説明

粘土粒子の合成方法

粘土粒子を合成する方法であり、金属塩及び金属ケイ酸塩の反応溶液混合物を、上記粘土粒子を形成する条件下で放射線源を用いて加熱する工程を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、概して粘土粒子の合成方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
湿っており、各種粘土鉱物の1つ若しくは混合物と不純物とからなる場合に、粘土は、柔らかく、土壌性で、非常に細かい粒状であり、通常、可塑性である、極めて変化し易い天然材料のグループとして広く引用されている。ナトリウム、リチウム及びカリウムのようなアルカリ金属、並びにマグネシウム、カルシウム及びバリウムのようなアルカリ土類金属は、粘土の分子構造中に多くの場合存在し、これらの物理的及び化学的特性において重要な効果を有する。
【0003】
粘土は、多くの産業において非常に重要な役割を担っている。これらの用途は、これらの物理的及び化学的特性によって決まる。これらの用途の幾つかには、化粧レンガ、煙突の煙道の裏張り材料、下水管、石器及び陶器、耐火レンガ、アルミニウムの生産、カオリンファイバー、磁器、ポートランドセメント、合成ゼオライト、壁及び床用タイル、ゴム中の成分、紙、塗料、接着剤、シーリング材、増量剤、白化材、コーキング材、及び補強材材用のフィラー、並びに、コンクリート製品中の砂利の代替品としての軽量骨材の生産、が含まれる。
【0004】
しかしながら、大量の天然の粘土は容易には利用できず、通常、不純物と混合されている。粘土からのこれらの不純物の除去は非常に困難となり得る。このため、実質的に純粋な状態であり、かつ天然に存在する粘土と同等以上の望ましいレオロジー特性を有する合成粘土を合成することが望まれている。
【0005】
合成粘土粒子の公知の合成方法の1つには、アルカリ及びフッ素イオンとの簡単な共沈工程と、その後の熱水処理が含まれる。当該熱水処理には、大気圧において、還流下、攪拌した状態で対流加熱することが含まれ、幾つかの場合には、高温高圧の状態で行われる。しかしながら、熱水処理工程は、通常、少なくとも10〜20時間の時間が要求される。これは、従来行われる加熱のための工程時間が、物質の表面から本体への熱流速度によって制限され、その比熱、熱伝導率、密度及び粘度に加えて、その質量によって決定されるからである。このため、従来の加熱では、時間のかかる工程になるといった不利な点に悩まされる。
【0006】
更には、高圧にすることは、圧力容器のような専門の装置が必要となる。このような専門の装置は、粘土粒子を合成する工業スケールの工場に関連する資本及び運転経費を増加させる。従来の加熱の別の不利な点としては、加熱される、上記粒子の表面、端及び角が、物質の内部よりもより熱くなるため不均一となることである。
【0007】
上述した、1以上の不利な点を、克服する、又は少なくとも改善する、粘土粒子の合成方法を提供することが必要とされている。
【0008】
〔概要〕
第一の態様として、粘土粒子の合成方法を提供し、当該方法は、当該合成粘土粒子を形成する条件下で、放射線源を用いて、金属塩及び金属ケイ酸塩の反応溶液混合物を加熱する工程を含む。
【0009】
有利には、ある実施形態において、加熱する上記工程は対流性加熱をせずに行う。
【0010】
有利には、ある実施形態において、加熱する上記工程は伝導加温をせずに行う。
【0011】
有利には、ある実施形態において、加熱する上記工程はマイクロ波加熱源を用いて行う。
【0012】
有利には、放射線源を使用することによって、上記溶液混合物からの合成粘土粒子の共沈のために要求される時間がより少なくなり得るため、粘土粒子を合成するためのエネルギー効率の良い合成方法をもたらす。
【0013】
有利には、放射線源を使用することによって、合成される粒子の構成における、大きさ及び形状及び均一性のより良い制御を可能とする。
【0014】
本発明の第二の態様では、第一の態様による方法で得られた粘土粒子を提供する。
【0015】
〔定義〕
ここで使用する以下の単語及び用語は、以下に示す意味を有する。用語”合成粘土”は、層状粘土と構造的に関係している物質、及び合成ヘクトライト(hectrite)(リチウムマグネシウムナトリウムケイ酸塩)のような多孔の繊維性粘土を含むように広く解釈される。上記発明の範囲における粘土の以下の分類;
カオリナイト類、蛇紋石類、葉ロウ石類、滑石、雲母類及び脆雲母類、クロライト類、スメクタイト類及びバーミキュライト類、パリゴルスカイト類及び海泡石類
には、単独若しくは組み合わせでの利用、並びに混合層粘土での利用を示すことが理解されるであろう。上記発明によって錠剤として用いられ得る他のフィロケイ酸塩(粘土鉱物)は、アロファン及びイモゴライトである。
