説明

粒子状物質検出装置

【課題】極めて小型で安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】本発明の粒子状物質検出装置100は、板状の素子基材11、この素子基材11の一方の端面16に配置された少なくとも一対の計測電極12、素子基材11のいずれかの端面又はその内部に配置されたヒータ電極13、及び素子基材11の他方の端面17に配置され、計測電極12及びヒータ電極13のそれぞれに電気的に接続された複数の取出端子14を有するセンサ素子10と、柱状の胴部21、及び胴部21の一方の端面26に配置された胴部端面22を有する外装体20とを備え、センサ素子10が、外装体20の胴部21の内部に、一対の計測電極12が、胴部端面22の開口部23から露出するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置に関する。さらに詳しくは、極めて小型で安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、セラミック等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。セラミック製のDPFは、長期間の使用が可能であるが、熱劣化等によりクラックや溶損等の欠陥が発生することがあり、微量ではあるが粒子状物質が漏れる可能性がある。このような欠陥が発生した場合には、その欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識することが、大気汚染防止の観点から極めて重要である。
【0003】
このような欠陥の発生を検知する方法として、DPFの下流側に粒子状物質検出装置を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような粒子状物質検出装置としては、図3A及び図3Bに示すような、一方の端部に一対の計測電極112が配置されたセンサ素子110を備えた粒子状物質検出装置が提案されており、この計測電極112が配置されるセンサ素子110は、排ガス中が通過する流路に挿入した場合に、排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングすることが可能なように、且つ、排ガス等からの熱が装置全体に伝わらないように、一方向に長い板状の素子基材111を有している。
【0005】
このような一方向に長い板状の素子基材111は、一方の端部に一対の計測電極112が配置されるとともに、他方の端部に取出端子116が配置され、更に素子基材111上には、一方の端部の計測電極112と他方の端部の取出端子116とを結ぶ(電気的に接続する)配線114が配置されている。
【0006】
また、このようなセンサ素子110は、センサ素子110の計測電極112に粒子状物質を付着させて、一対の計測電極112間の電気的特性を測定することによって、排ガス中の粒子状物質を測定するものであるが、定期的に計測電極112に付着した粒子状物質を燃焼除去する必要があるため、例えば、素子基材111の一方の端部側に、計測電極112に付着した粒子状物質を燃焼除去するためのヒータ電極113が配設されている。このヒータ電極113も、上記計測電極112と同様に、他方の端部に取出端子117が配置され、更に素子基材111上には、ヒータ電極113と他方の端部の取出端子117とを結ぶ配線115が配置されている。
【0007】
なお、このような一方向に長い板状の素子基材を有するセンサ素子、即ち、一方向に長い板状のセンサ素子は、筒状の外装体の内部に配置され、絶縁性の碍子や、タルク等の粉体を外装体内部の隙間に圧縮状態で充填することによって固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2007−519899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような粒子状物質検出装置は、センサ素子の一方の端部が排ガス中に曝された状態で測定を行うため、一対の計測電極、ヒータ電極、及びそれぞれの電極に接続される配線は、耐熱性、及び耐食性に優れた金属材料によって形成されている。そして、このような耐熱性、及び耐食性に優れた金属材料としては、高価な白金等の貴金属が主として用いられていた。上述したように、センサ素子は、一方向に長い板状であるため、素子基材の一方の端部から他方の端部に配置される配線に使用される白金の量が極めて多く、このような配線に使用される大量の白金が、製造コストの増大を招来していた。また、ヒータ電極に接続される配線に関しては、ヒータ電極よりも配線部分の抵抗値を小さくするために、配線の厚さを厚くする必要があり、白金の使用量を更に増大させることとなっていた。例えば、ヒータ電極の配線を薄くすると、配線部分の抵抗値が大きくなり、ヒータ電極が配置された部分だけでなく、配線部分においても発熱が生じ、センサ素子全体が加熱されてしまうという問題がある。
【0010】
また、一方向に長い板状のセンサ素子は、自動車等の振動、或いは装置の外部や排ガスの流れに乗って飛来する固形異物(飛来物)の衝突等により破損し易いという問題もあった。また、このような一方向に長い板状のセンサ素子を備えた粒子状物質検出装置は、自動車の排気系に安定した状態で固定することが容易ではないという問題もあった。
【0011】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、極めて小型で安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下の粒子状物質検出装置を提供するものである。
【0013】
[1] 板状の素子基材、前記素子基材の一方の端面に配置された少なくとも一対の計測電極、前記素子基材のいずれかの端面又はその内部に配置されたヒータ電極、及び前記素子基材の他方の端面に配置され、前記計測電極及び前記ヒータ電極のそれぞれに電気的に接続された複数の取出端子を有するセンサ素子と、柱状の胴部、及び前記胴部の一方の端面に配置され、前記センサ素子の前記計測電極を、前記胴部の前記一方の端面の外部に向けて露出させる開口部が形成された胴部端面を有する外装体と、を備え、前記センサ素子は、前記胴部の内部に、前記計測電極が前記胴部端面の前記開口部から露出するように配置されてなり、前記外装体の前記一方の端面側を、測定対象ガスと接触させて、前記測定対象ガス中に含まれる粒子状物質を前記計測電極に付着させ、前記計測電極間の電気的な特性の変化を測定することにより、前記測定対象ガス中の粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【0014】
[2] 前記センサ素子の前記計測電極は、前記素子基材の一方の端面の中央部分に配置されている前記[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【0015】
[3] 前記一対の計測電極を構成するそれぞれの計測電極は、平面的に配列された複数の櫛歯部と、前記複数の櫛歯部をその一端で連結する櫛骨部とを有する櫛歯状の電極であり、それぞれの前記計測電極の前記櫛歯部が、相互にかみ合わされるように配置されている前記[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0016】
[4] 前記センサ素子の前記ヒータ電極は、前記素子基材のいずれかの端面又はその内部の、前記一方の端面において前記計測電極が配置された領域を含む範囲に配置されている前記[2]又は[3]に記載の粒子状物質検出装置。
【0017】
[5] 前記センサ素子の前記取出端子は、前記素子基材の前記他方の端面の少なくとも外周部分に配置されている前記[2]〜[4]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0018】
[6] 少なくとも一方の端面に開口部が形成された中空柱状の碍子体、前記碍子体の一方の端面に配置され、前記碍子体を前記センサ素子の前記他方の端面に当接させることにより、前記センサ素子の前記複数の取出端子との電気的接続が可能な複数の接続端子、及び前記複数の接続端子のそれぞれと電気的に接続され、前記碍子体の内部を貫通して前記一方の端面から他方の端面まで配置された複数の取出電極を有するセンサ接続部を、更に備えた前記[1]〜[5]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0019】
