説明

粘液を通る輸送を増強するための組成物および方法

本発明は、概して、粘膜関門を越えて物質を輸送するための組成物および方法に関する。本発明はまた、そのような物質の作製方法および使用方法にも関する。一実施形態において、本発明は、外表面と、粒子の粘膜付着を減少させる該外表面に配置された1つ以上の表面改変部分とを含む粒子を提供し、この粒子は、この粒子が1秒の時間尺度で水を通って拡散する拡散率の1/1000よりも大きな拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2006年9月8日に出願された、米国仮出願第60/843,282号(この明細書は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
外部環境にさらされる臓器(肺気道、鼻呼吸路、消化管、および子宮頸管を含む)は、粘性が高く、そして弾力性のある粘液ゲルによって、異物(一部の病原体および毒素を含む)の侵入から保護されている。ヒトの粘液は、異物を立体的に、そして付着によって捕捉し、その後、それらが基部にある上皮に達する前に体からそれらをクリアランスするように進化している;粘液に捕捉された粒子はまた、細菌による分解または酵素分解を受ける場合もある。クリアランス速度は解剖学的に決定されるが、GI管での粘液の回転速度は24から48時間と推定される。肺においては、クリアランス速度は、粒子の堆積の領域に応じて様々である;しかし、通常の気管粘液の速度は、肺末梢部の粘液の速度よりも迅速ではあるが、1〜10mm/分の範囲であり、回転時間は1時間未満である。結果として、粘液関門は、様々な疾患の処置において重要な障壁として記載されている。
【0003】
粘液の主成分は、分子量の大きなムチン糖タンパク質(他のムチン分子とともに多数の共有結合および非共有結合を形成する)および様々な構成成分(DNA、アルギン酸塩、およびヒアルロン酸を含む)である(参照により本明細書に組み込まれる、非特許文献1)。密度の高い複雑な微細構造と、高密度の疎水性であり負電荷を有しているドメインにより、高粘弾性かつ接着性のゲルが生じ、これは、大きな高分子およびナノ粒子の輸送速度を大幅に遅らせる(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる)。粘液関門を越えるには、薬物担体は、基部にある上皮に到達し、そしてクリアランス機構を回避するため、最大で数百ミクロンの厚さの粘液層を迅速に横切らなければならない。粘液を通って薬物−担体粒子を輸送する難しさは、弾性の高いヒト粘液の非常に小さい平均網目孔径(5〜10nmから200nm未満の範囲と推定)、およびその強い付着性が原因であると考えられる(非特許文献4)。Coneおよびその共同研究者らにより、最近、59nmと小さい直径の標準的なラテックス(すなわち、ポリスチレン)ポリマー粒子がムチン繊維に堅く付着するため粘液中に完全に固定されることにより、粘液糸、すなわち「束状構造」を引き起こすことが最近示されている。これらの観察は、ヒトの粘液関門を通って合成ポリマーナノ粒子(原則として59nmより大きいもの)を効率的に輸送することは、困難な課題であることを示唆している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hanesら、Gene therapy in the lung,Pharmaceutical Inhalation Aerosol Technology,第2版;Marcel Dekker Inc.:New York,2003;pp.489−539
【非特許文献2】Saltzmanら、Biophys.J.1994,66,508−515
【非特許文献3】Sandersら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.2002,162,1905−1911
【非特許文献4】Olmsted,S.S.,J.L.Padgett,A.I.Yudin,KJ.Whaley,T.R.Moench,and R.A.Cone,Diffusion of macromolecules and virus−like particles in human cervical mucus.Biophysical Journal,2001.81(4):p.1930−1937
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明は、表面改変剤を使用することにより、物質の粘膜付着を減少させ、粘液中での流動性を高めることができるという知見に一部関係する。したがって、1つの態様においては、本発明により、粒子の粘液通過を促進する1つ以上の表面改変部分によって修飾された粒子が提供される。そのような粒子(例えば、ナノ粒子またはマイクロ粒子)は、これまで得られていたよりも高濃度の表面部分を有し、それにより、粘液を通って迅速に拡散するという予想外の特性が得られる。本発明にはさらに、そのような粒子の製造方法、および患者を処置するためのそのような粒子の使用方法が含まれる。
【0006】
特定の実施形態においては、本発明により、表面が改変された粒子、ならびにそれらの作製方法および使用方法が提供される。適切な粒子としては、粘膜表面をコートしている粘液層を効率よく横断することができる、ポリマー粒子、リポソーム粒子、金属粒子、金属酸化物粒子、ウイルス粒子、または量子ドット粒子、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。特定の実施形態においては、そのような粒子には、(例えば、ポリマーなどの媒体中にカプセル化された)粒子の表面、または粒子の内部に堆積させることができる、1つ以上の生物活性剤が含まれ得る。特定の実施形態においては、1つ以上の生物活性剤は、粒子と共有結合的、または非共有結合的によって会合する。適切なポリマー粒子には、薬学的に許容されるポリマーコアおよび表面改変剤が含まれ得る。リポソーム粒子には、概して、リポソームコアおよび表面改変剤が含まれる。粒子には、1つ以上の生物活性剤および/または造影剤(imaging agent)が含まれ得る。表面改変剤には、1つ以上の化学的部分が含まれ得るか、または、例えば、表面改変剤がポリマー媒体中に(例えば、物理的に、混合物として、または共有結合的に、例えば、ブロックコポリマーもしくは共有結合的に修飾されたポリマーとして)取り込まれ得る。粒子にはまた、1つ以上の標的部分も含まれ得る。
【0007】
特定の実施形態により、平均して、1、2、5、10、20、50、55、59、75、100、150、200、300、400、500、750、1000、2000、または5000nmより大きい直径であるか、あるいは、これらの値のうちの任意のものの中間の直径を有する粒子が提供される。特定の実施形態においては、粒子は、10,000nm未満、または50,000nm未満の平均直径を有する。特定の実施形態により、平均すると、100nmであると推定される最大の粘膜孔径より大きい粒子が提供される。特定の実施形態においては、直径は物理的直径である。そのような実施形態においては、非球形粒子の直径は、粒子の表面上の2点の間の最大の直線距離である。特定の実施形態においては、直径は流体力学直径である。特定の実施形態においては、非球形粒子の直径は、流体力学直径である。
【0008】
特定の実施形態においては、本発明により、対応する粒子(例えば、修飾されていないポリスチレン粒子)よりも大きな速度または拡散率で粘膜関門を通って拡散することができる粒子が提供される。本発明の粒子は、対応する粒子より少なくとも10倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、2000倍、5000倍、10000倍、またはそれより大きな速度または拡散率で粘膜関門を通過することができる。加えて、本発明の粒子は、1秒の時間尺度で、対応する粒子より少なくとも10倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、2000倍、5000倍、10000倍、またはそれより大きな幾何平均二乗変位(geometric mean squared displacement)で、粘膜関門を通過することができる。対応する粒子には、カルボキシル修飾されたポリスチレン粒子、アミン修飾されたポリスチレン粒子、または硫酸アルデヒド修飾されたポリスチレン粒子が含まれ得る。そのようなカルボキシル修飾された粒子は、1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在するカルボキシル基を有することが好ましい。そのような比較の目的で、対応する粒子は、本発明の粒子とほぼ同じ大きさ、形状、および/または密度であってよい。
【0009】
特定の実施形態において、本発明により、粒子が水を通って拡散することができる速度または拡散率に近い速度で、粘膜関門を通って拡散することができる粒子が提供される。本発明の粒子は、同じ条件下で、水中での粒子の速度の少なくとも1/1000、1/600、1/500、1/200、1/100、1/50、1/20、1/10、1/5、1/2、または1倍の速度あるいは拡散率で粘膜関門を通過することができる。
【0010】
特定の実施形態において、本発明により、所定の密度で表面改変剤が含まれている粒子が提供される。本発明の粒子には、少なくとも0.001、0.002、0.005、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、50、または100単位/nmの密度で、表面改変剤が含まれ得る。
【0011】
特定の実施形態において、本発明により、特定の絶対拡散率で、粘液(例えば、ヒトの頸膣部の粘液)を通って移動する粒子が提供される。例えば、本発明の粒子は、1秒の時間尺度で、少なくとも1×10−4、2×10−4、5×10−4、1×10−3、2×10−3、5×10−3、1×10−2、2×10−2、4×10−2、5×10−2、6×10−2、8×10−2、1×10−1、2×10−1、5×10−1、1、または2μm/sの拡散率で移動することができる。
【0012】
特定の実施形態において、本発明により、表面改変剤が含まれている粒子であって、表面改変部分の質量が、粒子の質量の少なくとも1/10,000、1/5000、1/3400、1/2000、1/1000、1/500、1/200、1/100、1/50、1/20、1/5、1/2、または9/10を構成する粒子が提供される。
【0013】
特定の実施形態において、本発明により、蛍光標識されたアビジンの吸着を阻害する表面改変剤が含まれている粒子であって、平均最大蛍光強度によって計算される場合、表面改変剤が含まれていない対応する粒子によって吸着される蛍光標識されたアビジンの量の99%、95%、90%、70%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%未満を吸着する粒子が提供される。
【0014】
特定の実施形態において、本発明により、粒子のゼータ電位に影響を与える表面改変剤が含まれている粒子であって、粒子のゼータ電位が、−100mVから10mVの間、−50mVから10mVの間、−25mVから10mVの間、−20mVから5mVの間、−10mVから10mVの間、−10mVから5mVの間、−5mVから5mVの間、または−2mVから2mVの間でさえある粒子が提供される。本発明にはさらに、粒子のゼータ電位が5mV未満である上記粒子が含まれる。本発明にはさらに、粒子のゼータ電位が10mV未満である上記粒子が含まれる。
【0015】
特定の実施形態において、本発明により、0.067秒から3.0秒までの時間尺度の関数としての粒子集団の平均二乗変位の指数法則フィット(power law fit)の指数が、0.1、0.2、0.5、0.8、または0.9を超える、任意の先の段落の粒子が提供される。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、本発明の粒子(例えば、本明細書に記載される1つ以上の粒子)が含まれている、および/または上記の性質のうちの1つ以上を有している薬学的組成物に関する。特定の実施形態において、薬学的組成物は、患者の粘膜組織への局所送達に適応している。本発明にさらに、患者の状態を処置する、予防する、または診断するための方法であって、上記薬学的組成物を患者に投与する工程を含む方法に関する。上記薬学的組成物は患者の粘膜表面に送達されてよく、患者の粘膜関門を通過することができ、そして/または、例えば、低い粘膜付着が原因で、粘液でコートされた組織上で長い滞留時間を示すことができる。特定の実施形態において、本明細書に記載されるポリマー粒子は、生物活性剤とともに、または生物活性剤を伴わずに、例えば、ウイルス感染を処置、阻害、または予防するために、患者に投与することができる。
【0017】
特定の実施形態において、本発明により、複数の粒子が含まれている組成物であって、該組成物中の全粒子のうちの少なくとも1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、70%、90%、95%、または、少なくとも99%が、先の段落に記載された特徴のうちの1つ以上を有する。加えて、本発明により、2以上のタイプの粒子(例えば、それらのタイプのうちの1つには、先の段落に記載された特徴のうちの1つ以上を有している粒子が含まれる)の混合物が含まれている組成物が提供される。
【0018】
1つの態様においては、粒子には、薬学的に許容されるポリマーコアと、粒子の表面に埋め込まれた、または粒子中に捕らえられた、あるいは、粒子の表面上に(例えば、コーティング、吸着、共有結合、または他のプロセスによって)堆積した表面改変剤とが含まれる。表面改変剤は生物活性剤自体であってよい。例えば、特定の実施形態において、粒子には、粒子の表面をコートする薬学的に許容されるポリマーおよび核酸が含まれ得る。そのような実施形態において、核酸分子は、粒子の表面を改変することができ、粒子を耐粘液性にすることができる。特定の他の実施形態において、粒子には、薬学的に許容されるポリマーと粒子の表面上に堆積したタンパク質(例えば、血清アルブミン)とが含まれる。タンパク質は、粒子の表面を改変することができ、粒子を耐粘液性にすることができる。
【0019】
任意の上記実施形態において、粒子には、治療薬または造影剤が含まれ得る。例えば、これらには、診断薬および/または検出可能標識が含まれ得る。例えば、粒子に含まれる核酸またはタンパク質には、造影剤自体が含まれていてよく、例えば、検出可能標識は、DNAまたはタンパク質に結合されていてよい。あるいは、粒子には、(例えば、コア中にカプセル化されているか、または表面に堆積しているかもしくは結合している)核酸またはタンパク質とは離れている造影剤が含まれ得る。加えて、粒子には、粒子および/またはタンパク質もしくは核酸に結合している1つ以上の標的部分あるいは分子が含まれていてよく、そして標的部分は、患者の標的箇所への、核酸、タンパク質、ならびに/あるいは、治療薬、造影剤、および/または診断薬の送達を助けることができる。
【0020】
特定の実施形態において、粒子には、薬学的に許容されるポリマーコア、コア中にカプセル化された生物活性剤(例えば、薬物または医薬品)、および、粒子の表面に埋め込まれた、もしくは粒子中に捕らえられた、または、粒子の表面上に(例えば、コーティング、吸着、共有結合、または他のプロセスによって)堆積した、粒子の表面を変化させる(例えば、粒子が粘液を通って迅速に拡散できるようにする)表面改変剤が含まれる。粒子には、造影剤、例えば、診断薬および/または検出可能標識が含まれ得る。カプセル化された生物活性剤は造影剤自体であってよく、または、造影剤を含んでいてよく、例えば、検出可能標識は治療薬に結合されていてよい。あるいは、粒子には、生物活性剤と離れている造影剤が含まれ得る。加えて、粒子には、粒子に結合した標的部分または分子が含まれ得、そして標的部分は、患者の所望の箇所への生物活性剤および/または造影剤の送達を助けることができる。
【0021】
1つの態様においては、粒子には、1つ以上の生物活性剤(例えば、薬物または医薬品)を有しているコアと、粒子の表面に埋め込まれた、もしくは粒子中に捕らえられた、または、粒子の表面上に(例えば、コーティング、吸着、共有結合、または他のプロセスによって)堆積した表面改変剤が含まれる。表面改変剤は、生物活性剤自体であってよい。
【0022】
あるいは、粒子には、薬学的に許容されるポリマーコア、粒子の表面に埋め込まれた、もしくは粒子中に捕らえられた、または、粒子の表面上に(例えば、コーティング、吸着、共有結合、または他のプロセスによって)堆積した、(例えば、粒子を耐粘液性にすることによって)粒子の表面を改変する表面改変剤(例えば、界面活性剤)、およびポリマー粒子に堆積した生物活性剤が含まれ得る。生物活性剤は、粒子の表面をコートすることができ、もしくは別の方法で粒子の表面上に堆積することができ、または、例えば、共有結合、複合体形成、もしくは他のプロセスによって粒子に結合することができる。特定のそのような実施形態において、表面改変剤は、粒子の表面に対する生物活性剤の接着または複合体形成を促進するように選択される。そのような実施形態において、表面改変剤および/または生物活性剤は、修飾された粒子の粘液を通る迅速な拡散率に寄与することができる。粒子には、造影剤(例えば、診断薬および/または検出可能標識)が含まれ得る。粒子の表面上にコートされた、もしくは堆積した、または粒子に結合した生物活性剤は、造影剤自体であってよく、または、造影剤を含んでいてよく、例えば、検出可能標識は、治療薬に結合していてよい。あるいは、粒子には、生物活性剤から離れている、例えば、コア中にカプセル化された、またはコア上に堆積した、もしくはその表面に結合した造影剤が含まれ得る。加えて、粒子には、粒子に結合した標的部分または分子が含まれ得、そして標的部分は、患者の標的箇所への生物活性剤および/または造影剤の送達を助けることができる。
【0023】
本発明によって、また、粒子の表面に示されるポリエチレングリコールまたはその誘導体の領域を有しているポリマーが含まれている粒子も提供される。粒子には、状況に応じて、さらに別の表面改変剤が含まれる場合がある。粒子にはさらに、生物活性剤および/または標的部分が含まれ得る。
【0024】
本発明の生物活性剤としては、核酸、DNA(例えば、遺伝子治療用ベクターまたはプラスミド)、RNA(例えば、mRNA、RNAi構築物の転写物、またはsiRNA)、低分子、ペプチド模倣物(peptidomimetic)、タンパク質、ペプチド、脂質、界面活性剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
表面改変剤は、粒子の電荷を変化させる場合があり、また、親水性を高める場合があり、また、粘液を通る移動性を別の方法で促進する場合もある。表面改変剤は、粒子または粒子の画分が粘液中を、または粘液を通って移動する平均速度を増大させる場合がある。適切な表面改変剤の例としては、アニオン性タンパク質(例えば、血清アルブミン)、核酸、界面活性剤、例えば、カチオン性界面活性剤(例えば、臭化ジメチルジオクタデシル−アンモニウム)、糖類または糖誘導体(例えば、シクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、粘液溶解薬、または他の非粘膜付着性の物質が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態には、粒子コアに共有結合的に結合したポリエチレングリコールが含まれる。特定の薬剤(例えば、シクロデキストリン)は、他の分子とともに封入複合体を形成する場合があり、さらに別の部分との付着を形成するため、ならびに、粒子表面および/または付着した分子もしくは部分の官能化を促進するために使用することができる。適切な炭水化物である表面改変剤の例としては、寒天、アガロース、アルギン酸、アミロペクチン、アミロース、β−グルカン、カロース、カラギーナン、セロデキストリン、セルリン、セルロース、キチン、キトサン、クリソラミナリン(chrysolaminarin)、カードラン、シクロデキストリン、デキストリン、フィコール、フルクタン、フコイダン、ガラクトマンナン、ゲランガム、グルカン、グルコマンナン、グリコカリックス、グリコーゲン、ヘミセルロース、ヒドロキシエチルデンプン、ケフィラン、ラミナリン、植物が分泌する粘液(mucilage)、グリコサミノグリカン、天然ゴム、パラミロン、ペクチン、多糖類ペプチド、シゾフィラン、シアリルルイスx(sialyl lewis x)、デンプン、デンプン糊化、スガマデックス、キサンタンゴム、およびキシログルカン、ならびにそのような炭水化物の断片および誘導体が挙げられる。
【0026】
本発明の粒子には多くの用途がある。具体的には、粒子は、薬学的組成物(特に、投与経路が粘膜関門を通過する粒子に関与している)の作製に十分に適している。例えば、粒子は、鼻腔スプレーとして処方される薬学的組成物の作製に特に適している。そのような薬学的組成物は鼻腔粘液層を越えて送達することができる。加えて、粒子は、吸入型として処方される薬学的組成物の作製に特に適している。そのような薬学的組成物は、肺粘液層を越えて送達することができる。同様に、粒子は、消化器組織、呼吸組織、直腸組織、および/または膣組織を介して送達される薬学的組成物の作製に特に適している。
【0027】
薬学的に許容されるポリマーは、ポリ(D,L−乳−コ−グリコール)酸、ポリエチレンイミン、ジオレイルトリメチルアンモニウムプロパン/ジオレイル−sn−グリセロホスホエタノールアミン、ポリセバシン酸無水物、または臨床的に許容されるもしくは承認されている単量体から形成された他のポリマーであり得る。臨床的に承認されている単量体の例としては、セバシン酸および3−ビス(カルボキシフェノキシ)プロパンの単量体が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される他のポリマーまたはコポリマーもまた、本発明のポリマー粒子を作製するために使用することができる。
【0028】
特定の実施形態において、生物活性剤は、治療薬または造影剤(例えば、診断薬)である。治療薬の例としては、核酸、核酸アナログ、低分子、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、脂質、または界面活性剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、造影剤にはさらに検出可能標識が含まれる。
【0029】
特定の実施形態において、本発明の粒子にはさらに、標的薬剤または標的分子が含まれる場合がある。粒子には、さらに、または代わりに、アジュバントが含まれていてもよい。
【0030】
特定の実施形態において、本発明の粒子にはさらに、粒子に共有結合された薬剤が含まれる場合がある。薬剤は、生物活性剤(例えば、薬物)であり得る。薬剤は、好ましくは、親水性薬剤であり得、その結果、薬剤は、粒子への共有結合を介して粒子の電荷または親水性を変化させ、例えば、粒子の粘膜付着を減少させる。共有結合は、生物学的条件下で切断される場合がある。
【0031】
本明細書に記載される粒子が含まれている吸入器またはネブライザもまた提供される。
【0032】
さらに別の態様は、患者の状態の処置、予防、または診断のための医薬品(粘膜組織への局所投与に適応した医薬品を含む)の製造における、本明細書に記載される粒子の使用に関する。
【0033】
さらに別の態様は、細胞をトランスフェクトする方法に関し、該方法には、細胞を、核酸を含む本発明の粒子と接触させる工程が含まれる。核酸が含まれている本発明の粒子は、例えば、粘膜関門の存在下で、裸の核酸よりも例えば、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍高いか、またはそれ以上の効率で細胞をトランスフェクトすることができる。
【0034】
さらに別の態様は、患者の状態を処置する、予防する、または診断する方法に関し、該方法には、本明細書に記載される粒子、または1つ以上の該粒子が含まれている薬学的組成物を、例えば、粘膜組織への局所投与によって患者に投与する工程が含まれる。特定の実施形態において、粒子は、患者の粘膜関門を通過する。
【0035】
そのような粒子を調製するための例示的な方法には:薬学的に許容されるポリマーを含むマイクロ粒子またはナノ粒子を提供する工程、およびマイクロ粒子またはナノ粒子の表面に、表面改変剤(例えば、ポリエチレングリコール、核酸、タンパク質、または炭水化物)を(例えば、コーティング、共有結合、または共局在化によって)結合させる工程が含まれ得る。そのような方法にはさらに:粒子に、造影剤、検出可能標識、または標的部分を(例えば、コーティング、共有結合、または共局在化によって)結合させる工程が含まれ得る。この方法にはさらに、粒子懸濁液を形成する工程、粒子懸濁液をフィルターに通す工程、粒子懸濁液から不純物を除去する工程、遠心分離して粒子をペレット化する工程、粒子懸濁液を透析する工程、および粒子懸濁液のpHを調整する工程のうちの1つ以上が含まれ得る。この方法にはまた、共有結合反応を停止させる工程が含まれていてもよい。
【0036】
本発明のさらに別の態様には、表面改変部分(例えば、PEGまたは炭水化物)で物質を修飾することによって、物質の粘膜付着性を低下させる方法が含まれる。本明細書では、用語「表面改変部分」と「表面改変剤」とは、実質的に互換的に使用される。ここでは、「表面改変剤」は、優先的に個々の物質(entity)をいい、そして「表面改変部分」は、分子全体または分子の一部をいう。表面改変部分は、物質の親水性を高めることができる。例えば、特定の実施形態において、本発明には、その粘膜付着性を低下させることが所望される治療薬または粒子(例えば、低分子、核酸、タンパク質、リポソーム、ポリマー、リポソーム、ウイルス(例えば、エンベロープを持つウイルス、またはキャプシドウイルス)、金属、または金属酸化物)を同定することが含まれる。その後、物質は、表面改変剤で修飾されてよい。例えば、この方法には、それに対して表面改変剤(例えば、PEG)を共有結合させることができる(例えば、活性を喪失させることなく)、または細胞内切断(例えば、加水分解的切断もしくは酵素的切断)の影響を受けやすい結合(例えば、エステルまたはアミド)を介して共有結合され得る物質(例えば、低分子、タンパク質、リポソーム、ポリマー、リポソーム、またはウイルス)上の部分を同定する工程が含まれる場合がある。あるいは、表面改変剤は、例えば、粘液を通るその拡散率を高めるために、例えば、物質の粒子状形態をコートすることによって、物質と非共有結合的に会合する場合がある。特定の実施形態において、この方法にはさらに、修飾された物質の薬学的調製物を、例えば、患者の粘膜組織への局所送達に適応した処方物に処方する工程が含まれる。処方物は患者に投与することができる。
【0037】
