粒子状物質検出装置、及び粒子状物質の検出方法
【課題】排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することが可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】電極部21と、信号測定部22と、算出部23とを備え、信号測定部22により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部24と、測定信号記憶部24に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、その変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する信号判定部25と、測定信号の値の変化量が、バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する補正部26と、を更に備えた粒子状物質検出装置100。
【解決手段】電極部21と、信号測定部22と、算出部23とを備え、信号測定部22により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部24と、測定信号記憶部24に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、その変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する信号判定部25と、測定信号の値の変化量が、バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する補正部26と、を更に備えた粒子状物質検出装置100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置、及び粒子状物質の検出方法に関する。更に詳しくは、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することが可能な粒子状物質検出装置、及び粒子状物質の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、セラミック等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。セラミック製のDPFは、長期間の使用が可能であるが、熱劣化等によりクラックや溶損等の欠陥が発生することがあり、微量ではあるが粒子状物質が漏れる可能性がある。このような欠陥が発生した場合には、その欠陥の発生を即座に検知し、フィルタの異常を認識することが、大気汚染防止の観点から極めて重要である。
【0003】
このような欠陥の発生を検知する方法として、DPFの下流側に粒子状物質検出装置を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の発明は、コロナ放電によって粒子状物質を帯電させ、そのイオン電流を測定することにより、粒子状物質の量を測定するものである。このように、粒子状物質を帯電させてそのイオン電流を測定する方法では、粒子状物質に帯電するイオン電流が微弱であるため、その微弱なイオン電流を検出するために大掛かりな検出回路が必要になり、高価なものとなってしまう。また、排ガスが高流量である場合には、粒子状物質を効果的に帯電させることが困難であるため、粒子状物質の測定値が、実際に排ガスに含有されている粒子状物質の量より小さい値となり、その誤差が大きくなってしまう。
【0005】
このようなことから、例えば、平板状の陰極、前記陰極と対向して設けられている平板状の陽極、前記陰極と陽極との間の空間に電界を生じさせるための電圧印加手段、並びに前記陰極及び前記陽極を加熱する加熱手段を備えており、前記陰極と前記陽極との間に電圧を印加したときの前記陰極と前記陽極との間の電流値の変化に基づいて前記スートを測定するスート測定装置等が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−123761号公報
【特許文献2】特開2005−114557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献2に記載の粒子状物質検出装置は、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部だけが検出面に付着するため、誤差の少ない測定値を得ることができるものであるが、例えば、一旦電極に付着した粒子状物質は、高流量の排ガスに常時曝されているため、測定中に電極から脱離してしまうことがある。そして、このような検出面に粒子状物質を付着させる方式のセンサーにおいては、電極からの粒子状物質の脱離が生じると、粒子状物質の質量の測定を正確に行うことができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することが可能な粒子状物質検出装置、及び粒子状物質の検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、電極に付着した粒子状物質は、その量が一定に達して、ある程度の質量をもった凝集粒子となった場合に、上記のような電極からの脱離を生じるため、測定される測定信号の信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が、連続する10サンプルの測定間に確認された場合に、当該減少値を測定信号に加算して測定値の補正を行うことによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質の検出方法が提供される。
【0010】
[1] 内燃機関の排気系に設けられた電極部と、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を前記電極部に吸着させ、前記電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部と、前記測定信号の値を基に前記排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する算出部と、備え、前記信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部と、前記測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する前記測定信号の値の変化量を求め、前記変化量と、前記測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する信号判定部と、前記変化量が、前記測定信号の前記バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を前記減少が確認された前記測定信号の値に加算して前記測定信号の値を補正する補正部と、を更に備え、前記補正部により補正された前記測定信号の値を基に、前記算出部により前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質検出装置。
【0011】
[2] 前記信号測定部により測定される前記電気的特性が、静電容量又は抵抗値である前記[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【0012】
[3] 前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものである前記[1]又は[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0013】
[4] 一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備えるとともに、前記電極部が、少なくとも一対の計測電極を有し、前記少なくとも一対の計測電極が、前記検出装置本体の前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設されている前記[1]又は[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0014】
[5] 前記一対の計測電極の埋設位置よりも、前記検出装置本体の前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設された少なくとも一対の集塵電極を更に備えた前記[4]に記載の粒子状物質検出装置。
【0015】
[6] 内燃機関の排気系に電極部を配設し、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を前記電極部に吸着させて、前記電極部の電気的特性を測定信号として継続的に検出する測定工程と、前記測定信号を基に前記排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質量算出工程と、を備え、前記信号測定部により測定された前記測定信号の値を、測定信号記憶部に記憶させる測定信号記憶工程と、前記測定信号記憶部に記憶させた10サンプル以下の連続する前記測定信号の値の変化量を求め、前記変化量と、前記測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する判定工程と、前記変化量が、前記測定信号の前記バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を前記減少が確認された前記測定信号の値に加算して前記測定信号の値を補正する補正工程と、を更に備え、前記補正工程により補正された前記測定信号の値を基に前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質の検出方法。
【0016】
[7] 前記電気的特性として、前記電極部の静電容量又は抵抗値を測定する前記[6]に記載の粒子状物質の検出方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粒子状物質検出装置は、信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部と、測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する信号判定部と、変化量が、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する補正部と、備えたものである。本発明の粒子状物質検出装置によれば、一旦電極に付着した粒子状物質が、この電極から脱離した場合に、脱離した粒子状物質に相当する測定信号の減少分を補正して、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することができる。また、本発明の粒子状物質の検出方法によれば、本発明の粒子状物質検出装置の補正部と同様の補正を行うことにより、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することができる。
【0018】
即ち、排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を電極部に吸着させ、この電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定し、その測定信号の値から粒子状物質の量を算出する粒子状物質検出装置及び粒子状物質の検出方法においては、継続的に測定される電気的特性の測定信号は、粒子状物質の電極への付着(吸着)とともに、常時増大する傾向にある。このため、連続する10サンプル以下の測定間に計測される測定信号において、所定の大きさ、具体的には、信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が生じた場合には、一旦電極に付着した粒子状物質の脱離として、減少した値を測定信号の値に加算して補正を行うことで、より高精度の測定を行うことが可能となる。
【0019】
特に、電極に付着した粒子状物質は、その量が一定に達して、ある程度の質量をもった凝集粒子となった場合に、上述したような電極からの脱離が生じ易く、測定信号の値の誤差(狂い)が大きくなってしまうということがあったが、上記したように補正を行うことにより、より正確な測定を実現することができる。例えば、測定信号は、信号ノイズとして信号のばらつきを有している。このため、測定される測定信号の全ての減少値を粒子状物質の脱落として補正を行った場合には、測定値が電極から粒子状物質が脱落した分を超えて過剰に上昇してしまうため、正確な測定が逆に困難になってしまう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を排気系に配設して粒子状物質の測定を行う状態を模式的に示す説明図である。
【図1B】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を排気系に配設して粒子状物質の測定を行う状態を模式的に示す説明図である。
【図1C】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を排気系に配設して粒子状物質の測定を行う状態を模式的に示す説明図である。
【図2A】本発明の粒子状物質検出装置によって測定される電気的特性の、補正部によって補正される前の値を示すグラフである。
【図2B】本発明の粒子状物質検出装置によって測定される電気的特性の、補正部によって補正された後の値を示すグラフである。
【図3】本発明の粒子状物質検出装置によって粒子状物質の検出を行う工程の一例を示すフローチャートである。
【図4A】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を模式的に示す正面図である。
【図4B】図4Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図である。
【図4C】図4Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図である。
【図4D】図4Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。
【図5】図4BのA−A’断面を示す模式図である。
【図6】図5のB−B’断面を示す模式図である。
【図7】図5のC−C’断面を示す模式図である。
【図8】図5のD−D’断面を示す模式図である。
【図9】図5のE−E’断面を示す模式図である。
【図10】図5のF−F’断面を示す模式図である。
【図11】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態の構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0022】
〔1〕本発明の粒子状物質検出装置の特徴:
図1A〜図1Cは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を排気系に配設して粒子状物質の測定を行う状態を模式的に示す説明図である。なお、図1Aは、測定前の状態(即ち、電極部に粒子状物質が付着する前の状態)を示し、図1Bは、電極部に粒子状物質が付着した測定状態を示し、図1Cは、電極部に付着した粒子状物質の一部が電極部から脱離する状態を示している。図11は、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態の構成を模式的に示す説明図である。
【0023】
図1A〜図1C、及び図11に示すように、本実施形態の粒子状物質検査装置100は、内燃機関の排気系に設けられた電極部21と、排気系を通過する排ガス32に含まれる粒子状物質36を電極部21に吸着させ、電極部21の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部22と、測定信号の値を基に排ガス32に含まれる粒子状物質36の量を算出する算出部23と、を備えた粒子状物質検出装置100である。図1A〜図1Cにおいては、排気系中で使用される配管31に、電極部21が設けられた例を示す。また、図11においては、電極部21が、検出装置本体27に配置され、電極部21と信号測定部22とが配線28により電気的に接続された例を示す。
【0024】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、粒子状物質36の量を算出するための電極部21の電気的特性を、測定信号として継続的に信号測定部22にて測定し、測定された測定信号の値を基に、算出部23にて、排ガス32に含まれる粒子状物質36の量を算出することができる。例えば、測定された測定信号の電気的特性の変化から、排ガス32に含まれる粒子状物質36の量を推算することができる。
【0025】
そして、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、測定信号記憶部24と、信号判定部25と、補正部26と、を更に備えたものである。測定信号記憶部24は、信号測定部22により測定された測定信号の値を記憶するものである。信号判定部25は、測定信号記憶部24に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較するものである。また、補正部26は、信号測定部22において求められた変化量が、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値をその減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正するものである。本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、補正部26により補正された測定信号の値を基に、上記算出部23により粒子状物質の量を算出する。このため、例えば、図1Cに示すように、一旦電極部21に付着した粒子状物質36が、この電極部21から脱離した場合に、脱離した粒子状物質36aに相当する測定信号の減少分を補正して、排ガス32に含まれる粒子状物質36の量を高精度に測定することができる。減少値をその減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する場合には、当該補正が、それ以降の測定信号の値(即ち、減少が確認された測定信号よりも後に測定された測定信号の値)にも反映されるように、上記加算値と同様の値を、それ以降の測定信号の値に加算する補正を行う。
【0026】
即ち、排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を電極部に吸着させ、この電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定し、その測定値から粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出装置及び粒子状物質の検出方法においては、継続的に測定される電気的特性の測定信号は、粒子状物質の電極への付着(吸着)とともに、常時増大する傾向にある。このため、連続する10サンプル以下の測定間に計測される測定信号において、所定の大きさ、具体的には、信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が生じた場合には、一旦電極に付着した粒子状物質の脱離として、減少した値を測定値に加算して補正を行うことで、より高精度の測定を行うことが可能となる。
【0027】
特に、電極に付着した粒子状物質は、その量が一定に達して、ある程度の質量をもった凝集粒子となった場合に、上述したような電極からの脱離が生じ易く、測定値の誤差(狂い)が大きくなってしまうということがあったが、上記したように補正を行うことにより、より正確な測定を実現することができる。例えば、測定信号は、信号ノイズとして信号のばらつきを有している。このため、測定される測定信号の全ての減少値を粒子状物質の脱落として補正を行った場合には、測定値が電極から粒子状物質が脱落した分を超えて過剰に上昇してしまうため、正確な測定が逆に困難になってしまう。
【0028】
例えば、図2Aは、排ガスに含まれる粒子状物質を電極部に吸着させ、この電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定した結果を示すグラフである。図2Aにおいては、横軸を測定時間(秒)とし、縦軸を電気的特性の測定値としている。なお、電気的特性としては、静電容量を測定した場合の例を示している。
【0029】
図2Aに示すように、電極部の電気的特性を測定信号として測定した場合には、電極部に導電性を有する粒子状物質が電極部に付着することにより、測定される電気的特性が増加する。そして、図1Cに示すように、一旦電極部21に付着した粒子状物質36が、この電極部21から脱離した場合には、図2Aに示す、点A,B,C,Dのように、電気的特性の測定信号が減少する。但し、図2Aに示すように、測定される測定信号は、信号ノイズを有しており、上記した粒子状物質の脱離による減少以外にも、信号ノイズによる測定値のばらつきが生じている。
【0030】
このため、測定される測定信号における全ての減少分を、その測定値に加算する補正を行うと、信号ノイズによって減少した値まで補正値に含まれてしまい、その補正値が、粒子状物質の脱離量を超えて増加してしまう。
