説明

粒状物の分級装置

【課題】 粒状物を気流によって分選網側に供給し、この分選網によって粗粒子と細粒子とにふるい分けする際に、分選網の中央部に集中的に流突する多量の粒状物によって分選網が磨滅、損傷するのを防止する。
【解決手段】
中空ケーシング1内に張設した分選網2の前面中央部に流突板12を取り付けておき、中空ケーシング1の前面側から導入管3を通じて中空ケーシング1の中央部に向かって気流と共に導入される粒状物を中空ケーシング1内で拡散させながら分選網2によって分選する際に、導入管3の開口端に対面する分選網2の中央部に向かう多量の粒状物を上記流突板12によって受止して分選網2の中央部の磨滅、損傷を防止し、長期の使用に供するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子や無機粒子などの粒状物を気流によって分選網側に送り込み、この分選網によって粗粒子と細粒子とにふるい分ける粒状物の分級装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂粒子や無機粒子等の粒状物を所望の粒径にふるい分けする分級装置としては、例えば、特許文献1に記載されているように、内部に分選網を張設している中空ケーシングの前部中央に、粒状物をこの中空ケーシング内に送り込む上流側管路を設けると共に、中空ケーシングの後部、即ち、下流側に、吸引ブロワに連結、連通した下流側管路を設け、上記吸引ブロワの吸気力によって上流側管路に中空ケーシング内に向かう気流を発生させ、この気流によって粒状物を中空ケーシング内に導入して分選網によりこの分選網を通過する細粒子と通過しない粗粒子とにふるい分け、通過した細粒子を下流側管路を通じてサイクロン等を介して回収する一方、通過しない粗粒子を落下させると共に分選網の後面側からのエアの吹き付けによって分選網に付着した粗粒子を分選網から脱落させて排出管路を通じて回収するように構成した分級装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2には、上記特許文献1に記載の分級装置において、中空ケーシングの前部中央部内に、導入口の開口端に臨ませて、粒状物を中空ケーシンドの中央部側から外周方向に拡散させる円錐形状の拡散部材を配設した構造を有する粒子ふるい装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−263713号公報
【特許文献2】特開昭53−40469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された分級装置によれば、下流側管路から中空ケーシング内に流入する粒状物が、この中空ケーシング内で径方向に均一に分散することなく、下流側管路に対向している分選網の中央部に向かって多量の粒状物が集中的に流動し、分選網の中央部に流突してその網部分の磨滅が早くなり、短期間で破損に至るといった問題点があった。このように分選網が破損すると、当然のことながら粒状物を粗粒子と細粒子とに正確にふるい分けすべき操作ができなくなり、細粒子側に粗粒子が混入してしまい、目的とする製品が得られなくなる。そのため、定期的に分選網を点検し、安全を期して破損に至る時間的な余裕をかなり多くみて分選網を交換しなければならなかった。
【0006】
一方、特許文献2に記載された粒子ふるい装置によれば、中空ケーシングの前部中央部内に、導入口の開口端に臨ませて、粒状物を中空ケーシングの中央部側から外周方向に拡散させる円錐形状の拡散部材を配設しているので、この拡散部材によって粒状物を一旦、中空ケーシングの外周方向に分散させることができるが、吸引ブロワの吸気力によって拡散部材の背面側に負圧が発生しているため、粒状物を運ぶ気流が拡散部材を通過した際に、この負圧によって拡散部材の背面側に巻き込まれるように流動する乱流となり、拡散部材によって一旦、拡散した粒状物が再び中央部に向かって集束するように流動して上記同様に分選網の中央部に集中的に流突し、その網部分が短期間で磨滅、破損するといった問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、分級時に分選網の中央部に向かって集中的に流突する粒状物による