説明

粘度測定装置、及びこれを用いた粘度測定方法

【課題】 所定量の試料液や洗浄液を確実に粘度計内に注入することができ、長期に渡って高精度の粘度測定を安定的に実施することが可能な粘度測定装置を提供する。
【解決手段】 本発明の粘度測定装置1は、試料液の所定体積当たりの流下時間を測定するための測時空間部21と、その上部に連通する上側液溜部22とを有する測定管31と、測定管31の下部に連通し、上側液溜部22に試料液81を注入するための試料液注入管25とを有する粘度計2と、粘度計2内に洗浄液72を供給する洗浄液供給手段4とを備えたものであり、粘度計2の測定管31の上部には、外気に連通しない密閉状態で内部の容積を変動させることにより、粘度計2内への試料液81及び洗浄液72の注入、及びこれらの液の排出を行う注入・排出手段10が接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度測定装置、及びこれを用いた粘度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘度測定操作を効率化するべく、いわゆる改良ウベローデ型粘度計を使用した自動粘度測定装置が提案されている(特許文献1〜5等)。
特に特許文献4、5に記載の装置では、試料容器の取り付け・交換、流下時間の測定、測定を終了した試料液の廃棄、粘度計内の洗浄などがすべて自動化されており、複数種類の試料液の測定を行う場合にも、簡易な操作で効率良く粘度測定を行うことができる。
【0003】
図4に示すように、手動のウベローデ型粘度計300は、試料液の所定体積当たりの流下時間を測定するための測時球310と、測時球310の上部に連通する上側液溜球320と、測時球310の下部に連通する毛細管330及び下側液溜球340とを有する測定管410を主体として構成されている。また、この測定管410から第1の分岐管420と第2の分岐管430が分岐され、第2の分岐管430には試料液溜球350が形成されている。
【0004】
「改良ウベローデ型粘度計」は、上記手動のウベローデ型粘度計を改良したもので、例えば、試料液溜球350と下側液溜球340との間で切除し測定管410を下方に延出させたものなどが挙げられる。かかる改良ウベローデ型粘度計では、測定管410の延出させた部分を、試料液を充填した試料容器内に挿入し、粘度計内に試料液を注入できるようになっている。
【特許文献1】実公昭50−28776号公報
【特許文献2】特公昭53−15665号公報
【特許文献3】特公平4−7827号公報
【特許文献4】特開2002−5808号公報
【特許文献5】特開2004−061375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献4、5に記載の粘度測定装置では、吸引装置として真空ポンプを用い、粘度計内に試料液や洗浄液を吸引・充填している。また、この際、上側液溜球あるいは測時球の上端に設けたセンサーにて液面を光学的に読み取り、液の充填量を調節している。
【0006】
しかしながら、かかる先行技術では、センサーの故障や、粘度計に付着した試料液中の固形分による誤作動等によって、試料液や洗浄液が粘度計を超えて吸引装置側にまで及ぶことがある。また、試料液や洗浄液が誤って少量であった場合等には、粘度計内に気泡が吸引され、試料液や洗浄液の飛沫が吸引装置側に及ぶことがある。このように、先行技術では、粘度計内に測定や洗浄に必要な量の試料液や洗浄液を注入しつつ、粘度計を超えて吸引装置側には液が及ばないように、コントロールすることが極めて難しい。試料液や洗浄液が粘度計を超えて吸引装置側にまで及ぶと、その流路に存在する開閉弁や吸引装置の劣化等を招く恐れがある。
【0007】
また、粘度測定装置では、先に測定した試料液のコンタミネーションを防ぐべく、毎測定終了後に比較的軽い洗浄を実施するが、長期間使用すると、粘度計、特に測定の要である粘度計の毛細管部分に、軽い洗浄では落ちきれない汚れ(試料液中の固形分等)が付着して、寸法や流れ摩擦抵抗等が変化し、測定精度が低下することがある。そのため、粘度計を定期的に(毎日等)、クロム酸混液やアルカリ等を含むガラス用強力洗浄剤やその希釈液、強力な有機溶媒等の強力な洗浄液を用いて洗浄することが好ましい。
