説明

粗合金製撚線から形成される取出装置

【課題】熱処理を受けずに所望形状を保持できる取出用バスケットを提供する。
【解決手段】患者から異物を取出すための医療用取出装置(5)と取出装置の製造方法に関する。取出装置(5)は超弾性材料になる粗合金から形成されるワイヤ・ケーブル(2、2’)を含んでいて、取出装置による砕石術を改良する。粗合金は線形の応力−歪み関係と比較的高応力に関連づけられる降伏点とを示すので、取出装置は変形する前に応力を伝える。従って、取出装置によって、さらに大きい破砕力を得られる。破砕力は、異物が大きすぎて無傷で除去できないときに必要とされる。この特性によって、胆管内の取出装置が異物を取出すのを容易にできる。粗合金を使用することによって、取出装置を形成するのに使用されるケーブルを熱処理する必要性を排除できる。粗合金製ケーブル(2、2’)から形成される取出装置(5)は使用時に永久変形および巻き戻しされることがほとんどない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は患者から異物を取出すのに使用される医療用取出装置に関する。さらに特に、本発明は胆石または石などを取出して破砕して除去するのに使用される内視鏡用取出装置に関する。本発明は、体内の幅狭経路を横切って異物を取出すために経路を開放させるよう形成されている。
【背景技術】
【0002】
患者から異物を除去するためにしばしば内視鏡装置を使用する必要がある。特に、胃腸病学者は通常は把持装置または破砕装置を使用して石を患者の胆管から取出す。さらに、石または他の異物を取出すときにスネアがしばしば使用される。
【0003】
把持して破砕する把持破砕装置は、取出されるべき石を捕獲するために展開されるワイヤ・バスケットの形態を概ねなしている。これらワイヤ・バスケットは、石が大きすぎて無傷で除去できない場合には砕石術のために使用されうる。砕石術は石を小片まで破砕して胆管から除去するのを容易にすることを含んでいる。そのような取出装置を効果的に操作するためには、バスケットがこのバスケットを共通の胆管に挿入するのに十分な可撓性を有している必要がある。しかしながら、バスケットは、石を捕獲するのを容易にするために胆管を拡張させるためのある程度の剛性も有する必要がある。バスケットは保持用カニューレによってしばしば展開される。この場合には、カニューレは胆管内への挿入時にバスケットを取出状態に保持する。一旦、石の一部分を把持すると、バスケットがカニューレから延びて石を捕獲するために開放する。そのような場合には、カニューレ内の保持作用により永久変形する程度の堅さを有することなしに、カニューレから取出されるときにバスケットは胆管を開放させるのに十分な剛性を有している必要がある。
【0004】
胆管を拡張させることまたはカニューレ内に保持されることに関連づけられる変形の他に、通常のバスケットに共通する欠点は、拡張時にバスケットが22.6kg(22.6kg)を越える力を受けることである。そのような力の下では、バスケットは大幅に変形する場合があり、このことは繰り返し使用する場合には適切でない。一つ以上の石および他の異物を患者から一度に取出すのに必要な場合が頻繁に生ずるので、そのように繰り返し使用することが望ましい。それゆえ、これら取出装置の形状は、繰り返して使用する設定においてバスケットの耐久性に焦点を合わせている。
【0005】
繰り返し異物を破砕して取出すために、バスケットは曲がりくねった解剖学的組織を横断するのに十分な可撓性を有する必要があるが、胆管または管内で開放するのに十分な堅さを有すると共に石を破砕するのに十分な強度を有する必要がある。単一のワイヤの形状はこれら基準のいずれか一つに適しているが、典型的には繰り返し拡張して砕石術を行うために三つ全ての要求を満たすことはできない。それゆえ、撚線、例えばステンレス鋼製ケーブルからなる取出用バスケットを形成することが提案される。純粋なステンレス鋼製ケーブル(コアおよびストランド)は単一の石を取り除くのに良好に作用するが、繰り返し拡張して砕石術を行うときには前述した変形の問題が存在する。
【0006】
