説明

粘性材料の脱泡・定量供給装置及びそれに連係する分配供給装置

【課題】粘性材料を脱泡して常に定量の粘性材料を供給すると共に、脱泡された粘性材料を常に均等に分配供給できるようにする。
【解決手段】粘性材料の脱泡・定量供給装置の脱泡処理部Aを、所定量の粘性材料が収容可能で、粘性材料が排出される細長い排出口2を底部に有するタンク1と、その一端部が閉塞されると共に、その側壁に軸線方向に沿って形成される長孔6が排出口2に連通するようタンク1の底部に固設される脱泡・送出用配管5と、該脱泡・送出用配管5の他端部に長さ方向に沿って延出されると共に、その先端部に脱泡処理された所定供給量の粘性材料を送出するための送出口11を有する延出部10と、該送出口11を開閉する吸引用開閉弁15と、その先端部が延出部10に位置するよう、脱泡・送出用配管5の一端部から液密に内挿されると共に、回転自在に設けられるスクリュー8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油、接着剤、パテ、グリスなどの粘性材料を容器に供給するための粘性材料の脱泡・定量供給装置及びそれに連係する分配供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の粘性材料の供給装置としては、粘性材料を収容する容器と、該容器内の粘性材料を吸い上げて送り出すポンプユニットと、前記容器内の粘性材料の上面に載置され、昇降手段によりポンプユニットを下降させることにより粘性材料を押圧する押圧手段と、ポンプユニットと押圧手段との間に設けられた分岐配管と、ポンプユニットを支持する架台とから構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ポンプユニットは、下部に設けられた、粘性材料を吸引するための定量シリンダと、該定量シリンダの上部に直列接続された、定量シリンダを駆動させるための駆動シリンダとを有している。
【0004】
押圧手段は、ドーム形状のポンププレートと、該ポンププレートの上面との間に加熱媒体循環空間が形成されるよう取り付けられたジャケットプレートとを有している。
【0005】
流路は、ポンププレートと定量シリンダの間を接続する粘性材料を吸引するための流通路と、該流通路、及び流通路に吸引された粘性材料を定量配分するための充填装置の間を接続する分岐路と、流通路及び分岐路に設けられた開閉弁とを備えている。
【0006】
そして、所定温度に制御された粘性材料を加熱するための温水を、加熱媒体循環空間に供給すると共に、駆動シリンダを駆動させて、ポンププレートを押し下げ、粘性が低化した状態の粘性材料を流通路を介して定量シリンダに吸引する。その後、充填装置に供給している。
【0007】
また他の従来例としては、内部に縦長の脱泡室を有する脱泡装置と、粘性材料としての接着剤を脱泡室に供給する容器と、該容器と脱泡室の供給路に設けられた開閉弁と、脱泡装置に設けられたモータと、脱泡室に上下方向に貫設されたモータの回転軸と、該回転軸の上端部に設けられた濾過装置と、回転軸の下端部に取り付けられた攪拌翼と、脱泡装置に設けられた真空ポンプ及び加圧装置とから構成されたものも公知になっている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
そして、開閉弁及び真空ポンプをオンして、未脱泡の粘性材料を脱泡室内に導入し、粘性材料が濾過装置を通過することによって、粘性材料内部の殆どの気泡が破壊されて除去される。その後、真空ポンプをオフにすると共に、加圧装置をオンにして、処理後の粘性材料を加圧装置によって加圧しつつ、攪拌翼によって攪拌することで、粘性材料内部に残留する微細な気泡を除去した後、確実に脱泡処理された粘性材料を加工部品に分配供給するようにしている。
【特許文献1】特許第3328809号公報
【特許文献2】特許第3093790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記文献1の場合、粘性液剤内部に生じる空気を脱泡することができるような手段がないので、粘性液剤を計量する際に誤差を生じてしまい、定量の粘性液剤の供給及び分配が困難であるという問題がある。
【0010】
