説明

粘性調整剤

【課題】エマルション樹脂等の水系樹脂を必要以上に増粘させずに少量の添加量でチクソ性の粘性を与え、且つ該水系樹脂から得られる塗膜の耐水性が良好な粘性調整剤を提供すること。
【解決手段】下記式で表されるポリマーからなる粘性調整剤。


(Rは水素またはメチル、RはA、A及びAのいずれかを表し、Aは水素、アルカリ及びNHのいずれか、AはC1〜18の炭化水素基を表し、Aは−(R)−NHCOO−(RO)−Rの基を表し、RはC2〜4のアルキレン基、RはC1〜12のアルキレン基、RはC12〜34の炭化水素基、mは1〜500、nは0または1、p、q及びrはそれぞれ1以上の数を表す。なおA、A、Aに由来するユニットは各々p、q、r個あり、且つ、p/(p+q+r)が0.1〜0.75、q/(p+q+r)が0.2〜0.8、r/(p+q+r)が0.005〜0.7である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション樹脂等の水系樹脂をスプレー塗布に適した粘性や粘度に調整し、更に得られる塗膜の耐水性が良好な粘性調整剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水系塗料、接着剤、あるいは粘着剤等には、一般的にエマルション樹脂等の水系樹脂が使用されているが、これらの用途として使用するには適度な粘度と粘性が必要であり、粘性調整剤の使用が不可欠である。粘性調整剤としては、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等の天然系の粘性調整剤、ポリアクリル酸やポリアクリル酸含有コポリマー等のアルカリで増粘するタイプのアルカリ増粘型粘性調整剤、ウレタン変性ポリエーテル等のウレタン型粘性調製剤等が知られている(例えば、特許文献1〜4を参照)。
【0003】
こうした既存の粘性調整剤にはそれぞれ長所や短所がある。具体的には、天然系の粘性調整剤やアルカリ増粘型粘性調整剤をエマルション樹脂等の水系樹脂に添加すると、水系樹脂に対してチクソ性の粘性を与えるが、該水系樹脂を塗膜にした場合に塗膜の耐水性が悪化する欠点がある。一方、ウレタン型粘性調整剤をエマルション樹脂等の水系樹脂に添加すると、該水系樹脂を塗膜にした場合の耐水性は良好であるが、一般的には水系樹脂に対してレベリング性の粘性を与え、チクソ性の粘性は得られない。チクソ性の粘性が得られないと、例えば、スプレー塗装等で水系樹脂を用いた塗料等を垂直の壁に塗布したときに、塗布された塗料が重力によって下に滴る、一般的に言う「タレ」の問題を生じてしまう。以上のことから、これらの粘性調整剤はお互いの欠点を補う目的で併用されることが多かった。
【0004】
近年、ウレタン型粘性調整剤の中にも、エマルション樹脂等に対してチクソ性の粘性を与えるものが開発された(例えば、特許文献5を参照)。しかしながら、こうしたウレタン型粘性調整剤でエマルション樹脂等にチクソ性の粘性を与えるには、通常高い添加量が必要であり、低い添加量ではチクソ性の粘性が得られない。しかし、チクソ性の粘性が得られる高い添加量ではエマルション樹脂等の粘度が必要以上に上昇し、非常に扱いにくい高粘度のエマルション樹脂等しか得られない。つまりこうしたウレタン型粘性調整剤であっても、低粘度でチクソ性の粘性を持つエマルション樹脂等を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−036720号公報
【特許文献2】特開平11−199854号公報
【特許文献3】特開2001−295195号公報
【特許文献4】特開2007−197520号公報
【特許文献5】特開2002−069430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、エマルション樹脂等の水系樹脂を必要以上に増粘させずに少量の添加量でチクソ性の粘性を与え、且つ該水系樹脂から得られる塗膜の耐水性が良好な粘性調整剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者等は鋭意検討し新規の粘性調整剤を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表される組成を含有するポリマーからなる粘性調整剤である。
【0008】
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、RはA、A及びAのいずれかを表し、Aは水素原子、アルカリ金属及びNHのいずれかを表し、Aは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Aは−(R)−NHCOO−(RO)−Rの基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは炭素数12〜34の脂肪族炭化水素基を表し、mは1〜500の数を表し、nは0または1の数を表し、nは0または1の数を表し、p、q及びrはそれぞれ1以上の数を表す。なおAに由来するユニットはp個あり、Aに由来するユニットはq個あり、Aに由来するユニットはr個あり、且つ、p/(p+q+r)が0.1〜0.75、q/(p+q+r)が0.2〜0.8、r/(p+q+r)が0.005〜0.7である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、少量の添加量でエマルション樹脂等の水系樹脂をスプレー塗布等に適したチクソ性の粘性や粘度に調整し、且つ該水系樹脂から得られる塗膜の耐水性が良好な粘性調整剤を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粘性調整剤は、下記の一般式(1)で表される組成からなるアクリルウレタン型ポリマーである。