【0031】
電極に付着した粒子状物質は、ある程度の質量をもった塊(凝集粒子)となった場合に、上述したような電極からの脱離が生じるため、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、測定される測定信号の信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が、連続する10サンプル以下の測定間に確認された場合に、当該減少を粒子状物質の脱離と判断し、その減少値を測定値に加算する補正を補正部によって行う。これにより、より正確な測定が実現される。
【0032】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、図2Bに示すように、図2Aに示す、点A,B,C,Dのような信号ノイズの2倍以上の大きさの減少を、信号判定部にて粒子状物質の脱離と判断する。そして、補正部が、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する。ここで、図2Aは、本発明の粒子状物質検出装置によって測定される電気的特性の、補正部によって補正される前の値を示すグラフであり、図2Bは、本発明の粒子状物質検出装置によって測定される電気的特性の、補正部によって補正された後の値を示すグラフである。
【0033】
ここで、本実施形態の粒子状物質検出装置によって粒子状物質の検出を行う方法を、図3を用いて更に説明する。図3は、本実施形態の粒子状物質検出装置によって粒子状物質の検出を行う工程の一例を示すフローチャートである。
【0034】
図3に示すように、まず、粒子状物質の測定準備として、バックグラウンド信号ノイズの測定を行う。その後、このバックグラウンド信号ノイズの値を、測定信号記憶部等の記憶部に記憶する。次に、電極部の電気的特性(測定信号)の測定を開始し、測定した測定信号の値を、測定信号記憶部に記憶する。その後、測定された測定信号の値について、必要に応じて補正を行う。具体的には、信号判定部により、10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を算出し、この測定信号の値の変化量と、バックグラウンド信号ノイズの値とを比較する。ここで、測定信号の値の変化量が、バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の減少である場合には、補正部によって、当該減少値を、減少が確認された測定信号の値に加算する補正を行う。補正した測定信号の値については、測定信号記憶部に、補正後の測定値として記憶される。補正部による補正が終了した後、及び信号判定部にて、バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の減少の確認されなかった場合には、更に、別の10サンプル以下の連続する測定信号の値について、判定及び補正を行う。
【0035】
粒子状物質検出装置の電極部は、粒子状物質を付着させて、この粒子状物質の付着に伴う電気的特性の変化を測定するための検知部(センサー)として用いられる電極である。このような電極部の電極としては、例えば、装置の表面等に導体ペーストを塗布して形成した電極や、金属板などからなる電極等を挙げることができる。この電極部は、測定信号を測定するための信号測定部と電気的に接続されており、電極部における電気的特性を信号測定部によって検出(測定)することができるように構成されている。
【0036】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置の電極部は、粒子状物質の測定を行うもの以外にも、例えば、排ガスに含まれる粒子状物質を装置に集塵するための電界を発生させるための電極を含んでいてもよい。即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置は、排ガス中の粒子状物質を粒子状物質検出装置(特に、電極部)に付着させ、電極部を構成する電極(以下、この電極を「測定電極」ということがある)の電気的特性の変化を読み取ることにより、その電気的特性の変化から排ガス中の粒子状物質を検出するものであるため、例えば、粒子状物質検出装置周辺に電界を生じさせ、排ガス中を流れる粒子状物質を集塵するための電極(以下、このような電極を「集塵電極」ということがある)を更に備えていてもよい。
【0037】
信号測定部は、電極部及びこの電極部の周辺に粒子状物質が付着することによる電極部の電気的特性の変化を読み取る計測部分である。排ガスに含まれる粒子状物質は、その大半が煤からなるものであるため、導電性を有しており、電極部等に粒子状物質が付着した場合には、測定される電気的特性(換言すれば、測定信号の値)に変化を与える。このため、内燃機関の排気系に設けられた電極部の電気的特性の変化を測定することによって、排ガス中に粒子状物質が含まれているか否かを検出することができる。
【0038】
具体的な信号測定部としては、電極部の電気的特性の変化を測定信号として継続的に測定する検出回路を挙げることができる。例えば、測定する電極部の電気的特性が、静電容量である場合には、一方の電極に交流電圧を印加し、静電容量が変化した場合に、もう一方の電極に接続された変換器或いはチャージアンプによって静電容量に比例する電圧として検出する。
【0039】
測定信号記憶部は、信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する記憶媒体である。信号判定部は、測定信号記憶部に記憶された測定信号の値を読み出し、読み出した測定信号の値と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズとの値と比較するものである。測定信号の「バックグラウンド信号ノイズ」は、電極部から信号測定部までの測定系に外乱がなく、電極部の電気的特性を安定した状態で測定される実効値とすることができる。
【0040】
より具体的なバックグラウンド信号ノイズの測定方法としては、まず、粒子状物質検出装置を安定した状態に載置し、その状態にて、電極部の電気的特性の測定を行う。次に、得られた電気的特性の測定データから、その標準偏差を算出し、得られた標準偏差を、測定信号の「バックグラウンド信号ノイズ」とする。
【0041】
また、信号測定部に用いられる検出回路の構成によっても異なるが、上記のバックグラウンド信号ノイズの測定において、電気的特性の測定点数(即ち、サンプル数)を大きくすると、得られるバックグラウンド信号ノイズの値(即ち、上記標準偏差)が大きくなることがある。本実施形態の粒子状物質検出装置においては、バックグラウンド信号ノイズと粒子状物質の脱離との違いを判断し、前記バックグラウンド信号ノイズを測定値の補正から除くことができればよい。このため、バックグラウンド信号ノイズの測定におけるサンプル数は、50〜200点であることが好ましい。例えば、実際の信号測定部における測定が、10m秒間隔の測定の場合には、バックグラウンド信号ノイズの測定に要する時間は、0.5〜2秒程度であることが好ましい。
【0042】
なお、上記バックグラウンド信号ノイズの値は、粒子状物質検出装置を最初に使用する状態にて測定された測定信号の信号ノイズの値であってもよい。このような予め測定された測定信号の信号ノイズの値(バックグラウンド信号ノイズの値)は、測定信号記憶部等の記憶媒体に記憶させておくことができる。また、例えば、同一の構成の粒子状物質検出装置が大量に製造され、このような粒子状物質検出装置が、種々の自動車等に設置されて使用される場合には、これら同一の構成の粒子状物質検出装置において、統一したバックグラウンド信号ノイズの値を予め設定してもよい。このような統一したバックグラウンド信号ノイズの値についても、測定信号記憶部等の記憶媒体に記憶させておくことができる。即ち、特定の粒子状物質検出装置において、そのバックグラウンド信号ノイズの値が予め分かっている場合には、バックグラウンド信号ノイズの値を測定する工程は省略され、設定されたバックグラウンド信号ノイズの値を用いて、信号判定部による判定が行われてもよい。
【0043】
本実施形態の粒子状物質検出装置においては、バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の大きさの減少を、粒子状物質の脱離と判断するものであるが、その理由としては以下の通りである。電極部の電気的特性の変化を信号測定部によって測定する場合に、電気的特性のサンプル数によって、バックグラウンド信号ノイズがあまり変化しない部分では、このバックグラウンド信号ノイズは、ホワイトノイズと称されるような略正規分布の特性を有するものとなる。そして、正規分布では、平均μと標準偏差σで表されるガウス分布(確率密度関数)において、平均μからのずれが±1σ以下の範囲に含まれる確率は68.26%であり、±2σ以下の範囲に含まれる確率は95.44%であり、±3σ以下の範囲に含まれる確率は99.74%である。このため、上記バックグラウンド信号ノイズとしての正規分布の2倍以上の大きさの信号は、有効な信号であると考えることができる。
【0044】
なお、上記補正部は、10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量が、バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少を粒子状物質の脱離と判断し、その減少値を減少が確認された測定信号の値(以下、「測定値」ということがある)に加算する補正を行うものである。粒子状物質の電極部からの脱離は、極めて短時間で起こるため、信号測定部に用いられる検出回路の分解能が十分である場合には、上記した減少が、連続する5サンプル以下の測定間に確認された場合に補正を行うものであることが好ましく、連続する3サンプル以下の測定間に確認された場合に補正を行うものであることが更に好ましい。なお、10サンプルの測定を超えると、例えば、電極部が設けられた排気系の温度変化が生じた場合に、その温度変化による測定値の変化が、バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の値となり、温度変化等による測定値の変化が補正値に含まれてしまうことがある。変化量を確認するサンプル数を連続する10サンプル以下とすることにより、上記温度変化等による変化の影響を受け難く、粒子状物質の電極部からの脱離による減少分を選択的に検知することが可能となる。なお、連続する3サンプル未満、例えば、1サンプルの測定であると、そのサンプルの測定中に粒子状物質が離脱することも考えられ、正確性に劣ることがある。
【0045】
なお、「連続する10サンプルの測定間」とは、継続的に連続して行われる信号測定部の電気的特性の測定において、1つの測定値を得る測定時間を1サンプル時間とした場合に、10回の測定を行う時間間隔のことをいう。即ち、「バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が、連続する10サンプル以下の測定間に確認される」とは、最大で10回までの連続した測定信号の測定において、その測定間に、バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が確認される場合のことを意味する。従って、1回の測定時間(即ち、1サンプルの測定時間)が、10m秒の場合には、連続する10サンプルの測定時間は、100m秒となる。
【0046】
信号測定部における電気的特性の1サンプルの測定時間は、1〜50m秒であることが好ましく、2〜20m秒であることが更に好ましく、5〜15m秒であることが特に好ましい。このような測定時間で電極部の電気的特性の測定を行うことによって、正確且つ分解能に優れた測定を行うことができる。測定時間の下限値は、検出回路の性能により異なるが、実質的な下限値が、上記した1m秒である。また、測定時間が長すぎると、一旦粒子状物質の脱離により測定値が減少した後、別の粒子状物質が電極部に付着することによって、上記粒子状物質の脱離による減少分が相殺されてしまい、粒子状物質の脱離を良好に検知することができないことがある。
【0047】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、10サンプル以下の測定間における、測定値の減少を確認することによって補正を行うものであるが、より詳細な測定及び補正を行うためには、5サンプル以下の測定間において減少を確認することが好ましく、3サンプル以下の測定間において減少を確認することが更に好ましい。このように構成することによって、より正確な測定を行うことができる。
【0048】
本実施形態の粒子状物質検出装置は、電極部、より好ましくは、粒子状物質検出装置に付着した粒子状物質を除去することが可能な粒子状物質除去手段を更に備えたものであることが好ましい。この粒子状物質除去手段の構成については特に制限はないが、例えば、電極部によって測定される電気的特性の変化を与える部位に熱を加え、付着した粒子状物質を燃焼除去可能な、ヒータ等を挙げることができる。なお、以下、このようにして電極部に付着した粒子状物質を、粒子状物質除去手段によって除去することを、粒子状物質検出装置の「再生」ということがある。本実施形態の粒子状物質検出装置は、上述した除去手段によって定期的な装置の再生を行いながら、粒子状物質の検出を行うことが好ましい。
【0049】
本実施形態の粒子状物質検出装置においては、特に限定されることはないが、信号測定部によって測定される電気的特性が、静電容量又は抵抗値であることが好ましい。このように構成することによって、排ガスに含まれる粒子状物質の検出を良好に行うことができるとともに、補正部による上述した補正をより正確に行うことができる。
【0050】
〔2〕本発明の粒子状物質検出装置の構成:
次に、本発明の粒子状物質検出装置のより具体的な構成について、図4A〜図4D、及び図5〜図10に示す粒子状物質検出装置を例に更に詳細に説明する。ここで、図4Aは、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を模式的に示す正面図であり、図4Bは、図4Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図であり、図4Cは、図4Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図であり、図4Dは、図4Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。また、図5は、図4BのA−A’断面を示す模式図である。また、図6は、図5のB−B’断面を示す模式図であり、図7は、図5のC−C’断面を示す模式図であり、図8は、図5のD−D’断面を示す模式図であり、図9は、図5のE−E’断面を示す模式図であり、図10は、図5のF−F’断面を示す模式図である。
【0051】
図4A〜図4D、及び図5〜図10に示す粒子状物質検出装置100aは、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極15,16と、貫通孔2を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極15,16の埋設位置よりも貫通孔2を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極11,12と、を備え、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するための粒子状物質検出装置100aである。上記一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12によって、粒子状物質検出装置100aの電極部21が構成され、この一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12は、配線15b,16b,11b,12bを介して取出端子15a,16a,11a,12aと接続されており、この取出端子15a,16a,11a,12aと、信号測定部22(図11参照)とが電気的に接続されている。また、この粒子状物質検出装置100aは、除去手段25として、加熱部13を有している。また、一対の計測電極15,16は、一対をなすそれぞれが複数に分岐(例えば、図8に示すように、櫛歯状に分岐)をして、複数の対向部分を有している。
【0052】
この粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、一対の集塵電極11,12に電圧を印加することにより荷電された、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能なものである。更に、貫通孔2を形成する壁の電気的特性の変化を、上記一対の計測電極15,16によって測定することにより、貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能である。これにより、本実施形態の粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に排ガス等を通過させて、排ガス中に含有される粒子状物質を検出することができる。
【0053】
この粒子状物質検出装置100aは、DPF等の下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔2内に流入した粒子状物質の量を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質の量を推算することができる。これにより、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能となる。
【0054】
また、粒子状物質検出装置100aは、上述したように排ガスの全量を測定するものではないため、粒子状物質検出装置100aを小型化することができ、狭いスペースに設置することが可能となる。
【0055】
また、DPF等の下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部だけを貫通孔2内に導入するため、貫通孔2内の粒子状物質を効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることができる。
【0056】
また、検出装置本体1が一方向に長く形成され、その一方の端部1aに、貫通孔2が形成されるとともに、一対の集塵電極11,12及び一対の計測電極15,16が配設(埋設)されるため、貫通孔2及び各電極(例えば、集塵電極11や一対の計測電極15,16)を高温の排ガスが流通する排気系中で使用される配管内に挿入し、他方の端部1b側を排気系中で使用される配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、各電極の取出端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、排気系中で使用される配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度が高く、且つ安定した測定を行うことができる。
【0057】
なお、この粒子状物質検出装置に用いられる検出装置本体1には、上記貫通孔2が少なくとも一つ形成されている必要があり、二つ以上であってもよい。また、検出装置本体1が誘電体から形成されることにより、一対の集塵電極11,12や、各種の配線11b,13b,15b,16bがそれぞれ誘電体で覆われた状態となっている。
【0058】
また、上記一対の計測電極15,16は、少なくとも一対備えることが必要であり、二対以上であってもよい。なお、図5においては、一対の計測電極15,16が、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面に配設された場合の例を示しているが、貫通孔2を形成する一方の壁の内部に埋設されていてもよい。
【0059】
また、一対の計測電極の形状については特に制限はなく、粒子状物質を貫通孔の壁に吸着させた際に、その壁の電気的な特性の変化を測定することができるように配置された一対の電極であればよい。なお、図8に示すように、一対の計測電極15,16は、線状を呈し、貫通孔2の壁の内側面又はその内部に長く対向しているものであることが好ましく、更に、線状を呈する一対の計測電極15,16は、一対をなすそれぞれが複数に分岐(例えば、図8に示すように、櫛歯状に分岐)をして、複数の対向部分を有するものであることが好ましい(例えば、上記櫛歯状の部分を所定の間隔を空けて噛み合わせるように対向配置されたものであることが好ましい)。このように構成することによって、一対の計測電極15,16の対向配置された部分を長く(広く)とることができ、より正確な測定値を得ることができる。
【0060】
なお、粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内を通過する粒子状物質が、ディーゼルエンジンより排出される煤であるときに、特にその効果を発揮させることができる。
【0061】
〔2−1〕検出装置本体:
