説明

粒子状物質の発生装置および捕集装置

【課題】粒子状物質の発生装置および捕集装置を提供する。
【解決手段】酸化性ガス中における液体炭素含有燃料の燃焼に由来する粒子状物質を発生及び補集する装置は、ノズルを備えてなり、該ノズルが容器中に収容されている燃料バーナーを備えてなる。該容器はガス入口およびガス出口を有し、該ガス出口は、ガスを大気中に輸送するための導管と接続しており、該導管は、該ガス入口から、該容器及び該導管を経由して大気中にガスを強制的に流すための手段を有する。該導管中には、該導管を通って流れるガスから粒子状物質を補集するための場所が配置されている。該ガス流強制手段は、ガス入口で検出されたガス流量に応答して制御され、該ガス入口におけるガス流量を所望の流量に確実に維持し、それによって、粒子状物質の形成を促進する。炭素含有燃料の燃焼に由来する粒子状物質を補集する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、炭素含有燃料に由来する粒子状物質を発生および補集するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車工業は、エンジンから発生する放出物が人間の健康および環境に悪影響を及ぼすので、使用中にエンジンから発生する特定の放出物を制限することを求められている。そのような放出物には、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、一酸化炭素および粒子状物質(PM)が挙げられる。
【0003】
自動車工業が放出物標準に適合できるようにする排気処理機構の一つは、Johnson MattheyのCRT(商品名)機構である。この技術(ヨーロッパ特許第EP0341832号明細書に開示)は、フィルター上に堆積したディーゼル粒子状物質を二酸化窒素中、400℃までの温度で燃焼させる方法を使用しているが、この二酸化窒素は、排ガス中の一酸化窒素を、フィルターの上流に配置された好適な触媒の上で酸化することにより、得られる。一酸化窒素酸化触媒は、白金族金属、例えば白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウムまたはそれらの組合せ、を含んでなることができる。フィルターは、高温燃焼を起こし易くする材料、例えば卑金属触媒、例えば酸化バナジウム、La/Cs/V、または貴金属触媒、で被覆することができる。
【0004】
しかし、エンジン放出物の悪影響をさらに下げるための努力の中で、政府は、益々厳しくなる放出物標準を採用しており、例えば欧州連合(European Union)放出物標準によれば、1993年に製造されたディーゼルを動力源とする乗用車は、0.140g/kmまでのPMを発生することができる(いわゆるEuro I Tier Emission Standard)のに対し、2005年に規制される量は0.025g/km以下のPM(Euro IV Tier)であり、Euro V Tierは、0.005g/kmになることが予想される。従って、5年前に車両に対して設定された放出物標準に適合できた排気処理機構が、近い将来に導入される放出物標準に適合できるとは限らない。そのため、自動車工業が益々厳しくなる放出物標準に適合できるようにするためには、新しい排気処理機構を絶えず開発する必要がある。しかし、全ての新しい機構(または機構の部品)の開発では、そのような機構を、実際に使用する前に、実験室で試験する必要がある。触媒および/またはフィルターを備えてなる排気処理機構を実際に使用する前に、その機構に対して多くの試験を行うことになろうが、そのような試験は、耐久性試験、触媒エージング、フィルター保持試験、圧損負荷試験、再生試験を含むエージングサイクル、NOトラップ再生、煤重量制限試験、毒性試験(硫酸化エージング、および一連の化学物質、例えばリン酸塩、ハロゲン化物、アルカリ土類および希土類化合物、に露出した時に、触媒および/またはフィルターがどのように反応するかを見る試験を包含する)、灰分負荷研究、白煙試験、およびエンジンに様々な代替燃料を供給した時の機構の試験を包含する。そのような試験を行う組織には、排気機構製造業者(フィルター製造業者、塗料会社および缶加工会社を包含する)、車両製造業者、コンサルタント業者、調査研究所および大学研究所が挙げられる。
【0005】
新しい排気機構を試験する実験室の先行技術による方法は、試験台に取り付けた車両内燃機関の長時間使用に依存する傾向があり、極めて経費がかかる。それにも関わらず、そのような機構の試験は、その機構が実際に使用される条件を模擬すべきであり、その機構に接触するPMが、エンジンにより発生するPMを模擬することが重要であるので、以前には、信頼性のある代替品を使用することができなかった。