【0011】
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、RはA、A及びAのいずれかを表し、Aは水素原子、アルカリ金属及びNHのいずれかを表し、Aは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Aは−(R)−NHCOO−(RO)−Rの基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは炭素数12〜34の脂肪族炭化水素基を表し、mは1〜500の数を表し、nは0または1の数を表し、nは0または1の数を表し、p、q及びrはそれぞれ1以上の数を表す。なおAに由来するユニットはp個あり、Aに由来するユニットはq個あり、Aに由来するユニットはr個あり、且つ、p/(p+q+r)が0.1〜0.75、q/(p+q+r)が0.2〜0.8、r/(p+q+r)が0.005〜0.7である。)
【0012】
は水素原子またはメチル基を表し、複数個存在するRは全て水素原子でも、全てメチル基でもよく、更に水素原子とメチル基が混合してもよい。なお、水素原子とメチル基のどちらであっても性能的には変化がない。
【0013】
はA、A及びAのいずれかを表すが、まずAについて説明する。
は水素原子、アルカリ金属及びNHのいずれかを表す。Aが水素原子の場合カルボン酸となり、Aがアルカリ金属あるいはNHの場合はカルボン酸アルカリ金属塩あるいはカルボン酸アンモニウム塩となる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられるが、これらの中でも粘性調整剤としての効果が高いことからナトリウム、カリウムが好ましい。本発明の粘性調整剤はポリマーであるためAは複数個存在する。複数個存在するAは、水素原子、アルカリ金属及びNHのいずれか1種でも2種以上が混合してもよいが、粘性調整剤としての効果が高いことから、使用時においては複数個あるAの中に、アルカリ金属あるいはNHがあることが好ましく、複数個あるAの50%以上がアルカリ金属あるいはNHであることがより好ましく、複数個あるAの100%がアルカリ金属あるいはNHであることが更に好ましい。なお、一般式(1)の化合物の合成時や本発明の粘性調整剤組成物の保存時は、Aは水素原子であることが好ましい。これについては下記の製造方法で詳しく説明する。
【0014】
は炭素数1〜18の炭化水素基を表すが、こうした炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ターシャリペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p−クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも製法が容易で、ポリマー化した場合のポリマーの安定性が良好なことから、アルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましく、エチル基が最も好ましい。炭素数が18を超えると製造が困難になる場合や、増粘効果が得られない場合がある。
【0016】
は−(R)−NHCOO−(RO)−Rで表される基である。当該基に含まれるRは、炭素数1〜12のアルキレン基を表すが、こうしたアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ターシャリブチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、へキシレン基、イソへキシレン基、ヘプチレン基、イソヘプチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノニレン基、イソノニレン基、デシレン基、イソデシレン基、ウンデシレン基、イソウンデシレン基、ドデシレン基、イソドデシレン基等が挙げられる。これらのアルキレン基の中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2または3のアルキレン基がより好ましく、エチレン基が更に好ましい。なお、nは0または1の数を表し、nの値が1の場合にRは炭素数1〜12のアルキレン基のいずれかになり、nの値が0のときは窒素原子と酸素原子が直接結合して−COONHCOO−で表される基となる。
【0017】
は炭素数12〜34の炭化水素基を表すが、こうした炭化水素基としては、例えば、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、オクタコシル基、トリアコンチル基、ドトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、2−ブチルオクチル基、2−ブチルデシル基、2−ヘキシルオクチル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルデシル基、2−ヘキシルドデシル基、2−オクチルドデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、2−テトラデシルオクタデシル基、2−ヘキサデシルオクタデシル基、モノメチル分枝−イソステアリル基、2級ドデシル基、2級トリデシル基、2級テトラデシル基、2級ヘキサデシル基、2級オクタデシル基、2級エイコシル基、2級ドコシル基、2級テトラコシル基、2級ヘキサコシル基、2級オクタコシル基、2級トリアコンチル基、2級ドトリアコンチル基、2級テトラトリアコンチル基等のアルキル基;デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基;ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p−クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等のアリール基が挙げられる。これらの基の中でも良好な粘性調整効果を発揮することから、炭素数16〜34のアルキル基が好ましく、炭素数20〜34のアルキル基がより好ましい。更に、エマルション樹脂等に与える粘性が高いチクソ性になることから、分岐あるいは2級のアルキル基が好ましく、分岐のアルキル基がより好ましい。なお、炭素数が11以下であると良好な増粘効果が得られず、炭素数が34を超えると原料の製造が困難になるため入手が困難になる場合がある。
