説明

粘着剤組成物の製造方法、粘着フィルムの製造方法、粘着剤用原料組成物及び粘着フィルム

【課題】緩衝性を高めるために粘着剤層を厚くしても、高温・高湿度での環境条件下における水分に起因する粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物及び粘着フィルムを提供する。
【解決手段】官能基として親水基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物の製造方法であって、(1)ウレタンアクリレートの少なくとも1種類と、アクリル系モノマーの少なくとも1種類とが溶解され、前記アクリル系モノマーの一部又は全部が親水基を有する(メタ)アクリレートである粘着剤用原料組成物を調製する工程、(2)前記粘着剤用原料組成物を用い、光照射による重合反応をさせて粘着剤組成物を得る工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物の製造方法、粘着フィルムの製造方法、粘着剤用原料組成物及び粘着フィルムに関し、さらに詳細には、オーブンを使用しての高温・高湿度での環境条件下における耐久試験を行った時およびオーブンから取り出した後でも粘着剤層に白濁が生じない優れた性能を有する粘着剤組成物の製造方法、粘着フィルムの製造方法、粘着剤用原料組成物及び粘着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、PDP(プラズマディスプレイ)、液晶パネル、有機ELパネルなどの各種ディスプレイにおいては、ディスプレイ前面に各種光学フィルムや保護板が貼り付けられている。
例えば、PDPにおいては、電磁波のシールドフィルム以外に、近赤外線の波長領域を使用している各種のリモコンスイッチの誤作動を防ぐための近赤外線吸収フィルム、その近赤外線吸収フィルムに使用されている近赤外線吸収剤の経時劣化を防ぐための紫外線吸収フィルム、さらには可視光領域の色調調整のためのネオン光カットフィルム、光学フィルターの表面に外光が映り込むのを防ぐための反射防止フィルム等が、ディスプレイ前面に貼り付けられている。これらのフィルムをディスプレイ用光学フィルターとして用いることにより画像の映り具合の改善が図られている。
【0003】
また、液晶パネルが表示ディスプレイとして使用されている携帯電話では、液晶パネルの前面に衝撃吸収用の保護板が、液晶パネルの割れ防止のために空気層を介して取り付けられている。しかし、最近では、軽量化と薄型化、及び視認性の向上を図るため、携帯電話の液晶パネルの前面に空気層を設けないで、粘着剤層を用いて直接に薄い保護板を貼り合せることが行なわれている。
また、PDPでも、軽量化と薄型化、及び視認性の向上を図るため、PDPパネルに直接光学フィルター用のフィルムを貼合することがダイレクトカラーフィルター方式として検討がされている。
【0004】
上記の光学フィルムや保護板は、粘着剤層を使用してディスプレイの前面に貼り合せられているが、粘着剤層を使用して各種の光学フィルムをディスプレイに貼り合せる時に、気泡を巻き込んでしまい粘着剤層に微小気泡が生じるという問題があった。
また、ディスプレイ表示装置の出荷前に行なわれるディスプレイの性能試験では、オーブンを使用して行われる高温・高湿度での環境条件下における耐久試験に合格する必要がある。オーブンから取り出した後、粘着剤層が白濁してしまい、ディスプレイの商品価値を損なうという問題があった。
【0005】
このように、粘着テープを使用して光学フィルムをディスプレイに貼り合せた時に粘着剤層に微小気泡が生じるという問題や、また、オーブンを使用して高温・高湿度の環境条件下で耐久性試験を行った時、およびオーブンから取り出した後に、粘着剤層に白濁が生じるという問題を解決するために、従来から様々な取り組みが行なわれている。
【0006】
例えば、特許文献1には、粘着剤層の表面に窪みが生じた場合の修復性能を改善して気泡の巻き込みを防止する、粘着剤層を用いた粘着型光学フィルムが開示されている。
具体的には、アルキル基の炭素数が7〜18のアルキル(メタ)アクリレートと水酸基含有モノマーとの重量比率が100:0.01〜5で含有するポリマー及び水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物を含有する組成物の架橋物により形成された粘着剤層である。この粘着剤層を用いた光学フィルムをガラスに貼り合せた後、50℃×0.05MPa雰囲気下に5分間放置し、粘着剤層での微小気泡の発生の有無を目視にて確認する方法により気泡の有無を検査しているが、微小気泡の発生が防止できているとしている。
【0007】
また、特許文献2には、画像表示装置等の保護に必要な衝撃吸収のための、アクリル酸系誘導体、アクリル酸系誘導体ポリマー、及び高分子量架橋剤を含有した樹脂組成物が開示されている。画像表示用パネルの割れ防止あるいは応力及び衝撃の緩和に有用で透明性に優れているとしている。
吸湿試験として、樹脂シートを60℃、90%RHの高温高湿試験槽に50時間入れることで行い、目視観察で評価を行なう方法で確認した結果、この樹脂組成物であれば発泡が少なく透明性に優れているとしている。
【0008】
また、特許文献3には、優れた耐湿熱性を有する電子ディスプレイ用粘着剤層が開示されている。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシル基含有モノマーとの共重合体および/または混合物を含む電子ディスプレイ用粘着剤組成物であって、さらに、アルキレンオキシ基を有するモノマー、および、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことを特徴とする電子ディスプレイ用粘着剤組成物である。
