説明

粒子線治療システム及び粒子線照射方法

【課題】イオンビームの照射時間を短縮し、かつ線量分布の一様度を維持することができる粒子線治療システムを提供することを課題とする。
【解決手段】イオンビームを加速する加速器2と、イオンビームを照射対象に照射する照射ノズル5と、照射ノズル5を制御する照射制御部9を備え、照射ノズル5は、イオンビームの照射位置を変更する走査電磁石13を有し、照射制御部9は、照射対象の目標照射位置と当該目標照射位置にイオンビームを照射したときの平均ビーム位置との誤差情報と、目標照射位置に照射するイオンビームの目標照射線量情報との関係を示すデータを記憶する記憶装置を有し、照射制御部9は、記憶装置に記憶された誤差情報と目標照射線量情報の関係を示すデータに基づいて、走査電磁石13の励磁電流を制御してイオンビームの照射位置を補正することで上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線治療システム及び粒子線照射方法に係り、特に、スキャニング照射法において、短時間の照射で線量分布の中で線量の高い領域の一様度を保持するのに好適な粒子線治療システム及び粒子線照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線治療システムは、がん治療の有効な手段の一つであり、今後、盛んに用いられる見込みがある。粒子線治療システムには、患者の患部(標的領域)の線量分布を一様あるいは予め決められた分布に制御することが求められている。
【0003】
粒子ビームの進行方向(深さ方向)の線量分布の形成には、粒子ビームが停止する直前にエネルギーの大部分を放出してブラッグカーブと呼ばれる線量分布を形成する特性と、そのブラッグカーブのピークであるブラッグピークの、深さ方向での位置は体内に入射する粒子ビームのエネルギーの大きさで制御できる特性を利用する。粒子線システムでは、粒子ビームのエネルギーを適切に選択し、粒子ビームを患部の近傍で停止させてエネルギーの大部分を患部(例えば、がん細胞)に与えるようにしている。ここで、ブラッグピークの、深さ方向での幅は数mmである。通常、患部は深さ方向にそれ以上の厚みをもっている。このような患部において患部全体の深さ方向にわたって粒子ビームを効果的に照射するには、深さ方向で患部と同程度の広がりを持つ、一様度の高い高線量領域(SOBP;Spread Out Bragg Peak)を形成するように、粒子ビームのエネルギーと粒子ビームの照射量、すなわち線量を制御する必要がある。
【0004】
粒子ビームの進行方向(深さ方向)の線量分布を形成する方法として、リッジフィルタやRMW(Range Modulation Wheel)を用いる方法と、加速器から出射する粒子ビームのエネルギーを変更する方法があり、これらの方法によって一様度の高い線量分布(SOBP)を形成することができる。
【0005】
粒子ビームの進行方向に垂直な平面内(照射野)において粒子ビームの線量分布を均一等に制御する方法として、粒子線治療システムに散乱体を設置して粒子ビームを広げる方法や、粒子線治療システムに走査電磁石を設置し、通過する粒子ビームを走査電磁石で偏向して照射野面を走査する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−296162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粒子ビームのビーム径を細くすることによって、患者の患部形状に合わせた高精細な照射を行うことができる。このような細径の粒子ビームを走査する方法としては、スキャニング照射(スポットスキャニング照射法やラスタースキャニング照射法)がある。スキャニング照射法では、粒子線照射装置(照射ノズル)に設けられた走査電磁石の励磁電流を変化させることによって、粒子ビームの照射位置(照射スポット)を移動させる。このような走査電磁石は、その励磁電流を変更し、その後、ある一定の励磁電流を励磁しようとする場合、走査電磁石の磁場が安定するまでに時間(静定時間)を要する。このため、スポットスキャニング照射法では、粒子ビームのスポット位置を変更するために、走査電磁石の励磁電流値を変更し、その後、一定の励磁電流値を励磁した場合、走査電磁石の磁場が安定するまでの一定の期間、粒子ビームの照射を停止させる必要がある。
【0008】
一方で、細径の粒子ビームを用いたスポットスキャニング照射の場合、照射スポットの数(スポット数)が増える傾向にあるため、スポット位置毎に粒子ビームの照射を停止する期間(ある照射スポットから次の照射スポットに移動させた後に走査電磁石の磁場が安定するまでに必要となる時間の合計値)が長くなり、一人の患者に対する治療時間が長くなることが予想される。
【0009】
