説明

粘着剤及び貼付剤

【課題】COX−2阻害薬の経皮吸収性が十分に高い粘着剤及び貼付剤を提供すること。
【解決手段】(A)メロキシカム、ロルノキシカム、セレコキシブ及びこれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(B)親油性粘着基剤と、(C)N−メチルピロリドンと、(D)親水性ポリマーと、を含有する粘着剤、及び、支持体と、当該支持体の少なくとも一方の面上に積層され、上述の粘着剤からなる薬物層とを備える貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤及び貼付剤に関し、より詳しくは、メロキシカム、ロルノキシカム及びセレコキシブから選択されるCOX−2阻害薬を含有する粘着剤及び貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬物の投与法としては錠剤、カプセル剤、シロップ剤等を使用する経口投与法が知られているが、近年、これらの薬物を貼付剤により皮膚から投与する試みがなされている。貼付剤による投与法は、経口投与法における問題点の解消に加えて、投与回数の減少、コンプライアンスの向上、投与及びその中止の容易さ等の利点を有することから、特に老人や小児の患者の治療における有用な薬物の投与法として期待されている。
【0003】
しかしながら、正常皮膚の角質層は異物の体内への侵入を防ぐバリヤー機能を有しており、通常の貼付剤に用いられている基剤では配合された薬効成分の十分な経皮吸収が得られない場合が多い。また、角質層は脂溶性が高いことから、一般に薬物の透過性が著しく低い。そのため、貼付剤を用いて皮膚から薬物を投与する際には、皮膚の角質層を介する薬物の経皮吸収性を高めることが必要となる。
【0004】
一方、リウマチ性疾患群、関節炎、関節症性及び変性性関節疾患、疼痛等の治療に用いられる非ステロイド系抗炎症薬の中で、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)を選択的に阻害し、消化器系における副作用の危険性が低減される薬効群としてCOX−2阻害薬が近年開発されている。このようなCOX−2阻害薬によれば、従来の非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、例えばケトロラク、ジクロフェナク、ナプロキセン等で問題となっていた消化器系における副作用を最小限に抑えられる、又は副作用を起こさないという利点がある。
【0005】
すなわち、従来の非ステロイド抗炎症剤は、治療に用いられる用量で、炎症に伴う又は炎症を誘導するシクロオキシゲナーゼのCOX−2アイソフォームのみでなく、正常な細胞機能に必要なプロスタグランジンを産生するシクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)をも阻害するため、抗炎症、解熱、鎮痛の効果を発揮するとともに、消化器系における副作用が生じるという問題があった。これに対して、COX−2阻害薬は、COX−1を実質的に阻害せず、COX−2を選択的に阻害するため、抗炎症、解熱、鎮痛及びその他の有用な治療効果を発揮するが、副作用は最小限に抑えられる、又は副作用を起こさない。
【0006】
COX−2阻害薬としては、メロキシカム、ロルノキシカム、セレコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、バレコキシブ等が知られている。このようなCOX−2阻害薬は、主に経口投与法により投与されているが、最近、上述したような利点を有する貼付剤による投与が報告されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、COX−2阻害薬、特にバルデコキシブを含有し、さらに溶媒(溶解剤)としてN−メチルピロリドンを含有する貼付剤が開示されている。そして、貼付剤としては、活性物質が親油性マトリックス中に分散された「テープ剤」、及び活性物質が親水性マトリックス中に分散された「パップ剤」の2種類が開示されている。
特許文献2には、COX−2阻害薬、特にメロキシカムを含有し、さらに吸収促進剤として脂肪族アミン又はアミド化合物を含有する貼付剤(「プラスター剤(テープ剤)」及び「パップ剤」)が開示されている。
特許文献3には、COX−2阻害薬、特にロフェコキシブを含有する貼付剤が開示されている。
【特許文献1】特表2006−509762号公報
【特許文献2】特開2004−131495号公報
【特許文献3】特表2004−501971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の従来のCOX−2阻害薬含有貼付剤には、経皮吸収性が十分でないという問題点があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、COX−2阻害薬の経皮吸収性が十分に高い粘着剤及び貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、(A)メロキシカム、ロルノキシカム、セレコキシブ及びこれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(以下、(A)成分ともいう。)と、(B)親油性粘着基剤(以下、(B)成分ともいう。)と、(C)N−メチルピロリドン(以下、(C)成分ともいう。)と、(D)親水性ポリマー(以下、(D)成分ともいう。)とを含有する粘着剤により、上記目的を達成できることを見出した。
【0011】
このような貼付剤は、COX−2阻害薬(以下、「薬物」ともいう。)の経皮吸収性が十分に高く、かつ優れた抗炎症作用を奏する。このような効果の生じる理由は必ずしも明らかでないが、例えば次のようなことが考えられる。
【0012】