また従来の文献2の場合、粘性材料が粘度を有しているので、粘性材料を分配供給した際に、粘性材料と加工部品との間に空気溜まりが生じてしまい、例えば加工部品の凹部に粘性材料をきれいに充填することができず、定量の粘性材料を分配供給するのが困難であると考えられる。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、粘性材料を脱泡して常に定量の粘性材料を供給すると共に、脱泡された粘性材料を常に均等に分配供給できる粘性材料の脱泡・定量供給装置及びそれに連係する分配供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る粘性材料の脱泡・定量供給装置は、接着剤やグリスなどの粘性材料を脱泡処理する脱泡処理部Aと、該脱泡処理部Aによって脱泡処理された粘性材料を定量供給する定量供給部Bと、脱泡処理部A及び定量供給部Bを制御する制御手段とから構成される粘性材料の脱泡・定量供給装置において、上記脱泡処理部Aは、所定量の粘性材料が収容可能で、該粘性材料が排出される細長い排出口2を底部に有するタンク1と、その一端部が閉塞されると共に、その側壁に軸線方向に沿って形成される長孔6が排出口2に連通するようタンク1の底部に固設される脱泡・送出用配管5と、該脱泡・送出用配管5の他端部に長さ方向に沿って延出されると共に、その先端部に脱泡処理された所定供給量の粘性材料を送出するための送出口11を有する延出部10と、該送出口11を開閉する吸引用開閉弁15と、その先端部が延出部10に位置するよう、脱泡・送出用配管5の一端部から液密に内挿されると共に、回転自在に設けられるスクリュー8とを備えたことを特徴とする。
【0013】
この場合、吸引用開閉弁15を閉じた状態でスクリュー8を回転させると、粘性材料は、自重落下によってタンク1の底部の排出口2、脱泡・送出用配管5の長孔6を通って脱泡・送出用配管5内に流入することになる。この際、スクリュー8の回転によって、タンク1の底部の粘性材料がタンク1上部に、タンク1上部の粘性材料が底部に流動することになり、タンク1内において粘性材料の対流が起こり、粘性材料内の空気がタンク1上部において外部に放出される。この対流による空気の放出が繰り返し行われることによって、粘性材料の脱泡処理が確実になされる。その後、吸引用開閉弁15を開くと、スクリュー8の回転による軸方向の力によって、脱泡・送出用配管5に充填された脱泡処理後の粘性材料が延出部10に圧送されるようになる。
【0014】
また本発明によれば、上記定量供給部Bを、一端部が吸引用開閉弁15を介して脱泡・送出用配管5の延出部10に接続される供給用シリンダ20と、該供給用シリンダ20の他端部に取り付けられ、供給用シリンダ20の他端部側からスクリュー8に対して同軸線上に対向配置されるよう液密に内挿されると共に、粘性材料の吸引及び排出が行えるよう退出自在に設けられるロッド26を備える駆動用シリンダ25とから構成し、供給用シリンダ20の一端部側に、脱泡・送出用配管5からの粘性材料を吸引及び排出するための供給処理室21を設けると共に、他端部側に、ロッド26の退出移動をガイドするためのガイド室22を設け、供給処理室21に吸引された粘性材料を次段の分配供給装置に排出するための排出用配管30の一端部を排出用開閉弁31を介して供給処理室21に接続し、ロッド26の先端部に、供給処理室21の内径よりもやや小径で且つ供給処理室21の軸長と略同一軸長の押圧体27を同軸線上に固設し、該押圧体27を、ロッド26の後退位置においてガイド室22に位置させると共に、ロッド26の進出位置において供給処理室に位置させるよう構成するようにしてもよい。
【0015】
この場合、粘性材料が供給用シリンダ20の供給処理室21に充填された状態で、駆動用シリンダ25のロッド26が供給処理室21側に進出すると、ロッド26の先端部の押圧体27が充填されている粘性材料を軸方向及び径外方向に押圧することになり、粘性材料が供給処理室21の壁面に密着した状態で排出用配管30から排出されるようになる。つまり、粘性材料が脱泡・送出用配管5から供給用シリンダ20の供給処理室21に圧送されて充填される際に、粘性材料と供給処理室21の壁面との間に生じる空気溜まりを抑制することができ、これによって定量の粘性材料を供給処理室21に吸引できるようになる。
