説明

粒状固体の分散物の調製方法

粒状固体の分散物を調製するための方法であって、
粒状固体を分散剤および液体媒体と一緒に分散させる
ことを含む方法、
ここにおいて、
該分散剤は、
i)所望により1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマー、
ii)1以上のモノエチレン性不飽和疎水性モノマー、
iii)1以上のジ−および/または高級−エチレン性不飽和モノマー、ならびに
iv)1以上の連鎖移動剤、これに関し、連鎖移動剤の少なくとも1つは1以上の親水性基を有する、
を含む組成物の共重合から得た、または得ることができるランダムコポリマーであり;
該分散段階は、粒状固体の粒径を小さくする機械的処理により行われ;
ただし、
A)分散剤共重合組成物が1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーを成分i)とし含む場合;および
B)成分iv)の連鎖移動剤(1以上)のいずれかが、3−メルカプトプロピオン酸、アクロレインまたはメタクロレインである場合;
そのような場合、モルで表した成分i)の1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーのすべてにおける全親水性基と、モルで表した成分iv)のすべての連鎖移動剤における親水性基の全量との比は、5未満:1であるという条件が付く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状固体の分散物の調製方法および該方法により得ることができる封入粒状固体に関する。前記封入粒状固体を含有するインクにも関連する。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO2006/064193号には、インクジェット印刷用インクでの使用に適した分散顔料を提供するための方法が記載されている。顔料を、モノエチレン性不飽和モノマーから誘導したランダムコポリマー分散剤でコーティングする。これらの分散剤は線状構造を有する。その後、該分散剤を顔料の周囲に架橋する。この方法は有用な性質を有する顔料分散物をもたらすが、技術の改善が継続的に必要とされている。詳細には、改善された耐久性を有するプリントを、とりわけ光沢のある媒体上にもたらすことが望まれている。さらに、プリントは、特に普通紙上に印刷したときに、可能な限り最良の光学濃度を有することが望ましい。サブミクロンの平均粒径を有する粒子の分散物を調製するために、顔料の容易なミル粉砕を促進する分散剤を見いだすことも望ましい。そのような分散物は、貯蔵または使用に関し安定であることも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2006/064193号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点の1以上を少なくとも部分的に解決することを試みるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点に従って、粒状固体の分散物を調製するための方法であって、
粒状固体を分散剤および液体媒体と一緒に分散させる
ことを含む方法を提供し、
ここにおいて、
該分散剤は、
i)所望により1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマー、
ii)1以上のモノエチレン性不飽和疎水性モノマー、
iii)1以上のジ−および/または高級−エチレン性不飽和モノマー、ならびに
iv)1以上の連鎖移動剤、これに関し、連鎖移動剤の少なくとも1つは1以上の親水性基を有する、
を含む組成物の共重合から得た、または得ることができるランダムコポリマーであり;
該分散段階は、粒状固体の粒径を小さくする機械的処理により行われ;
ただし、
A)分散剤共重合組成物が1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーを成分i)とし含む場合;および
B)成分iv)の連鎖移動剤(1以上)のいずれかが、3−メルカプトプロピオン酸、アクロレインまたはメタクロレインである場合;
そのような場合、モルで表した成分i)の1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーのすべてにおける全親水性基と、モルで表した成分iv)のすべての連鎖移動剤における親水性基の全量との比は、5未満:1であるという条件が付く。
【0006】
好ましくは、条件A)およびB)が満たされている場合、本発明の第1の観点の但し書きは、モルで表した成分i)の1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーのすべてにおける全親水性基と、モルで表した成分iv)のすべての連鎖移動剤における親水性基の全量との比が、3未満:1、好ましくは1未満:1、特に0.3未満:1、もっとも特に0.1未満:1であることを必要とする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
粒状固体
粒状固体は、液体媒体に溶解しない無機もしくは有機粒状固体またはその混合物であることが好ましい。
【0008】
適した粒状固体の例としては、無機および有機顔料;ペイントおよびプラスチック材料用の増量剤および充填剤;分散染料および水溶性染料を溶解しない液体媒体中の前記染料;蛍光増白剤;溶媒染浴、インクおよび他の溶媒施用系のための織物用助剤;粒状セラミック材料;磁性粒子(例えば、磁気記録媒体で使用するためのもの);殺生物剤;農薬;ならびに医薬品が挙げられる。
【0009】
粒状固体は、液体媒体に溶解しない着色剤であることが好ましく、より好ましくは顔料である。
顔料は、カーボンブラックまたは有機顔料であることが好ましい。
【0010】
好ましい粒状顔料は、有機顔料、例えば、Colour Indexの第3版(1971)、これに続くその改訂版、およびその補遺の“Pigments”という見出しの章に記載されている顔料のクラスのいずれかである。有機顔料の例は、アゾ(ジスアゾおよび縮合アゾを含む)、チオインジゴ、インダントロン、イソインダントロン、アンタントロン、アントラキノン、イソジベンズアントロン、トリフェンジオキサジン、キナクリドン、ならびにフタロシアニン系列、特に銅フタロシアニンおよびその核ハロゲン化誘導体のほか、酸性、塩基性および媒染染料のレーキからのものである。
【0011】
好ましい有機顔料は、フタロシアニン、特に銅フタロシアニン顔料、アゾ顔料、インダントロン、アンタントロン、およびキナクリドンである。
好ましい無機粒状固体としては、以下のものが挙げられる:増量剤および充填剤、例えば、タルク、カオリン、シリカ、重晶石および白亜;粒状セラミック材料、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、混合ケイ素−アルミニウム窒化物および金属チタン酸塩;粒状磁性材料、例えば、遷移金属、特に鉄およびクロムの磁性酸化物、例えば、ガンマ−Fe、Feおよびコバルトをドープした酸化鉄、酸化カルシウム、フェライト、特にバリウムフェライト;ならびに、金属粒子、特に、金属の鉄、ニッケル、コバルトおよびそれらの合金;ならびに、カーボンブラック。とりわけ好ましい無機粒状固体はカーボンブラックである。ガスブラックが特に好ましい。
【0012】
本発明の方法を用いて、インク、例えばインクジェット印刷用インクに用いるための粒状固体分散物を作製する場合、顔料は、シアン、マゼンタ、黄色または黒色顔料であることが好ましい。粒状固体は、単一の化学種であるか、2種以上の化学種を含む混合物(例えば、同じまたは異なる色のものであることができる2種以上の異なる顔料を含む混合物)であることができる。すなわち、2種以上の異なる粒状固体を本発明の方法に用いることができる。
【0013】
顔料は、その表面に分散性基が共有結合しているようにするために、表面を処理しないことが好ましい。顔料は、分散剤の補助なしでは液体媒体(特に水)に分散しないことが好ましい。
【0014】
好ましくは、あらゆる機械的処理の前に、粒状固体は1ミクロン以上、例えば1〜100ミクロンの体積平均粒径を有する。
分散剤
本発明の方法に用いられる分散剤は、本発明の第1の観点で定義した組成物を共重合することにより調製することができる。しかしながら、同様に、必要な組成物を含有するあらかじめ調製されたコポリマーを商業的供給源から得ることも可能であり得る。このように、本特許請求の範囲では、成分i)〜iv)を共重合して(例えばラジカル溶液共重合により)分散剤を調製する段階が必ずしも必要ではない。必要なのは、作製方法または作製者に関わらず、そのようなコポリマーを本方法に用いるということである。
【0015】
分散剤は、本発明の第1の観点で定義した成分i)〜iv)を共重合する方法により調製することが好ましい。
成分i)
存在する場合、モノエチレン性不飽和親水性モノマーは、すべて同じ化学式のものであることができ、または、2以上(例えば2〜10)の異なるモノエチレン性不飽和親水性モノマーを含むことができる。
【0016】
モノエチレン性不飽和親水性モノマーは、典型的には1以上、好ましくは1〜3の親水性基を有する。親水性基の例としては、遊離酸または塩の形にあることができるフェノール酸、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸、ポリリン酸、リン酸、カルボン酸基、第四アンモニウム、ベンザルコニウム、グアニジン、ビグアニジンおよびピリジニウム、ならびに、グルコシド、サッカリド、ピロリドン、アクリルアミド、ヒドロキシおよびポリ(エチレンオキシド)基が挙げられる。これらのうち、好ましい親水性基としては、スルホン酸、ホスホン酸、および特にカルボン酸基が挙げられる。
【0017】
1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーはそれぞれ、50g/Lを超える水への溶解度を有することが好ましい。溶解度試験では、水は脱イオン水であることが好ましい。溶解度は、25℃およびpH8で測定することが好ましい。pH8を得るために、KOHを塩基として用いることが好ましい。
【0018】
好ましいモノエチレン性不飽和親水性モノマーはそれぞれ、1未満のLogP値を有する。
LogPは、例えばL.G.DanielssonおよびY.H.Zhang,Trends in Anal.Chem,1996,15,188に記載されているように、n−オクタノールと水の間での物質の分配係数の対数(塩基10)である。高いLogP値は、疎水性化合物を意味する(例えば、スチレンは約3のLogP値を有する)。低いLogP値は、親水性化合物を意味する(例えば、アクリル酸は約0のLogP値を有する)。LogP値は実験的に決定することができる。LogP値は計算することができ、これは実験による決定値と十分に一致している(Analytical Sciences Sept 2002,Vol 18,1015〜1020頁)。しかしながら、多数の実在または仮定に基づく化合物のLogP値を正確かつ迅速に計算することができる商業的コンピューター・プログラムが存在するので、われわれはLogP計算値を選ぶ。