【0016】
以下の参考文献は、上述のタイプの粘土の特徴が記載されている。
Chemistry of clay and clay Minerals. Edited by A. C. D. Newman. Mineralogical Society Monograph No. 6, 1987, Chapter 1; S. W. Bailey; Summary of recommendations of AIPEA Nomenclature Committee, clay Minerals 15, 85-93;及びA Handbook of Determinative Methods in Mineralogy, 1987, Chapter 1 by P. L. Hall
上記用語”放射線源”は、水溶液を加熱する能力がある任意の電磁波を含めて広く解釈される。
【0017】
上記用語”金属ケイ酸塩”は、ケイ酸アニオンと結合を形成する金属カチオンを有する任意の化合物を含むように広く解釈される。
【0018】
上記用語”ケイ酸”は、アニオンにおける1以上の中心ケイ素原子が、酸素のような電気陰性の配位子によって囲まれている、任意のアニオンを含むように広く解釈される。
【0019】
上記単語”実質的に”は、”完全に”を排除しない。例えば、Yから実質的に自由な構成は、Yから完全に自由となり得る。必要に応じ、単語”実質的に”は、上記発明の定義から省略され得る。
【0020】
別の方法で規定しない限り、上記用語”含んでいる”及び”含む”、並びにこれらの文法的に変化したものは、これらが、列挙した成分を含むが、追加の、列挙されていない成分を包含することが容認されるような、”オープン”若しくは”包含的な”言語が意図される。
【0021】
ここで使用するように、上記用語”約”は、処方における成分濃度との関連で、一般的に規定された値の±5%を意味し、より一般的には規定された値の±4%を意味し、より一般的には規定された値の±3%を意味し、より一般的には規定された値の±2%を意味し、更に一般的には規定された値の±1%を意味し、更に一般的には規定された値の±0.5%を意味する。
【0022】
この開示のいたるところで、特定の実施形態が、範囲の形式で開示され得る。範囲の形式での記述は、単に便利で簡潔であるためのものであることが理解され、開示された範囲の有効な範囲における弾力性のない限定として解釈されるべきではない。従って、範囲についての上記記述は、その範囲内の個々の数値と同様に、具体的に開示された、全ての可能性のある部分的な範囲を有するように考慮されるべきである。例えば、1〜6のような範囲の記述は、1、2、3、4、5及び6のような、その範囲内の個々の数値と同様に、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等のような、具体的に開示された部分的な範囲も有するように考慮されるべきである。
【0023】
〔任意の実施形態の開示〕
典型的な、限定されない、合成粘土粒子の合成方法の実施形態をこれから開示する。
【0024】
上記金属ケイ酸塩は、任意のアルカリ金属ケイ酸塩若しくはアルカリ土類金属ケイ酸塩又はこれらの混合物とし得る。典型的な金属ケイ酸塩は、リチウムケイ酸塩、ナトリウムケイ酸塩、カリウムケイ酸塩、ベリリウムケイ酸塩、マグネシウムケイ酸塩及びカルシウムケイ酸塩を含む。
【0025】
ある実施形態においては、上記反応溶液混合物は、上記金属塩に対して過剰モルの金属ケイ酸塩を含む。
【0026】
有利には、放射線源を使用する加熱によって、その体積のいたるところで実質的に同じ速度で、物質の加熱をすることができる。つまり、体積加熱をすることができる。放射線源からの熱エネルギーは、加熱した物質を通じて電磁気的に移動する。その結果として、加熱速度は、対流加熱若しくは伝導加熱の間のように、物質を通じた移動速度によって制限されない。そして、加熱分布の均一性が非常に改善される。加熱時間は、対流加熱若しくは伝導加熱に要求される時間の1%未満に減少し得る。
【0027】
典型的な放射線源には、電波、マイクロ波、赤外線、紫外線、X線及びガンマ線を含む。ある実施形態では、上記放射線源は、マイクロ波の放射線源である。マイクロ波加熱の2つの主なメカニズムは、双極子分極及び伝導メカニズムである。双極子分極はプロセスであり、当該プロセスによって熱が極性分子において発生する。
【0028】
電磁場を適用するとき、電磁場の振動する性質によって、極性分子が当該電磁場に一致して整列するように極性分子の運動が生じる。しかしながら、極性分子によって経験される分子間力は、そのような整列を効果的に防ぎ、上記極性分子のランダムな運動を生じさせて熱を発生する。伝導メカニズムでは、電流への抵抗として熱の発生を起こす。電磁場の振動する性質は、電流を発生させるように、伝導体における電子若しくはイオンの振動を引き起こす。電流が内部抵抗に接することによって熱の発生が生じる。よって、上記マイクロ波は、物質の外部表面のみ加熱する従来の加熱手段と比較して均一な高温を物質内部に引き起こすために使用し得る。
