説明

粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法及び同装置

【課題】粘着性を有するテープ幅0.1〜2.0mmの極細幅テープの長尺捲回物を広幅のテープ素材からスリット分割巻取り法によって、高能率に、しかも素材の品質特性を損なうことなく製造可能なものとする。
【解決手段】粘着性原反素材1をスリッター機3によってスリット幅0.1〜2.0mmの極細幅にスリットして分割したのち、この分割された単位テープ10群を、前方の至近位置に配置した、多数本の離型性分離用ピン42を並列配置した捌き装置4の櫛状分離器40に扇形拡開状に導入したのち、ピンチローラユニット5を経てトラバース巻取機6によりボビン61に巻取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着層を有する積層フィルム材料からなる極細幅の長尺テープ捲回物の製造方法及び同製造装置に関する。更に詳しくは、合成樹脂フィルムあるいは金属箔等の薄膜状基材の1層ないしは複数層を含み、それらの層間あるいは片面または両面に粘着剤層が積層された極薄の粘着性積層フィルム材料を、極細幅の0.1〜2.0mmのスリット幅にスリットしたのち、この極細幅テープをボビンに巻き取って、数百から数千メートルに及ぶ長尺のテープ捲回物とする極細テープ捲回物の製造方法、及びこれに用いる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂フィルムないしシート、あるいは金属箔を基材とする細幅テープの長尺捲回物の製造は、テープ幅が2.5mmを超えるようなものである場合、あるいは、テープ幅が2.5mm以下であっても粘着性を有しない非粘着性のテープであるような場合においては、たとえば下記特許文献1〜4に記載されるように、原反ロールから繰り出したテープ材料をスリッターで多数本の細幅テープにスリットしたのち、これを前方の巻取り機の巻取軸上に並列状態に導いて、所定のテンションをかけながら巻取るという、比較的簡易な方法と装置によって支障なく行うことができた。
【特許文献1】特開2006−151523号公報
【特許文献2】特許第350268号公報
【特許文献3】特開平10−167528号公報
【特許文献4】特開2006−193290号公報
【0003】
ところが、近年、半導体分野、その他のエレクトロニクス分野、あるいは医療分野等の精密かつ高度技術分野において、種々の用途目的のために、テープ幅がたとえば0.1mm〜1.5mmといった極細幅であり、かつ厚さが15〜100μmの極薄であり、しかも基材の片面あるいは両面に粘着剤層を有して、それ自体が粘着性をもった複合高機能材料として使用される粘着性極細幅テープにあっては、従来慣用されていた上記のようなスリット分割巻取り方式による製造方法によっては、品質的に安定したものを製造することができなかった。
【0004】
これは次のような理由による。
【0005】
即ち、粘着性の積層フィルム材料の場合、スリッターによってこれを所要のスリット幅にスリットしても、このスリットされた極細幅の隣接する単位テープ同士がスリット直後において相互に粘着し、くっついてしまう傾向を示し容易に分離しない。このため、スリット後の単位テープの1本づつに所定のテンションをかけて、例えば上下方向に引張って無理に分離させることが考えられるが、殊にテープ基材が合成樹脂フィルムであり、またテープ幅が例えば0.1〜1.0mmであるような極細幅のものである場合には、当該極細幅の単位テープに有害な伸びを生じ、応力歪を内在させることになって原反材料に固有の所要の品質特性を維持させることができない。のみならず、甚だしくはテープ切れ、層間分離、傷付き、表裏反転等のトラブルを発生し易く、捲回物そのものの製造が困難になることが多かった。
【0006】
このような問題点のために、高機能材料として市場ニーズの高い粘着性をもった極細幅テープの長尺捲回物は、その提供が阻まれ、ニーズに対応し得ていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の背景下において、極薄かつ極細幅でしかも粘着性を有するテープにあっても、これを支障なく、広幅の原反材料からスリットして、無理な外力を加えることなく、従って固有の品質特性を損なうことなく、各単位テープ毎に分離捲回し長尺の捲回物として製作提供することを可能にする製造方法及び装置の開発提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題に対し、下記の手段を提供する。