【0019】
Mannhold,R.およびDross,K.による総説(Quant.Struct−Act.Relat.15,403−409,1996)には、化合物および特に薬剤のLogP値を計算するための14の方法が記載されている。この総説から、われわれは、“フラグメント法”および特にACD labsソフトウェアにより実行するフラグメント法を選ぶ。
【0020】
モノエチレン性不飽和モノマーの計算LogPは、市販のコンピューター・ソフトウェアを用いて、例えば、LogP DBソフトウェアのバージョン7.04または該ソフトウェアのその後のバージョン(Advanced Chemistry Development Inc(ACD labs)から入手可能)を用いて、計算することができる。あらゆるイオン性またはイオン化しうる基が、それらの中性の(イオン化していない)形で計算される。
【0021】
1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーはそれぞれ、好ましくは1未満、より好ましくは1未満〜−6のLogP計算値を有する。
モノエチレン性不飽和親水性モノマーは、イオン性および/または非イオン性親水性基を有することができる。イオン性基はカチオン性であることができるが、アニオン性であることが好ましい。両性の安定化をもたらすために、カチオン性およびアニオン性基の両方が存在していてもよい。好ましいアニオン性基は、遊離酸または塩の形にあることができるフェノール酸、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸、ポリリン酸、リン酸、および特にカルボン酸基である。適した塩としては、アルカリ金属、アンモニウム、および有機アミン塩が挙げられる。好ましいアルカリ金属塩としては、リチウムならびに特にナトリウムおよびカリウムが挙げられる。
【0022】
好ましいカチオン性基は、第四アンモニウム、ベンザルコニウム、グアニジン、ビグアニジンおよびピリジニウムである。これらは、水酸化物、スルフェート、ニトレート、塩化物、臭化物、ヨウ化物およびフッ化物などの塩の形にあることができる。
【0023】
適した親水性非イオン性基は、グルコシド、サッカリド、ピロリドン、アクリルアミド、ヒドロキシ基、ポリ(エチレンオキシド)基、例えば式−(CHCHO)Hまたは−(CHCHO)1−4−アルキル[式中、nは3〜200(好ましくは4〜20)である]の基である。共重合組成物中の非イオン性親水性基を含有するモノマーすべての合計は、成分i)〜iii)のすべてのモノマーに対し2重量%未満であることが好ましい。しかしながら、これら親水性非イオン性基は、分散剤中に存在しないことが好ましい。
【0024】
いくつかの態様において、分散剤は、例えば、単一の親水性非イオン性基か、分散剤の全体でいくつかの親水性非イオン性基か、または親水性非イオン性基を含有する1以上のポリマー鎖を、含有することができる。ヒドロキシ基は、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシ官能性アクリル系誘導体およびセルロースなどのポリマー鎖を用いて組み込むことができる。エチレンオキシ基は、ポリエチレンオキシドなどのポリマー鎖を用いて組み込むことができる。
【0025】
適した親水性モノエチレン性不飽和モノマーとしては、親水性非イオン性およびイオン性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
適した親水性非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーは、サッカリド、グルコシド、アミド、ピロリドンならびに特にヒドロキシおよびポリエチレンオキシ基を含有するものである。
【0026】
親水性非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーの適した例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド官能性(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0027】
親水性イオン性モノエチレン性不飽和モノマーは、カチオン性であってもよいが、好ましくはアニオン性である。
好ましい親水性アニオン性モノエチレン性不飽和モノマーは、遊離酸の形にあるか塩であることができるカルボン酸、リン酸、ホスホン酸基および/またはスルホン酸基を含むものである。塩のタイプは上記したとおりである。好ましい例は、アクリル酸、メタクリル酸、ベータカルボキシエチルアクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸およびアクリロイルオキシブチルスルホン酸)、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸およびメタクリロイルオキシブチルスルホン酸)、2−アクリルアミド−2−アルキルアルカンスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸)、2−メタクリルアミド−2−アルキルアルカンスルホン酸(例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸)、モノ−(アクリロイルオキシアルキル)ホスフェート(例えば、モノ(アクリロイルオキシエチル)ホスフェートおよびモノ(3−アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート)、およびモノ(メタクリロイルオキシアルキル)ホスフェート(例えば、モノ(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートおよびモノ(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフェート)である。
【0028】
これらのうち、メタクリル酸が特に好ましい。モノエチレン性不飽和親水性モノマー(1以上)は、存在する場合、メタクリル酸を含むことが好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。成分i)は、(メタ)アクリル酸であるか(メタ)アクリル酸を含むことが好ましい。
【0029】
場合によっては、成分i)はボロン酸基を含む親水性モノエチレン性不飽和モノマーであるか、そのようなモノマーを含むことが好ましい。その好ましい例は、4−ビニルフェニルボロン酸である。われわれは、ボロン酸基の使用は、印刷された基材、特にセルロース系基材(例えば紙)に対する分散物の堅牢度の点で有益であり得ることを見いだした。
【0030】
分散剤は親水性非イオン性基を有さないことがとりわけ好ましく、分散剤中の唯一の親水性基がカルボン酸またはその塩であることが、より好ましい。
適した親水性カチオン性モノエチレン性不飽和モノマーは、第三アミン、第四アミン、ピリジン、グアニジンおよびビグアニジン基を含むものである。
【0031】
本発明の第1の観点の条件A)およびB)にかかわらず、モルで表した成分i)の1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーのすべてにおける全親水性基と、モルで表した成分iv)のすべての連鎖移動剤における親水性基の全量との比は、好ましくは5未満:1、より好ましくは3未満:1、特に好ましくは1未満:1、さらに特に0.3未満:1、もっとも特に0.1未満:1である。連鎖移動剤中の連鎖移動基(例えば−SH基)はいずれも、親水性基とみなさない。
【0032】
これらの好ましい比の結果、分散剤中に存在する親水性基のより多くの割合は、成分i)に由来するものではなく、連鎖移動剤基を介して付着している。われわれは、意外にも、そのようなコポリマーが、顔料用の分散剤として改善された性質を示すことを見いだした。とりわけ、そのような分散剤は、コロイド安定性、印刷したときの反射率光学濃度(reflectance optical density)、および顔料のミル粉砕中のサブミクロ分散物調製効率などの性質のバランスが改善された顔料分散物をもたらす。
【0033】
上記好ましい比に関し概して同等の表現を行うと、分散剤中に存在する全親水性基の好ましくは少なくとも20mol%、より好ましくは少なくとも25mol%、特に少なくとも50mol%、さらに特に少なくとも75mol%、もっとも特に少なくとも90mol%は、連鎖移動剤基に付着しており、前記連鎖移動基は分散剤に付着している。付着という語により、われわれは共有結合を介していることをさす。
【0034】
場合によっては、成分i)は存在しない(すなわち、ゼロ部の成分i)ことが好ましい。このように、分散剤中の親水性基のすべては移動剤基(成分ivからの)に付着しており、前記連鎖移動剤は分散剤に付着している。
【0035】
成分i)は、本発明の第1の観点で定義した成分i)〜iii)のすべての全モル数に基づき、好ましくは0〜45mol%、より好ましくは0〜20mol%、特に0〜5mol%で存在する。場合によっては成分i)は存在しない(ゼロ部)。
成分ii)
モノエチレン性不飽和疎水性モノマーは、すべて同じ化学式のものであることができ、または、2以上(例えば2〜10)の異なるモノエチレン性不飽和疎水性モノマーを含むことができる。
【0036】
1以上のモノエチレン性不飽和疎水性モノマーはそれぞれ、1以上のLogP計算値(先に記載したとおりである)を有することが好ましい。より好ましくは1〜6である。
1以上のモノエチレン性不飽和疎水性モノマーはそれぞれ、50g/L以下の水への溶解度を有することが好ましい。溶解度は、先に記載した方法により測定することが好ましい。
【0037】
モノエチレン性不飽和疎水性モノマーは、典型的にはイオン性および非イオン性親水性基を含まない。好ましい例としては、(メタ)アクリル酸のエステルが挙げられる。1以上のモノエチレン性不飽和疎水性モノマーは、(メタ)アクリル酸のエステルを含むことが好ましい。より好ましくは、1以上のモノエチレン性不飽和疎水性モノマーのすべてが、(メタ)アクリル酸のエステルである。
【0038】
好ましいモノエチレン性不飽和疎水性モノマーとしては、C1−20−ヒドロカルビル(メタ)アクリレート、スチレンおよびビニルナフタレンが挙げられる。特に好ましいものは、C1−10−ヒドロカルビル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびベンジル(メタ)アクリレートである。