【0029】
上記マイクロ波は、約30W〜約180kW、約30W〜約150kW、約30W〜約120kW、約30W〜約100kW、約30W〜約50kW、約30W〜約25kW、約30W〜約15kW、約30W〜約10kW、約30W〜約5kW、約30W〜約2kW、約30W〜約1200W、約50W〜約1200W、約100W〜約1200W、約200W〜約1200W、約300W〜約1200W、約400W〜約1200W、約500W〜約1200W、約600W〜約1200W、約700W〜約1200W、約800W〜約1200W、約900W〜約1200W、約1000W〜約1200W、約30W〜約1100W、約30W〜約100W、約30W〜約80W、約30W〜約60W、約30W〜約40W、約40W〜約120W、約60W〜約120W、約80W〜約120W、約100W〜約120W、約70W〜約100W、及び約50W〜約70Wからなる群から選択される範囲における出力で利用され得る。
【0030】
マイクロ波の典型的な周波数は、約300MHz〜約300GHzの範囲内とし得る。この範囲は、0.3〜3GHzのUHF(ultra-high frequency)の範囲、3〜30GHzのSHF(super high frequency)の範囲、及び30〜300GHzのEHF(extremely high frequency)の範囲に分類され得る。共通のマイクロ波源は、約0.915、2.45又は5.8GHzの周波数においてマイクロ波を放射するマイクロ波オーブンである。
【0031】
上記マイクロ波は、約0.3GHz〜約300GHz、約0.3GHz〜約200GHz、約0.3GHz〜約100GHz、約0.3GHz〜約50GHz、約0.3GHz〜約10GHz、約0.3GHz〜約5.8GHz、約0.3GHz〜約2.45GHz、約0.3GHz〜約0.915GHz及び約0.3GHz〜約0.9GHzからなる群から選択される範囲における周波数で利用され得る。
【0032】
ある実施形態では、上記マイクロ波加熱は、約10分〜2時間の範囲で行われる。
【0033】
上記加熱工程は、実質的にアルカリのpH条件下で行われ得る。ある実施形態では、上記pHは8.5以上の範囲である。有利には、上記pHは、9〜10の範囲内である。これにより、上記反応混合物からの上記粘土粒子の共沈のための最適な環境がもたらされる。ある実施形態では、上述したアルカリのpH条件を得るために、金属水酸化物溶液が、上記反応溶液混合物に加えられる。
【0034】
上記金属塩における金属は多価金属とし得る。この金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、並びに、元素周期表のIIIA族、VIIA族及びVIII族からなる群からから選択され得る。典型的な金属には、ナトリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄及びマンガンが含まれる。
【0035】
上記金属塩のアニオンはハロゲン化物とし得る。典型的なアニオンには、塩化物及びフッ化物が含まれる。
【0036】
上記金属及び金属ケイ酸塩は、クリオライト(chryolite)、クリノクロア(chlinochlore)、カオリナイト、ノントロナイト、パラゴナイト、金雲母、葉ロウ石、スメクタイト、滑石、バーミキュライト及びこれらの混合物からなる群から選択される粘土粒子を合成するように選択され得る。典型的なスメクタイト粘土には、ベントナイト、ベージライト(beidellite)、ヘクトライト、モンモリオナイト、サポー石、ステブンサイト(stevensite)及びこれらの混合物が含まれる。
【0037】
上記方法では、上記反応溶液混合物から上記粘土粒子を除去する工程が含まれる。そして、除去された上記粘土粒子は、外部からの水をそれから実質的に除去するために乾燥され得る。ある実施形態では、上記乾燥は、約250℃の温度で約8時間行われる。上記粘土粒子の粒子の大きさは、ナノメータの範囲からマイクロメータの範囲とし得る。ある実施形態では、上記粘土粒子の平均の大きさは、約20nm〜120nmの範囲である。
【0038】
〔図面の簡単な説明〕
添付の図面には、開示した実施形態が説明され、開示した実施形態の原理の説明する役割を果たす。上記図は、説明の目的のためのみに作られ、本発明の限界を定義するものではない。
【0039】