【0009】
[1]原反ロールから繰り出した粘着性積層フィルム材料をスリッター機によって多数の極細幅の単位テープにスリットしたのち、このスリット直後において前記単位テープ群を、多数本の離型性分離用ピンが各単位テープ幅より僅かに広い間隔で並列状に並んだ櫛状分離器を有する捌き装置に扇形拡開状に導通せしめ、これによって各単位テープを分離せしめたのち、この単位テープ群を分離状態を維持したまま一対の駆動ニップロール間に並列状態に導入して前方に送り出し、次いでこのニップロールから送り出された各単位テープを巻取り機によって個別にボビンに巻取るものとしたことを特徴とする粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【0010】
[2]粘着性フィルム材料は、厚さ15〜200μmであり、極細幅単位テープへのスリット幅は0.1〜2.0mmの範囲である前項[1]に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【0011】
[3]スリッター機から捌き装置までの間隔距離を150mm以下に設定して、スリット直後の至近位置において単位テープを捌き装置に導入せしめるものとすることを特徴とする前項[1]または[2]に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【0012】
[4]スリッター機から捌き装置へ扇形拡開状に導入する単位テープ群の拡開角度を、24°以下に設定する前項[1]〜[3]のいずれか1項に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【0013】
[5]捌き装置における櫛状分離器の隣接する分離ピン間の間隔を単位テープの幅より0.05〜0.7mmの範囲で相対的に大きく設定する前項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【0014】
[6]巻取り機による単位テープの巻取りは、ボビンをその軸線方向に往復移動させつつ巻取るトラバース巻きによって行う粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【0015】
[7]原反ロールから繰出した厚さ15〜200μmの粘着性積層フィルム材料を、0.1〜2.0mmのスリット幅にスリットするスリッター機と、
その前方の近接位置に配置され、前記スリッター機によってスリットされた極細幅の多数の単位テープ群を扇形拡開状に導入して各単位テープを分離せしめる捌き装置と、
該捌き装置によって分離された単位テープ群を、分離状態を維持したまま並列状態に挾着して前方に送り出すニップロールユニットと、
該ニップロールユニットから送り出された各単位テープを、個別にボビンに巻き取るトラバース巻取機とを備え、
前記捌き装置は、多数本の離型性分離用ピンが、前記単位テープ幅より僅かに広い間隔をあけて並列状に立設された櫛状分離器を有し、スリットされた各単位テープを上記分離用ピン間のテープ通路に1本づつ導通せしめることにより、隣接する単位テープ同士を分流分離せしめるものとなされていることを特徴とする粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造装置。
【0016】
[8]捌き装置における櫛状分離器の離型性分離用ピン間のテープ通路の幅が、0.55〜2.20mmの範囲に設定されている前項[7]に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造装置。
【0017】
[9]スリッター機から捌き装置の櫛状分離器までの間隔距離が150mm以下に設定されている前項[7]または[8]のいずれか1項に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造装置。
【発明の効果】
【0018】