【0039】
成分ii)は、ベンジル(メタ)アクリレートであるかこれを含むことが好ましく、より好ましくは、メタクリル酸ベンジルであるかこれを含む。
メタクリル酸ベンジルが特に好ましい。これは、われわれが、メタクリル酸ベンジルには本発明の第1の観点の方法により調製した分散物から作製したプリントの反射率光学濃度を改善する傾向があることを見いだしたためである。
【0040】
成分ii)は、成分ii)のすべてのモノマーに対し少なくとも50重量パーセント、より好ましくは少なくとも60重量パーセント、特に少なくとも75重量パーセント、もっとも特に少なくとも90重量パーセントのメタクリル酸ベンジルを含むことが好ましい。
【0041】
場合によっては、成分ii)が、ベンジル(メタ)アクリレートのみ、特にメタクリル酸ベンジルのみからなることが好ましい。
成分ii)は、本発明の第1の観点で定義した成分i)〜iii)のすべての全モル数に基づき、好ましくは50〜95mol%、より好ましくは50〜90mol%、特に50〜80mol%で存在する。
成分iii)
ジエチレン性不飽和モノマーは、2つのエチレン性不飽和基を有する。
【0042】
ジエチレン性不飽和モノマーおよび高級エチレン性不飽和モノマーは、すべて同じ化学式のものであることができ、または、2以上(例えば2〜10)の異なるジエチレン性不飽和モノマーおよび高級エチレン性不飽和モノマーを含むことができる。
【0043】
本明細書で用いる“高級”という単語は、エチレン性不飽和基に適用する場合、2より多く、より好ましくは3以上のエチレン性不飽和基を有することを意味する。
好ましいジエチレン性不飽和モノマーおよび高級エチレン性不飽和モノマーは、1分子あたり平均して2〜5のエチレン性不飽和基を有する。
【0044】
成分iii)は、高級エチレン性不飽和モノマーを含有しないことが好ましい。
ジ−および高級−エチレン性不飽和モノマーは、事実上オリゴマーであることができる。
【0045】
ランダムコポリマーは、高級エチレン性不飽和モノマーの共重合に由来する反復単位を含有しないことが好ましい。
ジエチレン性不飽和モノマーの例としては、限定されるものではないが、ジビニルベンゼン、ビス−(4−エテニルフェニル)メタン、ジビニルジオキサン、ジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ジビニル1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、ジビニルテトラエトキシ−1,3−ジシラザン、ジビニルテトラメトキシ−1,3−ジシラザン、ジビニル1,3−ジフェニル−1,3−ジメチル−1,3−ジシロキサン、ジビニルアセチレン、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルカルビノール、ジビニルカルボネート、1,2−ジビニルシクロブタン、cis−1,2−ジビニルシクロヘキサン、trans−1,2−ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルシクロヘキサンジメタノールジエーテル、ジビニルジブチルスズ、2,5−ジビニルジオキサン、1,1’−ジビニルフェロセン、ジビニルホルマール、ジビニルグリコール、1,4−ジビニルペルフルオロブタン、1,6−ジビニルペルフルオロヘキサン、ジビニルフェニルホスフィン、3,9−ジビニルスピロビm−ジオキサン、ジビニルスルホン、1,4−ジビニル−1,1,4,4−テトラメチルジシリルエチレン、ジビニルスズジクロリド、ジビニルトリエチレングリコールジエーテル、1,5−ビス−ジビニルオキシ−3−オキサペンタン、ジビニルシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、ジビニルジフェニルシラン、1,1’−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)−4,4’−イソプロピリデンジフェノール、エチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールA2−ヒドロキシエチルジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ブテンジオールジメタクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、2−ブチン−1,4−ジイルジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジメタクリレート、デカメチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルジメタクリレート、1,6−ジメチルヘキサンジオールジメタクリレート、2,5−ジメチルヘキサンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタクリレート、エチリデンジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,5−テトラヒドロペルフルオロペンチルジメタクリレート、ヘキサフルオロビスフェノールAジメタクリレート、ヘキシレングリコールジメタクリレート、水素化ビスフェノールAジメタクリレート、メチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジオール1,6−ジメタクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、ペルフルオロシクロヘキシル1,4−ジメチルジメタクリレート、o−フェニレンジメタクリレート、p−フェニレンジメタクリレート、スチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール600ジメタクリレート、ポリエチレングリコール400ジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ソルビトールジメタクリレート、4,4’−スルホニルジフェノールジメタクリレート、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、テトラクロロビスフェノールAジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロブタンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルペンタンジオールジメタクリレート、ウレタンジメタクリレート、ジメタクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸ジルコニウム(IV)、ブタンジオールジアクリレート、N,N−ジアクリロイルアクリルアミド、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA2−ヒドロキシエチルジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートおよびジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリ−プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチル1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジメチルビスフェノールAジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチル1,3−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレンジアクリレート、エチリデンジアクリレート、ヘキサフルオロビスフェノールAジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナメチレンジアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジオール1,6−ジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、p−フェニレンジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ソルビトールジアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロブタンジオールジアクリレート、チオールジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ウレタンジアクリレート、ジアクリル酸亜鉛、ジエチレングリコールジアクリルオキシプロピオネート、ビス−アクリロイルピペラジン、およびマレイン酸ジアリルが挙げられる。
【0046】
好ましいジエチレン性不飽和モノマーとしては、ジビニルベンゼンおよび/またはジウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。場合によっては、成分iii)はジビニルベンゼンおよび/またはジウレタンジ(メタ)アクリレートのみからなることが好ましい。
【0047】
高級−エチレン性不飽和モノマーは、2より多く、好ましくは3以上のエチレン性不飽和基、例えば3または4個の上記基を有する。好ましい高級エチレン性不飽和モノマーとしては、トリエチレン性不飽和モノマーおよびテトラエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。
【0048】
トリエチレン性不飽和モノマーの例としては、トリアクリルホルマール、ペンタエリトリトールトリアリルエステル、グリセリルプロポキシトリアクリレート、トリアクリル酸鉄(ferric triacrylate)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリアジン−2,4,6−トリイル−1,2−エタンジイルトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールエタントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリメタクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、1,2,5−ペンタントリオールトリメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレートが挙げられる。
【0049】
テトラエチレン性不飽和モノマーの例としては、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、テトラアクリル酸ジルコニウム(IV)、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、およびテトラメタクリル酸ジルコニウム(IV)が挙げられる。