まず、例えば、水酸基やカルボキシル基等といった極性の官能基を有する親水性ポリマーが粘着剤中に存在することにより、極性の官能基が薬物と相互作用する。これにより薬物の親油性粘着基剤に対する親和性が低下し、経皮吸収性が向上することが考えられる。また、粘着剤中に溶解剤としてN−メチルピロリドンが存在することにより、粘着剤中の薬物が溶解される。これにより、経皮吸収に際して、粘着剤中に存在する薬物の全量が効果的に皮膚への分配に関与することができる状態となっていることも考えられる。これらに加えて、粘着剤中に親油性粘着基剤が存在することにより、粘着剤の製剤物性が向上するとともに薬物の皮膚透過性が向上することが考えられる。これらの化合物が組み合わせて用いられていることから、本発明の貼付剤は、薬物の経皮吸収性が十分に高いと考えられる。
【0013】
また、上記(D)成分は、水酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含むことが好ましく、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリアクリル酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、薬物の経皮吸収性がさらに向上する。
【0014】
また、上記(B)成分は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含むことが好ましい。これにより、薬物の経皮吸収性と貼付剤の製剤物性がともに向上する。
【0015】
本発明の貼付剤は、支持体と、当該支持体の少なくとも一方の面上に積層され、上述の粘着剤からなる薬物層とを備える。本発明の貼付剤は、上述の優れた効果を奏する粘着剤からなる薬物層を備えるため、薬物の経皮吸収性が十分に高い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、COX−2阻害薬の経皮吸収性が十分に高く、かつ優れた抗炎症作用を奏する粘着剤及び貼付剤が提供される。また、本発明の貼付剤は、皮膚への粘着性が良好であり、皮膚刺激が十分に小さく、長時間の保存安定性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中、特に断らない限り、「%」とは「質量%」を意味する。
【0018】
本発明の粘着剤は、(A)メロキシカム、ロルノキシカム、セレコキシブ及びこれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(B)親油性粘着基剤と、(C)N−メチルピロリドンと、(D)親水性ポリマーとを含有する。
【0019】
本発明の粘着剤は、COX−2阻害薬として(A)成分を含有するが、これは他のCOX−2阻害薬を含有することを妨げるものではない。例えば、エトリコキシブ、バルデコキシブ及びバレコキシブ等のようなCOX−2阻害薬をさらに含有していてもよい。
【0020】
(A)成分における「薬学的に許容されている塩」としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0021】
なお、粘着剤における(A)成分の配合量は、粘着剤に含有される化合物全量を基準として、0.1〜10%であることが好ましく、0.5〜6%であることが特に好ましい。配合量を0.1%以上とすることによって、0.1%未満の場合と比較して抗炎症作用が向上する。また、配合量を10%以下とすることによって、薬物の結晶が析出するおそれがなくなり、薬物の配合量を増やしたことによる効果を十分に得ることができる。
【0022】
(B)成分である親油性粘着基剤とは、水に溶解及び/又は膨潤しない粘着基剤であれば特に限定されないが、主に疎水性の成分から成り、実質的に水を含まず、水と混和しにくい粘着基剤を意味する。例えば、ゴム系の高分子エラストマーが挙げられる。ゴム系の高分子エラストマーとは、常温で弾性を有する高分子エラストマーを意味し、例えば、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマーが挙げられる。合成ゴムとしては、例えば、ポリイソブチレン、イソプレンゴム、シリコーンゴムが挙げられ、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴムが挙げられ、薬物の皮膚透過性と製剤物性との双方を向上させる観点から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。
【0023】
これらのゴム系高分子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とポリイソブチレンとを組み合わせて用いると薬物の皮膚吸収性と製剤物性との双方がより向上する傾向にあるので好ましい。スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体としては例えばクレイトンポリマー株式会社製のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:クレイトンD−1107、クレイトンD−1111)、日本合成ゴム社製のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:JSR5002、JSR5200)、日本ゼオン社製のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:クインタック3421)等が挙げられる。ポリイソブチレンとしては、例えばエクソンモービル社製のポリイソブチレン(商品名:ビスタネックス)等が挙げられる。
【0024】
なお、粘着剤における(B)成分の配合量は、粘着剤に含有される化合物全量を基準として、10〜90%であることが好ましい。配合量を10%以上とすることによって、10%未満である場合と比較して、製剤の保形性が向上する。また、配合量を90%以下とすることによって、90%を超える場合と比較して、柔軟性が良好になり皮膚への付着性が向上する。さらに、(B)成分としてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体と他のゴム系粘着剤とを組み合わせて用いる場合には、粘着剤に含有される化合物全量を基準として、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の配合量が7〜63%、その他のゴム系粘着剤の配合量が3〜27%であることが好ましい。これにより、薬物の皮膚透過性と製剤物性との双方をさらに向上させることができる。