[7] 前記センサ素子、及び前記センサ接続部を、前記外装体の前記胴部端面側に向けて押圧し、前記センサ素子の前記複数の取出端子と、前記センサ接続部の前記複数の接続端子とを圧接させる弾性部材を、更に備えた前記[6]に記載の粒子状物質検出装置。
【0020】
[8] 前記センサ接続部と前記弾性部材との間に配置され、前記弾性部材の弾性力を、前記センサ接続部に伝達させる第2碍子体を、更に備えた前記[7]に記載の粒子状物質検出装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明の粒子状物質検出装置は、センサ素子が、板状の素子基材、この素子基材の一方の端面に配置された少なくとも一対の計測電極、素子基材のいずれかの端面又はその内部に配置されたヒータ電極、及び素子基材の他方の端面に配置され、計測電極及びヒータ電極のそれぞれに電気的に接続された複数の取出端子を有するものであり、従来の一方向に長い板状のセンサ素子と比較して、配線に用いられる高価な白金等の金属材料の量を大幅に減少させることができ、極めて安価に製造することできる。より具体的には、各電極と接続される配線は、板状の素子基材の厚さに相当する長さでよいため、金属材料の使用量が極めて少なく、更に、配線の断線等の不具合も生じ難い。
【0022】
また、センサ素子は、外装体を構成する胴部の内部に、計測電極が、胴部端面の開口部から露出するように配置されているため、粒子状物質検出装置の小型化を実現することができる。これにより、粒子状物質検出装置の排気系への設置(固定)が容易になるとともに、飛来物の衝突等による装置の破損を有効に防止することができる。
【0023】
また、本発明の粒子状物質検出装置においては、少なくとも一方の端面に開口部が形成された中空柱状の碍子体、この碍子体の一方の端面に配置され、碍子体をセンサ素子の他方の端面に当接させることにより、センサ素子の複数の取出端子との電気的接続が可能な複数の接続端子、及び複数の接続端子のそれぞれと電気的に接続され、碍子体の内部を貫通して一方の端面から他方の端面まで配置された複数の取出電極を有するセンサ接続部を、更に備えたものとすることにより、センサ素子の他方の端面(即ち、センサ素子の裏面)の複数の取出端子と、センサ接続部の複数の接続端子とを圧接により極めて簡便に接続することができる。また、このような中空柱状の碍子体を有するセンサ接続部を更に備えることによって、センサ素子が加熱された場合であっても、センサ接続部の他方の端面側まで熱が伝わり難くなる。また、センサ接続部は排ガスに殆ど接触しない構造であるため、センサ接続部に用いられる取出電極等については、安価で汎用的な金属材料を用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図1B】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図である。
【図1C】図1BのA−A’断面を示す模式図である。
【図2A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態に用いられるセンサ素子の一方の端面側を模式的に示す平面図である。
【図2B】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態に用いられるセンサ素子の側面を模式的に示す側面図である。
【図2C】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態に用いられるセンサ素子の他方の端面側を模式的に示す平面図である。
【図2D】図2BのB−B’断面を示す模式図である。
【図3A】従来の粒子状物質検出装置のセンサ素子の上面を模式的に示す平面図である。
【図3B】従来の粒子状物質検出装置のセンサ素子の下面を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0026】
[1]粒子状物質検出装置:
本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態は、図1A〜図1Cに示すように、センサ素子10と、このセンサ素子10を内部に収納する外装体20とを備えた粒子状物質検出装置100である。ここで、図1Aは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図1Bは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図であり、図1Cは、図1BのA−A’断面を示す模式図である。
【0027】
上記センサ素子10は、図2A〜図2Dに示すように、板状の素子基材11、この素子基材11の一方の端面16に配置された少なくとも一対の計測電極12(図2Aにおいては、一対の計測電極12a,12b)、素子基材11のいずれかの端面又はその内部に配置されたヒータ電極13、及び素子基材11の他方の端面17に配置され、少なくとも一対の計測電極12a,12b及びヒータ電極13のそれぞれに電気的に接続された複数の取出端子14(14a〜14d)を有している。
【0028】
このようなセンサ素子10は、従来の一方向に長い板状のセンサ素子と比較して、配線に用いられる高価な白金等の金属材料の量を大幅に減少させることができ、極めて安価に製造することできる。より具体的には、各電極と接続される配線は、板状の素子基材の厚さに相当する長さでよいため、金属材料の使用量が極めて少なく、更に、配線の断線等の不具合も生じ難い。
【0029】
ここで、図2Aは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態に用いられるセンサ素子の一方の端面側を模式的に示す平面図である。図2Bは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態に用いられるセンサ素子の側面を模式的に示す側面図である。図2Cは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態に用いられるセンサ素子の他方の端面側を模式的に示す平面図である。図2Dは、図2BのB−B’断面を示す模式図である。
【0030】
また、図1A〜図1Cに示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100に用いられる外装体20は、柱状の胴部21、及び胴部21の一方の端面26に配置され、センサ素子10の少なくとも一対の計測電極12a,12bを、胴部21の一方の端面26の外部に向けて露出させる開口部23が形成された胴部端面22を有している。そして、センサ素子10は、外装体20の胴部21の内部に、各計測電極12a,12bが、胴部端面22の開口部23から露出するように配置されているため、粒子状物質検出装置100の小型化を実現することができる。これにより、粒子状物質検出装置100の排気系への設置(固定)が容易になるとともに、飛来物の衝突等による装置の破損を有効に防止することができる。なお、特に限定されることはないが、例えば、センサ素子10は、図1Cに示すように、胴部端面22と平行に(即ち、板状のセンサ素子10と胴部端面22とが平行となるように)配置されることが好ましい。
【0031】
なお、外装体20の胴部21内部には、センサ素子10の複数の取出端子14と電気的接続を行うための配線或いは電極が配置され、外装体20の他方の端部から、ケーブルハーネス等の配線42によって、電源(図示せず)及びセンサ素子10にて測定される電気的な特性の変化を検出する検出部(図示せず)等に接続されている。
【0032】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、外装体20の一方の端面側を、測定対象ガスと接触させて、測定対象ガス中に含まれる粒子状物質を、センサ素子10の一対の計測電極12a,12bに付着させ、一対の計測電極12a,12b間の電気的な特性の変化を測定することにより、測定対象ガス中の粒子状物質を検出するものである。
【0033】
より具体的には、外装体20の一方の端面側を、測定対象ガス、即ち、排ガスに接触させることにより、測定対象ガス中に含有される粒子状物質を、外装体20の一方の端面の開口部23(即ち、胴部端面22の開口部23)から露出するように配置された少なくとも一対の計測電極12a,12bに吸着(付着)させる。そして、この少なくとも一対の計測電極12a,12b間の電気的な特性の変化を測定することにより、少なくとも一対の計測電極12a,12bに吸着された粒子状物質の質量を測定し、得られた測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質の量を概算する。これにより、より微量の粒子状物質の測定を行うことができる。