しかしながら、吸引装置や開閉弁等への影響は、特に強力な洗浄液において顕著であるため、従来は、粘度計を取り付けたまま強力洗浄を行うことはほとんどなされていない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、所定量の試料液や洗浄液を確実に粘度計内に注入することができ、長期に渡って高精度の粘度測定を安定的に実施することが可能な粘度測定装置、及びこれを用いた粘度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討し、以下の粘度測定装置及び粘度測定方法を発明した。
【0010】
本発明の粘度測定装置は、試料液の所定体積当たりの流下時間を測定するための測時空間部と、その上部に連通する上側液溜部とを有する測定管と、該測定管の下部に連通し、前記上側液溜部に試料液を注入するための試料液注入管とを有する粘度計と、前記粘度計内に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えた粘度測定装置において、前記粘度計の前記測定管の上部には、外気に連通しない密閉状態で内部の容積を変動させることにより、前記粘度計内への試料液及び洗浄液の注入、及びこれらの液の排出を行う注入・排出手段が接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の粘度測定装置には、廃液を排出するための廃液管を設けることができるが、本発明では、廃液管、及び、前記測定管の前記上側液溜部から廃液管に到る液流路には、開閉弁を設けない構成とすることができる。
【0012】
また、本発明の粘度測定装置においては、前記洗浄液供給手段から前記粘度計内に対して、前記粘度計内に注入される試料液の最高液面より高い位置から洗浄液が注入されるように構成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の粘度測定方法は、試料液の所定体積当たりの流下時間を測定するための測時空間部と、その上部に連通する上側液溜部とを有する測定管と、該測定管の下部に連通し、前記上側液溜部に試料液を注入するための試料液注入管とを有する粘度計を用いて、試料液の粘度を測定する粘度測定工程と、前記粘度計内を洗浄液にて洗浄する洗浄工程とを有する粘度測定方法において、
外気に連通しない密閉状態で内部の容積を変動させることが可能な注入・排出手段にて、前記粘度計内への試料液及び洗浄液の注入、及びこれらの液の排出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定量の試料液や洗浄液を確実に粘度計内に注入することができ、長期に渡って高精度の粘度測定を安定的に実施することが可能な粘度測定装置、及びこれを用いた粘度測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
「粘度測定装置」
以下、図面に基づいて、粘度計として改良ウベローデ型粘度計を用いる場合を例として、本発明に係る実施形態の粘度測定装置について説明する。図1は装置全体図、図2は粘度計の詳細な構造を示す縦断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の粘度測定装置1は、粘度計2と、粘度計内に試料液を供給する試料液供給ユニット(試料液供給手段)3と、粘度計内に洗浄液を供給する洗浄液供給ユニット(洗浄液供給手段)4と、廃液を回収する廃液回収ユニット(廃液回収手段)5とを主体として構成されている。
本実施形態では、粘度計内への試料液及び洗浄液の注入、及びこれらの液の排出を行う機構等が特徴的なものとなっている。
【0017】