本発明のさらに別の態様には、表面改変剤で物質を修飾することにより、その必要がある物質の粘液中での拡散率を高める方法が含まれる。例えば、特定の実施形態において、本発明には、粘液を通る高い拡散率が必要な物質、粘液を通る物質の拡散を促進するための適切な表面改変剤、および物質の活性の完全な喪失を回避しつつ、粘液を通る物質の拡散率を高めるために、表面改変剤を結合させることができる上記物質上の部分を選択する工程が含まれる。表面改変剤は、その後、粘液を通るその拡散率を高めるために、上記物質上に堆積することができる。加えて、上記表面改変剤を有している物質は、例えば、患者の粘膜組織への局所送達に適応した処方物において、粘液中での拡散率を高める目的で患者に送達することができる薬学的調製物が得られるように処方することができる。上記表面改変剤を有している上記薬学的調製物または物質は、患者の粘膜表面に送達される場合があり、患者の粘膜関門を通過する場合があり、そして/または、例えば、低下した粘膜付着に起因して、粘液で被覆されている組織上で長い滞留時間を示す場合もある。
【0038】
高い拡散率が必要な物質は、例えば、疎水性であってよく、多くの水素結合ドナーまたはアクセプターを有していてよく、または、高い電荷を有していてよい。そのような物質は、それが水を通って移動する速度よりも小さい速度、またはそれに等しい速度から10分の1(またはさらには、100分の1または1000分の1)の速度で、ヒトの粘液を通って移動する薬剤であり得る。粘膜付着性である多数の薬剤が当該分野で公知である(Khanvilkar K,Donovan MD,Flanagan DR,Drug transfer through mucus,Advanced Drug Delivery Reviews 48(2001)173−193;Bhat PG,Flanagan DR,Donovan MD.Drug diffusion through cystic fibrotic mucus:steady−state permeation,rheologic properties,and glycoprotein morphology,J Pharm Sci,1996年6月;85(6):624−30)。一例として、炎症の処置のためのコルチコステロイドであるデキサメタゾンは、粘液関門の不適切な透過が原因で、有効ではないことが示唆されている(Kennedy,M.J.,Pharmacotherapy,2001.21(5):p.593−603)。加えて、粘液は、いくつかのタンパク質の拡散を遅らせる;例えば、Saltzman WM,Radomsky ML,Whaley KJ,Cone RA,Antibody Diffusion in Human Cervical Mucus,Biophysical Journal,1994.66:508−515を参照のこと。
【0039】
特定の実施形態において、本明細書に記載される表面改変剤で修飾された物質(例えば、粒子)は患者の粘膜関門を通過する場合があり、そして/または、粘液で被覆されている組織上で長い滞留時間を示す場合がある。例えば、そのような物質は、典型的な比較可能なカルボキシル修飾されたポリスチレン粒子よりも、患者の体からゆっくりと(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、または、さらには、少なくとも20倍ゆっくりと)クリアランスされる。
【0040】
本発明によってはまた、活性粒子の粘液を通る輸送を促進するための「犠牲的な(sacrificial)」粒子またはポリマーの使用も意図される。この場合、犠牲的な粒子またはポリマーは、活性粒子が粘液を通って移動する速度を増大させる。理論に束縛されることは望ましくないが、そのような犠牲的な粒子は粘液と相互作用して、活性粒子の粘膜付着が低下するように、周辺の粘液の構造特性または接着特性のいずれかを変化させると考えられる。例えば、本発明によっては、粘液を通る特定の粒子の拡散を促進するための犠牲的なポリマーとしてのPEG(例えば、活性粒子(単数または複数)と物理的または化学的に会合することのないもの)の使用が意図される。加えて、本発明では、(例えば、治療薬が含まれている)本発明の表面改変粒子と組み合わせて使用される、表面改変剤が含まれていない(そして、状況によっては、治療薬が含まれていない)粒子の使用が意図される。特定の実施形態において、犠牲的な粒子は、カルボキシル修飾されたポリスチレン(PS)粒子である。特定の実施形態において、本発明では、直径が1,000,000、500,000、200,000、100,000、50,000、20,000、10,000、5000、2000、1000、500、200、100、50、20、10、5、2、または1nm未満であるか、あるいは、これらの値のうちの任意のものの間の中間の直径を有している、犠牲的な粒子の使用が意図される。特定の実施形態において、本発明により、同じ条件下で、水中の粒子の速度の1/100、1/200、1/500、1/600、1/1000、1/2000、1/3000、1/5000未満、またはさらには1/10,000未満の速度で粘膜関門を通過する犠牲的な粒子の使用が意図される。さらに、本発明により、特定の絶対的速度で移動する犠牲的な粒子が提供される。例えば、犠牲的な粒子は、1秒の時間尺度で、2、1、5×10−1、2×10−1、1×10−1、8×10−2、6×10−2、5×10−2、4×10−2、2×10−2、1×10−2、5×10−3、2×10−3、1×10−3、5×10−4、2×10−4、1×10−4、5×10−5、2×l0−5未満、またはさらには、1×10−5μm/s未満の速度で移動することができる。
【0041】
本発明によってはまた、ヒトの粘液(例えば、頸膣粘液、肺粘液、胃腸粘液、鼻腔粘液、呼吸粘液、または直腸粘液)と任意の上記粒子とが含まれる配合物(composition of matter)も意図される。
【0042】
本発明によってはまた、粒子の表面に局在化する表面改変剤の領域を含む、ポリマーが含まれている粒子も意図される。例えば、粒子は、耐粘液性であるポリマーのコポリマー(例えば、PEG)であり得る。そのようなポリマーは粒子を形成する場合があり、この場合、粘液を通る拡散を促進する領域は粒子の表面上に局在化し、それによって、別のコーティングまたは表面改変剤での他の修飾の必要性が軽減するか、またはなおさらには回避される。
【0043】
特定の実施形態において、粒子には、粘液を通る拡散を促進する薬剤が含まれ得る。この場合、上記薬剤は、粒子の表面および粒子の内部の両方に存在する。上記薬剤は、粒子の別の成分(例えば、生物活性剤またはポリマー媒体)に対して共有結合する場合があり、また、非共有結合的に結合する場合もある。
【0044】
本発明によってはさらに、第1の複数の粒子と第2の複数の粒子とが含まれている組成物が提供される。特定の実施形態において、第1の複数の粒子および第2の複数の粒子は、異なるタイプの粒子である。特定の実施形態において、第1の複数の粒子には、上記に記載される耐粘液性粒子が含まれ、そして第2の複数の粒子には犠牲的な粒子が含まれる。特定の実施形態において、第1の複数の粒子は、組成物中の全粒子のうちの少なくとも1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、70%、90%、95%、または99%を構成する。特定の実施形態において、第2の複数の粒子は、組成物中の全粒子のうちの少なくとも1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、70%、90%、95%、または99%を構成する。特定の実施形態において、第1の複数の粒子は、先の段落に記載された特徴のうちの1つ以上を有する。
【0045】
複数の粒子中の粒子は、3つの輸送様式:拡散、固定、および被妨害のうちの1つを有しているとして分類することができる。
【0046】
特定の実施形態において、第2の複数の粒子には、1秒の時間尺度で10nmの分解能よりも小さい平均MSDを提示するものとして定義される、固定画分が含まれる。特定の実施形態において、固定画分は、第2の複数の粒子のうちの80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、または1%より多くを構成する場合がある。
【0047】
特定の実施形態において、第2の複数の粒子には、粘液に強く接着するが、固定ではない、妨害される画分が含まれる。妨害される画分と固定画分との合計は、Exemplificationのセクション1.5において、本明細書では、短い時間尺度または長い時間尺度のいずれかについて97.5%の範囲を下回るRCを示す粒子として定義される。特定の実施形態において、妨害される画分は、第2の複数の粒子のうちの、85%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、または1%より多くを構成する場合がある。第2の複数の粒子は、粒子が1秒の時間尺度で、水中を拡散する拡散率の1/100、1/200、1/500、1/1000、1/2000、1/5000、または1/10000未満の平均拡散率で、ヒトの頸膣粘液を通って拡散することができる。
【0048】
特定の実施形態において、第1の複数の粒子には、粘液に対して弱く接着するか、または全く接着しない拡散画分が含まれる。拡散画分は、Exemplificationのセクション1.5において、本明細書では、妨害された粒子または固定粒子ではない粒子として定義される。特定の実施形態において、拡散画分の粒子は、上記で議論した耐粘液性の性質のうちの1つ以上を有する。特定の実施形態において、拡散画分は、第1の複数の粒子のうちの85%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、または1%より多くを構成する場合がある。
【0049】
本発明の別の態様によっては、ウイルスの表面上に堆積した(例えば、ウイルスの表面をコートしている)表面改変部分を有しているエンベロープウイルスが提供される。この場合、上記ウイルスは、表面改変部分が含まれていない対応ウイルスがヒトの頸膣粘液を通って拡散する拡散率よりも、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍大きな拡散率(1秒の時間尺度で)で、ヒトの頸膣粘液を通って拡散する。ウイルスにはさらに、本明細書で意図されるベクターまたは他の治療用核酸が含まれる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1A、1B、および1C。CV粘液中でのCOOHで修飾されたポリスチレン(COOH−PS)粒子の輸送速度。(A)アンサンブル平均(Ensemble−averaged)幾何平均二乗変位(<MSD>)および(B)時間尺度の関数としての有効拡散率(<Deff>)。(C)1秒の時間尺度での、最も速いものから最も遅いものまでの、粒子の副画分の平均のDeff。「W」は、純水中でのDeffを示す。<Deff>=1×10−4での黒色の点線は、顕微鏡の解像度を示す−この値より遅い粒子は固定と考えられる。データは、それぞれの実験についてn≧120の粒子を用いた、3回の実験の平均を示す。
【図2−1】図2A、2Bおよび2C。CV粘液中での2kDaのPEGで修飾されたポリスチレン粒子(PEG2kDa−PS)の輸送速度。(A)アンサンブル平均幾何平均二乗変位(<MSD>)および(B)時間尺度の関数としての有効拡散率(<Deff>)。(C)1秒の時間尺度での、最も速いものから最も遅いものまでの、PEG2kDa−PSの副画分の平均Deff。<Deff>=1×10−4での黒色の点線は、顕微鏡の解像度を示す−この値よりも遅い粒子は固定と考えられる。COOH−PSおよびPEG2kDa−PSの輸送様式の分布:(D)固定粒子、(E)固定粒子および妨害された粒子、および(F)拡散粒子。データは、それぞれの実験についてn≧120の粒子を用いた、3回の実験のアンサンブル平均を示す。
【図2−2】図2D、2E、および2F。CV粘液中での2kDaのPEGで修飾されたポリスチレン粒子(PEG2kDa−PS)の輸送速度。(A)アンサンブル平均幾何平均二乗変位(<MSD>)および(B)時間尺度の関数としての有効拡散率(<Deff>)。(C)1秒の時間尺度での、最も速いものから最も遅いものまでの、PEG2kDa−PSの副画分の平均Deff。<Deff>=1×10−4での黒色の点線は、顕微鏡の解像度を示す−この値よりも遅い粒子は固定と考えられる。COOH−PSおよびPEG2kDa−PSの輸送様式の分布:(D)固定粒子、(E)固定粒子および妨害された粒子、および(F)拡散粒子。データは、それぞれの実験についてn≧120の粒子を用いた、3回の実験のアンサンブル平均を示す。
【図3】図3Aおよび3B。CV粘液中での10kDaのPEGで修飾されたポリスチレン粒子(PEG10kDa−PS)の輸送速度。(A)時間尺度の関数としてのアンサンブル平均幾何平均二乗変位(<MSD>)(B)様々な輸送様式を受けているPEG10kDa−PSの画分:固定粒子(Imm)、固定粒子および妨害されるの粒子(I+H)、および拡散粒子(Diff)。データは、それぞれの実験についてn≧110の粒子を用いた、3回の実験のアンサンブル平均を示す。
【図4−1】図4A、4B、4C、4D、および4E。CF粘液中での粘液のレオロジーおよび粒子の輸送に対する粘膜溶解薬(rhDNase、NAC)の効果。(A)未処理(大きなバラツキに留意されたい)および(B)パルモザイム(pulmozyme)(rhDNAse)処理(均質に近いことに留意されたい)についての、個々の200nmの粒子のサブセットのMSD(n≧120)。(C)バルクの粘性は、rhDNaseでの処理によって約50%低下したが、驚くべきことに、CF粘液中での粒子の輸送の改善には相関していなかった。(D)(解釈については、JBC中の本発明者らの論文[19]を参照のこと)。しかし、CF粘液中での粒子の輸送は、NACを用いた場合に劇的に改善された:(E)100nmの粒子の有効拡散率(n=100〜180)は、30分で有意に(p<0.05)増大した(0.4mM NAC)。
【図4−2】図4A、4B、4C、4D、および4E。CF粘液中での粘液のレオロジーおよび粒子の輸送に対する粘膜溶解薬(rhDNase、NAC)の効果。(A)未処理(大きなバラツキに留意されたい)および(B)パルモザイム(pulmozyme)(rhDNAse)処理(均質に近いことに留意されたい)についての、個々の200nmの粒子のサブセットのMSD(n≧120)。(C)バルクの粘性は、rhDNaseでの処理によって約50%低下したが、驚くべきことに、CF粘液中での粒子の輸送の改善には相関していなかった。(D)(解釈については、JBC中の本発明者らの論文[19]を参照のこと)。しかし、CF粘液中での粒子の輸送は、NACを用いた場合に劇的に改善された:(E)100nmの粒子の有効拡散率(n=100〜180)は、30分で有意に(p<0.05)増大した(0.4mM NAC)。
【図4−3】図4A、4B、4C、4D、および4E。CF粘液中での粘液のレオロジーおよび粒子の輸送に対する粘膜溶解薬(rhDNase、NAC)の効果。(A)未処理(大きなバラツキに留意されたい)および(B)パルモザイム(pulmozyme)(rhDNAse)処理(均質に近いことに留意されたい)についての、個々の200nmの粒子のサブセットのMSD(n≧120)。(C)バルクの粘性は、rhDNaseでの処理によって約50%低下したが、驚くべきことに、CF粘液中での粒子の輸送の改善には相関していなかった。(D)(解釈については、JBC中の本発明者らの論文[19]を参照のこと)。しかし、CF粘液中での粒子の輸送は、NACを用いた場合に劇的に改善された:(E)100nmの粒子の有効拡散率(n=100〜180)は、30分で有意に(p<0.05)増大した(0.4mM NAC)。
【図5】図5Aおよび5B。嚢胞性線維症(CF)の患者が痰として吐き出した未希釈の肺粘液中での、PEGで修飾された500nmのポリスチレン(PEG−PS)ナノ粒子のアンサンブル平均輸送速度。(A)アンサンブル幾何平均二乗変位は、中和されたN−アセチル−L−システインでの粘液の事前の処理によって、未処理の対照(PBS)と比較して、輸送速度が10.7倍に増大したことを示す。(B)様々な輸送様式(固定、被妨害、拡散)への粒子の運動の軌跡の分類は、500nmのPEG−PSの拡散画分が、未処理の対照と比較して3倍に増大したことを示す。いずれの条件についても、固定粒子の数は<3%であった。データは、1つの条件についてn=200〜250の粒子を示す。
【図6】図6A、6B、および6C。CV粘液中で輸送される粒子の典型的な軌跡:(A)固定粒子、(B)妨害された粒子、および(C)拡散粒子。バー・スケールは、全ての軌跡について2.3μmを示す。差し込み図は、1000×に拡大した固定粒子の運動を示す;挿入図のバー・スケールは、2.3nmを示す。
【図7】図7Aおよび7B。(A)2つの異なる粒子調製物についてのポリエチレングリコール(PEG;M.W.約3.4kDa)の表面密度。調製物A:WO2005/072710 A2の実施例6Bに開示されているように、500nmのポリスチレン上に吸着させたPEG。調製物B:Laiら、PNAS v104(5):1482−1487に記載されているように、500nmのポリスチレン粒子に結合させた高密度PEG。(B)調製物Aおよび調製物Bについての、表面PEGに対するコアポリマーの質量比。
【図8】図8。粒子の大きさ(第1列目)、粒子の表面化学(COOH=コーティングなし,PEG=コーティングあり)(第2列目)、実験によって測定した粒子の直径(第3列目)、粒子のゼータ電位(第4列目)、粒子のアビジン吸着(第5列目)、および1秒の時間尺度での有効拡散率(第5列目)を示している表。
【発明を実施するための形態】
【0051】
1.要旨
本発明は、粘液を通る粒子の移動を促進する表面薬剤でコートされたナノ粒子またはマイクロ粒子に一部関する。上記ナノ粒子およびマイクロ粒子は、これまでに得られていた表面薬剤よりも高い濃度を有し、それにより、粘液を通って極めて早く拡散するという予想外の特性が導かれる。本発明にはさらに、上記粒子を製造する方法が含まれる。本発明にはさらに、患者を処置するために上記粒子を使用する方法が含まれる。
【0052】
頸膣部の(CV)粘液は、通常は、典型的なヒトの粘液の分泌物(肺、GI管、鼻、眼、および精巣上体を含む)の範囲(より高い端点ではあるが)の巨視的粘性(macroscopic viscosity)を示す。これは、様々なヒト粘液の化学的組成の類似性に一部原因がある。例えば、ムチンの糖型MUC5Bは、CV管、肺、鼻、および眼を保護している粘膜層において、主に分泌されるムチンの形態である。ムチンの含有量は、約1〜3重量%であり、これもまた、子宮頸粘液、鼻粘液、および肺粘液の間で類似している。上記粘液の全タイプ中の水の組成は、90〜98%の範囲である。類似する粘液の組成およびムチンの糖型により、対数線形性の粘性の減少(log−linear shear−thinning of viscosity)を特徴とする同様のレオロジーが導かれる。
【0053】
報告されているヒトの粘液の網目の平均孔径(およそ100nm)より大きいナノ粒子は、粘液関門を通って迅速に拡散する輸送を受けるにはあまりに大きすぎると考えられている。しかし、大きなナノ粒子は、より高い薬物のカプセル化効率、および広範囲の薬物アレイの持続的な放出を提供する能力に好ましい。本発明者らは、本明細書において、表面改変剤(例えば、ポリエチレングリコール)でコートされた、直径が500nmおよび200nmである大きなナノ粒子が含まれている新しい配合物を開示する。そのようなナノ粒子は、水中の同じ粒子についての有効拡散係数(時間尺度τ=1sで)とほぼ同じぐらいに高い有効拡散係数(Deff)で、粘液を通って拡散する。対照的に、直径が100〜500nmであるコートされていない粒子については、Deffは、水中よりも粘液中では2400倍から40,000倍低かった。したがって、一般的な考えとは対照的に、これらの結果は、大きなナノ粒子は、適切にコートされている場合には、生理学的なヒトの粘液に迅速に浸透することができ、大きなナノ粒子を粘膜からの薬物送達に使用できる可能性を示すことを明らかに示している。
【0054】
多くの場合はピルまたは注射により全身的循環に送達される薬物に基づく頸膣(CV)管の疾患の処置は、典型的には、低い効力が問題である。例えば、全身的な化学療法は、通常は、子宮頸ガンの処置については、外科手術および放射線治療後の、最終的な、または厳密には実行可能な選択肢である。加えて、全身投薬によって、循環における高い薬物濃度がCV管中での治療応答を誘発するために必要である場合には、顕著な有害な副作用が起こる可能性がある。副作用を減少させ、そして局在化された治療を行うために、最近の研究は、頸管上皮の先端面から治療薬を送達するための局所的な薬物送達方法(例えば、クリーム剤、ヒドロゲル、および挿入された装置)に注目が集まりつつある。先端への薬物送達はまた、性感染に対する防御にまで拡張することができる。なぜなら、中和抗体および殺菌剤は、病原体の侵入をブロックするように粘膜の表面で作用するはずであるからである。
【0055】
ナノ粒子システムは、処置のための所望される特徴を有する。これには:(i)薬物の局所的な徐放および制御放出、(ii)ナノメートルの大きさゆえの粘膜関門横断能力、(iii)基部にある細胞の核周辺領域への迅速な細胞内輸送、ならびに(iv)粘液中での分解および除去からの積み荷治療薬(cargo therapeutics)の保護が含まれる。しかし、治療用粒子および/または診断用粒子は、基部の細胞に到達し、クリアランスを回避するためには、頸膣管を内層している粘膜関門を克服する必要がある。ムチンは、上皮細胞によって分泌される高度にグリコシル化された大きなタンパク質(10〜40MDa)であり、病原体および毒素の侵入から基部にある上皮を保護する、絡み合っている粘弾性ゲルの主成分を示す。他の粘液構成成分(例えば、脂質、塩、巨大分子、細胞の破片、および水)は、ナノ粒子の輸送のためのナノスケールの異成分からなる環境を形成するように、ムチンと一緒に働き、剪断力に依存するバルクの粘性は、通常は、水中よりも100〜10,000倍大きな粘性である。55nmまでの小さいウイルスは、水中よりも迅速にCV粘液中で拡散することが示されている;しかし、より大きなウイルスである、180nmの単純ヘルペスウイルスは、水と比較してCV粘液によっては100倍から1000倍遅くなり、このことは、粘液の網目の空間が約20〜200nmであることを示唆している。ポリスチレン粒子(59〜1000nm)が頸部粘液に堅く接着して、それらを完全に固定することもまたこれまでに報告されている(参照により本明細書に組み込まれる、Olmsted,SS,Padgett,JL,Yudin,AI,Whaley,KJ,Moench,TR & Cone,RA(2001)Biophysical Journal 81,1930−1937)。これらの観察は、合成ポリマーナノ粒子(特に、約59nmより大きいナノ粒子)の輸送は、ヒトの粘液でコートされている組織中の基部にある上皮に対して徐放粒子を接近させるほど十分効率的には起こりそうにないことを示唆していた。
【0056】
頸膣部の粘液関門を越えるナノ粒子の輸送を研究し、潜在的に改善するために、本発明者らは、ヒトの頸膣部の分泌物中の、様々な大きさおよび表面化学を有している数百もの個々のナノ粒子の定量的輸送速度を実験した。生理学的に関連する条件での未希釈の粘液は、月経採取装置(menstrual collection device)を使用する新しい手順(参照により本明細書に組み込まれる、Boskey,ER,Moench,TR,Hees,PS & Cone,RA(2003)Sexually Transmitted Diseases 30,107−109)によって得られた。驚くべきことに、本発明者らは、ナノ粒子(これまでに報告されているCV粘液の網目の空間よりも大きなナノ粒子を含む)が、これらが耐粘液性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)でコートされている場合には、CV粘液中で迅速に輸送され得ることを報告する。
【0057】
高MWのポリ(エチレングリコール)(PEG)は、粘液のネットワーク中に浸透するその報告されている能力(Buresら、J.Controlled Release,(2001)72:25−33;Huangら、J.Controlled Release,(2000)65:63−71;Peppasら、J.Controlled Release,(1999)62:81−87、これらは全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、およびムチンに対する水素結合(Willitsら、Biomaterials,(2001)22:445−452;Sandersら、J.Controlled Release,(2003)87:117−129、およびPCT特許出願番号US2005/002556、これらは全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)のためにポリマー系に加えられる粘膜付着剤として使用されている。しかし、以下の実施例に示されるように、高密度のPEGコーティングを有している様々な粒子タイプの表面を修飾することにより、粒子表面に対する粘液構成成分の吸着が減少し、接着性粒子の数が減少した粘液を通るより迅速な輸送が可能となる。高MWのポリ(エチレングリコール)は、例えば、表面から延びているPEG鎖の長さが(粘液のネットワーク中に浸透する長い非分岐鎖が減少するかまたは排除されるように)制御される特定の構造において、粘膜付着を減少させるために使用することができる。例えば、直鎖状の高MWのPEGは、直鎖の部分だけが粒子の表面(例えば、低MWのPEG分子に対して長さが等しい部分)から延びるように、粒子の調製物において使用することができる。あるいは、分岐している高MWのPEGが使用される場合もある。そのような実施形態においては、PEG分子の分子量が大きい場合があるが、粒子の表面から延びる分子の任意の個々の鎖の直線的な長さは、低MWのPEG分子の直鎖に対応するであろう。
【0058】
PEGは、ある分子量範囲になるように製造することができる。本発明では、ナノ粒子の表面上に1種類以上の様々な分子量(300Da、600Da、1kDa、2kDa、3kDa、4kDa、6kDa、8kDa、10kDa、15kDa、20kDa、30kDa、50kDa、100kDa、200kDa、500kDa、および1MDaを含むがこれらに限定されない)のPEGを使用することが意図される。加えて、任意の所定の分子量のPEGは、長さ、密度、および分岐度などの他の特性において変動し得る。本発明では、様々な長さ、密度、または分岐度のPEGを含む、PEGの様々な変異体の使用が意図される。
【0059】
理論に束縛されることは望ましくないが、この効果についての1つの可能性のある機構は、PEGが、例えば、粒子/粘液環境中の水および他の分子を整列させることにより、粒子の微小環境を変化させることである。さらに別の、または代わりの可能性のある機構は、遊離PEGがムチン繊維の接着ドメインを遮断し、それによって粒子の接着を減少させて、粒子の輸送を加速することである。
【0060】