【0006】
独国特許第DE3710749C1号明細書は、気体状媒体中に含まれる異物質の、流動機構における機能部分上への堆積物、例えばエンジンのエアインテーク機構における煤の堆積物、を模擬する装置を開示している。ヨーロッパ特許第EP1616914A1号明細書は、限定された特性を有するカーボンブラックを発生し、カーボンブラックを含むガス流をフィルターに通すことにより、フィルターを試験する装置を開示している。
【0007】
ここで我々は、排気機構部品、例えば触媒およびフィルター、のPM補集能力を実験室で試験することができる装置を開発した。この装置は、エンジンで行った試験に、同一ではないにしても、極めて類似した結果を与えるが、エンジン自体を使用する必要がない。
【0008】
第一態様により、本発明は、液体炭素含有燃料の燃焼に由来する粒子状物質を発生及び補集する装置であって、
ノズルを備えてなる燃料バーナーと、
該ノズルは容器中に収容されており、該容器はガス入口およびガス出口を備えてなり、該ガス出口は、ガスを該ガス出口から大気中に輸送するための導管と接続しており、
該ガス入口を通るガスの流量を検出する手段と、及び酸化性ガスを該ガス入口から該容器、該ガス出口及び該導管を経由して大気中に強制的に流すための手段と、
該導管を通って流れるガスから粒子状物質を補集するための場所と、及び
該ガス入口で検出されたガス流量に応答して該ガス流強制手段を制御するための手段とを備えてなり、
該ガス入口におけるガス流量が、該容器中で燃料を準化学量論的に燃焼させる所望の流量に維持され、それによって、粒子状物質形成を促進する、装置を提供する。該燃料バーナーの全体(図1参照)が、またはそのノズルだけ(図2参照)が該容器中に収容されているかは、本発明の特定使用者の設計基準及び設計条件によって異なる。どちらの実施態様も等しく効果的に作動し得るが、本発明にとって重要なのは、燃料が制御された環境で燃焼し、再現性のあるPM発生を可能にすることである。
【0009】
本発明で使用するガス流強制手段は、容器のガス入口中にガスを吸引および/または送り込むことができる。所望により、容器を通って流れるガスおよび/または酸化性ガスを濾過し、装置で使用する前に存在する全ての粒子を除去する。さらに、ガスの温度を、装置中で使用する前に、所望により空冷式ラジエータ(後記参照)から来る空気を使用して、調節することができる。
【0010】
ガス流量の制御は、個別の試験で再現性良くPMを発生させることを包含する、多くの理由から重要である。一般的に、ガス流量を下げると、容器を出るガスの温度が増加し、より詳しくは、バーナーに直接供給されるガスの流量を増加しながら、容器を通るガス流量を低下させる(以下に記載する本発明の第三態様参照)と、PMの生成が停止し、容器を出る排ガスの温度が増加するので、温度が、PM補集場所の中にあるPMの燃焼にとって十分に高くなる。そのような高温は、特定の用途に有用であり、例えばPM補集場所中にフィルターが存在する場合、その温度増加をフィルターの周期的な再生に使用することができる。PM補集場所の中にあるPMを燃焼させることができる熱を発生する別の手段は、PM補集場所の上流にある導管中に追加の燃料を注入することである。
【0011】
一実施態様では、酸化性ガスは空気であるが、その中で燃料が燃焼できる限り、どのような合成ガスまたはガス混合物でもよい。酸化性ガスは、燃料の燃焼に使用する前に、加熱することができる。本発明の、酸化性ガスとして空気を使用する実施態様では、空冷式ラジエータ(後記参照)で使用した空気を酸化性ガスとして使用することができる。
【0012】
そのような装置を使用し、我々は、エンジンに近い温度及びエアマスフロー条件を再現し、それによって、エンジンにより生成されるPMと類似した粒子径、形態及び揮発性有機画分(VOF)炭化水素含有量を有するPMを発生させることができた。これによって、この装置は、とりわけ、触媒および/またはフィルターを備えてなる排気処理機構に対する実験室試験、例えば上記の試験、を行うのに好適である。
【0013】
本発明者らは、容器を常圧未満に維持することにより、PMの生成が促進されることを見出した。
【0014】