【0016】
また本発明によれば、上記制御手段として、吸引用開閉弁15を閉じた状態でスクリュー8を回転させると共に、ロッド26を後退位置から進出位置に移動させ、所定時間経過した後、吸引用開閉弁15を開くと共に、排出用開閉弁31を閉じて、ロッド26を進出位置から後退位置に移動させて、脱泡・送出用配管5から供給用シリンダ20の供給処理室21に粘性材料を吸引する一方、スクリュー8を回転させた状態で吸引用開閉弁15を閉じる共に、排出用開閉弁31を開いて、ロッド26を後退位置から進出位置に移動させると共に、押圧体27を供給処理室21に位置させて、吸引された粘性材料を排出用配管30に排出し、以後、粘性材料の吸引と排出を繰り返し行うよう構成するようにしてもよい。
【0017】
この場合、粘性材料の脱泡処理をタンク1内で確実に行った後、脱泡処理された粘性材料を供給用シリンダ20の供給処理室21において、押圧体27を進出移動させることで、粘性材料と供給処理室21の壁面との間に生じる空気溜まりを抑制し、供給用シリンダ20によって定量吸引すると共に定量排出できるようになる。
【0018】
また本発明によれば、直立支持された状態で昇降可能に設けられると共に、その下端部に噴出口36が形成されるノズル35と、該ノズル35を昇降させる昇降手段45と、ノズル35の噴出口36から所定量の粘性材料を噴出できるよう所定圧力をノズルに供給する圧力供給手段40と、複数の円筒状の容器Cを個別に回転させる容器用回転手段52がテーブル51に設けられると共に、該テーブル51を回転させるテーブル用回転手段が設けられる分配用回転テーブル50と、ノズル35を上昇位置に位置させた状態で、各容器Cを個別に回転させつつ、粘性材料の充填開始から終了するまでの間、一つの容器Cがノズル35の噴出口36の真下に位置するよう、テーブル51の回転を停止させてスタンバイ状態にした後、上昇位置のノズル35を下降させると共に、ノズル35の噴出口36を容器Cの底部中央の近傍に位置させて、粘性材料の充填を開始させ、容器C内に充填されるにしたがって上昇する粘性材料の液面高さに対して、ノズル35の噴出口36が常に一定距離を保持しつつ上昇させながら、粘性材料の充填を終了させ、その後、テーブル51を回転させてつぎの容器Cへの粘性材料の充填を順次行うよう制御する制御手段とから構成されるような構成を採用することもできる。
【0019】
この場合、容器C内に充填された粘性材料に遠心力が作用して、粘性材料に渦巻きが発生して逆円錐状になる。即ち中心ほど渦度が大きく、中心から遠ざかるに従って渦度は小さくなっており、最深部となる中心部が略平坦な底面を呈し、液面の外側が径外方向に作用する力によって容器Cの壁面に密着した状態で斜め上向きに流動することになり、容器Cの壁面と粘性材料との間に生じる空気溜まりを抑制できるようになる。
【0020】
さらに、容器C内の粘性材料の最深部の真上にノズル35の噴出口36を位置させた状態で且つ充填された容器C内の粘性材料の最深部の液面とノズル35の噴出口36との距離を一定に保持した状態で充填することで、定量の粘性材料を各容器Cに分配できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、真空ポンプや加圧装置を使用することなく、粘性材料内部の気泡を簡単な構成で確実に脱泡するようにしたので、定量の粘性材料を常に供給できる安価な粘性材料の脱泡・定量供給装置を提供できる効果がある。
【0022】
また本発明によれば、脱泡処理後の粘性材料を分配する際に、粘性材料と分配部材(加工部品や容器など)との間に生じる空気溜まりをなくすようにしたので、脱泡処理後の粘性材料を均等に分配供給できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る粘性材料の脱泡・定量供給装置及びそれに連係する分配供給装置につき図1及び図2を参照して説明する。