図1、図2に示すように、粘度計2は、試料液の所定体積当たりの流下時間を測定するための測時球(測時空間部)21と、測時球21の上部に連通する上側液溜球(上側液溜部)22と、測時球21の下部と毛細管23を介して連通する毛細管下空間部24とを有する測定管31を主体として構成されている。この測定管31の毛細管下空間部24から分岐管32が分岐している。また、毛細管下空間部24には、試料液を注入するための試料液注入管25が接続されている。
【0018】
粘度計2では、上側液溜球22の略中央部、測時球21の上端及び下端に、各々液面を読み取るセンサーSS1〜SS3が取り付けられている。センサーSS2及びSS3は各々、測時球21の上端及び下端のウベローデ型粘度計の標線に対応する位置に取り付けられている。これらセンサーとしては、液面の位置を読み取ることができれば特に限定されないが、例えば、粘度計2を挟持して対向配置された一対の光ファイバを具備し、一方の光ファイバから光を照射し、粘度計2を透過した光を他方の光ファイバで読み取ることにより、液面の位置を読み取るもの等が挙げられる。
【0019】
粘度計2は、少なくとも試料液が通過する部分が、所定の温度に保持された恒温槽40内に配置されている。恒温槽40には、電気ヒーターやシーズヒーター等の加熱器、温度検出器、槽内を攪拌する攪拌器等を備えた温度制御ユニット41、及び必要に応じて冷却用熱交換器(図示略)、ドレイン抜き取り配管(図示略)等が備えられている。
【0020】
測定管31及び分岐管32の上端には、各々配管51、53が接続されており、これら配管は配管55を介して互いに連通されている。配管55は、一端が圧力調整弁REG1を介して、大気圧より高い所定圧の気体を供給する気体供給源(気体供給手段)(図示略)に接続され、他端が大気に通ずる通気管60に接続されている。気体供給源としては、気体ボンベ、コンプレッサ等が挙げられる。また、配管51、53から各々配管52、54が分岐され、これら配管が洗浄液供給ユニット4に連通している。上記配管51〜55は、試料液や洗浄液に対して耐性を有する材料から構成されている。
各配管51〜54、60には開閉弁V1〜V5が設けられ、配管55の圧力調整弁REG1と配管53との連結部との間には開閉弁V6が設けられている。開閉弁V1〜V6としては、試料液や洗浄液に対して耐性を有する弁であれば特に限定されないが、電磁弁等が好適である。
【0021】
本実施形態では、粘度計2の測定管31の上部に、外気に連通しない密閉状態で内部の容積を変動させることにより、粘度計2内への試料液及び洗浄液の注入、及びこれらの液の排出を行う注入・排出手段が接続されている。このような注入・排出手段を用いて、粘度計2内への試料液や洗浄液の吸引・充填や、粘度計2内の液の排出、試料容器や洗浄用容器から測時球21への液の移動等の操作を行うことにより、試料容器や洗浄用容器として、特別仕様の耐圧性容器等を用いる必要がなく、ウベローデ型粘度計に通常設けられている試料液溜球(図4の符号350)を設ける必要もなく、結果として、装置全体を簡略化し、センサーや開閉弁の設置を少なくすることができる。
上記注入・排出手段としては特に限定されないが、例えば、ピストンポンプ、ベローズポンプ、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ等が挙げられる。
【0022】
注入・排出手段の最も好ましい形態は、図1に示すピストン式の注入・排出装置(ピストンポンプ)10である。この注入・排出装置10は、注射器の如く、有底筒状部材11内をピストン12がスライドするように概略構成されたもので、ピストン12をスライドさせ、有底筒状部材11とピストン12とで囲まれる空間部13の内容積を変動させることで、空間部13の内圧を変動させ、粘度計2内への試料液及び洗浄液の吸引、及びこれらの液の排出を行うものである。
かかるピストン式の注入・排出装置は、容積および容積変化率の制御を低価格でかつ小型に実現でき、精度も高い。従って、数ml程度の少量液体の移送の際に、流量および流速の制御が容易であることから、好ましく用いられる。
【0023】