【0050】
成分iii)は、本発明の第1の観点で定義した成分i)〜iii)のすべての全モル数に基づき、好ましくは5〜50mol%、より好ましくは10〜50mol%、特に20〜50mol%で存在する。
成分iv)
連鎖移動剤(CTA)の機能の一つは、時期尚早の架橋と、これに続く通常ならジ−および/または高級−エチレン性不飽和モノマーの存在によって起こる分散剤のゲル化を回避することである。これに加えて、われわれは、CTAの少なくとも1つにおける親水性基が、安定性、顔料のミル粉砕の容易さ、および印刷したときの高い光学濃度などの性質の、より望ましいバランスを得るのに役立つと推測する。
【0051】
いずれかの理論に束縛または限定しようとするものではないが、ジ−および/または高級−エチレン性不飽和モノマーの存在は、成長中のランダムコポリマー中にランダムな分枝点を作り出し、連鎖移動剤は、分散剤の全体的分子量をとりわけ制限することなく、個々のポリマー鎖の分子量を制限し、これによりゲル化を回避するのに役立つと考えられる。
【0052】
したがって、分散剤は分枝した分散剤、好ましくは高度に分枝した分散剤である。
好ましい連鎖移動剤(CTA)は、1以上の硫黄原子を含有する。そのようなCTAとしては、チオール、ポリスルフィド(特にジスルフィド)およびチオエーテル、チオエステルおよびチオカルバメートが挙げられる。
【0053】
好ましい連鎖移動剤は、−SH(チオール)基を少なくとも1つ、より好ましくは1つだけ有する。
好ましい連鎖移動剤(CTA)は、親水性基を1つだけ有する。CTAに関し、親水性基は連鎖移動基以外のものである。したがって、例えば−SHは、CTAに関し親水性基とはみなさない。
【0054】
連鎖移動剤は、非イオン性、カチオン性および特にアニオン性基から選択される1以上の親水性基を有することが好ましい。考えうる親水性基は、モノマーに関し先に記載したとおりである。
【0055】
CTA上の好ましい親水性アニオン性基(1以上)としては、スルホン酸、ホスホン酸および特にカルボン酸基(1以上)が挙げられる。
CTA上の好ましい親水性非イオン性基(1以上)としては、ヒドロキシおよびポリエチレンオキシが挙げられる。
【0056】
1以上の親水性基を有する好ましい連鎖移動剤としては、
i)メルカプト酸、好ましくは、チオグリコール酸、メルカプトウンデカン酸、チオ乳酸、チオ酪酸、チオリンゴ酸、チオマロン酸、チオアジピン酸、2−メルカプトエタンスルホン酸、および特に3−メルカプトプロピオン酸;
ii)メルカプトアルコール、好ましくは、2−メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、チオグリセロール、エチレングリコールモノチオグリコレート;
iii)メルカプトアミンおよび特にシステイン、
が挙げられる。
【0057】
上記すべての中で、1以上の親水性基を有する好ましい連鎖移動剤は、3−メルカプトプロピオン酸である。
好ましくは、CTAはアクロレインまたは(メタ)アクロレインではない。
【0058】
場合によっては、本発明の第1の観点で定義した成分iv)は、親水性基(言うまでもなく、連鎖移動基それ自体以外のもの)を有さない1以上の連鎖移動剤を含有することができる。これらは、単純に疎水性CTAとよぶことができる。存在する場合、好ましい“疎水性”CTAとしては、メルカプタン、例えば、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタンおよびt−テトラデシルメルカプタン、ブチル3−メルカプトプロピオネート;キサントゲンジスルフィド、例えば、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、およびジイソプロピルキサントゲンジスルフィド;チウラムジスルフィド、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、およびテトラブチルチウラムジスルフィド;ハロゲン化炭化水素、例えば、四塩化炭素および臭化エチレン;炭化水素、例えば、ペンタフェニルエタン;不飽和環状炭化水素化合物、例えば、2−エチルヘキシルチオグリコレート、テルピノレン、アルファテルピネン、ガンマテルピネン、ジテルペン、アルファメチルスチレン二量体、9,10−ジヒドロアントラセン、1,4−ジヒドロナフタレン、インデンおよび1,4−シクロヘキサジエン;不飽和複素環式化合物、例えば、キサンテンおよび2,5−ジヒドロフラン;コバルトキレート化合物;などが挙げられる。これらの疎水性連鎖移動剤は、単独、または少なくとも2種を混ぜたもの(admixture)の状態で、用いることができる。
【0059】
成分iv)において、1以上の親水性基を有するCTAの全モル数と親水性基を有さないすべてのCTAの全モル数との比は、1:1、より好ましくは5:1、特に10:1であることが好ましく、成分iv)が、1以上の親水性基を有するCTAのみを含むことが特に好ましい。このように、コポリマーに結合するCTAはすべて、親水性基を有するCTA基を提供する。ここでも、連鎖移動基は親水性基とみなさない。
【0060】
組成物中に用いる連鎖移動剤(1以上)の最適な全量は、存在するジ−および/または高級−エチレン性不飽和モノマーの量、それらが有するエチレン性不飽和基の数、およびそれらの反応性に依存する。用いる全連鎖移動剤(1以上)の最適な量は、実験的に、例えば、最初に連鎖移動剤(1以上)が存在しない組成物を重合した後、連鎖移動剤(1以上)の量を増大させて用いて重合を繰り返すことにより、決定することができる。ゲル化が起こらない点が、用いる連鎖移動剤(1以上)の最小量を示す。ゲル形成を確実に回避するために、この最小量より少し多い量を通常用いる。
【0061】
われわれの実験において、われわれは、近似式として、組成物中に存在する各ジ−または高級−エチレン性不飽和モノマー1モルあたりに用いる全連鎖移動剤(1以上)のモル数(MCTA)が、方程式:
CTA=y(n−1)
[式中:
nは、ジ−および高級−エチレン性不飽和モノマー中のエチレン性不飽和基の数であり;そして
yは、0.7〜6、より好ましくは0.7〜3、特に0.9〜2、もっとも特に約1である]
により与えられることを観察した。
【0062】
したがって、yが0.9〜2であると考えると、ジエチレン性不飽和モノマーの場合、ジエチレン性不飽和モノマー1モルあたり0.9〜2モルの連鎖移動剤を用いることができる。トリエチレン性不飽和モノマーの場合、トリエチレン性不飽和モノマー1モルあたり1.8〜4モルの連鎖移動剤を用いることができる。テトラエチレン性不飽和モノマーの場合、テトラエチレン性不飽和モノマー1モルあたり2.7〜6モルの連鎖移動剤を用いることができる。ジ−およびトリエチレン性不飽和モノマーの混合物の場合、上記のように各モノマーに必要な連鎖移動剤の量を計算し、その量を組成物に包含させる。簡単に言うと、例えば、ジ−または高級−エチレン性不飽和モノマー1モルあたり0.7(n−1)〜3(n−1)モル[ここにおいて、nは、ジ−または高級−エチレン性不飽和モノマー中のエチレン性不飽和基の数である]の連鎖移動剤を用いることができる。言うまでもなく、1より多くの連鎖移動剤を用いる場合、このモルでの全量は、CTAの全量が上記好ましい式に合致するという条件で、存在する異なるCTAにさまざまな形で分割することができる。
【0063】
該方程式は、硫黄含有CTA、特にチオール含有CTAでもっとも良く機能する。該方程式は、共重合組成物が(メタ)アクリレートモノマーを含む場合に特に良好に機能する。
【0064】
上記好ましい量で用いられる成分iv)のCTA(1以上)のすべてが、1以上の親水性基を有することが好ましい。
好ましい共重合組成物
好ましい共重合組成物は、
i)0〜45mol%、より好ましくは0〜20mol%、特に0〜5mol%のモノエチレン性不飽和親水性モノマー;
ii)50〜95mol%、より好ましくは50〜90mol%、特に50〜80mol%のモノエチレン性不飽和疎水性モノマー、
iii)5〜50mol%、より好ましくは10〜50mol%、特に20〜50mol%のジ−および/または高級エチレン性不飽和モノマー;
ここにおいて、mol%はすべてのモノマーi)〜iii)の全モル数に基づき、モノマーi)〜iii)のmol%の合計は100%である;ならびに
iv)ジ−または高級−エチレン性不飽和モノマー(1以上)1モルあたり0.7(n−1)〜3(n−1)モル[ここにおいて、nは、ジ−または高級−エチレン性不飽和モノマー(1以上)中のエチレン性不飽和基の数である]の全連鎖移動剤(1以上);ならびに、
v)成分i)〜iii)の合計重量に基づき0.1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%のラジカル開始剤(1以上)、
を含む。
【0065】
組成物は、言うまでもなく、成分i.〜v.に加え、さらなる構成成分(例えば希釈剤)を含有していてもよい。典型的には、上記成分を液体媒体に、例えば、1:1.5〜1:10、より好ましくは1:1.5〜1:4.0の成分i.〜v.と液体媒体の重量比で、溶解または分散させる。
【0066】
分散剤は、分散物の調製法で用いられる液体媒体のほか、粒状固体が用いられることになるあらゆる最終目的組成物(例えばインク)に用いられる液状ビヒクルに、適合するように選ぶことが好ましい。したがって、例えば、粒状固体を水性インクジェット印刷用インクに用いる場合、分散剤はかなりの割合の親水性基を有することが好ましい。同様に、粒状固体を油に基づく(非水性)インクに用いる場合、分散剤はかなりの量の疎水性基を有することが好ましい。
開始剤
分散剤を作製するために用いられる共重合組成物はさらに、開始剤、特にラジカル開始剤を含むことが好ましい。開始剤は、熱的に活性化することが好ましい。
【0067】
ラジカル開始剤の例としては、アゾ化合物、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル)ブタンニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、および2,2’−アゾビス[2−メチル−N−ヒドロキシエチル)]−プロピオンアミドが挙げられる。他の可溶性ラジカル開始剤を用いることもでき、その例としては、ペルオキシ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化水素、ならびにナトリウム、カリウムおよびアンモニウムの過硫酸塩が挙げられる。レドックス開始剤系を用いることもでき、その例としては、過硫酸アンモニウムとメタ重亜硫酸ナトリウムなどのレドックス対が挙げられる。
【0068】