【0025】
粘着剤における(C)成分の配合量は、粘着剤に含有される化合物全量を基準として、1〜20%であることが好ましく、2〜8%であることがより好ましい。配合量を1%以上とすることによって、1%未満である場合と比較して、経皮吸収性が向上する。また、配合量を20%以下とすることによって、20%を超える場合と比較して、粘着性が向上する。
【0026】
(D)成分の親水性ポリマーとは、水と混和しやすい性質があるポリマーを意味し、分子内にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基等の極性の官能基を有していたり、あるいは、分極した部分構造を有している。極性の官能基としてはカルボキシル基及び水酸基が好ましい。このような親水性ポリマーは、例えば、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、スターチ、キチン、アルブミン、カゼイン、ポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸塩誘導体、カルボキシビニルポリマー、ビニルピロリドン−アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン−スチレン共重合体、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ビニルアセテート−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリビニルアセテート−クロトン酸共重合体、N−ビニルアセトアミド系共重合体、ポリビニルスルホン酸、ポリイタコン酸、ポリヒドロキシエチルアクリレート、スチレン−マレイン酸無水物共重合体、アクリルアミド−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0027】
なお、粘着剤における(D)成分の配合量は、粘着剤に含有される化合物全量を基準として、1〜20%であることが好ましく、2〜10%であることが特に好ましい。配合量を1%以上とすることによって、1%未満の場合と比較して経皮吸収性が向上する。また、配合量を20%以上とすることによって、20%を超える場合と比較して、粘着性が向上する。
【0028】
本発明の粘着剤は、上述の(A),(B),(C)及び(D)成分以外にも、必要に応じて可塑剤、粘着性付与樹脂、吸収促進剤を含有していてもよい。
【0029】
可塑剤としては、特に限定されないが例えば、石油系オイル(流動パラフィン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等)、シリコンオイル、二塩基酸エステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等)、液状脂肪酸エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等)、多価アルコール(ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等)、トリアセチン、クエン酸トリエチル等が挙げられる。これらの可塑剤の中でも多価アルコール、流動パラフィン、液状ポリブテン、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシルがより好ましく、流動パラフィンが特に好ましい。これらの可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
粘着剤に可塑剤が配合される場合の配合量は、粘着剤に含有される化合物全量を基準として、5〜70%であることが好ましく、10〜60%であることが特に好ましい。配合量を5%以上とすることによって、5%未満である場合と比較して、高い軟化効果を示し、且つ付着力が向上する。また、配合量を70%以下とすることによって、70%を超える場合と比較して、製剤物性が向上する。
【0031】
粘着性付与樹脂としては、特に限定されないが例えば、ロジン誘導体(ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステル等)、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP100(荒川化学工業社製)等)、脂肪族系炭化水素樹脂(クイントンB−170(日本ゼオン社製)等)、テルペン樹脂(クリアロンP−125(ヤスハラケミカル社製)等)、マレイン酸レジン等が挙げられ、中でも水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂が好ましい。
【0032】
粘着剤に粘着性付与樹脂が配合される場合の配合量は、粘着剤に含有される化合物全量を基準として、5〜70%であることが好ましく、5〜60%であることが特に好ましい。配合量を5%以上とすることによって、5%未満である場合と比較して、粘着性付与樹脂の配合による粘着力向上効果が向上する。また、配合量を70%以下とすることによって、70%を超える場合と比較して、粘着剤を剥離する際の皮膚刺激性が低下する。
【0033】
吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物であれば特に限定されないが、例えば、炭素数6〜20の脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪族アミド、脂肪族エーテル類、芳香族有機酸、芳香族アルコール、芳香族有機酸エステル及び芳香族エーテル等が挙げられる。これらの化合物は飽和、不飽和のいずれであってもよく、また、直鎖状、分枝状、環状のいずれでもよい。さらに、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン(Azone)誘導体、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)、ポリソルベート系化合物(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系化合物(HCO系)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油等を吸収促進剤として用いることができる。これらの吸収促進剤の中でも、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、乳酸ラウリル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオロール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HCO−60、ピロチオデカン、オリーブ油が好ましく、ピロチオデカン、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、プロピレングリコールモノラウレート及びポリオキシエチレンラウリルエーテルがより好ましく、ピロチオデカン及びミリスチン酸イソプロピルが特に好ましい。これらの吸収促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
粘着剤に吸収促進剤が配合される場合の配合量は、粘着剤に含有される化合物全量を基準として、0.1〜20%であることが好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。配合量を0.1%以上とすることによって、0.1%未満の場合と比較して、吸収促進剤の配合による薬剤の皮膚透過性向上効果が向上する。また、配合量を20%以下とすることによって、20%を超える場合と比較して、皮膚への刺激性が低下する。
【0035】
さらに本発明の粘着剤は、必要に応じて抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤及び紫外線吸収剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0036】
抗酸化剤としては、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソールが好ましく;
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(例えばケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等)、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンが好ましく;
架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属又は金属化合物等の無機系架橋剤が好ましく;
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルが好ましく;
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体が好ましい。
【0037】
粘着剤にこれらの添加剤が配合される場合のそれぞれの配合量は特に限定されないが、これらの添加剤の合計量が、粘着剤に含有される化合物全量を基準として、0.01〜10%であることが好ましく、0.01〜5%であることが特に好ましい。
【0038】
上述した粘着剤はそれ単独で用いてもよいが、支持体上に薬物層として積層し、支持体と薬物層とを備える貼付剤として用いることが好ましい。なお、薬物層は支持体の少なくとも一方の面上に積層されていればよいが、薬物層が支持体の両面に積層されていてもよい。
【0039】
支持体としては、上記薬物層を支持し得るものであれば特に限定されず、伸縮性又は非伸縮性の支持体を用いることができる。かかる支持体としては、例えば、布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウムシート、又はこれらの複合素材からなるものが挙げられる。
【0040】
なお、支持体の厚みは特に限定されないが、5〜1000μmであることが好ましい。支持体の厚みを5μm以上とすることによって、5μm未満である場合と比較して、貼付する際の作業容易性が向上する。また、支持体の厚みを1000μm以下とすることによって、支持体の硬さ等による付着性への影響を防止することができる。
【0041】
本発明の貼付剤は、保管時、すなわち使用前は、薬物層を剥離ライナーで保護しておくことも可能である。剥離ライナーとしては、薬物層からの十分な剥離性を有するものであれば特に限定はされないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム及びポリテトラフルオロエチレンフィルム等を好適に用いることができる。
【0042】
本発明の貼付剤は、溶剤法、ホットメルト法等といった従来法により製造することができる。例えば、溶剤法により製造する場合には、予め粘着基剤成分と溶媒とを攪拌、混合した後に、薬物及びその他の成分と混合し、支持体又は剥離ライナーに展膏する。乾燥後、適切な大きさに裁断することにより本発明の貼付剤を得ることができる。また、ホットメルト法により製造する場合には、予め粘着基剤成分を高温にて攪拌、混合し溶解させた後に、薬物及びその他の成分と混合し、支持体又は剥離ライナーに展膏する。その後、適切な大きさに裁断することにより本発明の貼付剤を得ることができる。
【0043】
溶剤法により製造する場合に用いられる溶剤としては、例えば、低級アルコール、トルエン、酢酸エチル、ヘキサン及びシクロヘキサン等の製造溶媒が挙げられる。この中で、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、酢酸エチル及びシクロヘキサンが好ましく、特にトルエン及び酢酸エチルが好ましい。
【0044】
なお、支持体の代わりに剥離ライナーを用いて薬物層を形成した後に、支持体を貼り合わせることにより本発明の貼付剤を得ることもできる。