前記[1]項に記載の本発明の最も基本的な構成においては、極細幅にスリットした多数の単位テープを、スリット直後の位置で、多数本の離型性分離用ピンが各単位テープ幅より僅かに広い間隔で並んだ櫛状分離器を有する捌き装置に、扇形拡開状に導通せしめることで相互に確実に、しかも無理なく分離せしめるものとしていることを主たる特徴点とする。この特徴事項によって、本発明の製造方法によれば、粘着性を有するものでありながら、スリットされた極細幅の単位テープに無理な引張り応力を加えることなく、従って、有害な伸びや変形、内部応力の残留等の影響を与えることなく、テープ材料のもつ固有の品質特性を良好に維持した粘着性極細幅テープの長尺捲回物を、支障なく高能率に製作提供することを可能にする。
【0019】
また、前記[2]項のように、材料の厚さを15〜200μm、スリット幅を0.1〜2.0mmに設定するときは、従来のスリット分割巻取り方式では製造が困難であったような粘着性極細幅長尺テープの捲回物の製作提供を可能とする。
【0020】
また、前記[3]項のように、スリッター機から捌き装置までの間隔距離を150mm以下に設定して、スリット直後の至近位置にて単位テープを捌き装置に導入せしめるものとするときは、スリット後の隣接する単位テープ相互を格別の引き離しのための張力を与えることなく確実に分離分散せしめることができ、愈々高品質の極細幅長尺テープ捲回物を得ることができる。
【0021】
また、前記[4]項のように、スリッター機から捌き装置へ扇形拡開状に導入する単位テープ群の拡開角度を、最大24°以下に設定するものとすることにより、最外側に位置する単位テープにあっても、櫛状分離器の分離ピン間のテープ通路に入るテープの平面視傾斜角度を比較的緩やかな12°以下のものとなしうる。従って、上記テープ通路内で当該単位テープが上下方向に90°転回してしまったり、時に上下反転してしまうというようなトラブルの発生を確実に回避し得て、愈々品質安定性に優れた粘着性極細幅長尺テープ捲回物を得ることができる。
【0022】
また、前記[5]項のように、捌き装置における櫛状分離器の隣接する分離ピン間のテープパス間隔を、単位テープの幅よりも0.05〜0.7mmの範囲で相対的に大きく設定するものとすることにより、前記[3]項及び[4]項の構成による効果をより一層確実に達成することができる。
【0023】
また、前記[6]項のように、単位テープの巻き取りを、ボビンをその軸線方向に往復移動させつつ巻取るトラバース巻きによって行うものとするときは、極細幅で数百〜数千メートルにも及ぶ長尺のテープ捲回物にあっても巻き姿の型崩れや崩潰のおそれのない取扱い易い形態安定性に優れた捲回物を提供しうる。
【0024】
更にまた、製造装置に係る前記[7]〜[9]項の各発明にあっては、製造方法に係る前記[1]〜[6]の各発明を確実に実施でき、その効果を確実に享受することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、この発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、この発明に係る粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造装置の全体構成の概要を示すものである。
【0027】
当該製造装置は、広幅の粘着性積層フィルム材料(1)の原反を巻いた原反ロール(2)から繰り出される上記材料(1)を、所定のスリット幅(W)にスリットするスリッター機(3)と、その前方、即ち下流方向の近接位置に配置された、スリッター機(3)によってスリットされた各単位テープ(10)(10)を分離させる捌き装置(4)と、該捌き装置(4)によって分離された単位テープ群を、分離状態を維持したまま並列状態に挾着して前方に送り出すニップローラユニット(5)と、更にその前方に配置された、単位テープ(10)の数に対応する数のボビンを備えた巻取り機(6)とを主要構成部材として備える。
【0028】
テープ材料とする粘着性積層フィルム材料(1)は、用途によって種々の構成のものが用いられる。例示すれば、厚さ10〜45μm程度のポリイミド系、PPS系、PET系、エポキシ系等の合成樹脂フィルムの片面あるいは両面に5〜7mm程度の厚さで粘着剤層を積層した厚さ15〜70mm程度のもの、あるいは上記に更に鋼箔、アルミニウム蒸着層等の金属薄膜層や、ガラス繊維等の抗張性補強層を粘着剤層を介して積層したもの、更には外表面に離型紙を積層した厚さ70〜200μm程度のもの等を挙示することができる。
【0029】