開始剤は、共重合組成物中に存在するエチレン性不飽和モノマーの全量に基づき、重量基準で0.1〜15%、特に1〜10%、もっとも特に1〜5%の量で組成物中に存在することができる。より高レベルの連鎖移動剤を用いる場合、開始剤のレベルも上昇させることも場合によっては有利である。
好ましい分散剤
分散剤の酸価(AV)は、好ましくは50〜400mg、より好ましくは50〜200mg、特に50〜150mg KOH/gである。そのような酸価を有する分散剤は、とりわけ高い安定性および良好なODを示す分散物を結果としてもたらす。高い安定性は、インクジェット印刷に用いられ、粒状固体をより分散させにくい、要求の厳しい液状ビヒクルにおいて特に有用である。
【0069】
分散剤の分子量はばらつきが大きくてもよく、数平均分子量は、好ましくは500〜100000、より好ましくは1000〜50000、特に1000〜35000である。分子量は、三重検出(triple detection)ゲル透過クロマトグラフィー(“GPC”)により測定することが好ましい。分散剤は液体媒体に完全に溶解する必要はない。すなわち、完全に透明で散乱のない溶液は必須ではない。分散剤が界面活性剤様ミセル状に凝結して、液体媒体中にわずかに濁った溶液をもたらしてもよい。分散剤は、分散剤のいくらかの割合がコロイドまたはミセル相を形成する傾向があるようなものであってもよい。分散剤は、静置中に沈降または分離しない均一で安定な分散物を液体媒体中にもたらすことが好ましい。
【0070】
分散剤は液体媒体(特に水)に実質的に溶解して、透明または濁った溶液を生じさせることが好ましい。
分散剤中のイオン性基
分散剤がイオン性基を含む場合、それらは塩の形にあることが好ましい。酸性基の場合、好ましい塩としては、アルカリ金属、アンモニウムおよび有機アミン塩が挙げられる。カチオン性基の場合、好ましい塩としては、ハロゲン化物、硝酸塩および硫酸塩が挙げられる。分散剤は、カチオン性基を有さないことが好ましい。
【0071】
分散剤が酸性基(例えば、カルボキシおよび/またはスルホ基)を含む場合、該方法はさらに、そのような酸性基を例えばアルカリ金属塩(特に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)を用いて中和する段階を含むことが好ましい。
分散剤のLogP
分散剤は、好ましくは4.0以下、より好ましくは−1〜4.0、より好ましくは1.0〜4.0の計算LogPを有する。計算LogPは、本明細書中で参考として援用する国際公開WO2005/061087号の9頁35行〜10頁21行に記載されている方法により決定することができる。
分散剤の酸性基
分散剤は、1以上の酸性基を有することが好ましい。酸性基は、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、および特にカルボン酸であることが好ましい。分散剤中に存在する唯一の酸性基(1以上)がカルボン酸基(1以上)であることが好ましい。分散剤中に存在する唯一の親水性基がカルボン酸基であることが好ましい。
【0072】
分散剤を架橋剤で架橋する場合、分散剤は1分子あたり2以上のカルボン酸基を有することが好ましい。
カルボン酸基(1以上)は、遊離酸の形(−COOH)またはより好ましくは塩の形で分散剤中に存在することができる。塩は、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウム、置換アンモニウム、第四アンモニウム、またはピリジニウム塩であることができる。
【0073】
カルボン酸基(1以上)は、例えば、少なくとも1つのカルボン酸基を含有する成分i)の1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーを共重合することにより、分散剤中に組み込むことができるが、組み込まないことが好ましい。そのようなモノマーの例としては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、より好ましくは、メタクリル酸、アクリル酸およびベータカルボキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0074】
より好ましくは、分散剤中のカルボン酸基は、主にまたは独占的に、成分iv)にカルボン酸官能性連鎖移動剤を使用することにより組み込む。
分散剤は、他の安定化基を有していてもよい。安定化基の選択およびそのような基の量は、液体媒体の性質にかなりの程度依存する。安定化基は、事実上親水性であるか(例えば極性液体媒体の場合)、事実上疎水性である(例えば非極性液体媒体の場合)傾向がある。
【0075】
しかしながら、分散剤は親水性非イオン性基を有さないことが好ましい。親水性非イオン性基としては、存在しないことが好ましいが、ポリアルキレンオキシ(特にポリエチレンオキシ)およびヒドロキシ基が挙げられる。
所望による分散剤の沈殿
本方法はさらに、分散剤を非溶媒と混合して分散剤の沈殿を形成し、沈殿した分散剤を非溶媒から分離し、分離した分散剤を未使用の溶媒に加える段階を含んでいてもよい。このさらなる段階は、分散剤が粒状固体と接触する前に実施することが好ましい。場合によっては、非溶媒は非極性液体であり、溶媒は極性液体(例えば、水または水と1以上の水混和性有機液体の混合物)である。pH、電解質および低温により生じさせる沈殿など、分散剤を沈殿させる他の手段がある。
液体媒体
液体媒体は非極性であってもよいが、好ましくは極性を有する。“極性”液体媒体は一般に、例えば、Journal of Paint Technology,Vol.38,1966の269頁のCrowley et alによる “A Three Dimensional Approach to Solubility”という表題の論文に記載されているように、中程度ないし強い結合を形成することができる。極性液体媒体は一般に、上記論文で定義されているように、5以上の水素結合数を有する。
【0076】
適した極性液体媒体の例としては、エーテル、グリコール、アルコール、ポリオール、アミド、および特に水が挙げられる。
液体媒体は、水であるか水を含むことが好ましい。これは、水が、とりわけ安定で微細な分散物をもたらす傾向があるためである。したがって、好ましい液体媒体は水性である。液体媒体は、重量に基づき好ましくは1〜100%、より好ましくは10〜100%、特に30〜90%、さらに特に50〜90%の水を含む。残余分は、1以上の極性有機液体であることが好ましい。とりわけ好ましい極性有機液体は、2−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、ジプロピレングリコール、およびそれらの混合物である。
【0077】
液体媒体の成分のすべてが極性液体であることが好ましい。
液体媒体が1を超える液体を含む場合、前記液体媒体は、多相液体(例えば液−液エマルション)の形にあってもよいが、単相(均質)液体の形にあることが好ましい。
【0078】
水以外の極性液体は、水混和性であることが好ましい。
好ましい態様において、液体媒体は水および水混和性有機液体を含む。そのような液体媒体が好ましいのは、それが、機械的処理段階の効率を高め、粒状固体の平均粒径の低減を促進するためである。それは、より疎水性の分散剤を溶解するのにも役立つ。
【0079】
液体媒体に包含させるのに好ましい水混和性有機液体としては、C1−6−アルカノール、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;水混和性エーテル、好ましくは、テトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール、好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよびチオジグリコール、ならびに、オリゴ−およびポリ−アルキレングリコール、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくは、グリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)−エトキシ]−エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3−ジメチルイミダゾリドンが挙げられる。ケトン(例えば、メチルエチルケトンおよびアセトン)、アルデヒドおよび低分子量エステルも、水混和性有機液体として採用するのに適していることができる。
【0080】
液体媒体は、水および1以上、特に1〜3種の水混和性有機液体を含むことが好ましい。
液体媒体中に水と水混和性有機液体の両方が存在する場合、水と水混和性有機液体の重量比は、好ましくは99:1〜5:95、より好ましくは95:5〜50:50、特に95:5〜65:35である。
分散段階
粒状固体、液体媒体および分散剤は、任意の順序で、または同時に、分散させることができる。好ましくは、粒状固体を、分散剤を含む液体媒体に分散させる。
【0081】
分散段階は、粒状固体の粒径を小さくするための機械的処理により行う。粒径を小さくするための機械的処理は、大量のエネルギーを必要とする傾向がある。適した機械的処理の例としては、ボールミル粉砕、ビーズミル粉砕、グラベルミル粉砕(gravel milling)、あるいは、より精巧な技術、例えば、超音波処理、マイクロ流動化(MicrofluidicsTM機を用いる)、または流体力学的キャビテーションの使用(例えばCaviProTM機器を用いる)によるものが挙げられる。これらは、典型的にはミル粉砕法とよばれる。
【0082】
多くの場合、上記機械的処理の前に予備分散段階を、例えば、上記高エネルギー機械処理の前に攪拌、振とう、回転または混練を、追加的に採用することが好ましい。予備分散段階は粗大な予備分散物を形成し、分散物の粒径の低減にはほとんどまたは無視しうる程度にしか効果を有さない。
【0083】
機械的処理プロセスの後、粒状分散物の体積平均粒径は、好ましくは50〜300nm、より好ましくは50〜250nm、特に50〜200nmである。体積平均粒径は、任意の適した方法により測定することができる。好ましい方法としては、レーザー散乱、光子相関分光法、ディスク遠心光沈降法(disc centrifuge photosedimentometry)、および透過型電子顕微鏡法が挙げられる。
分散物の後処理
望ましい場合、分散物を濾過または遠心分離して、十分に分散していないかサイズが大きすぎるあらゆる粒状材料を除去することができる。これは、インクへの配合または所望による架橋の前に行うことができる。とりわけ、本方法は、分散剤、粒状固体および液体媒体を含む混合物を、好ましくは10ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満、特に1ミクロン未満の孔径を有するフィルターに通して濾過することを含むことが好ましい(好ましくは、架橋を実施する場合は架橋前に)。
【0084】
