説明

粘着剤組成物

【課題】より良好な粘着特性を有するとともに、粘着特性の温度依存性が小さい粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】ポリマー成分と、軟化剤成分と、樹脂成分とを含む粘着剤組成物である。軟化剤成分として、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物を含有する。本発明の粘着剤組成物においては、ポリマー成分100質量部に対し、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物を10〜150質量部にて、樹脂成分を10〜200質量部にて、それぞれ添加することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着剤組成物(以下、単に「組成物」とも称する)に関し、詳しくは、軟化剤成分の改良に係る粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤として用いられる組成物として、高分子量成分(ポリマー成分)に対し、軟化剤成分および樹脂成分を添加して構成される粘着剤組成物が知られている。この場合、高分子量の基材成分には、全体の強度保持機能を中心として、被着物との親和性が要求特性として求められる。
【0003】
これに対し、軟化剤成分は、接着剤全体の硬さを調整することにより被着物との密着性を改良する機能を有する。また、樹脂成分は、粘着剤組成物に凝集力を付与することにより組成物の接着力そのものを改良する機能を有する。このため、粘着剤組成物の粘着力を改善するためには、一般に、凝集力改善の手法に基づき、基材成分に対し多量の樹脂成分を配合する手法が用いられる。
【0004】
粘着剤組成物に関する改良技術としては、例えば、ゴム成分が天然ゴム10〜40重量%、イソプレンラバー10〜40重量%及びブロック共重合体20〜80重量%からなり、ゴム成分100重量部に対して粘着付与樹脂40〜80重量部及び軟化剤20〜50重量部を含有している粘着剤組成物が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−176592号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の基材成分に対し多量の樹脂成分を配合する手法では、組成物全体のTgが上昇してしまうために、温度に対する粘着特性の依存性が非常に大きなものとなってしまうという問題点が存在する。また、粘着特性の温度依存性を改善するために、粘着剤組成物の基材成分を架橋して用いることも試みられてきたが、この場合、被着体との親和性が低下して、接着力自体が低下してしまう問題が発生する。
【0007】
そこで本発明の目的は、より良好な粘着特性を有するとともに、粘着特性の温度依存性が小さい粘着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下のようなことを見出した。すなわち、上記問題点から、粘着剤組成物の粘着特性全体を改善するためには、ポリマー基質そのものに関しては非架橋型のポリマー運動性の高い状態を維持させるとともに、それに最小限の軟化剤成分および樹脂成分を配合して、かつ、粘着特性の温度依存性の発現を防止するための技術的対応手法を導入することが必要となると考えられる。
【0009】
かかる観点から、本発明者らは、各種材料要素に対して鋭意検討を行った結果、既に高い凝集力を有する材料であって、温度依存性改善のため加硫ゴムを伸展させうる材料として、アスファルトを軟化剤成分として用いることで、非常に高い粘着特性の確保と温度依存性の改善との両立が可能であることを見出すに至った。
【0010】
一般に用いられる軟化剤成分としては、アロマオイル、ナフテンオイルに代表される石油系軟化剤が知られている。これに対し、アスファルト系の材料は、これら一般的なオイル類に比べて高分子量の成分を有し、さらに一定の極性基を有しており、これらの特性は、一般に粘着材用の軟化剤成分としては好ましい特性であると考えられる。また、アスファルト系の材料に関しては、一般に材料価格が安価であり、より優れた経済性をも期待できる。
【0011】
一方で、これらアスファルト系材料の問題点としては、一般に用いられるポリマー成分としての天然ゴム(NR)類に対し、必ずしも十分な親和性を有していないという点がある。このように親和性が十分ではない軟化剤成分を用いると、組成物中に存在するアスファルトミクロ相成分により、基材の粘着特性や粘着強度それ自体が十分でなくなる場合が生ずる。
【0012】
本発明者らは、このアスファルトの問題点を解決するために、加硫ゴム粒子の補強性およびゴム成分とアスファルト成分との双方に対する親和性の良さに注目して、さらに詳細な検討を行ったところ、軟化剤成分として、アスファルトに対し加硫ゴム粉を混合して得られた混合物を用いることで、ポリマー成分に対する親和性の問題についても解消できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、ポリマー成分と、軟化剤成分と、樹脂成分とを含む粘着剤組成物において、前記軟化剤成分として、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物を含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の粘着剤組成物においては、前記ポリマー成分100質量部に対し、前記アスファルトと加硫ゴム粉との混合物が10〜150質量部にて、前記樹脂成分が10〜200質量部にて、それぞれ添加されてなることが好ましい。また、前記ポリマー成分は、好適にはイソプレン系ゴムである。さらに、本発明においては、前記樹脂成分として、C5系の樹脂成分を含有することが好ましい。
【0015】
また、前記樹脂成分は、下記一般式(I)を重合させた重合体、または下記一般式(I)と下記一般式(II)とを重合させた共重合体であることも好ましい。