試料液供給ユニット3は、試料容器80の粘度測定装置1への取り付けや交換を自動的に行うものである。その構成としては、特許文献4に記載のもの、具体的には、複数の試料容器80を載置することが可能な試料ステージ120と、該試料ステージ上の特定の試料容器80を選定する手段と、試料ステージを地面に対して水平な面(X−Y平面)で移動させた後、特定の試料容器80を上下方向(Z方向)に移動させる移動手段等を備えたものが挙げられる。
試料容器80を上下方向(Z方向)に移動させる手段としては、試料容器80を支持する支持板82と、これを上下方向(Z方向)に移動させるエアシリンダー140とを備えたものが挙げられる。この場合、試料溶液80の転倒等を防止するために、支持板82の上面に凹部(図示略)を設け、この中に試料容器80の底部を嵌め込む構成とすることが好ましい。
図示するように、本実施形態では、試料容器80内の試料液81に、試料液注入管25の先端部を浸漬させ、粘度の測定を行う。
【0024】
洗浄液供給ユニット4は、内部に洗浄液72が充填された洗浄液槽73と、所定量の洗浄液72を貯留し、粘度計2内に供給する洗浄液溜球(洗浄液溜部)71とから概略構成されている。洗浄液槽73には、その内部を加圧するための加圧気体供給源(図示略)に連通する加圧管57と、一端が洗浄液槽73内の洗浄液72中に浸漬され、他端が洗浄液溜球71に連通する洗浄液配管56とが接続されている。
【0025】
洗浄液溜球71の上部には、大気に通ずる通気管58が接続されている。
また、洗浄液溜球71は粘度計2より高い位置に設置され、粘度計2の測定管31、分岐管32に各々繋がる配管52、54は合流され、洗浄液溜球71の下部に連通している。これによって、洗浄液溜球71内の洗浄液72は、粘度計2内に対して、粘度計2内に注入される試料液81の最高液面より高い位置から流入するようになっている。
【0026】
本実施形態では、洗浄液溜球71に、粘度計2の内容積(測定管31、分岐管32、及び試料液注入管25の合計内容積)に略等しい量の洗浄液72を貯留し、洗浄を行う。そして、洗浄液溜球71内に所定量の洗浄液72を注入するために、洗浄液溜球71には粘度計2に注入する洗浄液72量に対応させて、液面を読み取るセンサーSS4が取り付けられている。センサーSS4としては、SS1〜SS3と同様の構成のものが採用できる。
【0027】
廃液回収ユニット5は、洗浄用容器90内の廃液102を排出する廃液管26と、廃液102を回収する廃液回収容器101と、洗浄用容器90内の廃液102を廃液回収容器101内に吸引する真空ポンプ(吸引装置)103とから概略構成されている。なお、洗浄用容器90は、洗浄工程で洗浄済みの洗浄液を廃液として回収するために用いる試料容器と同様又は同一の空容器である。
廃液管26はその一部が上下方向(Z方向)に伸縮するW字状等の蛇管部26aとなっており、その伸縮を利用し、廃液管移動手段130により、廃液管26の先端部を上下できるようになっている。本実施形態では、廃液管移動手段130により廃液管26の先端部を降下させることで、廃液管26の先端部を試料ステージ120上の特定位置の洗浄用容器90内に挿入し、廃液102を廃棄する。
廃液回収容器101は密閉可能なものが好ましい。
【0028】
本実施形態では、試料液注入管25、廃液管26、及び廃液回収容器101と真空ポンプ103とを繋ぐ配管には、開閉弁が一切設けられていない。そして、このように、廃液管26、及び測定管31の上側液溜球22から廃液管26に到る液流路には、一切開閉弁が設けられていない点が、本実施形態の特徴の一つである。
【0029】
本実施形態の粘度測定装置1には、粘度測定の各種操作を時間で制御するために、タイマー(図示略)が取り付けてある。また、試料液81の測時球21での流下時間を計測する計器が取り付けられている(図示略)。
その他、粘度測定装置1はコンピュータやコンピュータのプログラムで作動するコントローラ(図示略)に接続されており、これによって各種操作の制御やデータ処理はすべて自動的に行われるようになっている。
粘度測定装置1は以上のように構成されている。
【0030】