吸湿試験として、樹脂フィルムに積層した粘着剤層介してガラス板に貼り合せた積層体を60℃、90%RHの環境下に120時間放置した後、常温(25℃)下で30分間放置した後、ヘイズ値を測定して積層体の透明性を判定している。この粘着剤組成物によれば、高温高湿下で放置された後でも、発泡が少なくて高い透明性を維持できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−262729号公報
【特許文献2】特開2008−248221号公報
【特許文献3】特開2008−001739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上に示した特許文献1〜3に記載の粘着剤組成物及び粘着剤層では、高温高湿の環境条件として、高々60℃、90%RHの環境下で行うものである。
ところで、特許文献3に関しては、供試用の粘着剤層を60℃、90%RHの環境下のオーブンにて試験し、およびそこから取り出した後、常温(25℃)下で30分間放置するという試験方法を採用している。つまり、特許文献3の試験方法は、粘着剤層の白濁はオーブンから取り出した直後から数分の間に白濁が始まり、30分後には目立たなくなる場合にも合格と判定される可能性がある。実際、特許文献2に関しては、吸湿試験後も白濁を維持した実施例19と違い、作製直後は若干の濁りが観察されたという実施例18もA(吸湿試験で白濁は認められない)と評価され、作製直後の濁りは考慮されていない。
この場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの薄い樹脂フィルムを片側もしくは両面に貼合する場合はあまり目立たない現象であるが、アクリル板とガラス、ガラス同士などガスバリア性の高い材料を貼合した場合、60℃、90%RHの環境下にあるオーブンから取り出した直後から数分の間に白濁が始まり、その白濁が数時間以上に渡って残ってしまうという現象が生じ、この粘着剤層を使用する環境によっては大きな問題となる。
また、近年、ディスプレイの用途が拡大していることに伴い、従来の環境試験条件に比較して、更に厳しい環境条件下での耐久性能が求められている。例えば、車載用のディスプレイに使用される光学フィルムを貼り合せる粘着テープでは、85℃、95%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープが必要とされている。
【0011】
しかし、特許文献1に記載の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーの骨格となるアルキル基の炭素数が7〜18のアルキル(メタ)アクリレート(A)と、アクリル系ポリマーに水酸基を付与するための水酸基含有モノマー(B)との共重合ポリマーを形成した後、水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物を含有する組成物(架橋剤)を添加して、架橋反応を行わせて得られる粘着剤組成物であるが、(A)に対する(B)の重量比が100:0.01〜5であり、(B)の添加量がわずかであることから水分の保持に寄与し高温高湿での環境試験においての発泡防止に有効と考えられる水酸基の絶対量が少な過ぎる。さらに、共重合ポリマーに付与された水酸基は架橋反応で消費されてしまい、架橋反応後に残存している水酸基の数量が限られてしまう。
従って、過酷な高温高湿の環境条件下では、粘着層が厚い視認性向上用粘着テープとして使用すると、水分に起因する白濁を防止できないという問題があった。
【0012】
また、特許文献2に記載の粘着剤組成物は、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルアクリレート(A)及びヒドロキシル基含有アクリレート(B)の混合物を重合して得られるコポリマーと、前記(A)及び(B)のモノマー混合物と、高分子量架橋剤とを加えた後、架橋反応させて得られる粘着剤組成物である。特許文献2の場合、85℃、95%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであることは明言されておらず、アクリル酸エステルを過剰に導入しているため、実施例のように型枠に樹脂を流し込んで、ガラスで紫外線を弱めて長時間照射する必要があるなどの設備の工夫が必要である。また、60℃、90%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであると明言されているが、弱い紫外線を長時間照射する必要があるため生産性が悪い。
【0013】
また、特許文献3に記載の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシル基含有モノマーとの共重合体が使用されている。
また特許文献3の場合も特許文献2と同様に85℃、95%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであることは明言されておらず、アクリル酸エステルを過剰に導入しているため、実施例のように紫外線硬化時に可能な限り弱い紫外線を長時間照射する必要がある。また、60℃、90%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであると明言されているが、弱い紫外線を長時間照射する必要があるため生産性が悪い。
【0014】
このように、従来技術においては、著しく過酷な高温高湿の環境条件である、例えば、車載用のディスプレイに適用される、85℃、95%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じず、かつ生産性よく安価に提供される技術ではなかった。
【0015】
すなわち本発明の目的は、オーブンを使用して(60℃、90%RH)や(85℃、95%RH)などの高温・高湿度での環境条件下における耐久試験を行った時およびオーブンから取り出した後でも白濁することがない粘着剤組成物の製造方法及び粘着剤組成物、それを用いた粘着テープを生産性よく提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