細径の粒子ビームを用いたスポットスキャニング照射法において、治療時間を短縮する方法としては、ある照射スポットから次の照射スポットに移動させた後、走査電磁石の磁場が安定するまでの時間を設けないこと(ある照射スポットから次の照射スポットに移動させた後、すぐにこの照射スポットに対する粒子ビームの照射を開始すること)や、走査電磁石の磁場が安定するまでの時間を従来よりも短くすることが考えられる。しかしながら、走査電磁石の磁場が安定するまでの静定時間を設けないこと又は静定時間を短縮させた場合、粒子ビームの照射位置が目標となるスポット位置からずれることになり、粒子ビームの線量分布の一様度が劣化する可能性がある。
【0010】
特許文献1には、粒子ビームの照射位置が目標となるスポット位置からずれている場合の補正法が開示されている。前述したような走査電磁石の磁場が安定するまでの静定時間を設けない場合又は静定時間を短縮する方法を採用する場合、粒子ビームの照射中にビーム位置が移動することが考えられるので、これを考慮して、細径ビームの照射時間を短縮し、線量分布の一様度を保つ照射法を開発する必要がある。
【0011】
本発明の目的は、スポットスキャニング照射において、粒子ビームの照射時間を短縮し、かつ、粒子ビームの線量分布の一様度を維持する照射方法を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、イオンビームを所定のエネルギーまで加速する加速器と、記加速したイオンビームを照射対象に照射する照射装置と、加速器と照射装置を接続するビーム輸送系と、照射装置を制御する照射制御装置を備え、照射装置は、照射対象に対するイオンビームの照射位置を変更する走査電磁石を有し、照射制御装置は、照射対象の目標照射位置と当該目標照射位置にイオンビームを照射したときの平均ビーム位置との誤差情報と、目標照射位置に照射するイオンビームの目標照射線量情報との関係を示すデータを記憶する記憶装置を有し、照射制御装置は、記憶装置に記憶された誤差情報と目標照射線量情報の関係を示すデータに基づいて、走査電磁石の励磁電流を制御して前記イオンビームの照射位置を補正するようにしたものである。
(2)上記(1)において、好ましくは、記憶装置が誤差情報と目標照射線量情報の関係をテーブルとして記憶し、照射制御装置は、テーブルに基づいて走査電磁石の励磁電流を制御してイオンビームの照射位置を補正するようにしたものである。
(3)上記(1)(2)において、より好ましくは、照射制御装置は、次の照射位置に対する目標照射線量から誤差情報を取得し、取得した誤差情報と走査電磁石の走査速度に基づいて平均ビーム位置が目標照射位置になるようにイオンビームの走査時間を求め、当該走査時間でイオンビームを照射するようにしたものである。
(4)上記(1)(2)において、より好ましくは、照射制御装置は、次の照射位置に対する誤差情報が、照射対象内の最小の目標照射線量に対する誤差情報と一致するように、走査電磁石の励磁電流を調整してイオンビーム野照射位置を補正するようにしたものである。
(5)上記(1)(2)において、照射制御装置は、各スポットの照射時間を一定にして、イオンビームのビーム電流強度を変更して照射対象にイオンビームを照射するようにしたものである。
(6)また、イオンビームを所定のエネルギーまで加速する加速器と、加速したイオンビームを照射対象に照射する照射装置と、加速器と照射装置を接続するビーム輸送系と、照射装置を制御する照射制御装置を備え、照射装置は照射対象に対するイオンビームの照射位置を変更する走査電磁石を有し、照射制御装置は、照射対象の目標照射位置と当該目標照射位置にイオンビームを照射したときの平均ビーム位置との誤差情報と、目標照射位置に照射するイオンビームの目標照射線量情報との関係を示すデータを記憶する記憶装置を有する粒子線治療システムの粒子線照射方法であって、照射制御装置は、記憶装置に記憶された誤差情報と目標照射線量情報の関係を示すデータに基づいて、走査電磁石の励磁電流を制御して前記イオンビームの照射位置を補正するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スポットスキャニング照射法において、粒子ビームの照射時間を短縮し、かつ、粒子ビームの線量分布の一様度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施形態の粒子線治療システムに用いる粒子線照射装置の構成図である。
【図3】従来のスポットスキャニング照射法において、(A)走査電磁石の励磁電流の時間変化、(B)粒子ビームの照射位置の時間変化、(C)ビーム電流の時間変化を示した図である。
【図4】第1の実施形態の粒子線治療システムを用いた場合の(A)走査電磁石の励磁電流の時間変化、(B)平均ビーム位置の時間変化、(C)目標となる照射スポットと実際の照射位置のずれ量の時間変化を示す図である。原理説明図である。
【図5】第1の実施形態の粒子線治療システムを用いた場合の(A)走査電磁石の励磁電流値の時間変化、(B)平均ビーム位置の時間変化、(C)ビーム電流値の時間変化を示す図である。
