説明

粒子線を受ける局所圧電力測定プローブのための電子制御及び増幅装置

本発明は、圧電共振子(11)を有する局所プローブ、及びその信号の前置増幅と処理のための電子制御装置であって、このプローブが、前記プローブ(11)の方へ向けられた粒子線(12)を有する環境におけるサンプル(10)の物理的性質の局所測定のために設計されると共に、励起手段(15)によって生成された励起電圧が、第1のガルバニック絶縁変圧器(TR_1)を通して前記圧電共振子(11)に印加され、前記圧電共振子(11)の機械的な振動の測定に関する電流が、第2のガルバニック絶縁変圧器(TR_2)を通して、出力側の前置増幅手段(18)に印加される電子制御装置に関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒子線を受ける局所圧電力測定プローブのための電子制御及び増幅装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
この発明の分野は、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopes:SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(transmission electron microscopes:TEM)における電子ビームの照射の下での、または集束イオンビーム(focussed ion beam:FIB)プローブにおける、または高いエネルギーをチャージされた粒子線が存在するあらゆる環境における、複合的な使用(combined use)に適した、局所圧電力プローブ(local piezoelectric force probe)のための制御及び増幅電子機器である。マイクロ加工またはマイクロエレクトロニクスにおいて適用される、産業、及び基礎研究のためのSEM、TEM、及びFIBのような手段の遍在は、並列に遠視野顕微鏡法(far field microscopy)によるシステムを表示する一方、サブマイクロメートルスケールで使用される微小電気機械システム(micro-electromechanical systems:MEMS)及びナノ電子機械システム(nano-electromechanical systems:NEMS)において発生する力(force)、または機械的特性及び電子的特性のあるがままの状態での測定のための装置の利益を例証する。
【0003】
参考文献[1]において記述の終りに説明されるように、20年以上の間、局所原子間力測定(Atomic Force Measurement:AFM)タイプのプローブは、マイクロチップの先端部を通して、数ナノメートルの部分上でマイクロニュートンからピコニュートンまで変化する範囲にわたる力(force)の特性を示すための、独特の可能性を有していた。標準のAFM力測定システムは、典型的に、マイクロレバー(microlever)の端部に固定されたマイクロチップの先端部を通してサンプルの表面を精査するマイクロレバーの偏向を検出するために、レーザ光学的探知(laser optical detection)を使用する。当業者に知られているこの検出技術は、走査型電子顕微鏡SEMまたはFIBプローブの真空槽のような強制的な動作環境に組み入れることが難しいという欠点を有する。従って、局所プローブ(local probe)は、空間におけるいくらかの自由度に関して、抑えつけられる。参考文献[2]は、SEMもしくはTEM電子顕微鏡、または、FIBプローブに、局所力測定プローブを統合するシステムを開示する。参考文献[3]は、そのような遠視野顕微鏡(far field microscope)への局所プローブの統合を開示する。
【0004】
ビルトインセンサ(built-in sensor:内蔵式の感知装置)を有する局所プローブは、統合及び移動に関する問題を解決することができる。参考文献[1]において説明されたように、局所圧電プローブ(local piezoelectric probe)は、従って、レーザ偏向検出装置を圧倒する効力のある高感度な検出を可能にする。局所圧電共振プローブ(local piezoelectric resonant probe)は、サンプルの表面を精査するマイクロチップをサポートするモノリシック構造の水晶または音叉の形式であり得る。この圧電共振子は、振動状態に保持される。マイクロチップとサンプルの表面との間の相互作用は、この圧電共振子の共振特性(resonant properties)(振動振幅、共振周波数のドリフト(drift:変動)、励起エネルギーの変化)における変化を引き起こす。事前の目盛較正のおかげで、この共振特性における変化、例えば周波数ドリフトの測定は、スキャンされたサンプルに包含される力の認識を可能にする。しかし、これは、プローブによって生成された電気的な変位電流(1ナノアンペア未満)の正確な測定を必要とする。電気的にチャージされた粒子(SEMもしくはTEM電子顕微鏡におけるエレクトロン、集束イオンビーム(FIB)プローブにおけるイオン)のビームを受ける環境において、ビームによってサンプル中に生成される放出電流は、局所圧電プローブを伴うあらゆる複合的な使用を抑制する。参考文献[4]において開示されたように、例えば既知の技術による前置増幅器(preamplifier:プリアンプ)は、そのプローブが電気的にチャージされた粒子のビームによって照らされるとき、プローブ変位電流の正確な測定に関するこの問題を克服することができない。更に、電気的にチャージされた粒子のビームの照射の下で、静電放電問題は、高エネルギーの下でプローブ変位電流を測定するために使用される前置増幅器を損傷し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0216518号明細書
【特許文献2】米国特許第6,006,594号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Franz D. Giessibl, “Advances in atomic force microscopy”, Review of Modern Physics, volume 75, July 2003, pages 949-983
【非特許文献2】“Transparently combining SEM, TEM and FIBS with AFM/SPM and NSOM”, Nanonics, Issue 2.3 (2002), http://nanonics.co.il/
【非特許文献3】Yongho Seo, Wonho Ihe, Cheol Seong Hwang, “Electrostatic force microscopy using a quartz tuning fork”, Applied Physics Letters, volume 80, number 23, June 10 2002, pages 4324 to 4326
【非特許文献4】Dave LeVasseur, “Technical Note <Midcom Transformer Theory>”, Technical Note 69, June 1, 1998
【非特許文献5】“pulse transformers”, Technical Note by Rhombus Industries Inc.