ガス流強制手段がガスを容器のガス入口中に吸引する場合、そのような手段はファンを備えてなることができる。このファンは、例えばPM補集場所と大気中に出る導管との間に配置することができる。PM補集場所を出るガスの高温は、ファン、または他のガス吸引手段、の効率に悪影響を及ぼすことがあるので、PM補集場所と大気中に出る導管との間の導管中に熱交換機を配置し、ガスを冷却し易くすることができる。熱交換機は、空冷または水冷式ラジエータをさらに備えてなることができる。空冷式ラジエータを使用する場合、空冷式ラジエータに使用した空気を、燃料の燃焼に使用する酸化性ガスとして使用する(上記参照)か、またはPM補集場所の上流または下流の導管を通って流れるガスと混合することができる。
【0015】
本発明者らは、PM補集場所中にフィルターが存在する場合、容器のガス入口中にガスを吸引するガス流強制手段を使用することにより、PM補集場所の前に高圧が生じるのを阻止することができ、粒子の凝結を阻止し、それによって、PMの大きさを維持できることを見出した。しかし、容器のガス入口中にガスを送り込むガス流強制手段は、他の用途に、より適している場合もある。
【0016】
ガス流強制手段が容器のガス入口中にガスを送り込む場合、そのような手段はポンプを備えてなることができる。
【0017】
PM補集場所を通って流れるガスが、排気処理機構を通って流れるガスに類似する(すなわちガスが特定の温度範囲内にあり、十分に混合されている)ためには、ガス出口とPM補集場所との間に、特定の長さの導管を配置することが望ましい。この長さは、導管の直径の5〜50倍、一般的に導管直径の10〜30倍でよい。さらに、ガス出口とPM補集場所との間に特定の長さの導管を配置することにより、粒子が蓄積してより大きな物質を形成し、PM上に炭化水素を吸着させ、やはり、PM補集場所を通って流れるガスを、排気処理機構を通って流れるガスに確実に類似させることができると考えられる。
【0018】
本発明者らは、燃料バーナー中に流れ込む燃料の流量を制御すること、及び燃料の温度(それによって、粘度も)を制御することにより、本発明により生成するPMの再現性が改良されることを見出した。従って、一実施態様では、本装置が、使用中に燃料バーナー中に流れ込む燃料の流量を制御する手段、及び使用中に燃料バーナー中に流れ込む燃料の温度を制御する手段をさらに備えてなる。
【0019】
本発明で使用するのに好適な燃料バーナーは、燃料ポンプ、ノズル、点火手段、例えばスパークプラグ、及び安全遮断装置(ポンプ輸送される燃料が点火されないように)、例えば好適な関連電子回路を備えた光電セルまたはイオン検出器、を備えてなることができる。我々は、燃料の非中空円錐形配分パターンを形成するように設計されたノズル(例えばDelvan製のProTek(商品名)ノズル機構)により、エンジンシリンダー中で噴霧された燃料液滴の燃焼により生成するPMと類似の特性を有するPMを形成できることを見出した。これは、そのようなノズルが、(中空円錐形配分と比較して)燃料を緻密に配分するためである、と我々は考えている。従って、本発明者らは、燃料に到達する酸素を制限する条件下で燃料を燃焼させることができる他の技術も、類似の結果を達成できると考えている。さらに、円錐角度、スプレー配分及び燃料圧を変えることにより、燃料の質量流量が変化し、異なった負荷の下で作動するエンジンを模擬し、生成するPMの様々な粒子径分布が得られる。
【0020】
燃料バーナーのノズルは、水平または垂直に配置することができ、どちらも潜在的な利点を有する。垂直に配置した燃料バーナーの利点の一つは、これによって火炎の浮力効果の一部が打ち消され、その結果、導管中での混合が改善されることである。
【0021】
燃料バーナーは、様々な炭化水素及び酸素化された燃料を燃焼するように設計し、他の化合物、例えば排ガス前駆化合物、を燃焼するように設計することもできる。あるいは、そのような化合物または排ガス成分自体(例えばNO)を、導管中に注入装置を使用して、容器から出るガス中に注入することもできる。
【0022】
ディーゼル排気機構の試験を可能にするには、PM補集場所を、触媒モノリス基材またはフィルター、例えばNO触媒、ディーゼル粒子状物質フィルター(DPF)または触媒作用を付与した煤フィルター(CFS)、を受け容れるように設計するとよい。あるいは、本発明は、他の装置、例えば空気濾過装置、またはPMの堆積が重要である他のいずれかの用途に適用することができる。本発明の装置の用途に関係なく、PM補集場所の下流にある導管中に酸化触媒を置し、導管を通って流れるガスの中に存在する汚染物を、大気中に放出する前に除去することができる。
【0023】
