説明

粘着シート及びこの粘着シートの貼り付け方法

【課題】位置修正が容易で、位置修正時にシワが寄り難く、傾斜を抑えた貼り付けが可能な粘着シート及び粘着シートの貼り付け方法を提供する。
【解決手段】表面基材層1と表面基材層の片面に設けた粘着剤層と粘着剤層を被覆する剥離シートから成る粘着シートにおいて、剥離シートを3個以上に分割する切れ目4を、長辺5と交差する方向または短辺と交差する方向に有する。前記切れ目と交差する辺の長さを100としたときに、少なくとも1本の切れ目を端部から10〜15の位置に配置する。これにより、位置決めが容易で、傾斜を抑えた貼り付けができ、シワが寄り難く、容易に貼り付け位置の修正を行うことができる。表面基材層1の表側面を情報表示領域とすることで、ラベル、ステッカー、銘板の代替としても利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート及び粘着シートの貼り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、ラベル、ステッカー、シール、貼り薬等に多用されており、剥離シートを剥がし様々な被着体に貼り付けることができる手軽さを有している。近年では機器、産業用機器、各種の装置、工業用計器などの製品情報、製造者情報等を表示する銘板の代替としても使用されてきている。
銘板は、利用者の視認し易い位置に設置され、表記内容が正確に読み取れる事が必要であり、取り付け位置、傾斜には十分注意して設置される。
旧来、銘板は金属、プラスチック等の平板へ印刷、彫刻、刻印等の加工を施し、ねじ等により被着体へ固定していたが、ねじ切り、位置合わせに時間を要し、曲面への設置、設置位置の修正が困難であることから、手軽に設置できる粘着シートを用いることが多くなってきた。粘着シートは、図1に示すように、表面基材層1、粘着剤層2、剥離シート3を備える構造が多く使用されている。
【0003】
図2を用いてより詳細に説明すると、剥離シート3には表面基材層1の長辺の中央部分に長辺と直交する切れ目4が設けられている。利用者は、先ず一方の剥離シートaを剥がし、被着体の所定位置に貼り付け、位置決めした後、他方の剥離シートbを剥がし表面基材層1全体を貼り付ける。剥離シートの切れ目は必ずしも1本である必要はなく、後述する特許文献1に示されるように2本の切れ目を有するものも使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−042814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先に述べた切れ目を1本だけ有する粘着シートは、多くが表面基材層長辺の中点位置に切れ目を設けており、位置合わせ時に表面基材層全体の凡そ半分の面積を貼り付けることになる。そのため、傾斜して貼り付けた場合、その貼り付け位置を修正するために、表面基材層全体の凡そ半分の面積を剥がした後、貼り直す必要があり表面基材層にシワが寄ってしまう可能性が高い。
前記問題は、切れ目の位置を長辺の中央部分から端面部側にずらすことで解決できるが、粘着シートを貼り付ける作業者には利き腕があり、利き腕と逆側に切れ目があると極めて位置決めを行い難い。また、被着体の貼り付け位置によっては、左右あるいは上下どちらか一方向からのみ貼り付け可能となる場合があり、位置決めが困難となる。
【0006】
特許文献1に示される切れ目を2本有したものは、切れ目が表面基材層の端部間長さを三等分する位置に設けられているため、位置決め時、表面基材層の1/3の長さ分を貼り付けることになり、貼り付け位置を修正するには表面基材層全体の凡そ1/3の面積を一度剥がして貼り直しを行う必要があり、表面基材層にシワが寄る可能性が高い。
また、特許文献1に記載されるものは、中央の剥離シートを剥がし表面基材層中央部の貼り付けを行った後、両端部の剥離シートを剥がして表面基材層全体を貼り付けるものであり、正確に位置決めし傾斜を抑えて貼り付けることが困難である。
本発明は、貼り付け位置の修正が容易にでき、位置修正時にシワが寄り難く、傾斜の少ない貼り付けができる粘着シート及び粘着シートの貼り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のものに関する。
(1)表面基材層と表面基材層の片面に設けた粘着剤層と粘着剤層を被覆する剥離シートとを備え、前記剥離シートを3個以上に分割する切れ目を長辺と交差する方向または短辺と交差する方向に有し、前記切れ目と交差する辺の長さを100としたときに、少なくとも1本の切れ目を端部から10〜15の位置に配置した粘着シート。
(2)項(1)において、切れ目を2本とし、前記切れ目を各端部位置から等距離に夫々配置した粘着シート。
(3)項(1)又は(2)において、表面基材層の表側面を情報表示領域とした粘着シート。