【非特許文献6】“Application Notes - Appendix 6”, p.24, BH Electronics, www.bhelectronics.com
【非特許文献7】“A Guide to Scanning Microscope Observation”, JEOL
【非特許文献8】J. C. Gonzalez, M. I. N. da Silva, K. L. Bunker, P.E. Russell, “Scanning Probe Microscopy and Scanning Electron Microscopy for Electrical Characterization of Semiconductors”, Current Issues on Multidisciplinary Microscopy Research and Education, p.274, FORMATEX 2004
【非特許文献9】S. Lombardo等, “Dielectric breakdown mechanisms in gate oxides”, J. Appl. Phys. 98, 121301, 2005
【非特許文献10】B. Kaczer等, “Gate oxide breakdown in FET devices and circuits: From nanoscale physics to system-level reliability”, Microelectronics Reliability 47, 559-566, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特性化するためのマイクロエレクトロニクス及びマイクロ加工(micro-manufacturing)、そして微小電気機械システム及びナノ電子機械システムにおいて従来使用されるような、SEMまたはTEMタイプの電子顕微鏡及び集束イオンビーム(FIB)プローブ内で特に頻繁に発見される環境においてチャージされたもしくはチャージされない粒子のビームを受ける局所圧電力測定プローブの統合及び操作のために、局所圧電力測定プローブの制御及び増幅のための電子機器を提供することによってこの技術的問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧電共振子を有する局所プローブ、及びその信号の前置増幅と処理のための電子制御装置であって、このプローブが、前記プローブの方へ向けられた粒子線を有する環境におけるサンプルの物理的性質の局所測定(local measurement)のために設計されると共に、前記電子制御装置が、−励起手段によって生成された励起電圧が、第1のガルバニック絶縁変圧器を通して前記圧電共振子に印加され、前記圧電共振子の機械的な振動の測定に関する電流が、第2のガルバニック絶縁変圧器を通して、出力側の前置増幅手段に印加されること、−前記第1の変圧器及び前記第2の変圧器が、前記粒子線によって生成された過電圧に耐えるための十分に高い一次側/二次側絶縁破壊電圧を有すること、−前記粒子線により引き起こされた電気パルスによって導電性素子において生成された電流が、出力側に配置された前記前置増幅手段の第1のステージに損傷を与えることが不可能であるように、前記変圧器の巻き線のインピーダンスが十分に低いこと、によって特徴付けられることを特徴とする電子制御装置に関係する。
【0009】
好ましくは、これらの変圧器における全ての巻き線は、接地(ground)に接続されるか、または仮想接地(virtual ground)に接続される、すなわち演算増幅器の一方の入力に接続され該演算増幅器の他方の入力が接地に接続されている、1つの極を有している。
【0010】
粒子線は、電気的にチャージされた粒子のビーム、例えばエレクトロンもしくはイオンビーム、または原子または中性子のような電気的に中立の粒子から成るビームであり得る。
【0011】
粒子線が電気パルスを誘導するとき、この寄生信号源は、(10メガオームもしくは100メガオーム、または更に多くのオーダー(order:桁)の)非常に高いインピーダンスを有する電流源のように動作する。本発明による変圧器の一次側/二次側絶縁破壊電圧は、この電流及び変圧器巻き線のインピーダンスの積によって誘導される電圧より大きくなるように選択される。
【0012】
しかしながら、本発明によれば、電気パルスが導電性素子によって受け取られるとすぐに、それが非常に低いDCインピーダンス(数オーム、及び好ましくはほんの数オーム)を有する巻き線と直流電気的に(galvanically)接続されているので、この誘導電圧は低下することになる。この導電性素子の端子においてその結果生じる電圧は、インピーダンスの間の比率(例えば、100×10/0.5)によって分割され、すなわち実質的にはゼロ電圧になる。明らかに、本発明によれば、この電圧は、前置増幅器の入力の絶縁破壊電圧より小さくなければならない。しかしながら、この明白な状態は、上述されたインピーダンスの不整合によって常に達成されるので、請求項において常に提示されるとは限らない。変圧器の非常に低いインピーダンスの巻き線の端子において誘導されるこの電圧は、典型的に1[μV]のオーダーである。この不整合のために、変圧器巻き線に接続された局所圧電共振子プローブ(local piezoelectric resonator probe)の電極上のチャージされた粒子線によって誘導されるパルスは、前置増幅器の入力における絶縁破壊電圧よりかなり小さい(1[μV]のオーダーの)誘導電圧よりは小さい。
【0013】
入力インピーダンスが共振しない場合は100[MΩ]のオーダーであり、共振する場合は10[kΩ]のオーダーであるプローブに含まれる圧電共振子の端子に、粒子線が電気パルスを誘導するときに非常に小さい寄生電流が印加される。しかしながら、共振が非常に鋭いので、粒子線による大部分のエネルギーが、圧電共振子を、その固有周波数から離れて、すなわち100[MΩ]でカバーすると見なされ得る。それに接続された変圧器巻き線の、数オーム及び好ましくは1オーム未満のオーダーの低いインピーダンスは、それが非常に低い電圧を単に印加することができることを意味する。
【0014】
本発明によれば、この非常に小さい(典型的に、1[μA]、及び好ましくはそれより小さいオーダーの)電流によって誘導された電圧は、それが前置増幅手段の入力ステージにおける損傷を全く引き起こさないように、部品(component)の選択によって、大きさに従って分類されなければならない。通常、これらの前置増幅手段は、FETトランジスタを備えていると共に、それらの絶縁破壊特性は知られている。
