説明

粘度測定装置

【課題】 液体を、高粘度から低粘度までの広い範囲で測定し、かつ、落球の終端速度を有する場合だけでなく、終端速度に達しない場合にも精度よく測定することができる落球式粘度測定装置を提供することにある。
【解決手段】 落球式の粘度測定装置であって、液体が通過する測定管1と、当該測定管1内を移動する落球と、前記測定管1の外周部に設けられた少なくとも1つの超音波センサ3と、当該超音波センサ3の出力を入力し演算する手段4とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度測定装置に関し、詳しくは、落球式の粘度測定装置に関する。特に、燃料油や潤滑油などの対象とする高圧液体の粘度測定において有用性が高い粘度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の燃料油や潤滑油の粘度測定方法、及びその他の液体の粘度測定のために、回転式、カップ式、落球(落下錘)式、機械振動式、細管式等各種の方式を用いる液体粘度測定装置が開発されてきた。
【0003】
具体的には、振動センサを用いて液体の粘弾性を測定する振動式粘度計が多用され、例えば、図12に示すような構成を挙げることができる。振動子53及び振動センサ54を取り付けた振動体52を液体中に浸漬し、振動子53に振動電圧を印加して振動体52を共振周波数(f)で振動させ、振動体52が共振周波数(f)で振動するときの振動子53と振動センサ54との位相差(P)を検出して、振動子53と振動センサ54との位相差(P)と予め測定した粘度(η)との関係により液体の粘度(η)を測定する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、図14に例示されるような落下錘式粘度計を挙げることができる。61は垂直に設定された測定管、62は該測定管内に挿入された円柱形の落下錘である。測定管61の中間の上部及び下部に距離Lだけ離して、測定管61内を落下錘62が落下するときに落下錘26の通過を測定管外から検出して信号を発信する通過検出器64a,及び64bを設置してある。これらの通過検出器には、磁気的原理を利用した検出器、電磁的原理を利用した検出器、光学的原理を利用した検出器など、各種非接触検出原理を応用することが通例であった(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−173967号公報
【特許文献2】特開平05−72104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の粘度計は、いずれも、常圧条件下での液体の測定を目的としたもので、測定対象が高圧液体の場合には、粘度計の構造面や測定精度の面で、仕様に合致しないことがある。特に、上記のような比較的単純な粘度の測定方法では、高圧条件下では高い測定精度を得ることは困難であった。
【0006】
また、高圧液体を抜出して常圧下で粘度測定を行う方法もあるが、高圧条件下での粘度は常圧下での粘度と大きく異なることから、実際に使用する高圧条件下での測定精度の高い粘度測定の要請が強い。
【0007】
さらに、落球(落下錘)式粘度計については、落球(落下錘)の落下速度が落下当初の加速された後、液体の抗力によって加速度が減少し一定(終端速度)になるとともに、その終端速度になるまでの落下時間(落下距離)が液体の粘度(圧力)によっても異なる。従って、測定結果に対してこうした挙動を考慮した補正を行う必要があるが、正確な挙動の測定が難しく高い測定精度を得ることは困難であった。
【0008】
また、昨今、こうした終端速度になるという落球(落下錘)の挙動を利用し、終端速度になった後の粘度を測定することによって測定精度の向上を図る試みが行われているが、終端速度になったことの確認が難しく、また、終端速度までの落下時間が長い場合には粘度計が長大となるおそれがあり、実用化は困難であった。
【0009】
さらに、透過式あるいは反射式の光センサを用いて落球の測定を行う場合には測定管に透過窓を設ける必要があるが、透過窓自体の強度あるいは取り付け構造も強度の限界から測定液体の圧力に制限があり用途が限定されることになる。例えば、窓径数mm〜十数mm、厚み数mm〜十数mmのサファイアを用いた場合には、0.4GPa程度が上限圧力となる。特に窓のシール部については、これ以上の耐圧性を確保することが難しい。
【0010】
そこで、この発明の目的は、こうした要請に対応し、高粘度から低粘度までの広い範囲で測定し、かつ、落球の終端速度を有する場合だけでなく、終端速度に達しない場合にも精度よく測定することができる落球式粘度測定装置を提供することにある。特に、高圧液体を対象とする場合においては、従来にない精度の高い測定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す粘度測定装置によって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
本発明は、落球式の粘度測定装置であって、液体が通過する測定管と、当該測定管内を移動する落球と、前記測定管の外周部に設けられた少なくとも1つの超音波センサと、当該超音波センサの出力を入力し演算する手段とを有することを特徴とする。
【0013】
上記のように、落球式の粘度測定装置にあっては、測定管に対して耐圧性や耐蝕性などを考慮する必要のある部材の使用を必要としない測定方法を選択することが好ましい一方、高圧条件下においても所定の測定精度を確保することができる測定方法を選択する必要がある。本発明者は、粘度測定、特に高圧液体の粘度測定において、落球式測定法を用い、測定管内を移動する落球の位置や挙動を超音波センサによって検出することで、高精度かつ高い汎用性を確保することができることを見出した。