有用な結果を与えるには、本発明の装置を使用して排気機構部品に行う実験室試験は、各試験の特徴を記録し、結果を集め、比較し、それらの試験からできるだけ多くの情報が確実に得られるようにすることができる。そのような特徴は、圧力及び温度の測定を包含し、従って、本発明の装置は、圧力および/または温度感知手段を備えてなることができる。圧力測定の場合、PM補集場所の中に配置された排気機構部品を通って流れるガスに関連する圧損を記録することが特に重要である。そのような測定値を集めるには、差圧センサーを、PM補集場所の上流側に配置された一方の口、及びPM補集場所の下流側に配置された他方の口と共に使用するとよい。温度感知手段もPM補集場所の両側に、及び所望により、導管の長さに沿った他の場所に配置し、装置を通って流れるガスの温度を、例えば容器の出口で感知する。温度感知手段の好適な形態の一つは、熱電対である。PMが生成する時の流量も監視することができる。
【0024】
各試験の特徴を記録するのに有用であることに加えて、そのような特徴は、各試験の条件を制御することにも使用できる。従って、本発明の一実施態様では、本装置は、使用中に、(ガス入口で検出されたガス流量に応答して、ガス流強制手段を制御することに加えて)圧損測定手段から来る情報に応答して、ガス入口でガスの流量を制御する手段を備えてなる。この制御手段は、電子制御装置(ECU)を備えてなることができる。
【0025】
無論、この装置は、PM補集特徴に関する他の技術を試験するのに、例えば空気フィルター、所望によりエアインダクション機構におけるフィルター、の試験に使用できる。
【0026】
第二の態様により、本発明は、酸化性ガス中で液体炭素含有燃料を燃焼させることに由来する粒子状物質を発生及び補集する方法であって、
燃料バーナーで、該燃料を、準化学量論的量の酸化性ガス中で燃焼させること、
該燃料バーナーはノズルを備えてなり、該ノズルは容器中に収容されており、
酸化性ガスを、該容器のガス入口から、該容器のガス出口及び該ガス出口に接続された導管を経由して、大気中に強制的に流すこと、
該導管中に位置する場所で粒子状物質を補集すること、
該ガス入口で酸化性ガスの流量を検出すること、及び
該ガス入口で酸化性ガスの所望の流量が維持されるように、酸化性ガスの流量を制御することを含んでなる、方法を提供する。
【0027】
上記のように、本発明者らは、燃料バーナーを収容している容器へのガス供給を制御し、それによって、煤を含む火炎を発生することにより、エンジンシリンダー内での燃料の燃焼が模擬されることを見出した。これが、本発明の方法が、燃料を準化学量論的量の酸化性ガス中で燃焼させてPMを発生することを含んでなる理由である、すなわち存在する酸化性ガスの質量に対して過剰の燃料が存在することにより、燃料の不完全燃焼を引き起こすのである。
【0028】
燃料バーナー中で燃焼する燃料は、様々な炭化水素及び酸素化された燃料でよく、標準的な自動車燃料、例えばディーゼル燃料またはガソリン、アルコール、バイオディーゼル、LPG(液化石油ガス)、FT−GTL(Fischer-Tropschガス−液体)及びジメチルエーテルが挙げられる。
【0029】
燃料バーナーは、炭化水素燃料及び酸素化された燃料に加えて、他の化合物も燃焼させることができる。これらの他の化合物は、排ガス成分、例えばNOまたはSO、の前駆物質、例えばアミンまたは有機硫黄化合物、でよい。あるいは、そのような化合物(または排ガス成分自体)は、容器から出るガスの中に、導管内で注入装置を使用して注入することができる。排ガス前駆化合物は、燃焼したものでも、注入されたものでも、粒子状物質補集場所に到達する前に、少なくとも部分的に分解することを意図している。
【0030】
本発明者らは、本発明のPM発生及び補集方法が、PMを、1.0〜20.0g/hr、一般的に1.0〜5.0g/hr、所望により1.0〜3.5g/hrの速度で発生できることを見出した。これらのPM堆積速度は、軽負荷ディーゼル(LDD)エンジン及び重負荷ディーゼル(HDD)エンジンの両方に対する速度を包含し、従って、本方法は、LDD及びHDD用途の両方に対する新規な排気機構を実験室試験するのに好適である。
【0031】
燃料の質量流量を変化させることにより、様々な負荷の下でのエンジン作動が模擬されるので、排気機構に使用する触媒モノリス基材またはフィルターの実験室試験では、試験中に質量流量を変え、駆動サイクル型試験を形成することができよう。
【0032】