スリッター機(3)は、原反ロール(2)から繰り出された上記積層フィルム材料(1)を、0.1〜2.0mmの範囲内の所要のスリット幅(W)でスリットして多数の極細幅単位テープ(10)に分割するものであり、好ましくは、上下1対の刃軸(31)(32)にそれぞれスリット用の刃物(33)(34)が脱着交換可能に装着されたせん断式のスリッターが用いられる。もちろん本発明は、かかるせん断式スリッターに限定されるものではなく、公知のナイフ方式あるいはレーザーカット方式によるスリッターを用いても良いが、簡易な設備で正確なスリット幅にスリットすることができる点で、せん断式スリッターの適用が有利である。
【0030】
スリッター機(3)の前方至近位置に配置される捌き装置(4)は、本発明のポイントをなす重要な構成要素である。
【0031】
先ず、この捌き装置(4)の好ましい具体的な構成について説明する。
【0032】
該捌き装置(4)は、その重要構成部材として図3及び図4に示すような櫛状分離器(40)を有する。そして、図2に示すように分離器(40)と、これを取付けた基台(41)とで構成されている。
【0033】
更に、櫛状分離器(40)は、多数本の分離用ピン(42)と、これが、隣接するピン相互間にテープ通路(43)としての所定間隔(P)をあけて並列状に立設されたピン台(45)とからなる。
【0034】
分離用ピン(42)は、表面にフッ素樹脂被膜等による低摩擦係数の離型処理が施された剛性金属線、たとえば直径(L)が1.25mmのピアノ線が用いられ、これがピン台(45)の上面に上方突出高さを例えば19mmに設定して固植されている。
【0035】
分離用ピン(42)は、スリッター機(3)によってスリットされた極細幅の単位テープ(10)(10)の隣接するもの同士の間に入り込んで、両者を分離する役目を担うものである。従って、隣接する分離用ピン(42)(42)相互間の間隔(P)は、テープ通路(43)の幅を画定するものとして、単位テープ(10)の幅(W)より僅かに広い間隔に設定されている。より具体的には、単位テープ(10)の幅(W)より0.05〜0.7mmの範囲で相対的に広い間隔(P)に設定されている。即ち、P≧W+0.05〜0.7mmの範囲に設定されている。この間隔(P)が狭すぎるときは、テープ通路(43)を通過する単位テープ(10)に幅方向の圧力が加わって有害な変形を生じさせるおそれがあるのみならず、通過時の摩擦抵抗の増大によって、単位テープ(10)に付加される張力が増大し、有害な伸びの原因になる。逆に広すぎるときは、スリッター機(3)によって、スリットされた多数の極細幅単位テープ(10)群中の特に両端部近傍の単位テープ(10)の捌き装置(4)への導入角度が過大となり、分離器(40)の部分で単位テープ(10)に転回、上下反転等を生じさせるおそれが増大するため好ましくない。隣接する分離用ピン(42)(42)間の最も好ましい間隔(P)は、多くの実験結果から導き出し得たところによれば、概ね、P≧W+0.1〜0.5mmの範囲である。
【0036】
要求される粘着性極細幅単位テープ(10)の幅(W)は、用途によって種々異なる。そのうち、本発明は、概ね0.1〜2.0mm幅の粘着性テープの製造に好適に適用しうるものである。
【0037】
そこで、このような範囲で、幅を異にした各種の粘着性テープの製造に安易に対応しうるように、捌き装置(4)に装着する櫛状分離器(40)は、上記の間隔(P)を異にした複数種類のものを用意しておき、これらを製造しようとするテープ幅(W)に応じて選択使用しうるものとしておくことが望ましい。
【0038】
ここに、各種のスリット幅(W)と、それに適合する分離器(40)の分離用ピン間隔(P)との好適な関係を例示すれば、下記表1のとおりである。
【0039】
【表1】

【0040】
また、スリッター機(3)から捌き装置(4)までの間隔距離(F1)の設定も重要な事項の1つである。上記距離(F1)は、図3に示すようにスリッター機(3)の刃軸(31)(32)間のせん断位置から、分離器(40)の分離用ピン(42)(42)列に至るまでの距離であり、好ましくは最大150mmでそれ以下の距離に設定されるべきである。この距離(F1)が、150mmを超えて長くなると、単位テープ(10)(10)の相互分離の確実性が低下する傾向を示し、単位テープ(10)の品質特性の維持に悪影響を及ぼす可能性が増大する。しかし、90mm以下の短すぎる距離(F1)に設定するときは、分離器(40)に導入される時点で単位テープ(10)の一部に変形を生じさせるおそれが増大する。従って、少なくとも90〜150mmの範囲に設定するべきであり、好ましくは、110mmを中心として、プラス・マイナス10mmの範囲、即ち100〜120mmの範囲に設定することが望ましい。