磨滅、破損を防止して長期間に亘り精度のよいふるい分けを行うことができる粒状物の分級装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の粒状物の分級装置は、請求項1に記載したように、内部に分選網を張設した中空ケーシングの前部中央に分選網に向かって粒状物を導入する導入管を連結、連通させていると共に中空ケーシングの後部に吸引手段を配設してあり、この吸引手段による吸気力によって上記導入管内を通じて中空ケーシング内に導入される粒状物を上記分選網によってふるい分けするように構成した分級装置において、上記導入管の開口端に対面する分選網の前面中央部に粒状物流突板を取り付けていることを特徴とする。
【0009】
このように構成した粒状物の分級装置において、請求項2に係る発明は、粒状物流突板は導入管の内径の1.5〜2.5倍の直径を有する円板からなると共に、分選網の直径を粒状物流突板の2〜3倍に形成していることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3に係る発明は、上記中空ケーシングの前部中央部内に導入管の開口端に臨ませて、粒状物を中空ケーシンドの中央部側から外周方向に拡散させる外周面が前端から後端に向かって拡径した拡散部材を配設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、中空ケーシングの前部中央にこの中空ケーシング内に張設した分選網に向かって粒状物を導入する導入管を設けていると共に中空ケーシングの後部に吸引手段を配設してあり、この吸引手段による吸気力によって上記導入管を通じて中空ケーシング内に導入される粒状物を上記分選網によってふるい分けするように構成した分級装置において、上記導入管の開口端に対面する分選網の前面中央部に粒状物流突板を取り付けているので、導入管の開口端からこの導入管に対面した分選網の中央部に向かって供給される多量の粒状物を分選網の前面中央部に取り付けている上記粒状物流突板に流突させて分選網に直接、流突するのを防止することができ、従って、分選網の中央部に向かって流動する多量の粒状物による分選網の磨滅や損傷をなくして長期の使用に供することができると共に、流突板の前面に流突した粒状物をこの流突板の全面に沿って移動させて周囲の網部分により確実にふるい分けすることができ、粒状物の分級効率を確保することができる。
【0012】
さらに、請求項2に係る発明によれば、上記粒状物の流突板は、導入管の内径の1.5〜2.5倍の直径を有する円板からなるものであるから、気流と共に導入管の開口端から中空ケーシング内に流入する多量の粒状物のうち、中空ケーシングの径方向に拡散する粒状物は流突板により遮られることなくこの流突板の外周方に露出している分選網の広い外周部分によって確実に且つ効率よくふるい分けすることができると共に、分選網の中央部に向かって集中的に流動する粒状物のみを円板からなる上記流突板によって受止して分選網の中央部が粒状物の流突によって摩損するのを確実に防止することができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明によれば、上記中空ケーシングの前部中央部内に導入管の開口端に臨ませて、粒状物を中空ケーシンドの中央部側から外周方向に拡散させる外周面が前端から後端に向かって拡径した拡散部材を配設しているので、多量の粒状物が導入管から中空ケーシング内に供給される際に、この拡散部材によって積極的に粒状物を径方向に拡散させることができる利点を有する。しかし、前述のように、拡散部材の背面には吸引手段による吸気力によって負圧が発生し、その負圧によって拡散部材の傾斜面に沿って流動する気流が拡散部材を通過するや否や拡散部材の背面に向かう乱流となって、気流中の粒状物が再び中央部に集束され、この状態で分選網の中央部に流突して分選網を磨滅、損傷させることになる。本発明においては上述したように、分選網の前面中央部に粒状物を受止する流突板を配設しているので、分選網の中央部が粒状物の流突によって磨滅したり損傷するのを防止することができると共に拡散作用も発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の粒状物分級装置の全体構成を示す簡略図。