【0018】
は炭素数2〜4のアルキレン基を表すが、こうしたアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ターシャリブチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。これらの中でもエマルション樹脂等と混合したときの安定性が高いことから、炭素数2または3のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。炭素数が4を超えると水溶性が低くなり、水系樹脂と混合したときに均一化できない場合がある。
【0019】
mの値は1〜500の数を表すが、良好な粘性調整効果を発揮することから、5〜300の数が好ましく、10〜200の数がより好ましく、20〜150の数が更に好ましい。mの値が500を超える場合は良好な粘性調整効果が得られない場合がある。
【0020】
p、q及びrはそれぞれ1以上の数を表し、p、q及びrを合計した数に対して、pは10〜75%の数であり、qは20〜80%の数であり、rは0.5〜80%の数である。p、q及びrはそれぞれA、A及びAを有するユニットに対応しており、それぞれのユニットのモル数と考えればよい。例えば、pが20、qが30、rが50であれば、一般式(1)で表されるポリマー中にpに対応するAを有するユニットが20モル、qに対応するAを有するユニットが30モル、rに対応するAを有するユニットが50モル含まれることを意味する。
p、q及びrを合計した数に対してpは0.1〜0.75であるが、0.15〜0.7が好ましく0.2〜0.5がより好ましい。同様にqは0.2〜0.8であるが、0.3〜0.75が好ましく、0.4〜0.7より好ましい。更にrは0.005〜0.7であるが、0.01〜0.6が好ましく、0.02〜0.3がより好ましい。p、q及びrの割合が前記の範囲外になると良好な粘性調整効果が得られない場合や、水系樹脂に添加したときに凝集してしまう場合がある。なお本発明の粘性調整剤の重合形態は規定されず、ブロックポリマー、ランダムポリマーあるいはブロック/ランダムポリマーのいずれの重合形態であってもよい。これらの中でも製造が容易であることからランダムポリマーであることが好ましい。
【0021】
本発明の粘性調整剤の製造方法は特に規定されず、公知の方法にて合成すればよいが、合成が容易なことから以下の一般式(2)〜(4)で表されるモノマーを共重合させて合成するのが好ましい。
【0022】
【化3】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは水素原子、アルカリ金属及びNHのいずれかを表す。)
【0023】
【化4】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは炭素数1〜18の炭化水素基を表す。)
【0024】
【化5】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは炭素数12〜34の脂肪族炭化水素基を表し、mは1〜500の数を表し、nは0または1の数を表す。)
【0025】
上記一般式(2)で表される化合物は、Aが水素原子の場合はアクリル酸あるいはメタクリル酸となる。一方、Aがアルカリ金属の場合は、アクリル酸リチウム、メタクリル酸リチウム、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム等となる。これらはアクリル酸やメタクリル酸を水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等で中和することで得られる。また、AがNHの場合は、アクリル酸アンモニウムやメタクリル酸アンモニウムとなり、これらはアクリル酸やメタクリル酸をアンモニアで中和して得ることができる。これらの中でも容易に重合反応ができ、得られるポリマーの取扱いが容易なことから、合成時においてAは水素原子であることが好ましい。Aがアルカリ金属あるいはNHである一般式(2)で表される化合物を使って一般式(1)で表される化合物を重合すると、反応系の粘度が上昇する場合や重合反応が完結しない場合がある。また、乳化重合等の重合反応後にAをアルカリ金属やNHになるように中和すると、系の粘度上昇により取扱いが困難になる場合があるため、本発明の粘性調整剤組成物を保存する場合もAが水素原子であることが好ましい。なお、後に記載するが、水系樹脂に添加する際はAを中和等によりアルカリ金属やNHにすることが好ましい。
【0026】
上記一般式(3)で表される化合物は、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルである。これらのエステル化合物は、アクリル酸やメタクリル酸と炭素数1〜18の1価アルコールとをエステル化反応して得ることができる。炭素数1〜18の1価アルコールとしては、例えば、上記Aの説明で例示した基を持つ1価のアルコールが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ターシャリブタノールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが更に好ましいことから、一般式(3)の化合物としてはアクリル酸メチルあるいはメタクリル酸メチルが好ましい。