【0041】
上記のような範囲に分離用ピン間隔(P)と距離(F1)を設定することにより、スリッター機(3)から捌き装置(4)に導かれる多数条の単位テープ(10)(10)群を、図3に示すように、好ましい扇形の拡開角度(θ)で拡開せしめた状態で捌き装置(4)に導入することができる。
【0042】
この導入時の単位テープ(10)群の扇形拡開角度(θ)は24°以下に設定するべきである。つまり、スリッター機(3)の刃軸(31)(32)の軸線と直交するテープの仮想送り出し線と、単位テープ(10)群の最外側の単位テープ(10)とのなす平面視傾斜角度(θ/2)が12°以下になるように設定すべきである。この拡開角度は、単位テープ(10)に確実な捌き作用を及ぼし、単位テープ(10)(10)相互の確実な分離のために必要とする角度であり、大きすぎると単位テープ(10)に有害な変形を生じさせるおそれがある。実験上知り得た好ましい拡開角度(θ)は、最大20°、更に好ましくは最大17°である。
【0043】
図示実施例において、上記櫛状分離器(40)は、上面に上記分離ピン(42)を植設した板状のピン台(45)を図2に示すように基台(41)の一側面に取付ボルト(44)で着脱可能に固定して取付けられている。取付ボルト(44)が挿通されるピン台(45)の取付孔(図示略)は、上下方向に長い長孔に形成され、分離器(40)の取付高さ位置を可変設定しうるものとなされている。
【0044】
基台(41)は、内部に電磁石を内蔵した、電磁吸着固定式のブロック体であり、上面に装備したON・OFFスイッチ(46)(46)の切替により、機台定盤面(B)上の所定位置にしっかりと磁力吸着固定し、あるいは取外し可能なものとなされている。
【0045】
尚、スリッター機(3)の上下刃軸(31)(32)間のスリット高さ位置に対し、捌き装置(4)は、分離用ピン(42)の高さの中間部を同一の高さ位置に設定されるものである。
【0046】
捌き装置(4)の前方のニップローラーユニット(5)は、スタンドフレーム(50)に、調整機構(54)によって高さ及びニップ圧を可変設定可能とした上下1対のニップローラ(51)(52)を装備したものである。
【0047】
このニップローラユニット(5)は、図2、3に示すように捌き装置(4)を通過した単位テープ(10)群を、整然と平行状に引き揃えた形で前方に送り出す機能を担うものであり、捌き装置(4)の前方の至近位置に配置されている。具体的には、捌き装置(4)の分離用ピン(42)列の位置からその前方に、20mmの距離(F2)を隔てた位置にニップ位置を設定して配置されている。
【0048】
単位テープ(10)が、片面あるいは両面に露出した粘着面を有するものである場合には、上記ニップロール(51)(52)は、選択的にあるいは両方とも表面に離型処理が施された離型性ロールが用いられることはいうまでもない。
【0049】
ニップローラユニット(5)の前方に配置された巻取り機(6)は、図1に示すように原反材料(1)からスリットして分割される単位テープ(10)に対応する数の巻取り軸(60)を有し、該巻取軸(60)に装備する巻取り用ボビン(61)に上記単位テープ(10)を数百から数千メートルに及ぶ長尺状態に巻き取って、所期する粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製品に仕上げられるものである。
【0050】
この巻取機(6)の個々の巻取りユニットの構成を図5に示す。同図に示すように、巻取りユニットは、前記特許文献2に記載のような巻取技術をもって、単位テープ(10)をボビン(61)上に所定の角度でトラバース巻きに巻き上げるものである。即ち、図5に矢印(X)で示すように、ボビン(61)をその軸線方向に所定のストローク幅で往復動させつつ、かつ単位テープ(10)に矢印(Y)で示すようなテンションローラ(63)のスウィング運動で所定のテンションをかけつつ、ボビン(61)の外周面に、押圧ローラ(62)で押さえつけながら巻き取るものである。
【0051】
以上説明した図示実施態様の装置において、極細幅長尺テープの一連の製造工程は、次のようにして行われる。
【0052】