「粘度測定方法」
次に、図1、図3、表1に基づいて、上記の粘度測定装置1を用いた粘度測定方法について説明する。図3は、粘度測定方法を示すフローチャートである。表1は、工程毎に開ける開閉弁、注入・排出装置のピストンの移動、着目するセンサー、及びタイマーの設定時間を示すものである。表中、タイマーの設定は任意である。
開閉弁はノーマリークローズとし、特記しないときは閉じられているものとする。
注入・排出装置10のピストン12は、特記しないときはノーマルポジションMにあるものとする。また、ピストン12のノーマルポジションMよりも空間部13の内容積を大きくするポジションをU、逆に小さくするポジションをLと称す。
また、試料液81と洗浄液72とを分別廃液する場合について説明を行う。
【0031】
測定に先立ち、試料ステージ120にはあらかじめ、単数又は複数の試料容器80及び洗浄用容器90をセットしておく。
【0032】
(粘度測定工程)
工程1〜7において、試料液の粘度測定を行う。
<工程1>
はじめに、試料液供給ユニット3により、試料液81を充填した試料容器80を移動させ、測定位置にセットする。
すなわち、試料ステージ120をX方向及びY方向に移動させることで、試料容器80を試料液注入管25の直下に移動する。その後、エアシリンダー140により支持板82を上昇させることで、試料液注入管25の先端部が試料容器80内の試料液81に浸かる位置まで、試料容器80をZ方向に持ち上げ、試料容器80を測定位置にセットする。
【0033】
<工程2>
次に、試料容器80内の試料液81を粘度計2の測時球21に注入・充填する。
すなわち、開閉弁V5を開け、注入・排出装置10のピストン12をポジションUからLに移動させ、配管51内の空気を大気中に排出する。その後、開閉弁V1を開け、注入・排出装置10のピストン12をポジションLからUに移動させて、空間部13の内圧を下げることで、試料容器80内の試料液81を測時球21に吸引・充填する。
このとき、上側液溜球22のセンサーSS1に着目し、液面がセンサーSS1に達したら、正常に試料液81が送り込まれたと判断し、開閉弁V1及びV5を閉じる。また、液面がセンサーSS2を超えてから所定時間t2が経過したら、正常に試料液81が送り込まれたと判断して、開閉弁V1及びV5を閉じてもよい。
【0034】
<工程3>
この状態で、粘度計2内に注入した試料液81が設定温度(恒温槽40と同一温度)になるまで、例えば10分間程度保持する。この工程においては、タイマーをセットし、試料液81が注入されてから所定時間t3が経過したら、恒温槽40と同一温度に到達したものと判断してもよい。
【0035】
<工程4>
次に、測時球21での試料液81の流下時間を測定する。
すなわち、略同時に開閉弁V1、V3、及びV5を開けることによって、測定管31及び分岐管32を、配管51、53、55を介して連通させ、実質的に同一圧力にする。その結果、毛細管下空間部24に気体が送り込まれ、測時球21の上下が実質的に同一の圧力になるので、試料液81は重力に従って流下する。このとき、センサーSS2とSS3に着目し、センサーSS2の作動と同時に計器(図示略)による流下時間の計測を開始し、センサーSS3が作動したら、計測を停止する。これによって、試料液81のウベローデ型粘度計の標線に対応する位置SS2からSS3までの流下時間が測定される。測定終了後、開閉弁V1、V3、及びV5を閉じて、測定値を記録する。
【0036】
<工程5>
同じ試料液について、複数回測定を行う場合には、以上の工程2〜4の操作を繰り返し行う。
<工程6>
所定回数の測定を終了後、データ処理を行う。
<工程7>
データ処理後、工程1と逆の操作を行い、試料容器80を元の位置に戻す。
【0037】
(洗浄工程)
次に、工程8〜16において、粘度計2内を洗浄する。
<工程8>
はじめに、試料容器と同様又は同一の空容器である洗浄用容器90を、工程1と同様にして測定位置にセットする。
【0038】
<工程9>