本実施形態に係る粘性材料の脱泡・定量供給装置及びそれに連係する分配供給装置の構成は、粘性材料として所定量の接着剤が収容された逆円錐状のタンク1と、該タンク1の底部に固着された脱泡・送出用配管5と、該脱泡・送出用配管5の延出部10に吸引用開閉弁15を介して接続された供給用シリンダ20と、該供給用シリンダ20の他端部に取り付けられた駆動用シリンダ25と、一端部が供給用シリンダ20に接続された排出用配管30と、該排出用配管30の他端部に排出用開閉弁31を介して連結されたノズル35と、該ノズル35に粘性材料を圧送するために所定圧力を供給する圧力供給手段40と、ノズル35を昇降させる昇降手段45と、複数の容器Cが配置された分配用回転テーブル50と、粘性材料を脱泡して定量供給した後、脱泡された粘性材料を各容器Cに定量分配できるよう制御する制御手段とから構成されている。
【0024】
タンク1は、底部に細長い平面視略矩形状の排出口2が形成されると共に、上部開口部3が平面視円形状に形成されている。該排出口2の周縁部に、後述する脱泡・送出用配管5の側壁に形成された長孔6の周縁部が溶着されて、タンク1の底部に脱泡・送出用配管5が水平方向に固着されている。
【0025】
脱泡・送出用配管5は、一端部が円板状のシール部材7によって密閉されており、該シール部材7の外面に、スクリュー8を回転させるためのモータ9が取り付けられ、該モータ9の回転軸が、該シール部材7を液密に貫通して脱泡・送出用配管5内に導入されている(図示せず)。そして、上述したように、排出口2と略同一形状の長孔6が脱泡・送出用配管5の側壁に軸線方向に沿って形成されている。
【0026】
さらに、脱泡・送出用配管5の他端部に長さ方向に沿って延出部10が設けられ、脱泡処理された所定供給量の粘性材料が延出部10の先端部に形成された送出口11から送出される。そして、送出口11には、該送出口11を開閉する弁体(ボール弁)16を備えた吸引用開閉弁15が接続されている。
【0027】
スクリュー8は、脱泡・送出用配管5の一端部側から軸線方向に沿って内挿されると共に、モータ9の回転軸に軸着されて回転自在に設けられている。そして、スクリュー8の先端部が、脱泡・送出用配管5の延出部10に位置している。なお、上記タンク1、脱泡・送出用配管5、延出部10、吸引用開閉弁15、スクリュー8により脱泡処理部Aが構成されている。
【0028】
供給用シリンダ20は、一端部側に、脱泡・送出用配管5からの所定供給量の粘性材料を吸引及び排出する供給処理室21が設けられると共に、他端部側に、後述する駆動用シリンダ25のロッド26の退出移動をガイドするためのガイド室22が設けられている。そして、後述するロッド26の先端部に固設された押圧体27が、ロッド26の退出移動に伴って供給処理室21及びガイド室22を往復移動する。
【0029】
駆動用シリンダ25は、進退自在に設けられたロッド26を有しており、該ロッド26の先端部に、供給処理室21の内径よりもやや小径で且つ供給処理室21の軸長と略同一軸長を有する円柱体からなる押圧体27がロッド26と同一軸線上に固設されている。
【0030】
そして、押圧体27の形状を円柱体とすると共に、その外径を供給処理室21の内径よりもやや小径にする理由としては、粘性材料が供給処理室21に吸引された際、スクリュー8が回転することによって、粘性材料が供給用シリンダ20内部に圧送されることになるが、吸引された粘性材料を押圧体27の周面によって径外方向に押圧すると共に、押圧体27の先端部の端面によって軸方向に押圧して、粘性材料と、供給用シリンダ20内の壁面や吸引用開閉弁15の弁体16の表面とに生じる空気溜まりを押し潰すようにするためである。即ち供給すべき定量の粘性材料を吸引すると共に、排出するためである。
【0031】
また、押圧体27の軸長を供給処理室21の軸長と略同一軸長とする理由としては、供給処理室21に供給された粘性材料を確実に排出用配管30に排出するためで、具体的には、後退位置(ガイド室22)から進出位置(供給処理室21)に移動した際、押圧体27の先端部が排出用配管30の接続位置を超えて供給用シリンダ20の一端部近傍に位置することになる。
【0032】
なお、押圧体27の作用効果、即ち粘性材料を供給用シリンダ20内に、粘性材料と供給用シリンダ20内の壁面とに生じる空気溜まりを生じることなく吸引すると共に、吸引された粘性材料を供給用シリンダ20から確実に排出することを考慮すれば、押圧体27の外径は供給用シリンダ20の内径にできるだけ近く、軸長は吸引用開閉弁15の弁体16との距離ができるだけ小さくすることが好ましい。したがって、押圧体27の形状は、円柱に限定されるものではなく、多角柱または径外方向に凸部を有する柱体であってもよい。