他のポリマー、タンパク質、界面活性剤、糖、炭水化物、核酸、または粘膜非接着性材料での粒子表面の修飾によってもまた、粘液および他の接着性の生物学的液体(例えば、血清)中での輸送の増大が生じ得る。特定の実施形態においては、粒子表面は、DNA、RNA、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ポリ−グリシン、ポリグリコール酸、寒天、アガロース、アルギン酸、アミロペクチン、アミロース、β−グルカン、カロース、カラギーナン、セロデキストリン、セルリン、セルロース、キチン、キトサン、クリソラミナリン、カードラン、シクロデキストリン、デキストリン、フィコール、フルクタン、フコイダン、ガラクトマンナン、ゲランガム、グルカン、グルコマンナン、グリコカリックス、グリコーゲン、ヘミセルロース、ヒドロキシエチルデンプン、ケフィラン、ラミナリン、粘液、グリコサミノグリカン、天然ゴム、パラミロン、ペクチン、多糖類ペプチド、シゾフィラン、シアリルルイスx、デンプン、デンプン糊化、スガマデックス、キサンタンゴム、およびキシログルカンのうちの1つ以上でコートされる。例えば、以下に示されるように、COOHで修飾された粒子に対するPEGの共有結合による粒子表面の修飾によって、粘液中での輸送が増大する。さらに、N−アセチルシステインの付加により、粘液中での輸送が増大する。他の分子(例えば、界面活性剤またはポリマー(ポリ(アスパラギン酸)を含む)、およびタンパク質(例えば、ヘパリン))もまた、粘液中での輸送速度を増大させる場合がある。
【0061】
したがって、本発明は、粒子(例えば、ポリマー粒子またはリポソーム粒子)と、それらが含まれている組成物(例えば、特に、患者の粘液関門を越えて送達される、例えば、患者の疾患もしくは他の症状の予防、検出、または処置のための生物学的活性物質および/または治療薬の送達のための薬学的組成物)に関する。本発明によってはまた、粒子の表面上に提示されるポリエチレングリコールの複数の領域を有している、ポリマーが含まれている粒子も提供される。特定の実施形態においては、生体分解性および/または生体適合性ポリマーを使用して、患者の任意の粘膜表面(例えば、消化器粘膜組織、鼻粘膜組織、呼吸粘膜組織、直腸粘膜組織、または膣粘膜組織)中に存在する粘膜関門を越えて吸着またはカプセル化された治療薬を輸送する、あるいは運ぶことができる。本発明の組成物中に吸着またはカプセル化することができる薬剤としては、造影剤および診断薬(例えば、X線不透過性物質、標識された抗体、標識された核酸プローブ、色素(例えば、有色色素または蛍光色素)など)、およびアジュバント(放射線増感剤、トランスフェクション促進物質、化学療法薬、化学誘引物質、細胞接着および/または細胞運動性を調節するペプチド、細胞透過性物質(cell permeabilizing agent)、ワクチン増強剤、多剤耐性の阻害剤、および/または排出ポンプなど)が挙げられる。本発明はまた、そのような組成物を作製する方法、そして/あるいは、例えば、処置レジメンの一部として、例えば、吸入によって、局所的に(例えば、患者の粘膜組織への投与のために)、または(例えば、皮下、筋肉内、もしくは静脈内への)注射によって投与する方法にも関する。
【0062】
2.定義
便宜上、本発明のさらなる記載の前に、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語がここに集められる。これらの定義は、本開示の残り部分を踏まえて読まれるべきであり、そして当業者に理解されるはずである。
【0063】
用語「アクセス装置(access device)」は当該分野で理解されている用語であり、これには、解剖学的領域へのアクセスを獲得する、または維持するのに適応する任意の医療装置が含まれる。そのような装置は、医療および外科手術分野の当業者によく知られている。アクセス装置は、針、カテーテル、カニューレ、トロカール、チューブ、シャント、ドレイン、または内視鏡(例えば、オクトスコープ、鼻咽頭鏡、気管支鏡、もしくは頭部および頸部の領域での使用に適応する任意の他の内視鏡)、または予め選択された解剖学的領域内に侵入する、もしくは静置されるのに適している任意の他の医療装置であってよい。
【0064】
用語「生体適合性ポリマー」および「生体適合性」は、ポリマーに関して使用される場合には、当該分野で理解されている。例えば、生体適合性ポリマーには、それ自体は宿主(例えば、動物またはヒト)に対して毒性はなく、また、(ポリマーが分解する場合には)宿主において毒性濃度で単量体もしくはオリゴマーサブユニットまたは他の副産物を生じる速度では分解しないポリマーが含まれる。本発明の特定の実施形態において、生体分解には、一般的には、事実上非毒性であることが公知であり得る、臓器でのポリマーの、例えば、その単量体サブユニットへの分解が含まれる。そのような分解によって生じる中間体オリゴマー産物は、様々な毒物学的特性を有する場合があるが、生体分解には、酸化、またはポリマーの単量体サブユニット以外の分子を生じる他の生化学的反応が含まれる場合がある。結果として、特定の実施形態において、患者への移植または注射などのインビボでの使用のために意図される生体分解性ポリマーの毒物学は、1つ以上の毒性分析の後で決定することができる。任意の本発明の組成物は、生体分解性であると見なされるために100%の純度を有することは必ずしも必要ではない。したがって、本発明の組成物には、生体適合性ポリマーが99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%、またはさらにそれ未満で含まれ得、例えば、本明細書に記載されるポリマーおよび他の材料および賦形剤が含まれ、そして依然生体適合性である。
【0065】
ポリマーまたは他の材料が生体適合性であるかどうかを決定するためには、毒性分析を行うことが不可欠であり得る。そのようなアッセイは当該分野で周知である。そのようなアッセイの一例は、生きているガン腫細胞(例えば、GT3TKB腫瘍細胞)を用いて、以下の様式で行うことができる:試料を、完全な分解が観察されるまで、37℃で1MのNaOH中で分解する。その後、溶液が1MのHClで中和される。約200μLの様々な濃度の試料分解産物を96ウェル組織培養プレートに入れ、10/ウェルの密度のヒトの胃ガン細胞(GT3TKB)とともに播種する。試料分解産物をGT3TKB細胞とともに48時間インキュベートする。アッセイの結果は、相対的な増殖の割合(%)対組織培養ウェル中の分解させた試料の濃度としてプロットすることができる。加えて、本発明のポリマーおよび処方物はまた、周知のインビボでの試験(例えば、これらが皮下移植部位で有意なレベルの刺激または炎症を引き起こさないことを確認するためのラットでの皮下移植)によって評価される場合もある。
【0066】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,163,697号に開示されている例示的な生体適合性ポリマーおよび生体分解性ポリマーを使用して、本発明のポリマー粒子を作製することができる。
【0067】
用語「生体分解性」は当該分野で理解されており、これには、使用の間に分解されることが意図されるポリマー、組成物、および処方物(例えば、本明細書に記載されるもの)が含まれる。生体分解性ポリマーは、通常は、生体分解性ポリマーが使用の間に分解され得る点で、生体非分解性ポリマーとは異なる。特定の実施形態においては、そのような使用には、インビボでの使用(例えば、インビボ治療)が含まれ、そして他の特定の実施形態においては、そのような使用にはインビトロでの使用が含まれる。一般に、生体分解性に起因する分解には、生体分解性ポリマーのその構成成分サブユニットへの分解、またはより小さい非ポリマーサブユニットへの(例えば、生化学的プロセスによる)ポリマーの消化が含まれる。特定の実施形態において、2つの異なるタイプの生体分解が一般的に同定され得る。例えば、生体分解の1つのタイプには、ポリマー骨格の中での結合(共有結合であるかまたはそうではないかは問わない)の切断が含まれ得る。そのような分解においては、通常は、単量体およびオリゴマーが生じ、なおさらに典型的には、そのような生体分解は、ポリマーの1つ以上のサブユニットを繋いでいる結合の切断によって起こる。対照的に、生体分解の別のタイプには、側鎖に対して内部にある結合(共有結合であるかまたはそうではないかは問わない)の切断、あるいは、ポリマー骨格に側鎖を繋いでいる結合の切断が含まれ得る。例えば、ポリマー骨格に側鎖として結合している治療薬または他の化学的部分は、生体分解によって解離され得る。特定の実施形態において、一般的な生体分解のタイプのうちの一方または他方または両方がポリマーの使用の間に起こり得る。
【0068】
本明細書で使用される場合には、用語「生体分解」には、一般的な分解のタイプの生体分解の両方が含まれる。生体分解性ポリマーの分解速度は、多くの場合は、様々な要因によって一部左右され、そのような要因には、任意の分解に反応する連結の化学的実体、そのようなポリマーの分子量、結晶性、生体安定性、および架橋の程度、移植物の物理的特性(例えば、形状および大きさ)、ならびに投与の様式および位置が含まれる。例えば、分子量が大きければ大きいほど、結晶性が高ければ高いほど、そして/または生体安定性が高ければ高いほど、任意の生体分解性ポリマーの生体分解は、通常は遅くなる。用語「生体分解性」は、「生体内分解性」とも呼ばれる物質およびプロセスを含むように意図される。
【0069】
生体分解性ポリマーがまた、それと会合した治療薬または他の物質をも有している特定の実施形態においては、そのようなポリマーの生体分解速度は、そのような物質の解離速度によって特徴付けられ得る。そのような状況においては、生体分解速度は、ポリマーの化学的実体および物理的特性だけではなく、その中に取り込まれている物質(単数または複数)の実体にもまた左右され得る。
【0070】
特定の実施形態において、本発明のポリマー処方物は、所望される用途において許容される期間内に生体分解される。インビボ治療などの特定の実施形態において、そのような分解は、通常は、25℃から37℃の間の温度を有しているpH6から8の生理学的溶液に曝されると、約5年、1年、6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月、15日、5日、3日未満、またはさらには、1日もしくはそれ未満(例えば、4〜8時間)の期間で起こる。他の実施形態において、ポリマーは、所望される用途に応じて、約1時間から数週間の間の期間で分解する。
【0071】
用語「頸膣粘液」は当該分野で理解されており、ヒト被験体から回収された新鮮な最小限に希釈された非排卵頸膣粘液をいう。
【0072】
用語「対応する粒子」は、それに対して比較される粒子と実質的に同じであるが、通常は、耐粘液性表面修飾を含まない粒子をいうように本明細書で使用される。対応する粒子は、それに対して比較される粒子と同様の材料、密度、および大きさであり得る。特定の実施形態において、対応する粒子は、例えば、Molecular Probes,Eugene,ORから入手することができる、カルボキシル修飾されたポリスチレン(PS)粒子であり得る。特定の実施形態において、比較できる粒子は、カルボキシル、アミン、または硫酸アルデヒドのいずれかでの表面修飾を有しているポリスチレン粒子である。上記カルボキシル基は、1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在することが好ましい。特定の実施形態において、対応する粒子は、特別な方法でのみ実質的に異なる(例えば、耐粘液性表面修飾を有していない)ポリマー粒子、リポソーム粒子、ウイルス粒子、金属粒子、金属酸化物(例えば、シリカ)粒子、または量子ドット粒子である。
【0073】
用語「DNA」は当該分野で理解されており、本明細書ではデオキシヌクレオチドのポリマーをいう。DNAの例としては、プラスミド、遺伝子治療用ベクター、およびRNAiを誘導するように設計されたベクターが挙げられる。
【0074】
用語「直径」は当該分野で理解されており、目的の物質の物理的直径または流体力学直径のいずれかを言うように本明細書で使用される。本質的に球形である粒子の直径は、物理的または流体力学直径をいうことができる。非球形粒子の直径は、流体力学直径を優先的にいうことができる。本明細書で使用される場合は、非球形粒子の直径は、粒子の表面上の2点間の最も長い直線距離をいうことができる。複数の粒子について言及する場合には、粒子の直径は、通常は、言及される粒子の平均直径をいう。
【0075】
用語「薬物送達装置」は当該分野で理解されている用語であり、標的化された臓器または解剖学的領域への薬物または治療薬の適用に適している任意の医療装置をいう。この用語には、解剖学的領域の周辺組織に治療薬を放出する本発明の組成物のそのような処方物が含まれるが、これに限定されない。この用語にはさらに、装置自体が組成物を含むようには処方されていない場合でも、標的化された臓器または解剖学的領域に対して本発明の組成物を輸送するか、または本発明の組成物の点滴注入を行うそのような装置が含まれる。一例として、それを通じて組成物が解剖学的領域に、または血管に、または解剖学的領域に関係している他の構造に挿入される針あるいはカテーテルが、薬物送達装置であると理解される。さらなる例として、組成物がその物質に含まれているか、またはその表面上にコートされているステント、またはシャント、またはカテーテルが、薬物送達装置であると理解される。
【0076】
治療薬または他の物質に関して使用される場合には、用語「徐放」は当該分野で理解されている。例えば、物質の全量が一度に生物学的に利用されるようにされるボーラス型の投与とは対照的に、経時的に物質を放出する本発明の組成物は徐放特性を示し得る。例えば、特定の実施形態において、体液(血液、髄液、粘液分泌液、リンパ液などを含む)と接触すると、(本明細書に提供されるように、そして当業者に公知である別の方法で処方された)ポリマーマトリックスは、段階的に、または遅れて(例えば、加水分解によって)分解され得、(ボーラスによる放出と比較して)持続的にまたは長時間にわたってその中に取り込まれている任意の物質(例えば、治療薬および/または生物学的活性物質)を同時に放出し得る。この放出によっては、治療有効量の任意の取り込まれている治療薬の長期間にわたる送達が生じ得る。
【0077】
用語「送達試薬」は当該分野で理解されている用語であり、これには、治療薬または他の物質の細胞内送達を促進する分子が含まれる。送達試薬の例としては、ステロール(例えば、コレステロール)と脂質(例えば、陽イオン性脂質、ビロゾーム(virosome)、またはリポソーム)とが挙げられる。
【0078】
用語「脂質」は当該分野で認識されており、これは、脂溶性の天然分子をいうように本明細書で使用される。「脂質」はまた、本明細書では、帯電部分と疎水性の炭化水素鎖とを有している分子をいう。本明細書では、用語「脂質」には、リポソームを含む分子が含まれる。
【0079】
用語「金属」当該分野で認識されており、これは、1〜13族/I〜IIIAおよびI〜VIIIB族(遷移金属、ランタノイド、アクチノイド、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属を含む)の元素、ならびに、ケイ素、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマス、およびポロニウムを一般的にいうように本明細書で使用される。本明細書では、鉄、銅、銀、白金、バナジウム、ルテニウム、マンガン、バリウム、ホウ素、ランタノイド、レニウム、テクネチウム、ケイ素などが金属と考えられる。用語「金属酸化物」は、本明細書で使用される場合には、そのような金属の酸化物(ケイ素酸化物(二酸化ケイ素)、アルミナ(例えば、酸化アルミニウム)、酸化バリウムなどを含む)をいう。
【0080】
用語「マイクロスフェア」は当該分野で理解されており、これには、例えば、1以上から約1000ミクロンまでの大きさの範囲を有している生体適合性ポリマーから形成された実質的に球形のコロイド状構造(例えば、本発明の組成物)が含まれる。一般的には、「マイクロカプセル」もまた当該分野で理解されている用語であり、これは、マイクロカプセルが、一般的にはいくつかのタイプの物質(例えば、ポリマー処方物)に覆われているので、マイクロスフェアとは区別され得る。用語「マイクロ粒子」もまた当該分野で理解されており、これには、マイクロスフェアおよびマイクロカプセル、さらには、上記の2つのカテゴリーのいずれにも容易に入れることができない構造が含まれる。これらは全て、約1000ミクロン未満の平均の寸法を有する。マイクロ粒子は球形である場合も、また非球形である場合もあり、任意の規則的な形状である場合も、また不規則的な形状である場合もある。構造が約1ミクロン未満の直径である場合には、対応する当該分野で理解されている用語「ナノスフェア」、「ナノカプセル」、および「ナノ粒子」を利用することができる。特定の実施形態において、ナノスフェア、ナノカプセル、およびナノ粒子は、約500nm、200nm、100nm、50nm、10nm、または1nmの平均直径を有する。
【0081】
マイクロ粒子またはナノ粒子が含まれている組成物には、ある範囲の粒子の大きさの複数の粒子が含まれ得る。特定の実施形態においては、粒子の大きさの分布は、例えば、体積球相当径の中央値(the median volume diameter)の約20%未満の標準偏差内で均一である場合もあり、他の実施形態においては、なおさらに均一であり、例えば、体積球相当径の約10%内である場合もある。
【0082】
用語「粘膜溶解薬」は当該分野で理解されており、これには、粘液クリアランス速度を高めるために臨床的に使用される物質が含まれる(参照により本明細書に組み込まれる、Hanes,J.,M.Dawson,Y.Har−el,J.Suh,and J.Fiegel,Gene Delivery to the Lung.Pharmaceutical Inhalation Aerosol Technology,A.J.Hickey編,Marcel Dekker Inc.:New York,2003:p.489−539)。そのような物質としては、例えば、N−アセチルシステイン(NAC)が挙げられる。これは、ムチンの中に存在するジスルフィド結合およびスルフヒドリル結合を切断する。粘膜溶解薬のさらに別の例としては、ヨモギ(mugwort)、ブロメライン、パパイン、クレロデンドロン、アセチルシステイン、ブロモヘキシン、カルボシステイン、エプラジノン、メスナ(mesna)、アンブロキソール、ソブレロール、ドミオドール、レトステイン、ステプロニン、チオプロニン、ゲルゾリン、ザイモシンβ4、ドルナーゼα、ネルテネキシン、エルドステイン、およびrhDNaseを含む様々なDNaseが挙げられる。
【0083】
用語「粘液」は当該分野で認識されており、粘性があり、ムチン糖タンパク質を含む天然の物質をいうように本明細書で使用される。粘液は、ヒト、またはヒト以外の動物(例えば、霊長類、哺乳動物、および脊椎動物)で見ることができる。粘液は、健康な、または罹患している、ヒトあるいはヒト以外の動物において見ることができる。粘液は、頸膣粘液、肺粘液、消化管粘液、鼻粘液、呼吸器粘液、または直腸粘液であり得る。用語「粘液」は、本明細書で使用される場合は、他の場所で特に明記されない限りは、新鮮な希釈されていない粘液をいう。
【0084】
用語「耐粘液性」は、低下した、または低い粘膜付着特性をいうか、あるいは、粘液を通る高い、または増大した拡散速度の特性を言うように、本明細書で使用される。「耐粘液性」は、本明細書では、粒子が水を通って拡散する速度よりも、1/1000、1/500、1/20、1/10、1/5、または1/2大きい速度でヒトの頸膣粘液を通って拡散する粒子をいう。「耐粘液性」は、さらに、本明細書では、1秒の時間尺度で、1×10−3、2×10−3、5×10−3、1×10−2、2×10−2、2×10−2、4×10−2、1×10−1、2×10−1、5×10−1、1、または2μm/sより大きい速度で粘液中を移動する粒子をいうために使用することができる。「耐粘液性」は、さらに、本明細書では、対応する非耐粘液性粒子(例えば、同様の大きさかつ密度のカルボキシル修飾されたポリスチレン粒子(この場合、カルボキシル修飾は、1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在する))よりも大きな速度で、粘膜関門を通って拡散する粒子をいうように使用することができる。ここでは、耐粘液性粒子は、上記の対応する非耐粘液性粒子(例えば、カルボキシル修飾が1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在する、同様の大きさかつ密度のカルボキシル修飾されたポリスチレン粒子)よりも、少なくとも10倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、2000倍、5000倍、10000倍高いか、またはそれ以上の速度で粘膜関門を通る。上記の対応する非耐粘液性粒子はまた、アミド修飾されたポリスチレン粒子、または硫酸アルデヒド修飾されたポリスチレン粒子である場合もある。
【0085】
用語「核酸」は、DNAまたはRNAをいうように本明細書で使用され、これには、プラスミド、遺伝子治療用ベクター、siRNA発現構築物、およびsiRNAが含まれる。
【0086】
用語「核酸アナログ」は、核酸の非天然変異体をいうように本明細書で使用され、これには、モルホリノ、2’O−修飾された核酸、およびペプチド核酸(PNA)が含まれる。
【0087】
用語「粒子」は当該分野で理解されており、これには例えば、ポリマー粒子、リポソーム、金属、および量子ドットが含まれる。粒子は球形である場合も、また非球形である場合もある。例えば、粒子は、疾患または症状を診断するために、疾患または症状を処置するために、あるいは、疾患または症状を予防するために使用することができる。
【0088】
表現「非経口投与」および「非経口投与される」は当該分野で理解されている用語であり、これには、腸内投与および局所投与以外の投与様式(例えば、注射)が含まれ、また、静脈内、筋肉内、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、および胸骨内への注射ならびに注入も含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
用語「ペプチド模倣物」は当該分野で認識されており、ペプチドを模倣するように設計された小さいタンパク質様鎖をいう。ペプチド模倣物には、改変された骨格などの修飾、および非天然界アミノ酸の取り込みが組み込まれる場合がある。
【0090】
用語「ペプチド」は当該分野で認識されており、アミノ酸のポリマーをいう。ペプチドは、タンパク質、ポリペプチド、および/またはオリゴペプチドであり得る。
【0091】
用語「RNA」は当該分野で認識されており、本明細書ではリボ核酸をいう。RNAには、例えば、mRNA、RNAi構築物の転写物、またはsiRNAが含まれ得る。
【0092】
用語「犠牲的な物質」は、本明細書では、活性粒子の粘液を通る輸送を促進する(例えば、活性粒子が、粘液を分解することなく粘液を通って移動する速度を増大させる)物質(すなわち、粘膜溶解薬ではない)をいう。理論に束縛されることは望ましくないが、そのような犠牲的な粒子は粘液と相互作用して、活性粒子の粘膜付着が低下するように、粘液の構造的特性または接着特性のいずれかを改変させると考えられる。犠牲的な物質は、粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)である場合も、またポリマー(例えば、PEGを含む)である場合もある。
【0093】
「siRNA」は、本明細書では、上記遺伝子(単数または複数)のmRNAと塩基対合して、標的mRNAの分解を引き起こすことによって1つ以上の遺伝子の発現を低下させる、およそ20〜25ヌクレオチドの外因性の二本鎖RNAをいうように使用される。
【0094】
用語「界面活性剤」は当該分野で認識されており、本明細書では、液体の表面張力を低下させる物質をいう。
【0095】
用語「治療薬」は当該分野で認識されており、これには、核酸、核酸アナログ、低分子、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、脂質、または界面活性剤、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0096】
用語「処置する」は当該分野で認識されており、これには、疾患、障害、および/または症状にかかる素因があり得るが、それを有しているとはまだ診断されていない動物において、疾患、障害、または症状が起こることを予防すること;疾患、障害、または症状を阻害すること、例えば、その進行を妨げること;ならびに、疾患、障害、または症状を緩和すること、例えば、疾患、障害、および/または症状の退行を引き起こすことが含まれる。疾患または症状の処置には、鎮痛剤の投与による被験体の痛みの処置などの、そのような薬剤が痛みの原因を処置しなくても、たとえ、根底にある病態生理に影響を及ぼすことはできなくても、特定の疾患または症状の少なくとも1つの兆候を緩和することが含まれる。
【0097】
用語「標的部分」は当該分野で認識されており、本明細書では、特異的な場所に、または特異的な場所から離れて局在化する部分をいうように使用される。上記部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸アナログ、炭水化物、または低分子であり得る。上記部分は、例えば、治療化合物(例えば、低分子)または診断部分(例えば、検出可能標識)であり得る。上記場所は、組織、特定の細胞のタイプ、または細胞内区画であり得る。1つの実施形態において、標的部分は、活性部分の局在化を指示する。上記活性物質は、低分子、タンパク質、ポリマー、または金属であり得る。上記活性物質は、治療目的または診断目的に有用であり得る。
【0098】
粘性は、変形された場合に液体物質によって示される液体の内部摩擦または流動に対する抵抗性であると当該分野で認識されているように本明細書で理解される。ポリマーの粘性の程度は、ポリマーの分子量を調整することによって、さらには、その様々な単量体サブユニットの割合を変化させることによって調整することができる。特異的なポリマーの物理的特性を改変するための他の方法は、日常的に行われる実験以上のことを行うことなく当業者に明らかであろう。本発明の組成物において使用されるポリマーの分子量は、剛性固体状態(高分子量)が所望されるかどうか、または液体状態(低分子量)が所望されるかどうかに応じて幅広く変化し得る。
【0099】
表現「薬学的に許容される」は当該分野で認識されている。特定の実施形態において、この用語には、音波による医学的判断の範囲において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症、合理的な効果対リスク比との整合を伴わない、ヒトおよび動物の組織と接触させる使用に適している、組成物、ポリマー、ならびに他の物質および/または投薬形態が含まれる。
【0100】