次に、洗浄液溜球71内に、粘度計2の内容積(測定管31、分岐管32、及び試料液注入管25の合計内容積)に略等しい量の洗浄液72を貯留する。すなわち、加圧管57を介して加圧気体を供給することで、洗浄液供給ユニット4の洗浄液槽73内の洗浄液72を、洗浄液配管56を介して洗浄液溜球71に注入する。この際、センサーSS4に液面が達した時点で、注入を停止することで、洗浄液溜球71内に所定量の洗浄液72を注入することができる。
その後、順次又は同時に開閉弁V2及びV4を開けることで、洗浄液溜球71内の洗浄液72を、粘度計2内、すなわち測定管31、分岐管32、及び試料液注入間25内に流下させる。洗浄液溜球71内の洗浄液72がすべて流下し、洗浄用容器90に流入したら、開閉弁V2及びV4を閉じる。このように、本実施形態では、粘度計2内に対して、粘度計2内に注入される試料液81の最高液面より高い位置から洗浄液72を流下させる。
この工程においては、タイマーをセットし、洗浄液溜球71内の洗浄液72が流下し始めてから所定時間t9が経過したら、正常に洗浄液72が流下し終わったと判断して開閉弁V2及びV4を閉じてもよい。
【0039】
<工程10>
次に、工程2と同様にして、洗浄用容器90内の洗浄液72を粘度計2の測時球21に注入・充填する。
すなわち、開閉弁V5を開け、注入・排出装置10のピストン12をポジションUからLに移動させ、配管51内の空気を大気中に排出する。その後、開閉弁V1を開け、注入・排出装置10のピストン12をポジションLからUに移動させて、空間部13の内圧を下げることで、洗浄用容器90内の洗浄液72を測時球21に吸引・充填させる。
このとき、上側液溜球22のセンサーSS1に着目し、液面がセンサーSS1に達したら、正常に洗浄液72が送り込まれたと判断し、開閉弁V1及びV5を閉じる。また、液面がセンサーSS2を超えてから所定時間t2が経過したら、正常に洗浄液72が送り込まれたと判断して、開閉弁V1及びV5を閉じてもよい。
【0040】
<工程11>
次に、粘度計2内に注入された洗浄液72を、洗浄用容器90に押し戻す。
すなわち、開閉弁V5を開け、注入・排出装置10のピストン12をポジションLからUに移動させて、空間部13内に所定量の空気を導入し、内圧を上げた後、開閉弁V5を閉じる。その後、開閉弁V1を開け、注入・排出装置10のピストン12をポジションUからMに移動させ、測時球21内の洗浄液72を加圧し、洗浄用容器90に移送させる。さらに、開閉弁V3を開け、注入・排出装置10のピストン12をポジションMからLに移動させ、分岐管32内の洗浄液72を加圧し。洗浄用容器90に移送させる。なお、開閉弁V1、V3を開ける順序は逆でもよい。
【0041】
<工程12>
本実施形態では、同一の洗浄液を用いて洗浄する工程10、11(便宜上、すすぎ工程と称す。)を2回以上繰り返すことが好ましい。
<工程13>
その後、工程8と逆の操作を行い、洗浄用容器90を元の位置に戻す。
【0042】
<工程14>
次に、廃液管移動手段130によって、廃液管26の先端部を、洗浄用容器90内の廃液(洗浄済みの洗浄液)102の液面より下方まで降下させる。その後、真空ポンプ103を作動させて、洗浄用容器90内の廃液102を吸引し、廃液管26を介して廃液回収容器101内に回収する。残液がなくなるまで、必要に応じてこの工程を複数回繰り返す。
<工程15>
必要に応じて工程8〜14の操作を繰り返し、洗浄液を交換し、複数回洗浄を行う。
【0043】
<工程16>
所定回数の洗浄、洗浄液の廃液を終了後、粘度計2内を乾燥する。
すなわち、順次又は同時に開閉弁V1、V3、及びV6を開け、真空ポンプ103を作動させることで、粘度計2内に気流を起こし、粘度計2内を乾燥する。このとき、タイマーをセットし、開閉弁V1、V3、及びV6を開けてから、所定時間t16が経過したら正常に乾燥が行われたと判断して、開閉弁V1、V3、V6を閉じる。
以上のようにして、一試料液について粘度測定及び洗浄が終了する。
【0044】
<工程17>
複数の試料液の粘度測定を行う場合には、工程1〜16の操作を繰り返し行い、全試料液について各々、粘度測定及び洗浄を行う。