急激的な外的環境の変化による水分子を凝集させずに白濁を防止するため、本発明では、親水基(例えばヒドロキシル基)を有するアクリル系ポリマーの製造に際し、親水基を有しないモノマーをできる限り単体でポリマー化することにより水分子が目に見えない程度に分散した状態で存在する粘着剤組成物を得ることを技術思想としている。
【0017】
本発明では、親水基を有する(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類を重合反応させて得られる親水基を有するポリマーを粘着剤層に導入して、水分子の凝集防止に関与させる。
そこで、本発明では、上記問題点を解決するために、主剤となるウレタンアクリレートの少なくとも1種類と、アクリル系モノマーの少なくとも1種類とが溶解され、前記アクリル系モノマーの一部又は全部が親水基を有する(メタ)アクリレートであり、好ましくはさらに光重合開始剤を加えて粘着剤塗布液(粘着剤層の前駆体となる粘着剤用原料組成物)を調製し、この塗布液を基材に塗布・光照射して、水分子の凝集防止に関与する親水基を含有する粘着剤組成物を得る。これにより、親水基を有するアクリル系ポリマーを効率良く作製し、かつ均一に混ざりにくいポリマー同士を問題なく混合することができ、光学特性に優れた粘着剤組成物を得る。さらに、あらかじめ重合させておいた主剤となるウレタンアクリレートに対する親水基含有モノマーの添加量を従来技術と比較して少なくできるため、生産性の高い粘着テープを提供できる。
【0018】
請求項1に係る発明は、官能基として親水基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物の製造方法であって、少なくとも次の工程(1)〜(2)
(1)ウレタンアクリレートの少なくとも1種類と、アクリル系モノマーの少なくとも1種類とが溶解され、前記アクリル系モノマーの一部又は全部が親水基を有する(メタ)アクリレートである粘着剤用原料組成物を調製する工程、
(2)前記粘着剤用原料組成物を用い、光照射による重合反応をさせて粘着剤組成物を得る工程、
を有することを特徴とする粘着剤組成物の製造方法である。
【0019】
請求項2に係る発明は、官能基として親水基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤層を備えた粘着フィルムの製造方法であって、少なくとも次の工程(1)〜(3)
(1)ウレタンアクリレートの少なくとも1種類と、アクリル系モノマーの少なくとも1種類とが溶解され、前記アクリル系モノマーの一部又は全部が親水基を有する(メタ)アクリレートである粘着剤用原料組成物を調製する工程、
(2)前記粘着剤用原料組成物を、粘着フィルムの基材またはセパレーター上に塗布して粘着剤塗布膜を形成する工程、
(3)前記粘着剤塗布膜への光照射による重合反応をさせて粘着剤層を得る工程、
を有することを特徴とする粘着フィルムの製造方法である。
【0020】
請求項3に係る発明は、(A)ウレタンアクリレート100重量部と、(B)一部又は全部が親水基含有の(メタ)アクリレートであるアクリル系モノマーの少なくとも1種類:10〜50重量部と、(C)光重合開始剤:0.01〜1.0重量部と、を含有することを特徴とする粘着剤用原料組成物である。
【0021】
請求項4に係る発明は、基材またはセパレーター上に、請求項3に記載の粘着剤用原料組成物を塗布した後、光照射による重合反応をさせて得られる厚みが0.05〜3mmの粘着剤層を備えた粘着フィルムである。
請求項5に係る発明は、ディスプレイに部材を貼り合わせる用途の粘着テープである請求項4に記載の粘着フィルムである。
【発明の効果】
【0022】
上記の本発明によれば、アクリル系ポリマーの架橋反応を最小限度に抑えることで、ポリマーに導入した親水基の数量が消費されて減少するのを抑えると共に、水分子を吸着させる親水基が可能な限り分散した状態で必要な数量で存在する粘着剤組成物を提供することにより、高温高湿度環境条件下における水分を親水基含有ポリマーに吸着できて、緩衝性を高めるために粘着剤層を厚くしても、吸収した水分子の凝集に起因する白濁の発生を防ぐことができる。
また、粘着剤塗布液の流動性を適切に調整することによって基材への塗布厚みを厚くすることが可能であり、厚みのある粘着剤テープを形成して緩衝性を高めることができる。
【0023】
請求項1に係る発明によれば、緩衝性を高めるために粘着剤層の厚みを厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する白濁が生じない粘着剤組成物の製造方法を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、緩衝性を高めるために粘着剤層の厚みを厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する白濁が生じない粘着フィルムの製造方法を提供できる。
【0024】
請求項3に係る発明によれば、緩衝性を高めるために粘着剤層を厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する白濁が生じない粘着剤塗布液(粘着剤用原料組成物)を提供できる。
請求項4,5に係る発明によれば、緩衝性を高めるために粘着剤層を厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する白濁が生じない粘着フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