【0027】
上記一般式(4)で表される化合物は、下記の一般式(5)と一般式(6)とを反応させることで得ることができる。
【0028】
【化6】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、nは0または1の数を表す。)
【0029】
【化7】

(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数12〜34の脂肪族炭化水素基を表し、mは1〜500の数を表す。)
【0030】
上記一般式(5)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物とを40〜120℃で混合すれば、イソシアネート基と水酸基とが反応して一般式(4)の化合物を得ることができる。しかし一般式(5)で表される化合物には二重結合が存在するので、ターシャリブチルハイドロキノンやハイドロキノンモノメチルエーテル等の公知の重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤を添加する場合は、一般式(5)及び(6)で表される化合物の合計量に対して50〜2000ppm、好ましくは100〜1000ppm、より好ましく200〜800ppmになるように添加すればよい。また、反応時に溶媒や触媒は使用してもしなくてもよいが、その後の反応工程や不純物の混入を考慮すると、溶媒や触媒は使用しないほうが好ましい。
【0031】
一般式(2)〜(4)で表される化合物から一般式(1)の化合物を合成する場合、無溶媒で反応すると粘度上昇等で反応を完結できない場合があるため、溶媒中で反応することが好ましい。溶媒としては、水や、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶媒が挙げられるが、本発明の粘性調整剤はエマルション樹脂等の水を溶媒とする組成物に添加するため、上記の反応に使用する溶媒としては水が好ましく、水中で乳化重合することがより好ましい。当該乳化重合においては乳化剤の使用が必須となるが、利用できる乳化剤としては、例えば、公知のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及びこれらの界面活性剤の混合物が挙げられる。こうした乳化剤の中でも、乳化力が良好で乳化重合後の物性が良好なことからアニオン界面活性剤が好ましい。また、本発明の粘性調整剤を添加した水系樹脂から得られる塗膜の耐水性が問題となることから、使用する乳化剤は当該塗膜の耐水性が良好になる反応性界面活性剤であることがより好ましい。反応性界面活性剤としては、例えば、特開昭58−203960号公報、特開昭61−222530号公報、特開昭63−023725号公報、特開昭63−091130号公報、特開平04−256429号公報、特開平06−239908号公報、特開平08−041113号公報、特開2002−301353号公報等に記載されたものが挙げられる。
【0032】
乳化重合の具体的な方法としては、例えば、一般式(2)〜(4)で表される化合物を、固形分が10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%程度に水で乳化する。その際使用する乳化剤は、一般式(2)〜(4)で表される化合物全量に対して0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%であればよい。乳化した組成物は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、アゾ化合物等の公知の重合開始剤を、一般式(2)〜(4)で表される化合物全量に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%添加し、50〜90℃程度に加温して、乳化した組成物を一括あるいは分割して公知の方法で乳化重合すればよい。本発明の粘性調整剤組成物は、本発明の粘性調整剤を10〜60質量%含有した組成物であり、水に均一に溶解していても乳化状態であってもよいが、製造が容易であることから乳化重合により得る乳化組成物であることが好ましい。
【0033】
本発明の粘性調整剤の分子量は、各モノマーの反応の割合や、mの値によって大きく変化するが、上記に示した重合反応等の通常の反応で合成すれば、いずれの分子量であっても課題を解決すべき効果を発揮するものが得られる。例えば、本発明に使用できるアクリル系のモノマーを乳化重合すると比較的幅広い分子量分布を持つ重合物が得られるが、通常の乳化重合であれば分子量分布が5000〜1000万、好ましくは1万〜500万、より好ましくは5万〜100万の範囲に分布する重合物が得られる。なお、分子量5000未満のものを主成分として製造することは困難であり、同様に1000万を超えるものを製造することは困難である。
【0034】
本発明の粘性調整剤は本発明の効果を阻害しない範囲内で、二重結合を有するその他のモノマーを更に共重合してもよい。ただし当該他のモノマーは、得られるポリマーに対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%であることが更に好ましく、実質当該他のモノマーを含有しないことが最も好ましい。他のモノマーを含有すると、その含有量に伴ってエマルション樹脂等の粘性をチクソ性にする効果が低下する場合や、耐水性が悪化する場合がある。他のモノマーとしては、一般式(2)〜(4)で表される化合物以外の二重結合を有するモノマーであればいずれでもよく、例えば、アクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、イソプレン、ブタジエン等が挙げられる。これら他のモノマーの重合は、例えば、一般式(2)〜(4)で表される化合物のいずれか1種以上と同時に重合させても、一般式(2)〜(4)で表される化合物を重合した後に重合させてもよい。
【0035】
本発明の樹脂組成物水溶液は、一般式(1)で表される組成を含有するポリマーにおいてAがアルカリ金属又はNHである本発明の粘性調整剤と水系樹脂とを含有した水溶液である。使用できる水系樹脂に制限はなく、エマルション樹脂や水溶性の樹脂を水に溶解したもの等、水の中に安定して分散あるいは溶解したものであればいずれの水系樹脂でも使用することができる。こうした水系樹脂としては、例えば、アクリレート系エマルション、スチレン系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、ウレタン系エマルション、エポキシ系エマルション、塩化ビニル系エマルション、SBR(スチレン/ブタジエン)エマルション、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)エマルション、BR(ブタジエン)エマルション、IR(イソプレン)エマルション、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)エマルション、アクリルウレタンエマルション、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性アクリルウレタン樹脂、水性エポキシ樹脂、水性アルキッド樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性セルロース樹脂、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらの水系樹脂は、通常、1〜60質量%の水溶液あるいはエマルション、好ましくは3〜50質量%の水溶液あるいはエマルションである。この水系樹脂の水溶液あるいはエマルションに一般式(1)で表される組成を含有するポリマーにおいてAがアルカリ金属又はNHである本発明の粘性調整剤を添加して本発明の樹脂組成物水溶液を製造する。
【0036】
本発明の樹脂組成物水溶液に添加される本発明の粘性調整剤の添加量は規定されず、任意の量を添加すればよいが、本発明の樹脂組成物水溶液全量に対して本発明の粘性調整剤を0.01〜5質量%になるように添加するのが好ましく、0.05〜3質量%がより好ましく、0.1〜1質量%が更に好ましい。また、本発明の粘性調整剤組成物を添加する場合は、その固形分が水系樹脂全量に対して0.01〜5質量%になるように添加するのが好ましく、0.05〜3質量%がより好ましく、0.1〜1質量%が更に好ましい。なお、本発明の粘性調整剤あるいは粘性調整剤組成物において、一般式(1)で表される組成のAが水素原子の場合は、水系樹脂に添加する前あるいは後にAがアルカリ金属あるいはNHになるように中和する必要がある。
【0037】
本発明の樹脂組成物水溶液に関して更に詳しく説明する。本発明の粘性調整剤組成物を製造する場合、あるいは保存する場合、上述したとおり一般式(1)で表される化合物のAは水素原子が好ましい。しかし一般式(1)におけるAが水素原子である化合物を水系樹脂に添加しても、粘性をチクソ性にする効果が得られない場合がある。粘性をチクソ性にする効果を最大限に発揮させるには、水系樹脂に添加した本発明の粘性調整剤を、水酸化アルカリ金属やアンモニア等のアルカリ剤で完全にあるいは部分的に中和することが好ましく、完全に中和することがより好ましい。つまり、一般式(1)のAを完全にあるいは部分的にアルカリ金属あるいはNHにすることである。アルカリ剤は任意の方法で添加すればよく、例えば、粘性調整剤組成物にアルカリ剤を添加した後に水系樹脂に添加する方法や、粘性調整剤組成物を水系樹脂に添加した後に添加する方法、予め水系樹脂にアルカリ剤を添加しておき、そこに粘性調整剤組成物を添加する方法等が挙げられる。しかしながら、一般式(1)のAが水素原子である本発明の粘性調整剤や粘性調整剤組成物にアルカリ剤を直接添加すると、粘度が急激に上昇して水系樹脂に添加することが困難な場合があるので、当該粘性調整剤や粘性調整剤組成物をアルカリ剤で中和する場合は、水系樹脂に添加した後にアルカリ剤で中和する方法や、予め水系樹脂にアルカリ剤を添加しておき、そこに粘性調整剤組成物等を添加する方法、あるいはこれらを併用する方法が好ましい。なお、アルカリ剤添加後の本発明の樹脂組成物水溶液のpHは、6〜10が好ましく、6〜8がより好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物水溶液の用途としては、水系樹脂が使用される用途であればいずれの用途でもよく、例えば、自動車塗装用の水系塗料、建築用の水系塗料、粘着剤、接着剤、インキ、コーティング剤、繊維処理剤、紙加工剤、金属表面改質剤等に使用することができ、それぞれの用途に応じて本発明の効果を阻害しない範囲内で、顔料、分散剤、消泡剤、無機塩、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、香料、色素等の他の成分を適宜添加することができる。これらの中でも、粘性や粘度の調整が重要になる自動車塗装用の水系塗料や建築用の水系塗料に用いることが好ましく、自動車塗料用の水系塗料に用いるのがより好ましい。
【0039】
建築用の水系塗料として使用する場合、特に塗料の種類は限定されず、例えば、クリアー塗料、弾性塗料、スプレー塗料等に用いることができる。これらの中でも、粘性調製が重要になる弾性塗料やスプレー塗料として使用することが好ましい。
【0040】
自動車塗装用の水系塗料として使用する場合、塗布した塗膜は、単層塗膜、複層塗膜、いずれの形態でもよい。複層塗膜を形成する方法としては、例えば、電着塗膜の上に中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜を形成した被塗装物上に、ベースコート塗料を塗装し、更にその上にクリアー塗料を塗装した後、加熱硬化することによって複層塗膜を形成する方法が挙げられる。本発明の樹脂組成物水溶液は、前記の中塗り塗料、ベースコート塗料、クリアー塗料が水系塗料であれば、いずれの塗料にも使用することができる。これらの塗料の塗布方法は規定されないが、大量生産性や均一で平坦な塗膜が得られることから、スプレー塗装による塗布が好ましい。また、これらの塗料には本発明の効果を阻害しない範囲内で、その用途に応じて硬化剤、有機系や無機系の各種着色成分、顔料及び光輝剤等を添加することができる。
【0041】
使用できる水系樹脂は特に限定されるものではなく、例えば、上記に挙げた水系樹脂が挙げられる。これらの水系樹脂は、数平均分子量が3000〜200000であることが好ましく、3000〜100000であることが更に好ましい。上記数平均分子量が3000未満である場合、塗装作業性及び硬化性が充分でなく、200000を超える場合、塗装時の不揮発分が低くなりすぎ、逆に塗装作業性が低下する恐れがある。また、これらの水系樹脂は酸基を有していることが好ましく、樹脂固形分酸価が10〜100であることが好ましく、20〜80であることが更に好ましい。上記酸価が10未満である場合、樹脂の水分散性が低下し、100を超える場合、得られる塗膜の諸性能が低下する恐れがある。更に、これらの水系樹脂は水酸基を有していることが好ましく、水酸基価が10〜200であることが好ましく、30〜180であることが更に好ましい。上記水酸基価が10未満である場合、得られる塗膜の硬化性が低下し、200を超える場合、得られる塗膜の諸性能が低下する恐れがある。
【0042】
硬化剤は特に限定されるものではなく、例えば、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、金属イオン等を挙げることができるが、得られる塗膜の諸性能、コストの点からアミノ樹脂及び/又はブロックイソシアネートが好ましい。
【0043】
水系樹脂と硬化剤は組み合わせて用いられるものであり、得られる塗膜の諸性能及びコストの観点から、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂と、アミノ樹脂及び/又はイソシアネートとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0044】
着色成分は特に限定されるものではなく、例えば、有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、無機系では黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等を挙げることができる。これらの着色成分は、主に中塗り塗料に用いられ、塗料に含まれる固形分に対して、0.003〜18.0質量%が好ましく、0.01〜15.0質量%であることがより好ましく、0.01〜13.0質量%であることが更に好ましい。これらの着色成分は、一般的には、カーボンブラックと二酸化チタンとを主としたグレー系中塗り塗料や、上塗りとの色相を合わせたセットグレーや各種の着色成分を組み合わせた、いわゆるカラー中塗り塗料を用いることが好ましい。
【0045】
更に、塗膜の意匠性を改善する目的で光輝剤を添加することもできる。光輝剤は通常トップベースコート塗料に添加され、塗膜にきらきらとした光輝感や、光干渉性を付与する。こうした光輝剤としては、例えば、鱗片状アルミニウム、蒸着アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化オキシビスマス、銅合金、亜鉛合金、ニッケル合金、スズ合金、雲母、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、雲母状酸化鉄等が挙げられる。これらの光輝剤の中でも、アルミニウムが好ましく、鱗片状アルミニウムがより好ましい。鱗片状アルミニウムの大きさは、長径が10〜50μm、短径が3〜30μm、厚さが0.1〜3μm程度のものが好ましい。また、これらの光輝剤の配合量は、塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、5〜100質量部、好ましくは20〜80質量部である。
【実施例】
【0046】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%は特に記載が無い限り質量基準である。
【0047】
試験に使用したサンプルを以下の方法で合成した。なお、合成したサンプルの詳細な構造等は表1に記載した。
<ウレタン結合含有モノマーの合成>
温度計、窒素導入管及び攪拌機を付した容量3000mlの4つ口フラスコに、分岐オクタデシルアルコールのエチレンオキシド100モル付加物(一般式(6)において、R=分岐オクタデシル基、R=エチレン基、m=100)を2335g(0.5モル)と重合禁止剤としてターシャリブチルハイドロキノン1g仕込み、系内を窒素で置換し、攪拌機で攪拌しながら60℃に昇温後、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(一般式(5)において、R=メチル基、R=エチレン基、n=1)77.5g(0.5モル)を添加した。その後、系内の温度を80〜90℃に昇温して3時間反応させ、ウレタン結合含有モノマー1(一般式(4)において、R=メチル基、R=エチレン基、n=1、R=分岐オクタデシル基、R=エチレン基、m=100)を得た。