また、上記のように、本発明者らは、PM補集場所を通って流れるガスが、自動車エンジンにより形成され、排気処理機構を通って流れるガスに類似しているのが有利であることを見出した。PM補集場所を通って流れるガスの、排気処理機構を通って流れるガスの特徴と好ましくは同等であるべき特徴には、温度、流量及びPM堆積速度が挙げられる。一実施態様では、PM補集場所に流れ込むガスの温度は、100〜300℃、所望により100〜225℃である。この温度は、PM補集場所に流れ込むガスの温度が、容器のガス入口を通って流れるガスの温度より少なくとも80℃低くなる、例えば容器のガス出口における340℃が、PM補集場所への入口で温度250〜220℃に下がるように、導管を通って流れるガスを能動的および/または受動的に冷却することにより達成できる。あるいは、容器のガス出口を通って流れるガスの温度が、PM補集場所に流れ込むガスの温度とほぼ等しくなるように、ガスを容器中で十分に冷却することができる。
【0033】
導管を通って流れるガスを能動的に冷却する技術は、ファンを使用すること、または導管を水ジャケットで包み込むことを含んでなることができる。導管を通って流れるガスを受動的に冷却するには、(大きな表面積が常温の空気と接触するように)導管の長さをより長くするか、または導管の外部に吸熱源として作用する冷却フィンを取り付けることができる。
【0034】
所望により、またはさらに、PM補集場所から出るガスを、例えば熱交換機を使用して冷却し、ファン効率を改良することができる。熱交換機は、空冷式または水冷式ラジエータをさらに備えてなることができる。
【0035】
本発明のもう一つの部分は、2工程燃焼方法、及びこの方法を実行できるように開発された装置に関する。
【0036】
液体炭素含有燃料を燃焼させる先行技術の方法には、ヨーロッパ特許第EP0205902A1号明細書に開示されている方法があり、この方法は、カーボンブラック製造用の装置に関し、空気案内ボデーを使用して燃料ノズル周囲の空気流を制御し、燃料/空気混合物を第一チャンバー中で均質化し、次いで第二チャンバー中で点火する。独国特許第DE2512716A1号明細書は、燃料ノズル周囲の空気流を、旋回羽根を使用して制御し、次いで形成された空気/燃料混合物に点火する装置を開示している。独国特許第DE2512716A1号明細書に開示されている装置の設計は、燃料と接触する全ての空気が、旋回羽根を通過して流れ、燃料と接触する必要があるので、乱流であり、従って、燃焼は乱流空気のみを使用して行われる。
【0037】
そこで、第三の態様により、本発明は、液体炭素含有燃料を燃焼させ、実験室分析用の粒子状物質を発生する方法であって、燃焼缶中で、酸化性ガス流により取り囲まれた燃料液滴の細かい霧スプレーを発生させ、リッチ燃焼混合物流を発生させる工程、該燃焼缶中で該リッチ燃焼混合物流に点火する工程、及び該リッチ燃焼混合物流の燃焼を、該リッチ燃焼混合物流が該燃焼缶を出るまで続行させ、それによって、該燃焼混合物が、実質的に非乱流である取り込まれた空気と混合されるので、該燃焼缶を出る該燃焼混合物が、よりリーンになる工程を含んでなる、方法を提供する。本明細書では、用語「実質的に非乱流である」は、燃焼缶を取り囲む空気を敢えて乱流にしないことを意味するために使用する。実施態様によっては、燃焼缶を取り囲む空気が、(例えば本発明の第一および第二態様に記載する容器を通って)燃焼缶の周りに流れ込み、取り込まれる空気の供給が燃焼方法に確実に利用できるようになるが、そのような実施態様においても、燃焼缶の周りにある空気は、どのような物理的手段によっても攪拌されない。
【0038】
上記のPM発生及び補集方法では、燃焼する燃料は、炭化水素及び酸化された燃料でよい。さらに、本方法は、燃料に加えて、排ガス前駆化合物の燃焼も包含する。
【0039】
別の態様で、本発明は、上記の方法で使用する装置であって、炭素含有燃料液滴の細かい霧スプレーを、排出口を備えてなる燃焼缶の中にスプレーするノズル、該燃料スプレーを取り囲む酸化性ガスの流れを形成する手段、及び該燃料スプレーが該ノズルから出る時に該燃料スプレーに点火する手段を備えてなる、装置を提供する。
【0040】
上記のPM発生及び補集装置では、ノズルは、燃料液滴の非中空円錐形スプレー配分パターンを形成するように設計することができ、燃料バーナーのノズルは、水平または垂直に配置することができる。
【0041】
本発明をより深く理解できるようにするために、添付の図面を参照しながら、下記の例を例示のためにのみ記載する。
【0042】