本発明の粘着剤用原料組成物は、一部又は全部が親水基を有する(メタ)アクリレートである少なくとも1種類のアクリル系モノマー(添加モノマー)とその添加モノマーを重合させるための重合開始剤を、主剤となるウレタンアクリレートに混合したものである。この粘着剤用原料組成物は、エネルギー線により重合する光重合性化合物として、少なくとも1種類の親水基含有の(メタ)アクリレートを含有する。(メタ)アクリレートのモノマーは、光重合開始剤とラジカル重合可能なビニル基である(メタ)アクリル基を有する重合性化合物であって、例えば、300nm〜400nmの範囲内の紫外線に対して硬化性を有する紫外線硬化性樹脂材料である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0026】
ウレタンアクリレートは、粘着剤の主剤となり、かつ、親水基を含有したアクリル系モノマー等の添加モノマーが分散しやすいものであれば良い。
ウレタンアクリレートはアクリル系であることから添加モノマーが分散しやすい。また、本発明の粘着剤用原料組成物は光学用途に使用されることから透明性を有することが必要であり、かつ粘着力の強弱を制御することが簡便であることからも、ウレタンアクリレートが主剤とされている。
添加モノマーとしては、主としてアクリル系モノマーが好ましい。アクリル系モノマーは、一部または全部が親水基を含有したアクリル系モノマーであることが好ましい。ここで、アクリル系モノマーの一部が親水基を有する(メタ)アクリレートである場合には、それ以外のアクリル系モノマーとして、アルキル(メタ)アクリレート等、親水基を含有しないアクリル系モノマーを用いることができる。また、アクリル系モノマーの全部が親水基を有する(メタ)アクリレートである場合であっても、他に添加モノマーとして、非アクリル系モノマーを加えることもあり得る。
【0027】
本発明の粘着剤用原料組成物を用いて、基材(またはセパレーターでも良い。)に塗布させた後、光照射して重合させると、粘着フィルムが得られる。また、本発明の粘着剤用原料組成物は、架橋剤(1分子で2つ以上の親水基と反応可能な化合物)を含有しないので、添加モノマーを重合して得られるポリマーの親水基は架橋されず、水分の吸着能に優れた粘着剤層が得られる。
【0028】
なお、本明細書において、粘着フィルムとは、幅による区別を特に必要とするものではなく、粘着テープ及び粘着シートをいずれも包含する。その具体例としては、基材の片面に粘着剤層を有する片面粘着テープ(または片面粘着シート)、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープ(または両面粘着シート)、及び、基材を有しないで粘着剤層がフィルム状に形成されたトランスファーテープ(転写テープ)が挙げられる。粘着シートは、その幅が広いまま使用しても良いし、テープ状に細く切断して粘着テープとして使用しても良い。特に、粘着テープは、ディスプレイに部材を貼り合わせる用途に好適である。
【0029】
片面粘着テープは、粘着剤層の支持体となる基材の片面に粘着剤層が形成され、粘着剤層の粘着面がセパレーターで保護されている。使用時には、セパレーターを剥離して粘着面を露出し、粘着剤層の裏面に基材が積層されたまま、被着体に貼り合わされる。
基材を有する両面粘着テープは、基材の両面に粘着剤層が形成され、それぞれの粘着剤層の粘着面がセパレーターで保護された構造を有する。
【0030】
トランスファーテープは、粘着剤層の両面にそれぞれセパレーターが設けられている。使用時には、一方のセパレーターを剥離して片方の粘着面を露出して被着体に貼り合わされる。さらに他方のセパレーターを剥離することで、フィルム状の粘着剤層のみを被着体に転写(トランスファー)することができる。他方のセパレーターを剥離した後には、新たな粘着面にも他の被着体を貼り合わせることができる。
本発明における、高温・高湿度での環境条件下における白濁の発生を防止できる改善効果については、トランスファーテープの形態で貼り合せるガラス(無機ガラス)やアクリル樹脂(アクリルガラス)などの水分の透過性が悪いものの場合に、特に著しい効果が得られる。これは次の理由による。
水分子の透過性の良い樹脂フィルムを貼合する場合は、粘着テープ層に分散している水分子が樹脂フィルムの場合は簡単に透過して通り抜けることができるため、水分子の凝集する確率が減ることと、仮に水分子が凝集したとしてもすぐに樹脂フィルムを通して抜けていくため、白濁している時間が短いことになる。しかし、水分子の透過性の悪い材料を貼合する場合は、水分子が凝集し白濁してしまうと、粘着テープの周辺端に水分子が拡散した後に抜けるため、長時間に渡り白濁が続くことになるからである。
【0031】
本発明の粘着剤用原料組成物において主剤となるウレタンアクリレートとしては、例えば、1分子中に2個以上のNCO基を有する化合物1モルに対して2モル以上のヒドロキシル基含有アクリル系モノマーを反応させて得られる、1分子中に2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物が挙げられる。ここで、ヒドロキシル基含有アクリル系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、1分子中2個以上のNCO基を有する化合物としては、ジイソシナネート等のポリイソシアネート化合物とジオール等のポリオール化合物とを反応させて得られる分子量が500〜50000程度のオリゴマーが好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートや、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のグリコール;グリセリン、ペンタエリトリトール等の3価以上のポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のポリエーテル型ジオール;上記ジオールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸とを反応して得られるポリエステル型のジオール等が挙げられる。