(4)項(1)〜(3)のいずれかの粘着シートを用い、分割された剥離シートの幅の狭い端部側を剥がし、表面基材層の一部分を露出させ、貼り付け所定位置へ配置位置合せを行って被着体へ貼り付けした後、剥離シートの残部を剥がし、表面基材層全体を被着体へ貼り付ける粘着シートの貼り付け方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長辺と交差する方向または短辺と交差する方向の切れ目の位置が、前記切れ目と交差する辺の長さを100としたときに端部から10〜15の位置にあり、粘着シートを貼り付け位置に合わせるときの粘着面積が相対的に小さい。その結果、表面基材層を剥がすことが容易で、貼り直し時、シワが寄り難く、容易に貼り付け位置の修正を行うことができる。
また、切れ目を2本とし、前記切れ目を各端部から等距離に夫々配置した場合は、作業者の利き腕、貼り付け所定位置の制限に因らず同じ水準で貼り付けを行うことが容易にできる。
更に、表面基材層の表側面を情報表示領域とした場合は、ラベル、ステッカー、シールとして利用でき、銘板の代替としても利用することができる。
分割された剥離シートの幅の狭い端部側を剥がして表面基材層の一部を被着体へ貼り付けた後、剥離シートの残部を剥がして表面基材層全体を貼り付ける場合は、端部から貼り付けを開始するので、位置合わせが容易で傾斜を抑えた貼り付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来例である粘着シートの断面図を示す。
【図2】図1に示す粘着シートを剥離シート側から見た平面図を示す。
【図3】本発明に用いる切れ目の位置を表す剥離シートの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<表面基材層>
本発明にて述べる表面基材層は、大きさ、形状等は特に限定されるものではない。材質は特に制限されるものではないが、経年劣化、経年変色等が少ないことが好ましく、具体的には、コート紙、合成紙、耐溶剤フィルム、PETフィルム等を用いることができる。特にPETを用いることが、耐候性、耐酸性が良好であり好ましい。また、PETへアルミニウム、インジウム、錫等の金属を真空蒸着することにより金属光沢を出すことができ、蒸着を粘着剤層側に施すことにより蒸着面の耐傷性が確保できる。
表面基材層は、裏面側または表面側に印刷、印字ができ、特に、インクジェットプリンター等により滲みなく印刷できることが好ましい。
【0011】
<粘着剤層>
本発明にて述べる粘着剤層は、先に述べた表面基材層の片面側に形成されるものであり、被着体へ表面基材層を貼り付ける機能を有する。
粘着剤層には、経年変化による粘着力の低下が少ないものを用いることが好ましく、被着材の材質により様々な粘着剤を選択することができる。より具体的に述べると、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及び、エポキシ系粘着剤等を用いることができ、アクリル系粘着剤を用いることが、常温(25℃)での硬化時間が短く、充分な強度を有することから好ましい。
粘着剤層の形成は、カーテンコート、スプレーコート等粘着剤層の厚みに応じて選択することができるが、粘着剤の無駄が少なく、薄く均一に層形成ができることからスプレーコートにより行われることが好ましい。
【0012】
<剥離シート>
本発明にて述べる剥離シートは、前記粘着剤層を被覆するものであり、表面基材層と同じ大きさである必要はないが粘着剤層の塗布範囲を含む範囲以上の大きさを持つ必要がある。
また、剥離シートは、表面基材層を被着体へ貼り付ける前に剥がすものであるから、容易に剥離ができる事が必要であり、リサイクル可能な材質であれば更に好ましい。
剥離シートの材質としては、特に制限されるものではなく、例えば、リサイクルの容易な木材繊維製の離型紙にポリエチレン製の目止剤を塗布し、更にその上にシリコーン樹脂製の離型剤を塗布したものを用いることができる。
【0013】
図3を用いて詳細に説明すると、表面基材層1が楕円である場合、長辺5に対し交差する方向の切れ目4を配置する。
また、長辺5の長さを100としたとき、長辺端部から10〜15の位置に1本の切れ目4を配置し、もう一方の端部にも1本の切れ目を配置している。これにより、位置決め時に被着体へ貼り付ける粘着剤層の面積を粘着剤層全体の面積に対し十分に小さくすることができ、容易に位置修正を行うことができる。
まず、剥離シートaを剥がし被着体へ貼り付け、位置決めを行う。その後、剥離シートb、cを剥がし表面基材層1全体を貼り付ける。
切れ目の位置が長辺端部から10未満の場合、位置決め時の粘着面積が相対的に小さく、粘着不足が起こり、残りの剥離シートを剥がすときに位置ずれが起こり易くなる。15を超えると粘着面積が相対的に大きく、貼り付け位置修正時に被着体から剥がし難く、表面基材層にシワが寄り易くなる。
【0014】
切れ目は剥離シートを3個以上に分割できる本数であれば特に制限されるものではないが、加工工数を考えると2本とし、長辺の夫々の端部から等しい距離に配置することが好ましい。これにより、作業者の利き腕、被着体の貼り付け所定位置の制限に因らず同じ水準で貼り付けを行うことが容易にできる。
【0015】
<情報表示領域>
本発明にて述べる情報表示領域は、表面基材層の表側面(粘着剤層と逆面)に設けるもので、インク滲み等のないものを用いることが好ましい。より具体的には、感熱方式又は熱転写方式を用いて裏面側または表面側から印刷を行うことにより、耐候性、耐摩耗性が良い情報表示をできるので好ましい。