【図6】第1の実施例の粒子線治療システムを用いた粒子ビームにおいて、照射開始から照射終了までの照射シーケンスの流れを示した図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による粒子線治療システムを用いた場合の(A)走査電磁石の励磁電流値の時間変化、(B)ビーム電流値の時間変化、(C)平均ビーム位置の時間変化を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による粒子線治療システムを用いた場合の(A)走査電磁石の励磁電流値の時間変化、(B)ビーム電流値の時間変化、(C)平均ビーム位置の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例である粒子線治療システムの構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0017】
本実施例の粒子線治療システム100は、図1に示すように、イオン源(図示せず),前段加速器(例えば、直線加速装置)1,円形加速器2,ビーム輸送系(ビーム輸送装置)3,粒子線照射装置(照射ノズル)5,制御システム14及び走査電磁石電源システム10を備える。
【0018】
本実施例では、円形加速器2としてシンクロトロンを用いる例を説明するが、シンクロトロンの替わりにサイクロトロンなどの他の加速器を用いてもよい。シンクロトロン2は、高周波印加装置30、及び加速装置31を有する。高周波印加装置30は、シンクロトロン2のイオンビームが周回する周回軌道上に配置された高周波印加電極と高周波電源を備える。加速装置31は、その周回軌道に配置された高周波加速空胴と高周波加速空胴に高周波電力を印加する高周波電源を備える。
【0019】
ビーム輸送系3には、ビーム経路に沿って四極電磁石及び偏向電磁石などの機器が配置される。ビーム輸送系3の一部である逆U字部と粒子線照射装置5は、回転可能なガントリー4に設置される。
【0020】
粒子線照射装置5は、図2に示すように、イオンビームの状態を測定するモニタ(位置モニタやプロファイルモニタなど)12と、通過するイオンビームを走査する走査電磁石13と、イオンビームの線量を測定する線量モニタ17と、ブロックコリメータ18と、マルチリーフコリメータ19を備えている。符号20は、患者に粒子ビームを当てる中心になるアイソセンタを示す。
【0021】
制御システム14は、図1に示すように、照射制御部9,加速器・輸送系制御部21,中央制御部22を備える。加速器・輸送系制御部21が、中央制御部22,シンクロトロン2及びビーム輸送系3に接続される。照射制御部9は、中央制御部22,粒子線照射装置5及び走査電磁石電源システム10に接続される。走査電磁石電源システム10は、走査電磁石13に接続され、走査電磁石13に電流を励磁する。また、照射制御部9は、照射ノズル5内に設置される各機器(モニタ12,線量モニタ17と、ブロックコリメータ18,マルチリーフコリメータ19)に接続される。中央制御部22が、治療計画システム23に接続される。
【0022】
イオン源を起動させると、イオン源で発生したイオン(例えば、陽子イオンや炭素イオンなど)が前段加速器1に出射される。前段加速器1は、イオン源から受け取ったイオンを加速する。前段加速器1から出射されたイオンビームは、シンクロトロン2に入射される。このイオンビームは、シンクロトロン2で、高周波電源から高周波加速空胴を経て、イオンビームに印加される高周波電力によって、エネルギーが与えられて加速される。シンクロトロン2の内部を周回するイオンビームのエネルギーが、設定されたエネルギー(例えば、100〜200MeV)までに高められた後、出射用の高周波印加装置30からの高周波がイオンビームに印加される。安定限界内で周回しているイオンビームは、高周波印加装置30による高周波の印加によって安定限界外に移行し、出射用デフレクタ32を通ってシンクロトロン2から出射される。イオンビームがシンクロトロン2から出射される際、シンクロトロン2に設けられた四極電磁石33及び偏向電磁石34などの電磁石装置に励磁される励磁電流は設定値に保持され、安定限界もほぼ一定に保持されている。
高周波印加装置30に印加する高周波電力を停止することによって、シンクロトロン2からのイオンビームの出射が停止される。
【0023】
シンクロトロン2から出射されたイオンビームは、ビーム輸送系3より下流側へ輸送される。ビーム輸送系3を通過したイオンビームは、ビーム経路を通って粒子線照射装置(照射ノズル)5へと輸送され、患者7に照射される。
【0024】
イオンビームを走査する走査電磁石13には、渦電流などの影響によって目標の励磁電流値(目標電流値)からずれた電流値が流れる。つまり、走査電磁石13には目標電流値からある誤差をもった電流値が流れることとなる。本実施例では、このような電流値の誤差を考慮して、走査電磁石13に励磁する励磁電流パターンを補正することを特徴とする。
【0025】