【0032】
本発明の粘着剤用原料組成物に添加される親水基を有するアクリル系モノマーとしては、カルボキシル基、アルコキシシリル基、アミノ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基などを持つアクリル系モノマーを選定して使用することができる。
また、カルボキシル基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエチル琥珀酸などが挙げられる。
また、アルコキシシリル基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、γ−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、γ−メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、γ−トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、アミノ基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を含有する(メタ)アクリレートのほか、(メタ)アクリル酸アミド、イタコン酸アミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0033】
また、ヒドロキシル基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、7−メチル−8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−メチル−8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、9−ヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0034】
さらに本発明の粘着剤用原料組成物では、ウレタンアクリレートの少なくとも1種類と親水基を有する(メタ)アクリレートの少なくとも1種類とが、それぞれ含有されていれば、本発明の効果を損なわない限度において、さらに他のモノマーを添加することもできる。他のモノマーとして、例えば、一般式CH=CR−COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜14のアルキル基を示す。)で表わされるアルキル(メタ)アクリレート等の親水基を含有しないアクリル系モノマーや、非アクリル系モノマー(親水基を含有しても含有しなくてもよい。)等、種々の化合物を用いることができる。添加モノマーは、(メタ)アクリル基やビニル基等の光重合性基を1分子に1つ有する、単官能性モノマーが好ましい。
【0035】
前記一般式CH=CR−COORで表わされるアルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらを単独で又は二種以上を併用して使用することができる。このうち2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
なお、これらのアルキル基Rは、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
また、アルコキシシリル基を含有する非アクリル系モノマーとしては、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
粘着剤塗布液を調製する際、ウレタンアクリレート、親水基含有モノマー等の添加モノマー、光重合開始剤等が互いに適切な配合比で溶解した組成物が得られれば良く、その溶解させる順序は特に限定されない。
本発明の粘着剤用原料組成物は、無溶剤型とすることができる。例えばトルエンや酢酸エチルなどの揮発性有機溶剤を配合することもできるが、その場合は、セパレーター貼合前に塗布膜の乾燥工程を行なう。
【0037】
本発明で使用するモノマーの種類は、必要とされる粘着テープの粘着力、貯蔵弾性率によって変わるが、リワーク性を有する粘着テープにする場合、貯蔵弾性率が高くて固い粘着剤組成物でも良いため、モノマーのおおよその指針としてはTgが室温以上のものが好ましい。強粘着力を必要とする場合や貯蔵弾性率を低くしたい場合は、その逆でTgが室温より低く、好ましくはTgがマイナス温度となるモノマーが必要となる。
【0038】
光重合開始剤(重合触媒)としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系光重合開始剤としては、アセトフェノン、p−(tert−ブチル)1’,1’,1’−トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
ベンゾイン系光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシル2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシル2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシルベンゾフェノン、ヒドロキシルプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等が挙げられる。
【0039】
これらの光重合開始剤は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。光重合開始剤の含有量は、重合性化合物(本発明の場合は、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレート)の全量を100質量%とする重量百分率において、0.02〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることが特に好ましい。光重合開始剤の含有量が0.02質量%以上であれば、重合性化合物を短時間に重合でき、10質量%以下であれば、光重合開始剤の残渣が硬化物中に残存しにくい。