図1は、反応溶液混合物を形成する反応物質を混合する工程、及び当該反応溶液混合物から合成粘土粒子の共沈のためのマイクロ波放射用マイクロ波オーブンの概略図である。
【0040】
図2は、粘土粒子を合成するための工程経路図である。
【0041】
図3は、Laponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)と比較した、実施例2で得られた実験サンプルのX線回折パターンである。
【0042】
図4は、Laponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)と比較した、実施例3で得られた実験サンプルのX線回折パターンである。
【0043】
図5は、Laponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)と比較した、実施例4で得られた実験サンプルのX線回折パターンである。
【0044】
図6は、Laponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)と比較した、実施例5で得られた実験サンプルのX線回折パターンである。
【0045】
〔実施形態の詳細な開示〕
図1を参照すれば、収容された溶液を混合するためのミキサー(12,22)が内部にそれぞれ配置された2つのタンク(10,20)が示される。タンク10は、ミキサー12によって均一に攪拌される金属塩溶液を含む。同時に、金属ケイ酸塩溶液は、ミキサー22によってタンク20内で均一に攪拌される。示されるように、2つのタンク(10,20)から得られる、上記金属塩溶液の流れ14及び金属ケイ酸塩溶液の流れ24は、各ポンプ(16,26)を用いて、反応タンク30へと供給される。
【0046】
上記反応タンク30は、上記金属塩溶液の流れ14及び上記金属ケイ酸塩溶液の流れ24から得られる反応物質の均一な混合を可能とするミキサー32を含む。上記反応タンク30は、水酸化ナトリウムのようなアルカリをタンク30内の上記溶液へ追加し、その結果、pHを高めてアルカリ条件とすることを可能とする、アルカリ供給の流れ34を含む。
【0047】
よって、上記反応タンク30から得られる上記反応溶液は、ポンプ56を経て流れ54を通ってタンク52へと送り込まれる。上記タンク52は、いかなる物理的若しくは化学的変化もなく、マイクロ波放射に耐えることができる物質からできている。上記タンク52は、タンク52に含まれる上記反応溶液混合物を加熱するマイクロ波を放射するための放射線源として使用される、マイクロ波オーブン40内に含まれる。
【0048】
上記マイクロオーブン40は、その中で生成される、放射線若しくはマイクロ波を浸透させない壁42を含む。上記反応溶液混合物を含む上記タンク52は、マイクロ波オーブン40の制御された環境44に置かれ、その中で発生したマイクロ波の放射線に曝される。制御された環境44における上記マイクロ波の放射線は、約0.3GHz〜300GHzの周波数及び30W〜180kWの出力で放射されるマイクロ波場である。
【0049】
マイクロ波場によって放出されるエネルギーは、上記タンク52に含まれる反応溶液混合物における反応物質間の化学反応を開始させ、促進させる。これによって、上記反応液混合物から合成粘土粒子の共沈が生じる。ここで得られた、合成粘土粒子及び溶媒の混合物は、次に、製品混合物の流れ36を介してフィルタータンク38を通る。
【0050】
上記製品混合物は、洗浄され、フィルタータンク38において濾過され、濾液46(つまり、上記溶媒)及び残渣48(つまり、上記合成粘土粒子)が得られる。
【0051】
図2は、合成粘土粒子の合成のための工程フロー図を示す。上記合成方法は、通常、反応物質(金属塩及び金属ケイ酸塩溶液)を混合50して、アルカリpHの条件下で反応溶液混合物を形成する工程を含む。上記反応溶液混合物は、マイクロ波オーブンに置かれ、上記反応溶液混合物から合成粘土粒子の共沈60をさせる。洗浄及び濾過70工程は、上記共沈60工程から得られた製品混合物を処理する。上記濾過された製品は、次に、250℃で8時間乾燥させる。そして、実質的に純粋状態の乾燥した合成粘土粒子が得られる。
【0052】
〔実施例〕
上記発明の限定されない実施例を更に記載する。これは、発明の範囲をいかなる方法でも限定するように解釈されるべきではない。
【0053】
〔実施例1〕