【0014】
つまり、落球式測定法と超音波センサの組み合わせによって、高圧液体に対して耐圧構造の測定系を形成することが可能となる。また、超音波センサの出力から落球の落球速度を演算し粘度換算するとともに、後述する落球のフラツキ(回転を含む)など粘度測定における「速度検出の誤差要因」を、超音波センサの出力特性から補正演算することによって、高い精度を確保することができる。さらに、測定管内では落球の終端速度に達しない場合であっても、落下点に沿って落球速度の変化を求め終端速度を推算することによって、精度の高い粘度測定が可能となる。
【0015】
これによって、耐圧構造の測定系を有した状態で、液体を高粘度から低粘度までの広い範囲で測定し、かつ、落球の終端速度を有する場合だけでなく、終端速度に達しない場合にも精度よく測定することができる落球式粘度測定装置を提供することが可能となった。なお、ここでいう高圧液体とは、上記に例示した燃料油や潤滑油などのような0.1MPa〜数GPa程度の圧力を有する液体をいう。
【0016】
本発明は、上記粘度測定装置であって、前記超音波センサの少なくとも1つを、前記測定管の底部に配置することを特徴とする。
【0017】
対象物に超音波を照射した場合、反射波が受信部に到達する時間は対象物との距離によって変化するとともに、照射された超音波に広がりがあれば反射波の強度も変化する。また、測定管の側面からの測定においては、単一の超音波センサの測定範囲に限界がある。本発明は、測定管の底部からの測定を行い、超音波の照射中心軸に沿って移動する落球を測定することによって、測定管頂部から底部までの長時間測定が可能となり終端速度の判断および終端速度自体の測定あるいは推定を容易に行うことができる。従って、耐圧構造の測定系を有した状態で、精度よく測定することができる落球式粘度測定装置を提供することが可能となった。
【0018】
本発明は、上記粘度測定装置であって、前記超音波センサが多素子型センサであり、前記測定管の管路に沿って素子が配置されることを特徴とする。
【0019】
落球式粘度測定法にあっては、理想的には終端速度に達した状態で落球速度を検出することが好ましい。しかし、落球の移動速度は測定管の位置や液体の粘度によって変化するため、測定点において終端速度に達したか否か、あるいは測定管内でそうした状態が起こりうるのか否か、が不明である。従って、多素子型の超音波センサを用い、測定管の管路に沿って素子を配置することによって、測定管の任意の位置における落球速度を検出することが可能となり、終端速度に達した状態になった位置あるいは終端速度自体を検出することができる。また、落球の終端速度を有する場合だけでなく、終端速度に達しない場合にも精度よく測定することができる落球式粘度測定装置を提供することが可能となった。
【0020】
本発明は、複数の超音波センサを用いた粘度測定装置であって、そのうちの1つの超音波センサが発信する音波の方向が、他の少なくとも1つの超音波センサが発信する音波の方向と交差するように、前記複数の超音波センサが配置されていることを特徴とする。
【0021】
落球式粘度測定法にあっては、理想的には落球が静止状態に近い状態で測定管の中心軸に沿って落下することが好ましい。しかし、現実には落球の位置の中心軸からのズレや落球のフラツキを生じ、その結果落下速度に影響を与え、測定誤差を発生させる可能性がある。複数の超音波センサを用い異なる角度からの落球の落下状態の検出は、こうした現象を正確に把握することができることを見出したもので、各センサ出力を比較演算し、こうした要因を補正することによって、精度の高い粘度測定が可能となった。
【0022】
本発明は、上記粘度測定装置であって、前記超音波センサの少なくとも1つが、前記測定管の管路に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0023】
上記のように、落球の移動速度は測定管の位置や液体の粘度によって変化するため、測定管の側面に設けた単一の超音波センサによって、終端速度に達したか否かを判断することは難しい場合がある。本発明は、少なくとも1つの超音波センサを測定管の管路に沿って移動させることによって、測定管の任意の位置における落球速度を検出することが可能となり、終端速度に達した状態になった位置あるいは終端速度自体を検出することができる。また、落球の終端速度を有する場合だけでなく、終端速度に達しない場合にも精度よく測定することができる落球式粘度測定装置を提供することが可能となった。
【0024】
本発明は、上記粘度測定装置であって、前記超音波センサの出力を入力し時間関数あるいは位置関数、または時間あるいは位置をパラメータとする出力パターンを作成する手段を有することを特徴とする。
【0025】
落球式粘度測定法にあっては、上記のように落球の位置の中心軸からのズレや落球のフラツキを生じやすく、さらに極端な場合には測定管の僅かな傾斜や落下開始直後における落下方向や落球自体の回転モーメントの発生によって、落球のフラツキを生じせしめ、結果測定誤差を発生させる可能性がある(以下こうした誤差要因を「速度検出の誤差要因」という。)。特に、高圧条件下では、こうした速度検出の誤差要因の発生が起こりやすい。本発明者は、超音波センサの出力を演算して作成した時間関数あるいは位置関数、または時間あるいは位置をパラメータとする出力パターン(以下「出力パターン等」という。)が、落球速度の検出に使用できるだけでなく、落球速度の変化および上記の速度検出の誤差要因によっても変化することを見出したもので、出力パターン等から上記速度検出の誤差要因を解析して演算・補正することによって、精度の高い落球式粘度測定装置を提供することが可能となった。具体的な解析方法については後述する。
