなどの固相テンプレート上でDNA−CdS等の複合化ネットワーク構造体を形成できること、そして、固相テンプレートの溶解によりネットワーク構造体のシェル構造体を形成できることに、有効であることがわかった。
【実施例4】
【0069】
(DNAネットワーク構造体に対する金属の集積及びシリカビーズ除去)
(1)Agの集積
実施例1で作製した正帯電シリカビーズを、0.1mMのAgNOの10mM酢酸塩バッファ(pH4)溶液に加えて緩く撹拌し、その後、室温で2時間反応させた。その後、NaBH4 (0.1mM)を加えて、Ag+1をAg0に還元した。
【0070】
(2)Ptの集積
実施例で1作製した正帯電シリカビーズを0.1mMのPtCl2の10mM酢酸塩バッファ(pH4)溶液に加えて緩く撹拌し、その後、室温で2時間反応させた。その後、NaBH4 (0.1mM)を加えて、Pt+1をPt0に還元した。
【0071】
(3)シリカビーズの溶解除去
金属吸着ビーズを酢酸塩バッファ(10mM、pH4)に懸濁した。このビーズ懸濁液50μlをフッ化アンモニウム(8M)とフッ化水素(2M)のバッファ混合液(pH5)250μlに20℃で5分懸濁し、その後、pHがバッファのpHと同じになるまで洗浄した。
【0072】
洗浄後に得た固形物のTEMによる観察結果を図8(a)及び(b)に示す。図8(a)に示すように、Agの場合には、シリカビーズのサイズ(約500nm)に比較して最終的に得られたAg粒子のサイズは、100nm以下となっており、Agのネットワーク構造体が収縮していことが示唆された。一方、図8(b)に示すように、Pt粒子は、シリカビーズのサイズをほぼ維持していることがわかった。以上のことから、シリカビーズ除去に際して、DNA鎖間の反発が減少するのに伴い、集積物質のネットワーク構造体が収縮する傾向にあるが、集積される物質によって、ネットワーク構造体の収縮程度が異なることがわかった。以上の結果から、テンプレート除去工程を通じて、複合化ネットワーク構造体が収縮するかどうか及びその程度(収縮率)は、ビーズ表面上のDNA質量に依存すると推論できた。したがって、塩濃度変化に依存するDNA吸着量を調整することにより、ネットワーク構造体収縮程度を制御できると考えられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上を含む材料からなるワイヤ状体のネットワーク構造体を備える粒子を含む、材料。
【請求項2】
前記粒子は、前記ネットワーク構造体によってその三次元の外形形状が規定されている、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記粒子は、その表面の少なくとも一部に曲面状部を有する前記ネットワーク構造体を備える、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
前記粒子は、多孔質又は緻密質な前記ネットワーク構造体を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の材料。
【請求項5】
前記粒子は、内部にキャビティを有するシェル構造のネットワーク構造体を備える、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項6】
前記粒子は、実質的に無機材料のみからなる、請求項1〜5のいずれかに記載の材料。
【請求項7】
前記導電体は、Ag、Pt、Pd、Rh、Ru、Co、Ni、Fe、Cu、Ir及びOsから選択される1種又は2種以上を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の材料。
【請求項8】
前記半導体は、ZnS、CdS、CuO、SnS及びから選択される1種又は2種以上を含む、請求項1〜6いずれかに記載の材料。
【請求項9】
所定の三次元形状を有するコア粒子と、
導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上を含む材料からなるワイヤ状体のネットワーク構造体からなるシェルと、
を備えるコアシェル型粒子を含む、コアシェル型粒子材料。
【請求項10】
前記コアシェル型粒子は、前記コア表面にDNAを備える、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
所定の三次元形状を有する第1のテンプレートの表面に吸着したDNAからなる第2のテンプレートを準備する工程と、
前記第2のテンプレートに導電体及び半導体から選択される1種又は2種以上の材料を集積させて複合体を得る工程と、
を備える、粒子材料の製造方法。
【請求項12】
さらに、前記複合体から前記第1及び前記第2のテンプレートを除去する工程を備える、請求項11に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−86307(P2012−86307A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234883(P2010−234883)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】