(R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン基を示す。R〜Rは同一であっても異なっていてもよい。)

(R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン基を示す。R〜Rは同一であっても異なっていてもよい。)
前記重合体は、より好適には、前記一般式(I)中のRがメチル基であり、Rが水素原子であり、Rがp位のtert−ブチル基であるものである。また、前記重合体は、より好適には、前記一般式(I)中のRがメチル基であり、Rが水素原子であり、Rがp位のtert−ブチル基であり、前記一般式(II)中のRがメチル基であり、R及びRが水素原子のものである。
【0016】
さらに、前記樹脂成分は、下記一般式(III)と下記一般式(IV)とを重合させた共重合体であることも好ましい。

(R〜R12は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン基を示す。R〜R12は同一であっても異なっていてもよい。)

(R13〜R15は水素原子、アルキル基、アリール基、またはハロゲン基を示す。R13〜R15は同一であっても異なっていてもよい。)
前記重合体は、より好適には前記一般式(III)中のR〜R12が水素原子であり、前記一般式(IV)中のR13がメチル基であり、R14が水素原子であり、R15がp位のtert−ブチル基のものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記構成としたことにより、より良好な粘着特性を有するとともに、粘着特性の温度依存性が小さい粘着剤組成物を実現することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適実施形態について詳細に説明する。
本発明の粘着剤組成物は、ポリマー成分と、軟化剤成分と、樹脂成分とを含むものであり、軟化剤成分として、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物を含有する点に特徴を有する。かかるアスファルトと加硫ゴム粉との混合物はポリマー成分に対する親和性に優れるため、これにより、良好な粘着特性を確保することができるとともに、粘着特性の温度依存性が小さい粘着剤組成物とすることができる。
【0019】
本発明において用いるアスファルトと加硫ゴム粉との混合物とは、アスファルト中に加硫ゴム粉を混合して得られるものである。使用可能なアスファルトとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ストレートアスファルト40/60、60/80、80/100、100/120等を挙げることができる。これらはいずれも市販品を容易に入手可能であり、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ストレートアスファルトは、脱色アスファルトであってもよい。特には、安価である点で、アロマ系原油から得られるストレートアスファルトを好適に用いることができる。
【0020】
また、加硫ゴム粉としては、平均粒径が10〜5000μmの範囲内である微細ゴム粉を用いることが好ましい。加硫ゴム粉の材質等については特に限定されず、NRやSBR、BR、IR等の一般的なジエン系ゴムをポリマー成分とした硫黄架橋ゴムであれば、いずれも用いることができる。具体的には例えば、ゴムタイヤ、ウェザーストリップ、ホース類等の使用済み廃材、成形の際に生成する不要の端材、成形不良品等から得られる粉砕ゴム粉を好適に用いることができる。
【0021】
本発明に用いるアスファルトと加硫ゴム粉との混合物における加硫ゴム粉の量は、アスファルト100質量部に対し、通常5〜50質量部、好適には5〜20質量部とする。加硫ゴム粉の量がこの範囲よりも多いと十分な混合攪拌が困難となる場合があり、この範囲よりも少ない場合は、目的の性能の発現が十分観察されなくなるおそれがある。
【0022】
本発明に用いるアスファルトと加硫ゴム粉との混合物は、十分な混合状態が得られるものであれば、その調製方法については制限されない。特には、高温溶融させたアスファルトに対し加硫ゴム粉を溶解したものが良好な性能を示す。したがって、具体的には例えば、120℃以上、好適には130℃〜180℃で溶融したアスファルトに対し加硫ゴム粉を混合して、プロペラ対応の攪拌機を用いて内容物の溶解を確認しながら攪拌を行い混合物を調製することができ、特に1時間以上、好適には1時間〜5時間攪拌した場合に良好な混合物を得ることができる。
【0023】
本発明の粘着剤組成物において使用できるポリマー成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴムや、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などのブタジエン系ゴム等が挙げられる。
【0024】
また、樹脂成分としては、例えば、ロジンエステルや水添ロジンエステル、不均化ロジンエステルや重合ロジンエステルなどのロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂や水添クマロンインデン樹脂、フェノール変性クマロンインデン樹脂やエポキシ変性クマロンインデン樹脂などのクマロンインデン系樹脂、ポリテルペン樹脂やスチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂などのテルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂や芳香族系石油樹脂、芳香族変性脂肪族系石油樹脂や芳香族系純モノマー樹脂などの石油系樹脂等のうちから、適宜選択して用いることができる。中でも特に、C5系の成分を有するテルペン系の樹脂やテルペンフェノール樹脂が、ポリマー成分との親和性の高さにおいて、好ましい結果を与える。
【0025】
特にまた、樹脂成分としては、下記一般式(I)を重合させた重合体、または下記一般式(I)と下記一般式(II)とを重合させた共重合体を用いることも好ましい。これら重合体は、ポリマー成分との親和性が高く、高い凝集力を付与することができるため、樹脂成分として用いることにより、良好な粘着特性を有する粘着剤組成物を得ることができる。