【0015】
ガルバニック絶縁変圧器(Galvanic isolation transformer)は、圧電共振子の周波数帯域に適応するように選択される。圧電共振子に関して考察されるべきパラメータは、共振周波数f0、及びその品質係数Q=f0/Dfであり、ここで、Dfは、その振幅で表された共振曲線が提供する“−3dB”における帯域幅である。各巻き線に関して、一次インダクタンス、DC抵抗、(一次巻き線と二次巻き線との間の)巻き線間のキャパシタンス、漏れインダクタンス、及びET定数(E.T. constant)は、圧電共振子の共振周波数f0の近くに変圧器の周波数応答を適合させるための制御パラメータである。変圧器の一次巻き線のインダクタンス“Lprim”は、変圧器の低い方の遮断周波数“f”、低い方の限界まで関与する巻き線のDC抵抗、を決定するメインパラメータである。“f”は、次式によって定義される。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、“Lprim”は一次側のインダクタンスであり、“Xlmin”は、周波数“f”において信号振幅の(dBにおける)減衰Gを達成するための最小のリアクタンスである。下記式のように、このリアクタンスは、入力信号源の抵抗によって変わる。
【0018】
【数2】

【0019】
ここで、“Rg”は、電圧源の抵抗であり、A=10(G/20)である。変圧器の高い方の遮断周波数“f”は、下記式のように、漏れインダクタンス“Lleak”、及び巻き線間のキャパシタンス“C”によって決定される。
【0020】
【数3】

【0021】
変圧器の磁気コア(magnetic core)の飽和は、二次側から出力される信号の歪みを引き起こすかもしれない。“KET”で表されるET定数は、一次側に入力される信号のボルトで表された所定の振幅に関して、全く歪みの影響なく変圧器を通過し得る信号周波数の限度を、下記式のように与える。
【0022】
【数4】

【0023】
ここで、Uは、ボルトで表された入力信号の振幅であり、Tは、マイクロセカンドで表された信号の周期である。理論上のパラメータ設定、または、変圧器の動的パラメータの実測は、当業者には良く知られている。変圧器の周波数通過帯域を設定する計算方法に関して、それは、例えば参考文献[6]を使用することが可能であろう。参考文献[7]は、例えばSPICEデジタルシミュレーションエンジン上で、変圧器の低周波数及び高周波数におけるデジタル的なシミュレーションを行うための、当業者に知られている一般に認められた等価モデルを開示する。変圧器の動的パラメータの実験的特性評価の方法は、参考文献[8]において与えられる。
【0024】
有利に、第1の変圧器は、巻き線の巻き数比(巻き数の比率)が“1:1+1”である、対称型変圧器(symmetric point transformer)である。
【0025】
有利に、第2の変圧器は、第1の変圧器と同一の電気的特性を有し、“1:1”の巻き線の巻き数比を有する。この点において、変圧器の二次側に印加される出力電圧の絶対値は、変圧器の一次側に印加される入力電圧の絶対値に等しくなることになる。2つの変圧器のこれらの特性は、圧電共振子の共振周波数f0の近くで、そして圧電共振子の振幅で表された共振曲線が提供する“−3dB”における帯域幅Df以上の周波数範囲内での通過帯域タイプの単位利得応答(unit gain response)を可能にする。
【0026】
ガルバニック絶縁変圧器は、プローブに向けられた粒子線によって引き起こされた電気ショックに耐えることができる。プローブ及びサンプルに向けられた粒子線によって生成される放出電流は、これらの2つの変圧器が提供する最小の絶縁破壊電圧、及び最大のパルス電流を定義するために使用される。
【0027】
有利に、ガルバニック絶縁変圧器の巻き線は、チャージされた粒子線によってプローブ内で生成された放出電流において、低い入力インピーダンスを有している。従って、一次巻き線の端子において生成された電圧は、巻き線のインピーダンスと圧電プローブ(piezoelectric probe)上のビームの存在による放出電流との積に等しい。1オーム、及び好ましくはそれより小さいオーダーのDC抵抗によって、粒子線によって誘導された電圧は、せいぜい1マイクロボルトに等しいか、1マイクロボルトを超えない。更に、チャージされた粒子線の存在によってもたらされる、変圧器の一次側の電圧のほとんどDC成分である低周波数成分は、変圧器のガルバニック絶縁(galvanic isolation)によって、二次巻き線の端子において除去される。従って、出力の演算増幅器へのハイインピーダンス入力に関する絶縁破壊(breakdown)の全ての危険性は回避される。
【0028】
ガルバニック絶縁変圧器において起こり得る電気的な絶縁破壊に関して、この絶縁破壊は、電気的絶縁によって分離された2つの巻き線(各変圧器の一次側及び二次側)の間に、しきい値電位における差異がある場合にのみ発生する。この電位差は、前記変圧器に関する製造業者の技術データシートにおいて与えられた絶縁破壊電圧より小さくなければならない。有利に、この問題は、この発明において、2つのガルバニック絶縁変圧器の一次巻き線及び二次巻き線を、同一の電気的な接地電位に接続することによって、回避される。
【0029】
有利に、プローブは、力を測定することが可能である導電性のマイクロチップを備えていると共に、このマイクロチップの端部には、測定された力の選択性を増大させるように管理された無機被膜もしくは有機被膜が提供されている。
【0030】
有利に、そのサンプルは、プローブと比較して極性化される(polarized)と共に、サンプルは、例えばコンダクタンス及びトンネル電流などの、チップとサンプルとの間の物理的性質を測定するために、電流/電圧変換器に電気的に接続されている。
【0031】
有利に、本発明による装置は、当業者に知られているEFM(Electrostatic Force Microscopy:静電気力顕微鏡法)測定によって、もしくはKPFM(Kelvin probe force microscopy:ケルビンプローブフォース顕微鏡法)測定によって、サンプルとプローブとの間の静電気力を検出する手段を備える。
【0032】
有利に、そのプローブは、当業者に知られているMFM(すなわち磁気力顕微鏡法(Magnetic Force Microscopy))によってサンプル上の磁力(magnetic force:磁気力)の局所測定が可能である、その先端部に磁化された残留磁性材料で作られたミクロスフェア(microsphere)を有するマイクロチップを備えている。