分散物を、例えば、クロスフロー膜処理、フィルター洗浄または遠心分離およびデカンテーションにより精製してもよい。このようにして、塩および遊離分散剤の量を低減することができる。
封入粒状固体
本発明の第1の観点に従った方法はさらに、粒状固体および液体媒体の存在下で分散剤を架橋剤で架橋し、これにより粒状固体を架橋分散剤内に封入する段階を含むことが好ましい。これにより、とりわけ、改善したコロイド安定性を例えば貯蔵、熱および水混和性有機液体に対し有する、封入粒状固体が得られる。
【0085】
したがって、本発明の第2の観点に従って、本発明の第1の方法により得ることができる、または得た封入粒状固体であって、該方法がさらに、粒状固体および液体媒体の存在下で分散剤を架橋剤で架橋し、これにより粒状固体を架橋分散剤内に封入する段階を含む、前記封入粒状固体を提供する。
【0086】
封入固体は、液体媒体中の分散物の形にあることができる。あるいは、封入固体は、例えばオーブン乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などにより、液体媒体から単離することができる。
【0087】
分散剤を架橋する場合、比較的安定な分散物が形成するように、架橋前に粒状固体上に分散剤を吸着させることが好ましい。これに加えて、粒径を小さくする機械的処理を、分散剤を架橋する前に実施することが好ましい。その後、この分散物を、架橋剤を用いて、好ましくはボレート化合物の存在下で架橋する。この予備吸着および予備安定化は、コアセルベーションのアプローチとは異なる。コアセルベーションのアプローチでは、ポリマーまたはプレポリマー(分散剤ではない)を粒状固体、液体媒体および架橋剤と混合し、架橋中または架橋後にのみ、結果として生じる架橋ポリマーが粒状固体上に沈殿する。
【0088】
架橋剤は、分散剤分子を架橋することができるならば、あらゆる適した種類のものであることができる。分散剤がカルボン酸基を含有する場合、好ましい架橋剤としては、イソシアネート、オキサゾリン、アジリジン、カルボジイミド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、および特にエポキシド架橋剤が挙げられる。架橋剤は、2以上の架橋性基を有することができる。好ましい架橋剤は、2〜10、特に2〜5の架橋性基を有する。
【0089】
架橋剤は、オリゴマー分散性基を含有していても含有していなくてもよい。
存在する場合、オリゴマー分散性基は、好ましくはポリアルキレンオキシド、より好ましくはポリC2−4−アルキレンオキシド、特にポリエチレンオキシドであるか、これを含む。ポリアルキレンオキシド基は、結果として生じる封入粒状固体の安定性を改善する立体安定化をもたらす。
【0090】
ポリアルキレンオキシドは、好ましくは3〜200、より好ましくは5〜50のアルキレンオキシド、特に5〜20のアルキレンオキシド反復単位を含有する。
架橋剤および分散剤に包含させることができる反応性および反応しうる基の対は、それぞれ、本明細書中で参考として援用する国際特許出願WO2005/061087号の6頁、表1に開示されているとおりである。分散剤は2以上のカルボン酸基を有し、架橋剤は2以上のエポキシ基を有することが好ましい。
【0091】
2つのエポキシ基を有しオリゴマー分散性基を有さない好ましい架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、およびポリブタジエンジグリシジルエーテルである。
【0092】
2つのエポキシ基を有し1以上のオリゴマー分散性基を有する好ましい架橋剤は、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、およびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0093】
3以上のエポキシ基を有しオリゴマー分散性基を有さない好ましい架橋剤は、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルである。
【0094】
ポリマー架橋剤の好ましい例は、グリシジル(メタ)アクリレート反復単位を含むコポリマーである。
架橋剤は、特に液体媒体が水性である場合、液体媒体に溶解することが好ましい。水溶性に関する試験およびその測定は、モノマーに関し上記したとおりである。
【0095】
より好ましくは、架橋剤は25℃において少なくとも1重量%の水溶性を有する。
架橋剤は、架橋剤の可溶化を促進するために、1以上のエチレングリコール基を有することができる。
【0096】
1、または1より多くの架橋剤を本方法に用いることができる。1より多くの架橋剤を用いる場合、これらは同じまたは異なる数の架橋性基を有することができる。
架橋剤上に存在する唯一の架橋性基がエポキシ基であることが好ましい。
【0097】
カルボン酸基(1以上)は、分散剤中に存在する場合、架橋剤中のカルボン酸基に対し反応性を示す基(例えば、エポキシ、イソシアネート、オキサゾリン、アジリジン、カルボジイミド、N−メチロール基)と架橋するために用いられることができる。これに加えて、未反応カルボン酸基は、凝集および凝結に対する最終封入粒状固体の安定化を補助することができる。カルボン酸基は、極性媒体、さらに特に水性媒体中で、安定化基として有効である。
【0098】
カルボン酸基(1以上)が、液体媒体中に分散している最終封入粒状固体を安定化するための唯一の基であり、架橋剤がエポキシ基を有する場合、架橋反応が終了した後に未反応カルボン酸基が確実に残るように、エポキシ基に対しモル過剰のカルボン酸基を有することが好ましい。一態様において、カルボン酸基のモルとエポキシ基のモルとの比は、好ましくは10:1〜1.1:1、より好ましくは5:1〜1.1:1、特に好ましくは3:1〜1.1:1である。
【0099】
液体媒体中の粒状固体の凝集および粒径成長のレベルがより低くなるので、架橋には低い温度が好ましい。架橋反応は、好ましくは100℃未満、例えば10℃〜90℃、より好ましくは30℃〜70℃の温度で実施する。
【0100】
実施する場合、架橋反応でのpHは、好ましくは少なくとも6、例えば7〜14、より好ましくは7〜12、特に好ましくは8〜11である。
架橋反応が開始する前に、分散剤中の酸性基は、本明細書中で先に記載したように、塩および/または遊離酸の形にあることができる。しかしながら、100℃未満の温度において酸性基と例えば架橋剤中のエポキシ基との反応をより良好に生じさせるためには、カルボン酸基の少なくとも一部が塩の形で存在することが好ましい。塩の形は、架橋前にpH(本発明の第1の観点に従った方法に存在するすべての成分の)を少なくとも6(好ましくは6〜10)に調整することにより得ることができる。
【0101】
pHの調整は、任意の適した塩基を加えることにより行うことができる。好ましい塩基としては、金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩のほか、アミン、置換アミンおよびアルカノールアミンが挙げられる。特に好ましい塩基は、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエチルアミンおよびトリエタノールアミンである。特に好ましいアルカリ金属の水酸化物は水酸化カリウムである。
【0102】
架橋反応の時間は、温度とpHにある程度依存する。しかしながら、好ましい時間は1〜24時間、より好ましくは1〜8時間である。
架橋は、粒状固体、分散剤、架橋剤、液体媒体を混合し、該混合物を加熱することを含む方法により実施することが好ましい。
【0103】
それらの成分は、任意の適した方法、例えば、振とう、攪拌などにより混合することができる。
架橋は、以下の成分を特定の割合で含む組成物を混合することを含む方法により実施することが好ましい:
a)30〜99.7部、好ましくは50〜97部の液体媒体;
b)0.1〜50部、好ましくは1〜30部の粒状固体;
c)0.1〜30部、好ましくは1〜30部の分散剤;
d)0.001〜30部、好ましくは0.01〜10部の架橋剤;
ここにおいて、部は重量に基づき、部の合計a)+b)+c)+d)=100である。
【0104】
該組成物は、架橋剤中のエポキシ基(存在する場合)1モルあたり好ましくは0〜4、より好ましくは0から3モル当量のホウ酸またはボレート化合物を含有する。例えば、組成物が1モルのジエポキシド架橋剤を含有する場合、架橋剤中のエポキシ基1モルあたり4モル当量のホウ酸/ボレート化合物という要件を満たすために、8モルのホウ酸/ボレート化合物が必要になる。組成物がエポキシ架橋剤を含有していない場合、ホウ酸/ボレート化合物は存在しないことが好ましい。
【0105】
粒状固体の機械的処理中に架橋剤が存在する場合、これが、固体の粒径が十分に小さくなる前に分散物の望ましくない予備架橋を引き起こす可能性がある。
封入粒状固体は、好ましくは50〜300nm、より好ましくは50〜250nm、特に50〜200nmの体積平均粒径を有する。従来、300nm未満の体積平均径を有する粒状固体は効果的に安定化することが難しい。
【0106】
このサイズの粒状固体は、インク、特にインクジェット印刷用インクにとりわけ有用である。
架橋後、封入粒状固体の分散物を、例えば、クロスフロー膜処理、フィルター洗浄または遠心分離およびデカンテーションにより精製することができる。精製は、クロスフロー限外濾過によることが好ましい。このようにして、塩、遊離分散剤、および残存する架橋剤の量を低減することができる。
使用および用途
本発明の第1の観点に従った方法により調製される分散物および封入粒状固体は、“そのままで”インクとして用いることができ、または、より一般には、望ましい性質を有するインクを提供するために、該分散物を1以上のさらなる構成成分と混合する。分散物をインクに変える前に、分散剤中のあらゆる酸性基を中和することが好ましい。
【0107】
さらなるインク構成成分としては、水、有機液体(特に水混和性有機液体)、界面活性剤(特にSurfynolTM界面活性剤)、バインダー、防腐剤、しわ防止剤、コゲーション防止剤、金属キレート化剤、殺生物剤、およびインク配合物に用いられる他の構成成分が挙げられる。用いられる有機液体は、インクジェット印刷用インクの技術分野で用いられているものであることが好ましい。
【0108】
したがって、本方法は、1以上の上記さらなるインク構成成分を加える段階を追加的に含むことができる。通常、これらの構成成分の添加は、機械的処理段階の後に行われる。
本発明の第3の観点に従って、本発明の第2の観点に従った封入粒状固体と液体媒体とを含有するインクを提供する。
【0109】
本発明の第3の観点に従った好ましいインクは、以下を含む:
a)本発明の第2の観点に従った封入粒状固体を0.1〜40部、より好ましくは1〜25部、特に1〜15部;および
b)水および/または水混和性有機液体を含む液体媒体を60〜99.9部、より好ましくは75〜99部、特に85〜99部、