検出装置本体は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長く構成された、粒子状物質検出装置の基体となる部位である。検出装置本体は誘電体から構成されており、この貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部には少なくとも一対の集塵電極が配置されており、この一対の集塵電極に電圧を印加することにより貫通孔内に電界を発生させることができる。
【0062】
検出装置本体を構成する誘電体は、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。中でも、アルミナを好適に用いることができる。このような誘電体からなる検出装置本体の内部に集塵電極を埋設することにより、誘電体に覆われた集塵電極を形成することが可能となる。そして、粒子状物質検出装置が、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。ここで、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
【0063】
なお、「検出装置本体の一方の端部」というときは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。また、「検出装置本体の他方の端部」というときは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。なお、検出装置本体の一方の端部は、好ましくは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。また、検出装置本体の他方の端部は、好ましくは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置とは、検出装置本体1から、上記一方の端部1aと他方の端部1bの範囲を除いた部分ということになる(図4A〜図4C参照)。
【0064】
図4A〜図4Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいて、検出装置本体1は、一方向に長く形成され、その長手方向の長さは、特に限定されないが、排気系中で使用される配管に挿入したときに排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングできる長さであることが好ましい。
【0065】
また、検出装置本体1の厚さ(「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向(厚さ方向)における長さ)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3mm程度が好ましい。ここで、「検出装置本体1の厚さ」というときは、上記厚さ方向において最も厚い部分の厚さをいう。また、検出装置本体1の、貫通孔2にガスが流通するときの流通方向における長さ(ガス流通方向の長さ)は、特に限定されないが、例えば、2〜20mm程度が好ましい。そして、検出装置本体1の長手方向長さは、検出装置本体1の厚さの10〜100倍であることが好ましく、検出装置本体1のガス流通方向の長さの3〜100倍であることが好ましい。
【0066】
検出装置本体1の形状は、図4A〜図4Dに示すように、長手方向に直交する断面形状が長方形の板状であってもよいし、図示は省略するが、当該断面形状が円形、楕円形等の棒状であってもよい。また、一方向に長い形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0067】
粒子状物質検出装置100aにおいて、貫通孔2の形状、及び大きさは特に限定されず、排ガスを通過させ、粒子状物質の量を測定できるものであればよい。例えば、貫通孔2の、検出装置本体の長手方向における長さは、2〜20mm程度が好ましく、貫通孔2の、集塵電極11,12で挟まれる部分の幅(検出装置本体の長手方向、及びガスの流通方向の両方に垂直な方向における長さ)は、3〜30mm程度が好ましい。
【0068】
貫通孔2の大きさを上記範囲とすることにより、粒子状物質を含む排ガスを貫通孔2内に十分に流通させることができ、更に、集塵電極11,12で発生する電界が貫通孔2内に粒子状物質を効果的に吸着させることが可能となる。
【0069】
また、貫通孔2の形状としては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることが好ましい。貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることにより、より効率的に排気系中に使用される配管内を流通する排ガス等を粒子状物質検出装置の貫通孔内に流入(入口部分が拡開された場合)させることや、流出(出口部分が拡開された場合)させることが可能となる。
【0070】
また、このような粒子状物質検出装置は、検出装置本体1が、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックを、それぞれの間に各電極、配線等を挟みながら積層して粒子状物質検出装置を作製することができるため、粒子状物質検出装置を効率的に製造することが可能となる。
【0071】
〔2−2〕計測電極(電極部):
計測電極は、貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に少なくとも一対配置されたものである。集塵電極によって貫通孔の壁面に粒子状物質を電気的に吸着させることにより、貫通孔を形成する壁の電気的特性が変化する。この電気的特性の変化を、計測電極に流れる測定信号(電気信号)として信号測定部により測定する。
【0072】
計測電極の形状については、上述したように貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することが可能なものであれば特に制限はないが、図8に示すような櫛歯状に分岐した形状を好適例として挙げることができる。このように構成することによって、より正確な測定を行うことができる。
【0073】
計測電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、計測電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0074】
この計測電極には、それぞれ検出装置本体の他方の端部に向かって延びる一対の計測電極配線が電気的に接続されている。それぞれの計測電極配線の幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、計測電極配線の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、計測電極配線の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0075】
また、図4A〜図4Dに示すように、粒子状物質検出装置100aの一対の計測電極15,16は、検出装置本体1の他方の端部1bに、それぞれの電極の取出端子15a,16aを有している。そして、この取出端子15a,16aが、計測電極(電極部)の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部22(図11参照)に電気的に接続されている。
【0076】
一対の計測電極15,16の取出端子15a,16aを、検出装置本体1の他方の端部1bに配設することにより、貫通孔2が配設される部分(即ち、一方の端部1a)と取出端子15a,16aとの間隔を大きくとることができる。このため、貫通孔2等が配設される一方の端部1aだけを高温の排ガスが流通する排気系中に使用される配管内に挿入し、取出端子15a,16aが配設されている他方の端部1b側を排気系中で使用される配管から外に出した状態にすることが可能となる。取出端子15a,16aを高温にすると、粒子状物質の検出精度が低下し、安定した検出が行い難くなることがあったり、長期にわたって使用した場合に電気端子と外部に接続するためのハーネスとの接点不良が発生し測定不能になったりすることがある。このため、取出端子15a,16aを排気系中で使用される配管の外に出し、高温に曝されない状態とすることにより、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0077】
検出装置本体1の他方の端部1bに配設された取出端子15a,16aは、図4Bに示すように、検出装置本体1の他方の端部1bの側面に、長手方向に延びるように配置されていることが好ましい。なお、図4Bにおいては、検出装置本体1の他方の端部1bは、幅が狭くなっているが、他方の端部1bの幅は、このように狭くなっていてもよいし、狭くなっていなくてもよい。取出端子15a,16aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.1〜2.0mm、長さ0.5〜20mmの帯状であることが好ましい。取出端子15a,16aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)等を挙げることができる。
【0078】
〔2−3〕集塵電極(電極部):
集塵電極は、貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、上記一対の計測電極の埋設位置よりも貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、検出装置本体を構成する誘電体で覆われた電極である。このような集塵電極11,12間に所定の電圧を印加することにより、貫通孔2内に電界を発生させることができる。
【0079】
集塵電極は、貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、貫通孔2内に電界を発生させることができるものであれば、その形状については特に制限はない。本実施形態の粒子状物質検出装置においては、集塵電極の一方の電極が、図6に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と貫通孔2を隔てて反対側の壁の内部に配置された(図5参照)、高電圧が印加される高電圧集塵電極11であり、また、集塵電極の他方の電極が、図9に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と同一側の壁の内部に配置された(図5参照)、接地された接地集塵電極12である。それぞれの集塵電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、集塵電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0080】
集塵電極11,12の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、貫通孔2内に電界を発生させることが可能であればよい。例えば、形状としては、長方形、円形、長円形等を挙げることができる。また、集塵電極11,12の大きさは、例えば、貫通孔2の、側面から見たときの面積の70%以上であることが好ましい。
【0081】
例えば、図6においては、高電圧集塵電極11が、貫通孔と略同じ大きさに形成された場合の例を示している。この高電圧集塵電極11には、検出装置本体1の長手方向に延びる配線11bが接続されており、配線11bが、その先端(電極11に接続されていない側の先端)部分で、図4Bに示す取出端子11aに層間接続(ビア接続)されている。配線11bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線11bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線11bの材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0082】
なお、一対の集塵電極の両方の取出端子を、検出装置本体の他方の端部に配設してもよいが、図4A〜図4Dに示すように、接地された集塵電極(接地集塵電極12)の取出端子12aを検出装置本体1の他方の端部1bに配設し、高電圧集塵電極11の取出端子11aを、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設することが好ましい。これにより、接地集塵電極12の取出端子12aと、高電圧集塵電極11の取出端子11aとを、間隔を開けて配設することができる。このため、一対の集塵電極11,12間に電圧を印加するために、取出端子11aと取出端子12aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体1の表面に沿面放電が生じることを有効に防止することができる。
【0083】
粒子状物質検出装置100aにおいては、取出端子11aと取出端子12aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がし易くなることがある。一方、100mmより長いと、取出端子11aが排気系中で使用される配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置100aの検出装置本体1を排気系中で使用される配管等に装着したときに、検出装置本体1の排気系中で使用される配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体1を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
【0084】
また、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設した取出端子11aと、貫通孔2との間の距離は、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。10mmより短いと、粒子状物質検出装置100aを、貫通孔2の部分が排気系中で使用される配管内に挿入されるように、上記配管に装着したときに、この配管内を流通する高温の排ガスの熱が取出端子11aに影響を及ぼし易くなることがある。
【0085】
高電圧集塵電極11の取出端子11aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.5〜3mm、長さ0.5〜3mmの四角形等の多角形状であることが好ましいが、円形、楕円形、レーストラック形状、その他の形状等であってもよい。取出端子11aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0086】
高電圧集塵電極11と貫通孔2との間の距離、及び接地集塵電極12と貫通孔2との間の距離は、50〜500μmであることが好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に貫通孔内に電界を生じさせることができる。各集塵電極11,12と、貫通孔2との間の距離は、各集塵電極11,12を覆う誘電体の、貫通孔2に面する部分の厚さということになる。
【0087】
集塵電極により発生する電界の条件としては、ギャップ(一対の集塵電極相互間の距離)、ガス温度によって変わるが50〜200kV/cmが好ましい。
【0088】
粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に流入する流体(即ち、排ガス)に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させ、粒子状物質を吸着させたことによる電気的特性の変化を読み取り、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するものである。排ガス中の粒子状物質が、貫通孔2内に流入する前から既に荷電されている場合には、貫通孔2内に発生させた電界によって粒子状物質を吸着させる。一方、粒子状物質が荷電されていない場合には、貫通孔2内に発生させた電界によって粒子状物質を荷電し、貫通孔2の壁面に荷電した粒子状物質を電気的に吸着させる。
【0089】
〔2−4a〕信号測定部:
信号測定部は、電極部の電気的特性を測定信号(換言すれば、電気信号)として測定するためのものである。具体的には、例えば、測定する電気的特性が静電容量である場合には、アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B等を用いることができる。
【0090】
図4A〜図4Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいては、計測電極15,16の取出端子15a,16aと、信号測定部22(図11参照)とが電気的に接続されており、計測電極15,16の電気的特性を測定信号として測定することができるように構成されている。
【0091】
〔2−4b〕測定信号記憶部:
信号測定部により測定された測定信号の値は、測定信号記憶部に読み出し可能に記憶される。測定信号記憶部に記憶された測定信号の値は、信号判定部、補正部、及び算出部にて、粒子状物質の算出において用いられる。測定信号記憶部は、公知の記憶媒体を用いることができる。
【0092】
〔2−4c〕信号判定部:
信号判定部は、測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値を比較し、測定信号の値に補正が必要か否かを判定する判定機構である。具体的には、まず、信号判定部においては、測定信号記憶部に記憶された測定信号の値を読み出し、10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求める。そして、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する。バックグラウンド信号ノイズの値が測定信号記憶部に記憶されている場合には、このバックグラウンド信号ノイズの値を読み出す。信号判定部としては、上記測定信号の値の変化量の算出、及び変化量とバックグラウンド信号ノイズの値との比較を行うプログラム等の命令列(コマンドライン)を順次読み込んで実行する集積回路等を挙げることができる。なお、信号判定部にて求める「測定信号の値の変化量」とは、変化量を求めるサンプルにおける変位の最大値のことをいう。従って、10サンプルにおける10個の測定信号の値を比較した場合には、10個の測定信号の値の変位の最大値が、変化量となる。
【0093】
〔2−4d〕補正部:
補正部は、信号判定部によって得られた結果に基づいて、測定信号記憶部に記憶された測定信号の値を必要に応じて補正するものである。従来の粒子状物質検出装置では、電極部に一旦付着した粒子状物質の脱離を見逃して、得られる測定値に大きな誤差を生じるものであったが、本実施形態の粒子状物質検出装置は、信号判定部及び補正部によって、粒子状物質の脱離した分の減少を測定信号の値に加算する補正を行うことができ、より正確な測定を行うことが可能となる。例えば、補正部としては、連続する10サンプル以下の測定信号の値の変化量が、バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の大きさである場合には、その減少値を、減少が確認された測定信号の値に加算する演算処理を行う集積回路を用いることができる。
【0094】
〔2−4e〕算出部:
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、測定信号の値を基に排ガスに含まれる粒子状物質の量を算出する算出部を備えている。算出部においては、補正部によって補正された後の測定信号の値を基に、粒子状物質の量の算出が行われる。更に、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、排ガスに含まれる粒子状物質の量(即ち、算出部により算出された粒子状物質の量)と排ガスの通気量とから、排気系を通過した粒子状物質の総量を算出し、この粒子状物質の総量が所定の基準値を超えた場合に、粒子状物質検出装置の再生が実行されるように構成されたものであってもよい。このように構成することによって、電極部(即ち、測定電極)に過剰に粒子状物質が付着する前に、粒子状物質検出装置の再生を行うことが可能となり、継続的により正確な粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0095】
〔2−5〕加熱部(除去手段):
図5及び図10に示す粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2の壁面(検出装置本体1の側面に並行する壁面)に沿うようにして検出装置本体1の内部に配設(埋設)された加熱部13を備えている。このような加熱部13によって装置を加熱することにより、貫通孔2を形成する壁に吸着された粒子状物質を加熱酸化させることができる(即ち、装置を再生することができる)。また、粒子状物質の質量測定時等において、貫通孔2の内部空間を所望の温度に調節し、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。
【0096】