【0033】
有利に、プローブの先端部は、一定の力勾配(force gradient)における、もしくは、一定のチップ−表面距離における、サンプルの局所的なサーモグラフィーを作るための、熱電対またはポリマワイヤ(polymer wire)を備えている。
【0034】
有利な実施例の第1の実例において、本発明による装置は、−非反転(+)入力が接地に接続され、反転(−)入力が第1の抵抗器を通して発振器に接続されると共に、第2の抵抗器の一端に接続され、出力が前記第2の抵抗器の他端に接続された第1の演算増幅器を有する超低電圧励起ステージと、−インピーダンス整合ステージの第3の抵抗器を通して前記第1の演算増幅器からの出力に接続された第1の対称型変圧器を有し、そのコンデンサが接地に接続され、この第1の変圧器の二次側の第1の端部が可変コンデンサを通して接地に接続され、この第1の変圧器の二次側の第2の端部が圧電共振子の第1の電極と接続され、前記圧電共振子の第2の電極がマイクロチップ及び接地に接続された第1のガルバニック絶縁器と、−一次側の一端が前記第1の変圧器の二次側の中間点に接続され、前記一次側の他端が接地に接続され、二次側の一端が第4の抵抗器を通して接地に接続された第2の変圧器を有する第2のガルバニック絶縁器と、−非反転(+)入力が接地に接続され、反転(−)入力がコンデンサを通して前記第2の変圧器の二次側の第2の端部に接続されると共に、第5の抵抗器の一端に接続された第2の演算増幅器を有し、前記第5の抵抗器の他端がこの第2の演算増幅器の出力に接続された第1の前置増幅ステージと、−第6の抵抗器を通して前記第2の演算増幅器からの出力に接続された第1の差動計装用増幅器を有する第2の増幅ステージと、を備える。
【0035】
第2の実例実施例において、それは、更に、−第3の演算増幅器と、前記第3の演算増幅器の反転(−)入力と前記第3の演算増幅器の出力との間に接続された電流−電圧変換抵抗器とを有し、この第3の演算増幅器の反転(−)入力が更にサンプルに接続され、接地と比較して前記サンプルを極性化させるようにこの第3の演算増幅器の非反転(+)入力が電圧源に接続された第1の前置増幅ステージと、−第2の差動計装用増幅器を有する第2の増幅ステージと、を備える。
【0036】
本発明による装置は、SEM電子顕微鏡またはTEM電子顕微鏡と共に、あるいはFIBプローブと共に、統合すること、そして使用することが、非常に容易である。本発明による装置は、チャージされた粒子線によるプローブの照射に関係した局所的な機械的測定の不自然な結果を除去し得る。
【0037】
本発明の対象アプリケーション(target application)は、ウェハー上のまたはパッケージに搭載された微小電気機械システム(micro-electromechanical systems:MEMS)及びナノ電子機械システム(nano-electromechanical systems:NEMS)の正確な、そしてあるがままの状態での特徴付けに関係があるか、しかし、更に、結合した力−電流特徴付けを有するマイクロエレクトロニクスに関係がある。本発明による装置は、ますます小さく敏感になる加速度計(accelerometer)の特徴付けにおいて例えば有益である。同様に、FIBプローブを使用するミクロ構造(microstructure)のあるがままの状態での機械加工が、更に、集束イオンビームの位置を調整及び補正する能力がある、この発明に起因するリアルタイムの力のフィードバックの可能性によって想定され得る。
【0038】
圧電プローブ(piezoelectric probe)の端部におけるマイクロチップの磁気マイクロプローブ(magnetic micro-probe)または熱電対による置き換えは、更に、1ナノメートル未満の精度を有するマイクロプローブとサンプルの表面との間の距離を調整するための力のフィードバックによって、動作中の磁気メモリに関する測定またはマイクロプロセッサのサーマルマッピング(thermal mapping)をそれぞれ想定することを可能にする。そのような顕微鏡はプローブのかなり正確な位置決めを可能にするが、そのような精度がSEM電子顕微鏡の解像度によって達成できない点に注意が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による装置の第1の実施例を示す図である。
【図2】本発明による装置の第2の実施例を示す図である。
【図3】図1に示される本発明による装置の第1の実施例の実例を示す図である。
【図4】図2に示される本発明による装置の第2の実施例の実例を示す図である。
【図5A】使用する準備が整った本発明によるパッケージ化された装置の実例実施例の全体を示す図である。
【図5B】使用する準備が整った本発明によるパッケージ化された装置の実例実施例の詳細を示す図である。
【図6A】本発明による装置の実例応用を例証する画像を示す図である。
【図6B】本発明による装置の実例応用を例証する画像を示す図である。
【図6C】本発明による装置の実例応用を例証する画像を示す図である。
【図6D】本発明による装置の実例応用を例証する画像を示す図である。
【図6E】本発明による装置の実例応用を例証する画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、圧電プローブ11及びサンプル10の方へ向けられる電気的にチャージされた粒子のビーム12を有する環境14(SEM電子顕微鏡またはTEM電子顕微鏡、もしくは局所的なFIBイオンプローブ)における、二重の矢印13によって示されたマイクロチップ22(図3と図4における図の上に示される)とサンプル10との間の相互作用によるサンプル10に関する(サンプル10上の)機械的性質(力、ストレス(stress)、圧力(pressure))の、マイクロチップ(チップ)を備える圧電プローブ11による局所測定のための本発明による装置の第1の実施例を示す。
【0041】
この第1の実施例は、下記のモジュール、すなわち、−超低電圧励起ステージ15と、−第1のガルバニック絶縁器16と、−第2のガルバニック絶縁器17と、−局所的な機械的特徴付けのための第1の前置増幅ステージ18(トランスインピーダンス(transimpedance)増幅器と呼ばれる電流−電圧増幅器)と、−第2の機械的特徴付け増幅ステージ19とを備え、従って、モジュール11、15、16、17、18、及び19は、局所的な機械的特徴付けを可能にする。
【0042】
