説明

粘着部材

【課題】離型剤の塗布を行わないタイプの剥離フィルムでありながら、かつ、粘着樹脂層に対する十分な剥離性を有する剥離フィルム層と、粘着樹脂層から構成される粘着部材を得ること。
【解決手段】密度が910kg/m〜940kg/mであるエチレン−α−オレフィン共重合体を含み、縦延伸されてなる剥離フィルム層と、粘着樹脂層とから構成される粘着部材。前記剥離フィルム層の延伸倍率が3〜15倍である、粘着部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用資材や包装用資材の分野において、プラスチックフィルム、プラスチックシート、アルミ箔、ガラス、および紙などを互いに積層、固定して用いる際、種々の粘着部材が用いられる。この粘着部材の使用方法として、粘着樹脂層を、剥離フィルム層の表面に膜状に形成し、剥離フィルム層と一体化された該粘着部材を被着体に貼合し、剥離フィルム層を粘着樹脂層から剥がした後、該粘着樹脂層表面を他の被着体に貼合することによって二つの被着体を相互に固定する方法がある。
剥離フィルム層としては、例えば特許文献1に記載されるように、例えば、ポリエステルフィルムなどが用いられ、粘着樹脂層から容易に剥離できるように、シリコーン系化合物などの離型剤を、剥離フィルム層の粘着樹脂層と接する面に塗布して用いられている。しかしながら、シリコーン系化合物の塗布には大きな費用を要し、また、塗布には有機溶剤等を用いる必要があるため環境への悪影響が指摘されているため、近年、シリコーン系化合物などの塗布を行わないタイプの剥離フィルムが求められている。
しかしながら、粘着樹脂層と、粘着樹脂層に対する十分な剥離性を有する剥離フィルムからなる粘着部材は未だ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−107149号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる現状において、本発明の解決しようとする課題は、離型剤の塗布を行わないタイプの剥離フィルムでありながら、かつ、粘着樹脂層に対する十分な剥離性を有する剥離フィルム層と、粘着樹脂層から構成される粘着部材を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、密度が910kg/m〜940kg/mであるエチレン−α−オレフィン共重合体を含み、縦延伸されてなる剥離フィルム層と、粘着樹脂層とから構成される粘着部材に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シリコーン系化合物などの離型剤を用いることなく、粘着樹脂層に対して十分な剥離性を有する剥離フィルム層と粘着樹脂層からなる粘着部材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いて、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られる。
炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ドデセン−1、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1等が挙げられ、好ましくはブテン−1およびヘキセン−1である。また、上記の炭素原子数4〜12のα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。コモノマー含量を記載ください。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンの含有量は、好ましくは0.5〜30重量%であり、より好ましくは1.0〜20重量%である。
【0008】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は910kg/m〜940kg/mであり、好ましくは、915kg/m〜935kg/mである。エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が910kg/m未満である場合、延伸性が悪化して延伸フィルムを得ることができない場合があるため好ましくない。エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が940kg/mを超えると、延伸によってフィルムが裂けやすくなり、剥離作業性が悪化することがあるため好ましくない。
【0009】
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は0.1〜10g/10分であり、好ましくは0.2〜5g/10分であり、より好ましくは0.3〜3g/10分である。エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分未満の場合、溶融粘度が高くなりすぎて押出加工性が悪化することがあり、10g/10分を超えた場合、延伸性が悪化する場合がある。
エチレン−α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS K6760に従い、190℃において計測される値である。