また、主剤となるウレタンアクリレート100重量部に対して、添加モノマーとなるアクリル系モノマー(2種類以上用いる場合は合計量)は10〜50重量部であることが好ましく、その場合、ウレタンアクリレート100重量部を基準とした光重合開始剤の含有量は、0.01〜1.0重量部が好ましい。
添加モノマーとなるアクリル系モノマーのうち、親水基を有する(メタ)アクリレートが占める割合は、40〜100重量%が好ましい。
【0040】
本発明においては、光重合後の粘着剤組成物において、モノマーのうち、40〜80重量%、好ましくは50〜75重量%の範囲で重合させることが望ましい。つまり、60〜20重量%、好ましくは50〜25重量%の範囲で未反応モノマーを残すことが望ましい。重合率が40重量%に満たない場合には、得られた重合体に充分な粘着性が付与されず、また、80重量%を超える量の重合率では凝集力の低下が見られ、粘着剤層を剥離除去した時に糊残り現象を生じることがある。
【0041】
ここで、粘着剤用原料組成物を塗布して粘着フィルムを形成するときに用いる基材の材質は、透明性、耐熱性を有していて、及び紫外線硬化性樹脂組成物の硬化を阻害する350nm〜400nm近傍の紫外線領域に散乱・吸収が小さいものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ナイロン、ポリイミド、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンやポリトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、セロファン、セルロース系フィルムなどを挙げることができる。これら材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
特に前記基材のうち、耐熱性、紫外線透過性、及び価格の面から、ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
なお、基材の厚みは16μm〜200μmを有することが好ましく、50μm〜188μmを有することが更に好ましい。基材の厚みが薄過ぎるとハンドリング性が悪く、また、基材の厚みが厚過ぎると、コスト面、ハンドリング性で不利である。
【0042】
粘着剤用原料組成物を基材に塗布する塗布装置は、基材上に粘着剤用原料組成物を均質に供給して塗布する手段を備えるものであればどういった装置でも良いが、連続的に粘着剤用原料組成物を基材上に供給して塗布できるよう、粘着剤用原料組成物を貯蔵するタンク、送液ポンプ、配管、異物除去フィルター、コーターヘッドからなる構成を持つ装置が好ましい。コーターヘッドは、例えばダイコーターなどが好適である。
塗布装置により、基材の片面に粘着剤用原料組成物の薄膜層(塗布膜)が形成される。塗布装置で塗布した直後の粘着剤用原料組成物は、未硬化でかつ液状であり、塗布に適した流動性を有する。
【0043】
塗布膜の厚みは、0.05〜3mmの間にあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2mmである。塗布膜の厚みは、光重合によって得られる粘着剤層の厚さにほぼ等しい。よって、本発明の粘着フィルムにおける粘着剤層の厚さも0.05〜3mmの間にあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2mmである。
塗布膜が薄すぎると、粘着剤層の厚さも薄くなるので、衝撃吸収性能が悪くなる。また、塗布膜が厚過ぎるとコストが上昇する点で不利である。
【0044】
粘着フィルムの製造方法において、粘着剤用原料組成物は、塗布装置から基材またはセパレーター(1)上に供給され、塗布膜を形成する。塗布膜の上にはさらに別のセパレーター(2)が塗布膜上に供給され、ニップロール等によって貼合される。
ニップロールは、貼合のための加圧手段を備えることが好ましく、また、フィルムに対して均一な圧力をかけ易いよう、少なくとも一方のロールがゴム製であることが好ましい。
【0045】
セパレーター(1)、(2)としては、例えば、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム、ノルボルネン系フィルム、フェノキシエーテル型重合体フィルム、有機耐透気性フィルムをはじめとする単層または複層プラスチックフィルムにシリコーン系剥離剤等による剥離処理を施して少なくとも片面が剥離性を有する剥離フィルム;紙にシリコーン系剥離剤等による剥離処理を施して少なくとも片面が剥離性を有する剥離紙;フッ素系樹脂フィルムやある種のポリオレフィン系フィルムなどフィルム自体が剥離性を有するフィルム;剥離剤を内添して製膜したフィルムなどが挙げられる。セパレーターの厚さに限定はないが、通常は5〜500μm、好ましくは10〜100μmとすることが多い。セパレーター(1)、(2)は、使用する粘着剤や使用用途(剥離強度)に合わせて選ばれるものとする。
【0046】
紫外線照射装置は、紫外線を発生させる光源部と、光源で発生する熱を除去する冷却装置を備える。光源部は、塗布膜中の重合性化合物を十分に硬化させる紫外線照射量を得られるものであれば高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等のランプ光源や、紫外線領域の発光ピークを持つ発光ダイオードなど自由に選択できる。
塗布膜は、塗布膜中の重合性化合物が適度な光照射により重合することで、凝集力を高め、粘着性を発現する。
【0047】