まずは、このような励磁電流値の誤差を考慮せずにスポットスキャニング照射を実施する例を参考例として説明する。粒子線治療システムは、治療計画システムが決定したスポット位置及び目標照射線量に基づいて、患者に対してイオンビームを照射する。具体的には、あるスポット位置に対応する励磁電流を走査電磁石に印加すると、加速器・輸送系制御部がイオンビームの照射を開始する。このスポット位置に対する照射線量が予め定められた目標照射線量に達すると、加速器・輸送系制御部はイオンビームの照射を停止する。
イオンビームの停止が確認された後、イオンビームをオフした状態で、走査電磁石制御部が次のスポット位置に対応する励磁電流を走査電磁石に励磁する。加速器・輸送系制御部は、この次のスポット位置に対するイオンビームの照射を開始する。
【0026】
図3に、走査電磁石に励磁する電流値を変更した場合の走査電磁石電流の時間変化を示す。図3(A)の破線(理想波形)で示すように、次のスポット位置に走査した後、当該スポット位置にイオンビームが一定に位置するように走査電磁石電流も一定値になるのが好ましい。しかしながら、実際は、図3の実線(実際の波形)で示すように、走査電磁石電流はオーバーシュートし、その後に一定値になるか、走査電磁石電流は徐々に一定値に漸近するか、又は図示しないが、振動減衰しながら一定値に漸近すると考えられる。走査電磁石電流が一定の値になるまでの時間を、以下では「静定時間」という。静定時間を経過した後、ビーム位置はスポット位置にあるので、そこでイオンビームの照射を開始することになる(図3(B)(C))。
【0027】
細径ビームを用いる場合、スポット数が増加するため、イオンビームをオフしている静定時間の合計が増え、線量率の低下を招く。例えば、10cm×10cmの正方形の照射野の場合、スポット間隔を8mmとすると1辺13個のスポットが並び、一つの照射野に169個のスポット位置があることになる。イオンビームを細径化してスポット間隔を例えば3mmとすると1辺に34個のスポットが並び、一つの照射野に1156個のスポット数になる。静定時間を例えば1msとして、患部を数十の積層数に分割する場合、照射時に静定に必要な時間は、患者一人あたりで、従来は数秒であったが、ビームを細径化すると数十秒となり、ビーム照射全体の時間に占める割合がかなり大きくなる。その結果、治療に要する時間が長くなる。
【0028】
本実施例では、このような励磁電流値の誤差を考慮して走査電磁石13に励磁する励磁電流パターンを照射制御部9が補正する。これによって一人の患者7に対する治療時間を短縮することができるようになる。以下に、図4を用いて本実施例の原理について説明する。
【0029】
まず、イオンビームの照射中の平均のビーム位置(平均ビーム位置)を求める必要がある。スポット位置xsを、ビーム位置をx(t)、照射時間を照射開始の起点0からTまでのTとすると、平均ビーム位置は、式(1)で求める。
【0030】
【数1】

【0031】
また、照射時間Tでのスポット位置からのずれ量Δxは、式(2)を用いて求める。
【0032】
【数2】

【0033】
スポットに照射するスポット線量、すなわち、それに比例する電荷量dは、ビーム電流I(t)を用いて、式(3)で求める。
【0034】
【数3】

【0035】
照射開始の起点は、静定時間をどこまで短縮するかによって決定される。
【0036】
図4は、走査電磁石13の励磁電流値と平均ビーム位置の関係を示している。例として、イオンビームの走査速度とビーム電流が一定の場合を示す。また、以下の説明では、走査電磁石13の励磁電流がオーバーシュートした後、一定値になる場合を示すが、他の例である走査電磁石13の励磁電流が徐々に一定値に漸近する場合や、振動減衰する場合にも同様の考えが適用できる。
【0037】
目標照射線量が大きいスポットでは、スポット位置にイオンビームを長い時間照射し続ける。このため、図4(A)に示すように、走査電磁石13の励磁電流はオーバーシュートした後、時間の経過とともに一定値に近づく。照射時間Tが大きいので、平均ビーム位置xaは、スポット位置xsとほぼ同じ位置になり、ずれ量Δxは小さくなる。しかし、目標照射線量が小さいスポット位置に対しては、照射時間が短いので、走査電磁石13の励磁電流がオーバーシュートした直後で照射を終える場合、平均ビーム位置xaはスポット位置から大きくずれ、ずれ量Δxは大きくなる。このように、目標照射線量と、この位置のずれ量Δxには、ある関係があることが分かる。本実施例では、位置のずれ量Δxと目標照射線量との関係を示す表(テーブル)を事前に準備し、このテーブルを照射制御部9の記憶装置に記憶しておくことによって、励磁電流値の誤差を考慮したスポットスキャニング照射を実現する。本実施例の照射制御部9に既往される位置のずれ量Δxと目標照射線量との関係を示すテーブルの一例を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示す目標照射線量とずれ量Δxの関係を示すテーブルは、前述の式(2)(3)を用いて求めることができる。式(2)を用いる場合に、ビーム位置の測定値を用いるのではなく、走査電磁石電源の電流値を用いて、ビーム位置を予測することができるので、走査電磁石電源の電流値からずれ量Δxを求めることができる。また、イオンビームのエネルギー毎に、あるいは、ビーム電流を増加させる又は減少させる場合毎に、スポット線量とずれ量の関係を試験で求めることもできる。