表現「薬学的に許容される担体」は当該分野で認識されており、これには、例えば、薬学的に許容される物質、組成物、または媒体(例えば、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、溶媒、または、1つの臓器もしくは体の一部分から別の臓器もしくは体の一部分への任意の本発明の組成物の保持もしくは輸送に関係するカプセル化物質が挙げられる。個々の担体は、本発明の組成物の他の成分と適合し、そして患者に対して有害ではないという意味で、「許容され」る必要がある。特定の実施形態において、薬学的に許容される担体は発熱性ではない。薬学的に許容される担体として機能し得る物質のいくつかの例としては、以下が挙げられる:(1)糖類、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;(2)デンプン類、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;(4)粉末状トラガカント;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤用ワックス;(9)油類、例えば、ピーナッツ油、菜種油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油;(10)グリコール類、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール類、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;(12)エステル類、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;ならびに、(21)薬学的処方物において使用される他の非毒性の適合性物質。
【0101】
用語「薬学的に許容される塩」は当該分野で認識されており、これには、組成物の比較的毒性のない、無機酸付加塩および有機酸付加塩が含まれる。これには、鎮痛剤、治療薬、他の物質などが含まれるがこれらに限定されない。薬学的に許容される塩の例としては、鉱酸(例えば、塩酸および硫酸)から誘導される塩、および有機酸(例えば、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)から誘導される塩などが挙げられる。塩の形成に適している無機塩基の例としては、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛などの水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩が挙げられる。塩はまた、適切な有機塩基(毒性がなく、そのような塩を形成させるために十分に強いものを含む)ともに形成させることもできる。説明の目的で、そのような有機塩基のクラスとしては、モノ−、ジ−、およびトリアルキルアミン(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、およびトリエチルアミン);モノ−、ジ−、またはトリヒドロキシアルキルアミン(例えば、モノ−、ジ−、およびトリエタノールアミン);アミノ酸、例えば、アミノ酸ルギニンおよびリジン;グアニジン;N−メチルグルコサミン;N−メチルグルカミン;L−グルタミン;N−メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N−ベンジルフェネチルアミン;(トリヒドロキシメチル)アミノエタンなどが挙げられる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharm.Sci.66:1−19(1977)を参照のこと。
【0102】
本発明の方法によって処置される「患者」、「被験体」、または「宿主」は、ヒトまたはヒト以外の動物(例えば、霊長類、哺乳動物、および脊椎動物)のいずれかを意味し得る。
【0103】
用語「予防的または治療的」処置は当該分野で認識されており、これには、宿主への本発明の組成物のうちの1つ以上の投与が含まれる。これが望ましくない症状(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床的発現の前に投与される場合には、処置は予防的であり(すなわちこれは、宿主が望ましくない症状を発症することから防御する)、一方、望ましくない症状の発現の後に投与される場合には、処置は治療的である(すなわち、既存の望ましくない症状またはその副作用を小さくする、緩和する、または安定化させるように意図される)。
【0104】
用語「予防する」は当該分野で認識されており、症状(例えば、局所再発(例えば、疼痛)、ガンなどの疾患、心不全などの複合的症候(syndrome complex)、または任意の他の医学的症状)に関して使用される場合には、当該分野で十分に理解されており、これには、組成物が投与されていない被験体と比較して、被験体の医学的症状の兆候の頻度を減少させまたはその発症を遅らせる組成物の投与が含まれる。したがって、ガンの予防には、例えば、統計的におよび/または臨床的に有利な量で、例えば、未処置の対照の集団と比較して、予防的処置を受けた患者の集団での検出可能なガンの増殖数を減少させること、および/または未処置の対照の集団に対して、処置された集団での検出可能なガンの増殖の出現を遅らせることが含まれる。感染の予防には、例えば、未処置の対照集団に対して処置された集団での感染の診断の数を減少させること、および/または、未処置の対照集団に対して処置された集団での感染の兆候の発症を遅らせることが含まれる。疼痛の予防には、例えば、未処置の対照集団に対して、処置された集団中の被験体が経験する痛みの感覚の大きさを減少させること、または別の方法で痛みの感覚を遅らせることが含まれる。
【0105】
表現「長い滞留時間」は当該分野で認識されており、患者の体内、またはその患者の臓器もしくは組織から薬剤がクリアランスされるために必要な時間の延長をいう。特定の実施形態において、「長い滞留時間」は、耐粘液性コーティングを有していない比較できる物質などの比較の標準物よりも、10%、20%、50%、または75%長い半減期でクリアランスされる物質をいう。特定の実施形態において、「長い滞留時間」は、耐粘液性コーティングを有していない比較できる物質などの比較の標準物よりも、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、2000倍、5000倍、または10000倍長い半減期で排除される物質をいう。
【0106】
用語「タンパク質」は当該分野で認識されており、アミノ酸のポリマーをいうように本明細書で使用される。
【0107】
表現「全身投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」、および「末梢血管から投与される」は当該分野で認識されており、これらには、本発明の組成物、治療物質、または他の物質の、処置される疾患から離れた部位での投与が含まれる。処置される疾患の病変の中、上、またはその付近への直接的な薬剤の投与は、たとえ薬剤がその後に全身に分配されるとしても、それが患者の系に入り、したがって、代謝および他の同様のプロセスに供されるような、(例えば、皮下投与による)中枢神経系への直接のものとは異なり、「局所(local)」または「局部(topical)」または「局所(regional)」投与と呼ばれる場合がある。
【0108】
表現「治療有効量」は当該分野で認識されている用語である。特定の実施形態において、この用語は、本発明のポリマー中に取り込まれると、任意の医学的処置に適応することができる合理的な効果対リスク比でいくらかの所望される効果を生じる治療薬の量をいう。特定の実施形態において、この用語は、長期間にわたり痛みの感覚を排除する、または低下させるために必要な、あるいは十分なその量をいう。有効量は、処置される疾患または症状、投与される特定の標的化された構築物、被験体の大きさ、または疾患もしくは症状の重篤度などの要因に応じて様々に変化し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の化合物の有効量を経験的に決定することができる。
【0109】
用語「ED50」は当該分野で認識されている。特定の実施形態において、ED50は、その最大応答または効果の50%を生じる薬物の用量、あるいは、試験被験体または調製物の50%において予め決定された応答を生じる用量を意味する。
【0110】
用語「LD50」は当該分野で認識されている。特定の実施形態において、LD50は、試験被験体の50%において致死性である薬物の用量を意味する。用語「治療指数」は当該分野で認識されている用語であり、LD50/ED50として定義される、薬物の治療指数をいう。
【0111】
用語「取り込まれる」および「カプセル化される」は、治療薬、または他の物質、およびポリマー組成物(例えば、本発明の組成物)に関して使用される場合、当該分野で認識されている。特定の実施形態において、これらの用語には、所望される用途においてそのような薬剤の放出(例えば、徐放)を可能にする、そのような薬剤を組成物中に取り込む、処方する、または別の方法で含めることが含まれる。これらの用語によっては、治療薬または他の物質が、ポリマーマトリックス内に取り込まれる任意の様式が意図される。これには例えば、そのようなポリマーの単量体に対する(共有結合相互作用、イオン性相互作用、または他の結合相互作用による)結合、物理的混合、ポリマーのコーティング層中に薬剤を包む(envelope)こと、およびポリマー処方物を得るための重合の一部になるようにそのような単量体を有すること、ポリマーマトリックス全体に分布されること、ポリマーマトリックスの表面に(共有結合相互作用または他の結合相互作用によって)付加されること、ポリマーマトリックス内部にカプセル化されることなどが含まれる。用語「同時取り込み」または「同時カプセル化」は、本発明の組成物中への、治療薬または他の物質と、少なくとも1つの他の治療薬または他の物質との取り込みをいう。
【0112】
さらに具体的には、任意の治療薬または他の物質がポリマー中にカプセル化されている物理的形態は、特定の実施形態に応じて変化し得る。例えば、治療薬または他の物質は、最初にマイクロスフェアにカプセル化されてよく、その後、マイクロスフェア構造の少なくとも一部が維持される方法でポリマーと合わされてよい。あるいは、治療薬または他の物質は、ポリマー中に溶解されるよりも、むしろ小さい液滴として分散された本発明のポリマー中で十分に不混和性であり得る。カプセル化または取り込みの任意の形態は、任意のカプセル化された治療薬または他の物質の放出(好ましくは、徐放)によって、カプセル化の形態が任意の特定の用途に十分に許容されるかどうかを決定する程度に、本発明によって意図される。
【0113】
用語「生体適合性可塑剤」は当該分野で認識されており、これには、本発明の組成物中に可溶または分散可能であり、ポリマーマトリックスの可撓性を高め、そして使用される量では生体適合性である物質が含まれる。適切な可塑剤は当該分野で周知であり、これには、米国特許第2,784,127号および同第4,444,933号に開示されているものが含まれる。特異的な可塑剤としては、例えば、クエン酸アセチルトリ−n−ブチル(c.20重量%またはそれ未満)、クエン酸アセチルトリヘキシル(c.20重量%またはそれ未満)、フタル酸ブチルベンジル、ジブチルフタル酸、ジオクチルフタル酸、n−ブチリルトリ−n−ヘキシルクエン酸、ジエチレングリコールジベンゾエート(c.20重量%またはそれ未満)などが挙げられる。
【0114】
3.粒子および関連化合物
本発明により、粒子、例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子が提供される。特定の実施形態において、ポリマー粒子には、薬学的に許容されるポリマー、生物活性剤、およびポリマー粒子の表面を耐粘液性にする表面改変剤が含まれる。別の実施形態において、ポリマー粒子には、薬学的に許容されるポリマーと、生物活性剤でもある表面改変剤とが含まれる。特定のそのような実施形態において、粒子にはさらに、粒子の表面に対する表面改変剤の接着を促進する接着促進剤(例えば、臭化ジメチルジオクタデシル−アンモニウム、または他の陽イオン含有添加剤)がさらに含まれる。表面改変剤は、粘液中での粒子の輸送速度を大きくする場合がある。
【0115】
表面改変剤の例としては、アニオン性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)、界面活性剤(例えば、カチオン性界面活性剤(例えば、臭化ジメチルジオクタデシル−アンモニウム))、糖類または糖誘導体(例えば、シクロデキストリン)、核酸、およびポリマー(例えば、ヘパリン、ポリエチレングリコール、およびポリキサマー)が挙げられるが、これらに限定されない。表面改変剤としてはまた、粘膜溶解薬、例えば、N−アセチルシステイン、ヨモギ、ブロメライン、パパイン、クレロデンドロン、アセチルシステイン、ブロモヘキシン、カルボシステイン、エプラジノン、メスナ、アンブロキソール、ソブレロール、ドミオドール、レトステイン、ステプロニン、チオプロニン、ゲルゾリン、ザイモシンβ4、ドルナーゼα、ネルテネキシン、エルドステイン、およびrhDNaseを含む様々なDNaseも挙げることができる。粘液溶解薬または犠牲的な物質は、粘膜関門を越える輸送を改善するために、本発明の粒子とは別に、または同時に、あるいは、(例えば、粒子上にコートされた、粒子に共有結合された、粒子とともに局在化された、または粒子中にカプセル化された)粒子の表面改変剤として投与することができる。特定の薬剤(例えば、シクロデキストリン)は、他の分子とともに封入複合体を形成することができ、これは、さらに別の部分に対して結合を形成させるために、ならびに、粒子表面および/または結合分子もしくは部分の官能化を促進するために使用することができる。
【0116】
炭水化物である適切な表面改変剤の例としては、以下が挙げられる:寒天、アガロース、アルギン酸、アミロペクチン、アミロース、β−グルカン、カロース、カラギーナン、セロデキストリン、セルリン、セルロース、キチン、キトサン、クリソラミナリン、カードラン、シクロデキストリン、デキストリン、フィコール、フルクタン、フコイダン、ガラクトマンナン、ゲランガム、グルカン、グルコマンナン、グリコカリックス、グリコーゲン、ヘミセルロース、ヒドロキシエチルデンプン、ケフィラン、ラミナリン、植物が分泌する粘液、グリコサミノグリカン、天然ゴム、パラミロン、ペクチン、多糖類ペプチド、シゾフィラン、シアリルルイスx、デンプン、デンプン糊化、スガマデックス、キサンタンゴム、およびキシログルカン、ならびにそのような炭水化物の断片および誘導体。
【0117】
界面活性剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:L−α−ホスファチジルコリン(PC)、1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、オレイン酸、トリオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、天然レシチン、オレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、ステアリルポリオキシエチレン(2)エーテル、ラウリルポリオキシエチレン(4)エーテル、オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロックコポリマー、合成レシチン、ジエチレングリコールジオレエート、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノリシノール酸グリセリル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール400、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンズアルコニウム、オリーブ油、モノラウリン酸グリセリル、トウモロコシ油、菜種油、およびひまわり種油、レシチン、オレイン酸、およびトリオレイン酸ソルビタン。
【0118】
薬学的に許容されるポリマーは、ポリ(乳−コ−グリコール)酸(PLGA)、ポリ(D,L−乳−コ−グリコール)酸、ポリエチレンイミン、ジオレイルトリメチルアンモニウムプロパン/ジオレイル−sn−グリセロホスホエタノールアミン、ポリセバシン酸無水物、または臨床的に承認されている単量体から形成された他のポリマーであり得る。臨床的に承認されている単量体の例としては、セバシン酸および1,3−ビス(カルボキシフェノキシ)プロパンの単量体が挙げられるが、これに限定されない。
【0119】
薬学的に許容されるポリマーは、以下に示されるような、式Aおよび式Bのサブユニット、および状況に応じて式Cのサブユニットの繰り返しが含まれている、ポリ酸無水物ポリマーであり得る:
【0120】
【化1】

式中、価数および安定性が許容される場合には、
Mは、それぞれの出現について独立して、置換または未置換のメチレン、例えば、CH、CH(Me)、CF、CH(OH)、C=Oなど、好ましくは、CH、またはOに隣接しているMの出現については、C=Oを示し;
Xは、存在しないか、あるいは、それぞれの出現について独立して、NR、O、およびSから選択されるヘテロ原子、好ましくは、Oを示し;
Rは、それぞれの出現について独立して、Hまたは低級アルキルを示し;
jは、それぞれの出現について独立して、0から16までの整数、好ましくは、1から9までの整数を示し;
mは、それぞれの出現について独立して、4から20までの整数、好ましくは、8から14までの整数、なおさらに好ましくは、10を示し;
nは、それぞれの出現について独立して、4から500までの整数、好ましくは、10から200までの整数を示し;
pは、それぞれの出現について独立して、1から60までの整数、好ましくは、4から40までの整数を示し;そして、
qは、それぞれの出現について独立して、1から20までの整数、好ましくは、2から10までの整数、なおさらに好ましくは、2から6までの整数を示す。
【0121】
特定の実施形態において、m、n、およびqはそれぞれ、独立して、ポリマー全体を通じて一定の値を示し、すなわち、ポリマーまたはポリマー鎖の試料中の式A、B、またはCのサブユニット中の、あるいは、同じ式の異なるサブユニット中のm、n、およびqは変化しない。
【0122】
特定の実施形態において、ポリマーには、式A、B、およびCによって示されるそれらのサブユニット以外の単量体単位が含まれる場合がある。しかし、好ましい実施形態において、ポリマーは原則として、式A、B、およびCからなる。
【0123】
特定の実施形態において、本発明のポリマーは、式−[K]−を有し、式中、個々のKの出現は、上記に示されるような式AもしくはB、または状況に応じてCのサブユニットを示す。ポリマー鎖は、ヒドロキシル基(カルボン酸を形成させるため)、アシル基(無水物を形成させるため)、アルコキシ基(エステルを形成させるため)、または任意の他の適切なキャップ基でキャップされる(末端形成される)場合がある。
【0124】
特定の実施形態において、式Bのサブユニットは、200から1000ダルトンの間の分子量を有し、一方、他の実施形態において、式Bのサブユニットは、4000から10,000ダルトンの間の分子量を有する。いくつかの実施形態において、式Bのサブユニットは、200ダルトンから10,000ダルトンの間で変化するか、またはさらに大きい分子量を有し、一方、他の実施形態において、式Bのサブユニットは、狭い範囲(例えば、200〜300ダルトン、または2,000〜3,000ダルトン)でしか変化しない分子量を有する。
【0125】
特定の実施形態において、式Bのサブユニットは、ポリマーの1から80重量%を構成し、好ましくは、5から60重量%を構成する。特定の実施形態において、式Cのサブユニットは、存在する場合には、ポリマーの1重量%から80重量%、好ましくは、5から60重量%を構成することができる。特定の実施形態において、式Aのサブユニットは、ポリマーの10重量%から99重量%を構成し、好ましくは、15重量%から95重量%を構成する。
【0126】
個々のサブユニットは任意の数で繰り返され、1つのサブユニットは、実質的には、別のサブユニットと同じ頻度で存在する場合があり、またより多く存在する場合も、また、少なく存在する場合もある。その結果、両方のサブユニットはほぼ同じ量で存在する場合があり、また異なる量(わずかに異なる場合があり、また、大きく異なる(例えば、1つのサブユニットが他方をほぼ排除して存在する)場合もある)で存在する場合もある。
【0127】
特定の場合には、ポリマーは、様々なサブユニットおよび/または他の単量体単位がポリマー鎖全体を通じてランダムに分配されているランダムコポリマーである。一部において、用語「ランダム」は、複数のタイプの単量体単位を有しているポリマー中での、複数の単量体単位の特定の分布または取り込みが、合成のプロトコールによっては指示されないか、または直接は制御されないが、代わりに、ポリマー系についての固有の特徴(例えば、反応性、サブユニットの量、および合成反応の他の特徴)、または他の製造、加工、もしくは処理の方法によって生じる状況をいうように意図される。
【0128】
特定の実施形態において、そのような組成物のポリマー鎖(例えば、上記の式のうちのいずれかに示される反復エレメントを含む)は、約2000ダルトンまたはそれ未満から約300,000ダルトン、600,000ダルトン、もしくは1,000,000ダルトンまでの範囲、またはそれ以上、あるいは、少なくとも約10,000ダルトン、20,000ダルトン、30,000ダルトン、40,000ダルトン、もしくは50,000ダルトン、さらに具体的には、少なくとも約100,000ダルトンの分子量(M)を有する。数平均分子量(M)もまた大きく変化する場合があるが、一般的には、約1,000ダルトンから約200,000ダルトンの範囲、好ましくは、約10,000ダルトンから約100,000ダルトンの範囲、そしてなおさらに好ましくは、約8,000ダルトンから約50,000ダルトンの範囲に入る。最も好ましくは、Mは、約12,000ダルトンから45,000ダルトンの間で変化する。ポリマーの所与の試料中には、広い分子量の範囲が存在する場合がある。例えば、試料中の分子量は、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上異なる分子量を有している場合があり、また、平均分子量から2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上異なる分子量を有している場合もある。
【0129】
分子量を決定するための1つの方法は、ゲル透過クロマトグラフィ(「GPC」)、例えば、混床式イオン交換塔(mixed bed columns)、CHCl溶媒、光散乱検出器、およびオフラインdn/dc(off line dn/dc)による。他の方法は当該分野で公知である。
【0130】
本発明のポリマー粒子を作製するために使用することができる他のポリマーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:シクロデキストリン含有ポリマー(特に、陽イオン性シクロデキストリン含有ポリマー、例えば、米国特許第6,509,323号に記載されているもの)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、エチレン酢酸ビニルポリマー(EVA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(L−乳酸−コ−グリコール酸)(PLLGA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLA)、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−カプロラクトン−コ−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−PEO−コ−D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−PPO−コ−D,L−ラクチド)、ポリアルキルシアノアクリル酸、ポリウレタン、ポリ−L−リジン(PLL)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ポリエチレングリコール、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリ(エステルアミド)、ポリアミド、ポリ(エステルエーテル)、ポリカーボネート、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG))、ポリアルキレンオキサイド(PEO)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート))、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル(例えば、ポリ(酢酸ビニル))、ハロゲン化ポリビニル(例えば、ポリ(塩化ビニル)(PVC))、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、誘導体化セルロース(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、アクリル酸のポリマー(例えば、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)(PMMA)、ポリ(エチル(メタ)アクリレート)、ポリ(ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(イソブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(ヘキシル(メタ)アクリレート)、ポリ(イソデシル(メタ)アクリレート)、ポリ(ラウリル(メタ)アクリレート)、ポリ(フェニル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)(本明細書ではまとめて「ポリアクリル酸」と呼ばれる)、ならびにそれらのコポリマーおよび混合物)、ならびに、ポリジオキサノンおよびそのコポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(フマル酸プロピレン)、ポリオキシメチレン、ポロキサマー、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)、ポリ(吉相酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、カルボン酸トリメチレン、ポリビニルピロリドン、ならびに、Shiehら、1994,J.Biomed.Mater.Res.,28,1465−1475、および米国特許第4,757,128号、Hubbellら、米国特許第5,654,381号;同第5,627,233号;同第5,628,863号;同第5,567,440号;および同第5,567,435号(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているポリマー。他の適切なポリマーとしては、ポリオルトエステル(例えば、Hellerら、2000,Eur.J.Pharm.Biopharm.,50:121−128に開示されているもの)、ポリホスファゼン(例えば、Vandorpeら、1997,Biomaterials,18:1147−1152に開示されているもの)、およびポリホスホエステル(例えば、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,pp.45−60、E.Mathiowitz編、John Wiley & Sons,Inc.New York,1999に開示されているもの)(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)、ならびに、2種類以上のそのようなポリマーの混合物および/またはブロックコポリマーが挙げられる。ラクチド含有ポリマーおよびグリコリド含有ポリマーのカルボキシル末端は、状況に応じて、例えば、エステル化によってキャップされる場合があり、そしてヒドロキシル末端は、状況に応じて、例えば、エーテル化またはエステル化によってキャップされる場合がある。