【0026】
本発明は、複数の超音波センサあるいは多素子型超音波センサを用いた粘度測定装置であって、当該超音波センサの出力を入力し時間関数あるいは位置関数、または時間あるいは位置をパラメータとする出力パターンを作成する手段と、2以上の時間関数あるいは位置関数または出力パターン同士を比較する手段とを有することを特徴とする。
【0027】
上記のように出力パターン等は、落球速度の変化とともに、速度検出の誤差要因によって変化することが判った。しかし、例えば高圧条件下においては測定が長時間に及ぶ場合もあり、このとき速度検出の誤差要因自体が変化することがある。また、上記のように測定管の1つの領域に関する1つの超音波センサのみの情報では終端速度の判断ができないこともある。そこで、異なる超音波センサの複数の出力パターン等を比較し、その相違点から上記速度検出の誤差要因を解析して演算・補正することによって、より一層正確な落下速度を検出し、また複数の落下速度と位置の関係から終端速度に達した位置の特定および終端速度を検出することができる。従って、より正確な粘度測定が可能となった。
【0028】
本発明は、上記粘度測定装置であって、前記測定管を傾斜状態にし、測定管の外周下側面に少なくとも1つの超音波センサを配置することを特徴とする。
【0029】
上記のように、落球のフラツキは、落下速度検出の誤差要因となっている。しかし、こうした誤差要因は、落下の基準線あるいは基準面が決まれば大幅に低減することができる。つまり、測定管を傾斜状態にして落球が測定管の内面に沿って落下し、測定管の外周下側面に設けられた超音波センサによって落球の挙動を検出することによって、測定誤差が低減され、より正確に粘度測定を行うことが可能となった。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、従来困難であった、液体の正確な粘度測定を、シンプルな構造の耐圧構造の測定系を有した状態で、高粘度から低粘度までの広い範囲で行うことが可能となった。特に高圧条件下においては、耐圧構造においても同等の精度で測定できる点に高い有用性がある。また、超音波センサの出力パターン等を作成し、速度検出の誤差要因との関係を比較検討し、演算・補正することによって、精度よく測定することができる落球式粘度測定装置を提供することが可能となった。
【0031】
特に、単一の超音波センサを移動し測定管側面の任意の位置での測定を可能にし、あるいは複数の超音波センサあるいは多素子型超音波センサを適切に配置することによって、落球の位置や速度あるいはフラツキなどの挙動を、より正確に把握することができ、一層精度の高い粘度測定が可能となった。
【0032】
また、落球の終端速度を有する場合だけでなく、従来困難であった、終端速度に達しない場合においても、精度よく粘度測定を行うことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
<基本的な構成例(第1構成例)>
図1は、この発明に係る粘度測定装置の基本的な構成を例示している。測定対象である液体が通過する流路を有する測定管1と、該測定管1内を移動する落球2と、該測定管1の外周部に設けられた超音波センサ3からなる測定部、該超音波センサ3の出力を入力し演算する手段(演算部)4によって、粘度測定装置を形成している。また、図1では、測定管1の最上部に設けられ落球2を固定するプランジャー5、および落球2が測定管1の最下部に達したことを検知する接点6を有する構成を例示するが、本発明はこうした構成に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0035】
ここで、粘度は、その特性上測定時の環境温度によって影響されることから、粘度測定装置は、周囲温度の変化が少ない条件下で用いることが好ましい。また、環境温度の変化が生じる可能性がある場合には、超音波センサ3に近接して、液体の液温を検出する手段(図示せず)を設けることが好ましい。検出された温度データを演算部4に入力し、後述するような測定データの補正を行うことによって、正確な粘度測定が可能となる。なお、本願の対象とする具体的な粘度の値は、特に制限はないが、高圧条件下においては10−3〜10Pa・sが適している。
【0036】
測定管1は、通常耐圧材質であれば、特に限定されるものではないが、強度面、あるいは内管の加工性や内表面の均一性などから、金属製の管あるいは金属管内部にガラスやセラミックス製の内管を挿入した補強管などが好適である。また、測定管1の大きさは、測定対象物および液体圧力など使用条件によって異なるが、一般に数mm〜数10mmの内径を有し、数10mm〜数100mmの長さを有する管状体を用いることができる。
【0037】
落球2は、その大きさは特に限定されるものではないが、通常、測定管1の内径の50〜80%程度の直径を有する球体を使用することができる。材質は、高圧液体に対して所定の落下速度を得ることができる比重を有するものであれば特に限定されるものではないが、球面の加工性や滑性などから、金属やガラス・セラミックスなどが好適である。また、鉄球や鋼球などを用いることによって、後述するように落下前の固定や落下後の検知を容易にする方法を採ることができる。
【0038】