【0045】
本実施形態の粘度測定装置1では、試料液供給ユニット3と、洗浄液供給ユニット4と、廃液回収ユニット5とを備える構成としているので、試料容器の取り付け・交換、流下時間の測定、測定を終了した試料液の廃棄、粘度計内の洗浄・乾燥を、効率良く簡易に実施することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の粘度測定装置1では、吸引装置として、外気に連通しない密閉状態で内部の容積を変動させることにより、粘度計内への試料液及び洗浄液の注入、及びこれらの液の排出を行う注入・排出装置10(注入・排出手段)を採用している。したがって、吸引装置として真空ポンプを採用している先行技術と異なり、所定量の試料液81や洗浄液72を確実に粘度計2内に注入することができる。
【0047】
真空ポンプではその吸引力が吸引中ほとんど変化しないのに対し、注入・排出装置10では、吸引力は吸引した液量の増加と共に低下し、最終的には吸引力と吸引した液に加わる重力がバランスして、一定の高さで自然に液の上昇が止まる。
したがって、注入・排出装置10のストロークを機械的に、あるいは注入・排出装置10の駆動装置を電気的あるいは機械的に調節するなどして、吸引が自然停止する液面高さ(吸引停止液面)を、センサーSS1の上方でかつ開閉弁V1の下方に設定しておけば、センサーSS1やSS2の故障や誤作動が発生したり、試料液81や洗浄液72が誤って少量であった場合などの不測の事態にも、液や飛沫の吸引は開閉弁V1より下方で自然に停止し、これらが粘度計2を超えて、開閉弁や吸引装置に及ぶことがない。
【0048】
このように本実施形態では、吸引した液量が設定した吸引停止液面に近づくにつれて自然に吸引速度が低下すること、さらに、センサーSS1やSS2と、注入・排出装置10の自動吸引停止機能による2重安全機構を備えていることにより、液や飛沫が粘度計2を超えて、開閉弁や吸引装置に及ぶことがなく、所定量の試料液81や洗浄液72を確実に粘度計2内に注入することができる。
【0049】
したがって、強力な洗浄液を用いる場合にも、粘度計2を装置に取り付けたまま、安心して洗浄作業を実施することができるので、強力洗浄の効率が著しく向上でき、強力洗浄の頻度を増すこともできる。その結果、粘度計2の清浄状態が維持され、長期に渡って高精度の粘度測定を安定的に実施することができる。
【0050】
また、先行技術では、廃液を廃棄する流路に開閉弁があるため、流れのよどみやデッドスペースが形成され、その部分に洗浄剥離した固形物等の異物が残る恐れがあり。かかる異物の残留は、開閉弁の気密性を低下させたり、粘度測定中の試料液に混入して測定誤差を招く恐れがある。
【0051】
しかしながら、本実施形態では、注入・排出装置10のピストン12移動により、粘度計2内への試料液や洗浄液の吸引・充填や、粘度計2内の液の排出、試料容器や洗浄用容器から測時球21への液の移動等の操作を行う構成としている。したがって、上記した如く、装置全体を簡略化し、センサーや開閉弁の設置を少なくすることができる。
この効果によって、本実施形態で説明したように、廃液管26、及び、測定管31の上側液溜球22から廃液管26に到る液流路には、開閉弁を設けない構成とすることができる。そのため、廃液を廃棄する流路における、流れのよどみやデッドスペースの形成、及びこれに繋がる開閉弁の気密性の低下や、粘度測定中の試料液への異物の混入等が抑制され、装置の稼働率を高め、長期に渡って高精度の粘度測定を安定的に実施することができる。
また、開閉弁を少なくできることは、廃液102の廃棄がスムーズで、しかも操作が簡便であるため、洗浄効率の向上にも繋がる。
【0052】
本実施形態ではまた、洗浄液槽73と粘度計2との間に、洗浄液溜球71を設け、その内部に、粘度計2の内容積(測定管31、分岐管32、及び試料液注入管25の合計内容積)に略等しい量の洗浄液72を貯留し、洗浄を行う構成を採用している。したがって、粘度計2内に洗浄に必要な量の洗浄液72を注入しつつ、過剰な洗浄液72が流入することを防止することができる。