加熱部13は、例えば、加熱部を形成するための導体ペーストを用いて形成することができる。図10に示すように、線状の金属材料からなるものであってもよい。また、幅広のフィルム状のものであってもよい。図10においては、検出装置本体1の長手方向において、線状の金属材料が波状に配置された加熱部13の例を示す。また、図10においては、検出装置本体1の長手方向に延びる2つの波状部分が、検出装置本体1の一方の先端部分1cにて連結された場合の例を示す。このような形状にすることにより、貫通孔内部を均一に過熱し、電極部21(測定電極15,16)に付着した粒子状物質を除去することができる。加熱部13の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。加熱部13は、貫通孔2の壁面に沿うようにして検出装置本体1の内部に埋設されていてもよい。また、図10に示すように、貫通孔2が配置されている位置だけでなく、更に検出装置本体1の他方の端部1b側に延びるように形成されていてもよい。これにより、貫通孔内部と貫通孔付近との温度差を小さくでき、急加熱しても素子(検出装置本体)の破損が起きにくいという利点がある。加熱部により、貫通孔の内部空間の温度を650℃まで上昇できることが好ましい。
【0097】
また、図10においては、二本の配線によって二つの加熱部13が形成された場合の例を示しているが、加熱部は一つであってもよいし、三つ以上の複数であってもよい。また、図示は省略するが、貫通孔が形成される両側の壁に、それぞれ加熱部が配置されていてもよい。即ち、加熱部の配置及び数は、捕集した粒子状物質の酸化除去や、温度調節等の目的を達成するために必要な配置及び数とすることができる。
【0098】
また、図10に示す加熱部13は、配線13bに接続され、それぞれの配線13bは、図4Dに示すように、各取出端子13aに層間接続されている。加熱部13の取出端子13aも、計測電極15,16の取出端子15a,16aの場合と同様に、検出装置本体1の一方の端部1a側が加熱されたときの熱の影響を回避するために、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されることが好ましい。図4Dにおいては、四つの取出端子13aが、検出装置本体1の他方の側面側に、四本が並ぶように配置されているが、取出端子13aの配置は、このような配置に限定されるものではない。
【0099】
〔3〕粒子状物質の検出方法:
次に、本発明の粒子状物質の検出方法の一の実施形態について説明する。本実施形態の粒子状物質の検出方法は、これまでに説明した、本実施形態の粒子状物質検出装置によって行われる測定値の補正と同様の補正を行うことによって、粒子状物質の検出を行う粒子状物質の検出方法である。
【0100】
即ち、本実施形態の粒子状物質の検出方法は、内燃機関の排気系に電極部を配設し、この排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を電極部に吸着させて、電極部の電気的特性を測定信号として継続的に検出する測定工程と、測定信号を基に、排ガスに含まれる粒子状物質の量を算出する粒子状物質量算出工程と、を備え、上記信号測定部により測定された測定信号の値を、測定信号記憶部に記憶させる測定信号記憶工程と、測定信号記憶部に記憶させた10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する判定工程と、上記変化量が、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する補正工程と、を更に備えた粒子状物質の検出方法である。本実施形態の粒子状物質の検出方法においては、上記補正工程により補正された測定信号の値を基に粒子状物質の量を算出する。
【0101】
このように構成することによって、一旦電極に付着した粒子状物質が、この電極から脱離した場合に、脱離した粒子状物質に相当する測定信号の減少分を補正して、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することができる。特に、電極に付着した粒子状物質は、その量が一定に達して、ある程度の質量をもった凝集粒子となった場合に、上述したような電極からの脱離が生じ易く、測定値の誤差(狂い)が大きくなってしまうということがあったが、上記したように補正を行うことにより、より正確な測定を実現することができる。例えば、測定信号は、信号ノイズとして信号のばらつきを有しており、測定される測定信号の全ての減少値を粒子状物質の脱落として補正を行った場合には、測定値が電極から粒子状物質が脱落した分を超えて過剰に上昇してしまうため、正確な測定が逆に困難になってしまう。
【0102】
本実施形態の粒子状物質の検出方法は、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態として説明した図1A〜図1C、及び図11に示す粒子状物質検出装置100を用いることによって実現することができる。
【0103】
更に、本実施形態の粒子状物質の検出方法においては、例えば、粒子状物質検出装置として、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備え、電極部が、貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極の埋設位置よりも貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有するものを用いることが好ましい。このような粒子状物質検出装置としては、例えば、図4A〜図4Dに示す粒子状物質検出装置100aを挙げることができる。
【0104】
測定する電極部の電気的特性としては、静電容量又は抵抗値であることが好ましい。電気的特性の測定を行う信号測定部の構成は、本発明の粒子状物質検出装置の実施形態にて説明した信号測定部と同様に構成されたものを好適に用いることができる。測定工程は、このような信号測定部を用いて行うことができる。
【0105】
また、測定信号記憶工程、判定工程、補正工程、及び粒子状物質量算出工程についても、本発明の粒子状物質検出装置の実施形態にて説明した、測定信号記憶部、信号判定部、補正部、及び算出部を用いて行うことができる。また、補正の条件、信号測定部の測定間隔等の各測定条件等についても、本発明の粒子状物質検出装置の実施形態にて説明した条件と同様の条件にて行うことが好ましい。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
本発明の粒子状物質検出装置として、燃機関の排気系に設けられた電極部と、電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部と、信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部と、信号判定部と、特定の測定信号の値を補正する補正部と、測定信号の値を基に排ガスに含まれる粒子状物質の量を算出する算出部と、を備えた粒子状物質検出装置を作成した。粒子状物質検出装置は、図4A〜図4D、及び図5〜図10に示すように、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極15,16と、貫通孔2を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極15,16の埋設位置よりも貫通孔2を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極11,12と、を備え、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するための粒子状物質検出装置100aである。上記一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12によって、粒子状物質検出装置100aの電極部21が構成され、この一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12は、配線15b,16b,11b,12bを介して取出端子15a,16a,11a,12aと接続されている。一対の計測電極15,16が、本発明の電極部を構成し、上記配線及び取出端子を経由して、図1Aに示すように信号測定部22に電気的に接続されている。
【0108】
(粒子状物質検出装置の作製)
まず、アルミナを誘電体原料として使用し、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエートを使用し、分散媒として有機溶剤(キシレン:ブタノール=6:4(質量比))を使用し、これらをアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7質量部、可塑剤3.5質量部、分散剤1.5質量部、有機溶剤100質量部とした。
【0109】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0110】
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工した。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、切断部形成グリーンシートも作製した。グリーンシートの厚さは、計測電極が配置されるグリーンシートを50μmとし、それ以外のグリーンシートを250μmとした。
【0111】
得られたグリーンシートの表面に、図5〜図10に示されるような、各電極(計測電極、及び集塵電極)、加熱部(除去手段)、各配線、及び各取出端子を形成した。配設する各電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0112】
また、加熱部を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0113】
上記各電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成するために調製された導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷を用いて印刷して、所定の形状の電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成した。具体的には、複数のグリーンシートのなかの二つのグリーンシートについて、それぞれの一方の面に集塵電極を配設し、高電圧集塵電極については他方の端部に向かって延びる配線を配設して、集塵電極配設グリーンシートを二つ形成した。
【0114】
更に、厚さ50μmのグリーンシートについて、貫通孔を形成する部位に、櫛歯状の一対の計測電極を形成した。櫛歯状の一対の計測電極は、櫛歯部分の線間ピッチが0.35mm(櫛歯部分のクリアランスが0.15mm、各櫛歯部分の幅が0.20mm)となるように間隔を空けて噛み合うように対向配置した。
【0115】
更に、他の一つのグリーンシートについて、計測電極配設グリーンシートと重ねたときに計測電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成して切断部形成グリーンシートを形成した。更に、別の他の一つのグリーンシートについて、切断部形成グリーンシートと重ねたときに貫通孔となる切断部と重なる位置に、加熱部を形成するために調製した導体ペーストを印刷して加熱部を形成し、加熱部から他方の端部に向かって延びる配線を配設して加熱部形成グリーンシートを形成した。
【0116】
そして、二つの集塵電極配設グリーンシートのそれぞれに、他の電極等が配設されていないグリーンシートを重ねて集塵電極及び配線をグリーンシートで覆った状態として、集塵電極埋設グリーンシートとするとともに、二つの集塵電極埋設グリーンシートで計測電極配設グリーンシート及び切断部形成グリーンシートを挟むように積層し、更に、加熱部形成グリーンシートを集塵電極埋設グリーンシートの外側に位置するように積層し、二つの集塵電極で切断部を挟み且つ二つの配線で計測電極を挟んだ状態のグリーンシート積層体を形成した。各配線と、各配線に対応する取出端子とは、導体ペーストの埋め込み方法により、層間接続(ビア接続)した。
【0117】
グリーンシートの積層は、グリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層し、グリーンシート積層体からなる粒子状物質検出装置の未焼成体を得た。
【0118】
得られた、グリーンシート積層体(粒子状物質検出装置の未焼成体)を120℃で乾燥し、1500℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製した。粒子状物質検出装置の取出端子と、信号測定部としてのLCRメータ(アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B)とを、配線を用いて電気的に接続した。この信号測定部によって、電極部の静電容量を、10m秒間隔で連続的に測定することができる。
【0119】
また、測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部としての記憶媒体を、信号測定部に接続した。また、集積回路からなる信号判定部、補正部、及び算出部を配設した。信号判定部を構成する集積回路は、測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する命令列を実行するものである。また、補正部を構成する集積回路は、上記変化量が、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する命令列を実行するものである。また、算出部を構成する集積回路は、補正された後の測定信号の値を基に排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する命令列を実行するものである。得られた実施例1の粒子状物質検出装置を用いて、燃焼排ガス中の粒子状物質の検出を行った。
【0120】
(バックグラウンド信号ノイズの測定)
上記信号判定部による判定の基準となる、測定信号のバックグラウンド信号ノイズを、室温無風の条件で測定した。測定されたバックグラウンド信号ノイズ(標準偏差)は、0.05pFであった。
【0121】
(測定信号の測定:粒子状物質の検出)
得られた実施例1の粒子状物質検出装置を、ディーゼルエンジンの排気系の配管の一部に設置して粒子状物質の測定を行った。ディーゼルエンジンとしては、排気量2000ccの直噴−ディーゼルエンジンを使用し、回転数1500rpm、トルク24N・m、EGR(exhaust gas recirculation)開度50%、排ガス温度200℃、吸入空気1.3m3(室温換算)/分の運転条件で排ガスを発生させた。スモークメータ(Advanced Validation Labs社製、商品名:型式4158)による排ガス中の粒子状物質量は、2.0mg/m3であった。信号測定部にて、電極部の電気的特性を測定信号として測定し、測定した測定信号の値を測定信号記憶部に記憶した。更に、測定信号記憶部に記憶した測定信号の値について信号判定部にて判定を行い、必要に応じて測定信号の値の補正を行った。更に、補正後の測定信号の値を基に算出部にて粒子状物質の量の算出を行った。このような測定を合計6回繰り返した。各6回の測定において、測定終了時点における補正後の測定信号の値(計測値)が1.71〜1.83pFとなり、ばらつきが10%以内と極めて再現性の高い測定を行うことができた。従って、6回の粒子状物質の検出において、粒子状物質の量(検出量)のばらつきは10%以内であった。
【0122】
(比較例1)
信号判定部、及び補正部を構成する集積回路を配置せず、信号測定部により測定された測定信号の値から、粒子状物質の量の算出を行うように構成された以外は、実施例1と同様に構成された粒子状物質検出装置を製造した。この比較例1の粒子状物質検出装置を用いて、実施例1と同様の方法で粒子状物質の検出を6回行った。
【0123】
比較例1の粒子状物質検出装置を用いて、実施例1と同様の方法で電極部の測定信号の値を測定した。6回の測定値のうち、5回の測定終了時点における測定信号の値(計測値)は1.72〜1.89pFであったのに対して、残りの1回の測定終了時点における測定信号の値(計測値)は1.53pFであった。この残りの1回の測定終了時点における測定信号の値は、その他の測定における測定信号の値と大きく異なるものであった。比較例1の粒子状物質検出装置は、実施例1の粒子状物質検出装置のような電極部から粒子状物質が脱離した場合の測定信号の値の変化を補正する補正部を備えていないものである。比較例1の粒子状物質検出装置においては、測定信号の測定中に、一旦電極部に付着した粒子状物質が電極部から脱落した場合に、得られる測定信号の値が小さくなる。このため、測定中に、粒子状物質が脱落した場合と、粒子状物質が脱落しない場合とで、測定信号の値に大きな差異を生じてしまう。粒子状物質が電極部から脱落した場合に測定された測定信号の値を基に算出された粒子状物質の量は、実際に排ガスに含まれる粒子状物質の量よりも小さくなる。比較例1の粒子状物質検出装置は、検出される粒子状物質の量に大きな誤差を生じるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の粒子状物質検出装置は、内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を検出する検出装置として用いることができる。また、本発明の粒子状物質の検出方法は、内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質の量を高精度に測定する方法として用いることができる。
【符号の説明】
【0125】
1:検出装置本体、1a:一方の端部、1b:他方の端部、1c:一方の先端部分、1d:他方の先端部分、2:貫通孔、11:集塵電極(高電圧集塵電極)、12:集塵電極(接地集塵電極)、11a,12a,13a:取出端子、11b,12b,13b:配線、13:加熱部、15,16:計測電極、15a,16a:計測電極取出端子(取出端子)、15b,16b:計測電極配線(配線)、21:電極部、22:信号測定部、23:算出部、24:測定信号記憶部、25:信号判定部、26:補正部、27:検出装置本体、28:配線、31:配管(排気系中で使用される配管)、36:粒子状物質、100,100a:粒子状物質検出装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置、及び粒子状物質の検出方法に関する。更に詳しくは、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することが可能な粒子状物質検出装置、及び粒子状物質の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、セラミック等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。セラミック製のDPFは、長期間の使用が可能であるが、熱劣化等によりクラックや溶損等の欠陥が発生することがあり、微量ではあるが粒子状物質が漏れる可能性がある。このような欠陥が発生した場合には、その欠陥の発生を即座に検知し、フィルタの異常を認識することが、大気汚染防止の観点から極めて重要である。
【0003】
このような欠陥の発生を検知する方法として、DPFの下流側に粒子状物質検出装置を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の発明は、コロナ放電によって粒子状物質を帯電させ、そのイオン電流を測定することにより、粒子状物質の量を測定するものである。このように、粒子状物質を帯電させてそのイオン電流を測定する方法では、粒子状物質に帯電するイオン電流が微弱であるため、その微弱なイオン電流を検出するために大掛かりな検出回路が必要になり、高価なものとなってしまう。また、排ガスが高流量である場合には、粒子状物質を効果的に帯電させることが困難であるため、粒子状物質の測定値が、実際に排ガスに含有されている粒子状物質の量より小さい値となり、その誤差が大きくなってしまう。
【0005】
このようなことから、例えば、平板状の陰極、前記陰極と対向して設けられている平板状の陽極、前記陰極と陽極との間の空間に電界を生じさせるための電圧印加手段、並びに前記陰極及び前記陽極を加熱する加熱手段を備えており、前記陰極と前記陽極との間に電圧を印加したときの前記陰極と前記陽極との間の電流値の変化に基づいて前記スートを測定するスート測定装置等が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−123761号公報
【特許文献2】特開2005−114557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献2に記載の粒子状物質検出装置は、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部だけが検出面に付着するため、誤差の少ない測定値を得ることができるものであるが、例えば、一旦電極に付着した粒子状物質は、高流量の排ガスに常時曝されているため、測定中に電極から脱離してしまうことがある。そして、このような検出面に粒子状物質を付着させる方式のセンサーにおいては、電極からの粒子状物質の脱離が生じると、粒子状物質の質量の測定を正確に行うことができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することが可能な粒子状物質検出装置、及び粒子状物質の検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、電極に付着した粒子状物質は、その量が一定に達して、ある程度の質量をもった凝集粒子となった場合に、上記のような電極からの脱離を生じるため、測定される測定信号の信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が、連続する10サンプルの測定間に確認された場合に、当該減少値を測定信号に加算して測定値の補正を行うことによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質の検出方法が提供される。