(R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン基を示す。R〜Rは同一であっても異なっていてもよい。)

(R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン基を示す。R〜Rは同一であっても異なっていてもよい。)
【0026】
一般式(I)を重合させた重合体としては、一般式(I)中のRがメチル基であり、Rが水素原子であり、Rがp位のtert−ブチル基であるものを、より好適に用いることができる。また、一般式(I)と一般式(II)とを重合させた共重合体としては、前記一般式(I)中のRがメチル基であり、Rが水素原子であり、Rがp位のtert−ブチル基であり、前記一般式(II)中のRがメチル基であり、R及びRが水素原子であるものも、より好適に用いることができる。
上記重合体を樹脂成分として用いることにより、粘着保持力を維持しつつ、高い接着力を有する粘着剤組成物を得ることができるため、好ましい。
【0027】
あるいはまた、樹脂成分に用いる重合体として、下記一般式(III)と下記一般式(IV)とを重合させた共重合体も、ポリマー成分との親和性が高く、粘着剤組成物に対し高い凝集力を付与することができるため、好ましい。

(R〜R12は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン基を示す。R〜R12は同一であっても異なっていてもよい。)

(R13〜R15は水素原子、アルキル基、アリール基、またはハロゲン基を示す。R13〜R15は同一であっても異なっていてもよい。)
【0028】
一般式(III)と下記一般式(IV)との共重合体としては、一般式(III)中のR〜R12が水素原子であり、一般式(IV)中のR13がメチル基であり、R14が水素原子であり、R15がp位のtert−ブチル基であるものをより好適に用いることができる。
上記重合体を樹脂成分として用いることにより、粘着剤組成物において、粘着保持力を維持しつつ、高い接着力を得ることができるため、好ましい。
【0029】
なお、本発明においては、軟化剤成分として前記したアスファルトと加硫ゴム粉との混合物を用いるが、他の従来公知の軟化剤成分と併用することも可能である。かかる他の軟化剤成分としては、例えば、アロマオイル、ナフテンオイルなどの石油系軟化剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の粘着剤組成物における各成分の好適配合量としては、ポリマー成分100質量部に対し、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物については10〜150質量部、特には30〜100質量部であり、樹脂成分については10〜200質量部、特には30〜150質量部である。また、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物以外の他の軟化剤を併用する場合のその好適配合量は、ポリマー成分100質量部に対し、10〜70質量部とすることができる。
【0031】
本発明の粘着剤組成物においては、上記ポリマー成分、軟化剤成分および樹脂成分に加えて、通常使用される各種添加剤を適宜配合することが可能である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(軟化剤成分の調製例)
JOMO製のストレートアスファルト60/80の2kgを、攪拌機を備えた加熱装置付反応槽中で、130℃にて溶解させた。また、下記表1中に示す配合のゴム組成物を、常法に従い混練し、加硫して得られた加硫ゴムをロール粉砕して、平均粒径0.5mmに調整した加硫ゴム粉を作製した。これを、溶解アスファルト中に250gにて投入し、その後、1時間攪拌して、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物を得た。
【0033】
【表1】