超音波センサ3について、センサを構成する素子としては、ローレンツ力を用いた電磁式の振動子や圧電セラミックのピエゾ効果を用いた振動子などを用いることができる。図1では、センサの取り付けの便利などの観点から発信部と受信部を一体化した部材として例示しているが、これに限定されるものではなく、別体を組み合わせて用いることも可能である。
【0039】
また、発信部からの超音波を落球2に照射し反射波を受信する方法(反射式)と、発信部からの超音波を常に受信部に照射し落球2による遮断により検出する方法(透過式)があるが、落球2の挙動を検出するためには、図1のような反射式の方が好ましい。落球2の落下が加速状態にあるか否か、あるいはフラツキの有無など、落球の状態時間的な変化を、透過式よりも正確に反射波によって検出することが可能である。
【0040】
さらに、超音波のエネルギーを有効に使用し検出感度の向上を図るために、反射波が受信部に焦点を結ぶように発信部から超音波を照射する方法(焦点式)を採ることが好ましい。本発明者の実験においては、焦点式の超音波センサ3を用いることによって、高い精度を確保することができた。
【0041】
超音波センサ3の取り付け位置は、予め落球2が終端速度になる位置が推定できる場合には、その位置よりも下部に設けることが好ましい。ただし、終端速度になる位置が不明の場合であっても、所定の条件では超音波センサ3の出力パターン等から終端速度を算出することができることから、終端速度の算出には、球が容器底面からの影響を受けない範囲で、底に近い箇所での落下速度を用いることが好ましい。また、種々の液体を測定する必要のある場合には、測定管1の外周部に超音波センサ3の設置位置を変更できるガイド(図示せず)など設けることが好ましい。さらに、後述する構成例のように、複数の超音波センサや多素子型センサを用いること、あるいは移動機構を用いてセンサを測定管1に沿って移動させることも可能である。
【0042】
演算部4には、超音波センサ3の出力を連続的に受けて順次書き込む機能(書き込みデータ)、粘度測定装置の操作部からの入力あるいは温度データなどの伝送手段からの入力を受けるデータ入力機能、予め得られた既知粘度の液体を検出したときの超音波センサ3の基準出力データや、落下速度と粘度との相関関係(関数データあるいは対比するテーブルなどデータの保存の仕方は問わない)などを記憶する機能(記憶データ)、および、書き込みデータや記憶データを用いた出力パターン等の作成、複数の出力パターン等の比較演算、出力パターン等の補正演算、等々粘度を算出するに必要な種々の機能が内蔵されている。また、粘度の算出における環境温度の補正機能や、複数の超音波センサ間の出力特性のバラツキの補正機能なども内蔵することが好ましい。
【0043】
測定に際しては、以下に例示するように操作し、処理される。
(1)測定時においては、液体は停止状態にすることが好ましく、測定前の所定時間液体の導入を停止する。停止方法としては、測定管1に繋がる流路に設けた電磁弁による遮断などによって行うことができる(図示せず)。
(2)プランジャー5に電圧を印加し電磁石によって落球2を固定しておく。このとき、落球2の固定部分(例えば電磁石の先端部)を小さくすることによって、固定部分から離れた落球2に対して働く落下方向と異なるモーメントの発生を小さくすることができる。
(3)液体が安定状態になった段階で、プランジャー5に印加した電圧をOFFにして、落球2の落下を開始する。落球2の落下に伴い、超音波センサ3の出力が増大し、やがて減少する。
(4)落球2が測定管1の最下部に達したとき、予め電圧が印加された接点6に落球2が接触する。このとき、接点6の表面電位が変化することから、落球2が測定管1の最下部に達したことを検知することができ、1つの測定サイクルを完了する。
(5)上記(1)の電磁弁による液体の停止状態を解除し、次の測定対象となる液体を測定管1に導入し、安定状態にする。なお、上記の1つの測定サイクルで十分な精度が得られない場合には、(1)〜(4)の繰り返し、あるいは同一の液体を再度測定管1に導入した後に(1)〜(4)の繰り返しを行い平均値あるいは偏差値などを算出することによって、所望の精度の粘度測定を確保することができる。
【0044】
なお、液体は、測定管1の下部から導入することが好ましい。上記(1)〜(4)を完了した段階で、液体を導入することによって落球2を測定管1の上部に移送することができ、プランジャー5に電圧を印加することによって、再度(2)のようにプランジャー5に落球2を固定することができる。こうした操作を自動的に行うことによって、装置の機能性の向上を図ることができる。
【0045】
このとき、超音波センサ3の出力を演算部4に入力し、時間関数あるいは時間をパラメータとする出力パターン等を作成することが好ましい。具体的には、前者として超音波センサ3の連続出力を基に時間をパラメータとして算出(通常多次元関数となるが、演算処理の便宜のために2次あるいは3次の関数に近似することが好ましい)する出力関数を挙げることができる。また、後者としては、図2に例示するように、横軸に時間、縦軸に超音波センサ3の出力とする相関関係をパターンとして作成し、パターン上の出力/時間データとして作成することができる。このとき、超音波センサ3の出力そのもの、つまり、エコー高さhを基に、出力パターン等作成することも可能であるが、超音波センサ3の出力を設置された状態における測定管内面でのエコー(ボールが存在しないときの)の高さhを求め、落球2の通過時のエコー高さhを標準化しエコー高さ比Hを求め(H=h/h)、これを基に出力パターン等を作成することが好ましい。
【0046】