【図2】その要部の縦断側面図。
【図3】本発明の別な実施の形態を示す要部の縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の具体的な実施の形態の一例を図面について説明すると、図1、図2において、粒状物の分級装置は装置本体である円筒状に形成された中空ケーシング1と、この中空ケーシング1内に張設された分選網2と、中空ケーシング1の前面板1aの中央部に上記分選網2の前面に向かって対面させてその開口端3aを分選網2の前面中央部に同一軸心上で対向させている粒状物導入管3と、分選網2の背面側における中空ケーシング1内の後部に連結、連通している粒状物導出管4と、この粒状物導出管4の後端開口部をその上端部内に接線方向に連通させているサイクロン5と、このサイクロン5の上端に連通させている吸気管6と、吸気管6の後端にその吸引口を連結させている吸引ブロワからなる吸引手段7と、上記導入管3にその下端を連通させている粒状物投入ホッパ8と、上記分選網2の後面側に配設されて分選網2に向かってエアを吹きつける回転ノズル9と、分選網2に捕捉された粒状物における粗粒子の回収容器10と、分選網2を通過した粒状物における細粒子の回収容器11とからなり、上記導入管3の開口端に対面する分選網2の前面中央部(中心部)に粒状物の流突板12を取り付けている。
【0016】
装置本体である上記中空ケーシング1は、円筒形状に形成されていると共に図2に示すように、その前後開口端に前後板1a、1bの外周端縁をそれぞれ一体に固着して後面板1bにより中空ケーシング1の後端開口部を密閉していると共に、前面板1aは中空ケーシング1の前端から前方に向かって徐々に小径となる円錐形状に形成されてあり、その前端中央部に一定径を有する上記導入管3の前端開口部を連通させて上記分選網2の前面中央部(中心部)に対向させている。この分選網2は、金属線材を編成して所望の大きさの網目、即ち目開きと開孔率を有する網に形成してなり、この分選網2の外周端縁にリング状の取付けフレーム13を固着して、この取付フレーム13を中空ケーシング1の長さ方向の中間部における内周面に突設したフランジにネジ止め等により着脱自在に固定している。
【0017】
分選網2の後面側に配設している上記回転ノズル9は、分選網2の半径に略等しい長さを有する管の管壁の前側管壁部に分選網2の後面に向かって開口した多数の細かいエア噴射孔9aを全長に亘り設けてなり、分選網2の中心から半径方向にこの分選網2と平行に配設してその内端を分選網2の後方において中空ケーシング1の中心線上に配設されたエア供給管14の前端にこのエア供給管14の長さ方向に対して直角に連結、連通させてあり、このエア供給管14を中空ケーシング1の後面板1bの中心から中空ケーシング1外に気密状態で回転自在に貫通させ、中空ケーシング1外において、このエア供給管14の後端をコンプレッサ等の加圧空気供給源(図示せず)に連結、連通させていると共に後端部をモータ等の回転駆動機構15に連結している。
【0018】
分選網2によって前後に仕切られている中空ケーシング1内において、前側、即ち、上流側の室17の下周部には粗粒子回収管16の上端開口部を開口させてあり、この粗粒子回収管16の下端に上記粗粒子回収容器10を接続している一方、分選網2の後方側の中空ケーシング1内の室、即ち、下流側の室18に上記粒状物導出管4を連結、連通させている。また、上記サイクロン5の下端開口部に細粒子回収容器11を接続している。
【0019】
分選網2の前面中央部に取り付けている上記流突板12は、ステンレス等の金属製の円板からなり、その直径は上記導入管3の内径の1.5〜2.5倍に形成されている。この流突板12の径が導入管3の内径の1.5倍未満であると、気流によって導入管3から中空ケーシング1内に導入される粒状物がこの流突板12の周囲の分選網2の網部分に分選網2の外周部側よりも多量に流突してその網部分が磨滅、破損し易くなり、また、2.5倍を超えると、粒状物をふるい分けする分選網2の面積が縮小されて、粒状物の分級効率が低下する。さらに、この分選網2の直径を流突板12の直径の2〜3倍に形成して、流突板12を設けているにもかかわらず、粒状物の分級効率が一定値以上となるように確保している。