【0034】
本実施形態の粒子状物質検出装置は、DPF等のフィルタの下流側に設置し、このフィルタにより、粒子状物質が良好に除去できているか否かの確認を行うための検出装置として好適に用いることができる。
【0035】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、図1A〜図1Cに示すように、少なくとも一方の端面に開口部が形成された中空柱状の碍子体31、この碍子体31の一方の端面36に配置され、この碍子体31をセンサ素子10の他方の端面17に当接させることにより、センサ素子10の複数の取出端子14との電気的接続が可能な複数の接続端子32、及び複数の接続端子32のそれぞれと電気的に接続され、碍子体31の内部を貫通して一方の端面36から他方の端面37まで配置された複数の取出電極33を有するセンサ接続部30を、更に備えていることが好ましい。
【0036】
このように構成することによって、センサ素子10の他方の端面17(即ち、センサ素子の裏面)の複数の取出端子14と、センサ接続部30の複数の接続端子32とを圧接により極めて簡便に接続することができる。また、中空柱状の碍子体31によって、センサ素子10が加熱された場合であっても、センサ接続部30の他方の端面37側まで熱が伝わり難く、装置全体の加熱を有効に防止することができる。また、センサ接続部30は、排ガスに殆ど接触しない構造であるため、センサ接続部30に用いられる取出電極33等については、安価で汎用的な金属材料を用いることが可能となる。これにより、粒子状物質検出装置100の製造コストを更に低減することができる。
【0037】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、センサ素子10、及びセンサ接続部30を、外装体20の胴部端面22側(即ち、一方の端面26側)に向けて押圧し、センサ素子10の複数の取出端子14と、センサ接続部30の複数の接続端子32とを圧接させる弾性部材40を、更に備えたものであることが好ましい。
【0038】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、センサ接続部30と弾性部材40との間に配置され、弾性部材40の弾性力を、センサ接続部30に伝達させる第2碍子体50を、更に備えていてもよい。このように構成することによって、皿バネ等によって構成された弾性部材40の弾性力を、センサ接続部30の他方の端面37に均一且つ良好に伝達することができ、センサ素子10とセンサ接続部30との電気的接続の信頼性を更に良好なものとすることができる。
【0039】
以下、本実施形態の粒子状物質検出装置を、各構成要素毎に更に詳細に説明する。
【0040】
[1−1]センサ素子:
本実施形態の粒子状物質検出装置に用いられるセンサ素子は、図2A〜図2Dに示すように、板状の素子基材11と、この素子基材11の一方の端面16(以下、素子基材11の「表面」ということがある)に配置された少なくとも一対の計測電極12と、素子基材11のいずれかの端面(即ち、一方の端面或いは他方の端面)又はその内部に配置されたヒータ電極13と、素子基材11の他方の端面17(以下、素子基材11の「裏面」ということがある)に配置された複数の取出端子14と、を有している。
【0041】
素子基材は、一対の計測電極等を配置するための基材であり、セラミックス等の誘電体によって形成された板状部材を好適に用いることができる。ここで、本実施形態において、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
【0042】
素子基材の表面形状については、例えば、一方の端面に配置する一対の計測電極の形状等によって適宜決定することができるが、図2Aに示すような円形状の他、四角形、六角形等の多角形形状を挙げることができる。
【0043】
素子基材の一方の端面の大きさ(換言すれば、センサ素子の一方の端面の大きさ)については特に制限はないが、素子基材の一方の端面の直径の長さ(多角形形状の場合には、多角形形状の中心を通過し、その面積を二等分する線分の長さ)が、2〜30mmであることが好ましく、5〜15mmであることが更に好ましく、9〜12mmであることが特に好ましい。2mm未満では、センサ素子が小さくなり過ぎて、正確な測定が困難になることがあり、一方、30mmを超えると、センサ素子が大きくなり過ぎて、粒子状物質検出装置が大型化してしまう。
【0044】
素子基材の厚さは、0.2〜10mmであることが好ましく、0.5〜2.0mmであることが更に好ましく、0.75〜1.5mmであることが特に好ましい。0.2mm未満では、内部にヒータ電極を配置した素子基材の製造が困難なことがある。また、素子基材の強度が低く、破損し易くなってしまうことがある。一方、10mmを超えると、センサ素子が過剰に厚くなり、センサ素子を加温する際に、ヒータの電力を必要以上に大きくしなければならないことがある。また、他方の端面に配置された取出端子までの配線部分(ビア接続導通部或いはセンサ素子側面での導通部)の抵抗値を、ヒータ電極よりも小さくするために、配線の断面積を厚くする必要があり、配線部分の電極材料の使用量を更に増大させねばならないことがある。
【0045】
このような素子基材は、複数のテープ状セラミック(セラミックグリーンシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックの間に、ヒータ電極を挟みながら積層し、且つ、その表面及び裏面に、計測電極と取出端子とを配置することによって、所定の形状のセンサ素子を効率的に作製することができる。
【0046】
素子基材は、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。中でも、アルミナを好適に用いることができる。このような素子基材は、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。
【0047】
図2Aに示すように、センサ素子10の計測電極12a,12bは、素子基材11の一方の端面16の中央部分に配置されていることが好ましい。このように構成することによって、図1Bに示すように、外装体20の胴部21内部にセンサ素子10を配置した場合に、外装体20の胴部端面22の開口部23から、計測電極12a,12bを良好に露出させることができる。なお、計測電極は、少なくとも一対形成されていれば、三個以上の計測電極(二対以上の計測電極)によって構成されていてもよい。
【0048】
なお、素子基材の一方の端面の中央部分というときは、素子基材の一方の端面の中心から、一方の端面の面積の5〜50%に相当する領域のことを意味する。なお、計測電極は、素子基材の一方の端面の中心から、一方の端面の面積の10〜30%に相当する領域に配置されることがより好ましい。
【0049】
計測電極は、耐熱性、及び耐食性に優れた金属材料を用いることが好ましい。具体的には、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、銀、ニッケル及び金等を挙げることができ、特に、白金を好適に用いることができる。
【0050】
少なくとも一対の計測電極は、互いに対向して配設され、対向配置された計測電極間の電気的特性の変化を測定する。計測電極間の距離は、粒子状物質が計測電極間及びその周囲に付着した際に、測定電極間の電気的特性の変化を、明確に測定することができる範囲に設定されることが好ましい。例えば、0.2〜10mm程度であることが好ましい。
【0051】
少なくとも一対の計測電極は、それぞれの計測電極が線状の電極であり、この線状の電極が互いに平行に配置されたものであってもよいが、図2Aに示すセンサ素子20のように、一対の計測電極12を構成するそれぞれの計測電極12a,12bが、平面的に配列された複数の櫛歯部12xと、複数の櫛歯部をその一端で連結する櫛骨部12yとを有する櫛歯状の電極であり、それぞれの計測電極12a,12bの櫛歯部12xが、相互にかみ合わされるように配置されたものであることが好ましい。このように構成することによって、一対の計測電極12a,12bの対向配置された部分を長く(広く)とることができ、電気的特性の測定感度及び測定精度をより向上させることができる。
【0052】
計測電極の厚さは特に限定されず、例えば、2〜30μmであることが好ましい。また、計測電極の幅も特に限定されず、例えば、30〜300μmであることが好ましい。なお、「計測電極の厚さ」は、素子基材の表面に直交する方向における計測電極の長さ(厚さ)を意味し、「計測電極の幅」は、例えば、計測電極が線状或いは櫛歯状である場合、素子基材の表面において、計測電極の長手方向に直交する方向の長さを意味する。