こうした出力パターン等からは、落球2の落下速度vを算出することができるとともに、落球速度の変化量(つまり加速度)αの算出および上記の速度検出の誤差要因による補正を行うことができる。つまり、複数の既知粘度の液体の出力パターン等のデータを基に、図2(A)に示すパターンの高さHmと時間半値幅T、および図2(B)に示す中心線Mに対する時間半値幅の前後の値TaおよびTbの大きさの相違によって、落球2の落下速度vや終端速度vに達したか否かの判定、あるいは速度検出の誤差要因を解析して演算・補正することが可能となる。
【0047】
(1)落下速度vの大きさは、時間半値幅Tと相関がある。つまり、落下速度vが大きい場合には短時間で超音波センサ3の検出領域から出ることから時間半値幅Tは小さくなり、落下速度vが小さい場合にはその逆となる。このことから、図2(C)に示すように、複数の既知粘度の液体の出力パターン等の終端速度(例えば、v01、v02、v03)と時間半値幅(例えば、T01、T02、T03)のデータから、両者の相関関係(相関関数で表すことも可能である)を予め求めておき、被検体における時間半値幅Txに相当する落下速度vを求めることができる。
【0048】
(2)また、落下速度vの大きさは、予め超音波センサ3におけるエコー高さ比Hと落球2の位置との関係を求めることによって推算することができる。つまり、予め図2(D)のように、高圧液体のない条件で測定管2の頂部から定位置に落球2を吊り下げた状態でのエコー高さ比Hを求めておき、図2(E)のような位置を横軸とする出力パターン等を作成する。このとき、この出力パターン等を、超音波の照射中心軸Mにおけるエコー高さ比Hを例えば1.0として正規化することによって、超音波センサ3自体の出力や角度分布のばらつきなどの影響を無視することができる。また、本発明における測定法、特に焦点式の超音波センサ3を用いた場合においては、超音波が透過する媒質の相違や音波の屈折など視野角の広い測定法における影響は音波の拡散によって殆ど無視できることから精度の高い推算が可能となる。
【0049】
(2−1)具体的には、図2(E)の位置をパラメータとする出力パターン等を有する超音波センサによって、図2(A)の時間をパラメータとする出力パターン等を得た場合、例えば図2(E)の半値幅G(2つの半値点間の距離を表す)を求め、図2(A)の半値幅T(2つの半値点間の時間を表す)によって除することによって、照射中心軸Mにおける落下速度vを求めることができる。つまり、標準化されたエコー高さ比Hを基に作成された両出力パターン等における出力値は、同じ位置の同じ時間の落球2の測定値に相当し、例えば図2(A)におけるP点は図2(E)におけるP’、同様にtとg、tとgが対応することから、時間Tの間に移動した距離Gによって速度を算出することができる。
【0050】
(2−2)また、(2−1)の技術思想を拡張することによって、落下速度vの変化を追跡することができる。具体的には、図2(E)におけるg、g、g・・と細分化した位置におけるエコー高さ比Hに対応する図2(A)における時間t、t、t・・を求め、v21=(g−g)/(t−t)、v32=(g−g)/(t−t)・・を算出し、図2(F)のような変化を追跡することによって、後述する終端速度vの推算を行うことが可能となる。
【0051】
(3)終端速度vに達したか否かは、図2(A)における時間半値幅Tの中心線Mに対する前後の値(TaおよびTb)と相関がある。つまり、加速状態にある場合には超音波センサ3の検出領域の中心時間の前よりも後の時間が短くなり、終端速度になれば両者の時間はほぼ同じになる。従って、出力パターン等におけるTaおよびTbを算出することで終端速度vに達したか否かを判定することが可能となる。
【0052】
(4)終端速度vに達したか否かは、図2(B)における前後の面積SaとSbと相関がある。つまり、加速状態にある場合には超音波センサ3の検出領域の中心時間の前よりも後の方が反射波の量が少なくなり、終端速度になれば両者の時間はほぼ同じになる。従って、出力パターン等におけるSaとSbを算出することで終端速度vに達したか否かを判定することが可能となる。
【0053】
(5)落球2のフラツキに関しては、落球2が超音波センサ3に近いほど反射波が強くなり遠いほど反射波が弱くなることから、パターンの高さHmが変化するとともに、通常図2(G)に例示するようなノイズ状成分が付加される出力パターン等となると推察できる。従って、予め既知粘度の液体を用いて複数の出力パターン等を求め、例えば、ピークPの出力を1.0として出力パターン等を標準関数化しておき、被検体の測定によって得られた複数点(例えば、標準関数が2次関数の場合は3点、3次関数の場合は4点)のデータを用いて演算することによって標準関数の係数を決定し、出力パターン等を標準関数に近似させることによって落球2のフラツキを補正することが可能となる。このとき、被検体の測定値のうち標準関数からの乖離値に対し閾値を設定し、閾値を超える場合の測定結果は使用しないこととすることによって、補正精度の向上を図ることができる。この補正された出力パターン等を上記(1)の落球速度の算出に用いることによって、精度の高い粘度測定値を得ることができる。
【0054】
<第2構成例>
本発明に係る粘度測定装置の第2の構成例を、図3に例示する。少なくとも1つの超音波センサ3を測定管1の底部に配設することを特徴とする。つまり、超音波センサ3から照射された超音波は、通常、音軸方向に伝播するとともに半径方向にも広がる。底面に装着された探触子の音軸近くで落球2が移動する場合には、落球面からのエコーはその移動情報を捉えることができる。
【0055】