【0020】
この流突板12を分選網2の前面中央部に取り付けるには、分選網2の後面中央部に当て板19を当てがってこの当て板19と流突板12とにより分選網2の中央部を挟持させた状態にしてこれらの流突板12と当て板19とをネジ等によって一体に連結、固定すればよく、その他の取付手段を採用してもよい。
【0021】
次に、このように構成した粒状物分級装置の使用態様を説明する。まず、吸引手段7を作動させると、その吸気力によって吸気管6、サイクロン5、導出管4、中空ケーシング1内を通じて導入管3内に中空ケーシング1側に向かう気流が発生し、この導入管3に連通している粒状物投入ホッパ8に細粒子と粗粒子とが混在している多量の粒状物Aを投入すると、粒状物Aは上記気流によって導入管3内を中空ケーシング1側に運ばれ、導入管3の開口端3aから中空ケーシング1における上流側の室17内に拡散しながら流入し、分選網2に達した時に、この粒状物Aに混在する分選網2の網目よりも小さい細粒子A1は分選網2を通過して下流側の室18に入る一方、分選網2の網目よりも大きい粒状物A中の粗粒子A2は、分選網2に捕捉される。
【0022】
分選網2を通過した細粒子A1は下流側の室18から導出管4内に吸引され、サイクロン5に達してこのサイクロン5内を落下し、細粒子回収容器11に回収される。一方、分選網2に捕捉された粗粒子A2は分選網2の前面に沿って落下して粗粒子回収容器10に回収されるが、分選網2の網目に食い込んだり付着している粗粒子A2は、自然落下することなく分選網2の網目を詰まらせて分選効率を低下させるので、このような粗粒子A2は分選網2の後方からのエアの吹き付けによって分選網2から脱落させて粗粒子回収容器10に回収する。
【0023】
詳しくは、中空ケーシング1の下流側の室18の中心部に設けているエア供給管14に圧力エアを供給しながらこのエア供給管14を回転駆動機構15によって回転させると、エア供給14の前端から分選網2の後面に沿って分選網2の半径方向に配設している回転ノズル9がエア供給管14の軸心回りに回転して分選網2の後面に沿って周方向に回転移動しながら、多数のエア噴射孔9aから分選網2の後面に向かって圧力エアを吹き付け、分選網2の網目に食い込んで網目を塞いでいる上記粗粒子A2をそのエアの吹き付け力によって網目から脱落させるものである。
【0024】
このように、分選網2によって粒状物Aを細粒子A1と粗粒子A2とにふるい分けするが、気流によって導入管3から分選網2に向かって流動する粒状物Aは、分選網2の前面に対して均等な割合でもって流突することなく、分選網2の外周部よりも導入管3に対向した中央部(中心部)に多量の粒状物Aが流突し、その流突によって分選網2の中央部が外周部よりも短期間で磨滅、損傷するので、これを防止するために、分選網2の前面中央部に上記粒状物流突板12を取り付けている。
【0025】
即ち、導入管3の開口端3aから粒状物Aを含む気流が中空ケーシング1内に流入すると、中空ケーシング1の径方向に拡がりながら分選網2に向かって流動する際に、粒状物Aの拡がりは径方向に均一に行われることなく、導入管3の延長方向、即ち、分選網2の外周部よりも中央部(中心部)に向かって多量の粒状物Aが集中的に流動するが、分選網2の前面中央部は上記流突板12を取り付けているので、分選網2の前面中央部に向かって集中的に流動する粒状物Aは分選網2の前面中央部に直接、流突することなく流突板12に流突し、拡散してこの流突板12の外周端縁から露出している分選網2の網部分によって網目を通過する細粒子A1と通過しない粗粒子A2とにふるい分けられ、それぞれの回収容器10、11に回収される。
【0026】
以上の実施形態においては、導入管3の開口端3aを直接、分選網2の前面中央部に対向させた状態で中空ケーシング1内に連通させているが、図3に示すように、中空ケーシング1の上流側の室17の前部中央部内に円錐形状に形成されている拡散部材20を、その先端を導入管3の中心に向けて中空ケーシング1側に向かって開口している導入管3の開口端3aに臨ませた状態にして配設した分級装置の構造としておいてもよい。なお、この拡散部材20はその円錐形状の面を導入管3の開口端3aから一定の間隔を存した状態にして支持杆21により中空ケーシング1の前面板1aに固定、支持されている。その他の構成については上記図1に示す粒状物の分級装置と同じであるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
このように構成したので、図3に示すように、吸引手段7を作動させてその吸気力により、吸気管6、サイクロン5、導出管4、中空ケーシング1内を通じて導入管3内に中空ケーシング1側に向かう気流を発生させ、導入管3に連通している粒状物投入ホッパ8に細粒子と粗粒子とが混在している多量の粒状物Aを投入すると、粒状物Aは上記気流によって導入管3内を中空ケーシング1側に運ばれ、導入管3の開口端3aから中空ケーシング1内に流入する時に、この開口端3aに臨ませている拡散部材20の円錐形状の傾斜周面によって粒状物Aが径方向に拡散されながら中空ケーシング1の上流側の室17内に分散し、分選網2に達した時に、上記実施の形態で示した分級装置と同様にこの粒状物Aに混在する分選網2の網目よりも小さい細粒子A1は分選網2を通過して下流側の室18に入る一方、分選網2の網目よりも大きい粒状物A中の粗粒子A2は、分選網2に捕捉される。
【0028】
分選網2を通過した細粒子A1は下流側の室18から導出管4内に吸引され、サイクロン5に達してこのサイクロン5内を落下し、細粒子回収容器11に回収される。一方、分選網2に捕捉された粗粒子A2は分選網2の前面に沿って落下して粗粒子回収容器10に回収されると共に、分選網2の網目に食い込んだり付着している粗粒子A2は、上記回転ノズル9のエア噴射孔9aから噴出する高圧エアによって分選網2から脱落し、粗粒子回収容器10に回収される。
【0029】
このように、分選網2によって粒状物Aを細粒子A1と粗粒子A2とにふるい分けするが、導入管3から上記拡散部材20の傾斜周面を伝って中空ケーシング1内に拡散する粒状物Aは、拡散部材20上を通過後に、再び多量の粒状物Aが中空ケーシング1内の中央部(中心部)に集合しながら分選網2の中央部に向かって流動し、その中央部に流突して分選網2の中央部が外周部よりも短期間で磨滅、損傷するので、これを防止するために、分選網2の前面中央部に上記粒状物流突板12を取り付けている。
【0030】
拡散部材20上を通過した粒状物Aが、再び中空ケーシング1の中央部側に集合する現象は次のようにして発生していると考えられる。即ち、吸引手段7の吸気力によって拡散部材20の背面側が負圧となり、そのため、粒状物Aを運ぶ気流が拡散部材20を通過した際に、この負圧によって拡散部材20の背面側に巻き込まれる方向に移動する乱流となり、拡散部材20によって一旦、強制的に拡散させられた粒状物Aの一部が拡散部材20を通過した直後に上記乱流によって再び中央部に向かって集束し、その状態で分選網2の前面中央部に取り付けている流突板12に流突し、拡散して流突板12の外周端縁から露出している分選網2の網部分に達した時に、この網部分によって網目を通過する細粒子A1と通過しない粗粒子A2とにふるい分けられ、それぞれの回収容器10、11に回収される。
【0031】
分選網2によってふるい分けられる粒状物Aとしては、例えば、ポリアクリル酸エステル粒子、ポリメタクリル酸メチル粒子などのポリメタクリル酸エステル粒子などのアクリル系粒子、ナイロン粒子、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子等の合成樹脂粒子、シリカ粒子、金属微粒子などの無機粒子を挙げることができる。
【実施例】
【0032】
〔合成樹脂粒子の製造例〕
攪拌器付きの5000リットルのオートクレーブ内に水3000重量部、ピロリン酸マグネシウム60重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.9重量部、メタクリル酸メチル1000重量部を供給して70℃の条件下にてオートクレーブ内を高速攪拌しながら6時間に亘って懸濁重合してポリメタクリル酸メチル粒子を製造した。
【0033】
しかる後、オートクレーブ内を冷却した上でポリメタクリル酸メチル粒子を濾過、分離してポリメタクリル酸メチル粒子の洗浄、脱水を行った後に乾燥させてポリメタクリル酸メチル粒子931重量部を得た。ポリメタクリル酸メチル粒子は、その平均粒径が18.7μm、変動係数が35.8%、粒径が32μm以上の粒子の占める割合が6.2重量%であった。
【0034】
なお、ポリメタクリル酸メチル粒子の平均粒径は、電気抵抗法によって測定され、体積平均粒径を意味し、ポリメタクリル酸メチル粒子の平均粒径及び変動係数は下記の要領で測定した。
【0035】
ポリメタクリル酸メチル粒子の平均粒径は、ベックマンコールター社から商品名「コールターマルチサイザー II 」で市販されている測定装置を用いて測定した。なお、ベックマンコールター社(Coulter Electoronics Limited)発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTERMULTISIZER(1987)に従って、直径100μmのアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定した。
【0036】
具体的には、0.1重量%濃度のノニオン界面活性剤溶液10ミリリットル中にポリメタクリル酸メチル粒子0.1gをタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させて予備分散溶液を得た。
【0037】
次に、測定装置に備え付けのビーカー中に測定用電解液(ベックマンコールター社製商品名「ISOTON II」)を供給し、この測定用電解液中に該測定用電解液を緩く撹拌しながら上記予備分散溶液をスポイドを用いて滴下して本体画面の濃度計の示度が10重量%程度となるように調整した。
【0038】
続いて、測定装置に、アパチャーサイズとして「100μm」、Currentとして「800」、Gainとして「4」、Polarityとして「+」を入力して、manualモードにて測定を行った。測定中はビーカー内の測定用電解液を気泡が入らない程度に撹拌しておき、ポリメタクリル酸メチル粒子を10万個測定した時点で測定を終了して、体積加重の平均径(体積%モードの算術平均粒径:体積メジアン径)をポリメタクリル酸メチル粒子の平均粒径として算出した。
【0039】
そして、上記測定によって得られたポリメタクリル酸メチル粒子の粒径分布から標準偏差を算出し、下記式(1)に基づいて、ポリメタクリル酸メチル粒子における体積分布の変動係数を算出した。
変動係数(CV値)(%)=100×標準偏差/体積平均粒径・・・式(1)
【0040】
(実施例1)
上述のようにして得られた931Kgのポリメタクリル酸メチル中から粗粒子、即ち、粒径が32μm以上のポリメタクリル酸メチル粒子を取り除くため、図3に示した粒状物の分級装置を用いてポリメタクリル酸メチル粒子の分級を行った。拡散部材20は、底面の直径が150mmで且つ高さが130mmの円錐形状に形成されており、その先端を導入管3の軸芯に向けて中空ケーシング1側に向かって開口している導入管3の開口端3aに臨ませた状態にして配設されていた。
【0041】
なお、分選網2は、その直径が1000mmの円形状で、目開きが32μm、開孔率が28%、線径が25μmであった。分選網2の前面中央部に、ステンレス製の直径が400mmで且つ厚みが1mmの円形状の流突板12を取り付けた。分選網2の中心と流突板12の中心とが合致するように調整した。導入管3の内径は200mmであった。
【0042】
具体的には、粒状物の分級装置における吸引ブロアからなる吸引手段7を作動させて、その吸気力40m3/分によって吸気管6、サイクロン5、導出管4、中空ケーシング1内を通じて導入管3内に中空ケーシング1側に向かう気流を発生させると共に、導入管3に連通している粒状物投入ホッパ8に、細粒子と粗粒子とが混在している多量のポリメタクリル酸メチル粒子Aを投入して、粒状物Aを上記気流によって導入管3内を中空ケーシング1側に供給量170kg/m2/時間にて運び、導入管3の開口端3aから中空ケーシング1における上流側の室17内に拡散しながら流入させ、ポリメタクリル酸メチル粒子を分選網2によって分級した。
【0043】
上記粒状物の分級装置によるポリメタクリル酸メチル粒子の分級は237分で終了し、得られた細粒子の平均粒径が18.4μmであり、粒状物投入ホッパ8内に供給したポリメタクリル酸メチル粒子のうちの872Kg(93.7重量%)を細粒子として得ることができた。
【0044】