【0053】
計測電極は、素子基材を貫通して、或いはセンサ素子の側面に電極を配置して、素子基材の他方の端面に配置された取出端子と電気的に接続(層間接続或いはビア接続ともいう)されている。例えば、図2A及び図2Dにおいては、素子基材11にビアホール18を形成し、計測電極12a,12bと取出端子14とがビアホール18を経由して電気的に接続された場合の例を示している。なお、上記したように、センサ素子の側面まで電極を延設し、センサ素子の側面を経由して取出端子との接続を行ってもよい。このように構成することによって、一対の計測電極と取出端子との電気的接続を良好に確保することができる。また、一対の計測電極と取出端子とを繋ぐ配線(接続)を極めて短い距離で行うことができ、金属材料の低減を実現することが可能となる。
【0054】
なお、ビアホールを形成する場合には、各電極と取出端子とに、二以上のビアホールを形成して電気的接続を行ってもよい。また、センサ素子の側面まで電極を延設させる場合には、センサ素子の側面に、ガラスコート等の絶縁被覆を施すことが好ましい。このように構成することによって、センサ素子の側面の配線部分と、外装体との電気的な接触を有効に防止することができる。
【0055】
素子基材のいずれかの端面又はその内部には、センサ素子を加熱するヒータ電極が配置されている。このようなヒータ電極を有することにより、一対の計測電極及びその周囲に付着した粒子状物質を加熱酸化(即ち、燃焼除去)させることができ、また、粒子状物質の質量測定時等において、センサ素子を所望の温度に調節し、一対の計測電極間の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。なお、図2Dにおいては、素子基材11の内部にヒータ電極13を配置した場合の例を示しているが、素子基材11の一方の端面16(図2A参照)や、他方の端面17(図2C参照)にヒータ電極13を配置してもよい。また、複数個所、例えば、素子基材の一方の端面と内部との両方にヒータ電極を配置してもよい。
【0056】
ヒータ電極の材質としては、ヒータ電極を内層に配置する場合は、タングステン、モリブデン、白金、銅、アルミ二ウム、銀、ニッケル及び鉄等を挙げることができ、特に、タングステンを好適に用いることができる。ヒータ電極を一方の端部或いは他方の端部に配置する場合は、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、銀、金等の耐熱性、及び耐食性に優れた金属材料を好適に用いることができる。特に、白金を好適に用いることができる。また、ヒータ電極の厚さは特に限定されず、例えば、1〜30μmであることが好ましい。
【0057】
ヒータ電極は、図2Dに示すように、細線状の金属材料が、同一面上に、間隔を空けて密集した状態で配置されたものであることが好ましい。このように構成することによって、ヒータ電極に電圧を印加することにより、細線状の金属材料が良好に発熱する。なお、ヒータ電極は、図2Dに示す形状に限定されることはなく、例えば、細線状の金属材料が、波状に配置されたものや蛇行して配置されたもの等であってもよい。
【0058】
また、ヒータ電極は、素子基材のいずれかの端面又はその内部の、一方の端面において計測電極が配置された領域を含む範囲に配置されていることが好ましい。即ち、ヒータ電極は、測電極が配置された領域、又は計測電極を覆う(計測電極よりも広い)範囲で配置されていることが好ましい。例えば、一対の計測電極が、素子基材の一方の端面の中央部分に配置されている場合には、ヒータ電極は、計測電極が配置された中央部分を含む範囲に配置されていることが好ましい。このように構成することによって、計測電極に付着した粒子状物質を良好に除去することができる。
【0059】
ヒータ電極は、上記計測電極と同様に、素子基材を貫通して、或いはセンサ素子の側面に電極を配置して、素子基材の他方の端面に配置された取出端子と電気的に接続(層間接続或いはビア接続ともいう)されている。このように構成することによって、ヒータ電極と取出端子との電気的接続を良好に確保することができる。また、ヒータ電極と取出端子とを繋ぐ配線(接続)を極めて短い距離で行うことができ、金属材料の低減を実現することが可能となる。例えば、図2C及び図2Dにおいては、素子基材11にビアホール18を形成し、ヒータ電極13と取出端子14とがビアホール18を経由して電気的に接続された場合の例を示している。なお、上記したように、センサ素子の側面まで電極を延設し、センサ素子の側面を経由して取出端子との接続を行ってもよい。
【0060】
素子基材の他方の端面には、これまでに説明したように、一対の計測電極及びヒータ電極のそれぞれに電気的に接続された複数の取出端子が配置されている。取出端子の材質としては、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、銀、金及びニッケル等を挙げることができ、特に、白金を好適に用いることができる。また、取出端子の厚さは特に限定されず、例えば、2〜30μmであることが好ましい。
【0061】
この取出端子は、素子基材の他方の端面であれば、配置位置については特に制限はないが、例えば、素子基材の他方の端面の少なくとも外周部分に配置されていることが好ましい。勿論、素子基材の他方の端面の中央部分に配置されていてもよい。
【0062】
例えば、図2Cにおいては、素子基材10が円盤状(円柱状)であり、この円盤状の素子基材10の中央部分を除く外周部分に、一対の計測電極の二つの取出端子14a、14b、及びヒータ電極の取出端子14c、14dが、間隔を空けて配置された場合の例を示している。なお、図2Cにおいては、各取出端子14として、中心角が略60°の扇台形状(但し、ビア接続された部分から連続する配線部分は除く)に形成された場合の例を示しているが、一対の計測電極及びヒータ電極と電気的接続に接続され、且つ、図示しない粒子状物質検出装置の電源や検出部等との電気的接続を行う他の配線等との接続が可能な形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0063】
なお、図2C及び図2Dに示すヒータ電極13は、素子基材10の他方の端面17において二つに分岐し、二つの扇台形状の取出端子14d1、14d2を有する場合の例を示している。このように構成することによって、取出端子14cから取出端子14d1における抵抗値と、取出端子14d1から取出端子14d2における抵抗値を差し引きすることにより、ヒータ電極13における抵抗値(即ち、実際に加熱したい箇所の抵抗値)を算出することができ、その抵抗値からヒータ電極部の温度を見積もることができる。
【0064】
[1−2]外装体:
外装体は、その内部に、センサ素子及びその他配線等を収納するための粒子状物質検出装置の外装部材である。
【0065】
本実施形態の粒子状物質検出装置においては、図1A〜図1Cに示すように、柱状の胴部21、及び胴部21の一方の端面26に配置され、センサ素子10の一対の計測電極12a,12bを一方の端面26の外部に向けて露出させる開口部23が形成された胴部端面22を有している。センサ素子10は、外装体20の胴部21の内部に、一対の計測電極12a,12bが、胴部端面22の開口部23から露出するように配置されている。
【0066】
外装体20の材質については特に制限はないが、例えば、ステンレス、鉄、ニッケル、白金、コバール、銅、金、モリブデン、及びタングステン等を挙げることができる。
【0067】
外装体20の胴部21は、柱状を呈し、板状のセンサ素子10を、胴部21の軸方向に垂直に配置することが可能な大きさに形成されている。なお、センサ素子10を収納した際に、センサ素子10の位置決めが容易になるように、胴部21の内径は、センサ素子10の外径と同程度、或いは当該外径よりも僅かに大きいことが好ましい。なお、図1Aにおいては、外装体20の胴部21が、円柱状の場合の例を示しているが、例えば、軸方向に垂直な断面の形状が、四角形や六角形等の多角形の柱状であってもよい。
【0068】
外装体20の胴部端面22は、センサ素子10を胴部端面22側に配置した際に、センサ素子10の計測電極12a,12bが外部に露出するような開口部23が形成されている。これにより、センサ素子10を外装体20の内部に収納した状態で、一対の計測電極12a,12bを、測定対象ガスと接触させることが可能となる。
【0069】