【0010】
[1] 内燃機関の排気系に設けられた電極部と、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を前記電極部に吸着させ、前記電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部と、前記測定信号の値を基に前記排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する算出部と、備え、前記信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部と、前記測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する前記測定信号の値の変化量を求め、前記変化量と、前記測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する信号判定部と、前記変化量が、前記測定信号の前記バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を前記減少が確認された前記測定信号の値に加算して前記測定信号の値を補正する補正部と、を更に備え、前記補正部により補正された前記測定信号の値を基に、前記算出部により前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質検出装置。
【0011】
[2] 前記信号測定部により測定される前記電気的特性が、静電容量又は抵抗値である前記[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【0012】
[3] 前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものである前記[1]又は[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0013】
[4] 一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備えるとともに、前記電極部が、少なくとも一対の計測電極を有し、前記少なくとも一対の計測電極が、前記検出装置本体の前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設されている前記[1]又は[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0014】
[5] 前記一対の計測電極の埋設位置よりも、前記検出装置本体の前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設された少なくとも一対の集塵電極を更に備えた前記[4]に記載の粒子状物質検出装置。
【0015】
[6] 内燃機関の排気系に電極部を配設し、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を前記電極部に吸着させて、前記電極部の電気的特性を測定信号として継続的に検出する測定工程と、前記測定信号を基に前記排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質量算出工程と、を備え、前記信号測定部により測定された前記測定信号の値を、測定信号記憶部に記憶させる測定信号記憶工程と、前記測定信号記憶部に記憶させた10サンプル以下の連続する前記測定信号の値の変化量を求め、前記変化量と、前記測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する判定工程と、前記変化量が、前記測定信号の前記バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を前記減少が確認された前記測定信号の値に加算して前記測定信号の値を補正する補正工程と、を更に備え、前記補正工程により補正された前記測定信号の値を基に前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質の検出方法。
【0016】
[7] 前記電気的特性として、前記電極部の静電容量又は抵抗値を測定する前記[6]に記載の粒子状物質の検出方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粒子状物質検出装置は、信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部と、測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する信号判定部と、変化量が、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する補正部と、備えたものである。本発明の粒子状物質検出装置によれば、一旦電極に付着した粒子状物質が、この電極から脱離した場合に、脱離した粒子状物質に相当する測定信号の減少分を補正して、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することができる。また、本発明の粒子状物質の検出方法によれば、本発明の粒子状物質検出装置の補正部と同様の補正を行うことにより、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することができる。
【0018】
即ち、排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を電極部に吸着させ、この電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定し、その測定信号の値から粒子状物質の量を算出する粒子状物質検出装置及び粒子状物質の検出方法においては、継続的に測定される電気的特性の測定信号は、粒子状物質の電極への付着(吸着)とともに、常時増大する傾向にある。このため、連続する10サンプル以下の測定間に計測される測定信号において、所定の大きさ、具体的には、信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が生じた場合には、一旦電極に付着した粒子状物質の脱離として、減少した値を測定信号の値に加算して補正を行うことで、より高精度の測定を行うことが可能となる。
【0019】
特に、電極に付着した粒子状物質は、その量が一定に達して、ある程度の質量をもった凝集粒子となった場合に、上述したような電極からの脱離が生じ易く、測定信号の値の誤差(狂い)が大きくなってしまうということがあったが、上記したように補正を行うことにより、より正確な測定を実現することができる。例えば、測定信号は、信号ノイズとして信号のばらつきを有している。このため、測定される測定信号の全ての減少値を粒子状物質の脱落として補正を行った場合には、測定値が電極から粒子状物質が脱落した分を超えて過剰に上昇してしまうため、正確な測定が逆に困難になってしまう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を排気系に配設して粒子状物質の測定を行う状態を模式的に示す説明図である。
【図1B】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を排気系に配設して粒子状物質の測定を行う状態を模式的に示す説明図である。
【図1C】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を排気系に配設して粒子状物質の測定を行う状態を模式的に示す説明図である。
【図2A】本発明の粒子状物質検出装置によって測定される電気的特性の、補正部によって補正される前の値を示すグラフである。
【図2B】本発明の粒子状物質検出装置によって測定される電気的特性の、補正部によって補正された後の値を示すグラフである。
【図3】本発明の粒子状物質検出装置によって粒子状物質の検出を行う工程の一例を示すフローチャートである。
【図4A】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を模式的に示す正面図である。
【図4B】図4Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図である。
【図4C】図4Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図である。
【図4D】図4Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。
【図5】図4BのA−A’断面を示す模式図である。
【図6】図5のB−B’断面を示す模式図である。
【図7】図5のC−C’断面を示す模式図である。
【図8】図5のD−D’断面を示す模式図である。
【図9】図5のE−E’断面を示す模式図である。
【図10】図5のF−F’断面を示す模式図である。
【図11】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態の構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0022】
〔1〕本発明の粒子状物質検出装置の特徴:
図1A〜図1Cは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を排気系に配設して粒子状物質の測定を行う状態を模式的に示す説明図である。なお、図1Aは、測定前の状態(即ち、電極部に粒子状物質が付着する前の状態)を示し、図1Bは、電極部に粒子状物質が付着した測定状態を示し、図1Cは、電極部に付着した粒子状物質の一部が電極部から脱離する状態を示している。図11は、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態の構成を模式的に示す説明図である。
【0023】
図1A〜図1C、及び図11に示すように、本実施形態の粒子状物質検査装置100は、内燃機関の排気系に設けられた電極部21と、排気系を通過する排ガス32に含まれる粒子状物質36を電極部21に吸着させ、電極部21の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部22と、測定信号の値を基に排ガス32に含まれる粒子状物質36の量を算出する算出部23と、を備えた粒子状物質検出装置100である。図1A〜図1Cにおいては、排気系中で使用される配管31に、電極部21が設けられた例を示す。また、図11においては、電極部21が、検出装置本体27に配置され、電極部21と信号測定部22とが配線28により電気的に接続された例を示す。
【0024】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、粒子状物質36の量を算出するための電極部21の電気的特性を、測定信号として継続的に信号測定部22にて測定し、測定された測定信号の値を基に、算出部23にて、排ガス32に含まれる粒子状物質36の量を算出することができる。例えば、測定された測定信号の電気的特性の変化から、排ガス32に含まれる粒子状物質36の量を推算することができる。
【0025】
そして、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、測定信号記憶部24と、信号判定部25と、補正部26と、を更に備えたものである。測定信号記憶部24は、信号測定部22により測定された測定信号の値を記憶するものである。信号判定部25は、測定信号記憶部24に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較するものである。また、補正部26は、信号測定部22において求められた変化量が、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値をその減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正するものである。本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、補正部26により補正された測定信号の値を基に、上記算出部23により粒子状物質の量を算出する。このため、例えば、図1Cに示すように、一旦電極部21に付着した粒子状物質36が、この電極部21から脱離した場合に、脱離した粒子状物質36aに相当する測定信号の減少分を補正して、排ガス32に含まれる粒子状物質36の量を高精度に測定することができる。減少値をその減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する場合には、当該補正が、それ以降の測定信号の値(即ち、減少が確認された測定信号よりも後に測定された測定信号の値)にも反映されるように、上記加算値と同様の値を、それ以降の測定信号の値に加算する補正を行う。
【0026】
即ち、排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を電極部に吸着させ、この電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定し、その測定値から粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出装置及び粒子状物質の検出方法においては、継続的に測定される電気的特性の測定信号は、粒子状物質の電極への付着(吸着)とともに、常時増大する傾向にある。このため、連続する10サンプル以下の測定間に計測される測定信号において、所定の大きさ、具体的には、信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が生じた場合には、一旦電極に付着した粒子状物質の脱離として、減少した値を測定値に加算して補正を行うことで、より高精度の測定を行うことが可能となる。
【0027】
特に、電極に付着した粒子状物質は、その量が一定に達して、ある程度の質量をもった凝集粒子となった場合に、上述したような電極からの脱離が生じ易く、測定値の誤差(狂い)が大きくなってしまうということがあったが、上記したように補正を行うことにより、より正確な測定を実現することができる。例えば、測定信号は、信号ノイズとして信号のばらつきを有している。このため、測定される測定信号の全ての減少値を粒子状物質の脱落として補正を行った場合には、測定値が電極から粒子状物質が脱落した分を超えて過剰に上昇してしまうため、正確な測定が逆に困難になってしまう。
【0028】
例えば、図2Aは、排ガスに含まれる粒子状物質を電極部に吸着させ、この電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定した結果を示すグラフである。図2Aにおいては、横軸を測定時間(秒)とし、縦軸を電気的特性の測定値としている。なお、電気的特性としては、静電容量を測定した場合の例を示している。
【0029】
図2Aに示すように、電極部の電気的特性を測定信号として測定した場合には、電極部に導電性を有する粒子状物質が電極部に付着することにより、測定される電気的特性が増加する。そして、図1Cに示すように、一旦電極部21に付着した粒子状物質36が、この電極部21から脱離した場合には、図2Aに示す、点A,B,C,Dのように、電気的特性の測定信号が減少する。但し、図2Aに示すように、測定される測定信号は、信号ノイズを有しており、上記した粒子状物質の脱離による減少以外にも、信号ノイズによる測定値のばらつきが生じている。
【0030】
このため、測定される測定信号における全ての減少分を、その測定値に加算する補正を行うと、信号ノイズによって減少した値まで補正値に含まれてしまい、その補正値が、粒子状物質の脱離量を超えて増加してしまう。
【0031】
電極に付着した粒子状物質は、ある程度の質量をもった塊(凝集粒子)となった場合に、上述したような電極からの脱離が生じるため、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、測定される測定信号の信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が、連続する10サンプル以下の測定間に確認された場合に、当該減少を粒子状物質の脱離と判断し、その減少値を測定値に加算する補正を補正部によって行う。これにより、より正確な測定が実現される。
【0032】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、図2Bに示すように、図2Aに示す、点A,B,C,Dのような信号ノイズの2倍以上の大きさの減少を、信号判定部にて粒子状物質の脱離と判断する。そして、補正部が、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する。ここで、図2Aは、本発明の粒子状物質検出装置によって測定される電気的特性の、補正部によって補正される前の値を示すグラフであり、図2Bは、本発明の粒子状物質検出装置によって測定される電気的特性の、補正部によって補正された後の値を示すグラフである。
【0033】
ここで、本実施形態の粒子状物質検出装置によって粒子状物質の検出を行う方法を、図3を用いて更に説明する。図3は、本実施形態の粒子状物質検出装置によって粒子状物質の検出を行う工程の一例を示すフローチャートである。
【0034】
図3に示すように、まず、粒子状物質の測定準備として、バックグラウンド信号ノイズの測定を行う。その後、このバックグラウンド信号ノイズの値を、測定信号記憶部等の記憶部に記憶する。次に、電極部の電気的特性(測定信号)の測定を開始し、測定した測定信号の値を、測定信号記憶部に記憶する。その後、測定された測定信号の値について、必要に応じて補正を行う。具体的には、信号判定部により、10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を算出し、この測定信号の値の変化量と、バックグラウンド信号ノイズの値とを比較する。ここで、測定信号の値の変化量が、バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の減少である場合には、補正部によって、当該減少値を、減少が確認された測定信号の値に加算する補正を行う。補正した測定信号の値については、測定信号記憶部に、補正後の測定値として記憶される。補正部による補正が終了した後、及び信号判定部にて、バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の減少の確認されなかった場合には、更に、別の10サンプル以下の連続する測定信号の値について、判定及び補正を行う。
【0035】
粒子状物質検出装置の電極部は、粒子状物質を付着させて、この粒子状物質の付着に伴う電気的特性の変化を測定するための検知部(センサー)として用いられる電極である。このような電極部の電極としては、例えば、装置の表面等に導体ペーストを塗布して形成した電極や、金属板などからなる電極等を挙げることができる。この電極部は、測定信号を測定するための信号測定部と電気的に接続されており、電極部における電気的特性を信号測定部によって検出(測定)することができるように構成されている。
【0036】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置の電極部は、粒子状物質の測定を行うもの以外にも、例えば、排ガスに含まれる粒子状物質を装置に集塵するための電界を発生させるための電極を含んでいてもよい。即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置は、排ガス中の粒子状物質を粒子状物質検出装置(特に、電極部)に付着させ、電極部を構成する電極(以下、この電極を「測定電極」ということがある)の電気的特性の変化を読み取ることにより、その電気的特性の変化から排ガス中の粒子状物質を検出するものであるため、例えば、粒子状物質検出装置周辺に電界を生じさせ、排ガス中を流れる粒子状物質を集塵するための電極(以下、このような電極を「集塵電極」ということがある)を更に備えていてもよい。
【0037】
信号測定部は、電極部及びこの電極部の周辺に粒子状物質が付着することによる電極部の電気的特性の変化を読み取る計測部分である。排ガスに含まれる粒子状物質は、その大半が煤からなるものであるため、導電性を有しており、電極部等に粒子状物質が付着した場合には、測定される電気的特性(換言すれば、測定信号の値)に変化を与える。このため、内燃機関の排気系に設けられた電極部の電気的特性の変化を測定することによって、排ガス中に粒子状物質が含まれているか否かを検出することができる。
【0038】
