説明

粘性液状食品の充填用ノズル、充填装置および容器入り粘性液状食品の製造方法。

【課題】トレー等の容器に粘性液状食品の液面が平らとなるように充填することのできる充填用ノズル、充填装置および容器入り粘性液状食品の製造方法の提供。
【解決手段】粘性液状食品が供給される流路の出口端に取り付けられる粘性液状食品の充填用ノズル9であって、同心多重の周状吐出口を備えることを特徴とする粘性液状食品の充填用ノズルおよびその装置、並びに粘性液状食品が供給される流路の出口端に同心多重の周状吐出口を備える充填用ノズルを用いた容器入り粘性液状食品の製造方法であって、前記吐出口のそれぞれの間隙を、非吐出時に粘性液状食品が液だれしない大きさに構成し、間欠搬送される容器21が充填用ノズルの下方に位置する間に粘性液状食品を定量吐出することを特徴とする容器入り粘性液状食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレー等の容器に粘性液状食品の液面が平らとなるように充填することのできる充填用ノズル、充填装置および容器入り粘性液状食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱するだけで簡単に調理することが可能なトレー入り食品として、電子レンジ調理用食品、冷凍食品、オーブン加熱用食品等、様々な種類のものが市販されている。例えば、密封可能なトレーにグラタン、ドリア等の食品本体を収納し、保存性を持たせたものがあり、オーブン等で加熱するだけで簡単かつ手軽に食することができることから、一般家庭はもとより、ファーストフードショップ、レストラン、コンビニエンスストア等においても広く販売される状況にある。
【0003】
グラタン等のソースをトレーの中に充填するのに充填装置が用いられており、例えば、固形物を含有しないプレインソースAと、多量の野菜片を含有する野菜ソースBと、同じく多量の肉片を含有する肉片ソースCとを、充填時に所定の混合比a:b:cにより混合して、aA+bB+cCとし、所定の固形物含有比からなる製品ソースとなし、これをトレー(または製品袋)に押出充填する装置がある(特許文献1参照)。
【0004】
また、カレーソース等肉片や野菜片等の固形物ないし繊維質を含む粘性流動よりなるレトルト食品の製袋充填に当たって、ノズルの開閉時にギロチン状のスライドカッターにより固形物や繊維質を切断すると共に、上下動する回転ピストンによりノズル内の残留物を袋内に確実に排出し、充填量目の過不足を生ずることなく、衛生的にレトルト食品を一定量ずつ確実に袋内に充填封入する装置がある(特許文献2参照)。
【0005】
また、店が決めた容量を少しも無駄にしないようにソース等を吐出できるとともに、調理場の手数が省け、料理を出す時間を短縮できることを目的とした液状食品の分注装置がある(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−324516号公報
【特許文献2】特公昭61−44728号公報
【特許文献3】特開2004−268947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の充填装置では、図9に示すように、粘性液状食品(例えば、ホワイトソース)が山盛り状に充填されてしまうため、充填後、スプーン等の器具を用いて人手により平らにしなくてはならないという課題があった。特に、多角形のトレーにおいては、隅部まで粘性液状食品の液面を平らにするのには大変な労力を要した。
【0008】
本発明は、トレー等の容器に粘性液状食品の液面が平らとなるように充填することのできる充填用ノズル、充填装置および容器入り粘性液状食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、粘性液状食品が供給される流路の出口端に取り付けられる粘性液状食品の充填用ノズルであって、同心多重の周状吐出口を備えることを特徴とする粘性液状食品の充填用ノズルである。
第2の発明は、第1の発明において、前記同心多重の周状吐出口が、同心3重以上の周状吐出口により構成されることを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、前記周状吐出口がそれぞれ環状に構成されることを特徴とする。