外装体20の内部にセンサ素子10を収納する際には、胴部端面22とセンサ素子10との間に、座金41(ワッシャー)を配置することが好ましい。このように構成することによって、胴部端面22の開口部23から、外装体20内部に排ガスが侵入することを有効に防止することができる。上記座金41の材質等については、特に制限はないが、例えば、ニッケル、銅、ステンレス、鉄、金、白金、コバール等の金属を好適に用いることができる。
【0070】
外装体20は、胴部21の他方の端面27に、センサ素子10等を収納し、外装体20の内部を密閉するための後部外筒28を更に備えていてもよい。胴部21と後部外筒28とは、いずれか一方の端部に、他方の端部が嵌合可能に構成されていることが好ましい。図1Cにおいては、胴部21の他方の端面27側に、後部外筒28が嵌め合わされて、外装体20内部に、センサ素子10、センサ接続部30、第2碍子体50、及び弾性部材40が加圧状態で収納されている。後部外筒28は、外装体20の胴部21と同様の金属材料によって形成することができる。
【0071】
また、外装体20は、胴部21の外周面に、スクリューナット29を更に備えていてもよい。このスクリューナット29は、この本実施形態の粒子状物質検出装置100を使用する際に、測定対象ガスが流れる配管に取り付けるために用いることができる。例えば、上記配管中にあらかじめ取り付けてあるボス等の取り付け部(配管継手)に、このスクリューナットのネジをそれぞれ嵌め合わせることによって、配管への設置を行うことができる。
【0072】
外装体20の長さは、特に制限はないが、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、センサ素子10を、外装体20の胴部端面22に平行に配置することで、粒子状物質検出装置の全長を短くすることができることから、例えば、20〜70mmであることが好ましく、30〜40mmであることが更に好ましい。20mm未満であると、胴部端面22が加熱された場合に、外装体20の反対側の端部まで熱が伝達し易くなってしまうことがあり、70mmを超えると、粒子状物質検出装置100が大きく(長く)なり過ぎてしまうことがある。なお、上記した「外装体の長さ」は、外装体20の軸方向における全長を意味し、外装体20が後部外筒28を有する場合には、外装体20の胴部端面22から、後部外筒28の端面28aまでの長さのことをいう。
【0073】
[1−3]センサ接続部:
本実施形態の粒子状物質検出装置は、センサ素子の取出端子との電気的接続を行うための接続配線等を有するセンサ接続部を更に備えていることが好ましい。
【0074】
このセンサ接続部は、図1Cに示すように、少なくとも一方の端面36に開口部が形成された中空柱状(即ち、軸方向の少なくとも一部が中空である柱状)の碍子体31、この碍子体31の一方の端面36に配置され、この碍子体31をセンサ素子10の他方の端面17に当接させることにより、センサ素子10の複数の取出端子14との電気的接続が可能な複数の接続端子32、及び複数の接続端子32のそれぞれと電気的に接続され、碍子体31の内部を貫通して一方の端面36から他方の端面37まで配置された複数の取出電極33を有する。
【0075】
上記碍子体31は、複数の取出電極33が、軸方向に延びて配置されたレンコン状の絶縁部材である。このような形状とすることによって、センサ素子10からの熱の伝達を抑制し、センサ接続部30以降への過剰な熱の伝達を有効に防止することができる。また、センサ素子10との電気的接続、及び外装体20内部の配線が極めて容易に行えるため、粒子状物質検出装置の製造コスト(より詳しくは、粒子状物質検出装置の組み立てコスト)の削減を実現できる。
【0076】
碍子体31の材質については特に制限はないが、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス等を挙げることができ、絶縁性、耐熱性、耐熱衝撃性、耐食性、機械的強度等に優れたアルミナ等をより好適に用いることができる。
【0077】
碍子体31は、センサ素子10のヒータ電極13(図2D参照)が配置された部分において、碍子体31の軸方向の少なくとも一部が刳り貫かれた中空部分を有することが好ましい。このように構成することによって、ヒータ電極が発熱した場合に、その熱の伝達を有効に抑制することができる。
【0078】
なお、碍子体の軸方向に垂直な断面における碍子体の厚さ(中空部分を除く肉厚)は、0.5〜5mmであることが好ましく、1.0〜3.0mmであることが更に好ましく、1.5〜2.5mmであることが特に好ましい。碍子体の厚さを上記範囲とすることによって、センサ素子を、外装体の胴部端面に向けて強固に押し付けることができ、センサ素子の取出端子と、センサ接続部の接続端子とを良好に接続することができる。また、碍子体の内部に、取出電極を良好に配置することもできる。
【0079】
碍子体の軸方向の長さは、10〜60mmであることが好ましく、25〜35mmであることが更に好ましい。10mm未満であると、センサ素子からの熱の伝達を抑制することが困難になることがあり、60mmを越えると、粒子状物質検出装置の長さが過剰に長くなってしまうことがある。
【0080】
図1Cに示すように、碍子体31の一方の端面36には、センサ素子10の複数の取出端子14との電気的接続が可能な複数の接続端子32が配置されている。この接続端子32は、センサ素子10の取出端子14と対向するように配置され、両者を圧接により簡便に接続することができるものであることが好ましい。
【0081】
また、この接続端子32は、碍子体31を貫通するように配置された取出電極33と電気的に接続されており、碍子体31の他方の端面37側に配線されている。図1Cに示すセンサ接続部30は、一方の端面36から所定の長さが中空となる柱状の碍子体31に、レンコン状の貫通孔が形成され、この貫通孔を通過して、それぞれの取出電極33が配置されている。
【0082】
接続端子及び取出電極の材質としては、ステンレス、ニッケル、インコネル、タンタル、チタン、アルミ二ウム、ハステロイ、コバール、銅、金、銀、白金等を挙げることができる。なお、接続端子及び取出電極は、例えば、白金等の高価な金属材料でなくともよく、安価な金属材料を用いることによって、粒子状物質検出装置の製造コストを更に削減することができる。
【0083】
[1−4]その他の構成部材:
図1A〜図1Cに示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、センサ素子10、及びセンサ接続部30を、外装体20の胴部端面22側(即ち、胴部21の一方の端面26側)に向けて押圧し、センサ素子10の複数の取出端子14と、センサ接続部30の複数の接続端子32とを圧接させる弾性部材40を、更に備えたものであることが好ましい。このような弾性部材40により、取出端子14と接続端子32との電気的接続が極めて容易となる。
【0084】
図1Cにおいては、この弾性部材40は、外装体20の他方の端部側に配置されており、センサ素子10及びセンサ接続部30を、外装体20の胴部端面22に向けて押圧するように構成されている。なお、弾性部材40としては、例えば、皿バネ等を用いることができる。
【0085】
更に、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、センサ接続部30と弾性部材40との間に配置され、弾性部材40の弾性力を、センサ接続部30に伝達させる第2碍子体50を、更に備えていてもよい。このように構成することによって、皿バネ等によって構成された弾性部材40の弾性力を、センサ接続部30の他方の端面37に均一且つ良好に伝達することができ、センサ素子10とセンサ接続部30との電気的接続の信頼性を更に良好なものとすることができる。
【0086】
第2碍子体50の材質としては、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス等を挙げることができ、絶縁性、耐熱性、耐熱衝撃性、耐食性、機械的強度等に優れたアルミナ等をより好適に用いることができる。
【0087】
第2碍子体50は、センサ接続部30の他方の端面37側まで配設された取出電極33を延設させ、ケーブルハーネス等の配線42と電気的に接続可能に構成されていることが好ましい。
【0088】
また、胴部端面22とは反対側の外装体20の端面には、グロメット等の配線保護材43を配設することが好ましい。この配線保護材43としては、各配線42を通過させる貫通孔を有するゴム又はエストラマーからなる弾性部材を好適例として挙げることができる。
【0089】