本発明の粘着フィルムは、PDP(プラズマディスプレイ)、液晶パネル、有機ELパネルなどの各種ディスプレイに部材を貼り合わせる用途の粘着テープとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下「部」とあるのは重量部である。
【0049】
(実施例1)
剥離フィルム(1)、(2)の一例として、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理を施した厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
ウレタンアクリレートとしてダイセル・サイテック株式会社製EBECRYL(登録商標)270(Tg:−27℃、分子量1500、粘度3000mPa・s(60℃))を100部、親水性基を保有するモノマーとして4−ヒドロキシルブチルアクリレート(4HBA)を10部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:Irgacure(登録商標)184、チバスペシャリティーケミカルス製)1部よりなる無溶剤型の高粘度粘着性樹脂組成物を準備した。
剥離フィルム(1)に、その高粘度粘着性樹脂組成物をコートし、コーティング層上に剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量400mJ/cmの条件で紫外線照射を行ってコーティング層を硬化させた。これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。粘着層の厚みは200μmとなるように調整した。
【0050】
(実施例2)
親水性基を保有するモノマーとしてヒドロキシルエチルアクリレート(HEA)を10部にする以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例3)
親水性基を保有するモノマーとしてヒドロキシルプロピルアクリレート(HPA)を10部にする以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例4)
親水性基を保有するモノマーとして4HBAを20部とする以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例5)
親水性基を保有するモノマーとしてHEAを20部とする以外は実施例2と同様に実施した。
(実施例6)
親水性基を保有するモノマーとしてHPAを20部とする以外は実施例3と同様に実施した。
(実施例7)
ウレタンアクリレートとしてダイセル・サイテック株式会社製EBECRYL(登録商標)230(Tg:−55℃、分子量5000、粘度40000mPa・s(25℃))を使用する以外は実施例1と同様に実施した。
【0051】
(実施例8)
ウレタンアクリレートとしてダイセル・サイテック株式会社製EBECRYL(登録商標)230を100部、親水性基を保有するモノマーとしてアクリル酸(AA)20部、光重合開始剤(商品名:Irgacure(登録商標)184、チバスペシャリティーケミカルス製)1部よりなる無溶剤型の高粘度粘着性樹脂組成物を準備した。
剥離フィルム(1)に、その高粘度粘着性樹脂組成物をコートし、コーティング層上に剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量400mJ/cmの条件で紫外線照射を行ってコーティング層を硬化させた。これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。粘着層の厚みは200μmとなるように調整した。
【0052】
(実施例9)
実施例8の無溶剤型の高粘度粘着性樹脂組成物の塗料安定性(相溶性)を上げるために、さらに2−エチルへキシルアクリレート(2EHA)を20部添加し無溶剤型の高粘度粘着性樹脂組成物を準備した。
剥離フィルム(1)に、その高粘度粘着性樹脂組成物をコートし、コーティング層上に剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量400mJ/cmの条件で紫外線照射を行ってコーティング層を硬化させた。これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。粘着層の厚みは200μmとなるように調整した。
【0053】
(比較例1)
剥離フィルム(1)、(2)の一例として、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理を施した厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
ウレタンアクリレートとしてダイセル・サイテック株式会社製EBECRYL(登録商標)270を100部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:Irgacure(登録商標)184、チバスペシャリティーケミカルス製)1部よりなる無溶剤型の高粘度粘着性樹脂組成物を準備した。
剥離フィルム(1)に、その高粘度粘着性樹脂組成物をコートし、コーティング層上に剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量400mJ/cmの条件で紫外線照射を行ってコーティング層を硬化させた。これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。粘着層の厚みは200μmとなるように調整した。
【0054】
(比較例2)
剥離フィルム(1)、(2)の一例として、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理を施した厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