【0040】
本実施例のように走査電磁石13の励磁電流値の誤差を考慮して励磁電流パターンを補正した場合と励磁電流パターンの補正を実施しない場合との比較について、図5を用いて説明する。図5(A)の破線が、励磁電流パターンの補正を実施しない場合の走査電磁石13の励磁電流値とイオンビームの平均ビーム位置の関係を示し、図5(A)の直線が励磁電流パターンを補正した場合の走査電磁石13の励磁電流値とイオンビームの平均ビーム位置の関係を示す。
【0041】
目標照射線量からそのスポット位置での平均ビーム位置のずれ量Δxがわかる。走査速度をvとするとスポット間の走査時間τからΔt=Δx/vだけ少ない時間(τ−Δt)の走査時間でイオンビームを走査する。このように、走査電磁石電源の励磁電流を補正すると、図5(A)に示すような、補正後の波形になる。そうすると、Δxだけスポット位置より離れている、すなわち、ビーム走査直後のビーム位置xはx=xs−Δxとなるが、ビーム照射時の平均ビーム位置がΔxだけずれるので、ビーム照射後の平均ビーム位置xaはxa=xs−Δx+Δx=xsは、式(4)で求めることができ、予め定めておいたスポット位置に平均的にビームを照射することになる。
【0042】
【数4】

【0043】
これにより、静定時間を設置してビーム位置が一定になるまで待つことなく、イオンビームを照射できるので、照射時間を短縮でき、線量分布一様度も保持される。例えば、10cm×10cmの正方形の照射野で、スポット間隔が3mm、静定時間を例えば1ms、患部を数十の積層数に分割する上記の例の場合、患者一人あたりで、静定に必要であった時間数十秒を短縮することができ、線量率の向上になる。
【0044】
次に、本実施例の粒子線治療システム100を用いた粒子線治療の手順について説明する。本実施例では、粒子線治療システム100がスポットスキャニング照射法を実施する例について説明する。
【0045】
治療計画システム23は、患者7に対する粒子線治療に先立って、治療計画データを作成することが必要となる。粒子線治療に用いるイオンビームの線量のピークを、ブラッグピークと呼ぶ。標的へのイオンビームの照射は、このブラッグピークの位置で行われる。
標的とは、患部を含むイオンビームの照射対象領域であり、患部よりもいくらか大きい。
ブラッグピークの位置は、イオンビームのエネルギーにより変化する。従って、標的を深さ方向(体内でのイオンビームの進行方向)において複数の層(スライス)に分割し、イオンビームのエネルギーを深さ(各層)に応じたエネルギーに変えれば、深さ方向に厚みを持つ標的(標的領域)の全部になるべく一様にイオンビームを照射することができる。
治療計画システム23は、標的の深さ方向の大きさに応じて、患者7に対する層の数を決める。各層の高さは、イオンビームのエネルギー広がりに応じて自動的に決めても、単純に層の数自体を、入力装置を介し操作者が入力してもよい。
【0046】
層の数が決まると、治療計画システム23は各層(標的断面)を深さ方向と直角方向に分割するスポットの数,スポット位置及びそれぞれのスポット位置に対する目標の照射線量(目標照射線量)を決定する。この決定に際しても、上記層と同様、1つのスポット径を設定し、その大きさと当該層の大きさ寸法に応じて自動的に決める。スポットの大きさは固定値でもよいし、標的断面の大きさに合わせて自動的に決めるようにしてもよいし、イオンビームのサイズ(ビーム径)に応じて自動的に決めるようにしてもよい。また、単純にスポット位置又は間隔自体を、入力装置を介し操作者が入力するようにしてもよい。
全層の各スポットにおける目標照射線量を決定する。
【0047】
治療計画システム23はスポットの数,スポット位置,各層に対する目標照射線量のデータを含む治療計画情報を、患者7に対する治療計画データとして記憶装置(図示せず)に記憶する。
【0048】
中央制御部22は、患者7に対する治療計画情報を治療計画システム23から受け取る。中央制御部22は、この治療計画情報に基づいて、加速器・輸送系制御部21に加速器・輸送系制御データを送信し、照射制御部9に照射制御データを送信する。加速器・輸送系制御部21は、受信した加速器・輸送系制御データを記憶装置(図示せず)に記憶し、この加速器・輸送系制御データに基づいてシンクロトロン2及びビーム輸送系3を制御する。照射制御部9は、受信した照射制御データを記憶装置(図示せず)に記憶し、この照射制御データに基づいて走査電磁石電源システム10及び照射ノズル5内に設置された各機器を制御する。
【0049】