他のバスケットは超弾性、しばしば形状記憶式と呼ばれるコアを含むケーブルから形成され、このコアはコアを取囲むためのステンレス鋼からなるストランドにより巻かれている。ニチノールがこれら取出装置における超弾性コアとしてしばしば使用される。ニチノールは特別に加熱処理されたチタン−ニッケル(Ti−Ni)合金、好ましくは約55%のニッケルと45%のチタン(Ni−Ti)である。これらバスケットはコアの形状を保持するために熱処理を必要とする。そのような形状によってバスケットが繰り返し使用されるときにある程度の特性の向上を図ると共に超弾性コアがコアの形状を良好に保持するので砕石術を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この形式の超弾性材料はある程度の応力負荷を受けるときに相転移を起こす。砕石術によりしばしばこのような応力レベルに達する。相転移の際には、ケーブルのコアが延伸し、取出装置は力を石に伝えて破砕プロセスを行うことができない。さらに、超弾性合金は取囲み用ステンレス鋼製ストランドよりもさらに可逆的な伸び特性を有している。これにより、コアと取囲み用ストランドとの間の変形量が異なり、従って、ケーブルが永久変形するという結果になる。そのように変形することによって、バスケットの形状が変化し、このことは意図した目的で使用するのに望ましくないという結果になる。
【0008】
さらに、ケーブルのコアおよびストランドを超弾性合金のワイヤから製造することによって、材料の高弾性特性によりケーブルが巻き戻されるまたはほどけるという結果になる。従って、そのようなケーブルからなる取出用バスケットは熱処理を受けることなしに望ましい形状を保持できない。
【0009】
本発明の利点および目的は、一部は後述する詳細な説明内に示されて、一部は詳細な説明より明らかであり、または本発明の実施により分かるであろう。本発明の利点および目的は、特許請求の範囲に特別に指摘された要素およびこれらの組み合わせによって理解されると共に達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これら目的を達成するために本発明の目的に基づいて具体化されて本願明細書に説明されるように、本発明は、患者の体内から異物を取出すための医療用取出装置に関する。取出装置は異物を捕獲して除去するのに適した形状に予め形成されたケーブルを含む取出組立体を含んでいる。超弾性材料になる粗合金から形成されるワイヤを取出用ケーブルは含んでいる。本発明の特別の実施形態によれば、ケーブルはそれぞれが粗合金から形成されたコアと取囲み用ストランドとを含んでいる。
【0011】
本発明はさらに、医療用取出装置を製造するための製造方法において、超弾性材料になる粗合金から形成されるワイヤを含むケーブルを形成し、前記異物を捕獲して除去するのに適した形状に前記ケーブルを予め形成することによって取出組立体を形成する製造方法を含む。
【0012】
本発明に基づく粗合金は、降伏点を通って相転移点を有することなしに線形に延びる応力−歪み曲線を示している。降伏点を通過した後には、応力−歪み曲線は歪みが増加するときにほぼ一定の応力平坦域を有さない。さらに、粗合金は塑性変形特性を示す。
【0013】
前述した一般的な説明と後述する詳細な説明との両方は、例および説明することのみに関するものであって、本発明を制限するものではないことが理解されよう。
本願明細書に組み入れられていて本願明細書の一部を構成する添付図面は詳細な説明と共に本発明の好ましい実施形態を示していて、本発明の原理を示す役目を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1a】超塑性合金の応力−歪み曲線を示す図である。
【図1b】粗合金の応力−歪み曲線を示す図である。
【図2a】本発明に基づく撚線状態の一つの実施形態の断面図であり、粗合金のコアがステンレス鋼製ワイヤのストランドにより取囲まれている。
【図2b】本発明に基づく撚線状態の他の実施形態の断面図であり、粗合金のコアが粗合金製ワイヤのストランドにより取囲まれている。