ウレタンアクリレートとしてダイセル・サイテック株式会社製EBECRYL(登録商標)230を100部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:Irgacure(登録商標)184、チバスペシャリティーケミカルス製)1部よりなる無溶剤型の高粘度粘着性樹脂組成物を準備した。
剥離フィルム(1)に、その高粘度粘着性樹脂組成物をコートし、コーティング層上に剥離フィルム(2)を泡が入らないように貼合させた。出力120W/cm、ランプ距離150mm、積算光量400mJ/cmの条件で紫外線照射を行ってコーティング層を硬化させた。これにより、剥離フィルム(1)/粘着剤層/剥離フィルム(2)の層構成を有する粘着フィルムを得た。粘着層の厚みは200μmとなるように調整した。
【0055】
(白濁試験結果の評価方法)
表1に示すように、上記の実施例または比較例により得られた粘着テープを、耐熱耐湿環境試験条件として、(1)60℃×90%RH、(2)85℃×95%RHの2種類の条件に、それぞれ調整したオーブンへ投入して、12時間保持後に耐熱耐湿環境から取り出し、23℃50%RHの環境下に置き、供試したサンプルの変化を目視にて確認する。
観察は耐熱耐湿環境から取り出した直後から開始し、1時間経過までに目視による白濁が認められないサンプルの試験結果を(○)、白濁が認められたサンプルの試験結果を(×)として、表2に示した。分かりにくい場合は比較として、耐熱耐湿環境試験に投入していない粘着テープと比較し、その白濁度合いに変化が無いことを確認する。
【0056】
【表1】

【0057】
なお、表1において、「2EHA」は2−エチルヘキシルアクリレートを表し、「AA」はアクリル酸を表し、「4HBA」は4−ヒドロキシルブチルアクリレートを表し、「HEA」は2−ヒドロキシルエチルアクリレートを表し、「HPA」はヒドロキシルプロピルアクリレートを表し、「Irg184」はIrgacure(登録商標)184を表す。
また、ウレタンアクリレートの種類は、それぞれ上記の製造方法中に挙げる製品名を用いて示した。EBECRYL(登録商標)270はTg:−27℃、分子量1500、粘度3000mPa・s(60℃)であり、EBECRYL(登録商標)230はTg:−55℃、分子量5000、粘度40000mPa・s(25℃)である。
【0058】
【表2】

【0059】
比較例1、2よりウレタンアクリレート単体で重合させる場合は、いずれの条件でも白濁してしまう。しかし、実施例1〜9より、ヒドロキシル基やカルボキシル基を有するモノマーを添加し、光重合させることで白濁を改善できる。アクリル酸は、耐熱性・密着性などを向上させるために有効なモノマーである。
樹脂との密着性や粘着力を向上させるためにアクリル酸などの極性の高い材料をウレタンアクリレートへ添加する場合があるが、ウレタンアクリレートとアクリル酸では相溶性の悪い場合が考えられる。ウレタンアクリレートの疎水性が高い場合、親水性のモノマー(アクリル酸など)が攪拌直後は相溶しているように見えるが、数時間経過すると分離してしまうことがある。実施例9のように2EHAなどのアクリル酸エステルモノマーを添加することで、ウレタンアクリレートとアクリル酸の相溶性を向上させ塗料の安定性を向上させることが可能となるので、生産性も考えるとより有効であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基として親水基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物の製造方法であって、少なくとも次の工程(1)〜(2)
(1)ウレタンアクリレートの少なくとも1種類と、アクリル系モノマーの少なくとも1種類とが溶解され、前記アクリル系モノマーの一部又は全部が親水基を有する(メタ)アクリレートである粘着剤用原料組成物を調製する工程、
(2)前記粘着剤用原料組成物を用い、光照射による重合反応をさせて粘着剤組成物を得る工程、
を有することを特徴とする粘着剤組成物の製造方法。
【請求項2】
官能基として親水基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤層を備えた粘着フィルムの製造方法であって、少なくとも次の工程(1)〜(3)
(1)ウレタンアクリレートの少なくとも1種類と、アクリル系モノマーの少なくとも1種類とが溶解され、前記アクリル系モノマーの一部又は全部が親水基を有する(メタ)アクリレートである粘着剤用原料組成物を調製する工程、
(2)前記粘着剤用原料組成物を、粘着フィルムの基材またはセパレーター上に塗布して粘着剤塗布膜を形成する工程、
(3)前記粘着剤塗布膜への光照射による重合反応をさせて粘着剤層を得る工程、
を有することを特徴とする粘着フィルムの製造方法。
【請求項3】
(A)ウレタンアクリレート100重量部と、
(B)一部又は全部が親水基含有の(メタ)アクリレートであるアクリル系モノマーの少なくとも1種類:10〜50重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜1.0重量部と、
を含有することを特徴とする粘着剤用原料組成物。
【請求項4】
基材またはセパレーター上に、請求項3に記載の粘着剤用原料組成物を塗布した後、光照射による重合反応をさせて得られる厚みが0.05〜3mmの粘着剤層を備えた粘着フィルム。
【請求項5】
ディスプレイに部材を貼り合わせる用途の粘着テープである請求項4に記載の粘着フィルム。

【公開番号】特開2011−63701(P2011−63701A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214912(P2009−214912)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】