第4の発明は、第1または2の発明において、前記周状吐出口がそれぞれ多角形状に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の粘性液状食品の充填用ノズル。
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明に係る粘性液状食品の充填用ノズルと、充填用ノズルと粘性液状食品とを連通する流路と、流路に配設された定量ポンプとを備えた粘性液状食品の充填装置である。
第6の発明は、粘性液状食品が供給される流路の出口端に同心多重の周状吐出口を備える充填用ノズルを用いた容器入り粘性液状食品の製造方法であって、前記吐出口のそれぞれの間隙を、非吐出時に粘性液状食品が液だれしない大きさに構成し、間欠搬送される容器が充填用ノズルの下方に位置する間に粘性液状食品を定量吐出することを特徴とする容器入り粘性液状食品の製造方法である。
第7の発明は、第6の発明において、最も外側の周状吐出口が容器の内周より僅かに小さく構成されることを特徴とする。
第8の発明は、第6または7の発明において、吐出時に粘性液状食品の粘度を10〜100dPa・sとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トレー等の容器に粘性液状食品の液面が平らとなるように充填することのできる充填用ノズル、充填装置および容器入り粘性液状食品の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
最良の形態の本発明の充填用ノズルは、粘性液状食品が供給される流路の出口端に取り付けられる粘性液状食品の充填用ノズルであって、同心多重の周状吐出口を備えることを特徴とする。ここで、同心状に設ける周状吐出口の数は、3重以上とすることが好ましく、より好ましくは4重以上、さらに好ましくは5重以上とする。周状吐出口の間隙は、大気と連通した状態で粘性液状食品が液だれしない大きさとする。なお、多重の周状吐出口には、中心の吐出口を貫通孔により構成する態様も含まれる。
【0012】
最良の形態の本発明の充填装置は、上記の充填用ノズルと、当該充填用ノズルが取り付けられるチャンバーと、チャンバーに粘性液状食品を供給する流路と、流路と連通する定量ポンプとを備えた粘性液状食品の充填装置である。この際、チャンバー内に設けられる空間の容積を一回の吐出量と同程度に構成し、チャンバーの温度を一定に保持するための保温機を設けてもよい。
また、チャンバーを設けず、流路と充填用ノズルとを直結してもよい。
【0013】
最良の形態の本発明の充填方法は、粘性液状食品が供給される流路の出口端に同心多重の周状吐出口を備える充填用ノズルを用いた粘性液状食品の充填方法であって、前記吐出口を、非吐出時に粘性液状食品が液だれしない間隙に構成し、粘性液状食品を間欠搬送される容器に定量吐出することを特徴とする。ここで、「粘性液状食品」とは、吐出時の粘度が10〜100dPa・s(=10〜10mPa・s)である流動性食品を指し、例えば、クリーム類、ソース類、スープ類があげられ、特に好ましいものとしてはトマトケチャップ、デミグラスソース、ホワイトソースがあげられる。流動性食品の粘度は温度とともに変化するが、図10に示すように、吐出時の粘度が15〜90dPa・sの範囲である場合には、本発明の充填方法を好適に実施できることが確認できた。なお、粘度の測定にはリオン株式会社の粘度計(VISCOTESTER VT-04E)を用いた。
【0014】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
本実施例は、グラタン用のホワイトソースをマカロニ等の具材が載置されたトレーに充填するための充填装置に関する。
【0016】
[構成]
充填装置1は、図1に示すように、粘性液状食品を投入するためのホッパー3と、所定量の粘性液状食品をトレー中に送出するための定量ポンプ4と、定量ポンプ4とチャンバー7とを連通する流通管5と、チャンバー7と、充填用ノズル9とを備えている。
【0017】
定量ポンプ4は、ピストンのストロークでシリンダーの容積を可変とすることにより定量吐出を行う公知の定量ポンプである。
チャンバー7は、図2に示すように、流入口71と、粘性液状食品が一時的に貯留される空間72と、流出口73と、流出口縁部74と、取付孔75とを備えている。チャンバー7は、取付具10により、流通管5に着脱自在に固定されている。このため、適宜取り外して洗浄することが可能である。