第一のタンクに、塩化マグネシウム(純度99%)69g、塩化リチウム(純度99%)2.12g及び水500mLを充填した。ケイ酸ナトリウム(100gあたり、29gSiO及び8.9gNaO)溶液88gは水500mLに希釈する。上記反応溶液は、第一のタンク及び第二のタンク中でそれぞれ均一に混合し、その後、均一に攪拌した状態で30分間にわたって反応タンク中に移動させる。次に、反応タンク中の反応溶液混合物のpHを9.5へ上げるために、0.11M水酸化ナトリウムを滴下する。上記反応タンク中の反応溶液混合物は、30分間攪拌する。上記反応タンクは、2.45GHzの周波数のマイクロ波を30分間放射する、最大出力100Wのマイクロ波オーブン内に収容される。生成物の混合物は、水洗され、濾過される。濾過後の生成物は、250℃で8時間乾燥される。沈殿の分析によって、沈殿した粒子は、合成粘土であり、平均粒子サイズが約30nmであることが示された。これは、任意の従来の加熱を用いないマイクロ波加熱が、粘土粒子を合成するに適した手段であることを示す。
【0054】
〔実施例2〕
第一のタンクに、塩化マグネシウム(純度99%)49.94g、塩化リチウム(純度99%)4.45g及び水900mLを充填した。ケイ酸ナトリウム(100gあたり、29gSiO及び8.9gNaO)溶液166gは水900mLに希釈する。上記反応溶液は、第一のタンク及び第二のタンク中でそれぞれ均一に混合し、その後、均一に攪拌した状態で30分間にわたって反応タンク中に移動させる。次に、反応タンク中の反応溶液混合物のpHを9.5へ上げるために、0.11M水酸化ナトリウムを滴下する。上記反応タンクは、2.45GHzの周波数で動作する、最大出力5000Wのマイクロ波オーブン内に収容される。次に、上記反応タンクは、10分間出力1100Wのマイクロ波放射を受けさせ、その後、50分間330Wのマイクロ波を受けさせる。生成物の混合物は、水洗し、濾過される。濾過した生成物は、250℃で8時間乾燥される。
【0055】
図3は、市販の製品であるLaponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)(standard1と名付ける)と比較して、上述した実験手順に従って得られた実験生成物(”sample7”と名付ける)のX線回折パターンを示す。図3に示すように、得られた実験生成物のX線回折パターンは、Laponite(登録商標)のパターンよりも小さい。従って、ここの開示に従って得られた上記実験生成物(合成粘土粒子)の3次元的原子構造は、市販の製品と同程度であることが示された。
【0056】
〔実施例3〕
実験は、反応タンク中の反応溶液混合物のpHを9.5へと調製する工程までを、実施例2の工程に従って繰り返す。この実施例では、次に、上記反応タンクに対して、10分間3800Wの出力のマイクロ波放射を受けさせ、その後、30分間1100Wの出力のマイクロ波放射を受けさせた。生成物の混合物は、水洗し濾過される。濾過した生成物は、250℃で8時間乾燥される。
【0057】
図4は、市販の製品であるLaponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)(standard1と名付ける)と比較した、上述した実験手順に従って得られた実験生成物(”Wim-T30”と名付ける)のX線回折パターンを示す。図4に示すように、得られた実験生成物のX線回折パターンは、Laponite(登録商標)のパターンよりも小さい。従って、ここの開示に従って得られた上記実験生成物(合成粘土粒子)の3次元的原子構造は、市販の製品と同程度であることが示された。
【0058】
〔実施例4〕
実験は、反応タンク中の反応溶液混合物のpHを9.5へと調製する工程までを、実施例2の工程に従って繰り返す。この実施例では、次に、上記反応タンクに対して、10分間1100Wの出力のマイクロ波放射を受けさせ、その後、4分間800Wの出力のマイクロ波放射を受けさせた。生成物の混合物は、水洗し濾過される。濾過した生成物は、250℃で8時間乾燥される。
【0059】
図5は、市販の製品であるLaponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)(standard1と名付ける)と比較した、上述した実験手順に従って得られた実験生成物(”wk1_1T10wk0_8T30”と名付ける)のX線回折パターンを示す。図5に示すように、得られた実験生成物のX線回折パターンは、Laponite(登録商標)のパターンよりも小さい。従って、ここの開示に従って得られた上記実験生成物(合成粘土粒子)の3次元的原子構造は、市販の製品と同程度であることが示された。
【0060】
〔実施例5〕
実験は、反応タンク中の反応溶液混合物のpHを9.5へと調製する工程までを、実施例2の工程に従って繰り返す。この実施例では、次に、上記反応タンクに対して、10分間3800Wの出力のマイクロ波放射を受けさせ、その後、16分間1100Wの出力のマイクロ波放射を受けさせた。生成物の混合物は、水洗し濾過される。濾過した生成物は、250℃で8時間乾燥される。
【0061】