ここにおいて、すべての部は重量に基づき、成分a)およびb)は合計100部になる。
インクジェット印刷用インク
インクは、インクジェット印刷機での使用に適していることが好ましい。
【0110】
インクジェット印刷の場合、インクは、25℃の温度で測定して、好ましくは30mPa.s未満、より好ましくは20mPa.s未満、特に10mPa.s未満の粘度を有する。
【0111】
インクジェット印刷の場合、インクは、25℃の温度で測定して、20〜65ダイン/cm、より好ましくは25〜50ダイン/cmの表面張力を有することが好ましい。
インクは、本明細書中で先に言及し先に選んだように、少なくとも1つの水混和性有機液体を含有することが好ましい。
【0112】
インクは、低分子量の塩を除去するために精製してあることが好ましい。適した精製法の例としては、限外濾過、イオン交換ビーズでの処理、透析などが挙げられる。
カートリッジ
本発明の第4の観点に従って、チャンバーと本発明の第3の観点に従ったインクとを含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、前記インクが該チャンバー内に存在するものを提供する。
インクジェット印刷法
本発明の第5の観点に従って、基材上に像を印刷するためのインクジェット印刷法であって、本発明の第3の観点に従ったインクを基材に施用することを含む方法を提供する。
基材
本発明の第6の観点に従って、本発明の第3の観点に従ったインクで印刷された基材を提供する。
【0113】
好ましい基材は、紙、例えば、酸性、アルカリ性または中性の性質を有することができる普通紙または処理紙、特に光沢のある基材である。市販の紙の例は、本明細書中で参考として援用する国際特許出願WO2007/148035号の13頁、24行〜37行の最後までに記載されているとおりである。
【実施例】
【0114】
本発明を以下の実施例によりさらに例示する。ここにおいて、すべての部および百分率は、特記しない限り重量に基づく。
ポリマー分散剤の合成
1.1 分散剤溶液1(D1)の調製
共重合組成物を、成分ii)メタクリル酸ベンジル(15.0g、85.1ミリモル)、成分iii)ジビニルベンゼン(2.7g、20.4ミリモル)および成分iv)3−メルカプトプロピオン酸(2.2g、20.4ミリモル)を混合することにより調製した。その後、該共重合組成物をイソプロピルアルコール(50.1g)およびジプロピレングリコール(30.0g)の液体混合物に溶解して20%w/w溶液を得、これを反応器に入れた。
【0115】
その後、熱開始剤Trigonox 21S(0.20g)を反応器内容物に加え、温度を85℃で維持しつつ4時間にわたり該内容物を継続的に攪拌した。反応は、始めから終わりまで窒素ガス雰囲気を用いて実施した。
【0116】
その後、2回目の分量の熱開始剤Trigonox 21S(0.20g)を加え、窒素ガス雰囲気をやはり使用して、85℃の温度でさらに4時間にわたり重合を継続させた。これらの段階によりエチレン性不飽和モノマーを重合して、ポリマー分散剤(D1)を希釈溶液の形で調製した。
【0117】
その後、反応器内容物を25℃の温度まで冷却し、ロータリーエバポレーターのフラスコに注ぎ入れ、ポリマー分散剤(D1)を約40%w/wの固形分まで蒸発濃縮した。DMF溶媒およびポリスチレン標準液を用いてゲル透過クロマトグラフィーにより測定したポリマー分散剤(D1)の分子量は、Mnが13357でMwが65479であった。このようにして、段階1.1によりポリマー分散剤溶液(D1)の調製物を得た。
1.2 中和分散剤溶液1(ND1)の調製
上記1.1で調製したポリマー分散剤溶液(D1)(50.1g)を、水酸化カリウム(0.92g)および水(86.7g)を含有する溶液の添加により中和した。これにより、固形分15重量%の中和分散剤溶液(ND1)を調製した。
2.1 分散剤溶液2(D2)の調製
共重合組成物を、成分ii)メタクリル酸ベンジル(15.0g、85.1ミリモル)、成分iii)ジビニルベンゼン(4.7g、35.8ミリモル)および成分iv)3−メルカプトプロピオン酸(3.8g、35.8ミリモル)を混合することにより調製した。その後、該共重合組成物をイソプロピルアルコール(59.2g)およびジプロピレングリコール(35.5g)の液体混合物に溶解して20%w/w溶液を得、これを反応器に入れた。
【0118】
その後、熱開始剤Trigonox 21S(0.23g)を反応器内容物に加え、温度を85℃で維持しつつ4時間にわたり該内容物を継続的に攪拌した。反応は、始めから終わりまで窒素ガス雰囲気を用いて実施した。
【0119】
その後、2回目の分量の熱開始剤Trigonox 21S(0.23g)を加え、窒素ガス雰囲気をやはり使用して、85℃の温度でさらに4時間にわたり重合を継続させた。これらの段階によりエチレン性不飽和モノマーを重合して、ポリマー分散剤(D2)を希釈溶液の形で調製した。
【0120】
その後、反応器内容物を25℃の温度まで冷却し、ロータリーエバポレーターのフラスコに注ぎ入れ、ポリマー分散剤(D2)を約40%w/wの固形分まで蒸発濃縮した。DMF溶媒およびポリスチレン標準液を用いてゲル透過クロマトグラフィーにより測定したポリマー分散剤(D2)の分子量は、Mnが11393でMwが28497であった。このようにして、段階2.1によりポリマー分散剤溶液(D2)の調製物を得た。
2.2 中和分散剤溶液2(ND2)の調製
上記2.1で調製したポリマー分散剤溶液(D2)(59.2g)を、水酸化カリウム(1.61g)および水(104.3g)を含有する溶液の添加により中和した。これにより、固形分15重量%の中和分散剤溶液(ND2)を調製した。
3.1 分散剤溶液3(D3)の調製
共重合組成物を、成分ii)メタクリル酸ベンジル(12.0g、68.1ミリモル)、成分iii)ジビニルベンゼン(6.2g、47.7ミリモル)および成分iv)3−メルカプトプロピオン酸(5.1g、47.7ミリモル)を混合することにより調製した。その後、該共重合組成物をイソプロピルアルコール(58.7g)およびジプロピレングリコール(35.2g)の液体混合物に溶解して20%w/w溶液を得、これを反応器に入れた。
【0121】
その後、熱開始剤Trigonox 21S(0.23g)を反応器内容物に加え、温度を85℃で維持しつつ4時間にわたり該内容物を継続的に攪拌した。反応は、始めから終わりまで窒素ガス雰囲気を用いて実施した。
【0122】
その後、2回目の分量の熱開始剤Trigonox 21S(0.23g)を加え、窒素ガス雰囲気をやはり使用して、85℃の温度でさらに4時間にわたり重合を継続させた。これらの段階によりエチレン性不飽和モノマーを重合して、ポリマー分散剤(D3)を希釈溶液の形で調製した。
【0123】
その後、反応器内容物を25℃の温度まで冷却し、ロータリーエバポレーターのフラスコに注ぎ入れ、ポリマー分散剤(D3)を約40%w/wの固形分まで蒸発濃縮した。DMF溶媒およびポリスチレン標準液を用いてゲル透過クロマトグラフィーにより測定したポリマー分散剤(D3)の分子量は、Mnが9215でMwが17938であった。このようにして、段階3.1によりポリマー分散剤溶液(D3)の調製物を得た。
3.2 中和分散剤溶液3(ND3)の調製
上記3.1で調製したポリマー分散剤溶液(D3)(58.7g)を、水酸化カリウム(2.14g)および水(105.5g)を含有する溶液の添加により中和した。これにより、固形分15重量%の中和分散剤溶液(ND3)を調製した。
4.1 分散剤溶液(D4)の調製
共重合組成物を、成分ii)メタクリル酸ベンジル(7.0g、39.7ミリモル)、成分i)4−ビニルフェニルボロン酸(5.4g、36.7ミリモル)、成分iii)ジビニルベンゼン(3.8g、29.0ミリモル)および成分iv)3−メルカプトプロピオン酸(3.1g、29.0ミリモル)を混合することにより調製した。その後、該共重合組成物をイソプロピルアルコール(48.7g)およびジプロピレングリコール(29.2g)の液体混合物に溶解して20%w/w溶液を得、これを反応器に入れた。
【0124】
その後、熱開始剤Trigonox 21S(0.19g)を反応器内容物に加え、温度を85℃で維持しつつ4時間にわたり該内容物を継続的に攪拌した。反応は、始めから終わりまで窒素ガス雰囲気を用いて実施した。
【0125】
その後、2回目の分量の熱開始剤Trigonox 21S(0.19g)を加え、窒素ガス雰囲気をやはり使用して、85℃の温度でさらに4時間にわたり重合を継続させた。これらの段階によりエチレン性不飽和モノマーを重合して、ポリマー分散剤(D4)を希釈溶液の形で調製した。
【0126】
その後、反応器内容物を25℃の温度まで冷却し、ロータリーエバポレーターのフラスコに注ぎ入れ、ポリマー分散剤(D4)を約40%w/wの固形分まで蒸発濃縮した。ポリマー分散剤(D4)の分子量は、該ポリマーがGPC溶離液に溶解しなかったので、測定できなかった。このようにして、段階4.1によりポリマー分散剤溶液(D4)の調製物を得た。
4.2 中和分散剤溶液4(ND4)の調製
上記4.1で調製したポリマー分散剤溶液(D4)(48.7g)を、水酸化カリウム(1.30g)および水(85.8g)を含有する溶液の添加により中和した。これにより、固形分15重量%の中和分散剤溶液(ND4)を調製した。
5.1 比較ポリマー分散剤溶液(CD1)の調製
共重合組成物を、成分ii)メタクリル酸ベンジル(18.2g、103.3ミリモル)、成分i)メタクリル酸(5.0g、58.1ミリモル)、および連鎖移動剤ブチル3−メルカプトプロピオネート(0.21g、1.3ミリモル)を混合することにより調製した。これは、用いたCTAのいずれも親水性基を有していないので、比較例とした。その後、該共重合組成物をイソプロピルアルコール(59.1g)およびジプロピレングリコール(35.5g)の液体混合物に溶解して20%w/w溶液を得、これを反応器に入れた。
【0127】
その後、熱開始剤Trigonox 21S(0.21g)を反応器内容物に加え、温度を85℃で維持しつつ4時間にわたり該内容物を継続的に攪拌した。反応は、始めから終わりまで窒素ガス雰囲気を用いて実施した。
【0128】
その後、2回目の分量の熱開始剤Trigonox 21S(0.21g)を加え、窒素ガス雰囲気をやはり使用して、85℃の温度でさらに4時間にわたり重合を継続させた。これらの段階によりエチレン性不飽和モノマーを重合して、比較ポリマー分散剤(CD1)を希釈溶液の形で調製した。
【0129】
その後、反応器内容物を25℃の温度まで冷却し、ロータリーエバポレーターのフラスコに注ぎ入れ、比較ポリマー分散剤(CD1)を約40%w/wの固形分まで蒸発濃縮した。DMF溶媒およびポリスチレン標準液を用いてゲル透過クロマトグラフィーにより測定した比較ポリマー分散剤(CD1)の分子量は、Mnが36378でMwが60860であった。このようにして、段階5.1により比較ポリマー分散剤溶液(CD1)の調製物を得た。