【0045】
また、本発明の貼付剤は、薬物層が上記のような組成からなり、それを支持する支持体を有するものであれば、その他の層やそれらを構成する成分は、特に限定されない。例えば、本発明の貼付剤は、支持体及び薬物層の他、薬物層上に設けられる剥離ライナーを含むことができる。
【0046】
薬物層の厚さは特に制限されないが、20〜200μmであることが好ましい。薬物層の厚さを20μm以上とすることによって、20μm未満である場合と比較して、薬物の皮膚透過性が向上する。また、薬物層の厚さを200μm以下とすることによって、貼付後に粘着剤が皮膚に付着したまま残存してしまう現象(粘着剤残り)を防止することができる。
【0047】
また、本発明の貼付剤によれば、活性な薬物の適用量についても、貼付剤を裁断すること等により、患者の症状、年齢、体重、性別等に応じて、容易に調節することができる。本発明の貼付剤の皮膚に接するべき薬物層の面積は特に限定されないが、1〜300cmであることが好ましく、10〜200cmであることがより好ましい。貼付剤の皮膚に接するべき薬物層の面積を1cm以上にすることによって、薬物の十分な皮膚透過性を維持することが容易となり、300cm以下にすることによって適用時の扱いが好適なものになる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例により、本発明の詳細を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0049】
(実施例1)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:クインタック3570C)17.90質量部、ポリイソブチレン(商品名:ビスタネックスLM−MH−LC)9.64質量部、水添ロジングリセリンエステル誘導体(商品名:KE−311)6.92質量部、及び、流動パラフィン(商品名:クリストール352)34.41質量部を約120℃にて攪拌、混合した。その後、N−メチルピロリドン8.0質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム3.0質量部、ピロチオデカン3.0質量部及びメロキシカム2.0質量部を攪拌、混合し、ポリエチレンテレフタレート製剥離ライナーに塗布し、支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を張り合わせて実施例1の貼付剤を得た。
【0050】
(実施例2〜5)
(A),(B),(C),(D)成分及び添加剤を表1に示す通りとした他は、実施例1と同様にして実施例2〜5の貼付剤を得た。なお、表1中の数値は質量部を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
(比較例1〜4)
(A),(B),(C),(D)成分及び添加剤を表2に示す通りとした他は、実施例1と同様にして比較例1〜4の貼付剤を得た。なお、表2中の数値は質量部を示す。
【0053】
【表2】

【0054】
(皮膚透過性試験)
ヘアレスマウス背部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター側層として、32℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセルに装着した。次に、皮膚の角質層側に実施例1〜5及び比較例1〜4の貼付剤(製剤適用面積5cm)を貼付し、レセプター層としてリン酸緩衝液を用いて5ml/hrで3時間毎に48時間までレセプター溶液をサンプリングし、その流量を測定すると共に、高速液体クロマトグラフィーを用いて薬物濃度を測定した。得られた測定値から1時間当たりの薬物透過速度を算出し、定常状態における皮膚の単位面積当たりの薬物透過速度を求めた。その結果を表1及び表2に示す。
【0055】
これらの結果からも明らかであるように、薬物がメロキシカムである、実施例1〜4の貼付剤は比較例1〜3の貼付剤に比べ、顕著な薬物の皮膚透過性の向上が認められた。さらにピロチオデカンを添加した、実施例1〜3の貼付剤においては薬物の皮膚透過性がさらに向上した。
【0056】
また、薬物がロルノキシカムである実施例5及び比較例4の場合においても、実施例5の貼付剤は、比較例4の貼付剤に比べ、薬物の皮膚透過性の著しい向上が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メロキシカム、ロルノキシカム、セレコキシブ及びこれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、
(B)親油性粘着基剤と、
(C)N−メチルピロリドンと、
(D)親水性ポリマーと、
を含有する粘着剤。
【請求項2】
前記(D)成分は、水酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む、請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記(D)成分は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリアクリル酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2記載の粘着剤。
【請求項4】
前記(B)成分は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項5】
支持体と、当該支持体の少なくとも一方の面上に積層され、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤からなる薬物層と、を備える貼付剤。

【公開番号】特開2008−143866(P2008−143866A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334878(P2006−334878)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】