【0033】
排出用配管30は、その一端部が供給処理室21に連通するよう、供給用シリンダ20の軸線に対して直交する方向に接続されている。そして、排出用配管30の他端部には、排出用配管30を開閉する弁体(ボール弁)32を備えた排出用開閉弁31が接続されている。そして、吸引用開閉弁15及び排出用開閉弁31の弁体16,32は、粘性材料の吸引及び排出に対応して交互に開閉するよう制御される。なお、上記供給用シリンダ20、駆動用シリンダ25、押圧体27、排出用配管30、排出用開閉弁31により定量供給部Bが構成されている。
【0034】
ノズル35は、下端部に粘性材料を噴出する噴出口36が形成され、上端部が、後述する昇降手段45を構成する支持部材37に一体化されている。
【0035】
圧力供給手段40は、コンプレッサからなり、支持部材37を介して所定圧力をノズル35に供給してノズル35の噴出口36から脱泡・定量供給装置からの所定量の粘性材料を噴出させる。
【0036】
ノズル35の昇降手段45は、直立支持されると共に、回転自在に設けられたねじ棒46と、該ねじ棒46を回転させるモータ47と、ねじ棒46に螺合するナット48と、該ナット48に固着されたノズル35の支持部材37とを有している。
【0037】
分配用回転テーブル50は、平面視円形状のテーブル51と、該テーブル51の周縁部に配設された容器用回転手段52と、テーブル51を回転させるテーブル用回転手段(図示せず)とから構成されている。
【0038】
容器用回転手段52は、テーブル51の周縁部の下面に固定されると共に、その回転軸53aがテーブル51の上面に導出されたモータ53と、該回転軸53aに底部が軸着された有底筒状の支持体54とを備えている。そして、支持体54の内径寸法は、ノズル35の噴出口36から定量の粘性材料を分配供給するための複数の容器Cがきっちりと挿入できるような大きさを有している一方、支持体54の高さ寸法は、挿入された容器Cを安定した状態で支持できる高さに設定されている。さらに、支持体54は、各容器Cがモータ53の回転速度と同一回転速度で回転できるよう、容器Cに対する固定手段が設けられている(図示せず)。
【0039】
つぎに粘性材料の脱泡及び脱泡された粘性材料の定量供給並びに定量供給される粘性材料の分配供給に至る全体の制御について説明する。まず、スクリュー8を回転すると共に、吸引用開閉弁15を閉じた状態にして、駆動用シリンダ25のロッド26を進出移動させて押圧体27を供給用シリンダ20の供給処理室21に位置させ、スタンバイ状態にする。
【0040】
一方、分配供給装置においては、ノズル35を上昇位置に位置させた状態で、各容器Cを個別に回転させつつ、粘性材料の供給開始から終了するまでの間、一つの容器Cがノズル35の噴出口36の真下に位置するよう、テーブル51の回転を停止させてスタンバイ状態にする。
【0041】
このスタンバイ状態において、タンク1内に所定量の粘性材料(例えば接着剤)を投入すると、タンク1の排出口2及び脱泡・送出用配管5の長孔6から粘性材料が自重で自然落下すると共に、自然落下した粘性材料が、スクリュー8の回転による軸方向の力によって、脱泡・送出用配管5内部に充満すると共に、スクリュー8の回転による径外方向の力によってタンク1の底部から上部開口3に押し上げられるようになり、タンク1内の粘性材料に対流が生じることになる。この際、粘性材料内の空気が上部開口3において外部に放出されて脱泡される。
【0042】
そして、上記脱泡処理を所定時間、例えば10分間程度行った後、スクリュー8を回転させた状態で吸引用開閉弁15を開くと共に、排出用開閉弁31を閉じて、駆動用シリンダ25のロッド26を後退させて押圧体27を供給処理室21からガイド室22に位置させると、ロッド26の後退動作による供給処理室21が負圧になると共に、スクリュー8の回転による軸方向の力によって粘性材料が圧送されることによって、粘性材料が供給処理室21及びガイド室22の一部に吸引される。
【0043】
この際、上述したように、押圧体27によって、吸引された粘性材料と供給用シリンダ20内の壁面との間に生じる空気溜まりが潰されて、定量の粘性材料が吸引されるようになる。