この第1の実施例は、その機械的な振動運動を同時に測定するための局所プローブ高周波変位電流と、連続的な流れを有する電気的にチャージされた粒子線によって生成された放出電流との間の完全な絶縁(total isolation)を提供することができる。その場合に、数ピコニュートンの規模で局所的な力を同時に評価する一方で、SEM、TEM、またはFIBイメージ(imagery:画像)による特徴付けを行うことが可能になる。AFMレーザ検出の場合のような外部検出の欠如は、局所圧電プローブが三次元における運動の自由度を享受することができることを意味する。遠視野像(far field imagery)(SEM、TEM、またはFIB)は、サンプルの機械的性質の測定のための局所プローブの賢明な配置に有用である。従って、その場合に、同時にサンプルに関する局所的な力、圧力(pressure)、ストレス(stress)を測定する一方で、FIBプローブを使用して三次元のミクロ構造を機械加工することが可能になる。力のフィードバックは、FIBプローブのイオンビームの最適な再配置(repositioning)を支援することができる。
【0043】
図2において示された第2の実施例は、電気的にチャージされた粒子線が存在する環境14において、サンプル10に関する(サンプル10上の)電子特性(electronic property)(コンダクタンス、トンネル電流)の局所測定を、同じサンプル10に関する(サンプル10上の)機械的性質(力、ストレス、圧力)の局所測定に加えて、圧電プローブ11を用いて行うために使用されることができる。
【0044】
この第2の実施例は、図1において既に示されたモジュール10〜12、及び15〜19に加えて、下記の、−第1の局所電気的特徴付け前置増幅ステージ(local electrical characterisation preamplification stage)20(トランスインピーダンス増幅器と呼ばれる電流−電圧増幅器)と、−第2の局所電気的特徴付け前置増幅ステージ21とを備え、従って、モジュール10、11、15、16、20、及び21は、局所的な電気的特徴付けを可能にする。
【0045】
この第2の実施例は、マイクロチップ22とサンプル10との間における局所的な力と電流の同時の測定を行うことができる。サンプルは、従って、外部の電圧によって極性化されると共に、電流−電圧前置増幅(トランスインピーダンス)ステージ20に接続され、サンプルに接続されたこの前置増幅ステージ20に支障をきたさないように、電気的にチャージされた粒子線はスイッチが切られる。圧電プローブ11の力調整は、電気的測定(electrical measurement)の間、サンプル10から一定の距離を維持することができる。その場合に、微小電気機械システムMEMS及びナノ電子機械システムNEMSで広く使用されるピエゾ抵抗の(piezoresistive:圧電抵抗の)サンプルに関する局所的なコンダクタンス−ストレス(conductance-stress)σ(ε)の特徴付けが、SEM電子顕微鏡の環境において可能になる。動作中のチップに関する電気的マップが、この第2の実施例によって、更に想定され得る。
【0046】
実例実施例
「a)サンプルの機械的性質の局所測定のための電子機器」
図3において示されたこの第1の実例実施例は、図1において示された第1の実施例の応用に対応する。
【0047】
この装置は、−非反転(+)入力が接地に接続され、反転(−)入力が第1の抵抗器R1を通してVexc発振器に接続されると共に、第2の抵抗器R2の一端に接続され、出力が第2の抵抗器R2の他端に接続された第1の演算増幅器U1を有する超低電圧励起ステージと、−インピーダンス整合ステージR3、C3の第3の抵抗器R3を通して第1の演算増幅器U1からの出力に接続された第1の対称型変圧器TR_1を有し、そのコンデンサC3が接地に接続され、この変圧器の二次側の第1の端部が可変コンデンサC_compを通して接地に接続され、この変圧器の二次側の第2の端部が圧電共振子23の第1の電極と接続され、圧電共振子23の第2の電極がマイクロチップ及び接地に接続された第1のガルバニック絶縁器と、−一次側の一端が第1の変圧器TR_1の二次側の中間点に接続され、一次側の他端が接地に接続され、二次側の第1の端部が第4の抵抗器R4を通して接地に接続された第2の変圧器TR_2を有する第2のガルバニック絶縁器と、−非反転(+)入力が接地に接続され、反転(−)入力がコンデンサC4を通して第2の変圧器TR_2の二次側の第2の端部に接続されると共に、第5の抵抗器R_trans_mechaの一端に接続された第2の演算トランスインピーダンス増幅器U2を有し、第5の抵抗器R_trans_mechaの他端がこの第2の演算増幅器U2の出力に接続された第1の前置増幅ステージと、−第6の抵抗器R6を通して第2の演算増幅器U2からの出力に接続されると共に利得抵抗器R_INAを備えた第1の差動計装用増幅器(first differential instrumentation amplifier)U3を有する第2の増幅ステージと、を備える。
【0048】
2つの変圧器TR_1及びTR_2の一次巻き線及び二次巻き線は、同じ接地電位(他方の入力が接地である演算増幅器入力の仮想部分(仮想接地)を含む)に接続される。
【0049】
第1の演算増幅器U1と、抵抗器R2及びR1とを備える励起ステージは、数十キロヘルツから数十メガヘルツまで変化する共振周波数において、共振圧電プローブ23を非常に小さな振動振幅によって励起する分圧器(voltage divider)である。1オングストローム(Angstrom)のオーダーの振動振幅は、精査されたサンプルに著しく支障を来たすことなく、非常に良い力の検出感度を保証する。インピーダンス整合ステージR3−C3は、第1の絶縁変圧器TR_1に関する最適化されたインピーダンス整合を可能にする。この変圧器TR_1は、第一に圧電共振子23に向けられた電気的励起(electrical excitation)の伝送を可能にするが、しかし更に、可変コンデンサC_compの調整のおかげで、圧電共振子の電極間容量、更にプローブの接続電線の長さに関係する、当業者に知られている寄生容量(parasite capacitance)の影響を除去する。サンプル10と相互作用する圧電共振子23の機械的な応答は、第2の絶縁変圧器TR_2の同じ電線によって伝達された電気変位電流(electric displacement current)に変化を引き起こす。従って、この変圧器TR_2の二次側は、この変位電流を、電流−電圧変換抵抗器R_trans_mechaを有する第2の演算増幅器U2に向けて伝達する。回路(network)R4−C4は、第2の変圧器TR_2との最適化されたインピーダンス整合を可能にする。第1の差動計装用増幅器U3は、サンプル10と相互作用している圧電共振子23の共振特性に対する変化を抽出すると共に、従って局所的な機械的測定値を獲得するために、出力側に接する測定システムによって使用されることができる電圧を出力する。2つの絶縁変圧器TR_1及びTR_2は、SEM、TEM、またはFIBの試験槽(chamber)におけるプローブ上の電気的にチャージされた粒子線の存在による有益な信号の汚染(contamination)を回避する、電気的障壁(electrical barrier)のような働きをする。圧電共振子23の電極とサンプル10を通るマイクロチップ22の接地は、電気的にチャージされた粒子線に起因する電荷の排出を可能にし、それ故に、マイクロチップ22とサンプル10との間の気掛かりな静電気力の出現を回避する。