即ち、原反ロール(2)から繰出された粘着性積層フィルム材料(1)は、先ずその前方に位置するせん断式スリッター機(3)によって多数条の極細幅の単位テープ(10)にスリットされる。
【0053】
そして、このスリットされた単位テープ(10)群は、続いてその前方至近位置に配置された捌き装置(4)に導入される。即ち、捌き装置(4)の分離器(40)における分離用ピン(42)(42)間のテープ通路(43)(43)に1本づつ導入される。
【0054】
ここに、上記単位テープ(10)群は、捌き装置(4)に至る過程で隣接する単位テープ(10)(10)間の間隔が次第に拡がった形になる。即ち、図3に示すように、テープ群は扇形状に拡開されつつ、分離器(40)に導入される。従って、この過程で、隣接する単位テープ(10)(10)間には、相互間に確実に所定の間隔が保持され、相互のがくっつき合う凝着・粘着現象の発生が防止される。
【0055】
上記スリッター機(3)でスリットされたのち捌き装置(4)を通過する単位テープ(10)の移送力は、前方に配置されたニップローラユニット(5)の回転駆動力によって与えられる。
【0056】
次いで、このニップローラユニット(5)から送り出された多数条の単位テープ(10)は、更にその前方に配置された巻取機(6)により、多数個のボビン(61)にトラバース巻きに巻き取られ、長尺捲回物製品となされるものである。
【実施例1】
【0057】
厚さ45μmのPETフィルムの片面に厚さ5μmの粘着層を形成した厚さ50μm、幅20mmの広幅テープを、粘着性積層フィルム材料として用いた。
【0058】
そして、これをせん断式スリッター機(3)により、0.8mmのスリット幅で25条の極細幅単位テープ(10)に分割した。
【0059】
次いで、スリッター機(3)の前方110mmの位置に配置した捌き装置(4)に上記単位テープ(10)群を導入した。
【0060】
ここに捌き装置(4)の分離器(40)は、その分離用ピン(42)として、表面にフッ素樹脂コーティングした直径1.25mmのピアノ線を用い、ピン間隔(P)を1.10mmに設定したものを用いた。その結果、スリッター機(3)から捌き装置(4)に至る25条の単位テープ(10)群の扇形拡開角度(θ)は概ね17°であった。
【0061】
次いで、上記単位テープ(10)群をピンチローラユニット(5)に並行状に導き、これより送り出された各単位テープ(10)をトラバース巻取機(6)によりボビン(61)上に3000mの長さで巻き取り、所期する粘着性極細幅長尺テープ捲回物を得た。
【0062】
上記の実施例においては、全体の製造工程をスムーズに、何らトラブルを生じることなく行い得た。またボビン(61)上の単位テープ(10)は、原反に用いた積層フィルム材料(1)の物性をそのまま維持し、伸びや変形を有しないものであることを確認し得た。
【実施例2】
【0063】
原反材料として、上から順に銅箔(厚さ20μm)、粘着層(厚さ7μm)、ガラス繊維層(厚さ20μm)、粘着層(厚さ7μm)、エポキシ樹脂フィルム(厚さ18μm)の5層積層からなる幅20mm、厚さ72μmの粘着性フィルム材料を用いた。
【0064】
そして、スリット幅を0.5mmに設定して、40条の単位テープ(10)に分割する一方、捌き装置(4)の分離用ピン間隔(テープ通路間隔(P))を0.5mmに設定した櫛状分離器(40)を用い、その他の条件は前記実施例1と同様の条件下で極細幅長尺捲回物の製造を行った。
【0065】
この実施例においても、極細幅テープ捲回物を何ら支障なく製造することができ、かつ極細幅テープ(10)の品質特性も全く問題のないものであることを確認し得た。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施態様に係る製造装置の全体の概要構成を示す斜視図である。
【図2】図1の装置中の巻取機部分を除く部分の側面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】捌き装置の一部の部分斜視図である。
【図5】巻取機における1つの巻取りユニット部分を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1…粘着性接層フィルム材料
2…供給ロール
3…スリッター機
4…捌き装置
5…ピンチローラユニット
6…巻取機
10…単位テープ
31、32…刃軸
33、34…刃物
40…分離器
41…基台
42…分離用ピン