具体的な信号測定部としては、電極部の電気的特性の変化を測定信号として継続的に測定する検出回路を挙げることができる。例えば、測定する電極部の電気的特性が、静電容量である場合には、一方の電極に交流電圧を印加し、静電容量が変化した場合に、もう一方の電極に接続された変換器或いはチャージアンプによって静電容量に比例する電圧として検出する。
【0039】
測定信号記憶部は、信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する記憶媒体である。信号判定部は、測定信号記憶部に記憶された測定信号の値を読み出し、読み出した測定信号の値と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズとの値と比較するものである。測定信号の「バックグラウンド信号ノイズ」は、電極部から信号測定部までの測定系に外乱がなく、電極部の電気的特性を安定した状態で測定される実効値とすることができる。
【0040】
より具体的なバックグラウンド信号ノイズの測定方法としては、まず、粒子状物質検出装置を安定した状態に載置し、その状態にて、電極部の電気的特性の測定を行う。次に、得られた電気的特性の測定データから、その標準偏差を算出し、得られた標準偏差を、測定信号の「バックグラウンド信号ノイズ」とする。
【0041】
また、信号測定部に用いられる検出回路の構成によっても異なるが、上記のバックグラウンド信号ノイズの測定において、電気的特性の測定点数(即ち、サンプル数)を大きくすると、得られるバックグラウンド信号ノイズの値(即ち、上記標準偏差)が大きくなることがある。本実施形態の粒子状物質検出装置においては、バックグラウンド信号ノイズと粒子状物質の脱離との違いを判断し、前記バックグラウンド信号ノイズを測定値の補正から除くことができればよい。このため、バックグラウンド信号ノイズの測定におけるサンプル数は、50〜200点であることが好ましい。例えば、実際の信号測定部における測定が、10m秒間隔の測定の場合には、バックグラウンド信号ノイズの測定に要する時間は、0.5〜2秒程度であることが好ましい。
【0042】
なお、上記バックグラウンド信号ノイズの値は、粒子状物質検出装置を最初に使用する状態にて測定された測定信号の信号ノイズの値であってもよい。このような予め測定された測定信号の信号ノイズの値(バックグラウンド信号ノイズの値)は、測定信号記憶部等の記憶媒体に記憶させておくことができる。また、例えば、同一の構成の粒子状物質検出装置が大量に製造され、このような粒子状物質検出装置が、種々の自動車等に設置されて使用される場合には、これら同一の構成の粒子状物質検出装置において、統一したバックグラウンド信号ノイズの値を予め設定してもよい。このような統一したバックグラウンド信号ノイズの値についても、測定信号記憶部等の記憶媒体に記憶させておくことができる。即ち、特定の粒子状物質検出装置において、そのバックグラウンド信号ノイズの値が予め分かっている場合には、バックグラウンド信号ノイズの値を測定する工程は省略され、設定されたバックグラウンド信号ノイズの値を用いて、信号判定部による判定が行われてもよい。
【0043】
本実施形態の粒子状物質検出装置においては、バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の大きさの減少を、粒子状物質の脱離と判断するものであるが、その理由としては以下の通りである。電極部の電気的特性の変化を信号測定部によって測定する場合に、電気的特性のサンプル数によって、バックグラウンド信号ノイズがあまり変化しない部分では、このバックグラウンド信号ノイズは、ホワイトノイズと称されるような略正規分布の特性を有するものとなる。そして、正規分布では、平均μと標準偏差σで表されるガウス分布(確率密度関数)において、平均μからのずれが±1σ以下の範囲に含まれる確率は68.26%であり、±2σ以下の範囲に含まれる確率は95.44%であり、±3σ以下の範囲に含まれる確率は99.74%である。このため、上記バックグラウンド信号ノイズとしての正規分布の2倍以上の大きさの信号は、有効な信号であると考えることができる。
【0044】
なお、上記補正部は、10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量が、バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少を粒子状物質の脱離と判断し、その減少値を減少が確認された測定信号の値(以下、「測定値」ということがある)に加算する補正を行うものである。粒子状物質の電極部からの脱離は、極めて短時間で起こるため、信号測定部に用いられる検出回路の分解能が十分である場合には、上記した減少が、連続する5サンプル以下の測定間に確認された場合に補正を行うものであることが好ましく、連続する3サンプル以下の測定間に確認された場合に補正を行うものであることが更に好ましい。なお、10サンプルの測定を超えると、例えば、電極部が設けられた排気系の温度変化が生じた場合に、その温度変化による測定値の変化が、バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の値となり、温度変化等による測定値の変化が補正値に含まれてしまうことがある。変化量を確認するサンプル数を連続する10サンプル以下とすることにより、上記温度変化等による変化の影響を受け難く、粒子状物質の電極部からの脱離による減少分を選択的に検知することが可能となる。なお、連続する3サンプル未満、例えば、1サンプルの測定であると、そのサンプルの測定中に粒子状物質が離脱することも考えられ、正確性に劣ることがある。
【0045】
なお、「連続する10サンプルの測定間」とは、継続的に連続して行われる信号測定部の電気的特性の測定において、1つの測定値を得る測定時間を1サンプル時間とした場合に、10回の測定を行う時間間隔のことをいう。即ち、「バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が、連続する10サンプル以下の測定間に確認される」とは、最大で10回までの連続した測定信号の測定において、その測定間に、バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の大きさの減少が確認される場合のことを意味する。従って、1回の測定時間(即ち、1サンプルの測定時間)が、10m秒の場合には、連続する10サンプルの測定時間は、100m秒となる。
【0046】
信号測定部における電気的特性の1サンプルの測定時間は、1〜50m秒であることが好ましく、2〜20m秒であることが更に好ましく、5〜15m秒であることが特に好ましい。このような測定時間で電極部の電気的特性の測定を行うことによって、正確且つ分解能に優れた測定を行うことができる。測定時間の下限値は、検出回路の性能により異なるが、実質的な下限値が、上記した1m秒である。また、測定時間が長すぎると、一旦粒子状物質の脱離により測定値が減少した後、別の粒子状物質が電極部に付着することによって、上記粒子状物質の脱離による減少分が相殺されてしまい、粒子状物質の脱離を良好に検知することができないことがある。
【0047】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、10サンプル以下の測定間における、測定値の減少を確認することによって補正を行うものであるが、より詳細な測定及び補正を行うためには、5サンプル以下の測定間において減少を確認することが好ましく、3サンプル以下の測定間において減少を確認することが更に好ましい。このように構成することによって、より正確な測定を行うことができる。
【0048】
本実施形態の粒子状物質検出装置は、電極部、より好ましくは、粒子状物質検出装置に付着した粒子状物質を除去することが可能な粒子状物質除去手段を更に備えたものであることが好ましい。この粒子状物質除去手段の構成については特に制限はないが、例えば、電極部によって測定される電気的特性の変化を与える部位に熱を加え、付着した粒子状物質を燃焼除去可能な、ヒータ等を挙げることができる。なお、以下、このようにして電極部に付着した粒子状物質を、粒子状物質除去手段によって除去することを、粒子状物質検出装置の「再生」ということがある。本実施形態の粒子状物質検出装置は、上述した除去手段によって定期的な装置の再生を行いながら、粒子状物質の検出を行うことが好ましい。
【0049】
本実施形態の粒子状物質検出装置においては、特に限定されることはないが、信号測定部によって測定される電気的特性が、静電容量又は抵抗値であることが好ましい。このように構成することによって、排ガスに含まれる粒子状物質の検出を良好に行うことができるとともに、補正部による上述した補正をより正確に行うことができる。
【0050】
〔2〕本発明の粒子状物質検出装置の構成:
次に、本発明の粒子状物質検出装置のより具体的な構成について、図4A〜図4D、及び図5〜図10に示す粒子状物質検出装置を例に更に詳細に説明する。ここで、図4Aは、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を模式的に示す正面図であり、図4Bは、図4Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図であり、図4Cは、図4Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図であり、図4Dは、図4Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。また、図5は、図4BのA−A’断面を示す模式図である。また、図6は、図5のB−B’断面を示す模式図であり、図7は、図5のC−C’断面を示す模式図であり、図8は、図5のD−D’断面を示す模式図であり、図9は、図5のE−E’断面を示す模式図であり、図10は、図5のF−F’断面を示す模式図である。
【0051】
図4A〜図4D、及び図5〜図10に示す粒子状物質検出装置100aは、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極15,16と、貫通孔2を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極15,16の埋設位置よりも貫通孔2を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極11,12と、を備え、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するための粒子状物質検出装置100aである。上記一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12によって、粒子状物質検出装置100aの電極部21が構成され、この一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12は、配線15b,16b,11b,12bを介して取出端子15a,16a,11a,12aと接続されており、この取出端子15a,16a,11a,12aと、信号測定部22(図11参照)とが電気的に接続されている。また、この粒子状物質検出装置100aは、除去手段25として、加熱部13を有している。また、一対の計測電極15,16は、一対をなすそれぞれが複数に分岐(例えば、図8に示すように、櫛歯状に分岐)をして、複数の対向部分を有している。
【0052】
この粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、一対の集塵電極11,12に電圧を印加することにより荷電された、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能なものである。更に、貫通孔2を形成する壁の電気的特性の変化を、上記一対の計測電極15,16によって測定することにより、貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能である。これにより、本実施形態の粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に排ガス等を通過させて、排ガス中に含有される粒子状物質を検出することができる。
【0053】
この粒子状物質検出装置100aは、DPF等の下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔2内に流入した粒子状物質の量を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質の量を推算することができる。これにより、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能となる。
【0054】
また、粒子状物質検出装置100aは、上述したように排ガスの全量を測定するものではないため、粒子状物質検出装置100aを小型化することができ、狭いスペースに設置することが可能となる。
【0055】
また、DPF等の下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部だけを貫通孔2内に導入するため、貫通孔2内の粒子状物質を効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることができる。
【0056】
また、検出装置本体1が一方向に長く形成され、その一方の端部1aに、貫通孔2が形成されるとともに、一対の集塵電極11,12及び一対の計測電極15,16が配設(埋設)されるため、貫通孔2及び各電極(例えば、集塵電極11や一対の計測電極15,16)を高温の排ガスが流通する排気系中で使用される配管内に挿入し、他方の端部1b側を排気系中で使用される配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、各電極の取出端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、排気系中で使用される配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度が高く、且つ安定した測定を行うことができる。
【0057】
なお、この粒子状物質検出装置に用いられる検出装置本体1には、上記貫通孔2が少なくとも一つ形成されている必要があり、二つ以上であってもよい。また、検出装置本体1が誘電体から形成されることにより、一対の集塵電極11,12や、各種の配線11b,13b,15b,16bがそれぞれ誘電体で覆われた状態となっている。
【0058】
また、上記一対の計測電極15,16は、少なくとも一対備えることが必要であり、二対以上であってもよい。なお、図5においては、一対の計測電極15,16が、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面に配設された場合の例を示しているが、貫通孔2を形成する一方の壁の内部に埋設されていてもよい。
【0059】
また、一対の計測電極の形状については特に制限はなく、粒子状物質を貫通孔の壁に吸着させた際に、その壁の電気的な特性の変化を測定することができるように配置された一対の電極であればよい。なお、図8に示すように、一対の計測電極15,16は、線状を呈し、貫通孔2の壁の内側面又はその内部に長く対向しているものであることが好ましく、更に、線状を呈する一対の計測電極15,16は、一対をなすそれぞれが複数に分岐(例えば、図8に示すように、櫛歯状に分岐)をして、複数の対向部分を有するものであることが好ましい(例えば、上記櫛歯状の部分を所定の間隔を空けて噛み合わせるように対向配置されたものであることが好ましい)。このように構成することによって、一対の計測電極15,16の対向配置された部分を長く(広く)とることができ、より正確な測定値を得ることができる。
【0060】
なお、粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内を通過する粒子状物質が、ディーゼルエンジンより排出される煤であるときに、特にその効果を発揮させることができる。
【0061】
〔2−1〕検出装置本体:
検出装置本体は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長く構成された、粒子状物質検出装置の基体となる部位である。検出装置本体は誘電体から構成されており、この貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部には少なくとも一対の集塵電極が配置されており、この一対の集塵電極に電圧を印加することにより貫通孔内に電界を発生させることができる。
【0062】
検出装置本体を構成する誘電体は、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。中でも、アルミナを好適に用いることができる。このような誘電体からなる検出装置本体の内部に集塵電極を埋設することにより、誘電体に覆われた集塵電極を形成することが可能となる。そして、粒子状物質検出装置が、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。ここで、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
【0063】
なお、「検出装置本体の一方の端部」というときは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。また、「検出装置本体の他方の端部」というときは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。なお、検出装置本体の一方の端部は、好ましくは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。また、検出装置本体の他方の端部は、好ましくは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置とは、検出装置本体1から、上記一方の端部1aと他方の端部1bの範囲を除いた部分ということになる(図4A〜図4C参照)。
【0064】
図4A〜図4Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいて、検出装置本体1は、一方向に長く形成され、その長手方向の長さは、特に限定されないが、排気系中で使用される配管に挿入したときに排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングできる長さであることが好ましい。
【0065】
また、検出装置本体1の厚さ(「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向(厚さ方向)における長さ)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3mm程度が好ましい。ここで、「検出装置本体1の厚さ」というときは、上記厚さ方向において最も厚い部分の厚さをいう。また、検出装置本体1の、貫通孔2にガスが流通するときの流通方向における長さ(ガス流通方向の長さ)は、特に限定されないが、例えば、2〜20mm程度が好ましい。そして、検出装置本体1の長手方向長さは、検出装置本体1の厚さの10〜100倍であることが好ましく、検出装置本体1のガス流通方向の長さの3〜100倍であることが好ましい。
【0066】
検出装置本体1の形状は、図4A〜図4Dに示すように、長手方向に直交する断面形状が長方形の板状であってもよいし、図示は省略するが、当該断面形状が円形、楕円形等の棒状であってもよい。また、一方向に長い形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0067】
粒子状物質検出装置100aにおいて、貫通孔2の形状、及び大きさは特に限定されず、排ガスを通過させ、粒子状物質の量を測定できるものであればよい。例えば、貫通孔2の、検出装置本体の長手方向における長さは、2〜20mm程度が好ましく、貫通孔2の、集塵電極11,12で挟まれる部分の幅(検出装置本体の長手方向、及びガスの流通方向の両方に垂直な方向における長さ)は、3〜30mm程度が好ましい。
【0068】
貫通孔2の大きさを上記範囲とすることにより、粒子状物質を含む排ガスを貫通孔2内に十分に流通させることができ、更に、集塵電極11,12で発生する電界が貫通孔2内に粒子状物質を効果的に吸着させることが可能となる。
【0069】
また、貫通孔2の形状としては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることが好ましい。貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることにより、より効率的に排気系中に使用される配管内を流通する排ガス等を粒子状物質検出装置の貫通孔内に流入(入口部分が拡開された場合)させることや、流出(出口部分が拡開された場合)させることが可能となる。
【0070】
また、このような粒子状物質検出装置は、検出装置本体1が、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックを、それぞれの間に各電極、配線等を挟みながら積層して粒子状物質検出装置を作製することができるため、粒子状物質検出装置を効率的に製造することが可能となる。