【0048】
<粘性調整剤1の合成>
温度計、窒素導入管及び攪拌機を付した容量3000mlの4つ口フラスコに、メタクリル酸(一般式(2)においてR=メチル基、A=水素原子)25.8g(0.3モル)、アクリル酸エチル(一般式(3)においてR=水素原子、A=エチル基)60g(0.6モル)、および上記で合成したウレタン結合含有モノマー1を467g(0.1モル)仕込んだ後、水を1290g及び乳化剤としてアデカリアソープSR−10(株式会社ADEKA製の反応性乳化剤)を6g仕込み、窒素置換後、攪拌しながら75℃に昇温し、同温度で1時間攪拌してプレ乳化を行った。
新たに温度計、窒素導入管、フィード管及び攪拌機を付した容量2000mlの4つ口フラスコを準備し、このフラスコの中に上記のプレ乳化で得られた乳化物を100g及び開始剤として過硫酸アンモニウム1gを仕込み、窒素置換後、攪拌しながら60℃に昇温して乳化重合を開始した。乳化重合開始と同時に上記のプレ乳化で得られた乳化物900gを、系内の温度を60℃に保ちながら、フィード管から2時間かけて系内に連続的に滴下して乳化重合を行い、滴下終了後同温度で2時間熟成して本発明の粘性調整剤1を30質量%の乳化物として得た。
GCP分析の結果、1万〜100万の幅広い分子量分布を持つ重合物であることが確認された。
【0049】
<粘性調整剤2〜25の合成>
アルコールの種類、エチレンオキシドの付加モル数、イソシアネート化合物の種類を変え、上記のウレタン結合含有モノマー1と同様の方法で粘性調整剤2〜25の原料となるモノマーを合成した。その後、メタクリル酸あるいはアクリル酸、メタクリル酸エステルあるいはアクリル酸エステルを原料とし、各モノマーの配合比を調整し、上記の粘性調整剤1と同様の方法で粘性調整剤2〜25を合成した。なお、いずれの粘性調整剤も30質量%の乳化物であり、詳細な構造は粘性調整剤1も含めすべて表1に示した。
GCP分析の結果、いずれの重合物も1万〜100万の幅広い分子量分布を持つ重合物であることが確認された。
【0050】
<粘性調整剤28の合成>
メタクリル酸(一般式(2)においてR=メチル基、A=水素原子)25.8g(0.3モル)、アクリル酸エチル(一般式(3)においてR=水素原子、A=エチル基)50g(0.5モル)、アクリルアミド7.1g(0.1モル)および上記で合成したウレタン結合含有モノマー1を467g(0.1モル)使用して、上記の<粘性調整剤1の合成>に記載した乳化重合方法に準じて合成し、粘性調整剤28を30質量%の乳化物として得た。
GCP分析の結果、1万〜100万の幅広い分子量分布を持つ重合物であることが確認された。
【0051】
<その他の粘性調整剤>
・粘性調整剤26は、メタクリル酸とアクリル酸メチルとの乳化重合物であり、粘性調整剤27は、メタクリル酸とアクリル酸ブチルとの乳化重合物であり、いずれも上記の<粘性調整剤1の合成>に記載した乳化重合方法に準じて合成した(いずれも30質量%の乳化物)。
・粘性調整剤29は市販のアルカリ粘性調整剤、粘性調整剤30、31は市販の天然系の粘性調整剤。
・粘性調整剤32はウレタン系粘性調整剤であり、ステアリルアルコールとポリエチレングリコール(重量平均分子量6000)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とを2/1/2(モル比)で反応させたもの。反応は上記のモノマーの合成方法に準じて行い、反応終了後、30質量%の均一な水溶液になるように水で希釈した。
なお、表1中のpの値は、p/(p+q+r)×100、qの値は、q/(p+q+r)×100、rは、r/(p+q+r)×100の値を表す。
【0052】
【表1】

【0053】
・Rにアルキレン基が記載されているものはn=1、粘性調整剤8はn=0
・Rのiは分岐を表し、iの記載がないものは直鎖を表し、Cに続く数字は炭素数を表す。またRはいずれもアルキル基である。
なお、上記表中のRの構造は以下に示すとおりである。
iC8 :2−エチルへキシル基
iC10:2−エチルオクチル基
iC12:2−ブチルオクチル基
iC18:2−オクチルデシル基
iC24:2−デシルテトラデシル基
iC32:2−テトラデシルオクタデシル基
・Rは粘性調整剤20を除き全てエチレン基である。粘性調整剤20のRは、エチレン基80モル、プロピレン基20モル、合計100モルのランダム重合である。
【0054】
粘性調整剤28:メタクリル酸/アクリル酸/ウレタン結合含有モノマー1/アクリルアミド=3/5/1/1(モル比)の重合物(30%の乳化物)
粘性調整剤29:プライマルTT−615(ロームアンドハース社製、アルカリ粘性調整剤)
粘性調整剤30:チローゼH−4000P(日本合成化学社製、ヒドロキシエチルセルロース系粘性調整剤)
粘性調整剤31:メトローズSM−4000(信越化学工業社製、メチルセルロース系粘性調整剤)
粘性調整剤32:C18アルコール/PEG6000/HDI=2/1/2(モル比)反応物(30%水溶液、ウレタン系粘性調整剤)
粘性調整剤33:(粘性調整剤29)/(粘性調整剤32)=1/1(質量比)の混合物
粘性調整剤1〜20、28が本発明の粘性調整剤組成物であり、その他は比較のための粘性調整剤である。
【0055】
試験に使用したエマルション樹脂
<組成>
アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/スチレン/アクリルアミド/メタクリル酸=18.5/56.2/8.3/10/4/3(質量比)を乳化重合させたエマルション樹脂。
<物性>
固形分24%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/g
【0056】
上記のエマルション樹脂に、pH=8となるようにアンモニア水を添加したものを試験用の水系樹脂とし、上記粘性調整剤1〜31を添加してその物性等を測定した。各粘性調整剤の添加量及び下記の試験方法による試験結果を表2に記した。なお、粘性調整剤の添加量は、その固形分を基準としてエマルション樹脂に対する割合(質量%)で示した。
【0057】
試験方法
<粘度測定>
試験用の水系樹脂に粘性調整剤1〜33を所定量添加した後、30分間攪拌して均一化した。均一化した溶液を25℃にて、B8H型粘度計(ローターナンバー2番)を使用して5rpm、10rpm、50rpmの回転速度で粘度を測定した。なお、(5rpmの粘度)を(50rpmの粘度)で除した値をTI値とした。TI値が4以上であれば高チクソ性であり、数値が高いほどタレ防止の効果が高い。
【0058】
<塗装試験>
上記の均一化した溶液をスプレー塗装機に垂直表面に吹きつけ塗装し、垂直表面に付着した水系樹脂組成物について塗装直後の状態を以下の基準で判定した。
【表2】

【0059】
<耐水性試験>
上記の均一化した溶液を使用し、2milのアプリケーターでガラス板に塗膜を形成させた。このガラス板を24時間放置して完全に乾燥させた後、50℃の温水に浸漬し、浸漬24時間後の塗膜の状態を以下の基準で評価した。
○:透明な塗膜のままである。
×:塗膜が白化している。
【0060】
【表3】

【0061】
比較例3:エマルション樹脂内で凝集を起こし試験できず。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される組成を含有するポリマーからなる粘性調整剤。
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、RはA、A及びAのいずれかを表し、Aは水素原子、アルカリ金属及びNHのいずれかを表し、Aは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Aは−(R)−NHCOO−(RO)−Rの基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは炭素数12〜34の脂肪族炭化水素基を表し、mは1〜500の数を表し、nは0または1の数を表し、p、q及びrはそれぞれ1以上の数を表す。なおAに由来するユニットはp個あり、Aに由来するユニットはq個あり、Aに由来するユニットはr個あり、且つ、p/(p+q+r)が0.1〜0.75、q/(p+q+r)が0.2〜0.8、r/(p+q+r)が0.005〜0.7である。)
【請求項2】
がエチレン基であることを特徴とする請求項1に記載の粘性調整剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘性調整剤を10〜60質量%、及び水を40〜90質量%含有することを特徴とする粘性調整剤組成物。
【請求項4】
一般式(1)のAが水素原子であることを特徴とする請求項3に記載の粘性調整剤組成物。
【請求項5】
下記の一般式(2)〜(4)を乳化重合して製造することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘性調整剤の製造方法。
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは水素原子、アルカリ金属及びNHのいずれかを表す。)
【化3】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは炭素数1〜18の炭化水素基を表す。)
【化4】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは炭素数12〜34の脂肪族炭化水素基を表し、mは1〜500の数を表し、nは0または1の数を表す。)
【請求項6】
下記の一般式(1)で表される組成を含有するポリマーからなる粘性調整剤と水系樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物水溶液。
【化5】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、RはA、A及びAのいずれかを表し、Aはアルカリ金属またはNHを表し、Aは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Aは−(R)−NHCOO−(RO)−Rの基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは炭素数12〜34の脂肪族炭化水素基を表し、mは1〜500の数を表し、nは0または1の数を表し、nは0または1の数を表し、p、q及びrはそれぞれ1以上の数を表す。なおAに由来するユニットはp個あり、Aに由来するユニットはq個あり、Aに由来するユニットはr個あり、且つ、p/(p+q+r)が0.1〜0.75、q/(p+q+r)が0.2〜0.8、r/(p+q+r)が0.005〜0.7である。)

【公開番号】特開2011−252059(P2011−252059A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125824(P2010−125824)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】