【0050】
変圧器TR_2は、それがチャージされた粒子線にさらされる圧電プローブ11からの信号において低い入力インピーダンスを有しているという利点を有する。従って、変圧器TR_2の一次巻き線の端子において生成された電圧は、巻き線のインピーダンスと圧電プローブ上のビームの存在に起因する放出電流との積に等しい。従って、その結果は、巻き線のDC抵抗が1オームのオーダーである場合に、1マイクロボルトの最高電圧になる。走査電子顕微鏡法(SEM)における動作中に、サンプルから漏れない二次側電子のごく少量は、電気的な接地を流れる。これらの二次側電子は、高エネルギーの電子線によって引き起こされる。この電流は、電流計をサンプルと接地との間に配置することによって測定され得る。このいわゆる“吸収された(absorbed)”電流、もしくは“プローブ”電流または放出電流は、1ピコアンペアのオーダーから最大1マイクロアンペアまで変化する。この放出電流に関する更なる詳細は、例えば参考文献[9]または[10]において発見され得る。
【0051】
更に、チャージされた粒子線12の存在によって引き起こされる変圧器TR_2の一次側のほとんどDC成分である低周波数成分は、変圧器のガルバニック絶縁(galvanic isolation)によって、変圧器TR_2の二次巻き線の端子において除去される。これは、演算増幅器U2のハイインピーダンス入力に関する絶縁破壊(breakdown)の全ての危険性を回避する。変圧器の低インピーダンスのガルバニック絶縁の存在がなければ、プローブ上のチャージされた粒子線の点火(ignition)によって引き起こされた放出電流の電気的過渡現象は、(概して、バーブラウン社によって作られたOPA657タイプの増幅器に関して1テラオームのオーダーである)出力の演算増幅器のハイインピーダンス入力に関する絶縁破壊電荷(breakdown charge)の原因となるであろう。出力演算増幅器U2の入力ステージは、通常、数ボルトの印加電圧を超える絶縁破壊に対して敏感な、数十ナノメートルの酸化物ゲートを提供されたFETトランジスタを備えている。絶縁破壊電荷は、この酸化物ゲートの厚さに比例する。FETトランジスタにおける酸化物ゲートの絶縁破壊現象に関する更なる詳細は、例えば、参考文献[11]または[12]において与えられる。
【0052】
同様に、変圧器TR_1は、プローブ11上のチャージされた粒子線12の存在によって引き起こされた、その二次側に生成される電圧のほとんどDC成分である低周波数成分を、除去することが可能である。従って、この信号は、増幅器U1からの出力が抵抗器R3を通って妨害されないように、TR_1の一次側には現れない。
【0053】
変圧器TR_1またはTR_2における電気的な絶縁破壊の可能性に関して、電気的な絶縁によって分離された2つの巻き線(各変圧器の一次巻き線と二次巻き線)の間に、しきい値電位の差が存在する場合にのみ、この絶縁破壊は発生することになる。この電位の差は、前記変圧器に関する製造業者の技術的なデータシートにおいて与えられた破壊電圧より小さくなる。この発明において、図3及び図4における電気回路図は、変圧器TR_1の一次巻き線及び二次巻き線が直接同一の電気的な接地に接続されていることを示す。このように、プローブ11上のチャージされた粒子線12を利用した、ほとんどDC状態である低周波数の状態の下では、TR_1の一次側及び二次側は、同一の電位に接続され、従って、電気的な絶縁破壊は、起こらないであろう。変圧器TR_2の一次巻き線は、同様に、直接的に接地に接続されていると共に、その二次巻き線は、抵抗器R4を通して、同一の接地に接続されている。増幅器U2の反転(−)入力によって提供される仮想接地(virtual ground)に対して、コンデンサC4が開回路として扱われ得るDCまたは低周波数の状態、あるいは、コンデンサC4が閉回路として扱われ得る高周波数の状態を考慮すると、二次巻き線が同様に変圧器TR_2の一次巻き線と同一の電位にあるということが理解され得る。従って、TR_2に関する絶縁破壊の危険性が、これらの状態の下で同様に回避される。
【0054】
しかしながら、用心のための理由で、プローブ11上の電子ビーム12の点火(ignition)によって引き起こされた電気的過渡現象の間のあらゆる絶縁破壊を防止するために、ある値が、変圧器絶縁破壊しきい値に関して保持される。この要求は、本発明による装置の特定の実施において使用される変圧器TR_1及びTR_2に関して、2キロボルトのしきい値を使用することによって、満足される。
【0055】
「b)サンプルの機械的及び電気的性質の局所測定のための電子機器」
図4において示されたこの第2の実例実施例は、図2において示された第2の実施例の応用に対応する。
【0056】
図3において既に示された要素とは別に、この実例は、−第3のトランスインピーダンス演算増幅器U4と、第3のトランスインピーダンス演算増幅器U4の反転(−)入力と第3のトランスインピーダンス演算増幅器U4の出力との間に接続された電流−電圧変換抵抗器R_trans_elecとを有し、この第3の演算増幅器の入力がサンプル10に接続された第1の前置増幅ステージと、−利得抵抗器R_INAを備えた第2の差動計装用増幅器(second differential instrumentation amplifier)U5を有する第2の増幅ステージと、を備える。
【0057】