図1及び2に関して、炭素含有燃料の燃焼に由来するPMを補集する装置10は、燃料バーナー12、容器14中に収容されたノズル、ガスを輸送する導管16、及び容器及び導管を通して大気中にガスを吸引するファン18を備えてなる。燃料バーナーには、燃料貯蔵部20から供給する。この装置は、使用中に燃料流量を制御する手段(図には示していない)及び使用中に燃料の温度を制御する手段(図には示していない)をさらに備えてなることができる。容器は、ガス入口22、ガス出口24及びガス入口を通って流れるガスの流量を測定する流量計26を有する。CSF28は、導管中にあるPMを補集する場所の中に配置されている。CSFの上流にある導管を通って流れるガスは、ファン30により冷却されるのに対し、CSFの下流にある導管を通って流れるガスは、水冷式ラジエータ34に関連する熱交換機32により冷却される。圧力センサー36がCSFの両側に配置されている。温度センサー38は、導管の長さに沿った様々な位置に配置されている。
【0043】
図3に関して、2工程燃焼方法で炭素含有燃料に点火する装置40は、燃料液滴のジェットをスプレーするノズル42、及び燃料ジェットを取り囲む酸化性ガスの流れを形成するファン44を備えてなり、燃料ジェット及び酸化性ガスの流れの両方とも、燃焼缶46の中にある。点火された時、燃料ジェットは、リッチ一次火炎48の中で部分的に燃焼した後、燃料ジェット及び酸化性ガスの流れが燃焼缶46から外に出て、取り込まれたガスと混合されるので、燃料は、リーン外側火炎区域50の中でさらに燃焼する。白色矢印は、ファンにより供給されたガスに対するガス流の方向を示し、淡灰色矢印は、取り込まれたガスに対するガス流の方向を示す。
【0044】
例1
エンジン試験における粒子状物質補集
試験台に取り付けたエンジンを、典型的な都市部走行条件を模擬する、10時間サイクルにわたって走行するように設定した。標準的なディーゼル燃料(硫黄50ppm)約27kgをサイクル中に使用した。エンジンから出る排ガスは、入口温度が250〜350℃になるように配置したCSFを通して流した。一方の口をCSFの上流側に配置し、別の口をCSFの下流側に配置した差圧センサーを使用し、CSFを横切る圧損(または背圧)を測定した。
【0045】
実験が完了した後、装置を冷却させ、CSFの固まりを取り外し、150℃に2時間加熱して吸収された水を全て除去し、計量した。次いで、CSFを(昇温速度12℃/分で)650℃に加熱し、その温度に3時間保持し、CSF上に補集されたPMを全て燃焼させた。CSFを150℃に冷却した後、再計量し、その重量差を、装置中におけるCSF処理後のPM含有量として記録した。
【0046】
例2
装置を使用する際の粒子状物質補集
図1に示す装置に類似した装置を、燃料貯蔵部中にある標準的なディーゼル燃料(硫黄50ppm)で設定した。容器の入口における空気流量は、導管の末端に配置したファンに供給する電力により制御して2.4m/分に設定し、導管を通してガスを大気中に放出した。燃料バーナー容器の出口とCSFとの間の導管の長さ、及び導管の下に配置したファンの使用により、CSFの入口温度は、自動車用触媒に典型的な温度(220〜250℃)であることが確認された。CSF缶を開き、フィルターの固まりだけが残るようにし、次いで、これをPM補集場所の中にある導管の中に装填した(これは、エンジン試験用のCSF装填方法と類似の手順である)。燃料バーナーに点火し、5時間燃焼させ、その間に燃料7リットルを消費した。一方の口をPM補集場所の上流側に配置し、別の口をPM補集場所の下流側に配置した差圧センサーを使用し、PM補集場所を横切る圧損(または背圧)を測定した。
【0047】
実験が完了した後、例1に記載するように、本装置におけるCSF処理後のPM含有量を測定した。
【0048】
図4は、圧損と、粒子状物質堆積との環系を示す(粒子状物質堆積は、堆積した粒子状物質の総重量を、実験を行った時間で割ることにより計算し、それによって、一様な堆積速度を推定した)。このグラフは、本発明の粒子状物質発生装置に対する圧損特性が、エンジンに対する圧損特性と非常に近いことを明らかに示している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明のPM発生及び補集装置の一実施態様を図式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明のPM発生及び補集装置の別の実施態様を図式的に示す図である。
【図3】図3は、本発明の2工程燃焼方法で炭素含有燃料に点火する装置の一実施態様を図式的に示す図である。
【図4】図4は、実験室エンジン試験及び本発明のPM発生及び補集装置で試験した触媒作用を付与した煤フィルターを横切る圧損を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体炭素含有燃料の燃焼に由来する粒子状物質を発生及び補集する装置であって、
ノズルを備えてなる燃料バーナーと、