【図3】本発明の実施形態に基づくワイヤ用バスケット型取出装置であって対象物を引き出すために展開位置に在る状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の複数の態様は、幅狭の経路を横切ることを必要とする場所から体内の異物または対象物を取出すための取出装置およびそのような取出装置の製造方法に関する。使用時、そのような取出装置は、横断させることを目的として比較的狭い空間内に折り畳めると共に取出すことを目的としてこの空間内で展開させる必要がある。取出装置の強度特性は、この取出装置が捕獲と除去とを容易にするために対象物を破砕することができる必要がある。さらに、取出装置は、強度が低下することなく且つ永久変形することなしに、展開時には元の形状を変更すると共に繰り返して展開するために元の形状を変更する能力を維持する必要がある。
【0016】
このような目的を達成すると共に現存するこの形式の取出装置に関連づけられる問題を克服するために、本発明の取出装置は、この取出装置を形成するのに使用される撚線に粗合金を組み入れている。熱処理を受けるときに、粗合金は超弾性合金へと変形する。熱処理を受ける前においては、そのような粗合金は高い伸びと降伏点を備えた線形の応力−歪み関係とを示している。これら特性のために、本発明に基づく取出装置を製造するときに粗合金を使用することによって、後述するように強度を高めて寿命を長くして製造を容易にすることができる。
【0017】
超弾性合金とは異なり、本発明の医療用取出装置に使用される粗合金は塑性降伏点を有する線形の応力−歪み関係を示している。比較することを目的として、超弾性合金および粗合金の場合の応力−歪み曲線の略図を図1aおよび図1bにそれぞれ示す。図1aより分かるように、超弾性合金が増加した応力を受けるときに、歪みは相転移点Xまで増加する。相転移点Xにおいて、超弾性合金はオーステナイト相からマルテンサイト相まで転移する。次いで、歪みが増加しつつ応力はほぼ一定のままとなってほぼ一定の応力平坦域Pを形成する。超弾性合金の応力を解放する際に、材料の可逆的な変形特性によって、この材料は図面内の曲線Yに追従するように元の長さまで戻ることができる。図示されるサイクルはしばしば、ワイヤの寸法および塑性変形が大幅に変化することなしに繰り返し生ずる。それゆえ、超弾性合金は相転移点前においては比較的大きな歪みに耐え、相転移のときには塑性変形することなしに追加の歪みに耐える。さらに、超弾性合金の相転移および可逆変形は比較的小さい応力レベルにおいて生じる。超弾性合金の相転移時においては、加えられた応力は超弾性合金により吸収されて相転移を容易にしているが、他の物体、例えば石または胆石に伝えるのに利用できない。
【0018】
粗合金材料は図1bに示す応力−歪み特性を有している。応力が増加するときに歪みは塑性降伏点Zまで可逆的に増加する。すなわち、塑性降伏点Zに到達する前においては粗合金は応力を解放する際に通常の形状まで戻る。さらに、粗合金は超弾性合金のようにほぼ一定の応力平坦域を通過しない。降伏点Zよりも応力が高いときは、粗合金は超弾性合金とは異なり塑性的および不可逆的に変形する。図1bおよび図1bに示されるように、粗合金の降伏点Zは、超弾性材料の相転移点Xよりも高い応力レベルにおいて概ね生ずる。これにより、本発明の取出装置は管または胆管を展開させるのを容易にすると共に砕石術時にさらに大きい応力を周りの石に伝えることができる。従って、取出装置は繰り返して使用するときに形状および強度を維持しつつ取出作用および除去作用を容易にできる。
【0019】
超弾性材料を形成するために粗合金を熱処理する必要性に加えて、通常の取出装置もバスケット形成時に熱処理を必要としており、それにより、超弾性ワイヤがこれらワイヤの形状を維持するようになる。対照的に、粗合金に関連づけられる塑性降伏点のために、本取出装置のバスケットは粗合金製ワイヤをこの粗合金の降伏点を越えるような機械的曲げ作用によって形状において容易に形成する。従って、本発明の取出装置を製造する際に複雑な熱処理は必要でない。
【0020】