患者7が横たわっている患者支持装置8が移動され、患部がイオンビームのビーム軸の延長線上に位置するように位置決めされる。患者7の位置決めが完了した後、医師は、制御室(図示せず)の制御盤から照射準備開始信号を、照射制御部9,加速器・輸送系制御部21,中央制御部22に出力する。加速器・輸送系制御部21は、記憶装置に記憶された加速器・輸送系制御データに基づいてシンクロトロン2及びビーム輸送系3などの電磁石の励磁を開始する。照射制御部9は、記憶装置に記憶させた照射制御データに基づいて照射ノズル5内のモニタ12及び線量モニタ17を起動し、患者7にあわせたブロックコリメータ18及びマルチリーフコリメータ19をビーム軌道上に配置する。以上によって、イオンビーム照射のための準備が完了する。
【0050】
患者7に対するイオンビームの照射開始から照射終了までの流れを、図6を用いて説明する。前述のようにイオンビーム照射のための準備が完了すると、医師は制御装置の制御盤から照射開始信号を照射制御部9,加速器・輸送系制御部21,中央制御部22に出力する(ステップ601)。照射開始信号を受け取った照射制御部9は、記憶装置に記憶された照射制御データの中からスポット位置のデータを読み込む(ステップ602)。照射制御部9は、そのスポット位置のデータに基づいて走査電磁石13に励磁する励磁電流を求め、スポット位置に対応する励磁電流が走査電磁石13に励磁されるよう、走査電磁石電源システム10を制御する。これによって、走査電磁石電源システム10は、走査電磁石13の励磁を設定する(ステップ603)。また、照射制御部9は、読み取ったスポット位置に対する目標照射線量を記憶装置の照射制御データの中から読み込むと(ステップ604)、予め求めていた前述のテーブルを用いて、この目標照射線量に対応するずれ量Δxを求める(ステップ605)。照射制御部9は、走査電磁石13によるイオンビームの走査速度vを用いて、ずれ量Δxに対応する時間Δtから、イオンビームの走査時間(τ−Δt)を求める(ステップ606,ステップ607)。この走査時間(τ−Δt)にしたがってイオンビームの走査を行う(ステップ608)。このスポット位置に対するビーム照射量が目標照射線量に達すると、加速器・輸送系制御部21は、シンクロトロン2からのビーム出射を停止する(ステップ609)。患者7に対するビーム出射が停止されると、中央制御部22は、次のスポット位置に対してイオンビームを照射するか否かを判定する(ステップ610)。次のスポット位置にイオンビームを照射すると判断した場合(YESの場合)、中央制御部22は、照射制御部9及び加速器・輸送系制御部21に対してスポット変更の指令信号を送信する。スポット変更の指令信号を受け取った照射制御部9及び加速器・輸送系制御部21は、前述したステップ602からステップ609のプロセスを実施する。全てのスポット位置に対するイオンビームの照射が完了すると、中央制御部22は、次のスポット位置に対するイオンビームの照射はないと判断(NOと判断)して、患者7への照射が終了する(ステップ611)。
【0051】
本実施例では、励磁電流値の誤差を考慮して走査電磁石13に励磁する励磁電流パターンを照射制御部9が補正する。つまり、本実施例は、スポットに照射する平均のビーム位置が予め定めたスポット位置になるように補正してイオンビームを照射するため、静定時間を設けないで、あるいは静定時間を短縮することができ、患者7に対する治療時間を短縮することができる。また、静定時間を設けない、あるいは静定時間を短縮したとしても、線量分布の一様度を保持したビーム照射が可能となる。
【0052】
本実施例では、表1に示す目標照射線量とずれ量Δxの関係を示すテーブルを用いたが、この表1のテーブルの替わりに、表2に示すスポット番号と走査時間の関係を示すテーブルを用いても良い。
【0053】
【表2】

【0054】
この表2は、図6に示すステップ602−ステップ607の処理を予め実施し、スポット番号と走査時間の関係を求めることによって得ることができる。この場合には、表2に示すスポット番号と走査時間の関係を用いて照射制御部9が励磁電流値の誤差を考慮して励磁電流パターンで走査電磁石13を制御する。表2に示すテーブルを用いる場合にも、本実施例と同様の効果を得ることができる。さらに、照射に必要な処理を予め実施しておくので、照射に関する時間の短縮になる。
【実施例2】
【0055】
以下に、本発明の他の実施例である粒子線治療システムについて、図7を用いて説明する。本実施例の粒子線治療システムは、実施例1の粒子線治療システム100と同様の構成を有する。なお、実施例1の照射制御部9は目標照射線量とずれ量Δxの関係を示すテーブル(表1)を用いて走査電磁石13を励磁してイオンビームを走査したが、本実施例では、表3に示すテーブルを用いて走査電磁石13を励磁する。
【0056】
【表3】

【0057】