【0131】
上記の2種類以上のポリマーのコポリマー(ブロックコポリマーおよび/またはランダムコポリマーを含む)もまた、本発明のポリマー粒子を作製するために使用される場合がある。
【0132】
本発明ではまた、本発明のポリマー粒子を作製するために、PEGまたはその誘導体(例えば、上記の式Bの単位)と上記のポリマーのうちの任意のものとのコポリマーを使用することも意図される。特定の実施形態において、PEGまたは誘導体は、コポリマーの内部位置に局在化させることができる。あるいは、PEGまたは誘導体は、コポリマーの末端近くに、または末端位置に局在化させることができる。特定の実施形態において、マイクロ粒子またはナノ粒子は、PEGの領域を相分離させるか、または別の方法で粒子の表面に局在化させることができる条件下で形成される。特定の実施形態において、表面に局在化されたPEG領域は、表面改変剤の機能だけを果たす場合があるが、他の実施形態において、これらのコポリマー粒子には、さらに別の表面改変剤が含まれる。そのような技術を同様に適用して、他の適切な表面改変剤のポリマー(例えば、シクロデキストリン含有ポリマー、ポリアニオン系ポリマーなど)のコポリマーを形成することができる。
【0133】
特定の実施形態において、ポリマーは、製作および処理を容易にするための1つ以上の一般的な有機溶媒に可溶である。一般的な有機溶媒としては、2,2,2−トリフルオロエタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、2−ブタノン、酢酸ブチル、酪酸エチル、アセトン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシドなどの溶媒が挙げられる。
【0134】
特定の実施形態において、本発明の粒子および組成物には生物活性剤が含まれる。生物活性剤は、治療薬、診断薬、または造影剤であり得る。治療薬の例としては、核酸または核酸アナログ(例えば、DNAまたはRNA)、低分子、ペプチド模倣物、タンパク質、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、診断薬または造影剤にはさらに、検出可能標識が含まれる。
【0135】
生物活性剤は、核酸またはそのアナログ、例えば、遺伝子治療に有用なDNAであり得る。あるいは、または加えて、RNAが生物活性剤として使用される場合もある。RNAは、RNAi分子または構築物であり得る。RNAiは、目的の遺伝子(特に、目的の遺伝子のメッセンジャーRNA)に対して相同な1つ以上の二本鎖RNAを標的細胞中に導入することによって遺伝子または遺伝子産物の発現を低下させる「RNA干渉」をいう。RNAiはまた、(標的に対する)アンチセンス鎖がRNAである、DNA:RNA複合体の導入によっても行うことができる。いずれかの鎖に、塩基または糖−リン酸骨格に対する1つ以上の修飾が含まれる場合がある。RNA干渉効果を得るために設計された任意の核酸調製物は、本明細書では、siRNA構築物と呼ばれる。
【0136】
あるいは、アンチセンス核酸は生物活性剤として使用される。アンチセンス核酸は、通常の塩基対の相補性によって、または例えば、DNA二本鎖に対する結合の場合には、二重ヘリックスの主溝での特異的相互作用を通じて、その標的に結合することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAまたはキメラ混合物、あるいはそれらの誘導体または修飾されたバージョンであり得、一本鎖である場合も、また二本鎖である場合もある。オリゴヌクレオチドは、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーションなどを改善するために修飾することができる。オリゴヌクレオチドには、(例えば、宿主細胞受容体を標的化するための)ペプチドなどの他の付加された基、または細胞膜を越える輸送を促進する物質(例えば、Letsingerら、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:6553−6556,Lemaitreら、1987,Proc.Natl.Acad.Sci.84:648−652、1998年12月15日に公開されたPCT公開番号WO88/09810(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)もしくは血液−脳関門を越える輸送を促進する物質(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、1988年4月25日に公開されたPCT公開番号WO89/10134を参照のこと)、ハイブリダイゼーション誘発性切断薬(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Krolら、1988,BioTechniques 6:958−976を参照のこと)、あるいは、挿入剤(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Zon,1988,Pharm.Res.5:539−549を参照のこと)が含まれる場合がある。この目的のためには、オリゴヌクレオチドは、別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発性架橋剤、輸送因子、ハイブリダイゼーション誘発性切断薬など)に結合され得る。
【0137】
「低分子」は、本明細書で使用される場合には、約3kDa未満、そして最も好ましくは、約1.5kDa未満の分子量を有している分子をいうように意味される。低分子および/または、真菌、細菌、もしくは藻類の抽出物のアレイが含まれている化学的ならびに/あるいは生物学的混合物の大規模なライブラリーを、本発明の粒子中で、または本発明の粒子とともに使用される所望される生物活性剤を得るために、当該分野で公知の任意のアッセイを用いてスクリーニングすることができる。
【0138】
ペプチド模倣物は、ペプチド(例えば、治療用ペプチド)の少なくとも一部が修飾されており、ペプチド模倣物の三次元構造は、ペプチドの三次元構造と実質的に同じままの化合物である。ペプチド模倣物(ペプチドおよび非ペプチジルアナログの両方)は、改善された特性(例えば、低いタンパク質分解性、高い保持、または高い生体利用性)を有する場合がある。ペプチド模倣物は、一般的には、経口利用性が改善されており、これにより、ペプチド模倣物は、ヒトまたは動物の障害の処置に特に適するものとなる。ペプチド模倣物は、類似する二次元化学構造を有する場合も、また有さない場合もあるが、共通する三次元構造の特徴および幾何学的形状を共有することに留意されるべきである。
【0139】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、本明細書では互換的に使用され、一般的には、ペプチド結合を介して連結された少なくとも2つのアミノ酸によって形成されるポリマーをいう。
【0140】
造影剤(例えば、検出可能標識、または検出可能標識に連結した生物活性剤)、治療薬、および標的部分(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開番号20030049203に記載されているもの)もまた意図され、本発明の粒子とともに使用することができる。
【0141】
特定の実施形態において、本発明の粒子には、検出可能標識に対してさらに結合していてよい造影剤が含まれる(例えば、標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子であり得る)。活性部分は、放射性物質、例えば:放射性重金属(例えば、鉄キレート、ガドリウムもしくはマンガンの放射活性キレート、酸素、窒素、鉄、炭素、もしくはガリウムの陽電子放射体、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、68Ga、123I、125I、131I、132I、または99Tc)であり得る。そのような部分が含まれている粒子を造影剤として使用することができ、これは、ヒトなどの哺乳動物での診断的使用に有効な量で投与され得る。この様式では、造影剤の局在化および蓄積を検出することができる。造影剤の局在化および蓄積は、放射性核種画像化方法(radioscintiography)、核磁気共鳴画像化法、コンピュータによるトモグラフィ、または陽電子放出型トモグラフィによって検出することができる。当業者に明らかであるように、投与される放射性同位元素の量は、放射性同位元素に応じて様々である。当業者は、活性部分として使用される所定の放射性核種の比活性およびエネルギーに基づいて、投与される造影剤の量を容易に処方することができる。通常は、造影剤1用量あたり0.1〜100ミリキュリー、好ましくは、1〜10ミリキュリー、最も多くの場合には、2〜5ミリキュリーが投与される。したがって、放射活性部分に結合される標的部分が含まれている造影剤として有用な本発明の組成物には、0.1〜100ミリキュリー、いくつかの実施形態においては、好ましくは、1〜10ミリキュリー、いくつかの実施形態においては、好ましくは、2〜5ミリキュリー、いくつかの実施形態においては、より好ましくは、1〜5ミリキュリーが含まれる。
【0142】
標識を検出するために使用される検出手段は、使用される標識の性質と、使用される生物学的試料の性質とに応じて様々であり、そしてまた、蛍光局在化、高速液体クロマトグラフィ、抗体捕捉、ゲル電気泳動、示差的沈殿(differential precipitation)、有機抽出、サイズ排除クロマトグラフィ、蛍光顕微鏡分析、または蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイも含まれ得る。
【0143】
特定の実施形態において、生物活性剤または標的部分は、本発明の粒子に共有結合されていてよい。そのような実施形態において、生物活性剤は、好ましくは、親水性の物質または耐電物質であり得、その結果、粒子の表面上でのその存在により、粒子の電荷が大きくなるか、または親水性が高まるか、あるいは別の方法で、粒子の粘液抵抗性が高まる。共有結合は、例えば、化学的もしくは酵素的加水分解、または他の切断プロセスによって、生物学的条件下で切断されるように選択することができる。
【0144】
特定の実施形態において、本発明の粒子にはさらに、標的部分または分子が含まれる場合がある。標的分子は、粒子の任意の他の構成成分(例えば、ポリマーまたは表面改変剤)に共有結合されていてよい。標的分子はまた、当該分野で公知の方法を使用して、粒子と一緒に局在化される場合もある。標的分子は、粒子、したがって、含まれる生体活性剤を患者の所望される標的または箇所に指向することができる。
【0145】
1つの実施形態においては、標的部分は低分子である。本発明において標的部分としての使用に適している可能性がある分子としては、ハプテン、エピトープ、およびdsDNA断片、ならびにそれらのアナログおよび誘導体が挙げられる。そのような部分は、(ハプテンおよびエピトープについての)模倣物および(dsDNA断片についての)亜鉛フィンガータンパク質を含む、抗体、それらの断片またはアナログに特異的に結合する。受容体媒介エンドサイトーシスを誘発し、したがって、有用な標的部分であると考えられる栄養素としては、ビオチン、葉酸、リボフラビン、カルニチン、イノシトール、リポ酸、ナイアシン、パントテン酸、チアミン、ピリドキサール、アスコルビン酸、ならびに、脂溶性ビタミンA、D、E、およびKが挙げられる。低分子標的部分の別の例示的なタイプとしては、ステロイド系脂質(steroidal lipids)(例えば、コレステロール)、およびステロイドホルモン(例えば、エストラジオール、テストステロンなど)が挙げられる。
【0146】
別の実施形態において、標的部分にはタンパク質が含まれる場合がある。特定のタイプのタンパク質が、標的部位または標的細胞についての既知の特性に基づいて選択され得る。例えば、プローブは、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかであり得る。この場合、対応する抗原は標的部位上に提示される。特定の受容体が標的細胞によって発現される状況においては、標的部分には、その受容体に結合できるタンパク質またはペプチド模倣物であるリガンドが含まれ得る。公知の細胞表面受容体のタンパク質リガンドとしては、低密度リポタンパク質、トランスフェリン、インシュリン、繊維素溶解酵素、抗HER2、血小板結合タンパク質(例えば、アネキシン)、および生物反応修飾物質(インターロイキン、インターフェロン、エリスロポエチン、およびコロニー刺激因子を含む)が挙げられる。ヒトの腫瘍関連抗原に特異的なモノクローナル抗体を含む、特異的なタイプの細胞に結合する多数のモノクローナル抗体が開発されている。多くのそのようなモノクローナル抗体の中でも、使用され得るものは、抗TAC、または他のインターロイキン−2受容体抗体;9.2.27およびNR−ML−05から250キロダルトンのヒト黒色腫関連プロテオグリカン;ならびに、NR−LU−10から膵臓ガン糖タンパク質までである。本発明において使用される抗体は、完全な(全)分子、その断片、またはその機能的等価物であり得る。抗体断片の例は、F(ab’)、Fab’、Fab、およびF断片であり、これらは、従来技術によって、あるいは、遺伝子操作またはタンパク質操作によって生産することができる。
【0147】
他の好ましい標的部分としては、標的特異的受容体によって認識される糖類(例えば、グルコース、フコース、ガラクトース、マンノース)が挙げられる。例えば、本発明の請求の範囲の構築物は、マンノース受容体を発現している腫瘍(例えば、膠芽細胞腫および神経節細胞腫)、ならびに、マンノース受容体を発現することもまた公知である細菌(Bertozzi,C R and M D Bednarski Carbohydrate Research 223:243(1992);J.Am.Chem.Soc.114:2242,5543(1992))、ならびに潜在的な他の感染性因子に対して高い結合親和性を有している標的化された構築物を得るためにマンノース残基でグリコシル化する(例えば、遊離の窒素に対してC−グリコシドとして結合させる)ことができる。特定の細胞(例えば、悪性細胞および血液細胞(例えば、A、AB、Bなど)は、対応しているレクチンが標的部分となり得る、特定の炭水化物を提示する。
【0148】
共有結合は、当該分野で公知の様々な方法によって行うことができる。表面改変剤、接着促進剤、生物活性剤、標的物質、および本明細書で議論される他の機能的部分などの、粒子の表面に共有結合される部分(ペンダント部分)は、粒子の形成後に表面に結合することができ、また、粒子の形成前に1つ以上の構成成分に対して結合することもでき、その結果、偶然、または分子の自己アセンブリによって、これらの部分は粒子の形成の間に粒子の表面に局在化し、したがって、粒子の表面に埋め込まれるか、または表面の網目に捉えられる(enmeshed)ようになる。特定の実施形態において、PEGは、例えば、アミドを形成するために、粒子のカルボキシル基をPEGのアミン基と反応させることによってナノ粒子に共有結合する。部分は、その連結状態に応じて、または例えば、生分解性連結の切断後に、任意の順序で、または個々の構成成分の所望される活性を維持する任意の結合によって、形成された粒子の表面に結合することができる。ペンダント部分は、そのような部分もしくは構成成分の末端に存在する官能基を連結することによって、またはいずれかの構成成分の任意の位置に存在する適切な官能基を連結することによって、粒子あるいは構成成分に対して固定することができる。あるいは、様々な構成成分を、当該分野で周知であるように、鎖分子を介して間接的に連結することができる。
【0149】
多数の化学的架橋方法が公知であり、本発明の構築物の様々な部分の結合に潜在的に適用可能である。多くの公知の化学的架橋方法は非特異的であり、すなわち、これらは、分子の任意の特定の部位に対する結合点を指示しない。結果として、非特異的架橋剤の使用によって、機能部位を攻撃する、または活性部位を立体的にブロックする可能性があり、これによって結合された分子が不活化される可能性がある。
【0150】
単純な分子の結合については、多くの場合には、保護基、官能基選択性反応、または分子上の特定の部位の様々な立体的接近性を使用して、結合の位置を制御することが可能である。そのようなストラテジーは化学合成の分野の当業者に周知である。保護基としては、以下を含むペプチド合成の分野で公知のN末端保護基を挙げることができるが、これらに限定されない:t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンゾイル(Bz)、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(Fmoc)、トリフェニルメチル(トリチル)、およびトリクロロエトキシカルボニル(Troc)など。様々なN保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基またはt−ブチルオキシカルボニル基(Boc))、様々なカップリング試薬(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)、N−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(HATU)、カルボニルジイミダゾール、または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(HOBT)、および様々な切断条件:例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジオキサン中のHCl、有機溶媒(例えば、メタノールまたは酢酸エチル)、トリス(トリフルオロ酢酸)ホウ素、および臭化シアン中でのPd−Cの水素化、ならびに、中間体の単離および精製による溶液中での反応はペプチド合成の分野で周知であり、本発明の化合物の調製に同様に適用することができる。
【0151】
複合体分子のカップリング特異性を高めるための好ましいアプローチは、架橋される分子のうちの一方または両方で1回だけ見られる、または数回しか見られない官能基に対する直接的な化学結合である。例えば、多くのタンパク質においては、チオール基を含む唯一のタンパク質アミノ酸であるシステインは数個しか存在しない。また、例えば、ペプチドにリジン残基が含まれていない場合には、第1級アミンに特異的な架橋試薬は、そのペプチドのアミノ末端に選択的であろう。結合特異性を高めるためのこのアプローチの成功裏の利用には、分子が、分子の生物学的活性を失うことなく改変することができる分子の領域に適切な反応性残基を有していることが必要である。
【0152】
2つの構成成分の結合は、カップリング剤または結合剤によって行うことができる。利用することができる分子間架橋試薬がいくつか存在している。例えば、Means,G.E.and Feeney,R.E.,Chemical Modification of Proteins,Holden−Day,1974,pp.39−43を参照のこと。これらの試薬の中には、例えば、J−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)またはN,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド(これらはいずれもスルフヒドリル基に対して特異性が高く、不可逆的結合を形成する);N,N’−エチレン−ビス−(ヨードアセトアミド)、または6個から11個の炭素メチレン架橋を有している他のそのような試薬(スルフヒドリル基に対して比較的特異的である);ならびに、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(これは、アミノ基およびチロシン基と不可逆的な結合を形成する)が存在する。この目的のために有用な他の架橋試薬としては以下が挙げられる:p,p’−ジフルオロ−m,m’−ジニトロジフェニルスルホン(アミノ基およびフェノール基と不可逆的な架橋を形成する);アジプイミド酸ジメチル(アミノ基に特異的である);フェノール−1,4−ジスルホニルクロライド(主にアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアネートまたはジイソチオシアネート、またはアゾフェニル−p−ジイソシアネート(主にアミノ基と反応する);グルタルアルデヒド(いくつかの異なる側鎖と反応する)、およびビスジアゾベンジジン(主にチロシンおよびヒスチジンと反応する)。
【0153】
架橋試薬はホモ二官能性、すなわち、同じ反応を受ける2つの官能基を有し得る。好ましいホモ二官能性架橋試薬はビスマレイミドへキサン(「BMH」)である。BMHには、2つのマレイミド官能基が含まれ、これらは穏やかな条件(pH6.5〜7.7)下で、スルフヒドリルを含む化合物と特異的に反応する。2つのマレイミド基は、炭化水素鎖によって連結される。したがって、BMHは、システイン残基を含むペプチドの不可逆的な架橋に有用である。
【0154】
架橋試薬はまた、ヘテロ二官能性である場合もある。ヘテロ二官能性の架橋剤は2つの異なる官能基(例えば、アミノ反応基およびチオール反応基)を有し、これは、それぞれ遊離のアミンとチオールとを有している2つのタンパク質を架橋する。ヘテロ二官能性の架橋剤は、2つの化学的部分を結合させるためのより特異的な結合方法を設計する能力を提供し、それにより、ホモタンパク質ポリマーなどの望ましくない副反応の発生を減少させる。多種多様なヘテロ二官能性架橋剤が当該分野で公知である。ヘテロ二官能性架橋剤の例は、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC);4−スクシンイミジルオキシカルボニル−a−メチル−a−(2−ピリジルジチオ)−トルエン(SMPT)、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート]ヘキサノエート(LC−SPDP)スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、およびスクシンイミド4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、MBSの鎖が延びたアナログである。これらの架橋剤のスクシンイミジル基は第1級アミンと反応し、チオール反応性マレイミドはシステイン残基のチオールと共有結合を形成する。
【0155】
架橋試薬は、多くの場合は水中での溶解度が低い。親水性部分(例えば、スルホン酸基)を、その水溶性を改善するために架橋試薬に添加することができる。Sulfo−MBSおよびsulfo−SMCCは、水溶性が修飾された架橋試薬の例である。
【0156】
ヘテロ二官能性架橋剤の一部として有用な別の反応基はチオール反応基である。一般的なチオール反応基としては、マレイミド、ハロゲン、およびピリジルジスルフィドが挙げられる。マレイミドは、わずかに酸性から中性(pH6.5〜7.5)の条件下で、数分以内に遊離のスルフヒドリル(システイン残基)と特異的に反応する。ハロアルキル基(例えば、ヨードアセチル機能)は、生理学的pHでチオール基と反応する。これらの反応基はいずれも、安定なチオエーテル結合の形成を生じる。
【0157】
ヘテロ二官能性の架橋剤に加えて、ホモ二官能性架橋剤および光反応性架橋剤を含む多数の他の架橋剤が存在している。スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、ビスマレイミドへキサン(BMH)、およびピメルイミド酸ジメチル−2HCl(DMP)が、有用なホモ二官能性架橋剤の例であり、ビス−[β−(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド(BASED)とN−スクシンイミジル−6(4’−アジド−2’−ニトロフェニル−アミノ)ヘキサノエート(SANPAH)とが、本発明での使用に有用な光反応性架橋剤の例である。タンパク質の結合技術の概要については、参照により本明細書に組み込まれるMeansら、(1990)Bioconjugate Chemistry 1:2−12を参照のこと。
【0158】
多くの架橋試薬によって、細胞性の条件下では原則として切断することができない結合が得られる。しかし、いくつかの架橋試薬には、細胞性の条件下で切断可能なジスルフィドなどの共有結合が含まれる。例えば、ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)(DSP)、トラウトの試薬(Traut’s reagent)、およびN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)は、周知の切断可能な架橋剤である。切断可能な架橋剤試薬の使用により、治療薬などの部分を、標的への送達後に構築物から分離することが可能となり得る。直接的なジスルフィド結合もまた有用であり得る。さらに別の切断可能な連結が当該分野で公知であり、これは、本発明の特定の実施形態において有利になるように使用することができる。
【0159】
化合物(例えば、タンパク質、標識、および他の化学的部分)をヌクレオチドに連結するための多くの方法が当該分野で公知である。いくつかの新しい架橋試薬(例えば、n−マレイミドブチリルオキシ−スクシンイミドエステル(GMBS)およびsulfo−GMBS)は、低い免疫原性を有している。置換基は、Ogilvie,K.K.ら、Pure and Appl Chem(1987)59:325によって、およびFroehler,B.C,Nucleic Acids Res(1986)14:5399(これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる)によって記載されているように、アミダイトまたはH−ホスホネート化学を使用して予め構築されたオリゴヌクレオチドの5’末端に結合している。置換基はまた、参照により本明細書に組み込まれる、Asseline,U.ら、Tet Lett(1989)30:2521,によって記載されているように、オリゴマーの3’末端にも結合している。この最後の方法では、アクリジン部分を有している3’ホスホン酸塩からジイソプロピルアミンを置き換えるために固体支持体に結合した2,2’−ジチオエタノールが利用され、これはその後、リンの酸化後に欠失する。他の置換基は、ポリリジンを含む別の方法(Bayard,B.ら、Biochemistry(1986)25:3730;Lemaitre,M.ら、Nucleosides and Nucleotides(1987)6:311,これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる)によってオリゴマーの3’末端に結合しており、加えて、ジスルフィドが、参照により本明細書に組み込まれるZuckerman,R.ら、Nucleic Acids Res(1987)15:5305によって記載されているように、3’末端に様々な基を結合させるために使用されている。3’末端で置換されているオリゴヌクレオチドが、エキソヌクレアーゼによる分解に対して高い安定性および高い耐性を示すことは公知である(Lancelot,G.ら、Biochemistry(1985)24:2521;Asseline,U.ら、Proc Natl Acad Sci USA(1984)81:3297、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる)。オリゴヌクレオチドに非ヌクレオチド部分を結合させるさらに別の方法は、米国特許第5,321,131号および同第5,414,077号において議論されている。
【0160】
あるいは、オリゴヌクレオチドには、塩基にリンカーアームを介して結合した基を有している1つ以上の修飾されたヌクレオチドが含まれる場合がある。例えば、Langerら(参照により本明細書に組み込まれる、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,78(11):6633−6637,1981)には、アリルアミンリンカーアームによる、dUTPのC−5位に対するビオチンの結合が記載されている。ビオチンおよび他の基のピリミジンの5位へのリンカーアームを介する結合はまた、米国特許第4,711,955号でも議論されている。ピリミジンの5位または他の位置に結合した、リンカーアームを介して標識されたヌクレオチドはまた、米国特許第4,948,882号でも示唆されている。二官能性アミンでのシトシンのN.sup.4位の亜硫酸水素塩によって触媒される伝達(transmission)は、Schulmanら(Nucleic Acids Research,9(5):1203−1217,1981)およびDraperら(参照により本明細書に組み込まれる、Biochemistry,19:1774−1781,1980)によって記載されている。この方法により、化学的部分が、シチジンまたはシチジン含有ポリヌクレオチドに対してリンカーアームを介して結合する。シチジンのN4位へのビオチンの結合は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,828,979号に開示されており、N位でのシチジンに対する部分の結合はまた、米国特許第5,013,831号および同第5,241,060号(これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる)に示されている。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,407,801号には、オリゴヌクレオチド三本鎖の調製が記載されており、ここでは、リンカーアームが、亜硫酸水素塩によって触媒される伝達によってデオキシシチジンに結合している。リンカーアームには、アミノアルキルリンカーアームまたはカルボキシアルキルリンカーアームが含まれる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,405,950号には、リンカーアームがシトシン塩基のN4位に結合したシチジンアナログが記載されている。
【0161】
上記で議論されたものを含む多数の架橋試薬が市販されている。それらの使用についての詳細な説明は、商業的な供給業者から容易に入手できる。タンパク質の架橋および結合体の調製についての一般的な参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる、S.S.Wong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,CRC Press(1991)である。
【0162】
化学的架橋には、スペーサーアーム、すなわち、リンカーまたは鎖の使用が含まれ得る。スペーサーアームにより、分子内可撓性が提供され、または結合した複数の部分の間の分子内距離が調整され、それによって、生物学的活性の保存を助けることができる。スペーサーアームは、スペーサーアミノ酸が含まれているペプチド部分の形態であり得る。あるいは、スペーサーアームは、架橋試薬(例えば、「長鎖SPDP」)の一部である場合もある(参照により本明細書に組み込まれる、Pierce Chem.Co.,Rockford,I11.,カタログ番号21651H)。
【0163】
様々なカップリング剤または架橋剤(例えば、プロテインA、カルボジイミド、ジマレイミド、ジチオ−ビス−ニトロ安息香酸(DTNB)、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、およびN−スクシンイミジル−3−(2−ピロド−イルジチオ)プロピオネート(SPDP)、6−ヒドラジノニコチミド(HYNIC)、NS、およびNを、標的化された構築物を合成するための周知の手順において使用することができる。例えば、ビオチンは、参照により本明細書に組み込まれるHnatowichら、Int.J.Appl.Radiat.Isotop.33:327(1982)の二環式無水物方法(bicyclic anhydride method)を使用して、DTPAを介してオリゴヌクレオチドに結合することができる。
【0164】
加えて、スルホスクシンイミジル6−(ビオチンアミド)ヘキサノエート(NHS−LC−ビオチン(Pierce Chemical Co.Rockford,I11.から購入することができる)、「ビオシチン」、ビオチンのリジン結合体は、第1級アミンの利用可能性に起因して、ビオチン化合物を作成するために有用であり得る。加えて、対応するビオチン酸塩化物または酸前駆体は、公知の方法によって治療薬のアミノ誘導体と結合されてよい。粒子の表面にビオチン部分を結合させることによって、別の部分をアビジンに結合させることができ、その後、強いアビジン−ビオチン親和性によって粒子に結合させることができ、またその逆の場合もある。
【0165】
同様の方法を使用して、低分子、タンパク質、またはそのような修飾が必要な他の物質に表面改変剤を連結させることができる。
【0166】
粒子に粒子の表面上のPEG部分が含まれている特定の実施形態において、PEGの遊離のヒドロキシル基を、粒子に対するさらに別の分子または部分の連結あるいは結合(例えば、共有結合)のために使用することができる。
【0167】
画像化標識は、ポリマーまたは表面改変剤の原子に対して直接または間接的に共有結合することによって粒子に結合してよく、あるいは、標識は、キレート構造を介して、または補助的な分子(例えば、マンニトール、グルコン酸塩、グルコヘプタン酸、酒石酸など)を介して、粒子と非共有結合的に、または共有結合的に会合する場合もある。
【0168】
任意の適切なキレート構造を使用して、共有結合または非共有結合的会合によって放射性核種と粒子との間の空間的接近性が提供される場合がある。多くのそのようなキレート構造は当該分野で公知である。好ましくは、キレート構造は、N構造、NS構造、N構造、イソニトリル含有構造、ヒドラジン含有構造、HYNIC(ヒドラジノニコチン酸)−含有構造、2−メチルチオニコチン酸含有構造、カルボキシレート含有構造などである。いくつかの場合には、キレート化は、放射性核種が粒子中の、または粒子からぶら下がっている原子(単数または複数)に対して、例えば、ポリマーもしくはポリエチレングリコールである表面改変剤中の酸素原子に対して直接キレート化するので、別のキレート構造を含むことなく行うことができる。
【0169】
放射性核種は、粒子の構成成分、または粒子の表面からぶら下がっている部分に対する特異的な放射性核種のキレート化、会合、または結合を行うかあるいは最適化する公知の手順を使用して粒子に対して空間的に接近して配置することができる。例えば、123Iが放射性核種である場合には、造影剤は、公知の放射性ヨウ素化手順(例えば、クロラミンTでの直接の放射性ヨウ素化)、ハロゲンまたは有機金属基の放射性ヨウ素化交換など)にしたがって標識することができる。放射性核種が99mTcである場合には、造影剤は、リガンド分子に99mTcを結合するのに適している任意の方法を使用して標識することができる。好ましくは、放射性核種が99mTcである場合には、補助的な分子(例えば、マンニトール、グルコン酸塩、グルコヘプタン酸塩、または酒石酸塩)が、キレート構造とともに、またはキレート構造を伴わずに、標識化反応混合物に含まれる。さらに好ましくは、99mTcは、マンニトールおよび標的分子の存在下でスズを用いて99HiTcOを還元させることによって、標的分子に対して空間的に接近して配置される。他の還元剤(酒石酸スズ、またはスズ以外の還元剤、例えば、亜ジチオン酸ナトリウムを含む)を使用して、本発明にしたがって造影剤を作製することもできる。
【0170】
一般的には、標識の方法論は、放射性核種の選択、標識される部分、および研究されている臨床症状に応じて様々である。99mTcおよび111Inを使用する標識方法は、例えば、以下に記載されている:Peters,A.M.ら、Lancet 2:946−949(1986);Srivastava,S.C.ら、Semin.Nucl.Med.14(2):68−82(1984);Sinn,H.ら、Nucl.Med.(Stuttgart)13:180,1984);McAfee,J.G.ら、J.Nucl.Med.17:480−487,1976;McAfee,J.G.ら、J.Nucl.Med.17:480−487,1976;Welch,M.J.ら、J.Nucl.Med.18:558−562,1977;McAfee,J.G.ら、Semin.Nucl.Med.14(2):83,1984;Thakur,M.L.ら、Semin.Nucl.Med.14(2):107,1984;Danpure,H.J.ら、Br.J.Radiol.,54:597−601,1981;Danpure,H.J.ら、Br.J.Radiol.55:247−249,1982;Peters,A.M.ら、J.Nucl.Med.24:39−44,1982;Gunter,K.P.ら、Radiology 149:563−566,1983;およびThakur,M.L.ら、J.Nucl.Med.26:518−523,1985(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)。
【0171】
粒子は、強磁場NMRスペクトル、ならびに、IR、MS、および旋光度の標準的な方法を使用して特性決定することができる。元素分析、TLC、および/またはHPLCは、純度の測定として使用することができる。少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%;より好ましくは少なくとも約95%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも約98%の純度が好ましい。TLCおよび/またはHPLCもまた、そのような化合物を特性決定するために使用することができる。
【0172】
一旦調製されると、候補の粒子は、粘膜関門を越えてそれらの生物活性剤(単数または複数)を運ぶ能力についてスクリーニングすることができる。候補の粒子はまた、運ばれる生体活性剤が核酸である場合には、細胞をトランスフェクトする能力についても試験することができる。加えて、粒子の安定性は、血清(例えば、ヒト血清)中で化合物をインキュベートすること、そして化合物の潜在的な分解を経時的に測定することによって試験することができる。安定性はまた、化合物を被験体(ヒトまたはヒト以外)に対して投与すること、様々な時間(例えば、30分、1時間、24時間)で血液試料を得ること、そして血液試料を誘導された、または関連する代謝物について分析することによっても決定することができる。
【0173】
「薬物」、「治療薬」、または「医薬品」は、ヒトまたは動物の体に局所的に、あるいは全身的に作用する、生物学的に、生理学的に、または薬物動態学的に活性な物質である。本発明の組成物には、任意の活性物質が含まれ得る。
【0174】
粘膜関門を越えて隣接している組織または流体中に粒子によって運ばれ得る様々な形態の医薬品または薬物を使用することができる。これらは、酸性のものである場合も、塩基性のものである場合も、また塩である場合もある。これらは中性の分子である場合も、極性分子である場合も、また、水素結合することができる分子複合体である場合もある。これらは、エーテル、エステル、アミドなどの形態であり得、ヒトまたは動物の体内に注射されると、例えば、エステルまたはアミドの切断によって生物学的に活性化されるプロドラッグが含まれる。鎮痛薬もまた、「医薬品」の一例である。本発明の組成物中の任意のさらに別の医薬品は、組成物の目的に応じて幅広く変化し得る。用語「医薬品」には、ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患もしくは疾病の処置、予防、診断、治癒、または緩和のために使用される物質;体の構造または機能に影響を与える物質;あるいは、それらが予め定められた生理学的環境に入れられた後に生物学的に活性に、またはそれ以上に活性になるプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。
【0175】
当該分野で公知である可塑剤および安定剤は、本発明の粒子中に取り込まれ得る。特定の実施形態において、可塑剤および安定剤などの添加剤は、それらの生体適合性について選択される。特定の実施形態において、添加剤は肺表面活性剤(例えば、1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびL−α−ホスファチジルコリン(PC))である。
【0176】
他の実施形態において、球形化促進剤が、一般的に球形である本発明の粒子の生産を容易にする。ゼイン、微結晶性セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムで同時に処理された微結晶性セルロースなどの物質は、本発明の組成物に可塑性を付与する場合があり、さらには、強度および完全性を与える場合もある。特定の実施形態において、球形化の間に、剛性であるが可塑性ではない成型されたもの(extrudate)は、ダンベル状に成型された粒子の形成、および/または高い微粒子率を生じ、そして、可塑性であるが剛性ではない成型されたものは、塊となり、過度に大きい粒子を形成する傾向がある。そのような実施形態において、剛性と可塑性との間でのバランスが所望される。処方物中の球形化促進剤の割合(%)は、通常は、10から90%(w/w)である。特定の実施形態において、本発明の組成物には賦形剤が含まれる。特定の賦形剤は、選択される溶媒(例えば、ポリマーおよび/または治療薬を溶解する溶媒)中でのその融点、溶解度、そして、得られる粒子の特性に基づいて選択され得る。
【0177】
賦形剤は、本発明の組成物のうちの数パーセントまで、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、またはそれ以上の割合を占める場合がある。
【0178】
緩衝液、酸、または塩基は、それらのpHを調整するために、本発明の組成物中に取り込まれ得る。ポリマーマトリックスから放出された薬剤の拡散距離を大きくするための物質もまた含まれる場合がある。
【0179】
4.用途:治療用組成物および診断用組成物
一部において、本発明のポリマー粒子には、(上記の、もしくは当該分野で公知の、状況に応じた任意の他の生体適合性ポリマー、および状況に応じた生体分解性ポリマーを含む)上記で議論された任意のポリマーなどの生体適合性ポリマー、および好ましくは、生体分解性ポリマーが含まれる。本発明により、1つ以上の粒子を含む薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、治療用組成物、および/または診断用組成物もしくは画像化用組成物であり得る。
【0180】
A.本発明の組成物の物理的構造
本発明の粒子(例えば、マイクロ粒子、または好ましくは、ナノ粒子)には、ポリマーマトリックスが含まれる場合がある。マイクロ粒子には、通常、生体分解性ポリマーマトリックスおよび生物活性剤が含まれる。例えば、生物活性剤は、ポリマーマトリックスにカプセル化されるか、または吸着される。マイクロ粒子は、当業者に公知の多種多様な技術によって形成することができる。マイクロ粒子形成技術の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:(a)乳化およびその後の有機溶媒の蒸発による相分離(油中水エマルジョン、水中油エマルジョン、および水油水エマルジョンなどの複雑な乳化方法を含む);(b)コアセルベーション相分離;(c)融解分散(melt dispersion);(d)界面蒸着(interfacial deposition);(e)インサイチュ重合;(f)噴霧乾燥、および噴霧凝固(spray−congealing);(g)気中懸濁コーティング(air−suspension coating);ならびに、(h)パンコーティング(pan coating)およびスプレーコーティング。これらの方法、ならびにマイクロ粒子の特性および特徴は、例えば、米国特許第4,652,441号;同第5,100,669号;同第4,526,938号;WO93/24150;EPA0258780 A2;米国特許第4,438,253号;および同第5,330,768号に開示されている(これらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0181】
本発明の粒子を調製するためには、所望される送達媒体の用途に応じて、いくつかの方法を使用することができる。適切な方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥、風乾、減圧乾燥、流動床乾燥(fluidized−bed drying)、粉砕、共沈、および臨界流体抽出(critical fluid extraction)が挙げられるが、これらに限定されない。噴霧乾燥、凍結乾燥、風乾、減圧乾燥、流動床乾燥、および臨界流体抽出の場合には;構成成分(安定化ポリオール、生体活性物質、緩衝液など)は、最初に、水性条件中に溶解されるか、または懸濁される。共沈の場合には、構成成分は、以下に記載されるように有機条件中で混合され、そして処理される。噴霧乾燥を用いて、生体活性物質とともに粒子を負荷することができる。成分は、水性条件下で混合され、そして、乾燥チャンバにて極めて均一な液滴を生成するために、精密なノズルを使用して乾燥される。適切な噴霧乾燥機構としては、製造業者の説明書にしたがって使用されるBuchi,NIRO,APV and Lab−プラント噴霧乾燥機が挙げられるがこれに限定されない。
【0182】
マイクロ粒子およびナノ粒子の形状は、走査型電子顕微鏡または透過電子顕微鏡によって決定することができる。球形に成型されたナノ粒子は、(例えば、血流を循環させるために)特定の実施形態において使用される。所望される場合には、粒子は、公知の技術を使用して、特異的な用途にさらに有用な他の形状に加工される場合がある。
【0183】
治療薬の細胞内送達に加えて、本発明の組成物の粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)がエンドサイトーシスを受け、それによって細胞へと接近できるようにすることもまた可能である。そのようなエンドサイトーシスプロセスの頻度は、おそらく、任意の粒子の大きさに依存するであろう。
【0184】
B.本発明の組成物の投与量および処方物
ほとんどの実施形態においては、本発明のポリマーには、診断的、予防的、もしくは治療的処置の一部として、治療有効量の取り込まれた治療薬または他の物質を患者に送達するために十分な量で送達される物質が取り込まれるであろう。粒子中の活性化合物の所望される濃度は、薬物の吸収、不活化、および排泄速度、さらには、本発明の組成物からの化合物の送達速度に応じて様々であろう。投与量の値は、緩和される症状の重篤度に応じて変動してもよいことに留意されたい。さらに、任意の特定の被験体については、特異的な投薬レジメンは、個々の必要性、および組成物を投与するかまたは組成物の投与を監督する専門医の判断にしたがって、経時的に調整される必要があることがさらに理解される。通常、投薬は、当業者に公知の技術を使用して決定されるであろう。
【0185】
さらに、生体活性物質の量は、選択される薬剤の相対的な効力に応じて様々であろう。加えて、任意の特定の治療薬についての最適な濃度および/または分量もしくは量は、処置パラメータの変動にしたがって調整することができる。そのような処置パラメータとしては、特定の調製物のポリマー組成、利用される治療薬の実態、および調製物が入れられる臨床的用途(例えば、処置される部位、患者のタイプ(例えば、ヒトまたはヒト以外、成人または子供)、ならびに疾患または症状の性質)が挙げられる。
【0186】
所定の本発明の組成物についての任意の治療薬または吸着もしくはカプセル化された材料の濃度および/または量は、動物(例えば、ラット)における日常的に行われているスクリーニングによって、適切なアッセイを使用して対象の物質の濃度および/または量の範囲をスクリーニングすることによって、容易に特定することができる。公知の方法はまた、本発明の治療用処方物の投与の前および後に、局所組織濃度、粒子からの拡散速度、および局所的な血流をアッセイするためにも利用できる。1つのそのような方法は、T.E.Robinsonら、1991,MICRODIALYSIS IN THE NEUROSCIENCES,Techniques,第7巻,第1章にまとめられている微小透析である。Robinsonによってまとめられている方法は、以下のように、簡単に適用することができる。微小透析ループが、試験動物にインサイチュで配置される。透析流体がループを介してポンプで汲み上げられる。本発明の粒子がループの近くに注入されると、放出された薬物が、それらの局所組織濃度に比例して透析液中に回収される。有効成分の拡散の進行は、既知の有効成分濃度を使用する適切な較正手順を用いることによって決定することができる。
【0187】
特定の実施形態において、本発明の組成物の投与量は、治療薬または他のカプセル化された物質の血漿濃度を基準として決定することができる。例えば、最大血漿濃度(Cmax)と、0時から無限までの血漿濃度−時間の曲線下面積が使用され得る。
【0188】
本発明の組成物は、当該分野で周知であるように、それらの意図される用途に応じて様々な手段によって投与することができる。例えば、本発明の組成物が経口投与される場合には、これは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、またはシロップ剤として処方され得る。あるいは、本発明の処方物は、注射(静脈内、筋肉内、または皮下)、点滴用の調製剤、または坐剤として非経口投与され得る。眼粘膜経路による適用については、本発明の組成物は、点眼薬または眼科用軟膏として処方され得る。これらの処方物は、従来の手段によって調製することができ、そして所望される場合には、本発明の組成物は、任意の従来の添加剤(例えば、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、矯味薬、可溶化剤、懸濁補助剤、乳化剤、またはコーティング剤)と混合することができる。
【0189】
加えて、特定の実施形態において、本発明の組成物は凍結乾燥される場合があり、また、噴霧乾燥などの別の適切な乾燥技術に供される場合もある。
【0190】
本発明の組成物は、一部において、組成物の放出速度、および所望される投与量に応じて、1回で投与される場合も、また、様々な時間的間隔で投与される多数回の小さい用量に分けられる場合もある。
【0191】
本発明の方法において有用な処方物としては、経口投与、鼻腔投与、局所投与(口腔投与および舌下投与を含む)、直腸投与、膣投与、エアゾール投与、および/または非経口投与に適している処方物が挙げられる。処方物は、単位投薬形態で提示され得ることが便利であり得、そして調剤学の分野で周知の任意の方法によって調製することができる。1用量を得るために担体材料と混合することができる本発明の組成物の量は、処置される被験体、および特定の投与様式に応じて様々であり得る。
【0192】
これらの処方物または組成物を調製する方法としては、本発明の組成物を、担体、そして状況に応じて、1つ以上の副成分と混合する(bring in combination)工程が含まれる。一般的には、処方物は、本発明の組成物を液体担体と、または、細かく分割された固体担体と、またはそれらの両方と均一に、そして完全に混合すること、そしてその後、必要に応じて、生成物を成型することによって調製される。
【0193】
本発明にしたがって吸入器またはエアゾール処方物で投与することができる粒子(特に、ナノ粒子)には、吸入治療に有用な1つ以上の薬剤(例えば、アジュバント、診断薬、造影剤、または治療薬)が含まれる。
【0194】
特定の医薬品の粒子の大きさは、エアゾール処方物を投与すると肺内に実質的に全ての医薬品が吸入されるような大きさである必要があり、したがって、望ましくは、20ミクロン未満、好ましくは、1から10ミクロンの範囲、例えば、1から5ミクロンの範囲であろう。医薬品の粒子の大きさは、従来の手段によって、例えば、ミリング(milling)または微粒子化によって、小さくすることができる。
【0195】
最終的なエアゾール処方物には、処方物の全重量に対して、0.005〜90%w/w、好ましくは、0.005〜50%、より好ましくは、0.005〜5%w/w、特に、0.01〜1.0%w/wの医薬品が含まれることが望ましい。
【0196】
本発明の処方物には、成層圏のオゾンの分解を引き起こす可能性がある構成成分は含まれないことが望ましいが、このことは必ずしも必要ではない。具体的には、処方物には、フロンガス(例えば、CClF、CCl、およびCFCCl)は実質的には含まれない。本明細書で使用される場合は、「実質的には含まれない」は、推進剤の系を基準にして1%w/w未満、具体的には、0.5%未満、例えば、0.1%またはそれ未満を意味する。
【0197】
推進剤には、状況に応じて、推進剤よりも高い極性および/または高い沸点を有しているアジュバントが含まれる場合がある。使用することができる極性アジュバントとして、(例えば、C2−6)脂肪族アルコール、およびポリオール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、およびプロピレングリコール(好ましくは、エタノール))が挙げられる。一般的には、極少量の極性アジュバント(例えば、0.05〜3.0%w/w)が、分散液の安定性を改善するために必要であり得る。5%w/wを超える量の使用は、医薬品を溶解する傾向がある場合がある。本発明の処方物には、好ましくは、1%w/w未満、例えば、約0.1%w/wの極性アジュバントが含まれ得る。しかし、本発明の処方物は、極性アジュバント(特に、エタノール)を実質的には含まないことが好ましい。適切な揮発性アジュバントとしては、飽和炭化水素(例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、およびイソペンタン)ならびにアルキルエーテル(例えば、ジメチルエーテル)が挙げられる。一般的には、推進剤の50%w/wまでの揮発性のアジュバント、例えば、1から30%w/wの揮発性の飽和C1〜C6炭化水素が含まれ得る。
【0198】
状況に応じて、本発明のエアゾール処方物にはさらに、1つ以上の界面活性剤が含まれる場合がある。界面活性剤は、吸入によって投与される際に生理学的に許容される必要がある。以下のような界面活性剤がこのカテゴリーに含まれる:L−α−ホスファチジルコリン(PC)、1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、オレイン酸、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、天然レシチン、オレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、ステアリルポリオキシエチレン(2)エーテル、ラウリルポリオキシエチレン(4)エーテル、オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロックコポリマー、合成レシチン、ジエチレングリコールジオレエート、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノリシノール酸グリセリル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール400、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンズアルコニウム、オリーブ油、モノラウリン酸グリセリル、トウモロコシ油、菜種油、およびひまわり種油。好ましい界面活性剤は、レシチン、オレイン酸、およびソルビタントリオレエートである。
【0199】
本発明の処方物は、適切な容器中の選択された推進剤および/または共推進剤(copropellant)中の粒子の分散によって(例えば、超音波処理の助けを借りて)調製することができる。好ましくは、粒子は共推進剤中に懸濁され、適切な容器に充填される。その後、容器のバルブが所定の位置に密閉され、従来の様式でのバルブから圧送注入によって推進剤が導入される。このようにして、粒子は液体推進剤中に懸濁され得るかまたは溶解され得、計量式バルブを有している容器中に密閉され得、そしてアクチュエータに充填され得る。そのような計量式用量吸入器は当該分野で周知である。計量式バルブは、10から500μL、そして好ましくは、25から150μLを計測することができる。特定の実施形態において、分散は、粒子(例えば、乾燥粉末として留まる)用の乾燥粉末吸入器(例えば、スピンヘーラ(spinhaler))を使用して行うことができる。他の実施形態において、ナノスフェアを、水性流体中に懸濁させることができ、そして肺内にエアゾール状にして投与するために微細液滴になるように霧状にすることができる。
【0200】
超音波ネブライザは、粒子の分解を引き起こし得る剪断に薬剤が曝されることを最小にするので、使用可能である。通常、水性のエアゾールは、従来の薬学的に許容される担体および安定剤とともに粒子の水溶液または懸濁液を処方することによって作製される。担体および安定剤は、特定の組成物の必要性に応じて変化するが、通常は、非イオン性界面活性剤(Tweens、Pluronics、またはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害なタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸類、緩衝剤、塩類、糖類、または糖アルコール類が含まれる。エアゾールは、一般的には、等張性溶液から調製される。
【0201】
眼科用処方物、眼科用軟膏、散剤、溶液剤などもまた、本発明の範囲にあると意図される。
【0202】
非経口投与に適している本発明の特定の薬学的組成物には、1つ以上の本発明の組成物が、1つ以上の薬学的に許容される滅菌性の、等張性の、水性の、もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液、またはエマルジョン、あるいは、使用の直前に滅菌の注射可能な溶液剤または分散剤に再構成することができる滅菌の散剤(これには、意図されるレシピエントの血液、または懸濁化剤もしくは増粘剤と処方物とを等張性にする、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、溶質が含まれる場合がある)と組み合わせて含まれる。
【0203】
本発明の薬学的組成物において使用することができる適切な水性担体および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、植物性油(例えば、オリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング物質の使用によって、分散液の場合には必要な粒子の大きさの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0204】
マイクロ粒子および/またはナノ粒子組成物は、薬学的に許容される溶液(例えば、生理食塩水、Ringer溶液、デキストラン溶液、デキストロース溶液、ソルビトール溶液、ポリビニルアルコールを含む溶液(約1%から約3%、好ましくは、約2%)、または界面活性剤(例えば、Tween80またはTween20)および粘性増強物質(例えば、ゼラチン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)を含む浸透圧によって平衡化される溶液)中に懸濁させることができる。特定の実施形態において、組成物は皮下投与される。他の実施形態において、組成物は静脈内投与される。静脈内送達のためには、組成物は、平均して約15ミクロン未満、より具体的には約10ミクロン未満、より具体的には約5ミクロン未満、そしてなおさらに具体的には約5ミクロン未満の平均直径のマイクロ粒子またはナノ粒子として処方されることが好ましい。
【0205】
経口投与に適している処方物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ドロップ剤(香味付けされた基剤、通常は、スクロースおよびアカシア、またはトラガカントを使用する)、散剤、顆粒剤の形態であってよく、あるいは、水性もしくは非水性の液体中の溶液または懸濁剤であってよく、あるいは、油中水または水中油の液体エマルジョンであってよく、あるいは、エリキシル剤またはシロップ剤であってよく、あるいはトローチ剤(不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用する)であってよい。これらにはそれぞれ、有効成分として所定量の本発明の組成物が含まれる。本発明の組成物はまた、ボーラス、舐剤、またはペースト剤として投与される場合もある。
【0206】
経口投与のための固体の投薬形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)においては、本発明の組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体および/または以下のうちの任意のものと混合される:(1)充填剤または増量剤(例えば、デンプン類、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸);(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシア);(3)保湿剤(例えば、グリセロール);(4)崩壊剤(例えば、寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム);(5)溶液緩染剤(例えば、パラフィン);(6)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物);(7)湿潤剤(例えば、アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール);(8)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト粘土);(9)潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物);ならびに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合には、薬学的組成物には、緩衝剤も含まれる場合がある。同様のタイプの固体の組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、さらには、高分子量のポリエチレングリコールなどを使用する、軟質および硬質の充填用ゼラチンカプセルにおいて充填剤として使用することができる。
【0207】
錠剤は、状況に応じて1つ以上の補足的成分とともに圧縮または成型することによって作成され得る。圧縮された錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムデンプン、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面改変剤または分散剤を使用して調製することができる。成型された錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らされた本発明の組成物の混合物を適切な機械において成型することによって作製することができる。錠剤、および他の固体の投薬形態(例えば、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤)は、状況に応じて、分割される場合も、また、コーティングおよび殻(腸溶コーティングおよび薬学的処方の分野で周知の他のコーティング)を用いて調製される場合もある。
【0208】
経口投与のための液体の投薬形態としては、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。本発明の組成物に加えて、液体の投薬形態には、当該分野で一般的に使用されている不活性な希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、安定化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、菜種油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物が含まれる場合がある。
【0209】
懸濁剤には、本発明の組成物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天、およびトラガカント、ならびにそれらの混合物が含まれる場合がある。
【0210】
直腸投与または膣投与用の処方物は、本発明の組成物を1つ以上の適切な非刺激性担体(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックス、またはサリチル酸塩を含む)と混合することによって調製することができ、そして室温では固体であるが、体内では液体であり、したがって、適切な体腔で融解して、カプセル化されている粒子を放出する、坐剤として提示される場合がある。膣投与用の例示的な処方物には、避妊薬、または抗ウイルス薬、抗真菌剤、もしくは抗生物質である生物活性剤が含まれ得る。
【0211】
膣投与に適している処方物にはまた、適切であることが当該分野で公知であるそのような担体が含まれている、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、発泡剤、噴霧処方物も含まれる。
【0212】
経皮投与のための投薬形態としては、散剤、噴霧剤、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ、および吸入器(inhalant)が挙げられる。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体とともに、そして必要であり得る任意の保存剤、緩衝液、または推進剤とともに、滅菌条件下で混合することができる。経皮投与のために、複合体には、所望される水溶性および輸送特性を得るために、親水性基および疎水性基が含まれる場合がある。
【0213】
軟膏、ペースト剤、クリーム剤、およびゲル剤には、本発明の組成物に加えて、他の担体(例えば、動物性油および植物性油、油類、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン類、ベントナイト類、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物)が含まれる場合がある。散剤および噴霧剤には、本発明の組成物に加えて、賦形剤(例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはそのような物質の混合物)が含まれる場合がある。噴霧剤にはさらに、通常使用されている推進剤(例えば、クロロフルオロヒドロカーボン類、および揮発性の未置換の炭化水素(例えば、ブタンおよびプロパン))が含まれる場合がある。
【実施例】
【0214】
例証
本発明は、本明細書に概して記載され、単に本発明の特定の態様および実施形態の説明の目的で含まれる以下の実施例を参照すればさらに容易に理解されるであろう。これらは本発明を限定するようには意図されない。
【0215】
1.材料および方法
1.1 頸膣粘液および嚢胞性線維症の粘液の収集および準備
頸膣粘液の収集手順は、これまでに公開されているように行った(参照により本明細書に組み込まれる、Boskey,ER,Moench,TR,Hees,PS & Cone,RA(2003)Sexually Transmitted Diseases 30,107−109)。収集した粘液は、4時間以内に顕微鏡試験に使用した。新しい試料の粘性は、Brookfield円錐平板粘度計(CP−40スピンドルを有しているModel HADV−III;Brookfield Engineering Lab,Middleboro,MA.)において、37℃で剪断速度の関数として観察した。
【0216】
ヒトの呼吸器の唾液を、男性および女性のCF患者(年齢18〜35)から吐き出させた。複数の患者に由来するCFの唾液試料をプールし、凍結乾燥し、そして、大量の均質なCFの唾液を得るために、4℃で攪拌することによって唾液緩衝剤中に再構成した。再構成したCFの唾液試料に加えた唾液緩衝剤の容量を、質量測定によって決定した(再構成したCF唾液は、新しいCF唾液試料と等しい質量を有していた)。
【0217】
1.2 ナノ粒子調製物および特性決定
100〜500nmの黄色−緑色の蛍光のカルボキシル修飾されたポリスチレン(PS)粒子(Molecular Probes,Eugene,OR)を、製造業者によって示唆されているプロトコールにしたがって、3:1の過剰量でのカルボキシル−アミン反応によって、ジアミンPEG(MW約2kDa;Nektar Therapeutics,San Carlos,CA)で共有結合的に修飾した。分子量3,400ダルトンのジアミンポリエチレングリコール(PEG)(Nektar Therapeutics,San Carlos,CA)を、pH6.0の50mMの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES,Sigma,St Louis,MO)緩衝剤中に溶解した。ジアミンPEGの使用によって、表面結合したPEG鎖の末端に遊離のアミン基が生じる場合がある。黄色−緑色の蛍光のポリスチレンナノスフェア(Molecular Probes,Eugene,OR)を溶液に添加すると、10mgのPEG/mlおよび1%の固体/mlの最終濃度が得られた。ナノスフェアは100nmの直径を有しており、カルボキシル修飾されていた。室温で15分間のインキュベーションの後、EDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド)(Sigma,St Louis,MO)を、4mg/mlの濃度になるように混合物に添加した。溶液のpHを希NaOHで6.5に調整し、室温で2時間、オービタル振とう器(orbital shaker)にてインキュベートした。反応を停止させるために、グリシン(JT Baker,Phillipsburg,NJ)を、100mMの最終濃度となるように添加した。溶液を室温で30分間インキュベートし、その後、300,000kDaのMWCO Float−a−lyzer(Spectrum Laboratories,Rancho Dominguez,CA)でDulbeccoのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して十分に透析した。未修飾のマイクロスフェアを同様に透析して、製造業者によってもともと加えられていたアジ化ナトリウムを全量除去した。
【0218】
大きさおよびξ電位を、それぞれ動的光散乱およびレーザードップラー流速計によって、Zetasizer 3000(Malvern Instruments,Southborough,MA)を使用して決定した。大きさの測定は25℃にて90°の散乱角で行った。試料は2倍量の蒸留水で希釈し、機器の説明書にしたがって測定を行った。
【0219】
1.3 粒子に対するタンパク質の吸着−PEG化の有効性の測定
PEGの付着を確認し、PEGによるタンパク質吸着に抵抗する効力を定量するために、10μLのCOOH−粒子およびPEG修飾粒子(約0.04質量%)を、200μLの0.1mg/mLのローダミン蛍光NeutrAvidin(Molecular Probes,Eugene,OR)に添加し、オービタル振とう器で1時間インキュベートした。その後、粒子をPBS中で2回洗浄し、0.008質量%の最終濃度になるように再懸濁し、100×/1.4 NA油浸レンズを備えた共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 510,Carl Zeiss Inc.,Thornwood,NY)を使用して観察し、密封したガラススライド/カバーガラス上で観察した。試料を488および543レーザーで励起させ、ピンホールを0.7〜0.8μm未満の範囲の光学的切片が得られるように調整した。同じ励起および検出の設定を維持し、全ての試料を連続して試験した。アビジンインキュベーションを行っていない粒子をネガティブ対照として、無視できる程度の漂白を超えることを確実にした(to ensure negligible bleach over)。グレースケールへの変換の後、それぞれの粒子についての最大ピクセル強度を、SCION Image 4.03bを使用して分析した。
【0220】
1.4 頸膣粘液およびCF粘液中の多粒子追跡(multiple particle tracking)(MPT)
粒子の運搬速度は、100×の油浸対物レンズ(開口数1.3)が備え付けられている倒立落射蛍光顕微鏡に取り付けたSITカメラ(silicon−intensified target camera)(VE−1000,Dage−MTI,Michigan,IN)を使用して記録した、蛍光粒子の軌跡を分析することによって測定した。実験は、8ウェルのガラスチャンバ(LabTek,Campbell,CA)で行い、希釈した粒子溶液(0.0082%w/v)を、250−500μLの新しい粘液に対して3%v/vの最終濃度となるように添加し(最終粒子濃度8.25×10−7w/v)、顕微鏡観察の前に2時間インキュベートした。n>100個の粒子の軌跡をそれぞれの実験について分析し、3回の実験を個々の条件について行った。動画を、66.7msの時間分解能で20秒間、Metamorphソフトウェア(Universal Imaging Corp.)で捕捉した。軌跡の解像度は、強い接着で固定された粒子の移動を追跡することによって決定した場合には10nmであった。ナノ粒子の重心の座標を、時間平均二乗変位(MSD)に変換した<Δr(τ)>=[x(t+τ)−x(t)]+[y(t+τ)−y(t)](τ=時間尺度またはタイムラグ)。これから、MSDの分布および有効拡散係数を、以前に明らかにされているように計算した(Dawson,M,Wirtz,D & Hanes,J(2003)Journal of Biological Chemistry 278,50393−50401.,Valentine,MT,Perlman,ZE,Gardel,ML,Shin,JH,Matsudaira,P,Mitchison,TJ & Weitz,DA(2004)Biophys J 86,4004−14,Mason,TG,Ganesan,K,vanZanten,JH,Wirtz,D & Kuo,SC(1997)Physical Review Letters 79,3282−3285,これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)。2D粒子の追跡により3Dの運搬を測定するためのさらに別の情報は、最近のレビュー(参照により本明細書に組み込まれる、Suh,J,Dawson,M & Hanes,J(2005)Adv Drug Deliv Rev 57,63−78)に提供されている。
【0221】
CFの唾液中の数百個のPEG修飾された500nmのポリスチレン(PS−PEG)粒子(2%の粒子溶液の1:20希釈物の0.5容積%)の時間依存性平均二乗変位(MSD)を、多粒子追跡(MPT)によって決定した。粘液試料(200μL)を遠心分離し、上清の一部(40μL)を粘膜溶解薬の溶液またはPBSで置き換えて、粘液の固形物の初期濃度を維持し、希釈によるあらゆる作用を排除した。未処理の(PBS)対照中の粒子の移動は、遠心分離しなかった未処理の粘液試料中に包埋された粒子の移動と同じであった。グリセロール中の500nmのポリスチレンプローブを追跡することによって評価した追跡の解像度は5nmであった。
【0222】
1.5 粒子の運搬形式の分類
短い時間尺度および長い時間尺度にわたる粒子の運搬機構を、有効拡散係数(Deff)の相対的変化(RC)の概念に基づいて分類した。簡単に説明すると、短い時間尺度および長い時間尺度での粒子のRC値を、最も早い参照時間尺度でのDeffで、調べた時間尺度での粒子のDeffを割ることによって計算した。2種類の時間レジメン(すなわち、短い時間尺度および長い時間尺度)についてRC値を計算することによって、様々な長さおよび時間尺度にわたる粒子の運搬特性を記載する運搬形式を得ることができる。RCshortは、τref=0.2sおよびτprobe=1sで定義し、一方、RClongは、参照値τref=1sおよびτprobe=2sで見られた。RC標準曲線(時間尺度全体にわたって純粋なBrownian粒子についてのDeffの95%の分布範囲をプロットする)をモンテカルロシミュレーションに基づいて作成し、グリセロール中のポリスチレンナノ粒子を追跡することによって確認した(データは示さない)。短い時間尺度または長い時間尺度のいずれかについて97.5%の範囲を下回るRC値を示す粒子の運搬形式は、被妨害と分類し、残りを拡散と分類した。固定粒子は、1秒の時間尺度で10nm未満の解像度の平均MSDを示すものと定義した。運搬形式の分類の厳密性を、MSD対時間尺度のプロットの傾きから確認し、拡散粒子はおよそ1の傾きを有しており、妨害された粒子の傾きは、時間尺度が大きくなるに伴い1から徐々に小さくなった。
【0223】
2.結果および考察
2.1 ヒトの頸膣粘液およびそのレオロジー
頸膣(CV)粘液は、典型的なヒトの粘液分泌物(肺、GI管、鼻、眼、および精巣上体を含む)の範囲(高いほうの端点以内)の微視的粘性を示す。これは、それらの化学的組成の類似性に一部寄与する。例えば、ムチンの糖形態MUC5Bは、CV管、肺、鼻、および眼を保護している粘膜層中のムチンの主要な分泌形態である。ムチンの含有量はおよそ1〜3重量%であり、これもまた、子宮頸粘液、鼻粘液、および肺粘液の間で類似している。上記の粘液のタイプ中の水の組成は全て、90〜98%の範囲に入る。
【0224】
2.2 COOH修飾されたナノ粒子の実時間の運搬
本発明者らは、ヒトボランティアから得た頸膣(CV)粘液中での運搬速度に対する粒子の大きさの影響を決定した。動的光散乱によって特性決定した、水中に懸濁させた粒子の流体力学直径を図8に列挙する。CV粘液への比較的高濃度(2重量%の粒子)のコートされていない粒子の添加によって、粒子を捕捉した束状構造への粘液の繊維の崩壊が生じ、それらの運搬が妨げられる(データは示さない)。しかし、低濃度の粒子(0.008重量%の粒子)は、束状になることを引き起こすことはなく、粒子の移動を可能にした。予想したとおり、粒子の運搬は、それらの低い平均二乗変位(MSD)から明らかであるように、粘液の網目によって大きく妨害された(図1A)。COOH−PS粒子のアンサンブル平均有効拡散係数(Deff)は、粘液において予想したとおり、短い時間尺度では小さくなる(図2B)。粒子のMSD対時間尺度(τ)を方程式MSD=4Dτα(式中、Dは、時間尺度に依存する拡散係数である)に対してフィットさせることによって、αの平均値を得ることができ、これは、粒子の運動の妨害の程度についての知見を提供する(注:水中の粒子などの、妨げられていない純粋なBrownian拡散についてはα=1)。平均α値は、100、200、および500nmのCOOH−PS粒子について、それぞれ、0.16、0.36、および0.43であった。全体的には、(τ=1sで)粘液中の100、200、および500nmのCOOH−PS粒子のアンサンブル平均Deffは、水中の同じ粒子と比較すると、44000倍、590倍、および4600倍低くなった(図8)。
【0225】