具体的には、図3(A)のように測定管1の底部に超音波センサ3を配設し、落球2の落下とともに増加する超音波を検出することによって、落球2の落下速度vつまりは終端速度vを検出することができる。例えば図3(B)のように、エコー高さ比Hは落球2の落下とともに高くなり、底面エコーと球エコーとの路程差ΔL(時間差ΔT×音速c)は、小さくなる。路程差の時間微分でその点での落下速度vが求まり、速度の傾向から、終端速度vの推定が可能となる。ただし、落下速度vの算出には液体の音速cが必要であり、推定可能な場合にはその値を用い、不明な場合には、底面からある位置(既知の値)の測定管1の側面に焦点型の超音波センサ3’を取り付け、その位置の音軸上を落球2が通過する時点での落球2と底面からの反射時間の差から、液体の音速cを求めることも可能である。
【0056】
少なくとも1つの超音波センサ3によって、常に落球2の同一面を基に移動速度vを測定することができることから、非常に測定精度の高い測定装置を構成することが可能となる。また、図3(B)の構成によれば、粘度の測定と同時に、液体の音速を測定することができるという従来にない技術的効果を得ることができる。特に、高圧条件下での音速は実測することが困難であり、本構成による優れた技術的効果の1つである。
【0057】
<第3構成例>
次に、本発明に係る粘度測定装置の他の構成を、図4に例示する。複数の超音波センサ31、32、33を測定管1の管路に沿って配置したことを特徴とし、基本構成において説明した1つの超音波センサの場合には限界があった機能面あるいは精度面を、複数の超音波センサを用いることによって補完、補償することが可能となった。
【0058】
具体的には、図4に示すように、推定する終端速度領域に近傍および領域内に分散して配置することによって、終端速度に達した位置の検知と終端速度の確認、および速度検出の誤差要因による影響の有無およびその影響度の検知を行うことができる。測定に際しては、各超音波センサの出力パターン等に対し、以下に例示するような処理が行われる。なお、前提として、各超音波センサの出力特性は、等価でありセンサ間のバラツキはないもの、あるいは補正し合ったものとする。また、これらの各超音波センサの出力を上述のような正規化を行うことによって、さらに精度を上げることができる。
【0059】
(1)終端速度に関しては、複数の超音波センサが検出した落下速度v、v、vから推定あるいは算出することができる。つまり、複数の超音波センサ個々の出力パターン等における半値幅T、T、Tから落下速度v、v、vを第1構成例における図2(C)の特性を利用して求めることができる。もし、図5(A)実線に示すように、等価でない場合には、測定管1の鉛直方向の位置を横軸とし、各センサ位置と落下速度との相関を求めることによって、終端速度vを推算することが可能となる。図5(A)破線に示すように、測定管1の下位にある超音波センサ33および32(あるいは31も等価となる場合がある)が検出した落下速度が等価(v’=v’=v)の場合には、その値を終端速度とする。
あるいは、図5(B)に示すように、測定管1の鉛直方向の位置を横軸とし、各センサ位置と半値幅T、T、Tとの相関を求めて終端速度域の半値幅Tを求め、図2(C)の特性を利用することによって、終端速度を推算することが可能となる。
さらには、半値幅の中心線Mの前後において、TaとTbが等価であればTを基に、TaとTbが等価でなくTaとTbが等価であればTを基に、いずれも等価でなくTaとTbが等価であればTを基に、終端速度を推算することが可能となる。
【0060】
(2)落球2のフラツキに関しては、各センサ出力における高さH、H、Hが異なる場合、フラツキがあると推察することができる。従って、各高さの平均値、あるいは平均値から最も外れた値を排除した値の平均値を基に、出力パターン等を標準関数に近似させることによって落球2のフラツキを補正することが可能となる。
あるいは、終端速度に達したセンサ出力が多数あれば、その平均値を標準出力パターンとすることが可能である。
このように補正された出力パターン等を、上記(1)の落球速度の算出に用いることによって、精度の高い粘度測定値を得ることができる。
【0061】
<第4構成例>
上記の構成において、図6に例示するように、複数の超音波センサ(31〜35)のうちの少なくとも1つの超音波センサ(34および35)が発信する音波の方向が、他の超音波センサ(31〜33)が発信する音波の方向と交差するように配置することによって、さらに精度の高い測定系を構成することが可能となる(第4構成例)。
【0062】
つまり、複数の超音波センサ31〜35を異なる角度から落球2の落下状態を検出することによって、落球2のフラツキを2次元的に把握することができることから、各センサの出力パターン等を比較演算し、こうした要因を補正することによって、粘度測定における誤差を大きく低減することができる。特に、同一位置における落球2を同時に異なる角度から超音波センサ32と34および33と35によって検出した場合には、一方向での検出では把握できない落下速度に関する情報および誤差要因の情報を得ることが可能となる。
【0063】
具体的には、図7に例示するような、超音波センサ31〜35の出力パターン等(A)〜(E)を仮定し、これを基に説明する。つまり、以下の条件を仮定すると、(1)〜(3)のように、終端速度vの算出や補正が可能となる。
(A)〜(C)における、高さH31〜H33は略同一値とする。
(A)は半値幅T31がT32〜T35よりも大きく、かつ半値幅の前後についてTa31よりもTb31が大きい。
(B)と(C)は半値幅T32またはT33が略同じである。
(D)は高さH34がH32またはH33よりも高く、かつピークP34が中心線Mよりも後方にシフトしている。
(E)は高さH35がH31〜H33およびH34よりも小さい。
【0064】