【0018】
チャンバー7には、図3に示すパッキン8を介して充填用ノズル9が取り付けられる。パッキン8には、上記の取付孔65と同位置に取付孔81が形成されている。
【0019】
図4(A)は、充填用ノズル9を吐出側からみた図であり、図4(B)は、充填用ノズル9をチャンバー側からみた図である。図5(A)は、図4(A)の拡大図であり、図5(B)は、図5(A)のA−A断面図である。
本実施例の充填用ノズル9は、六角状の6つの吐出口6A〜6Eが同心状に六重に設けられている。本実施例では、吐出口6A〜6Eの間隙を、それぞれ2.5mmとした。吐出口6A〜6Eの間隙は、吐出する粘性液状食品の粘度に応じて最適に設計される。ここで、重要なことは、吐出と吐出の間で粘性液状食品が液だれしない間隙とすることである。粘性液状食品の粘度は、吐出時の温度によって変化することが知られているが、本実施例ではホワイトソースの吐出時の温度が45℃〜50℃のときに最適になるよう設計している。
【0020】
吐出口6A〜6Eは、5枚の六角状部材92、中心部材93および枠体94の間隙として構成される。ここで、六角状部材92は、V字状の断面形状を有しており(図5(B)参照)、V字の開き具合により、間隙の大きさを調整している。
【0021】
充填用ノズル9には、取付孔95がチャンバー7の取付孔75と同位置に設けられており、ネジ部材(例えば、8−M5ネジ)によりチャンバー7に着脱自在に取り付けられる。なお、チャンバー7に充填用ノズル9に取り付ける態様は本実施例のものに限定されず、例えば、公知の部材によりチャンバー7の流出口縁部74と充填用ノズル9の縁部とを挟着固定することで着脱性を向上させてもよい。
【0022】
充填用ノズル9の外縁は、図6に示すように、トレー21とほぼ同じ大きさであり、6つの吐出口6A〜6Eからほぼ等間隔にホワイトソースが吐出される。本実施例では、角形のトレー(80cc)に対応した形状に充填用ノズル9を構成した。トレーの形状に応じて、充填用ノズル9の形状および吐出口7の数は最適に設計される。ここで重要なことは、最も外側の吐出口の形状をトレー等の容器の内周よりやや小さく同形ないしは近似形に構成することである。
【0023】
充填用ノズル9の下方には、ベルトコンベア20が配置される。ベルトコンベア20には、トレー21が一定間隔で配置されており、所定の間隔で間欠搬送される。ベルトコンベア20の停止時間帯にトレー21への充填作業が行われる。
【0024】
[作動]
マカロニ等の具材が予め投入されたトレー21が、ベルトコンベア20により充填用ノズル9の下方に搬送され、ベルトコンベア20は一定時間停止する。ベルトコンベア20と連動して定量ポンプ4が作動し、所定量(80cc)のホワイトソースが充填用ノズル9から充填される。
【0025】
トレー21に充填されたホワイトソースは、液面がほぼ水平になっており、スプーン等で平らにする必要が無い。したがって、ホワイトソースが充填されたトレー21は、そのままベルトコンベア20により次工程に搬送される。
【0026】
一のトレー21への充填作業が終了し、次のトレー21が搬送されるまでの間、チャンバー7内の空間72は、粘性液状食品で満たされており、粘性液状食品の粘度により空間72内に保持される。次のトレー21が充填用ノズル9の下方に搬送されると、定量ポンプ4が作動し、上述の充填作業が繰り返される。
【実施例2】
【0027】
本実施例は、実施例1と同様の充填装置に関し、充填用ノズル9の構成のみが実施例1の充填装置と相違する。
図7(A)は、本実施例の充填用ノズル9を吐出側からみた図であり、図7(B)は本実施例の充填用ノズル9をチャンバー側からみた図である。
【0028】
本実施例の充填用ノズル9は、環状の6つの吐出口6A〜6Eが同心状に六重に設けられている。本実施例では、吐出口6A〜6Eの間隙を、それぞれ2mmとした。吐出口6A〜6Eを、吐出と吐出の間に粘性液状食品が液だれしない間隙に構成することは、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0029】
本実施例は、実施例1および2と同様の充填装置に関し、充填用ノズル9の構成のみが実施例1および2の充填装置と相違する。
図11(A)は、本実施例の充填用ノズル9を吐出側からみた図であり、図11(B)は本実施例の充填用ノズル9をチャンバー側からみた図である。