【0071】
〔2−2〕計測電極(電極部):
計測電極は、貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に少なくとも一対配置されたものである。集塵電極によって貫通孔の壁面に粒子状物質を電気的に吸着させることにより、貫通孔を形成する壁の電気的特性が変化する。この電気的特性の変化を、計測電極に流れる測定信号(電気信号)として信号測定部により測定する。
【0072】
計測電極の形状については、上述したように貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することが可能なものであれば特に制限はないが、図8に示すような櫛歯状に分岐した形状を好適例として挙げることができる。このように構成することによって、より正確な測定を行うことができる。
【0073】
計測電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、計測電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0074】
この計測電極には、それぞれ検出装置本体の他方の端部に向かって延びる一対の計測電極配線が電気的に接続されている。それぞれの計測電極配線の幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、計測電極配線の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、計測電極配線の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0075】
また、図4A〜図4Dに示すように、粒子状物質検出装置100aの一対の計測電極15,16は、検出装置本体1の他方の端部1bに、それぞれの電極の取出端子15a,16aを有している。そして、この取出端子15a,16aが、計測電極(電極部)の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部22(図11参照)に電気的に接続されている。
【0076】
一対の計測電極15,16の取出端子15a,16aを、検出装置本体1の他方の端部1bに配設することにより、貫通孔2が配設される部分(即ち、一方の端部1a)と取出端子15a,16aとの間隔を大きくとることができる。このため、貫通孔2等が配設される一方の端部1aだけを高温の排ガスが流通する排気系中に使用される配管内に挿入し、取出端子15a,16aが配設されている他方の端部1b側を排気系中で使用される配管から外に出した状態にすることが可能となる。取出端子15a,16aを高温にすると、粒子状物質の検出精度が低下し、安定した検出が行い難くなることがあったり、長期にわたって使用した場合に電気端子と外部に接続するためのハーネスとの接点不良が発生し測定不能になったりすることがある。このため、取出端子15a,16aを排気系中で使用される配管の外に出し、高温に曝されない状態とすることにより、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0077】
検出装置本体1の他方の端部1bに配設された取出端子15a,16aは、図4Bに示すように、検出装置本体1の他方の端部1bの側面に、長手方向に延びるように配置されていることが好ましい。なお、図4Bにおいては、検出装置本体1の他方の端部1bは、幅が狭くなっているが、他方の端部1bの幅は、このように狭くなっていてもよいし、狭くなっていなくてもよい。取出端子15a,16aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.1〜2.0mm、長さ0.5〜20mmの帯状であることが好ましい。取出端子15a,16aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)等を挙げることができる。
【0078】
〔2−3〕集塵電極(電極部):
集塵電極は、貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、上記一対の計測電極の埋設位置よりも貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、検出装置本体を構成する誘電体で覆われた電極である。このような集塵電極11,12間に所定の電圧を印加することにより、貫通孔2内に電界を発生させることができる。
【0079】
集塵電極は、貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、貫通孔2内に電界を発生させることができるものであれば、その形状については特に制限はない。本実施形態の粒子状物質検出装置においては、集塵電極の一方の電極が、図6に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と貫通孔2を隔てて反対側の壁の内部に配置された(図5参照)、高電圧が印加される高電圧集塵電極11であり、また、集塵電極の他方の電極が、図9に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と同一側の壁の内部に配置された(図5参照)、接地された接地集塵電極12である。それぞれの集塵電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、集塵電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0080】
集塵電極11,12の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、貫通孔2内に電界を発生させることが可能であればよい。例えば、形状としては、長方形、円形、長円形等を挙げることができる。また、集塵電極11,12の大きさは、例えば、貫通孔2の、側面から見たときの面積の70%以上であることが好ましい。
【0081】
例えば、図6においては、高電圧集塵電極11が、貫通孔と略同じ大きさに形成された場合の例を示している。この高電圧集塵電極11には、検出装置本体1の長手方向に延びる配線11bが接続されており、配線11bが、その先端(電極11に接続されていない側の先端)部分で、図4Bに示す取出端子11aに層間接続(ビア接続)されている。配線11bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線11bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線11bの材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0082】
なお、一対の集塵電極の両方の取出端子を、検出装置本体の他方の端部に配設してもよいが、図4A〜図4Dに示すように、接地された集塵電極(接地集塵電極12)の取出端子12aを検出装置本体1の他方の端部1bに配設し、高電圧集塵電極11の取出端子11aを、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設することが好ましい。これにより、接地集塵電極12の取出端子12aと、高電圧集塵電極11の取出端子11aとを、間隔を開けて配設することができる。このため、一対の集塵電極11,12間に電圧を印加するために、取出端子11aと取出端子12aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体1の表面に沿面放電が生じることを有効に防止することができる。
【0083】
粒子状物質検出装置100aにおいては、取出端子11aと取出端子12aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がし易くなることがある。一方、100mmより長いと、取出端子11aが排気系中で使用される配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置100aの検出装置本体1を排気系中で使用される配管等に装着したときに、検出装置本体1の排気系中で使用される配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体1を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
【0084】
また、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設した取出端子11aと、貫通孔2との間の距離は、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。10mmより短いと、粒子状物質検出装置100aを、貫通孔2の部分が排気系中で使用される配管内に挿入されるように、上記配管に装着したときに、この配管内を流通する高温の排ガスの熱が取出端子11aに影響を及ぼし易くなることがある。
【0085】
高電圧集塵電極11の取出端子11aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.5〜3mm、長さ0.5〜3mmの四角形等の多角形状であることが好ましいが、円形、楕円形、レーストラック形状、その他の形状等であってもよい。取出端子11aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0086】
高電圧集塵電極11と貫通孔2との間の距離、及び接地集塵電極12と貫通孔2との間の距離は、50〜500μmであることが好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に貫通孔内に電界を生じさせることができる。各集塵電極11,12と、貫通孔2との間の距離は、各集塵電極11,12を覆う誘電体の、貫通孔2に面する部分の厚さということになる。
【0087】
集塵電極により発生する電界の条件としては、ギャップ(一対の集塵電極相互間の距離)、ガス温度によって変わるが50〜200kV/cmが好ましい。
【0088】
粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に流入する流体(即ち、排ガス)に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させ、粒子状物質を吸着させたことによる電気的特性の変化を読み取り、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するものである。排ガス中の粒子状物質が、貫通孔2内に流入する前から既に荷電されている場合には、貫通孔2内に発生させた電界によって粒子状物質を吸着させる。一方、粒子状物質が荷電されていない場合には、貫通孔2内に発生させた電界によって粒子状物質を荷電し、貫通孔2の壁面に荷電した粒子状物質を電気的に吸着させる。
【0089】
〔2−4a〕信号測定部:
信号測定部は、電極部の電気的特性を測定信号(換言すれば、電気信号)として測定するためのものである。具体的には、例えば、測定する電気的特性が静電容量である場合には、アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B等を用いることができる。
【0090】
図4A〜図4Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいては、計測電極15,16の取出端子15a,16aと、信号測定部22(図11参照)とが電気的に接続されており、計測電極15,16の電気的特性を測定信号として測定することができるように構成されている。
【0091】
〔2−4b〕測定信号記憶部:
信号測定部により測定された測定信号の値は、測定信号記憶部に読み出し可能に記憶される。測定信号記憶部に記憶された測定信号の値は、信号判定部、補正部、及び算出部にて、粒子状物質の算出において用いられる。測定信号記憶部は、公知の記憶媒体を用いることができる。
【0092】
〔2−4c〕信号判定部:
信号判定部は、測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値を比較し、測定信号の値に補正が必要か否かを判定する判定機構である。具体的には、まず、信号判定部においては、測定信号記憶部に記憶された測定信号の値を読み出し、10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求める。そして、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する。バックグラウンド信号ノイズの値が測定信号記憶部に記憶されている場合には、このバックグラウンド信号ノイズの値を読み出す。信号判定部としては、上記測定信号の値の変化量の算出、及び変化量とバックグラウンド信号ノイズの値との比較を行うプログラム等の命令列(コマンドライン)を順次読み込んで実行する集積回路等を挙げることができる。なお、信号判定部にて求める「測定信号の値の変化量」とは、変化量を求めるサンプルにおける変位の最大値のことをいう。従って、10サンプルにおける10個の測定信号の値を比較した場合には、10個の測定信号の値の変位の最大値が、変化量となる。
【0093】
〔2−4d〕補正部:
補正部は、信号判定部によって得られた結果に基づいて、測定信号記憶部に記憶された測定信号の値を必要に応じて補正するものである。従来の粒子状物質検出装置では、電極部に一旦付着した粒子状物質の脱離を見逃して、得られる測定値に大きな誤差を生じるものであったが、本実施形態の粒子状物質検出装置は、信号判定部及び補正部によって、粒子状物質の脱離した分の減少を測定信号の値に加算する補正を行うことができ、より正確な測定を行うことが可能となる。例えば、補正部としては、連続する10サンプル以下の測定信号の値の変化量が、バックグラウンド信号ノイズの2倍以上の大きさである場合には、その減少値を、減少が確認された測定信号の値に加算する演算処理を行う集積回路を用いることができる。
【0094】
〔2−4e〕算出部:
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、測定信号の値を基に排ガスに含まれる粒子状物質の量を算出する算出部を備えている。算出部においては、補正部によって補正された後の測定信号の値を基に、粒子状物質の量の算出が行われる。更に、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、排ガスに含まれる粒子状物質の量(即ち、算出部により算出された粒子状物質の量)と排ガスの通気量とから、排気系を通過した粒子状物質の総量を算出し、この粒子状物質の総量が所定の基準値を超えた場合に、粒子状物質検出装置の再生が実行されるように構成されたものであってもよい。このように構成することによって、電極部(即ち、測定電極)に過剰に粒子状物質が付着する前に、粒子状物質検出装置の再生を行うことが可能となり、継続的により正確な粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0095】
〔2−5〕加熱部(除去手段):
図5及び図10に示す粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2の壁面(検出装置本体1の側面に並行する壁面)に沿うようにして検出装置本体1の内部に配設(埋設)された加熱部13を備えている。このような加熱部13によって装置を加熱することにより、貫通孔2を形成する壁に吸着された粒子状物質を加熱酸化させることができる(即ち、装置を再生することができる)。また、粒子状物質の質量測定時等において、貫通孔2の内部空間を所望の温度に調節し、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。
【0096】
加熱部13は、例えば、加熱部を形成するための導体ペーストを用いて形成することができる。図10に示すように、線状の金属材料からなるものであってもよい。また、幅広のフィルム状のものであってもよい。図10においては、検出装置本体1の長手方向において、線状の金属材料が波状に配置された加熱部13の例を示す。また、図10においては、検出装置本体1の長手方向に延びる2つの波状部分が、検出装置本体1の一方の先端部分1cにて連結された場合の例を示す。このような形状にすることにより、貫通孔内部を均一に過熱し、電極部21(測定電極15,16)に付着した粒子状物質を除去することができる。加熱部13の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。加熱部13は、貫通孔2の壁面に沿うようにして検出装置本体1の内部に埋設されていてもよい。また、図10に示すように、貫通孔2が配置されている位置だけでなく、更に検出装置本体1の他方の端部1b側に延びるように形成されていてもよい。これにより、貫通孔内部と貫通孔付近との温度差を小さくでき、急加熱しても素子(検出装置本体)の破損が起きにくいという利点がある。加熱部により、貫通孔の内部空間の温度を650℃まで上昇できることが好ましい。
【0097】
また、図10においては、二本の配線によって二つの加熱部13が形成された場合の例を示しているが、加熱部は一つであってもよいし、三つ以上の複数であってもよい。また、図示は省略するが、貫通孔が形成される両側の壁に、それぞれ加熱部が配置されていてもよい。即ち、加熱部の配置及び数は、捕集した粒子状物質の酸化除去や、温度調節等の目的を達成するために必要な配置及び数とすることができる。
【0098】
また、図10に示す加熱部13は、配線13bに接続され、それぞれの配線13bは、図4Dに示すように、各取出端子13aに層間接続されている。加熱部13の取出端子13aも、計測電極15,16の取出端子15a,16aの場合と同様に、検出装置本体1の一方の端部1a側が加熱されたときの熱の影響を回避するために、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されることが好ましい。図4Dにおいては、四つの取出端子13aが、検出装置本体1の他方の側面側に、四本が並ぶように配置されているが、取出端子13aの配置は、このような配置に限定されるものではない。
【0099】
〔3〕粒子状物質の検出方法:
次に、本発明の粒子状物質の検出方法の一の実施形態について説明する。本実施形態の粒子状物質の検出方法は、これまでに説明した、本実施形態の粒子状物質検出装置によって行われる測定値の補正と同様の補正を行うことによって、粒子状物質の検出を行う粒子状物質の検出方法である。
【0100】
即ち、本実施形態の粒子状物質の検出方法は、内燃機関の排気系に電極部を配設し、この排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を電極部に吸着させて、電極部の電気的特性を測定信号として継続的に検出する測定工程と、測定信号を基に、排ガスに含まれる粒子状物質の量を算出する粒子状物質量算出工程と、を備え、上記信号測定部により測定された測定信号の値を、測定信号記憶部に記憶させる測定信号記憶工程と、測定信号記憶部に記憶させた10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する判定工程と、上記変化量が、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する補正工程と、を更に備えた粒子状物質の検出方法である。本実施形態の粒子状物質の検出方法においては、上記補正工程により補正された測定信号の値を基に粒子状物質の量を算出する。
【0101】
このように構成することによって、一旦電極に付着した粒子状物質が、この電極から脱離した場合に、脱離した粒子状物質に相当する測定信号の減少分を補正して、排ガスに含まれる粒子状物質の量を高精度に測定することができる。特に、電極に付着した粒子状物質は、その量が一定に達して、ある程度の質量をもった凝集粒子となった場合に、上述したような電極からの脱離が生じ易く、測定値の誤差(狂い)が大きくなってしまうということがあったが、上記したように補正を行うことにより、より正確な測定を実現することができる。例えば、測定信号は、信号ノイズとして信号のばらつきを有しており、測定される測定信号の全ての減少値を粒子状物質の脱落として補正を行った場合には、測定値が電極から粒子状物質が脱落した分を超えて過剰に上昇してしまうため、正確な測定が逆に困難になってしまう。
【0102】
本実施形態の粒子状物質の検出方法は、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態として説明した図1A〜図1C、及び図11に示す粒子状物質検出装置100を用いることによって実現することができる。
【0103】
更に、本実施形態の粒子状物質の検出方法においては、例えば、粒子状物質検出装置として、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備え、電極部が、貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極の埋設位置よりも貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有するものを用いることが好ましい。このような粒子状物質検出装置としては、例えば、図4A〜図4Dに示す粒子状物質検出装置100aを挙げることができる。