この第2の実例実施例は、サンプルが、接地に接続される代わりに、サンプルを増幅器U4にそして電流−電圧変換抵抗器R_trans_elecに接続することにより、電圧V_charactによって極性化される(polarized)ことを除いて、第1の実例実施例と同じ構造を使用する。差動計装用増幅器U5は、所定の電圧V_charactに対するマイクロチップ−サンプル表面電流を抽出し、その結果、局所電子伝導測定値(local electronic conduction measurements)を獲得するために、出力側の測定システムによって使用され得る電圧を出力する。
【0058】
マイクロシステムに関する、もしくはチップに関する容量性測定値が、参考文献[5]において説明されたEFM(Electrostatic Force Microscopy:静電気力顕微鏡法)技術を使用することによって、同様に、図4において示された本発明による装置を備えるSEM電子顕微鏡において想定され得る。
【0059】
「本発明による装置の特定の実施」
図5Aは、使用する準備が整うと共にパッケージ化された図3において示される本発明による装置の第1の実例実施例の全体を示す。図5Bは、そのようなパッケージ化の詳細を示す。励起ステージ15と前置増幅ステージ18のガルバニック絶縁器16及び17に使用される第1及び第2の変圧器TR_1及びTR_2は、圧電共振子の周波数帯域に適応するように選択される。この実施例において、第1の変圧器TR_1は、巻き線の巻き数比が“1:1+1”である対称型変圧器(symmetric point transformer)であると共に、各巻き線に関して、3[mH]のインダクタンス、1.3[オーム]のDC抵抗、(一次側と二次側との間の)30[pF]の巻き線間のキャパシタンス、8[μH]の漏れインダクタンス、200[V・μs]のET定数が存在する。第2の変圧器TR_2における巻き線の巻き数比は、1:1であると共に、電気特性は、変圧器TR_1と同一である。2つの変圧器のこれらの特性は、3[kHz]と1[MHz]との間の周波数範囲における通過帯域タイプの単位利得応答(unit gain response)を可能にする。この場合に使用される圧電プローブ22は、32[kHz]の共振周波数、及び「10 000」の品質係数を有している。
【0060】
本発明による電子機器は、図6A〜図6Eで示されたように、SEM電子顕微鏡の下で、微小電気機械システム(micro-electromechanical systems:MEMS)、例えば渦巻線がインジウムガリウムヒ化物(InGaAs)/ヒ化ガリウム(GaAs)の制御成長(controlled growth)によって獲得される拡張渦巻線タイプ(extended spiral type)のナノ−スプリング(nano-spring)25を観察するために、そして、同時に、このMEMSシステムの機械的な力(mechanical force)を分析するために、首尾よく使用された。この渦巻線25の一方の端部は、圧電プローブのマイクロチップ26の先端に接続され得る。もう一方の端部は、数十ナノメートルの個別の段階においてナノ−スプリングを伸張または圧縮することができるナノトランスレータ(nanotranslator)に接続されたピコプローブマイクロチップ(PicoProbe microtip)27に接続され得る。更に、励起ステージ15と前置増幅ステージ18のガルバニック絶縁器16及び17に使用される第1及び第2の変圧器TR_1及びTR_2は、圧電プローブ11に向けられたチャージされた粒子線12によって引き起こされた電気ショックに耐えるように選択される。この場合、これらの変圧器TR_1及びTR_2に関する2キロボルトの絶縁破壊電圧(一次側−二次側)は、50[keV]の加速エネルギーを有する電子ビームの影響を効果的に分離し得る。図6A〜図6DにおけるSEM画像は、4[keV]の加速エネルギーを有する電子ビームによって獲得された。
【0061】
図6A及び図6Bは、従って、圧電プローブ(この場合水晶音叉(quartz Tuning Fork))のマイクロチップ26とピコプローブナノトランスレータ(picoprobe nanotranslator)のマイクロチップ27との間で、その2つの端部に接着された、このナノ−スプリング25のSEM画像を表す。
【0062】
図6C及び図6Dは、ナノ−スプリング25の初期点に対する拡張及び圧縮の間に獲得されたフィルムから抽出された2つのSEM画像を示す。
【0063】
図6Eは、この発明による電子機器のおかげで同時に獲得された圧電プローブの周波数ドリフト曲線を示す。ナノトランスレータのおかげで、ナノ−スプリング25が最高1.5[μm]に広げられ、次にその初期点まで圧縮される場合に、圧電プローブの共振周波数ドリフトにおける変化がこのように観察され得る。
【0064】
ナノトランスレータの個別の段階は、図6C及び図6Dで示された画像の極端な位置に対応する図6Eの曲線における最小値及び最大値によって、明確に視認できる。
【0065】
圧電共振子の周波数ドリフトを測定することによって、この結果は、関連する力の複合的な局所測定を伴う、微小電気機械システム(MEMS)のSEM画像によるリアルタイムの観察を実証する。図6Eにおける曲線の周波数ステップは、ナノトランスレータの1段階当たり3ナノニュートンの力に対応する。
【0066】
「参考文献」
[1]Franz D. Giessibl, “Advances in atomic force microscopy”, Review of Modern Physics, volume 75, July 2003, pages 949-983
[2]“Transparently combining SEM, TEM and FIBS with AFM/SPM and NSOM”, Nanonics, Issue 2.3 (2002), http://nanonics.co.il/
[3]米国特許出願公開第2004/0216518号明細書
[4]米国特許第6,006,594号明細書
[5]Yongho Seo, Wonho Ihe, Cheol Seong Hwang, “Electrostatic force microscopy using a quartz tuning fork”, Applied Physics Letters, volume 80, number 23, June 10 2002, pages 4324 to 4326
[6]Dave LeVasseur, “Technical Note <Midcom Transformer Theory>”, Technical Note 69, June 1, 1998
[7]“pulse transformers”, Technical Note by Rhombus Industries Inc.