43…テープ通路
51、52…ピンチローラ
60…巻取軸
61…ボビン
62…押さえローラ
63…テンションローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反ロールから繰り出した粘着性積層フィルム材料をスリッター機によって多数の極細幅の単位テープにスリットしたのち、このスリット直後において前記単位テープ群を、多数本の離型性分離用ピンが各単位テープ幅より僅かに広い間隔で並列状に並んだ櫛状分離器を有する捌き装置に扇形拡開状に導通せしめ、これによって各単位テープを分離せしめたのち、この単位テープ群を分離状態を維持したまま一対の駆動ニップロール間に並列状態に導入して前方に送り出し、次いでこのニップロールから送り出された各単位テープを巻取り機によって個別にボビンに巻取るものとしたことを特徴とする粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【請求項2】
粘着性フィルム材料は、厚さ15〜200μmであり、極細幅単位テープへのスリット幅は0.1〜2.0mmの範囲である請求項1に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【請求項3】
スリッター機から捌き装置までの間隔距離を150mm以下に設定して、スリット直後の至近位置において単位テープを捌き装置に導入せしめるものとすることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【請求項4】
スリッター機から捌き装置へ扇形拡開状に導入する単位テープ群の拡開角度を、24°以下に設定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【請求項5】
捌き装置における櫛状分離器の隣接する分離ピン間の間隔を単位テープの幅より0.05〜0.7mmの範囲で相対的に大きく設定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【請求項6】
巻取り機による単位テープの巻取りは、ボビンをその軸線方向に往復移動させつつ巻取るトラバース巻きによって行う粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造方法。
【請求項7】
原反ロールから繰出した厚さ15〜200μmの粘着性積層フィルム材料を、0.1〜2.0mmのスリット幅にスリットするスリッター機と、
その前方の近接位置に配置され、前記スリッター機によってスリットされた極細幅の多数の単位テープ群を扇形拡開状に導入して各単位テープを分離せしめる捌き装置と、
該捌き装置によって分離された単位テープ群を、分離状態を維持したまま並列状態に挾着して前方に送り出すニップロールユニットと、
該ニップロールユニットから送り出された各単位テープを、個別にボビンに巻き取るトラバース巻取機とを備え、
前記捌き装置は、多数本の離型性分離用ピンが、前記単位テープ幅より僅かに広い間隔をあけて並列状に立設された櫛状分離器を有し、スリットされた各単位テープを上記分離用ピン間のテープ通路に1本づつ導通せしめることにより、隣接する単位テープ同士を分流分離せしめるものとなされていることを特徴とする粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造装置。
【請求項8】
捌き装置における櫛状分離器の離型性分離用ピン間のテープ通路の幅が、0.55〜2.20mmの範囲に設定されている請求項7に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造装置。
【請求項9】
スリッター機から捌き装置の櫛状分離器までの間隔距離が150mm以下に設定されている請求項7または8のいずれか1項に記載の粘着性極細幅長尺テープ捲回物の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−81287(P2008−81287A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264898(P2006−264898)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(300070941)株式会社イトウ六 (3)
【Fターム(参考)】