さらに、通常の取出装置に使用される熱処理済み合金の超弾性特性のために、全体が超弾性材料から形成されている撚線は前述したような相転移変形および巻戻し問題のために有効でない。しかしながら、粗合金は極めて弾性的であって塑性変形可能である。従って、本発明の好ましい実施形態においては、取出装置のための撚線は全体が粗合金製コアと粗合金製ストランドとにより形成されている。ストランドとコアとを同一の粗合金または異なる粗合金から形成してもよいことが想定される。異なる粗合金が使用される場合には、所定の負荷を受けるときにワイヤが同様に変形するように、ワイヤの寸法および形式を選択するのが好ましい。どちらの場合であっても、撚線は、超弾性ストランドを含む撚線のように、巻き戻し作用および過度の変形を受けることはない。さらに、ストランドおよびコアの両方に対して一定の材料を使用することによって、周囲のストランドに対するコアの伸びに関連づけられていてバスケットを恒久的に損傷させるという問題を排除することができる。最終的に、全体が同一の粗合金材料からなるワイヤから形成される撚線によって製造プロセスを容易にできる。
【0021】
本発明の典型的な実施形態を参照することによって、図2および図3に示される実施例を詳細に説明する。図面全体にわたって同一の参照番号は可能な限り同一または類似の部品を参照するのに使用されている。
【0022】
本発明の実施形態によれば、内視鏡用取出装置5は、図2aおよび図2bに示される基本的形状を有する撚線から形成されている。図2aは取出装置5の第一の実施形態の撚線の断面図を示している。撚線1は粗合金から形成されるコア用モノフィラメント式ワイヤ2を含んでいる。ステンレス鋼製ワイヤからなるストランド3はコア用ワイヤ2を取囲んでいる。粗合金製コア用ワイヤ2が存在していることによって、取出装置5は、超弾性コアを含む形式の通常の取出装置よりも変形の問題が少ない。このことは、前述したように、粗合金は超弾性材料よりも伸びが少なく、それゆえ、取囲み用ストランド3とコア用ワイヤ2との間の伸びの差を最小限にすることができるのが原因である。
【0023】
図2bは内視鏡用取出装置5において使用される撚線のさらに好ましい実施形態を示している。この実施形態においては、撚線1’は図2aに示されるような粗合金から形成されるコア用ワイヤ2’を含んでいる。しかしながら、本実施形態における取囲み用ストランド3’も、コア用ワイヤ2’の場合と同一または異なる粗合金から形成されている。前述したように、全体(コアおよびストランド)が粗合金製ワイヤから形成されている撚線は巻き戻しされないと共に変形することなしに大応力を対象物に伝えることができるので本実施形態は好ましい。さらに、全体が同一の粗合金から形成される撚線によって、コアとストランドとの間の異なる伸び率に関連づけられる変形の問題を軽減することができる。異なる粗合金からなるワイヤを選択するときには、一定の機械的性質を撚線に分与するのが好ましい。当業者であれば、そのような要因、例えば取囲み用ストランドおよびコア用ワイヤの合金の特性、取囲み用ストランドおよびコア用ワイヤの相対寸法、コア用ワイヤ周りにおけるストランドの巻きパターン、およびケーブルの後工程を変更することによってそのような統一性を達成できることを理解するであろう。
【0024】
図2aおよび図2bは六つの取囲み用ストランド3または3’をそれぞれ示している。少なくとも五つの取囲み用ストランド3または3’が存在するのが好ましい。しかしながら、取囲み用ストランドの数を、本取出装置の特別の使用および要求されるケーブル特性に基づいて変更できることが想定される。
【0025】
図2aおよび図2bの両方において、粗合金は室温から体温にかけてマルテンサイト相にある。粗合金はニチノール前駆体または同様の特性を示していて当業者に公知の他の材料でありうる。そのように使用されうる他の粗合金は、例えば銀−カドミウム、金−カドミウム、金−銅−亜鉛、銅−亜鉛、銅−亜鉛−アルミニウム、銅−亜鉛−錫、銅−亜鉛−キセノン、鉄−ベリリウム、鉄−プラチナ、インジウム−タリウム、鉄−マンガン、ニッケル−チタン−バナジウム、鉄−ニッケル−チタン−コバルトおよび銅−錫を含む。
【0026】
本発明の好ましい一つの形態においては、ケーブル全体の直径は約0.4mm(0.017インチ)である。粗合金に使用される材料と、撚線を形成するストランドの数と、撚線全体の直径とを本取出装置の特別の使用または要求される特性に基づいて変更することができる。このようなパラメータの選択は当業者であれば明らかであろう。
【0027】