前記ノズルは容器中に収容されており、前記容器はガス入口およびガス出口を備えてなり、前記ガス出口は、ガスを前記ガス出口から大気中に輸送するための導管と接続しており、
前記ガス入口を通るガスの流量を検出する手段と、
酸化性ガスを前記ガス入口から前記容器、前記ガス出口及び前記導管を経由して大気中に強制的に流す手段と、
前記導管を通って流れるガスから粒子状物質を補集する場所と、及び
前記ガス入口で検出されたガス流量に応答して前記ガス流強制手段を制御する手段とを備えてなり、
前記ガス入口におけるガス流量が、前記容器中で燃料を準化学量論的に燃焼させる所望の流量に維持され、それによって、粒子状物質形成を促進する、装置。
【請求項2】
前記ガス流強制手段が、前記容器のガス入口の中にガスを吸引する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガス流強制手段が、所望により前記粒子状物質補集場所と大気中に出る導管との間に配置されたファンを備えてなる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記粒子状物質補集場所と前記大気中に出る導管との間の導管が、前記ファンと接触する排ガスの温度を下げる熱交換機、所望により空冷または水冷式ラジエータ、を備えてなる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ガス流強制手段が、ガスを前記ガス入口を通して送り込む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ガス流強制手段がポンプを備えてなる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記容器のガス出口と前記粒子状物質補集場所との間に配置された導管の長さが、前記導管の直径の5〜50倍である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
使用中に前記燃料バーナー中に流れ込む燃料の流量を制御する手段、及び使用中に前記燃料バーナー中に流れ込む燃料の温度を制御する手段をさらに備えてなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ノズルに加えて、前記燃料バーナーが、燃料ポンプ、燃料に点火する手段、及び安全遮断装置を備えてなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ノズルが、燃料液滴の非中空円錐形配分パターンを形成するように設計されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記ノズルが垂直に配置される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記導管中に注入装置が配置されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記粒子状物質補集場所が、触媒基材モノリスまたはフィルターを受け容れるように設計される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記粒子状物質補集場所を横切る圧損を測定するための、所望により差圧センサー、前記場所の上流側に配置された一方の口、前記場所の下流側に配置された他方の口を備えてなる手段を備えてなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
使用中に、前記ガス入口で検出されたガス流量に応答して、前記ガス流強制手段を制御することに加えて、前記圧損測定手段から来る情報に応答して、前記ガス流強制手段を制御する手段を備えてなる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記制御手段が、電子制御装置(ECU)を備えてなる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記装置を通って流れるガスの温度を感知する手段、所望により熱電対、を備えてなる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
酸化性ガス中で液体炭素含有燃料を燃焼させることに由来する粒子状物質を発生及び補集する方法であって、
燃料バーナーで、前記燃料を、準化学量論的量の酸化性ガス中で燃焼させること、
前記燃料バーナーはノズルを備えてなり、前記ノズルは容器中に収容されており、
酸化性ガスを、前記容器のガス入口から、前記容器のガス出口及び前記ガス出口に接続された導管を経由して、大気中に強制的に流すこと、