*1 ゴム成分:JSR社製,#1500(SBR)
*2 老化防止剤:大内新興化学工業(株)製,ノクラック6C
*3 加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製,ノクセラーDM
*4 加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製,ノクセラーD
【0034】
[合成例1](p−tertブチル−αメチルスチレン単独重合体)
500mlの四つ口フラスコに、撹拌装置、温度計、還流冷却管を取り付け、ここにp−tert−ブチル−α−メチルスチレン100.0g、トルエン250mlを反応混合液として仕込み、良く撹拌した。その後、均一に分散させた反応混合液を、氷冷下で2℃まで冷却した。一方、滴下ロートに、触媒として三フッ化ホウ素フェノール錯体1.0gとトルエン2.0gとを入れ、該滴下ロートを上記四つ口フラスコに取り付けた。
【0035】
次いで、2〜4℃に保持しながら、ここに上記触媒を15分かけて滴下し、重合反応を開始させた。触媒の滴下終了後、2〜4℃に保持したまま、さらに30分撹拌した。重合反応終了後、この反応液を1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄、続けて水洗した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この反応液をあらかじめ用意したエタノール800g中に30分かけて滴下して、粉末の析出物を得た。この粉末をろ過し、更にエタノール300gで洗浄した後、減圧乾燥して収量40.0gを得た。得られた重合体は数平均分子量(Mn):1451、重量平均分子量(Mw):3416であった。
【0036】
[合成例2](p−tertブチル−αメチルスチレン/αメチルスチレン共重合体)
500mlの四つ口フラスコに、撹拌装置、温度計、還流冷却管を取り付け、ここにp−tert−ブチル−α−メチルスチレン40.0g、α−メチルスチレン60.0g
とメチルシクロヘキサン250mlを反応混合液として仕込み、良く撹拌した。その後、均一に分散させた反応混合液を、ドライアイスで冷却したエタノール浴を用いて1〜3℃まで冷却した。
【0037】
一方、滴下ロートに、触媒として三フッ化ホウ素フェノール錯体1.0gとトルエン2.0gとを入れ、該滴下ロートを上記四つ口フラスコに取り付けた。次いで、1〜3℃に保持しながら、ここに上記触媒を15分かけて滴下し、重合反応を開始させた。触媒の滴下終了後、1℃に保持したまま、さらに30分撹拌した。重合反応終了後、この反応液を1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄、続けて水洗した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この反応液をあらかじめ用意したエタノール800g中に30分かけて滴下して、粉末の析出物を得た。この粉末をろ過し、更にエタノール200gで洗浄した後、減圧乾燥して収量40.0gを得た。得られた重合体は数平均分子量(Mn):1008、重量平均分子量(Mw):2950であった。
【0038】
[合成例3](インデン/p−tertブチル−αメチルスチレン共重合体)
1Lの四つ口フラスコに、撹拌装置、温度計、還流冷却管を取り付け、ここにp−tert−ブチル−α−メチルスチレン46.0gとインデン114.0g、トルエン400mlを反応混合液として仕込み、良く撹拌した。その後、均一に分散させた反応混合液を、オイルバスで68℃まで加熱した。一方、滴下ロートに、触媒としてボロントリフロライドフェノール錯体1.6gとトルエン3.2gとを入れ、該滴下ロートを上記四つ口フラスコに取り付けた。
【0039】
次いで、68〜70℃に保持しながら、ここに上記触媒を15分かけて滴下し、重合反応を開始させた。触媒の滴下終了後、68℃に保持したまま、さらに30分間撹拌した。重合反応終了後、反応液を室温以下まで冷却した。この反応液を1N水酸化ナトリウム水溶液300gで洗浄、続けて水洗した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この反応液をあらかじめ用意したエタノール1280g中に30分かけて滴下して、粉末の析出物を得た。この粉末をろ過し、更にエタノール300gで洗浄した後、減圧乾燥して収量80.0gの白色粉末を得た。得られた重合体は数平均分子量(Mn):1300、重量平均分子量(Mw):2203であった。
【0040】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定>
上述した樹脂のMnおよびMwの測定は、GPCにより下記測定条件に従って測定した。
液体:テトラヒドロフラン
流速:1mL/min
カラム:shodex KF−6+shodex KF−803+shodex KF−802
温度:40℃
サンプル注入量:50μL
なお、shodex KF−6、shodex KF−803およびshodex KF−802は商品名であり、分子量の校正には標準ポリスチレンを用いた。
【0041】
(実施例1)
ニーダー型混練り装置を用いて、天然ゴム100質量部に対し、テルペン系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル(株)製,YSポリスター)60質量部、上記アスファルトと加硫ゴム粉との混合物からなる軟化剤成分30質量部、および老化防止剤(大内新興化学工業(株)製,ノクラック6C)1質量部を混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。さらに、この組成物をトルエン100質量部に溶解して、粘着剤溶液を得た。これを厚さ30μmのポリエステルフィルム上に塗工し、100℃で5分間乾燥させて、厚さ約40μmの粘着剤層を有する粘着テープを得た。
【0042】
(実施例2)
樹脂成分として、p−tertブチル−αメチルスチレン単独重合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物および粘着テープを得た。
【0043】
(実施例3)
樹脂成分として、p−tertブチル−αメチルスチレン/αメチルスチレン共重合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物および粘着テープを得た。
【0044】
(実施例4)
樹脂成分として、インデン/p−tertブチル−αメチルスチレン共重合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物および粘着テープを得た。
【0045】
(比較例1)
軟化剤成分として、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物に代えてアロマオイルを用いた以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物および粘着テープを得た。
【0046】
(比較例2)
軟化剤成分として、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物に代えてJOMO製のストレートアスファルト60/80を用いた以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物および粘着テープを得た。
【0047】
実施例および比較例で得られた各粘着テープについて、下記の特性につき評価した。その結果を、下記の表2中に示す。
【0048】
(接着力)
280番の耐水研磨紙で表面研磨した厚さ2mmのステンレス鋼板に、幅20mmの粘着テープを、2kgのゴムローラを一往復させることにより圧着して、30分経過後、その接着力を調べた(180度ピール、引張り速度300mm/分、23℃、65%R.H.)。結果は、比較例1を100とする指数にて示す。数値が大なるほど結果が良好である。
【0049】
(保持力)
温度23℃において、ベーク板に、上記に準じて粘着テープを幅5mm×長さ20mmの面積にて圧着して垂下し、その粘着テープの自由端に500gの均一荷重を負荷した。これを温度40℃に保持して、粘着テープが剥がれ落ちるまでの時間をクリープ試験機にて測定した。結果は、比較例1を100とする指数にて示す。数値が大なるほど結果が良好である。
【0050】
【表2】