図3は内視鏡用取出装置5の全体の構成を示している。典型的には四つの撚線1または1’がバスケット6を形成している。しかしながら、あらゆる数の撚線を使用することもでき、当業者であればこのことがバスケットの使用および要求される特性に応じて定まることは明らかである。ブレット型ノーズピース7を取出装置5の先端に取り付けて、撚線1または1’を互いに固定すると共に使用時に取出装置5の案内作用を向上させることができる。バスケット6の基端に取り付けられた結合用チューブ8によっても取出プロセス時における取出装置5の操作を容易にできる。結合用チューブ8もカニューレの形態をなすことができ、この場合には取出作用の前にバスケット6はカニューレ内に引き込まれる。
【0028】
レーザ溶接作用は、ブレット型ノーズピース7および結合用チューブ8をバスケット6に取り付けるための一つの好ましい態様を示している。しかしながら、当業者に公知の他の適切な取付方法は本発明の範囲に含まれる。取出装置5は幅狭の経路を横切って、体内の異物を取出して破砕して除去するのに使用される。取出装置5を必要な場合には折畳みまたは展開させつつカニューレから展開させて体内に別個に横切らせることもできる。取出装置5を繰り返し使用して、異物を取出して破砕して除去することができる。
【0029】
取出装置5の製造方法は、第一に撚線1、1’を形成することを含む。これら撚線を形成するために、コア用ワイヤとワイヤからなる取囲み用ストランドとをコア用ワイヤの周囲周りにほぼ均等に間隔をあけて配置するように粗合金製ワイヤを準備する。取囲み用ストランドはコアの長さ部分に沿ってほぼ螺旋状になるようにこのコアを巻く。撚線に要求される特性に応じて、時計回り、反時計回りまたはこれらのあらゆる組み合わせでストランドを巻いてもよい。好ましい実施形態においては、ストランドは右ネジのネジ山部と同様にコア用ワイヤ周りに時計回りに巻き付いている。次いで撚線を回転式にスエージ加工でき、このことによって撚線を平滑にするのを助けると共に撚線の長さ方向強度を高めることができる。図2aおよび図2bを参照して説明されるように、取囲み用ストランドをステンレス鋼等、または適切な材料、最も好ましくは粗合金から形成することができる。
【0030】
次いで、複数、好ましくは四つの撚線1または1’は粗合金およびステンレス鋼の降伏点を越えるよう曲げられてバスケット6を形成する。バスケット6を形成した後に、溶接作用または当業者に公知の他の適切な接合方法によって撚線1、1’を一端において一緒に接合させる。撚線1、1’を結合用チューブ8に、要求される場合には保持用カニューレの引出可能部分にレーザ溶接することは、撚線を互いに接続または固定するための他の方法である。図3を参照して説明されるように、ノーズピースをレーザ溶接または他の適切な方法でバスケット6の端部に取付て、取出装置5を体内に通して案内する。溶接操作または加熱作用を含む他の連結操作時に温度を制御してケーブルが熱処理されるのを妨げ、それにより、粗合金が超弾性材料に転移する。
【0031】
本発明に基づく取出装置に使用される撚線の形状部によって、砕石術と拡張作用とを行うと共に取出プロセスのために繰り返して使用されるのに必要な耐久性が提供される。超弾性材料、例えばニチノールとは対照的に、粗合金製ワイヤを撚線に組み入れることによって熱処理プロセスを必要とすることなしに取出装置を製造することができる。さらに、粗合金は超弾性材料のような極度の伸び特性を示さないので、取囲み用ステンレス鋼製ワイヤのストランドを使用して撚線を形成するときに、永久変形の問題を軽減させられる。粗合金を使用することによって、取囲み用ストランドとコアとを含んでいて全体が粗合金製ワイヤからなる撚線を製造することができる。取囲み用ストランドおよびコアに対して同一の粗合金が使用されているか、またはコアに使用される粗合金とは異なる粗合金がストランドに対して使用されているか否かにかかわらず、変形することなしに取出装置はさらに大きい応力を対象物に伝えることができて巻き戻しされることがない。さらに、同一の粗合金をストランドおよびコアの両方に使用することによって、取出装置全体の製造が容易になると共に、撚線内における異なる伸び特性が原因で変形することのない一定の特性を備えた取出装置を形成することができる。
【0032】