【0044】
つぎに、吸引用開閉弁15を閉じると共に、排出用開閉弁31を開く一方、駆動用シリンダ25のロッド26をガイド室22から供給処理室21に進出移動させると共に、押圧体27を供給処理室21に位置させることで、吸引された粘性材料を排出用開閉弁31、排出用配管30を経て分配供給装置側に排出する。
【0045】
続いて、分配供給装置において、上昇位置のノズル35を下降させると共に、ノズル35の噴出口36を容器Cの底部中央の近傍に位置させて、圧力供給手段(コンプレッサ)40によって粘性材料を加圧して容器C内部に充填を開始する。この際、図1の一点鎖線に示すように、容器Cが回転されているので、充填される粘性材料に円心作用が生じて、粘性材料の中心部が最深部となり、外周部が容器C壁面を斜め上方に向かって流動し、逆円錐状になる。
【0046】
そして、図1の二点鎖線に示すように、粘性材料の最深部は、充填されるにしたがってその液面高さが上昇することになるが、ノズル35の噴出口36が液面に対して常に一定距離を保持しつつ上昇するよう制御されているので、粘性材料の充填が支障なく完了することになる。その後、テーブル51を回転させてつぎの容器Cへの粘性材料の充填が順次行われる。
【0047】
ここで、本実施形態の場合、粘性材料として接着剤を使用しているので、接着剤の粘度が外気温度に影響を受けることで変化することになる。例えば低温度においては粘度が高くなり、高温度においては粘度が低くなる。このため、供給されるに従って上昇する液面高さを検知するのではなく、分配供給装置が設置されている外気温度を温度センサによって検知して、ノズル35の上昇速度を制御するようにしてもよい。
【0048】
なお、前記実施形態の場合、粘性材料として接着剤を例にとって説明したが、粘性があって流動性を有するものであればよく、例えばグリスや石油にも適用できるのは言うまでもない。但し粘度が外気温度に影響を受けない粘性材料であれば、外気温度に対応させてノズル35の昇降動作を制御する必要はなく、上昇する粘性材料の液面の位置を検出してノズル35の昇降動作を制御すればよい。
【0049】
また前記実施形態の場合、逆円錐状のタンク1を例にとって説明したが、立方体形状又は直方体形状のタンク1であってもよい。但し、脱泡・送出用配管5に内挿するスクリュー8を回転させる駆動力及び該駆動力に対応して設定されるスクリューの長さに限界があることを考慮すると、逆円錐状の方が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る粘性材料の脱泡・定量供給装置及びそれに連係する分配供給装置を示す構成図。
【図2】図1の粘性材料の脱泡・定量供給装置の拡大図。
【符号の説明】
【0051】
1…タンク、2…排出口、3…上部開口部、5…脱泡・送出用配管、6…長孔、7…シール部材、8…スクリュー、9…モータ、10…延出部、11…送出口、15…吸引用開閉弁、16…弁体、20…供給用シリンダ、21…供給処理室、22…ガイド室、25…駆動用シリンダ、26…ロッド、27…押圧体、30…排出用配管、31…排出用開閉弁、35…ノズル、36…噴出口、37…支持部材、40…圧力供給手段、45…昇降手段、46…ねじ棒、47…モータ、48…ナット、50…分配用回転テーブル、51…テーブル、52…容器用回転手段、53a…回転軸、54…支持体、A…脱泡処理部、B…定量供給部、C…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤やグリスなどの粘性材料を脱泡処理する脱泡処理部(A)と、該脱泡処理部(A)によって脱泡処理された粘性材料を定量供給する定量供給部(B)と、脱泡処理部(A)及び定量供給部(B)を制御する制御手段とから構成される粘性材料の脱泡・定量供給装置において、上記脱泡処理部(A)は、所定量の粘性材料が収容可能で、該粘性材料が排出される細長い排出口(2)を底部に有するタンク(1)と、その一端部が閉塞されると共に、その側壁に形成される排出口(2)と略同一形状の長孔(6)が該排出口(2)に連通するようタンク(1)の底部に固設される脱泡・送出用配管(5)と、該脱泡・送出用配管(5)の他端部に長さ方向に沿って延出されると共に、その先端部に脱泡処理された所定供給量の粘性材料を送出するための送出口(11)を有する延出部(10)と、該送出口(11)を開閉する吸引用開閉弁(15)と、その先端部が延出部(10)に位置するよう、脱泡・送出用配管(5)の一端部から液密に内挿されると共に、回転自在に設けられるスクリュー(8)とを備えたことを特徴とする粘性材料の脱泡・定量供給装置。