【0104】
測定する電極部の電気的特性としては、静電容量又は抵抗値であることが好ましい。電気的特性の測定を行う信号測定部の構成は、本発明の粒子状物質検出装置の実施形態にて説明した信号測定部と同様に構成されたものを好適に用いることができる。測定工程は、このような信号測定部を用いて行うことができる。
【0105】
また、測定信号記憶工程、判定工程、補正工程、及び粒子状物質量算出工程についても、本発明の粒子状物質検出装置の実施形態にて説明した、測定信号記憶部、信号判定部、補正部、及び算出部を用いて行うことができる。また、補正の条件、信号測定部の測定間隔等の各測定条件等についても、本発明の粒子状物質検出装置の実施形態にて説明した条件と同様の条件にて行うことが好ましい。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
本発明の粒子状物質検出装置として、燃機関の排気系に設けられた電極部と、電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部と、信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部と、信号判定部と、特定の測定信号の値を補正する補正部と、測定信号の値を基に排ガスに含まれる粒子状物質の量を算出する算出部と、を備えた粒子状物質検出装置を作成した。粒子状物質検出装置は、図4A〜図4D、及び図5〜図10に示すように、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極15,16と、貫通孔2を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極15,16の埋設位置よりも貫通孔2を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極11,12と、を備え、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するための粒子状物質検出装置100aである。上記一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12によって、粒子状物質検出装置100aの電極部21が構成され、この一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12は、配線15b,16b,11b,12bを介して取出端子15a,16a,11a,12aと接続されている。一対の計測電極15,16が、本発明の電極部を構成し、上記配線及び取出端子を経由して、図1Aに示すように信号測定部22に電気的に接続されている。
【0108】
(粒子状物質検出装置の作製)
まず、アルミナを誘電体原料として使用し、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエートを使用し、分散媒として有機溶剤(キシレン:ブタノール=6:4(質量比))を使用し、これらをアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7質量部、可塑剤3.5質量部、分散剤1.5質量部、有機溶剤100質量部とした。
【0109】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0110】
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工した。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、切断部形成グリーンシートも作製した。グリーンシートの厚さは、計測電極が配置されるグリーンシートを50μmとし、それ以外のグリーンシートを250μmとした。
【0111】
得られたグリーンシートの表面に、図5〜図10に示されるような、各電極(計測電極、及び集塵電極)、加熱部(除去手段)、各配線、及び各取出端子を形成した。配設する各電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0112】
また、加熱部を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0113】
上記各電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成するために調製された導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷を用いて印刷して、所定の形状の電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成した。具体的には、複数のグリーンシートのなかの二つのグリーンシートについて、それぞれの一方の面に集塵電極を配設し、高電圧集塵電極については他方の端部に向かって延びる配線を配設して、集塵電極配設グリーンシートを二つ形成した。
【0114】
更に、厚さ50μmのグリーンシートについて、貫通孔を形成する部位に、櫛歯状の一対の計測電極を形成した。櫛歯状の一対の計測電極は、櫛歯部分の線間ピッチが0.35mm(櫛歯部分のクリアランスが0.15mm、各櫛歯部分の幅が0.20mm)となるように間隔を空けて噛み合うように対向配置した。
【0115】
更に、他の一つのグリーンシートについて、計測電極配設グリーンシートと重ねたときに計測電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成して切断部形成グリーンシートを形成した。更に、別の他の一つのグリーンシートについて、切断部形成グリーンシートと重ねたときに貫通孔となる切断部と重なる位置に、加熱部を形成するために調製した導体ペーストを印刷して加熱部を形成し、加熱部から他方の端部に向かって延びる配線を配設して加熱部形成グリーンシートを形成した。
【0116】
そして、二つの集塵電極配設グリーンシートのそれぞれに、他の電極等が配設されていないグリーンシートを重ねて集塵電極及び配線をグリーンシートで覆った状態として、集塵電極埋設グリーンシートとするとともに、二つの集塵電極埋設グリーンシートで計測電極配設グリーンシート及び切断部形成グリーンシートを挟むように積層し、更に、加熱部形成グリーンシートを集塵電極埋設グリーンシートの外側に位置するように積層し、二つの集塵電極で切断部を挟み且つ二つの配線で計測電極を挟んだ状態のグリーンシート積層体を形成した。各配線と、各配線に対応する取出端子とは、導体ペーストの埋め込み方法により、層間接続(ビア接続)した。
【0117】
グリーンシートの積層は、グリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層し、グリーンシート積層体からなる粒子状物質検出装置の未焼成体を得た。
【0118】
得られた、グリーンシート積層体(粒子状物質検出装置の未焼成体)を120℃で乾燥し、1500℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製した。粒子状物質検出装置の取出端子と、信号測定部としてのLCRメータ(アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B)とを、配線を用いて電気的に接続した。この信号測定部によって、電極部の静電容量を、10m秒間隔で連続的に測定することができる。
【0119】
また、測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部としての記憶媒体を、信号測定部に接続した。また、集積回路からなる信号判定部、補正部、及び算出部を配設した。信号判定部を構成する集積回路は、測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する測定信号の値の変化量を求め、この変化量と、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する命令列を実行するものである。また、補正部を構成する集積回路は、上記変化量が、測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を減少が確認された測定信号の値に加算して測定信号の値を補正する命令列を実行するものである。また、算出部を構成する集積回路は、補正された後の測定信号の値を基に排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する命令列を実行するものである。得られた実施例1の粒子状物質検出装置を用いて、燃焼排ガス中の粒子状物質の検出を行った。
【0120】
(バックグラウンド信号ノイズの測定)
上記信号判定部による判定の基準となる、測定信号のバックグラウンド信号ノイズを、室温無風の条件で測定した。測定されたバックグラウンド信号ノイズ(標準偏差)は、0.05pFであった。
【0121】
(測定信号の測定:粒子状物質の検出)
得られた実施例1の粒子状物質検出装置を、ディーゼルエンジンの排気系の配管の一部に設置して粒子状物質の測定を行った。ディーゼルエンジンとしては、排気量2000ccの直噴−ディーゼルエンジンを使用し、回転数1500rpm、トルク24N・m、EGR(exhaust gas recirculation)開度50%、排ガス温度200℃、吸入空気1.3m3(室温換算)/分の運転条件で排ガスを発生させた。スモークメータ(Advanced Validation Labs社製、商品名:型式4158)による排ガス中の粒子状物質量は、2.0mg/m3であった。信号測定部にて、電極部の電気的特性を測定信号として測定し、測定した測定信号の値を測定信号記憶部に記憶した。更に、測定信号記憶部に記憶した測定信号の値について信号判定部にて判定を行い、必要に応じて測定信号の値の補正を行った。更に、補正後の測定信号の値を基に算出部にて粒子状物質の量の算出を行った。このような測定を合計6回繰り返した。各6回の測定において、測定終了時点における補正後の測定信号の値(計測値)が1.71〜1.83pFとなり、ばらつきが10%以内と極めて再現性の高い測定を行うことができた。従って、6回の粒子状物質の検出において、粒子状物質の量(検出量)のばらつきは10%以内であった。
【0122】
(比較例1)
信号判定部、及び補正部を構成する集積回路を配置せず、信号測定部により測定された測定信号の値から、粒子状物質の量の算出を行うように構成された以外は、実施例1と同様に構成された粒子状物質検出装置を製造した。この比較例1の粒子状物質検出装置を用いて、実施例1と同様の方法で粒子状物質の検出を6回行った。
【0123】
比較例1の粒子状物質検出装置を用いて、実施例1と同様の方法で電極部の測定信号の値を測定した。6回の測定値のうち、5回の測定終了時点における測定信号の値(計測値)は1.72〜1.89pFであったのに対して、残りの1回の測定終了時点における測定信号の値(計測値)は1.53pFであった。この残りの1回の測定終了時点における測定信号の値は、その他の測定における測定信号の値と大きく異なるものであった。比較例1の粒子状物質検出装置は、実施例1の粒子状物質検出装置のような電極部から粒子状物質が脱離した場合の測定信号の値の変化を補正する補正部を備えていないものである。比較例1の粒子状物質検出装置においては、測定信号の測定中に、一旦電極部に付着した粒子状物質が電極部から脱落した場合に、得られる測定信号の値が小さくなる。このため、測定中に、粒子状物質が脱落した場合と、粒子状物質が脱落しない場合とで、測定信号の値に大きな差異を生じてしまう。粒子状物質が電極部から脱落した場合に測定された測定信号の値を基に算出された粒子状物質の量は、実際に排ガスに含まれる粒子状物質の量よりも小さくなる。比較例1の粒子状物質検出装置は、検出される粒子状物質の量に大きな誤差を生じるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の粒子状物質検出装置は、内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を検出する検出装置として用いることができる。また、本発明の粒子状物質の検出方法は、内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質の量を高精度に測定する方法として用いることができる。
【符号の説明】
【0125】
1:検出装置本体、1a:一方の端部、1b:他方の端部、1c:一方の先端部分、1d:他方の先端部分、2:貫通孔、11:集塵電極(高電圧集塵電極)、12:集塵電極(接地集塵電極)、11a,12a,13a:取出端子、11b,12b,13b:配線、13:加熱部、15,16:計測電極、15a,16a:計測電極取出端子(取出端子)、15b,16b:計測電極配線(配線)、21:電極部、22:信号測定部、23:算出部、24:測定信号記憶部、25:信号判定部、26:補正部、27:検出装置本体、28:配線、31:配管(排気系中で使用される配管)、36:粒子状物質、100,100a:粒子状物質検出装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系に設けられた電極部と、
前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を前記電極部に吸着させ、前記電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部と、
前記測定信号の値を基に前記排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する算出部と、備え、
前記信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部と、
前記測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する前記測定信号の値の変化量を求め、前記変化量と、前記測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する信号判定部と、
前記変化量が、前記測定信号の前記バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を前記減少が確認された前記測定信号の値に加算して前記測定信号の値を補正する補正部と、を更に備え、
前記補正部により補正された前記測定信号の値を基に、前記算出部により前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記信号測定部により測定される前記電気的特性が、静電容量又は抵抗値である請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものである請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備えるとともに、
前記電極部が、少なくとも一対の計測電極を有し、前記少なくとも一対の計測電極が、前記検出装置本体の前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設されている請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記一対の計測電極の埋設位置よりも、前記検出装置本体の前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設された少なくとも一対の集塵電極を更に備えた請求項4に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
内燃機関の排気系に電極部を配設し、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を前記電極部に吸着させて、前記電極部の電気的特性を測定信号として継続的に検出する測定工程と、前記測定信号を基に前記排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質量算出工程と、を備え、
前記信号測定部により測定された前記測定信号の値を、測定信号記憶部に記憶させる測定信号記憶工程と、
前記測定信号記憶部に記憶させた10サンプル以下の連続する前記測定信号の値の変化量を求め、前記変化量と、前記測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する判定工程と、
前記変化量が、前記測定信号の前記バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を前記減少が確認された前記測定信号の値に加算して前記測定信号の値を補正する補正工程と、を更に備え、
前記補正工程により補正された前記測定信号の値を基に前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質の検出方法。
【請求項7】
前記電気的特性として、前記電極部の静電容量又は抵抗値を測定する請求項6に記載の粒子状物質の検出方法。
【請求項1】
内燃機関の排気系に設けられた電極部と、
前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を前記電極部に吸着させ、前記電極部の電気的特性を測定信号として継続的に測定する信号測定部と、
前記測定信号の値を基に前記排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する算出部と、備え、
前記信号測定部により測定された測定信号の値を記憶する測定信号記憶部と、
前記測定信号記憶部に記憶された10サンプル以下の連続する前記測定信号の値の変化量を求め、前記変化量と、前記測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する信号判定部と、
前記変化量が、前記測定信号の前記バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を前記減少が確認された前記測定信号の値に加算して前記測定信号の値を補正する補正部と、を更に備え、
前記補正部により補正された前記測定信号の値を基に、前記算出部により前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記信号測定部により測定される前記電気的特性が、静電容量又は抵抗値である請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものである請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備えるとともに、
前記電極部が、少なくとも一対の計測電極を有し、前記少なくとも一対の計測電極が、前記検出装置本体の前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設されている請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記一対の計測電極の埋設位置よりも、前記検出装置本体の前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設された少なくとも一対の集塵電極を更に備えた請求項4に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
内燃機関の排気系に電極部を配設し、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を前記電極部に吸着させて、前記電極部の電気的特性を測定信号として継続的に検出する測定工程と、前記測定信号を基に前記排ガスに含まれる前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質量算出工程と、を備え、
前記信号測定部により測定された前記測定信号の値を、測定信号記憶部に記憶させる測定信号記憶工程と、
前記測定信号記憶部に記憶させた10サンプル以下の連続する前記測定信号の値の変化量を求め、前記変化量と、前記測定信号のバックグラウンド信号ノイズの値とを比較する判定工程と、
前記変化量が、前記測定信号の前記バックグラウンド信号ノイズの値の2倍以上の大きさの減少である場合に、当該減少値を前記減少が確認された前記測定信号の値に加算して前記測定信号の値を補正する補正工程と、を更に備え、
前記補正工程により補正された前記測定信号の値を基に前記粒子状物質の量を算出する粒子状物質の検出方法。
【請求項7】
前記電気的特性として、前記電極部の静電容量又は抵抗値を測定する請求項6に記載の粒子状物質の検出方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−37504(P2012−37504A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132479(P2011−132479)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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