また、上述の要領でポリメタクリル酸メチル粒子の分級を繰返し行ったが、ポリメタクリル酸メチル粒子の分級を30回繰り返して行っても分選網2に破れは発生しなかった。
【0045】
(実施例2)
流突板12の直径を450mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてポリメタクリル酸メチル粒子を分選網2によって分級した。
【0046】
上記粒状物の分級装置によるポリメタクリル酸メチル粒子の分級は260分で終了し、得られた細粒子の平均粒径が18.6μmであり、粒状物投入ホッパ8内に供給したポリメタクリル酸メチル粒子のうちの870.5Kg(93.5重量%)を細粒子として得ることができた。
【0047】
また、上述の要領でポリメタクリル酸メチル粒子の分級を繰返し行ったが、ポリメタクリル酸メチル粒子の分級を30回繰り返して行っても分選網2に破れは発生しなかった。
【0048】
(実施例3)
拡散部材を配設していないこと以外は実施例1で用いられた粒状物の分級装置と同一の構成を有する粒状物の分級装置を用意し、この分級装置を用いて実施例1と同様の要領でポリメタクリル酸メチル粒子の分級を行った。
【0049】
上記粒状物の分級装置によるポリメタクリル酸メチル粒子の分級は240分で終了し、得られた細粒子の平均粒径が18.6μmであり、粒状物投入ホッパ8内に供給したポリメタクリル酸メチル粒子のうちの871Kg(93.6重量%)を細粒子として得ることができた。
【0050】
また、上述の要領でポリメタクリル酸メチル粒子の分級を繰返し行ったが、ポリメタクリル酸メチル粒子の分級を30回繰り返して行っても分選網2に破れは発生しなかった。
【0051】
(比較例1)
分選網の前面中央部に流突板を取り付けていない粒状物の分級装置を用いたこと以外は実施例1同様の要領でポリメタクリル酸メチル粒子の分級を行った。
【0052】
上記粒状物の分級装置によるポリメタクリル酸メチル粒子の分級は245分で終了し、得られた細粒子の平均粒径が18.5μmであり、粒状物投入ホッパ8内に供給したポリメタクリル酸メチル粒子のうちの872Kg(93.7重量%)を細粒子として得ることができた。
【0053】
また、上述の要領でポリメタクリル酸メチル粒子の分級を繰返し行ったところ、ポリメタクリル酸メチル粒子の分級を8回繰り返したところで分級網の中央部に破れが発生した。
【符号の説明】
【0054】
1 中空ケーシング
2 分選網
3 導入管
4 導出管
5 サイクロン
6 吸気管
7 吸引手段
8 粒状物投入ホッパ
9 回転ノズル
9a エア噴射孔
12 流突板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に分選網を張設した中空ケーシングの前部中央に分選網に向かって粒状物を導入する導入管を連結、連通させていると共に中空ケーシングの後部に吸引手段を配設してあり、この吸引手段による吸気力によって上記導入管内を通じて中空ケーシング内に導入される粒状物を上記分選網によってふるい分けするように構成した分級装置において、上記導入管の開口端に対面する分選網の前面中央部に粒状物流突板を取り付けていることを特徴とする粒状物の分級装置。
【請求項2】
粒状物流突板は導入管の内径の1.5〜2.5倍の直径を有する円板からなると共に、分選網の直径を粒状物流突板の2〜3倍に形成していることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の粒状物の分級装置。
【請求項3】
中空ケーシングの前部中央部内に導入管の開口端に臨ませて、粒状物を中空ケーシングの中央部側から外周方向に拡散させる外周面が前端から後端に向かって拡径した拡散部材を配設していることを特徴とする請求項1に記載の粒状物の分級装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−183338(P2011−183338A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53078(P2010−53078)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】