【請求項2】
上記定量供給部(B)は、一端部が吸引用開閉弁(15)を介して脱泡・送出用配管(5)の延出部(10)に接続される供給用シリンダ(20)と、該供給用シリンダ(20)の他端部に取り付けられ、供給用シリンダ(20)の他端部側からスクリュー(8)に対して同軸線上に対向配置されるよう液密に内挿されると共に、粘性材料の吸引及び排出が行えるよう退出自在に設けられるロッド(26)を備える駆動用シリンダ(25)とから構成され、供給用シリンダ(20)は、その一端部側に、脱泡・送出用配管(5)からの粘性材料を吸引及び排出するための供給処理室(21)が設けられると共に、他端部側に、ロッド(26)の退出移動をガイドするためのガイド室(22)が設けられ、供給処理室(21)は、該供給処理室(21)に吸引された粘性材料を次段の分配供給装置に排出するための排出用配管(30)の一端部が排出用開閉弁(31)を介して接続され、ロッド(26)は、その先端部に、供給処理室(21)の内径よりもやや小径で且つ供給処理室(21)の軸長と略同一軸長の押圧体(27)が同軸線上に固設され、該押圧体(27)は、ロッド(26)の後退位置においてガイド室(22)に位置すると共に、進出位置において供給処理室(21)に位置するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載の粘性材料の脱泡・定量供給装置。
【請求項3】
上記制御手段は、吸引用開閉弁(15)を閉じた状態でスクリュー(8)を回転させると共に、ロッド(26)を後退位置から進出位置に移動させ、所定時間経過した後、吸引用開閉弁(15)を開くと共に、排出用開閉弁(31)を閉じて、ロッド(26)を進出位置から後退位置に移動させて、脱泡・送出用配管(5)から供給用シリンダ(20)の供給処理室(21)に粘性材料を吸引する一方、スクリュー(8)を回転させた状態で吸引用開閉弁(15)を閉じる共に、排出用開閉弁(31)を開いて、ロッド(26)を後退位置から進出位置に移動させると共に、押圧体(27)を供給処理室(21)に位置させて、吸引された粘性材料を排出用配管(30)に排出し、以後、粘性材料の吸引と排出を繰り返し行うよう構成されることを特徴とする請求項2に記載の粘性材料の脱泡・定量供給装置。
【請求項4】
直立支持された状態で昇降可能に設けられると共に、その下端部に噴出口(36)が形成されるノズル(35)と、該ノズル(35)を昇降させる昇降手段(45)と、ノズル(35)の噴出口(36)から所定量の粘性材料を噴出できるよう所定圧力をノズル(35)に供給する圧力供給手段(40)と、複数の円筒状の容器(C)を個別に回転させる容器用回転手段(52)がテーブル(51)に設けられると共に、該テーブル(51)を回転させるテーブル用回転手段が設けられる分配用回転テーブル(50)と、ノズル(35)を上昇位置に位置させた状態で、各容器(C)を個別に回転させつつ、粘性材料の充填開始から終了するまでの間、一つの容器(C)がノズル(35)の噴出口(36)の真下に位置するよう、テーブル(51)の回転を停止させてスタンバイ状態にした後、上昇位置のノズル(35)を下降させると共に、ノズル(35)の噴出口(36)を容器(C)の底部中央の近傍に位置させて、粘性材料の充填を開始させ、容器(C)内に充填されるにしたがって上昇する粘性材料の液面高さに対して、ノズル(35)の噴出口(36)が常に一定距離を保持しつつ上昇させながら、粘性材料の充填を終了させ、その後、テーブル(51)を回転させてつぎの容器(C)への粘性材料の充填を順次行うよう制御する制御手段とから構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粘性材料の脱泡・定量供給装置に連係する分配供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate