説明

粘着剤組成物、粘着剤、光学部材用粘着剤、粘着剤層付き光学部材、画像表示装置

【課題】複屈折がゼロに近く、液晶表示装置に色むら・光漏れ現象が発生しないのみではなく、臭気が発生しにくく、高温,高湿の環境下、及び低温〜高温の環境変化の繰り返しにおいても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じない光学部剤用粘着剤を得ることが可能な粘着剤組成物の提供。
【解決手段】特定構造のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)を含有する共重合成分[I]を共重合して得られるアクリル系樹脂(A)および架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が30万〜250万であり、かつ架橋剤(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.01〜20重量部であることを特徴とする粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤、ならびに光学部材用粘着剤、それを用いて得られる粘着剤層付き光学部材、画像表示装置に関する。詳しくは、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる光学フィルム(偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等)等、特に具体的には、偏光フィルムが、三酢酸セルロース系フィルム等の保護フィルムで被覆された光学積層体と液晶セルのガラス基板との接着に用いられる光学部材用粘着剤、ならびにこの光学部材用粘着剤からなる粘着剤層が形成された粘着剤層付き光学部材、とりわけ粘着剤層付き偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、偏光性が付与されたポリビニルアルコール系フィルム等の両面が、セルロース系フィルム、例えば三酢酸セルロースフィルムで被覆された偏光板を、2枚のガラス板の間に配向した液晶成分を狭持させた液晶セルの表面に積層し、液晶表示板とすることが行われており、この液晶セル面への積層は、偏光板表面に設けた粘着剤層を上記液晶セル面に当接し、押し付けることにより行われるのが通常である。
【0003】
かかる偏光板は、ポリビニルアルコール系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系保護フィルムで挟まれた3層構造を有しているが、それらの材料の特性から寸法安定性が乏しい。また、ポリビニルアルコール系偏光子は延伸によって成形されているため、経時による寸法変化が起こりやすい。このような寸法変化により生じる内部応力を、吸収・緩和することができないと、偏光板に作用する残留応力の分布が不均一となり、特に偏光板の周縁部に応力が集中する。その結果、液晶表示装置の周縁部が中央より明るかったり、あるいは暗かったりするなどの液晶表示装置に色むら・光漏れ現象が発生することとなる。
【0004】
一方で、色むら・光漏れ現象が発生する他の要因として、粘着剤層の複屈折が考えられる。すなわち、粘着剤が溶剤に溶解した形で光学用フィルムに塗工して形成された粘着剤層は、その中で多数のポリマー鎖が絡み合っているため、巨視的には等方性を示し、複屈折を発生させない。しかしながら、偏光板に粘着加工したものを液晶パネルなどに貼り合わせた後、偏光板の経時による寸法変化が起きた際、該粘着剤層が偏光板の寸法変化に追従するため歪みが生じ、粘着剤層中のポリマーが部分的に配向することによって、複屈折が発生してしまい、前記色むら・光漏れ現象が発生することとなる。
【0005】
このような粘着剤層の複屈折に起因する色むら・光漏れ現象を防止するために、例えば、アクリル系樹脂、架橋剤からなる組成物に2個以上のベンゼン環を有する低分子量の芳香族化合物を配合(混合)した粘着剤(例えば、特許文献1参照。)や、アクリル系樹脂を構成する共重合モノマーとしてフェノキシエチル(メタ)アクリレートやベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族モノマーを使用し、芳香環構造が組み込まれたアクリル系樹脂からなる粘着剤(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/072799号公報
【特許文献2】WO2006/009250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示技術では、確かに色むら、光漏れが生じないという結果が得られているものの、特許文献1で使用されている2個以上のベンゼン環を有する低分子量化合物は、結晶性が高かったり、疎水基が少ないためアクリル系樹脂に対する相溶性が悪く、更には低分子量成分であるため、アクリル系粘着剤層の透明性が損なわれたり、凝集力が低くなりアクリル系粘着剤としての凝集力が上がらず液晶表示装置の耐久性が悪くなるという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献2に開示の技術では、光学補償されたアクリル共重合体として芳香族含有(メタ)アクリル系エステル単量体が共重合されたアクリル共重合体を使用することで、ある程度の光漏れ現象の改善はみられるものの、実施例でも使用されており、また、入手しやすく汎用性が高い芳香族含有モノマーであるフェノキシエチル(メタ)アクリレートやベンジル(メタ)アクリレート等は、揮発性が高いため、実際に粘着シート等を製造した場合には、共重合時の残存モノマーとして粘着剤層中に残っている上記モノマーに起因した臭気が発生しやすいという問題があり、実用に供せられるものではなかった。更に、これら一般的な芳香族含有(メタ)アクリレートを使って、芳香族含有(メタ)アクリル系エステル単量体の添加効果を得るためには、多量に使用する必要があった。
【0009】
そこで、本発明ではこのような背景下において、複屈折がゼロに近く、液晶表示装置に色むら・光漏れ現象が発生しないのみではなく、臭気が発生しにくく、高温、高湿の環境下、及び低温〜高温の環境変化の繰り返しにおいても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じない粘着剤を製造するための粘着剤組成物、及びそれを用いて得られる粘着剤、とりわけ光学部材用粘着剤ならびにそれを用いて得られる粘着剤層付き光学部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、複屈折を低減させる効果を有する芳香族化合物として特定構造のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを用いて共重合させた、比較的高分子量のアクリル系樹脂に、特定量の架橋剤を配合した粘着剤組成物が、色むら・光漏れ現象が発生せず、かつ臭気も発生しにくく、しかも高温高湿の環境下においても耐久性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、下記一般式(1)で示されるビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)を含有する共重合成分[I]を共重合して得られるアクリル系樹脂(A)および架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が30万〜250万であり、かつ架橋剤(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.01〜20重量部であることを特徴とする粘着剤組成物に関するものである。
更には、本発明は、上記粘着剤組成物を用いてなる粘着剤、光学部材用粘着剤、およびかかる光学部材用粘着剤を含む粘着剤層および光学部材の積層構造を含む粘着剤層付き光学部材、かかる光学部材からなる画像表示装置に関するものである。
【0012】
【化1】

(式中、Xはアルキレン基、R1は水素原子またはメチル基、nは1以上の整数である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤は、アクリル系粘着剤の複屈折がゼロに近づくことにより、液晶表示装置に色むら・光漏れ現象が極めて発生しにくい(耐光漏れ性に優れる)ものであり、更には、残存芳香族モノマー由来の臭気も発生せず(耐臭気性に優れる)、高温、高湿の環境下、及び低温〜高温の環境変化の繰り返しにおいても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じない液晶表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0015】
まず、本発明の粘着剤組成物について説明する。
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)および架橋剤(B)を含有してなるものである。
【0016】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、下記一般式(1)で示されるビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)(以下、「ビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)」と記載することがある。)を必須成分として含有する共重合成分[I]を共重合して得られるものであり、その他共重合成分としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)、官能基含有モノマー(a3)、その他の共重合性モノマー(a4)から選ばれるモノマーを適宜選択して含有すればよい。
本発明におけるアクリル系樹脂(A)は、共重合成分[I]が、官能基モノマー(a3)を含有するものであることが、アクリル系樹脂(A)の架橋点となり、基材や被着体との密着性を更に上昇させる点で好ましい。
【0017】
かかるビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)は、ビフェニルオキシ構造を有しており、分子量が大きく、揮発しにくいため、臭気をほとんど有さないものである。従って、芳香環1つを有するモノマーと同量のモノマーがアクリル系樹脂中に残留した場合においても、芳香環1つを有するモノマーと比べて、臭
気が発生しにくいという効果を有するものである。
更に、ビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)は、ビフェニルオキシ構造を有するためにポリマー化した際に大きい正の光弾性係数を示すモノマーであり、そのため少量で、ポリマー化した際に負の光弾性係数を持つ主モノマーのアルキル(メタ)アクリレートとの間で相殺され、複屈折を補償することができるので、光漏れを効率的に防ぐことができるという効果を有するものである。
【0018】
【化1】

(式中、Xはアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、nは1以上の整数である。)
【0019】
上記一般式(1)中のXはアルキレン基であり、中でも、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、特には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、特にはエチレン基が好ましい。
【0020】
上記一般式(1)中のRは、水素原子またはメチル基である。
【0021】
上記一般式(1)中のnは1以上の整数であり、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜5あり、更に好ましくは1である。かかるnの値が大きすぎるとアクリル系樹脂の耐湿熱性が低下する傾向があり、また、調達できる原料の中で、不純物が少なくアクリル系樹脂を製造しやすい点でもnが小さいことが好ましい。なお、nが2以上のポリオキシアルキレン鎖部位の場合は、同一オキシアルキレン鎖のホモ重合体でもよいし、相異なるオキシアルキレン鎖がランダム或いはブロック状に共重合したものでもよい。
【0022】
上記一般式(1)中の2個のフェニル基について、酸素原子に結合したフェニル基に対するもう一方のフェニル基の置換位置は特に限定されるものではなく、オルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよいが、特にはオルト位であることが好ましい。
また、かかる2個のフェニル基は置換基を有するものであってもよく、置換基としては、通常、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルファニル基、アリール基、ヘテロアリール基等があげられる。
【0023】
上記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)として、具体的には、o−ビフェニルオキシメチル(メタ)アクリレート、m−ビフェニルオキシメチル(メタ)アクリレート、p−ビフェニルオキシメチル(メタ)アクリレート、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、m−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、p−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−ビフェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、m−ビフェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、p−ビフェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、(o−ビフェニルオキシ)ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、(m−ビフェニルオキシ)ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、(p−ビフェニルオキシ)ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、(o−ビフェニルオキシ)ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(m−ビフェニルオキシ)ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(p−ビフェニルオキシ)ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(o−ビフェニルオキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(m−ビフェニルオキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(p−ビフェニルオキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(o−ビフェニルオキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(m−ビフェニルオキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(p−ビフェニルオキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、等が挙げられるが、これらの中でも、ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレートが共重合性に優れる点で好ましく、特に好ましくはo−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0024】
ビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の共重合成分[I]中における含有量としては、好ましくは1〜90重量%、特に好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは10〜40重量%であり、殊に好ましくは12〜25重量%であり、ビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の含有量が少なすぎると、耐光漏れ性が低下しやすい傾向があり、多すぎると耐光漏れ性を低下させたり、アクリル系樹脂の粘着性能に劣ったり、重合の安定性が低下する傾向がある。
【0025】
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)としては、アルキル基の炭素数が、通常1〜20、特には1〜12、更には1〜8、殊には4〜8であることが好ましく、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso―ステアリルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0026】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)の中でも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさ及び原料入手しやすさの点で、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、更に好ましく耐久性に優れる点でn−ブチル(メタ)アクリレートが用いられる。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)の共重合成分[I]中における含有量としては、好ましくは10〜99重量%、特に好ましくは50〜95重量%、更に好ましくは60〜90重量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)の含有量が少なすぎると、粘着剤として使用した場合の粘着力が低下する傾向にある。
【0028】
上記官能基含有モノマー(a3)は、後述の架橋剤(B)と反応することにより架橋点となりうる官能基を含有するモノマーであればよく、例えば、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられ、これらの中でも、効率的に架橋反応ができる点で水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。
【0029】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーを挙げることができる。
【0030】
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤との反応性に優れる点で1級水酸基含有モノマーが好ましい。更には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することが、ジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、製造しやすい点で特に好ましい。
【0031】
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることも好ましく、更には0.2%以下、殊には0.1%以下のものを使用することが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
【0032】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0033】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0035】
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0036】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
これら官能基含有モノマー(a3)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0037】
官能基含有モノマー(a3)の共重合成分[I]中における含有量としては、好ましくは0.01〜30重量%、特に好ましくは0.05〜10重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%、殊に好ましくは2〜5重量部であり、官能基含有モノマー(a3)の含有量が少なすぎると、凝集力が低下することにより、耐久性能が低下する傾向があり、多すぎると粘度が高くなったり、樹脂の安定性が低下する傾向がある。
【0038】
その他共重合性モノマー(a4)としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α―メチルスチレン等の1つの芳香環を含有するモノマー(a4−1);メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドN−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー:2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。
【0039】
その他の共重合性モノマー(a4)の共重合成分[I]中における含有量としては、好ましくは0〜30重量%、特に好ましくは、0〜20重量%、更に好ましくは0〜10重量%である。
【0040】
なお、本発明においては、芳香環を含有するモノマー成分としてビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)のみを含有すれば、耐光漏れ性および耐臭気性に優れた粘着剤を得ることが可能であるが、本発明の効果、特に耐臭気性を損なわない範囲で上記の1つの芳香環を含有するモノマー(a4−1)を併用してもよい。
かかる併用する場合の1つの芳香環を含有するモノマー(a4−1)の含有量は、共重合成分[I]全体に対して、通常0〜15重量%、好ましくは0.01〜10重量%以下であればよく、または、ビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)に対して、0〜100重量%、好ましくは0〜50重量%、特に好ましくは0〜20重量%であればよい。
【0041】
また、高分子量化を目的とする場合、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等のエチレン性不飽和基を二つ以上有する化合物等を併用することもできる。
【0042】
上記(a1)〜(a4)のモノマー成分を適宜選択して重合することによりアクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、かかる重合に当たっては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などの従来公知の方法により行なうことができる。
これらの中でも、溶液重合で製造することが、塊状重合と比べて所望の分子量のアクリル系樹脂を得やすい点、界面活性剤,分散剤等が必要となる乳化重合と比べて耐久性に悪影響を及ぼしにくい点、更に安全で、安定的に、任意のモノマー組成でアクリル系樹脂を製造し易い点で好ましい。
【0043】
かかる溶液重合による製造方法としては、例えば、有機溶媒中に、ビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)、官能基含有モノマー(a3)、その他の共重合性モノマー(a4)等の重合モノマー、重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜90℃で2〜20時間重合する。
【0044】
かかる重合に用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0045】
かかるラジカル共重合に使用する重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が具体例として挙げられる。
【0046】
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、30万〜250万であることが必要であり、好ましくは50万〜200万、特に好ましくは60万〜180万、殊に好ましくは80万〜160万である。重量平均分子量が小さすぎると、耐久性能が低下することとなり、大きすぎると希釈溶剤を大量に必要とし、塗工性やコストの面で好ましくない。
【0047】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、15以下であることが好ましく、特には10以下が好ましく、更には7以下が好ましく、殊には5以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると粘着剤層の耐久性能が低下し、発泡等が発生しやすくなる傾向にある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常1.1である。
【0048】
更に、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、−80〜−20℃、特には−75〜−20℃、更には−60〜−20℃であることが好ましく、ガラス転移温度が高すぎるとタックが不足する傾向があり、低すぎると耐熱性に低下する傾向がある。
【0049】
尚、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法を用いることができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。またガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。

Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0050】
本発明においては、上記アクリル系樹脂(A)を必須成分として含有する粘着剤組成物を提供するものであり、かかる粘着剤組成物は架橋されることにより粘着剤となるが、本発明の粘着剤組成物には、更に架橋剤(B)を含有することが必要であり、架橋剤により架橋されるものである。
【0051】
かかる架橋剤(B)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の化学架橋を形成する架橋剤、多官能アクリレート系架橋剤等の物理架橋を形成する架橋剤が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性を向上させる点やベースポリマーとの反応性の点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ架橋剤、および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1つが好適に用いられる。
また、イソシアネート系架橋とエポキシ系架橋剤を併用することが耐久性に優れる点で好ましく、かかる併用時の配合割合としては、イソシアネート系架橋剤をエポキシ系架橋剤よりも多く配合することが好ましく、具体的には、イソシアネート系架橋剤に対してエポキシ系架橋剤を0.001〜10重量%含有することが好ましく、特に好ましくは0.01〜1重量%である。
【0052】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。エージング短縮の点でトリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が好ましい。
【0053】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、1,3′−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N‘,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等が挙げられる。
【0054】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
なお、かかるアジリジン系架橋剤は、ポットライフが短く、変異原性があることから、粘着剤の使用用途によっては使用が好ましくない場合がある。
【0055】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0056】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0057】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0058】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0059】
多官能アクリレート系架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
かかる多官能アクリレート系架橋剤を使用する場合は、活性エネルギー線を照射することで架橋が行なわれる。
ただし、多官能(メタ)アクリレート系架橋剤による架橋は、ポリマー官能基との化学架橋ではなく、多官能(メタ)アクリレートが自己反応し、網目構造を形成することで、アクリル系樹脂(A)と絡み合い架橋構造を形成する物理架橋となる。従って、上記化学架橋を形成する架橋剤の使用時に比べて、凝集力に劣り、耐久性が若干が劣る傾向があるため、多官能(メタ)アクリレート系架橋剤を使用する際は、化学架橋を形成する架橋剤と併用することが好ましい。
【0060】
また、これらの架橋剤(B)は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
上記架橋剤(B)の含有量は、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが必要であり、好ましくは0.02〜15重量部、特に好ましくは0.03〜10重量部である。架橋剤(B)が少なすぎると、凝集力が低下し、充分な耐久性が得られない傾向がみられ、多すぎると柔軟性、および粘着力が低下し、耐久性が低下し、剥離が起こりやすくなるため光学部材としての使用が困難となる傾向がみられる。
【0062】
本発明においては、上記で得られた粘着剤組成物を架橋して粘着剤とするわけであるが、特には光学部材用粘着剤とすることが有効であり、かかる光学部材用粘着剤を得るための粘着剤組成物としては、更にシランカップリング剤(C)を含有させることが、光学部材に対する密着性が向上する点で好ましい。
【0063】
かかるシランカップリング剤(C)としては、例えば、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、水酸基含有シランカップリング剤、カルボキシル基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、アミド基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤等をあげることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましく用いられ、エポキシ基含有シランカップリング剤とメルカプト基含有シランカップリング剤を併用することも、湿熱耐久性の向上と粘着力が上がり過ぎない点で好ましい。
【0064】
上記エポキシ基含有シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等があげられるが、中でも好ましいのはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである。
【0065】
上記メルカプト基含有シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、SH基含有シリコーンアルコキシオリゴマー(メルカプト基変性エチル/メチルシリケート低縮合物)等があげられる。
【0066】
シランカップリング剤(C)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部であり、特に好ましくは0.02〜1重量部、更に好ましくは0.03〜0.5重量部である。かかるシランカップリング剤(C)の含有量が少なすぎると、添加効果が得られない傾向があり、多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し接着力や凝集力が得られなくなる傾向がある。
【0067】
また、光学部材用粘着剤を得るための粘着剤組成物として、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに帯電防止剤、その他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、の紫外線吸収剤、機能性色素等の従来公知の添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができる。
また、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであっても良い。
【0068】
上記帯電防止剤としては、例えば、イミダゾリウム塩、テトラアルキルアンモニウムスルホン酸塩等の第4級アンモニウム塩のカチオン型帯電防止剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のアニオン型帯電防止剤、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドや塩化リチウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等があげられる。
【0069】
なお、本発明においては、粘着剤組成物が、アクリル系樹脂(A)を主成分とするものであることが好ましく、ここで「主成分とする」とは、上記アクリル系樹脂(A)が粘着剤組成物全量に対して、通常、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上含有することを意味する。なお、上限としては通常99.9重量%である。
【0070】
なお、本発明の粘着剤組成物を、ITOフィルム、ITOガラス等の透明電極膜や、電磁波シールド等のメッシュ等の耐腐食性が必要な用途に使用する場合は、粘着剤組成物が実質的に酸性基を含まないことが好ましい。
実質的に酸性基を含まないとは、アクリル系樹脂(A)の共重合成分として酸性基を有するモノマーを使用せず、粘着剤組成物全体の酸価が好ましくは10mgKOH/g以下、特に好ましくは1mgKOH/g以下であることを意味する。
【0071】
かくして本発明の粘着剤組成物が得られ、そして、かかる粘着剤組成物が架橋されて本発明の粘着剤となるのであり、とりわけ、光学部材用粘着剤として非常に有用である。
【0072】
本発明においては、上記粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤のゲル分率が、耐久性能と耐光漏れ性がバランスよく優れる点から、40〜100%であることが好ましく、特に好ましくは45〜95%であり、更に好ましくは55〜90%、殊に好ましくは65〜85%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下することに起因する耐久性の低下を招く傾向にあり、ゲル分率が高すぎると凝集力が上がりすぎ、耐久性試験において、剥がれが発生する傾向がある。
【0073】
なお、粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、架橋剤の種類と量を調整すること、組成物中の水酸基とカルボキシル基の組成比を調整すること等により達成される。また、かかる架橋剤と官能基量との割合は、それぞれの相互作用によりゲル分率が変化するので、それぞれバランスをとることが必要になる。
【0074】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0075】
本発明の粘着剤は、耐光漏れ性、及びリワーク性に優れる点において、粘着剤全体に対して、ビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)を0.01〜10重量%含有することが好ましく、特に好ましくは0.1〜8重量%、更に好ましくは1〜4重量%である。
かかるビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の含有割合が多すぎると耐久性が低下し、特に湿熱試験で発泡、剥離が起こりやすくなる傾向があり、少なすぎると光漏れが起こりやすい傾向がある。
【0076】
本発明においては、上記光学部材用粘着剤からなる粘着剤層を光学部材(例えば、光学積層体)上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0077】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましい。
【0078】
また、粘着剤層付き光学部材を実用に供する際には、上記離型シートを剥離して用いられる。そして、上記離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0079】
また、粘着剤層付き光学部材を作製するに際して、上記の光学部材用の粘着剤組成物を架橋させる方法については、〔1〕光学部材上に、光学部材用粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、エージング処理を行なう方法、〔2〕離型シート上に、光学部材用粘着剤組成物を塗布し、乾燥した後、光学部材を貼合し、エージング処理を行なう方法により行なうことできる。これらの中でも、〔2〕の方法が基材を痛めない点、作業性や安定製造の点で好ましい。
【0080】
上記エージング処理は、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、23℃で3〜10日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0081】
上記光学部材用の粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。また、上記溶剤としては、光学部材用粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
【0082】
また、上記粘着剤組成物の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なうことができる。
【0083】
また、得られる粘着剤層付き光学部材における粘着剤層の厚みは、通常5〜300μmが好ましく、特には5〜50μmが好ましく、更には10〜30μmが好ましい。この粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると光学部材全体の厚みが厚すぎてしまう傾向がある。
【0084】
本発明の粘着剤層付き光学部材は、離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面をガラス基板に貼合して、例えば液晶表示装置に供されるのである。
【0085】
本発明における光学部材としては、特に限定されることなく、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる光学フィルム、例えば、偏光板や位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているもの等があげられる。中でも特に偏光板であることが本発明では有効である。
【0086】
本発明で用いられる偏光板は、通常、偏光フィルムの両面に三酢酸セルロース系フィルムを保護フィルムとして積層したものであり、上記偏光フィルムとしては、平均重合度が1,500〜10,000、ケン化度が85〜100モル%のポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを原反フィルムとして、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液あるいは二色性染料により染色された一軸延伸フィルム(通常、2〜10倍、好ましくは3〜7倍程度の延伸倍率)が用いられる。
【0087】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していても良い。また、ポリビニルアルコールを酸の存在下でアルデヒド類と反応させた、例えば、ポリブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のいわゆるポリビニルアセタール樹脂およびポリビニルアルコール誘導体もあげられる。
【0088】
また、本発明の粘着剤は、ワープロ、コンピュータ、携帯電話、テレビ等の各種ディスプレイ、偏光板やそれに準ずる積層体等の光学部品、電子基板等の一時表面保護用粘着剤、両面テープ用粘着剤、メディカル用粘着剤、表面保護用粘着剤、一般ラベル用粘着剤、玩具向けシール用粘着剤、装飾シール用粘着剤、凹凸追従性粘着剤として用いることも可能である。
【実施例】
【0089】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0090】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂を調製した。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
なお、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0091】
〔アクリル樹脂(A)の調製〕(表1参照。)
[アクリル系樹脂(A−1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)89.6部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)0.3部、アクリル酸(a3)0.1部及び酢酸エチル70部、アセトン30部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(重量平均分子量(Mw)135万、分散度3.6、固形分24%、粘度4000mPa・s(25℃))を得た。
【0092】
[アクリル系樹脂(A−2)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)83.3部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)13部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)3.5部、アクリル酸(a3)0.2部及び酢酸エチル70部、アセトン30部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−2)溶液(重量平均分子量(Mw)138万、分散度3.9、固形分22%、粘度3700mPa・s(25℃))を得た。
【0093】
[アクリル系樹脂(A−3)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)76.3部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)3.5部、アクリル酸(a3)0.2部及び酢酸エチル70部、アセトン30部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−3)溶液(重量平均分子量(Mw)138万、分散度4.9、固形分24%、粘度2600mPa・s(25℃))を得た。
【0094】
[アクリル系樹脂(A−4)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)84.8部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)13部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)0.2部、アクリル酸(a3)2部、部及び酢酸エチル70部、アセトン30部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−4)溶液(重量平均分子量(Mw)145万、分散度4.0、固形分20%、粘度5400mPa・s(25℃))を得た。
【0095】
[アクリル系樹脂(A−5)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)85部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)13部、アクリル酸(a3)2部及び酢酸エチル70部、アセトン30部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−5)溶液(重量平均分子量(Mw)157万、固形分19.5%、粘度4300mPa・s(25℃))を得た
【0096】
[アクリル系樹脂(A−6)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)93.3部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)3.5部、アクリル酸(a3)0.2部及び酢酸エチル70部、アセトン30部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−6)溶液(重量平均分子量(Mw)140万、分散度3.9、固形分22%、粘度3500mPa・s(25℃))を得た。
【0097】
[アクリル系樹脂(A−7)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)59.8部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)36.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)3.5部、アクリル酸(a3)0.2部及び酢酸エチル70部、アセトン30部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−7)溶液(重量平均分子量(Mw)70万、分散度4.9、固形分35%、粘度6500mPa・s(25℃))を得た。
【0098】
[アクリル系樹脂(A−8)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)85部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)13部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)2部及び酢酸エチル70部、アセトン30部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−8)溶液(重量平均分子量(Mw)155万、分散度4.0、固形分20%、粘度4500mPa・s(25℃))を得た。
【0099】
[アクリル系樹脂(A’−1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)79.6部、フェノキシエチルアクリレート(a4−1)20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)0.3部、アクリル酸(a3)0.1部及び酢酸エチル30部、アセトン70部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−1)溶液(重量平均分子量(Mw)205万、分散度4.0、固形分20%、粘度9800mPa・s(25℃))を得た。
【0100】
[アクリル系樹脂(A’−2)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)79.6部、ベンジルアクリレート(a4−1)20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)0.3部、アクリル酸(a3)0.1部及び酢酸エチル40部、アセトン60部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−2)溶液(重量平均分子量(Mw)177万、分散度4.1、固形分19%、粘度6400mPa・s(25℃))を得た。
【0101】
[アクリル系樹脂(A’−3)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a2)89.6部、ベンジルアクリレート(a4−1)10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)0.3部、アクリル酸(a3)0.1部及び酢酸エチル40部、アセトン60部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−3)溶液(重量平均分子量(Mw)185万、分散度3.6、固形分17%、粘度5800mPa・s(25℃))を得た。
【0102】
[アクリル系樹脂(A’−4)]
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート(a2)61.1部、フェノキシエチルアクリレート(a4−1)9部、ベンジルアクリレート(a4−1)27部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)2.75部、アクリル酸(a3)0.15部の共重合性モノマーと酢酸エチルを仕込み、アゾビスイソブチロニトリル(大塚化学社製)0.2部を加え、酢酸エチル還流下で1.5時間反応させた。その後、酢酸エチル50部を50分かけて滴下しながら、滴下開始から30分後に過酸化物系重合開始剤であるパーヘキシルPV(日本油脂株式会社製)(以下、「PHPV」と略記する)0.2部を添加し20分反応させた。次いでPHPV0.3部を添加し40分反応させ、更にP HPV1.0部を添加し3時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系樹脂(A’−4)溶液(重量平均分子量(Mw)107万、分散度4.1、固形分19.7%、粘度2000mPa・s(25℃))を得た。
【0103】
[アクリル系樹脂(A’−5)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、メチルエチルケトン28部、トルエン8部を仕込み、攪拌しながら昇温し、90℃になったら、ブチルアクリレート(a2)83.3部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)13部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)3.5部、アクリル酸(a3)0.2部及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.16部、を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に重合途中に、酢酸エチル2部にAIBN0.06部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させ、反応終了後酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−5)溶液(重量平均分子量(Mw)13万、分散度2.7、固形分46.6%、粘度300mPa・s(25℃))を得た。
【0104】
【表1】

(注)BOEA :o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート
BA :ブチルアクリレート
HEA :2−ヒドロキシエチルアクリレート
AAc :アクリル酸
PEA :フェノキシエチルアクリレート
BzA :ベンジルアクリレート
(※)表中の数字は部を表し、「---」は配合しなかったことを表す

【0105】
[架橋剤(B)]
架橋剤(B−1)として、以下のものを用意した。
・トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製、「コロネートL−55E」)
架橋剤(B−2)として、以下のものを用意した。
・エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、「テトラッドC」)
架橋剤(B−3)として、以下のものを用意した。
・エポキシ系架橋剤(共栄社化学株式会社製、「エポライト80MF」)
【0106】
[シランカップリング剤(C)]
シラン系化合物(C−1)として、以下のものを用意した。
・メルカプト基含有シリコーンアルコキシオリゴマー(信越化学社製「X41−1805」)
シラン系化合物(C−2)として、以下のものを用意した。
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM403」)
【0107】
〔実施例1〜10、比較例1〜8〕
上記のようにして調製,準備した各配合成分を、下記の表2、表3に示す割合で配合することにより光学部材用粘着剤形成材料となる粘着剤組成物を調製し、これを酢酸エチルにて希釈し(粘度〔300〜10000mPa・s(25℃)〕)粘着剤組成物溶液を作製した。
【0108】
そして、上記粘着剤組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥した後、形成された粘着剤組成物層側をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)上に転写し、その後23℃×65%R.H.の条件下で10日間エージングさせて粘着剤層付きPETフィルムを得た。
【0109】
このようにして得られた粘着剤層付きPETフィルムを用いて、以下の項目について、下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を下記の表2、表3に併せて示した。
【0110】
〔耐臭気性〕
得られた粘着剤層付きPETフィルムを23℃×50%R.H.で3時間調温調湿条件で放置した後、粘着剤層の臭いを嗅ぎ、下記の基準で評価した。
○・・・モノマー臭を感じない
×・・・モノマー臭を感じる
【0111】
〔ゲル分率〕
得られた粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmに切断した後、離型シートを剥がし粘着剤層側を50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器にて浸漬した際の重量変化にてゲル分率の測定を行なった。
【0112】
つぎに、実施例1〜10、比較例1〜8の粘着剤組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥した後、形成された粘着剤組成物層を偏光板(厚み190μm)上に転写し、その後23℃×65%R.H.の条件下で10日間エージングさせて粘着剤層付き偏光板を得た。
なお、上記偏光板には、美舘イメージング社製「MLP38U」を延伸軸に対して45℃になるようにカットして使用した。
【0113】
このようにして得られた粘着剤層付き偏光板を用いて、耐久性(耐湿熱試験、ヒートサイクル試験、耐熱試験)、粘着力を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を後記の表2、表3に併せて示す。
【0114】
〔耐久性〕
得られた粘着剤層付き偏光板の離型シートを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、イーグルXG)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合した後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行ない、その後、下記(1)〜(3)の耐久試験(耐湿熱試験、ヒートサイクル試験、耐熱試験)において発泡、剥がれの評価を行なった。更に、下記(3)の耐熱試験においては、上記発泡、剥離の評価に加えて、偏光板がクロスニコルになるように表と裏の両面に同じサンプルを貼合した光漏れ観察用サンプルを作製し、光漏れ現象の評価も行なった。
なお、使用した試験片サイズは、20cm×15cmのものを使用した。
【0115】
〔耐久試験〕
(1)耐湿熱試験
60℃、90%R.H.150時間の耐久試験
(2)ヒートサイクル試験
−35℃で60分間放置した後、70℃で60分間放置する操作を1サイクルとして、75サイクル行なう耐久試験
(3)耐熱試験
80℃、150時間の耐久試験および光漏れ
【0116】
〔評価基準〕
(発泡)
○・・・発泡がほとんど見られない
△・・・発泡がわずかに見られる
×・・・発泡が多く見られる
(剥離)
○・・・0.5mm未満の剥がれ、もしくは浮き跡の発生
△・・・0.5mm以上10mm未満の剥がれ、もしくは浮き跡の発生
×・・・10mm以上の剥がれ、もしくは10mm以上の浮き跡の発生
(光漏れ)
◎・・・光漏れが非常に優れる
○・・・光漏れがほとんど見られない
△・・・光漏れが僅かに発生
×・・・4辺に光漏れが大きく発生
【0117】
【表2】

注)(A)〜(C)における表中の数値は配合重量部である。

【表3】

注)(A)〜(C)における表中の数値は配合重量部である。
【0118】
また、実施例7と実施例10については、粘着層付PETフィルムを銅版に貼り付けて、60℃90%の条件下で7日間放置した。その結果、実施例7は変色が認められたのに対し、実施例10は変色が確認されなかったため、実施例10は腐食に強いことが確認できた。
【0119】
ビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしてo−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレートを使用し、特定分子量のアクリル系樹脂、および特定量の架橋剤を配合してなる粘着剤組成物からなる実施例1〜10の粘着剤は、耐光漏れ性と、耐臭気性にバランスよく優れるものである。
【0120】
一方、ビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含有していないアクリル系樹脂を用いた比較例1〜3の粘着剤では、耐光漏れ性に優れるものの耐臭気性に劣るものであった。
比較例4の粘着剤では、アクリル系樹脂中の芳香環モノマー量を比較例1〜3よりも減量したものであり、比較例1〜3の粘着剤に比べ耐臭気性には多少優れるものの、芳香環モノマーを減量した影響により耐光漏れ性に劣るものであった。
比較例5では、比較例1〜3に比べ芳香環モノマーの使用量は多いものの、残留モノマーが少なくなる重合方法で製造したアクリル系樹脂を使用したために、耐臭気性には多少優れるものの、アクリル系樹脂の分子量が低くなるために耐久性に劣るものであった。
【0121】
また、アクリル系樹脂(A−1)を使用した実施例1の粘着剤は、耐光漏れ性に優れるのに対し、アクリル系樹脂(A−1)のビフェニルオキシ構造含有モノマー含有量と同量のベンジルアクリレート(芳香環を1つ含有するモノマー)を含有するアクリル系樹脂(A’−3)を使用した比較例4の粘着剤は、光漏れ性に劣るものである。
更に、アクリル系樹脂(A−1)のビフェニルオキシ構造含有モノマーを増量したアクリル系樹脂(A−3)を使用した実施例3の粘着剤では、実施例1より更に耐光漏れ性が向上しているのに対し、アクリル系樹脂(A’−3)のベンジルアクリレートを増量したアクリル系樹脂(A’−2)を使用した比較例3の粘着剤では、比較例4より光漏れ性は向上しているものの、耐臭気性が悪化している。
このことより、芳香環を1つ含有するモノマーでは、耐光漏れ性と耐臭気性のバランスをとることは不可能であるが、ビフェニルオキシ構造含有モノマーを用いることで両者のバランスに優れた粘着剤を得ることが可能となることがわかる。
【0122】
重量平均分子量が低いアクリル系樹脂(A’−5)を用いた比較例7、8については、
実施例2と比較して、比較例7では耐久性が悪化しており、比較例8のように架橋剤を増量しゲル分率を担保しても、分子量による影響で耐久試験が維持できないことがわかる。
【0123】
また、架橋剤配合量の少ない比較例6の粘着剤は、実施例6および7の粘着剤と比較して、耐久性に劣ることがわかる。
【0124】
以下に、参考例として、特定重合方法を用いて分子量が低いアクリル系樹脂を製造し、粘着剤として使用した例を示す。
【0125】
〔参考例1〕
ガラス製容器にブチルアクリレート(a2)83.3部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)13部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)3.5部、アクリル酸(a3)0.2部からなるモノマー混合液100部と、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製「イルガキュア184」2部、多官能アクリレート(第一工業製薬株式会社製、ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」3部を配合し、充分に攪拌したものをポリエステル系離型シートに、UV照射後の厚みが25μmとなるように塗布し、フュージョン製UV照射基Hバルブで、窒素シール下で、積算露光量2000mJ/cmのUV照射後、形成された粘着剤組成物層側をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)上に転写し、粘着剤層付きPETフィルムを得た。
【0126】
なお、上記で得られた粘着層を形成するアクリル系樹脂は、溶剤に溶解せず重量平均分子量測定をすることは不可能であったため、別途以下の実験により重量平均分子量を測定した。
(実験例)
ガラス製容器にブチルアクリレート(a2)83.3部、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート(a1)13部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)3.5部、アクリル酸(a3)0.2部からなるモノマー混合液100部と、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製「イルガキュア184」2部を配合し、充分に攪拌したものを、ポリエステル系離型シートに、UV照射後の厚みが25μmとなるように塗布し、同様にフュージョン製UV照射基Hバルブで、窒素シール下で、積算露光量2000mJ/cmのUV照射後、形成された粘着剤組成物層側をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)上に転写し、粘着剤層付きPETフィルムを得た。
得られた粘着層中のアクリル系樹脂の重量平均分子量を、前述の方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は11万であった。
【0127】
参考例1で得られた粘着剤層付きPETフィルムを用いて、実施例、比較例に記載の方法と同様に、耐臭気性、ゲル分率を測定した。これらの結果を後記の表4に併せて示す。
【0128】
<参考例2>
参考例1において、活性エネルギー線照射後に形成された粘着剤組成物層側を偏光板(厚み190μm)上に転写することにより、粘着剤層付き偏光板を得た。
【0129】
このようにして得られた粘着剤層付き偏光板を用いて、耐久性(耐湿熱試験、ヒートサイクル試験、耐熱試験)、粘着力を、実施例、比較例に記載の各方法と同様に、測定・評価した。これらの結果を後記の表4に併せて示す。
【表4】

【0130】
上記結果より、参考例1および参考例2の粘着剤は、耐臭気性および耐久性に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の粘着剤組成物は、低臭気であり、かつ高い耐久性を持ち、厳しい条件での耐熱試験等の耐久性においても、発泡や剥がれの発生がなく、また、光漏れ現象の抑制効果にも優れた粘着剤を形成することができるため、とりわけ光学部材用粘着剤として有用であり、更には、それらを用いて得られる粘着剤層付き光学部材ならびに画像表示装置を得るための粘着剤として非常に有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)を含有する共重合成分[I]を共重合して得られるアクリル系樹脂(A)および架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物であって、
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が30万〜250万であり、
かつ架橋剤(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.01〜20重量部であることを特徴とする粘着剤組成物。
【化1】

(式中、Xはアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、nは1以上の整数である。)
【請求項2】
共重合成分[I]中における一般式(1)で示されるビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)の含有割合が、1〜90重量%であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
架橋剤(B)が、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、および金属キレート系架橋剤から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
シランカップリング剤(C)を含有し、シランカップリング剤(C)の含有量がアクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.01〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の粘着剤組成物が、架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
【請求項6】
粘着剤全体に対して、上記一般式(1)で示されるビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)を0.1〜10重量%含有することを特徴とする請求項5記載の粘着剤。
【請求項7】
請求項5または6記載の粘着剤を用いてなることを特徴とする光学部材用粘着剤。
【請求項8】
光学部材が、偏光板であることを特徴とする請求項7記載の光学部材用粘着剤。
【請求項9】
請求項7または8記載の光学部材用粘着剤を含む粘着剤層および光学部材の積層構造を含む粘着剤層付き光学部材。
【請求項10】
請求項9記載の粘着剤層付き光学部材を有することを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2012−77299(P2012−77299A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196684(P2011−196684)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】