【0051】
上記表2の結果より、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物を軟化剤成分として用いた実施例1〜4の粘着剤組成物は、従来のアロマオイルまたはストレートアスファルトを軟化剤成分として用いた比較例1,2に比して、接着力および凝集性(保持力)に優れ、実用性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー成分と、軟化剤成分と、樹脂成分とを含む粘着剤組成物において、前記軟化剤成分として、アスファルトと加硫ゴム粉との混合物を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリマー成分100質量部に対し、前記アスファルトと加硫ゴム粉との混合物が10〜150質量部にて、前記樹脂成分が10〜200質量部にて、それぞれ添加されてなる請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリマー成分がイソプレン系ゴムである請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分として、C5系の樹脂成分を含有する請求項1〜3のうちいずれか一項記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記樹脂成分が下記一般式(I)を重合させた重合体、または下記一般式(I)と下記一般式(II)とを重合させた共重合体である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の粘着剤組成物。

(R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン基を示す。R〜Rは同一であっても異なっていてもよい。)

(R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン基を示す。R〜Rは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記樹脂成分において、前記一般式(I)中のRがメチル基であり、Rが水素原子であり、Rがp位のtert−ブチル基である請求項5記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記樹脂成分において、前記一般式(I)中のRがメチル基であり、Rが水素原子であり、Rがp位のtert−ブチル基であり、前記一般式(II)中のRがメチル基であり、R及びRが水素原子である請求項5記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記樹脂成分が下記一般式(III)と下記一般式(IV)とを重合させた共重合体である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の粘着剤組成物。

(R〜R12は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン基を示す。R〜R12は同一であっても異なっていてもよい。)

(R13〜R15は水素原子、アルキル基、アリール基、またはハロゲン基を示す。R13〜R15は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記樹脂成分において、前記一般式(III)中のR〜R12が水素原子であり、前記一般式(IV)中のR13がメチル基であり、R14が水素原子であり、R15がp位のtert−ブチル基である請求項8記載の粘着剤組成物。

【公開番号】特開2009−221471(P2009−221471A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36329(P2009−36329)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】