5.2 中和比較分散剤溶液1(NCD1)の調製
上記5.1で調製した比較ポリマー分散剤溶液(CD1)(59.1g)を、水酸化カリウム(2.61g)および水(107.7g)を含有する溶液の添加により中和した。これにより、固形分15重量%の中和比較分散剤溶液(NCD1)を調製した。
6. 顔料分散物の調製
顔料分散物PD1〜PD4および比較顔料分散物CPD1を、以下の一般的方法を用いて中和分散剤ND1〜ND4およびNCD1から調製した:
シアン顔料(Dainichiseika color and chemicals mfg co ltdからのTRB2)(15部)を中和分散剤溶液(例えばND1)(50部)および脱イオン水(35部)と混合した。その後、該混合物を分散させて、予備分散物を形成した。その後、該予備分散物を、平坦な先端を有する1.25cmのタップドホーン(tapped horn)を取り付けたBranson Digital S450D Ultrasonifierに入れた。予備分散物を、氷浴を用いて冷却し、振幅60%で機械的処理を行って、NanotracTM計測器により測定して150nm未満のMV平均粒径を有する顔料分散物を結果として得た。
7. 封入顔料分散物の調製
顔料分散物(PD1)(98.6部)を、エポキシ架橋剤DenacolTM EX321(0.18g)および6.18重量%のホウ酸水溶液(1.23g)と混合し、60℃で24時間攪拌して、架橋反応を完了させた。これにより、封入顔料分散物(EPD1)を得た。
8. インク1〜4、1A、および比較インク1
インク1〜4(PD1〜4を含有する)、インク1A(EPD1を含有する)、および比較インク1(CPD1を含有する)を、密封ボトルをローラー上で30分間回転させることにより調製した。ここにおいて、各ボトルは以下の構成成分を含有していた:
i)段階(6)からの顔料分散物または段階(7)からの封入顔料分散物(26.67部)、および水(45.83部);ならびに
ii)2−ピロリドン(3部)、グリセロール(15部)、1,2−ヘキサンジオール(4部)、エチレングリコール(5部)およびSurfynolTM465(0.5部、Air Productsから得た)を含む有機液体混合物(27.5部)。
9. インクジェット印刷および印刷試験
実施例のインク1〜4、1Aおよび比較インク1を、IJ印刷機を用いてCanon GF500インクジェット用普通紙に施用し、そのまま乾燥させた後、Gretag Macbeth Spectrolino分光光度計を用いて反射率光学濃度(ROD)を測定した。
10. 印刷結果
表1に、C(シアン)顔料分散物の反射率光学濃度(ROD)をまとめる。
【0130】
【表1】

【0131】
同様の結果が、他の紙でも見いだされた。
本発明の第1の観点に従った方法から得たインクは、いずれのCTAも親水性基を有さない共重合組成物から分散剤を得た類似の顔料分散物と比較して、著しく高いRODを有することが、容易にわかった。
さらなるインク
表IおよびIIに記載したさらなるインクを調製することができる。ここにおいて、顔料分散物PD1〜PD4およびEPD1は先に定義したとおりであり、インク添加剤は以下に定義するとおりである。第2列以降に挙げた数字は当該構成成分の部数をさし、すべての部は重量に基づく。インクは、サーマル、圧電式またはMemjetインクジェット印刷により紙に施用することができる。
【0132】
以下の略語を表IおよびIIに用いる:
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N−メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P=2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン−1,2−ジオール
BDL=ブタン−2,3−ジオール
Surf=AirproductsからのSurfynolTM465
PHO=NaHPO
TBT=第三ブタノール
TDG=チオジグリコール
GLY=グリセロール
nBDPG=ジプロピレングリコールのモノ−n−ブチルエーテル
nBDEG=ジエチレングリコールのモノ−n−ブチルエーテル
nBTEG=トリエチレングリコールのモノ−n−ブチルエーテル
PD=顔料分散物
【0133】
【表2】

【0134】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状固体の分散物を調製するための方法であって、
粒状固体を分散剤および液体媒体と一緒に分散させる
ことを含む方法、
ここにおいて、
該分散剤は、
i)所望により1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマー、
ii)1以上のモノエチレン性不飽和疎水性モノマー、
iii)1以上のジ−および/または高級−エチレン性不飽和モノマー、ならびに
iv)1以上の連鎖移動剤、これに関し、連鎖移動剤の少なくとも1つは1以上の親水性基を有する、
を含む組成物の共重合から得た、または得ることができるランダムコポリマーであり;
該分散段階は、粒状固体の粒径を小さくする機械的処理により行われ;
ただし、
A)分散剤共重合組成物が1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーを成分i)とし含む場合;および
B)成分iv)の連鎖移動剤(1以上)のいずれかが、3−メルカプトプロピオン酸、アクロレインまたはメタクロレインである場合;
そのような場合、モルで表した成分i)の1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーのすべてにおける全親水性基と、モルで表した成分iv)のすべての連鎖移動剤における親水性基の全量との比は、5未満:1であるという条件が付く。
【請求項2】
モルで表した成分i)の1以上のモノエチレン性不飽和親水性モノマーのすべてにおける全親水性基と、モルで表した成分iv)のすべての連鎖移動剤における親水性基の全量との比が5未満:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分散剤中に存在する全親水性基の少なくとも20mol%が連鎖移動剤基に付着しており、前記連鎖移動基が分散剤に付着している、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
共重合組成物が成分i)を含有せず、結果として生じる分散剤が、連鎖移動剤基を介して分散剤に付着している親水性基のみを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
成分iii)が10〜50mol%で存在し、mol%が、成分i)〜iii)に存在するすべてのモノマーの全モル数に基づく、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
成分iii)が高級エチレン性不飽和モノマーを含有しない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
成分iii)がジビニルベンゼンおよび/またはジウレタンジ(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
成分ii)がベンジル(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
分散剤が50〜200mg KOH/分散剤1gの酸価を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分散剤が1〜4の計算LogPを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
分散剤が親水性非イオン性基を有さない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
分散剤中に存在する唯一の親水性基がカルボン酸基である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
粒状固体がカーボンブラックまたは有機顔料である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
存在する場合、成分i)が(メタ)アクリル酸を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
共重合組成物が、
i)0〜45mol%のモノエチレン性不飽和親水性モノマー(1以上);
ii)50〜95mol%のモノエチレン性不飽和疎水性モノマー(1以上)、
iii)5〜50mol%のジ−および/または高級エチレン性不飽和モノマー(1以上);
ここにおいて、mol%はすべてのモノマーi)〜iii)の全モル数に基づき、モノマーi)〜iii)のmol%の合計は100%である;ならびに
iv)ジ−または高級−エチレン性不飽和モノマー(1以上)1モルあたり0.7(n−1)〜3(n−1)モル[ここにおいて、nは、ジ−または高級−エチレン性不飽和モノマー(1以上)中のエチレン性不飽和基の数である]の全連鎖移動剤(1以上);ならびに、
v)成分i)〜iii)の合計重量に基づき0.1〜15重量%のラジカル開始剤(1以上)、
を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
さらに、粒状固体および液体媒体の存在下で分散剤を架橋剤で架橋し、これにより粒状固体を架橋分散剤内に封入する段階を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法により得た、または得ることができる封入粒状固体。
【請求項18】
請求項17に記載の封入粒状固体と液体媒体とを含むインク。
【請求項19】
チャンバーとインクを含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、該インクが該チャンバー内に存在し、該インクが請求項18に記載のものである、前記インクジェット印刷機用カートリッジ。
【請求項20】
基材上に像を印刷するためのインクジェット印刷法であって、請求項18に記載のインクを基材に施用することを含む方法。
【請求項21】
請求項18に記載のインクで印刷された基材。

【公表番号】特表2013−512325(P2013−512325A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541576(P2012−541576)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051854
【国際公開番号】WO2011/067580
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】