情報表示は、利用者が筆記具により直接記入しても、インクジェットプリンター、レーザープリンター等を用いても良く、特に限定されるものではない。
【0016】
<貼り付け方法>
本発明の剥離シートの貼り付け方法は、分割された剥離シートの幅の狭い端部側剥離シートを剥がして表面基材層の一部を露出させ、位置決めを行って被着体の所定の位置へ貼り付けた後、残りの剥離シートを剥がして表面基材層全体を貼り付ける。この方法で貼り付けると、端部から貼り付けを開始するので、位置合わせが容易で傾斜を抑えた貼り付けを行うことができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例について詳細に述べる。
【0018】
<粘着シートの作製>
縦:63mm、横:100mm、厚み:50μmのPET製の表面基材層を準備し、片側全面にアクリル系粘着剤をスプレーで塗布し粘着剤層を形成した。この粘着剤層を被覆するように、縦:66mm、横:103mm、厚み:73μmのグラシン(glassine)紙製剥離シートを付着させ、粘着シートを作製した。
被着体は、鉄製の箱体の側面とし、アルコール綿で洗浄後貼り付けを実施した。
【0019】
<実施例1>
スリッターを用いて、剥離シートに長辺と交差する方向の2本の切れ目を入れた。
切れ目の位置は、表面基材層の長辺端部から夫々10mm(表面基材層の長辺長さの10%)として作製した。
<実施例2>
実施例1の切れ目の位置を、表面基材層の長辺端部から夫々15mm(表面基材層の長辺長さの15%)とした。
<比較例1>
実施例1の切れ目の位置を、表面基材層の長辺端部から夫々5mm(表面基材層の長辺長さの5%)とした。
<比較例2>
実施例1の切れ目の位置を、表面基材層の長辺端部から夫々20mm(表面基材層の長辺長さの20%)とした。
<比較例3>
実施例1の切れ目の位置を、表面基材層の長辺端部から夫々25mm(表面基材層の長辺長さの25%)とした。
<比較例4>
実施例1の切れ目の位置を、表面基材層の長辺端部から夫々30mm(表面基材層の長辺長さの30%)とした。
<比較例5>
スリッターを用いて、剥離シートに長辺と交差する方向の1本の切れ目を入れた。
切れ目の位置は、表面基材層の長辺端部から50mm(表面基材層の長辺長さの50%)として作製した。
【0020】
<評価>
評価は、位置決めをするための仮止め評価と、粘着力評価の2つについて行った。
仮止め評価は、剥離シートの一方の端面側を剥がし、被着体へ表面基材層の一部分を貼り付けた後、位置修正のため表面基材層を剥がして再度貼り付けた際に、シワが寄らずに貼り付けることができたものを「○」とし、シワが寄ったものを「×」とした。
粘着力評価は、剥離シートの一方の端部側を剥がし、被着体へ表面基材層の一部分を貼り付けた後、貼り付け面に対し垂直方向へ人手により軽く引っ張り、剥がれないものを「○」とし、剥がれたものを「×」とした。
実施例1、2及び比較例1〜5について、仮止め評価及び粘着力評価の結果を、以下の表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1に示すように、実施例1、2の切れ目位置においては、仮止め後の位置修正ができ、粘着力が十分あり剥れない。
比較例1の切れ目位置においては、粘着力が弱く、位置決め作業中に粘着シートが剥れた。
比較例2〜5の切れ目位置においては、仮止め時の粘着力が強く、位置修正時にシワが寄った。
【符号の説明】
【0023】
1…表面基材層
2…粘着剤層
3…剥離シート
4…切れ目
5…長辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面基材層と表面基材層の片面に設けた粘着剤層と粘着剤層を被覆する剥離シートを備え、前記剥離シートを3個以上に分割する切れ目を長辺と交差する方向または短辺と交差する方向に有し、前記切れ目と交差する辺の長さを100としたときに、少なくとも1本の切れ目を端部から10〜15の位置に配置した粘着シート。
【請求項2】
請求項1において、切れ目を2本とし、前記切れ目を各端部位置から等距離に夫々配置した粘着シート。
【請求項3】
請求項1又は2において、表面基材層の表側面を情報表示領域とした粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの粘着シートを用い、分割された剥離シートの幅の狭い端部側を剥がし、表面基材層の一部分を露出させ、貼り付け所定位置へ配置位置合せを行って被着体へ貼り付けした後、剥離シートの残部を剥がして表面基材層全体を被着体へ貼り付ける粘着シートの貼り付け方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−219201(P2012−219201A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86977(P2011−86977)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】