[8]“Application Notes - Appendix 6”, p.24, BH Electronics, www.bhelectronics.com
[9]“A Guide to Scanning Microscope Observation”, JEOL
[10]J. C. Gonzalez, M. I. N. da Silva, K. L. Bunker, P.E. Russell, “Scanning Probe Microscopy and Scanning Electron Microscopy for Electrical Characterization of Semiconductors”, Current Issues on Multidisciplinary Microscopy Research and Education, p.274, FORMATEX 2004
[11]S. Lombardo等, “Dielectric breakdown mechanisms in gate oxides”, J. Appl. Phys. 98, 121301, 2005
[12]B. Kaczer等, “Gate oxide breakdown in FET devices and circuits: From nanoscale physics to system-level reliability”, Microelectronics Reliability 47, 559-566, 2007
【符号の説明】
【0067】
10 サンプル
11 圧電プローブ
12 粒子線
13 二重の矢印
14 環境
15 超低電圧励起ステージ
16 第1のガルバニック絶縁器
17 第2のガルバニック絶縁器
18 第1の前置増幅ステージ
19 第2の機械的特徴付け増幅ステージ
20 第1の局所電気的特徴付け前置増幅ステージ
21 第2の局所電気的特徴付け前置増幅ステージ
22 マイクロチップ
23 圧電共振子
25 ナノ−スプリング
26 マイクロチップ
27 ピコプローブマイクロチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電共振子(11)を有する局所プローブ、及びその信号の前置増幅と処理のための電子制御装置であって、
このプローブが、前記プローブ(11)の方へ向けられた粒子線(12)を有する環境におけるサンプル(10)の物理的性質の局所測定のために設計されると共に、
前記電子制御装置が、
−励起手段(15)によって生成された励起電圧が、第1のガルバニック絶縁変圧器(TR_1)を通して前記圧電共振子(11)に印加され、前記圧電共振子(11)の機械的な振動の測定に関する電流が、第2のガルバニック絶縁変圧器(TR_2)を通して、出力側の前置増幅手段(18)に印加されること、
−前記第1の変圧器及び前記第2の変圧器が、前記粒子線によって生成された過電圧に耐えるための十分に高い一次側/二次側絶縁破壊電圧を有すること、
−前記粒子線により引き起こされた電気パルスによって導電性素子において生成された電流が、出力側に配置された前記前置増幅手段の第1のステージ、及び入力側に配置された前記励起手段に損傷を与えることが不可能であるように、前記変圧器の巻き線のインピーダンスが十分に低いこと、
によって特徴付けられることを特徴とする装置。
【請求項2】
2つの前記変圧器(TR_1、TR_2)の一次巻き線及び二次巻き線が、同一の電気的な接地電位に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記粒子線が、電気的にチャージされた粒子線(12)であって、電子ビームである
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記粒子線が、電気的にチャージされた粒子線(12)であって、イオンビームである
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記粒子線(12)が、原子または中性子のような電気的に中立の粒子から成る
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ガルバニック絶縁変圧器(TR_1、TR_2)は、
前記第1の変圧器(TR_1)が、巻き線の巻き数比が“1:1+1”である対称型変圧器であり、前記第2の変圧器(TR_2)が、前記第1の変圧器(TR_1)と同一の電気的特性を有し、“1:1”の巻き線の巻き数比を有するものである
ことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
2つの前記変圧器(TR_1、TR_2)が、前記プローブ(11)に向けられた粒子線(12)によって引き起こされた電気ショックに耐えることができる
ことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
2つの前記変圧器(TR_1、TR_2)の前記一次巻き線及び前記二次巻き線が、出力演算増幅器(U2)に対する入力インピーダンスよりはるかに低いインピーダンスを有する
ことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記プローブが、力を測定することが可能である導電性のマイクロチップ(22)を備えていると共に、
このマイクロチップ(22)の端部には、無機被膜もしくは有機被膜が提供されている

ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記サンプルが、接地に接続されたマイクロチップ(22)と比較して極性化されると共に、
前記サンプルが、前記チップと前記サンプルとの間の物理的性質を測定するために、電流/電圧変換器に電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項11】
EFM測定によって、もしくはKPFM測定によって、前記サンプルと前記プローブとの間の静電気力を検出する手段を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記プローブが、MFMによって前記サンプル上の磁力の局所測定が可能である、その先端部に磁化された残留磁性材料で作られたミクロスフェアを有するマイクロチップ(22)を備えている
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項13】
前記プローブの先端部が、熱電対またはポリマワイヤを備えている
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【公表番号】特表2013−518269(P2013−518269A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550432(P2012−550432)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051096
【国際公開番号】WO2011/092225
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)