さらに、本実施形態では、洗浄液供給ユニット4から粘度計2内に対して、粘度計2内に注入される試料液81の最高液面より高い位置から洗浄液72が注入されるように構成している。したがって、位置エネルギーの差を利用して、洗浄液溜球71から粘度計2内に対して、洗浄液72を効率良く注入することができる。
本実施形態ではこれらの効果が相俟って、最小限の洗浄液72量でもって、確実に効率良く洗浄を行うことができる。
【0053】
なお、粘度測定装置1は一実施形態にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜設計変更可能である。
例えば、改良ウベローデ型粘度計を用いる場合についてのみ説明したが、用いる粘度計は、試料液の粘度等に応じて適宜変更できる。
また、粘度計2の測定管31、分岐管32の上部に各々繋がる配管52、54を合流させ、これを洗浄液溜球71の下部に連通させる構成としたが、洗浄液溜球71と粘度計2との接続構造は適宜設計可能である。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の粘度測定技術は、多数の試料液の粘度測定や、ポリマー等の固形分を含む試料液の粘度測定等に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明に係る実施形態の粘度測定装置の全体図である。
【図2】図2は、本発明に係る実施形態の粘度測定装置に備えられた粘度計の構造を示す図である。
【図3】図3は、本発明に係る実施形態の粘度測定方法のフローチャートである。
【図4】図4は、手動のウベローデ型粘度計の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 粘度測定装置
2 粘度計
4 洗浄液供給ユニット(洗浄液供給手段)
10 注入・排出装置(注入・排出手段)
21 測時球(測時空間部)
22 上側液溜球(上側液溜部)
25 試料液注入管
31 測定管
32 分岐管
72 洗浄液
81 試料液



【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液の所定体積当たりの流下時間を測定するための測時空間部と、その上部に連通する上側液溜部とを有する測定管と、該測定管の下部に連通し、前記上側液溜部に試料液を注入するための試料液注入管とを有する粘度計と、前記粘度計内に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えた粘度測定装置において、
前記粘度計の前記測定管の上部には、外気に連通しない密閉状態で内部の容積を変動させることにより、前記粘度計内への試料液及び洗浄液の注入、及びこれらの液の排出を行う注入・排出手段が接続されていることを特徴とする粘度測定装置。
【請求項2】
試料液の所定体積当たりの流下時間を測定するための測時空間部と、その上部に連通する上側液溜部とを有する測定管と、該測定管の下部に連通し、前記上側液溜部に試料液を注入するための試料液注入管とを有する粘度計を用いて、試料液の粘度を測定する粘度測定工程と、前記粘度計内を洗浄液にて洗浄する洗浄工程とを有する粘度測定方法において、
外気に連通しない密閉状態で内部の容積を変動させることが可能な注入・排出手段にて、前記粘度計内への試料液及び洗浄液の注入、及びこれらの液の排出を行うことを特徴とする粘度測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−38463(P2006−38463A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214094(P2004−214094)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000176741)三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社 (90)