【0030】
本実施例の充填用ノズル9は、ボート状の4つの吐出口6A〜6Dが同心状に四重に設けられている。本実施例では、吐出口6Dが長孔に構成されているが、かかる構成も周状吐出口に含まれることは言うまでもない。吐出口6A〜6Dを、吐出と吐出の間に粘性液状食品が液だれしない間隙に構成することは、実施例1および2と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係る充填装置の全体構成を示す図面である。
【図2】実施例1に係るチャンバーの構成図である。
【図3】実施例1に係るパッキンの構成を示す全体図である。
【図4】(A)実施例1に係る充填用ノズルをチャンバー側からみた図、(B)同充填用ノズルを吐出側からみた図である。
【図5】(A)図4(A)の拡大図と、(B)図5(A)のA−A断面図である。
【図6】実施例1に係る充填装置による充填作業の説明図である。
【図7】(A)実施例2に係る充填用ノズルをチャンバー側からみた図と、(B)同充填用ノズルを吐出側からみた図である。
【図8】(A)図7(A)の拡大図と、(B)図8(A)のA−A断面図である。
【図9】従来の充填装置による充填作業の説明図である。
【図10】図4の充填用ノズルにおける粘性液状食品の温度帯毎の充填重量および粘度の関係を示すグラフである。
【図11】(A)実施例3に係る充填用ノズルをチャンバー側からみた図と、(B)同充填用ノズルを吐出側からみた図である。
【符号の説明】
【0032】
1 充填装置
3 ホッパー
4 定量ポンプ
5 流通管
6A〜6E 吐出口
7 チャンバー
8 パッキン
9 充填用ノズル(充填用口金)
10 取付具
20 ベルトコンベア
21 トレー
71 流入口
72 空間
73 流出口部
74 流出口縁部
75 取付孔
81 取付孔
91 支持フレーム
92 六角状部材
93 中心部材
94 枠体
95 取付孔
96 円状部材
97 ボート状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性液状食品が供給される流路の出口端に取り付けられる粘性液状食品の充填用ノズルであって、
同心多重の周状吐出口を備えることを特徴とする粘性液状食品の充填用ノズル。
【請求項2】
前記同心多重の周状吐出口が、同心3重以上の周状吐出口により構成されることを特徴とする請求項1に記載の粘性液状食品の充填用ノズル。
【請求項3】
前記周状吐出口がそれぞれ環状に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の粘性液状食品の充填用ノズル。
【請求項4】
前記周状吐出口がそれぞれ多角形状に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の粘性液状食品の充填用ノズル。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の粘性液状食品の充填用ノズルと、充填用ノズルと粘性液状食品とを連通する流路と、流路に配設された定量ポンプとを備えた粘性液状食品の充填装置。
【請求項6】
粘性液状食品が供給される流路の出口端に同心多重の周状吐出口を備える充填用ノズルを用いた容器入り粘性液状食品の製造方法であって、
前記吐出口のそれぞれの間隙を、非吐出時に粘性液状食品が液だれしない大きさに構成し、間欠搬送される容器が充填用ノズルの下方に位置する間に粘性液状食品を定量吐出することを特徴とする容器入り粘性液状食品の製造方法。
【請求項7】
最も外側の周状吐出口が容器の内周より僅かに小さく構成されることを特徴とする請求項6に記載の容器入り粘性液状食品の製造方法。
【請求項8】
吐出時に粘性液状食品の粘度を10〜100dPa・sとすることを特徴とする請求項6または7に記載の容器入り粘性液状食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−234604(P2009−234604A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81356(P2008−81356)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(508091650)株式会社エスディハチカン (1)
【Fターム(参考)】