図6は、市販の製品であるLaponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)(standard1と名付ける)と比較した、上述した実験手順に従って得られた実験生成物(”wk3800T10wk1100T16”と名付ける)のX線回折パターンを示す。図6に示すように、得られた実験生成物のX線回折パターンは、Laponite(登録商標)のパターンよりも小さい。従って、ここの開示に従って得られた上記実験生成物(合成粘土粒子)の3次元的原子構造は、市販の製品と同程度であることが示された。
【0062】
〔応用〕
開示された方法は、連続的方法であることが理解されるであろう。
【0063】
開示された方法では、高圧又は高温の使用が含まれないことが理解されるであろう。これにより、資本及び動作コストを効率的に削減する。
【0064】
開示された方法では、均一な大きさ、形状及び組成の合成粘土粒子を生産することが理解されるであろう。
【0065】
開示された方法では、合成粘土粒子の生産に要求される時間がより少ないことが理解されるであろう。これは、従来の、合成粘土粒子の共沈のための加熱方法の代わりに、放射線源の使用によって可能となる。
【0066】
開示された方法では、実質的に純粋な状態である合成粘土粒子が生産されることが理解されるであろう。更には、開示された方法では、純粋な合成粘土粒子を得るための複雑な精製工程が要求されないことが理解されるであろう。
【0067】
開示された方法では、幾つかの商用利用される合成粘土粒子を生産することが理解されるであろう。
【0068】
上記合成粘土粒子は、水溶液のレオロジー調整剤、被膜剤、触媒若しくは触媒の支持体、ナノ複合材料若しくはエネルギー貯蔵ナノ複合材料、光電子技術、光電池及び有機発光ダイオード、並びに、湿度センサー若しくはバイオセンサーのようなセンサーとして、又はこれらにおいて使用することができる。
【0069】
上記発明の他の各種変更及び適応は、精神及び発明の範囲から逸脱しない上述した開示を読んだ後の当業者にとって明白であり、このような全ての変更及び適応は、添付の請求項の範囲内で生じることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、反応溶液混合物を形成する反応物質を混合する工程、及び当該反応溶液混合物から合成粘土粒子の共沈のためのマイクロ波放射用マイクロ波オーブンの概略図である。
【図2】図2は、粘土粒子を合成するための工程経路図である。
【図3】図3は、Laponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)と比較した、実施例2で得られた実験サンプルのX線回折パターンである。
【図4】図4は、Laponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)と比較した、実施例3で得られた実験サンプルのX線回折パターンである。
【図5】図5は、Laponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)と比較した、実施例4で得られた実験サンプルのX線回折パターンである。
【図6】図6は、Laponite(登録商標)(Southern Clay Particles株式会社、テキサス)と比較した、実施例5で得られた実験サンプルのX線回折パターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土粒子を合成する方法であり、
上記粘土粒子を形成する条件下で放射線源を用いて、金属塩及び金属ケイ酸塩の反応溶液混合物を加熱する工程を含む、方法。
【請求項2】
リチウムケイ酸塩、ナトリウムケイ酸塩、カリウムケイ酸塩、ベリリウムケイ酸塩、マグネシウムケイ酸塩及びカルシウムケイ酸塩からなる群より上記金属ケイ酸塩を選択する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記反応溶液混合物において、上記金属塩に対して過剰モルの金属ケイ酸塩を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記放射線源がマイクロ波放射線源である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記マイクロ波を、30W〜180kW又は30W〜1200Wの範囲内の出力で使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記マイクロ波を0.3GHz〜300GHzの範囲内の周波数で使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