(1)超音波センサ31〜33の出力パターン等(A)〜(C)の関係から、超音波センサ32の位置において終端速度に達していることを判定することができる。つまり、半値幅T32またはT33およびTa31とTb31の関係を基に判定することができる。従って、このときの半値幅T32またはT33(=T32)を用いて、図2(C)に相当する相関関係から終端速度vを求めることができる。
【0065】
(2)図7(C)と(E)の出力パターン等、つまり、(E)の高さH35が他の出力パターン等より低いことから、落球2にフラツキが生じている、あるいは軌道が測定管1の中心からずれていることを示している。しかし、(A)〜(C)においては高さの変動がないことから、落球2のフラツキはなく、軌道が測定管1の中心からずれていると判定することができる。従って、(1)の終端速度vの補正は不要と判定することができる。
【0066】
なお、以上(1)および(2)の判定において、(B)および(C)で安定した終端速度に達している場合には、より安定状態にあると考えられる(C)での半値幅T33を用いて終端速度vを求めることが好ましい。また、以上の仮定においては、補正を不要とした場合を例示したが、補正が必要である場合には、構成例3に例示したような方法によって、正確性の高い補正が可能となる。
【0067】
<第5構成例>
本発明に係る粘度測定装置の第5の構成例を、図8に例示する。超音波センサ3を多素子型センサとし、測定管1の管路に沿って素子(例えば、3a、3b、3c・・)が配置されることを特徴とする。例えば、第3構成例における超音波センサ31,32、33を1つの素子として超音波センサ3を構成したものということができ、測定管1の管路に沿って配置することによって、終端速度域の検出および終端速度の正確な検出を行うことが可能となる。
【0068】
具体的には、図8のように測定管1に配置された多素子からなる超音波センサ3において、例えば、検出開始時には、最上部の素子3aを作動させて検出し、順次3b、3c・・と作動する素子を切換えて検出することによって、落球2の落下速度つまりは終端速度を検出することができる。このとき、粘度の異なる液体を測定する場合であっても、粘度の高い場合には素子3a、3b、3c・・と順に作動させ、粘度の低い場合には素子3a、3c・・と1つ素子を飛ばして作動させる、あるいは、粘度の高い場合には素子3a、3b、3cだけで検出を終了し、粘度の低い場合には素子3a、3b、3c・・と全ての素子を作動させることができる。このように、液体の性状や必要とされる測定精度あるいは測定時間などの条件によって切換えることができ、非常に汎用性の高い測定装置を構成することが可能となる。
【0069】
<第6構成例>
本発明に係る粘度測定装置の第6の構成例を、図9に例示する。超音波センサ3を測定管1の管路に沿って移動可能とすることを特徴とする。例えば、超音波センサ3を測定管1の管路に沿って落球2と等速で移動することによって、終端速度域の検出および終端速度の正確な検出を行うことが可能となる。また、超音波センサ3を測定管1の管路に沿って数段階の等速移動区間を設けて移動することによって落球2との速度差を検出することによって、終端速度域の検出および終端速度の正確な検出を行うことが可能となる。
【0070】
具体的には、図9のように測定管1に配置された移動機構Zに超音波センサ3を配設し、例えば、検出開始時には、最上部の位置に超音波センサ3を配して落球2を検出し、順次3b、3c・・と落球2の落下に合せて超音波センサ3を移動させて検出することによって、落球2の落下速度vつまりは終端速度vを検出することができる。このとき、超音波センサ3の出力が最大となるように移動速度を上下に微小幅変化させることによって、落球2の落下速度とより正確に同じ速度で移動することができる。また、超音波センサ3の移動速度は、例えばサーボモータを用いた場合にはその回転数など、移動機構における操作量をもとに算出することができる。
【0071】
粘度の異なる液体を測定する場合であっても、粘度の高い場合には超音波センサ3の移動速度を下げ、粘度の低い場合には超音波センサ3の移動速度を上げ、液体の性状や必要とされる測定精度あるいは測定時間などの条件によって移動条件を変更することができ、非常に汎用性の高い測定装置を構成することが可能となる。
【0072】
<第7構成例>
上記の構成例においては、測定管1を鉛直方向に配置した場合について説明した。しかし、速度検出の誤差要因の1つである落球の位置の中心軸からのズレあるいは落球のフラツキは、落下の基準線あるいは基準面が決まれば大幅に低減することができる。つまり、図10に例示するように、測定管1を傾斜状態にし、測定管の外周下側面に少なくとも1つの超音波センサを配置することが好ましい(第7構成例)。
【0073】
具体的には、測定管1を傾斜状態にして落球2を測定管1の内面に沿って落下させる。測定管の外周面には、上記構成例と同様、超音波センサ3が設けられ、落球2の挙動を検出する。ここで、測定管1の内面の下側面が基準となるため、その下側面に接する落球2の面を検出することができるように、少なくとも1つの超音波センサを配置することによって、落球2のフラツキを低減した状態で精度よく検知することが可能となる。
【0074】
また、測定管1の内面は円筒面状ではなく、下面にVカット面(図10(A)参照)あるいはUカット面を有することも可能である。ただし、測定管1の内面にV字溝を掘ると、高圧の下で応力の集中が生じ、圧力容器が破壊してしまう場合があり、図10(B)に例示するように、測定管1の中央を落球2が通るようにガイドレール7を取り付けることが好ましい。
【0075】