本実施形態の粒子状物質検出装置によって粒子状物質の質量を検出する際には、例えば、少なくとも一対の計測電極間の静電容量等から計算されるインピーダンスを測定し、インピーダンスの変化から、一対の計測電極間に吸着された粒子状物質の質量を算出し、排ガス中の粒子状物質(質量)を検出する方法を挙げることができる。従って、本実施形態の粒子状物質検出装置は、少なくとも一対の計測電極間のインピーダンスを測定する検出部(以下、「測定部」ともいう)を更に備えることが好ましい。検出部としては、静電容量だけでなく、インピーダンス計測可能なLCRメーターやインピーダンスアナライザ等を挙げることができる。
【0090】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、ヒータ電極に電圧を印加するためのヒータ用電源を更に備えることが好ましい。ヒータ用電源としては、定電流電源等を挙げることができる。
【0091】
更に、本実施形態の粒子状物質検出装置は、外装体の胴部端面に装着され、粒子状物質を含む測定対象ガス(以下、単に「ガス」ということがある)を、外装体の胴部端面側に滞留させることが可能なドーム状のガス滞留部材を更に備えていてもよい。このガス滞留部材は、その表面に、測定対象ガスが流入し、且つガス滞留部材の内部に滞留したガスが流入するための、少なくとも二以上のガス通過開口部が形成されており、適当なガス流れを生じさせつつ、ガス滞留部材の内部に、粒子状物質を含む測定対象ガスを滞留させることができる。
【0092】
このようなガス滞留部材を更に備えることによって、胴部端面の開口部から露出した状態の一対の計測電極に対して、測定対象ガス中の粒子状物質を良好に付着させることができる。
【0093】
[2]粒子状物質検出装置の製造方法:
次に、本実施形態の粒子状物質検出装置を製造する方法について、図1A〜図1Cに示す本実施形態の粒子状物質検出装置100を製造する場合の例を説明する。
【0094】
[2−1]センサ素子の作製:
まず、センサ素子の作製方法について説明する。センサ素子は、セラミック原料を用いて、素子基材となる複数のセラミックグリーンシート(以下、単に「グリーンシート」ともいう)を得、得られた複数のグリーンシートに、一対の計測電極、ヒータ電極、及び取出端子をそれぞれ配設し、これらのグリーンシートを積層することによって作製することができる。以下、更に詳細に、センサ素子の作製方法を説明する。
【0095】
[2−1A]成形原料の調製:
アルミナ、コージェライト化原料、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種のセラミック原料(誘電体原料)と、成形原料として使用する他の成分とを混合し、スラリー状の成形原料を調製する。セラミック原料としては、上記原料が好ましいが、これに限定されるものではない。他の原料としては、バインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等を使用することが好ましい。
【0096】
バインダーとしては、特に限定されるものではないが、水系バインダー、非水系バインダーのどちらでもよい。例えば、水系バインダーとしてはメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等を好適に使用でき、非水系バインダーとしてはポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等を好適に使用することができる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を好適例として挙げることができる。
【0097】
バインダーの添加量は、セラミック原料100質量部に対して、3〜20質量部であることが好ましく、6〜17質量部であることが更に好ましい。このようなバインダー含有量とすることにより、スラリー状の成形原料を成形してグリーンシートを成形したとき、及び、乾燥、焼成したときに、クラック等の発生を防止することが可能となる。
【0098】
可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル等を使用することができる。
【0099】
可塑剤の添加量は、バインダー添加量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることが更に好ましい。70質量部より多いと、グリーンシートが柔らかくなりすぎ、シートを加工する工程において変形し易くなることがあり、30質量部より少ないと、グリーンシートが硬くなりすぎ、曲げただけでクラックが入るなどハンドリング性が悪くなることがある。
【0100】
分散剤としては、水系の分散剤としては、アニオン系界面活性剤、ワックスエマルジョン、ピリジン等を使用することができ、非水系の分散剤としては、脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤等を使用することができる。
【0101】
分散剤は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜3質量部であることが好ましく、1〜2質量部であることが更に好ましい。0.5質量部より少ないと、セラミック原料の分散性が低下することがあり、グリーンシートにクラック等が生じることがある。3質量部より多いと、セラミック原料の分散性は変わらずに焼成時の不純物を増やすことになる。
【0102】
分散媒としては、水等を使用することができる。分散媒は、セラミック原料100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましく、75〜150質量部であることが更に好ましい。
【0103】
上記各原料をアルミナ製ポット及びアルミナ玉石を用いて十分に混合してグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を調製する。また、これらの材料を、モノボールによりボールミル混合して調製してもよい。
【0104】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、さらに所定の粘度となるように調製する。成形原料の調製において得られるスラリー状の成形原料の粘度は、2.0〜6.0Pa・sであることが好ましく、3.0〜5.0Pa・sであることが更に好ましく、3.5〜4.5Pa・sであることが特に好ましい。粘度範囲をこのように調整すると、スラリーをシート状に成形し易くなるため好ましい。スラリー粘度は、高過ぎても低過ぎても成形し難くなることがある。なお、スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した値である。
【0105】
[2−1B]成形加工:
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料を成形加工して、シート形状のグリーンシートを作製する。成形加工方法は、成形原料をシート状に成形してグリーンシートを形成することができれば特に限定されず、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、カレンダーロール法等の公知の方法を使用することができる。
【0106】
[2−1C]グリーンシート積層体の形成:
次に、得られた各グリーンシートの表面に、少なくとも一対の測定電極、ヒータ電極、取出端子を配設する。例えば、まず、配設する一対の測定電極、ヒータ電極、取出端子を形成するための導体ペーストを調製し、得られた導体ペーストを、図2A、図2C、及び図2Dに示すように、各グリーンシートの対応する位置に印刷して、一対の測定電極、ヒータ電極、及び取出端子を形成する。
【0107】
上述した導体ペーストは、一対の測定電極等のそれぞれの形成に必要なそれぞれの材質に合わせて、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、銀、金等からなる群より選択される少なくとも一種を含有する粉末に、バインダー及びテルピネオール等の溶剤を加え、トリロールミル等を用いて十分に混錬して調製することができる。導体ペーストの印刷方法については特に制限はないが、例えば、スクリーン印刷等を用いることができる。
【0108】
なお、少なくとも一対の測定電極とこれに対応する取出端子、及びヒータ電極とこれに対応する取出端子は、素子基材を形成するためのグリーンシートの所定の箇所に厚み方向に向けて貫通孔を穿孔し、その貫通孔上部に、上記導体ペーストを盛った後、導体ペーストを盛った裏面の貫通孔の開口から吸引することによって、その導体ペーストを貫通孔に進入させ、素子基材を貫通して相互に電気的に接続可能なものとする。
【0109】
次に、このようにして得られた複数のグリーンシートを、センサ素子の構成に合わせて積層して、グリーンシート積層体を得る。なお、作製するセンサ素子の形状に応じて、グリーンシート積層体に打ち抜き加工等を行って、円盤状(円柱状)のグリーンシート積層体を得ることが好ましい。なお、打ち抜き加工は、一枚のグリーンシートの状態で行ってもよい。
【0110】
[2−1D]焼成:
次に、得られたグリーンシート積層体を乾燥、焼成して、センサ素子を得る。更に具体的には、得られたグリーンシート積層体を、60〜150℃で乾燥し、1200〜1600℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製する。グリーンシートが有機バインダーを含有する場合には、焼成の前に、400〜800℃で脱脂することが好ましい。このようにして、図2A〜図2Dに示すようなセンサ素子10を得ることができる。
【0111】
[2−2]センサ接続部の作製:
次に、センサ接続部の作製方法について説明する。センサ接続部は、アルミナ、コージェライト化原料、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種のセラミック原料と、成形原料として使用する他の成分とを混合し、センサ接続部用の成形原料を調製する。セラミック原料としては、上記原料が好ましいが、これに限定されるものではない。他の原料としては、バインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等を使用することが好ましい。
【0112】
次に、得られたセンサ接続部用の成形原料を、軸方向の少なくとも一部が刳り貫かれた中空部分を有する柱状に成形して、未焼成の碍子体を作製する。次に、得られた未焼成の碍子体を乾燥、焼成して、碍子体を得る。なお、乾燥、及び焼成の方法については、センサ素子の素子基材の作製方法に準じて行うことができる。
【0113】
次に、この碍子体に、取出電極を配設するための、一方の端面から他方の端面に貫通する貫通孔を形成する。なお、この貫通孔は、焼成した碍子体に形成するのではなく、例えば、成形時に予め貫通孔を有する形状に成形してもよいし、乾燥時に形成してもよい。
【0114】
次に、得られた碍子体の一方の端面に、センサ素子の取出端子と接続を行うための、接続端子を配置し、更に、碍子体の貫通孔の内部に取出電極を配置する。なお、接続端子は、予め取出電極の先端に接続された状態で、接続端子と取出電極とが一体となった金属部材を作製し、取出電極の部分を、碍子体の貫通孔の内部に挿入しつつ、接続端子の部分を、碍子体の一方の端面に固定することが好ましい。
【0115】
[2−3]第2碍子体の作製:
第2碍子体は、センサ接続部の碍子体と同様の方法で、第2碍子体用の成形原料を調製し、得られた第2碍子体用の成形原料を、所定の形状に成形して、未焼成の第2碍子体を作製する。次に、得られた未焼成の第2碍子体を乾燥、焼成して、第2碍子体を得る。
【0116】
[2−4]外装体の作製:
外装体は、ステンレス、鉄、ニッケル、白金、コバール、銅、金、モリブデン、及びタングステン等の金属材料を、中空の胴部、及び胴部の一方の端面に配置された胴部端面を有する柱状形状に、同一厚み形状で所定の金属材料をプレス加工して作製することができる。或いは所定の金属材料を鍛造加工、切削加工によっても作製することができる。なお、胴部端面には、センサ素子の一対の計測電極を一方の端面の外部に向けて露出させる開口部を形成する。また、同様の金属材料を用いて、外装体の内部を密閉するための後部外筒を作製することが好ましい。
【0117】
[2−5]粒子状物質検出装置の組み立て:
得られた外装体の内部に、センサ素子を、計測電極が胴部端面の開口部から露出するように配置する。なお、特に限定されることはないが、センサ素子は、センサ素子の一方の端面が胴部端面に平行となるように配置することが好ましい。この際、胴部端面とセンサ素子との間には、例えば、ニッケル製の座金(ワッシャー)を配置することが好ましい。
【0118】
次に、外装体の内部に、センサ接続部を、センサ素子の取出端子とセンサ接続部の接続端子とが接触するように配置する。その後、第2碍子体を、センサ接続部の後段に配置し、更に、皿バネ等の弾性部材を配置する。センサ接続部の他方の端面から延びる取出電極は、第2碍子体を経由して、ハーネス等の配線に接続され、検出器及び電源と電気的に接続される。
【0119】
このようにして、外装体の内部に、各部材を配置した後、外装体の他方の端部側に、後部外筒を嵌合させて、弾性部材の弾性力によって、センサ素子の取出端子とセンサ接続部の接続端子とを圧接させる。必要に応じて、後部外筒に、グロメット等の配線保護材を配置する。このようにして、図1A〜図1Cに示すような粒子状物質検出装置を製造することができる。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0121】
(実施例1)
本実施例においては、図2A〜図2Dに示すようなセンサ素子10を作製し、このセンサ素子を用いて図1Aに示すような粒子状物質検出装置100を作製した。
【0122】
(センサ素子の作成)
(成形原料の調製)
アルミナを誘電体原料として使用し、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエートを使用し、分散媒として有機溶剤(キシレン:ブタノール=6:4(質量比))を使用し、これらをアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7質量部、可塑剤3.5質量部、分散剤1.5質量部、有機溶剤100質量部とした。
【0123】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0124】
(成形加工)
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工した。グリーンシートの厚さは、600μmとした。
【0125】
次に、得られたグリーンシートの表面に、図2A〜図2Dに示すような計測電極12、ヒータ電極13、及び取出端子14を形成した。計測電極等を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0126】
なお、計測電極は、幅100μm、厚さ10μmの櫛歯形状とし、ヒータ電極は、幅440μm、厚さ10μmとした。また、取出端子は、厚さ20μmとした。測定電極とこれに対応する取出端子、及びヒータ電極とこれに対応する取出端子は、グリーンシートの所定の箇所に厚み方向に向けて貫通孔(ビアホール18)を形成し、その貫通孔上部に導体ペーストを盛った後、導体ペーストを盛った裏面の貫通孔の開口から吸引することによって、導体ペーストを貫通孔に進入させ、グリーンシートを貫通して相互に電気的に接続可能なものとした。
【0127】
計測電極等を形成した各グリーンシートを、図2A〜図2Dに示すようなセンサ素子10が得られるように積層し、グリーンシート積層体を得た。グリーンシートの積層は、グリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層した。その後、このグリーンシート積層体を、円盤状に打ち抜き、円盤状(円筒状)の未焼成センサ素子を得た。
【0128】
(焼成)
得られた未焼成センサ素子を、120℃で乾燥し、1500℃で焼成してセンサ素子を作製した。得られたセンサ素子は、直径10mmで、厚さが1.45mmであった。
【0129】
(センサ接続部の作製)
センサ素子の作製に用いた成形原料と同様の成形原料を用いて、円柱状の未焼成の碍子体を作製した。得られた未焼成の碍子体を、120℃で乾燥し、1500℃で焼成して、センサ接続部用の碍子体を作製した。この碍子体は、直径10mm、軸方向の長さ32.5mm円柱状で、一方の端面から軸方向に向けて直径6mmの中空部分が形成されている。
【0130】
得られた碍子体に、図1Cに示すように、取出電極33を配設するための、一方の端面から他方の端面に貫通する貫通孔を形成した。この貫通孔に、出電極を配置し、且つ碍子体の一方の端面に接続端子を配置してセンサ接続部を作製した。なお、接続端子は、予め取出電極の先端に接続された状態で、接続端子と取出電極とが一体となったニッケル製の金属部材を作製し、取出電極の部分を、碍子体の貫通孔の内部に挿入しつつ、接続端子の部分を、碍子体の一方の端面に固定した。
【0131】
(粒子状物質検出装置の作製)