照射制御部9は、最小の目標照射線量に対応するずれ量に合うように、走査電磁石電源電流においてオーバーシュート後に一定になる電流の大きさを、各スポットでの目標照射線量の大きさに応じて調整する。すなわち、図7(A)において、目標照射線量が最小のスポット位置では、平均ビーム位置は大きくなりずれ量Δxが大きくなる。このずれ量に、他の目標照射線量に対応するずれ量も同じになるように走査電磁石電源電流においてオーバーシュート後に一定になる電流の大きさを求めておく。走査電磁石電源電流の定格値からの偏差をΔiとする。これらの関係をテーブルとして事前に準備し、照射制御部9の記憶装置に記憶させる。照射制御部9は、ビーム照射時に記憶装置に記憶したテーブル(表3)を用いて走査電磁石13に励磁電流を励磁する。
【0058】
1つの照射野において、全ての平均ビーム位置が、スポット位置から平行移動したことになるが、線量分布の一様度には影響なく、一様度が保持できる。あるいは、図5に示すように、走査時間を調整して、予め決めたスポット位置に平均ビーム位置をあわせることもできる。この場合においても、線量分布には影響なく、線量分布の一様度は保持される。
【0059】
本実施例では走査電磁石電流がオーバーシュートした後に一定値になる場合を示したが、他の例である走査電磁石電流が徐々に一定値に漸近する場合にも適用することができる。目標照射線量が最小のスポット位置では、平均ビーム位置は大きくなりずれ量Δxが大きくなる。このずれ量に、他の目標照射線量に対応するずれ量も同じになるように走査電磁石電源電流において徐々に一定値に漸近する電流の大きさを求めておく。これをテーブルとして用意しておいて、照射制御部9の記憶装置に記憶させ、イオンビーム照射時に使用する。
【0060】
全ての平均ビーム位置が、スポット位置から平行移動したことになるが、線量分布の一様度には影響なく、一様度が保持できる。あるいは、図5に示すように、走査時間を調整して、予め決めたスポット位置に平均ビーム位置をあわせることもできる。この場合においても、線量分布には影響なく、線量分布の一様度は保持される。
【0061】
走査電磁石電流が振動減衰しながら一定値になる場合にも同様の考えが適用できる。スポット線量が最小のスポットでは、平均ビーム位置は大きくなりずれ量Δxが大きくなる。このずれ量に、他のスポット線量に対応するずれ量も同じになるように走査電磁石電源電流において振動減衰しながら一定値になる電流の大きさを求めておく。これらの関係をテーブルとして事前に準備し、照射制御部9の記憶装置に記憶させても良い。この場合、照射制御部9は、イオンビーム照射時にこの記憶装置に記憶したテーブルを用いて走査電磁石13に励磁電流を励磁することになる。
【0062】
全ての平均ビーム位置が、スポット位置から平行移動したことになるが、線量分布の一様度には影響なく、一様度が保持できる。あるいは、図5に示すように、走査時間を調整して、予め決めたスポット位置に平均ビーム位置をあわせることもできる。この場合においても、線量分布には影響なく、線量分布の一様度は保持される。
【実施例3】
【0063】
以下に、本発明の他の実施例である粒子線治療システムについて、図8を用いて説明する。本実施例の粒子線治療システムは、実施例1の粒子線治療システム100と同様の構成を有する。なお、実施例1の照射制御部9は目標照射線量とずれ量Δxの関係を示すテーブル(表1)を用いて走査電磁石13を励磁してイオンビームを走査したが、本実施例では、表4に示すテーブルを用いて走査電磁石13を励磁する。
【0064】
【表4】

【0065】
本実施例においては、各スポット位置の照射時間を一定にすることで、平均ビーム位置が一定になり、各スポット位置のずれ量も一定になることを利用する。ずれ量が一定なので、線量分布には影響なく、線量分布の一様度は保持される。あるいは、図5に示すように、走査時間を調整して、予め決めたスポット位置に平均ビーム位置をあわせることもできる。この場合においても、線量分布には影響なく、線量分布の一様度は保持される。
【0066】
各スポット位置での線量は異なる。本実施例では、照射時間を一定にしているので、ビーム電流を目標照射線量に合わせて調整して各スポット位置にイオンビームを照射することで、照射線量を予め決めた各スポット位置の線量に合わすことができる。ビーム電流の定格値からの偏差をΔIとする。目標照射線量とビーム電流値の関係を事前に求め、照射制御部9の記憶装置に記憶させる。照射制御部9は、ビーム照射時に記憶装置に記憶したテーブル(表4)を用いて走査電磁石13の励磁電流を制御する。
【0067】
本実施例によれば、走査電磁石電源の電流を変更することなく、所望の線量分布を形成することができる。
【0068】
本実施例では、走査電磁石電流がオーバーシュートした後一定値になる場合を示したが、他の例である走査電磁石電流が徐々に一定値に漸近する場合や、振動減衰する場合にも同様に適用できる。
【0069】