前記導管中に位置する場所で粒子状物質を補集すること、
前記ガス入口で酸化性ガスの流量を検出すること、及び
前記ガス入口で酸化性ガスの所望の流量が維持されるように、酸化性ガスの流量を制御することを含んでなる、方法。
【請求項19】
前記燃料バーナーが、炭化水素燃料及び酸素化された燃料を燃焼させる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記燃料バーナーが、標準的な自動車燃料、所望によりディーゼル燃料またはガソリン、を燃焼させる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記燃料バーナーが、炭化水素燃料及び酸素化された燃料に加えて、少なくとも一種の排ガス前駆化合物を燃焼させる、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも一種の排ガス前駆化合物を前記導管中に注入することを含んでなり、前記導管中に注入される前記少なくとも一種の化合物が、前記粒子状物質補集場所に到達する前に、前記容器から出るガス中で少なくとも部分的に分解する、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記排ガス前駆化合物が、アミンおよび/または有機硫黄化合物を含んでなる、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも一種の排ガス成分を、前記粒子状物質補集場所の上流にある前記導管中に注入することを含んでなる、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
粒子状物質を、1.0〜20.0g/hr、所望により1.0〜3.5g/hrの速度で発生することを含んでなる、請求項18〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記粒子状物質補集場所に流れ込むガスの温度が、100〜300℃、所望により100〜225℃である、請求項18〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記粒子状物質補集場所から出るガスを、熱交換機、所望により空冷式または水冷式ラジエータ、を使用して冷却することを含んでなる、請求項18〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
液体炭素含有燃料を燃焼させ、実験室分析用の粒子状物質を発生する方法であって、
燃焼缶中で、酸化性ガス流により取り囲まれた燃料液滴の細かい霧スプレーを発生させ、リッチ燃焼混合物流を発生させる工程、
前記燃焼缶中で前記リッチ燃焼混合物流に点火する工程、及び
前記リッチ燃焼混合物流の燃焼を、前記リッチ燃焼混合物流が前記燃焼缶を出るまで続行させ、それによって、前記燃焼混合物が、実質的に非乱流である取り込まれた空気と混合されるので、前記燃焼缶を出る前記燃焼混合物が、よりリーンになる工程を含んでなる、方法。
【請求項29】
炭化水素燃料及び酸化された燃料が前記燃焼缶中で燃焼する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
炭化水素燃料及び酸素化された燃料に加えて、少なくとも一種の排ガス前駆化合物が前記燃焼缶中で燃焼する、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法で使用する装置であって、
炭素含有燃料液滴の細かい霧スプレーを、排出口を備えてなる燃焼缶の中にスプレーするノズル、前記燃料スプレーを取り囲む酸化性ガスの流れを形成する手段、及び
前記燃料スプレーが前記ノズルから出る時に前記燃料スプレーに点火する手段を備えてなる、装置。
【請求項32】
前記ノズルが、燃料液滴の非中空円錐形スプレー配分パターンを形成するように設計される、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記ノズルが垂直に配置される、請求項31または32に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−316060(P2007−316060A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−114141(P2007−114141)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】