得られたセンサ素子、及びセンサ接続部を、図1A〜図1Cに示すような外装体20の内部に収納して、粒子状物質検出装置100を作製した。なお、センサ素子10とセンサ接続部30との電気的接続は、センサ素子10の他方の端面17(即ち、センサ素子の裏面)の複数の取出端子14と、センサ接続部30の複数の接続端子32とを圧接すること(即ち、各電極を押し当てること)によって行った。
【0132】
本実施例の粒子状物質検出装置は、装置の製造時に使用した白金の使用量が、9.1mgであった。即ち、電極等に使用された白金は、センサ素子の作製に用いた導体ペースに含まれる白金のみであり、高価な白金の使用量が極めて少ないものであった。また、センサ接続部の複数の接続端子を圧接することによって電気的接続を行うことが可能であるため、装置の組み立てが極めて簡便であった。実施例1の粒子状物質検出装置の構成、及び白金の使用量を表1に示す。なお、表1における「接続方法」は、センサ素子の取出端子と、このセンサ素子とに電気的に接続される接続端子(ハーネス等の配線を含む)との接続方法を示す。
【0133】
【表1】

【0134】
(比較例1)
本比較例においては、図3A及び図3Bに示すようなセンサ素子110を用いて粒子状物質検出装置を作製した。なお、センサ素子の大きさは、長手方向の長さが67.6mm、幅が4.25mm、厚さが1.45mmとした。
【0135】
(センサ素子の作製)
実施例1と同様の成形原料の調製し、グリーンシートを作製し、得られたグリーンシートに、実施例1と同様に調製された導体ペーストを用いて、計測電極、ヒータ電極、取出端子、及び各配線を作製した。計測電極は、幅100μm、厚さ10μmの櫛歯形状とし、ヒータ電極は、幅440μm、厚さ10μmとし、取出端子は、厚さ20μmとした。なお、計測電極の形状及び大きさは、実施例1におけるセンサ素子と略同一である。
【0136】
また、計測電極と取出端子を繋ぐ配線は、幅350μm、厚さ10μm、長さ54mmとし、ヒータ電極と取出端子を繋ぐ配線は、幅1550μm、厚さ20μm、長さ50mmとした。なお、各配線等の幅及び厚さは、その配線の最大部分における値である。
【0137】
このようなグリーンシートを積層し、実施例1と同様の方法で焼成して図3A及び図3Bに示すようなセンサ素子を作製した。
【0138】
得られたセンサ素子を、中空柱状の外装体の内部に、センサ素子を固定する3個の絶縁性の碍子と、タルクの粉体とを用いて収納した。具体的には、センサ素子を、絶縁性の碍子(第一の碍子)によって支持した状態で、外装体の後方からタルクの粉体を一定量充填し、外装体の後方からタルクの粉体を押圧することにより押し固めた。更に、別の絶縁性の碍子(第二の碍子)を、外装体の後方から配置し、再度タルクの粉体を充填して押し固めた。その後、第三の碍子を配置して、センサ素子を外装体の内部に固定した状態で収納した。その後、センサ素子の他方の端部側の取出端子に、電気的接続を行うための接続プラグ(コネクタ)を配置して粒子状物質検出装置を作製した。
【0139】
比較例1の粒子状物質検出装置は、装置の製造時に使用した白金の使用量が、114.7mgであり、実施例1と比較して、約12.6倍の白金を使用することとなった。特に、ヒータ電極の配線部分に使用された白金の量が、全白金使用量の約7割を占めるものであった。比較例1の粒子状物質検出装置の構成、及び白金の使用量を表1に示す。なお、表1における「接続方法」の欄の「コネクタ方式」とは、上記した接続プラグを用いた接続方法のことである。
【0140】
比較例1の粒子状物質検出装置は、上述したように、絶縁性の碍子とタルク粉体を使用してセンサ素子を固定し、且つセンサ素子の他方の端部側の取出端子に接続プラグ(コネクタ)を配置することによってセンサ素子の電気的接続を確保するものであり、装置の組み立てが極めて煩雑なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の粒子状物質検出装置は、DPFの欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識するために好適に利用することができ、これにより大気汚染の防止に貢献することができる。
【符号の説明】
【0142】
10:センサ素子、11:素子基材、12:一対の計測電極、12a,12b:計測電極、12x:櫛歯部、12y:櫛骨部、13:ヒータ電極、14:取出端子、16:一方の端面、17:他方の端面、18:ビアホール、20:外装体、21:胴部、22:胴部端面、23:開口部、26:一方の端面、27:他方の端面、28:後部外筒、29:スクリューナット、30:センサ接続部、31:碍子体、32:接続端子、33:取出電極、36:一方の端面、37:他方の端面、40:弾性部材、41:座金、42:配線、43:配線保護材、50:第2碍子体、100:粒子状物質検出装置、110:センサ素子、111:素子基材、112:一対の計測電極、113:ヒータ電極、114,115:配線、116,117:取出端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の素子基材、前記素子基材の一方の端面に配置された少なくとも一対の計測電極、前記素子基材のいずれかの端面又はその内部に配置されたヒータ電極、及び前記素子基材の他方の端面に配置され、前記計測電極及び前記ヒータ電極のそれぞれに電気的に接続された複数の取出端子を有するセンサ素子と、
柱状の胴部、及び前記胴部の一方の端面に配置され、前記センサ素子の前記計測電極を、前記胴部の前記一方の端面の外部に向けて露出させる開口部が形成された胴部端面を有する外装体と、を備え、
前記センサ素子は、前記胴部の内部に、前記計測電極が前記胴部端面の前記開口部から露出するように配置されてなり、
前記外装体の前記一方の端面側を、測定対象ガスと接触させて、前記測定対象ガス中に含まれる粒子状物質を前記計測電極に付着させ、前記計測電極間の電気的な特性の変化を測定することにより、前記測定対象ガス中の粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記センサ素子の前記計測電極は、前記素子基材の一方の端面の中央部分に配置されている請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
一対の前記計測電極を構成するそれぞれの計測電極は、平面的に配列された複数の櫛歯部と、前記複数の櫛歯部をその一端で連結する櫛骨部とを有する櫛歯状の電極であり、それぞれの前記計測電極の前記櫛歯部が、相互にかみ合わされるように配置されている請求項2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記センサ素子の前記ヒータ電極は、前記素子基材のいずれかの端面又はその内部の、前記一方の端面において前記計測電極が配置された領域を含む範囲に配置されている請求項2又は3に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記センサ素子の前記取出端子は、前記素子基材の前記他方の端面の少なくとも外周部分に配置されている請求項2〜4のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
少なくとも一方の端面に開口部が形成された中空柱状の碍子体、前記碍子体の一方の端面に配置され、前記碍子体を前記センサ素子の前記他方の端面に当接させることにより、前記センサ素子の前記複数の取出端子との電気的接続が可能な複数の接続端子、及び前記複数の接続端子のそれぞれと電気的に接続され、前記碍子体の内部を貫通して前記一方の端面から他方の端面まで配置された複数の取出電極を有するセンサ接続部を、更に備えた請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項7】
前記センサ素子、及び前記センサ接続部を、前記外装体の前記胴部端面側に向けて押圧し、前記センサ素子の前記複数の取出端子と、前記センサ接続部の前記複数の接続端子とを圧接させる弾性部材を、更に備えた請求項6に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項8】
前記センサ接続部と前記弾性部材との間に配置され、前記弾性部材の弾性力を、前記センサ接続部に伝達させる第2碍子体を、更に備えた請求項7に記載の粒子状物質検出装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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