全ての時間尺度にわたって、(200nmおよび500nmと比較した)100nmのCOOH−PS粒子の予想以上に低い運動性についての機構的理由を理解し始めるために、本発明者らは、粒子をそれらの計算したDeff(τ=1sで)に基づいて、10個のグループに分類した(図1C)。100nmのCOOH−PS粒子のうちの最も早い10%は、200nmおよび500nmのCOOH−PS粒子と比較して、ほぼ同様のDeffを有していたが、200nmおよび500nmのCOOH−PS粒子についての平均のDeffの値は、全ての他のサブグループについての100nmのCOOH−PS粒子(すなわち、粒子のうちの最も遅い90%)の平均のDeff値よりも大きかった。これは、100nmのCOOH−PS粒子のより遅いアンサンブル運動性の主な原因である。全ての大きさの個々の粒子のDeffは広範囲にわたり、それぞれの粒子の大きさの範囲にある最も速い粒子および最も遅い粒子は、少なくとも4桁の大きさで異なる(図1C)。
【0226】
2.3 PEG修飾されたナノ粒子の実時間の運搬
親水性であり、電荷を有していないポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)を、CV粘液と粒子との相互作用を減少させるための試みにおいて、100、200、および500nmの粒子の表面に共有結合させた。PEGの付着の程度は、それらのほぼ中性の表面電荷、および蛍光標識されたアビジンの吸着への抵抗における類似する効力によって示されるように、全ての粒子について同程度であった(図8)。PEG化によって、同じ大きさの対応するCOOH−PS粒子と比較して、100、200、および500nmのPEG化粒子(PEG−PS)の、20倍、400倍、そして1100倍高いアンサンブルMSD(τ=1s)によって明らかであるように、粒子の運搬速度が大幅に大きくなった(図2A)。100nm、200nm、および500nmのPEG−PS粒子についてのDeff(τ=1s)は、水中でのそれらの拡散についての予想される値のものと比較して、わずか2000倍、6倍、および4倍低くなった。3種類の全ての大きさのPEG−PS粒子のアンサンブルDeffは、時間尺度が大きくなるに伴い、なおも低くなったが(図2B)、100nmのPEG−PS粒子だけは、運搬が大幅に妨害された(100nm、200nm、および500nmのPEG−PS粒子について、それぞれ、α=0.31、0.81、0.89)。PEG化によって、大きなPEG−PS粒子(200nmおよび500nm)についての妨害が減少しただけではなく、同様の大きさのCOOH−PS粒子と比較して、運搬の均一性が増大した(図2C)。
【0227】
特に、より大きな粒子についての、PEG化により大幅に改善された運搬速度は、粘膜付着性である粒子(固定粒子+妨害された粒子)の割合の大幅な減少が大きな理由であった(図2Dおよび2E)。実際、2kDaのPEGは、ほぼ70%にまで、粘液浸透性(拡散率)である粒子の割合を増大させた(図2F)。これは、粘液の理論上の網目の大きさについての以前に報告されている上限(200nm)よりも大きな非接着性ナノ粒子が、ヒトの粘液中で迅速に運搬され得ることを直接示している。
【0228】
2.4 高M.W.(10kDa)のPEGでコートされた粒子の特性
高MWのPEGは、粘膜付着剤として広く使用されている(Bures,P.,Y.Huang,E.Oral,and N.A.Peppas,Surface modifications and molecular imprinting of polymers in medical and pharmaceutical applications.J Control Release,2001.72(1−3):p.25−33,Huang,Y.,W.Leobandung,A.Foss,and N.A.Peppas,Molecular aspects of muco− and bioadhesion:tethered structures and site−specific surfaces.J Control Release,2000.65(1−2):p.63−71.,LeIe,B.S.and A.S.Hoffman,Mucoadhesive drug carriers based on complexes of poly(acrylic acid) and PEGylated drugs having hydrolysable PEG−anhydride−drug linkages.J Control Release,2000.69(2):p.237−48.,Peppas,N.A.,K.B.Keys,M.Torres−Lugo,and A.M.Lowman,Poly(ethylene glycol)−containing hydrogels in drug delivery.J Control Release,1999.62(1−2):p.81−7.)。ナノ粒子についてのコーティングとしてのその効果を試験するために、10kDaのPEGを200nmの粒子の表面に共有結合させた(PEG10kDa−PS)。PEG2kDa−PS対応物と明確に対比するために、密度の高い10kDaのPEGでのコーティングを有している粒子は、2kDaのPEGで修飾された粒子と比較される2300倍低いアンサンブルMSD(τ=1s)によって明らかであるように、新しいヒトCV粘液において粒子の運搬速度の大幅な低下を示した(図3A)。実際、PEG10kDa−PSの運搬についての広範囲に及ぶ妨害によって、同様の大きさのCOOH−PS粒子のアンサンブルMSDよりもほぼ6倍小さいアンサンブルMSD(τ=1s)が生じた。これは、固定粒子と強く妨害された粒子(すなわち粘膜付着性)の両方の高い割合に大きな原因がある(図3B)。理論に束縛されることは望ましくないが、低MWのPEGは、水素結合と、粘液ゲルへのPEG鎖の相互浸透との両方を最小にすることによって粘膜付着を排除し、一方、粒子の表面からさらに延びる長い可撓性の鎖を有している高MWのPEGは、拡散を遅らせる様式で粘液ゲルに浸透する。しかし、高MWのPEGで粒子を修飾するための別のアプローチでは、ペンダントPEG鎖の長さおよび可撓性を制御することができ、それによって、耐粘液性の表面特性が得られる。
【0229】
2.5 N−アセチルシステインはヒトCF唾液中でのナノ粒子の運搬を改善する。
【0230】
粘液を分解する物質(例えば、rhDNase(直鎖のDNAを加水分解する)およびN−アセチル−システイン(NAC)(ムチン中に存在するジスルフィド結合およびスルファヒドリル結合を切断する))は、粘液のクリアランス速度を大きくするために臨床的に使用されている(Hanes,J.,M.Dawson,Y.Har−el,J.Suh,and J.Fiegel,Gene Delivery to the Lung.Pharmaceutical Inhalation Aerosol Technology,AJ.Hickey編,Marcel Dekker Inc.:New York,2003:p.489−539)。これらの物質はまた、粘液中のナノ粒子の輸送速度の増大においてアジュバントとして有用である場合もある(Ferrari,S.,C.Kitson,R.Farley,R.Steel,C.Marriott,D.A.Parkins,M.Scarpa,B.Wainwright,MJ.Evans,W.H.Colledge,D.M.Geddes,およびE.W.Alton,Mucus altering agents as adjuncts for nonviral gene transfer to airway epithelium.Gene Ther,2001.8(18):p.1380−6)。これまでに、本発明者らは、多粒子追跡を使用してCF粘液中での粒子の運搬速度に対するrhDNaseの効果を定量した(図4)。個々の粒子の運搬速度の分布は、未処理の対照に比べて、rhDNAでの処置の30分後には明らかに均一であった(図4Aと4Bとを比較)。しかし、バルクの粘弾性特性の50%を超える低下(図4C)にもかかわらず、rhDNaseでの処理によって、実際に、ナノ粒子の全体的なアンサンブル平均運搬速度が低下した(図4D)。rhDNAseで粘液を処理するための別のアプローチ(例えば、異なるインキュベーション時間および異なる緩衝剤)によって、粘膜溶解薬としてのその有用性が改善される場合がある。対照的に、NACでの処理によって、ナノ粒子の運搬速度が有意に改善された(図4E)。
【0231】
アンサンブル幾何平均二乗変位は、中和されたN−アセチル−L−システインでの粘液の事前の処理によって、未処理の対照と比較して、運搬速度が10.7倍増大したことを示している(図5A)。様々な運搬形式(固定、被妨害、拡散)への粒子の運動の軌跡の分類は、500nmのPEG−PSの拡散粒子の割合が、未処理の対照と比較して3倍増大したことを示している(図5B)。
【0232】
2.6 粒子の軌跡
CV粘液中を運搬される粒子の典型的な軌跡を記録し、顕微鏡によって定量化した。粒子を3つの一般的なカテゴリーに分けた:固定(図6A)、被妨害(図6B)、および拡散(図6C)。
【0233】
2.7 PEG表面のコーティングの定量
未希釈のヒト粘液中でのポリマーナノ粒子の迅速な運搬は、おそらく、PEGの改良された表面コーティングの直接的な結果である。これまでに、低いPEG密度を有している、500nmのPEGでコートされた粒子(WO2005/072710 A2の実施例6Bに開示されている)(調製物A、図7)は、同様の大きさのコートされていない粒子と比較して、約10倍、運搬を改善することが明らかにされている。対照的に、より高い表面PEG密度(調製物B、図7)は、同様の大きさのコートされていない対応物と比較すると、最大で約1100倍の、500nmの粒子の運搬の改善を媒介することができた。このことは、粘液中での粒子の輸送を決定付けることにおける、高密度の表面のPEGコーティングの重要性を直接強調している。
【0234】
参考文献
本明細書に記載した全ての刊行物および特許は、それぞれの個々の刊行物または特許が、具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれることが示されるかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0235】
等価物
当業者は、本明細書に記載された本発明の特異的な実施形態に対する多くの等価物を認識し、またはそれらを常套の実験以上のものを使用することなく確認できるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれるように意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面と、粒子の粘膜付着を減少させる該外表面に配置された1つ以上の表面改変部分とを含む粒子であって、該粒子が1秒の時間尺度で水を通って拡散する拡散率の1/1000よりも大きな拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散する、粒子。
【請求項2】
外表面と、該外表面に配置された1つ以上の表面改変部分とを含む粒子であって、それにより、1秒の時間尺度で4×10−2μm/sより大きい拡散率でヒトの頸膣粘液中を移動する、粒子。
【請求項3】
外表面と、粒子の粘膜付着を減少させる該外表面に配置された1つ以上の表面改変部分とを含む粒子であって、10mV未満のゼータ電位を有する、粒子。
【請求項4】
外表面と、粒子の粘膜付着を減少させる該外表面に配置された1つ以上の表面改変部分とを含む粒子であって、該表面改変部分の質量が、該粒子の質量のうちの少なくとも1/3400を占める、粒子。
【請求項5】
外表面と、粒子の粘膜付着を減少させる該外表面に配置された1つ以上の表面改変部分とを含む粒子であって、平均最大蛍光強度によって計算される場合、該表面改変部分を含まない対応粒子によって吸着される蛍光標識されたアビジンの量の10%未満を吸着する、粒子。
【請求項6】
外表面と、粒子の粘膜付着を減少させる該外表面に配置された1つ以上の表面改変部分とを含む粒子であって、該表面改変部分が、1平方ナノメートルあたり0.01単位より大きい密度で該外表面上に存在する、粒子。
【請求項7】
0.067秒から3.0秒までの時間尺度の関数としての前記粒子集団の平均二乗変位の指数法則フィットの指数が0.5を超える、請求項1から6のいずれかに記載の粒子。
【請求項8】
前記粒子が、前記1つ以上の表面改変部分を含まない対応する大きさかつ密度のカルボキシル修飾されたポリスチレン(PS)粒子がヒトの頸膣粘液を通って拡散する拡散率よりも20倍超大きい1秒の時間尺度での拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散し、該カルボキシル修飾が、1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在する、請求項1から7のいずれかに記載の粒子。
【請求項9】
前記粒子が、ヒトの頸膣粘液中で、前記1つ以上の表面改変部分が含まれていない対応する大きさかつ密度のカルボキシル修飾されたポリスチレン(PS)粒子についての幾何平均二乗変位よりも20倍超大きい1秒の時間尺度での頸膣粘液中での幾何平均二乗変位を有しており、該カルボキシル修飾が、1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在する、請求項1から8のいずれかに記載の粒子。
【請求項10】
前記粒子が、ヒトの頸膣粘液中で、前記1つ以上の表面改変部分が含まれていない対応する大きさかつ密度のカルボキシル修飾されたポリスチレン(PS)粒子よりも50倍超大きい1秒の時間尺度での拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散し、該カルボキシル修飾が、1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在する、請求項1から9のいずれかに記載の粒子。
【請求項11】
前記粒子が粘液中を移動する1秒の時間尺度での幾何平均二乗変位は、前記1つ以上の表面改変部分を含まない対応する大きさかつ密度のカルボキシル修飾されたポリスチレン(PS)粒子がヒトの頸膣粘液中を移動する幾何平均二乗変位よりも100倍超大きく、該カルボキシル修飾が、1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在する、請求項1から10のいずれかに記載の粒子。
【請求項12】
コアが含まれている、請求項1から11のいずれかに記載の粒子。
【請求項13】
前記コアにポリマーが含まれている、請求項12に記載の粒子。
【請求項14】
前記ポリマーに、前記外表面に配置された表面改変部分が含まれている、請求項13に記載の粒子。
【請求項15】
前記ポリマーがコポリマーであり、前記1つ以上の表面改変部分に、前記粒子の前記外表面に局在化された該コポリマーの領域が含まれている、請求項14に記載の粒子。
【請求項16】
リポソーム、金属もしくは金属酸化物、または量子ドットである、請求項1から11のいずれかに記載の粒子。
【請求項17】
1つ以上の生物活性剤が前記粒子と会合している、請求項1から16のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項18】
前記1つ以上の生物活性剤が前記粒子にカプセル化されている、請求項17に記載の粒子。
【請求項19】
前記1つ以上の生物活性剤が前記粒子の表面上に配置されている、請求項17に記載の粒子。
【請求項20】
前記1つ以上の生物活性剤が前記粒子に共有結合されている、請求項17に記載の粒子。
【請求項21】
前記1つ以上の生物活性剤と前記粒子に非共有結合的に会合している、請求項17に記載の粒子。
【請求項22】
1nmを超える直径である、請求項1から21のいずれかに記載の粒子。
【請求項23】
20nmを超える直径である、請求項1から22のいずれかに記載の粒子。
【請求項24】
200nmを超える直径である、請求項1から23のいずれかに記載の粒子。
【請求項25】
500nmを超える直径である、請求項1から24のいずれかに記載の粒子。
【請求項26】
前記生物活性剤が造影剤または治療薬である、請求項1から25のいずれかに記載の粒子。
【請求項27】
前記生物活性剤が診断薬である、請求項26に記載の粒子。
【請求項28】
前記生物活性剤が、検出可能標識をさらに含む造影剤である、請求項26に記載の粒子。
【請求項29】
前記生物活性剤が核酸、核酸アナログ、低分子、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、脂質、または界面活性剤である、請求項26に記載の粒子。
【請求項30】
1つ以上の標的部分がさらに含まれている、請求項1から29のいずれかに記載の粒子。
【請求項31】
前記1つ以上の表面改変部分が前記粒子の表面の親水性を高める、請求項1から30のいずれかに記載の粒子。
【請求項32】
前記1つ以上の表面改変部分に炭水化物が含まれている、請求項1から31のいずれかに記載の粒子。
【請求項33】
前記1つ以上の表面改変部分にポリエチレングリコールが含まれている、請求項1から31のいずれかに記載の粒子。
【請求項34】
請求項1から33のいずれかに記載の粒子と、1つ以上の薬学的に許容される担体とが含まれている、薬学的組成物。
【請求項35】
請求項1から33のいずれかに記載の粒子が含まれている吸入器。
【請求項36】
患者に対して、請求項1から33のいずれかに記載の1つ以上の粒子を投与する工程が含まれる、患者の状態を処置、予防、または診断するための方法。
【請求項37】
前記1つ以上の粒子を前記患者の粘膜組織に局所投与する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記粒子が、粘液でコートされている組織で長い滞留時間を示す、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
患者に対して、請求項34に記載の薬学的組成物を投与する工程が含まれている、患者の状態を処置、予防、または診断するための方法。
【請求項40】
前記組成物を前記患者の粘膜組織に局所投与する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記粒子が、粘液でコートされている組織で長い滞留時間を示す、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
組成物中の粒子のうちの少なくとも10%が、請求項1から33のいずれかで定義された粒子である、複数の粒子が含まれている組成物。
【請求項43】
前記粒子が前記組成物のうちの少なくとも20%を構成する、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記粒子が前記組成物のうちの少なくとも50%を構成する、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
前記粒子が前記組成物のうちの少なくとも90%を構成する、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
前記組成物に2以上のタイプの粒子の混合物が含まれている、請求項42に記載の組成物。
【請求項47】
請求項1から33のいずれかで定義された第1の複数の粒子と、1秒の時間尺度で粒子が水を通って拡散する拡散率の1/1000未満の平均拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散する第2の複数の粒子とが含まれている、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記第1の複数の粒子が前記組成物中の全粒子のうちの少なくとも15%を構成する、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記第1の複数の粒子が前記組成物中の全粒子のうちの少なくとも40%を構成する、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記第1の複数の粒子が前記組成物中の全粒子のうちの少なくとも70%を構成する、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記第1の複数の粒子中の粒子は、該第1の複数の粒子中の粒子が水を通って拡散する拡散率の100分の1よりも大きな拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散する、請求項47〜50のいずれかに記載の組成物。
【請求項52】
前記第1の複数の粒子中の粒子は、該第1の複数の粒子中の粒子が水を通って拡散する拡散率の10分の1よりも大きな拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散する、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記第1の複数の粒子中の粒子は、該第1の複数の粒子中の粒子が水を通って拡散する拡散率の4分の1よりも大きな拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散する、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記第1の複数の粒子中の粒子が、対応するカルボキシル修飾されたポリスチレン(PS)粒子がヒトの頸膣粘液を通って拡散する拡散率よりも20倍超大きい拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散し、該カルボキシル修飾が、1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在する、請求項47から50のいずれかに記載の組成物。
【請求項55】
前記第1の複数の粒子中の粒子が、対応するカルボキシル修飾されたポリスチレン(PS)粒子がヒトの頸膣粘液を通って拡散する拡散率よりも50倍大きい拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散し、該カルボキシル修飾が、1.77から6.69カルボキシル/nmの密度で存在する、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記第2の複数の粒子が前記組成物中の全粒子のうちの少なくとも15%を構成する、請求項47から54のいずれかに記載の組成物。
【請求項57】
前記第2の複数の粒子が前記組成物中の全粒子のうちの少なくとも40%を構成する、請求項47から54のいずれかに記載の組成物。
【請求項58】
前記第2の複数の粒子のうちの20%未満が固定粒子である、請求項47から57のいずれかに記載の組成物。
【請求項59】
前記第2の複数の粒子のうちの70%未満が固定粒子または妨害された粒子である、請求項47から57のいずれかに記載の組成物。
【請求項60】
物質の粘膜付着を減少させる方法であって、粘液を通る拡散率を増大させる必要がある物質を同定する工程、該物質を表面改変部分で修飾する工程、および粘膜表面への局所投与に適している薬学的調製物中に該修飾された物質を処方する工程を含む、方法。
【請求項61】
前記修飾された物質を粒子として処方し、該粒子は、該粒子が1秒の時間尺度で水を通って拡散する拡散率の1/1000よりも大きな拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記物質に生物活性剤が含まれている、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記生物活性剤が、造影剤、診断薬、治療薬、検出可能標識を有している因子、核酸、核酸アナログ、低分子、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、脂質、または界面活性剤である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記表面改変部分が前記物質の親水性を高める、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記表面改変部分が炭水化物またはポリエチレングリコールである、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記表面改変部分および前記生物活性剤が共有結合されている、請求項61から65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記表面改変部分および前記生物活性剤が非共有結合的に会合している、請求項61から65のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
表面改変部分と会合している生物活性剤が含まれている、粘膜への局所投与に適している薬学的調製物。
【請求項69】
前記生物活性剤が、造影剤、診断薬、治療薬、検出可能標識を有している因子、核酸、核酸アナログ、低分子、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、脂質、または界面活性剤である、請求項68に記載の薬学的調製物。
【請求項70】
前記表面改変部分が前記生物活性剤の親水性を増強する、請求項68に記載の薬学的調製物。
【請求項71】
前記表面改変部分が炭水化物またはポリエチレングリコールである、請求項68に記載の薬学的調製物。
【請求項72】
前記生物活性剤が前記表面改変部分に対して共有結合されている、請求項68から71のいずれかに記載の薬学的調製物。
【請求項73】
前記生物活性剤が前記表面改変部分と非共有結合的に会合している、請求項68から71のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
表面改変部分が含まれている、エンベロープを持つウイルスであって、該ウイルスが、表面改変部分を含まない対応ウイルスがヒトの頸膣粘液を通って拡散する拡散率よりも20倍超大きい1秒の時間尺度での拡散率でヒトの頸膣粘液を通って拡散する、ウイルス。
【請求項75】
遺伝子操作されたウイルスである、請求項74に記載のウイルス。
【請求項76】
遺伝子治療用ベクターである、請求項74に記載のウイルス。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−502713(P2010−502713A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527422(P2009−527422)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/019522
【国際公開番号】WO2008/030557
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(398076227)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー (35)
【Fターム(参考)】