圧力容器へは接着で取り付ける。測定管1の断面において落球2との接触を1つの点で行う場合には(落下の軌跡は1つの線となる)、振動や落下始動時の位置のズレによって落下時のフラツキを生じる可能性があるが、Vカット面あるいはUカット面においては2つの点によって落球2を支えることができる(落下の軌跡は2つの線となる)ことから、安定した落下状態を確保することでき、より正確に粘度測定を行うことが可能となる。
【0076】
<その他の実施態様>
上記は、液体特に高圧液体の粘度測定(体積弾性率)について述べたが、第2構成例において記載したように、本発明の構成を用いることによって液体の音速を測定することができる。また、第4構成例を応用することによっても、高圧液体の音速を測定することができる。
【0077】
具体的には、図11に例示するように、測定管1のほぼ中央を落球2が落下している場合を考える。例えば、下記のように、落球2の中心が測定管1の中心と僅かにずれているときの液体音速Cは次式1で与えられる。
【0078】
C(T+T) ≒ 2(D−d) = CT−2d ・・(式1)
ここで、Tは超音波センサ31における測定管内面でのエコーと落球表面でのエコーとの時間差を表し、Tは超音波センサ32における測定管内面でのエコーと落球表面でのエコーとの時間差を表し、Tは、球が存在しない、管内径Dを音波が伝播して反対側の内面で反射したときの液体中の往復伝播時間である。従って、
C = 2d/(T−T−T) ・・(式2)
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る粘度測定装置の基本的な構成(第1構成例)を示す説明図。
【図2】本発明に係る粘度測定装置における、超音波センサの出力パターン等を概略的に例示する説明図。
【図3】本発明に係る粘度測定装置の第2構成例を示す説明図。
【図4】本発明に係る粘度測定装置の第3構成例を示す説明図。
【図5】超音波センサの位置と落下速度あるいは半値幅との相関関係を例示する説明図。
【図6】本発明に係る粘度測定装置の第4構成例を示す説明図。
【図7】第4構成例における超音波センサの出力パターン等を概略的に例示する説明図。
【図8】本発明に係る粘度測定装置の第5構成例を示す説明図。
【図9】本発明に係る粘度測定装置の第6構成例を示す説明図。
【図10】本発明に係る粘度測定装置の第7構成例を示す説明図。
【図11】本発明に構成例を用いた音速測定装置の概略を示す説明図。
【図12】従来技術に係る振動式粘度計の構成を概略的に示す説明図。
【図13】従来技術に係る落下錘式粘度計の構成を概略的に示す説明図。
【符号の説明】
【0080】
1 測定管
2 落球
3 超音波センサ
4 演算手段(演算部)
5 プランジャー
6 接点
v 落下速度
終端速度
H エコー高さ比
T 半値幅(時間半値幅)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
落球式の粘度測定装置であって、液体が通過する測定管と、当該測定管内を移動する落球と、前記測定管の外周部に設けられた少なくとも1つの超音波センサと、当該超音波センサの出力を入力し演算する手段とを有することを特徴とする粘度測定装置。
【請求項2】
前記超音波センサの少なくとも1つを、前記測定管の底部に配置することを特徴とする請求項1記載の粘度測定装置。
【請求項3】
前記超音波センサが多素子型センサであり、前記測定管の管路に沿って素子が配置されることを特徴とする請求項1記載の粘度測定装置。
【請求項4】
複数の超音波センサを用いた粘度測定装置であって、そのうちの1つの超音波センサが発信する音波の方向が、他の少なくとも1つの超音波センサが発信する音波の方向と交差するように、前記複数の超音波センサが配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘度測定装置。
【請求項5】
前記超音波センサの少なくとも1つが、前記測定管の管路に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘度測定装置。
【請求項6】
前記超音波センサの出力を入力し時間関数あるいは位置関数、または時間あるいは位置をパラメータとする出力パターンを作成する手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘度測定装置。
【請求項7】
複数の超音波センサあるいは多素子型超音波センサを用いた粘度測定装置であって、当該超音波センサの出力を入力し時間関数あるいは位置関数、または時間あるいは位置をパラメータとする出力パターンを作成する手段と、2以上の時間関数あるいは位置関数または出力パターン同士を比較する手段とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘度測定装置。
【請求項8】
前記測定管を傾斜状態にし、測定管の外周下側面に少なくとも1つの超音波センサを配置することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘度測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−214930(P2006−214930A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29353(P2005−29353)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(597154966)学校法人高知工科大学 (141)
【出願人】(392000110)オートマックス株式会社 (16)