上記マイクロ波を20分〜2時間の範囲内の時間で使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
上記加熱を実質的にアルカリのpH条件下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記pHが少なくとも8.5である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記pHが9〜10の範囲内である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記アルカリpH条件を達成するために、金属水酸化物溶液を上記反応物混合物に加える工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
上記金属塩における金属が多価金属塩溶液である、請求項1の方法。
【請求項13】
上記金属塩における金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、並びに、元素周期表のIIIA族、VIIA族及びVIII族からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記金属塩における金属が、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄及びマンガンからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記金属塩におけるアニオンがハロゲン化物である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
上記金属塩におけるアニオンが、塩化物アニオン及びフッ化物アニオンの少なくとも1つである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
上記金属塩及び上記ケイ酸塩源が、クリオライト、クリノクロア、カオリナイト、ノントロナイト、パラゴナイト、金雲母、葉ロウ石、スメクタイト、滑石、バーミキュライト及びこれらの混合物から選択される粘土粒子を合成するために選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記スメクタイト粘土が、ベントナイト、ベージライト、ヘクトライト、モンモリオナイト、サポー石、ステブンサイト及びこれらの混合物から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記粘土粒子を上記反応溶液から除去する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
除去した上記粘土粒子を、外部からの水を上記粘土粒子から実質的に除去するために乾燥する工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
乾燥する上記工程を約250℃の温度で実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
乾燥する上記工程を約8時間実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
上記粘土粒子の大きさが、ナノメータの範囲からマイクロメータの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
上記粘土粒子の大きさが40nm〜120nmの範囲内である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法によって得られた粘土粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−521396(P2010−521396A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553552(P2009−553552)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000080
【国際公開番号】WO2008/115150
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509259105)シャヨナノ シンガポール プロプライエタリー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SHAYONANO SINGAPORE PTE LTD
【住所又は居所原語表記】89B,#03−06,The Rutherford,Singapore Science Park One,Singapore 118261,Singapore
【Fターム(参考)】