実施例1乃至3では、粒子線治療システムによる細径ビームを用いたスポットスキャニング照射を例に説明したが、ラスタースキャニング照射、通常のビームサイズのスポットスキャニング照射、走査電磁石電源において電流変動の大きい電源にも適用することができる。この場合にも、静定時間を設定しないで、あるいは、静定時間を短くしてイオンビームを照射することができ、患者7に対する治療時間を短縮することができる。また、静定時間を設けない、あるいは静定時間を短縮したとしても、線量分布の一様度を保持したビーム照射が可能となる。
【0070】
実施例1乃至3の粒子線治療システムに用いるイオンビームとしては、陽子線や重粒子線(炭素線やヘリウム線など)等が考えられる。
【符号の説明】
【0071】
1 前段加速器
2 円形加速器(シンクロトロン)
3 ビーム輸送系
4 回転ガントリー
5 粒子線照射装置(照射ノズル)
7 患者
8 患者支持装置(治療用ベッド)
9 照射制御部
10 走査電磁石電源システム
11 粒子ビーム
12 モニタ
13 走査電磁石
14 制御システム
17 線量モニタ
18 ブロックコリメータ
19 マルチリーフコリメータ
20 アイソセンタ
21 加速器・輸送系制御部
22 中央制御部
23 治療計画システム
30 高周波印加装置
31 加速装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを所定のエネルギーまで加速する加速器と、
前記加速したイオンビームを照射対象に照射する照射装置と、
前記加速器と前記照射装置を接続するビーム輸送系と、
前記照射装置を制御する照射制御装置を備え、
前記照射装置は、前記照射対象に対する前記イオンビームの照射位置を変更する走査電磁石を有し、
前記照射制御装置は、前記照射対象の目標照射位置と当該目標照射位置に前記イオンビームを照射したときの平均ビーム位置との誤差情報と、前記目標照射位置に照射するイオンビームの目標照射線量情報との関係を示すデータを記憶する記憶装置を有し、
前記照射制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記誤差情報と前記目標照射線量情報の関係を示すデータに基づいて、前記走査電磁石の励磁電流を制御して前記イオンビームの照射位置を補正することを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記記憶装置は、前記誤差情報と前記目標照射線量情報の関係をテーブルとして記憶し、
前記照射制御装置は、前記テーブルに基づいて、前記走査電磁石の励磁電流を制御して前記イオンビームの照射位置を補正することを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記照射制御装置は、次の照射位置に対する目標照射線量から前記誤差情報を取得し、取得した前記誤差情報と前記走査電磁石の走査速度に基づいて平均ビーム位置が前記目標照射位置になるように前記イオンビームの走査時間を求め、当該走査時間でイオンビームを照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子線治療システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記照射制御装置は、次の照射位置に対する前記誤差情報が、前記照射対象内の最小の目標照射線量に対する前記誤差情報と一致するように、前記走査電磁石の励磁電流を調整して前記イオンビーム野照射位置を補正することを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記照射制御装置は、前記照射対象の各照射位置に対するイオンビームの照射時間を一定にし、前記イオンビームのビーム電流強度を変更して前記照射対象にイオンビームを照射することを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項6】
イオンビームを所定のエネルギーまで加速する加速器と、前記加速したイオンビームを照射対象に照射する照射装置と、前記加速器と前記照射装置を接続するビーム輸送系と、前記照射装置を制御する照射制御装置を備え、前記照射装置は前記照射対象に対する前記イオンビームの照射位置を変更する走査電磁石を有し、前記照射制御装置は、前記照射対象の目標照射位置と当該目標照射位置に前記イオンビームを照射したときの平均ビーム位置との誤差情報と、前記目標照射位置に照射するイオンビームの目標照射線量情報との関係を示すデータを記憶する記憶装置を有する粒子線治療システムの粒子線照射方法であって、
前記照射制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記誤差情報と前記目標照射線量情報の関係を示すデータに基づいて、前記走査電磁石の励磁電流を制御して前記イオンビームの照射位置を補正することを特徴とする粒子線照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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