バスケット型の取出装置の使用を説明すると共に図1に示したが、この取出装置はスネア型でもよいことが想定される。前述した粗合金から形成されるスネアは通常のステンレス鋼製装置よりもスネアの形状を保持する。さらに、前述した部分のほとんどは胆石を除去する装置の使用に関しているが、体内の複数の場所に在る多数の他の異物を除去するのに使用される取出装置であることも好ましい。
【0033】
当業者であれば、開示される本発明の説明および実施を考慮することによって、本発明の粗合金製撚線から形成される内視鏡用取出装置において多数の変更と変形を行うことができることは明らかである。それゆえ、さらに広範な態様における本発明は明細書に開示される詳細な説明および図示される図面に制限されるものではない。特許請求の範囲およびこれの等価物により形成される本発明の概念の精神と範囲とから逸脱することなしに、そのような詳細な説明から変更例を形成することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 撚線
2 粗合金製コア用ワイヤ
3 ストランド
5 取出装置
6 バスケット
7 ノーズピース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイスにおいて、
基端と先端とを備えた取出装置を具備し、該取出装置は前記先端と前記基端との間に延びる複数のワイヤを有しており、少なくとも一つの前記ワイヤは超弾性材料になる粗合金から形成されており、前記取出装置は患者の体内に挿入されて該患者の体内にて異物を捕獲する最終的なバスケット形状をなして形成されており、前記最終的なバスケット形状は熱処理無しで形成されている、医療デバイス。
【請求項2】
前記取出装置は、前記患者の体内から前記異物を捕獲、粉砕して除去するようになっている請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも一つの前記ワイヤは、ケーブルを形成する複数のワイヤ式ストランドにより取囲まれている請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記複数のワイヤ式ストランドは超弾性材料になる粗合金から形成されている請求項3に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記複数のワイヤはコア用ワイヤを取囲んでケーブルを形成する請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記取出装置は複数のケーブルを具備する請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記コア用ワイヤは超弾性材料になる粗合金から形成されている請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記複数のワイヤは少なくとも五つのワイヤを含む請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記複数のケーブルは連結されて、前記バスケット形状を形成する請求項6に記載の医療デバイス。
【請求項10】
さらに、前記取出装置の前記先端に取付けられたノーズピースを具備する請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記超弾性材料がニチノールである請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記取出装置は選択的に展開または概ね折り畳まれるよう形成されている請求項1に記載の医療デバイス。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−22863(P2010−22863A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252222(P2009−252222)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2001−536052(P2001−536052)の分割
【原出願日】平成12年10月26日(2000.10.26)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】