【0010】
剥離フィルム層は、高圧法低密度ポリエチレンおよび/または高密度ポリエチレンを含んでもよい。
【0011】
剥離フィルム層のヘイズは10%以下であることが好ましく、5%で以下であればさらに好ましい。ヘイズが10%を超えると異物検査性を行う場合に検査の妨げとなる場合がある。
【0012】
剥離フィルム層の厚さは10〜100μmであることが好ましく、15〜80μmであればさらに好ましい。フィルム厚みが10μm未満ではフィルムの強度が不足して剥離作業性が悪化する場合があり、フィルム厚みが100μmを超えると、巻き取った際のフィルムの嵩が過大となって作業性が悪化する場合がある。
【0013】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体には、公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤等が挙げられる。
【0014】
剥離フィルム層は、Tダイ法やインフレーション法などの公知のフィルム製造法で製造された未延伸フィルムを、少なくとも縦方向へ延伸することによって製造することができる。未延伸フィルムの厚さは特に制限されず、剥離フィルム層の厚さと延伸倍率との観点から、30〜300μmが好ましい。
前記の未延伸フィルムを縦方向へ一軸延伸する方法として、ロール延伸機を用いるロール延伸法で例示される公知の方法を挙げることができる。延伸倍率は、剥離性と剥離作業性確保の観点から、好ましくは3〜15倍、より好ましくは4〜10倍である。ここで、ロール延伸法における延伸倍率は、高速ロールの周速度と低速ロールの周速度との比で表される。
【0015】
縦方向への一軸延伸における延伸温度は特に制限されず、適宜設定することができ、一般に70〜130℃、好ましくは90〜120℃である。延伸工程の後に熱セット工程を設けることができ、熱セット工程の温度は延伸温度と同じでもよく異なっていてもよい。また、熱セット工程においてフィルムを縦方向に弛緩させてもよい。
未延伸フィルムを縦方向へ一軸延伸する方法として、加熱オーブンによる延伸法を用いることもできる。この方法は、雰囲気加熱されたオーブン中にフィルムを通過させ、オーブン入口に設けられたロールの周速度とオーブンの出口に設けられたロールの周速度に速度差を与えることにより縦方向の延伸を行うものである。この場合、好ましいオーブンの雰囲気温度は70〜130℃、好ましくは90〜120℃である。
【0016】
剥離フィルム層は縦方向への延伸に加えて横方向に延伸されてもよい。縦方向への延伸に加えて横方向へ延伸を行う場合、一般に遂次二軸延伸法が用いられるが、同時二軸延伸法を用いることもできる。
遂次二軸延伸法では、上記の縦方向への延伸の後、いわゆるテンター延伸装置を用いて横方向へ延伸することができる。横方向への延伸倍率は一般に3〜8倍である。
同時二軸延伸法では、チューブラー延伸法や同時二軸延伸テンター法を用いることができる。
【0017】
本発明で用いる粘着樹脂層を構成する粘着樹脂としては公知のアクリル系粘着剤を挙げることができる。アクリル系粘着剤は架橋型、非架橋型のいずれでもよいが、通常、架橋型のものが好適に用いられる。
【0018】
この架橋型アクリル系粘着剤は、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の低Tgモノマーを主モノマーとし、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基モノマーと共重合することで得られたアクリル共重合体を架橋剤にて、架橋することにより得ることができる。このアクリル共重合体としては、重量平均分子量が10万〜100万の範囲内のものが好ましく用いられる。
【0019】
この架橋剤としては、イソシアネート系、メラミン系、エポキシ系等公知の架橋剤を用いることができる。また、この架橋剤としては、粘着剤中に緩やかに広がった網目状構造を形成するために、3官能、4官能といった多官能架橋剤がより好ましく用いられる。また、粘着樹脂中の架橋状態は、ゲル分率で評価した場合、70%以上が好ましい。
【0020】
本発明における粘着樹脂層の厚みは、通常1〜30μmとすることが適当である。
【0021】
粘着樹脂層は基材フィルムに支持される形態であってもよく、基材フィルムを用いることなく剥離フィルム上に直接形成されるものであってもよい。基材フィルムを用いたものである場合、基材フィルムとしては熱可塑性樹脂フィルムを用いることができ、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が好適に用いられる。基材フィルムを用いない形態にあっては、2枚の剥離フィルム層で粘着樹脂層を挟む構成とすることができる。
【0022】
本発明の粘着部材は、自動車部品、建築材料、装飾品、印刷部材および光学製品等の分野における二つの部材の貼り合わせと固定に用いることができる。すなわち、剥離フィルム層を取り去った粘着樹脂層を介して、二つの部材を貼り合わせて固定することができる。本発明の粘着部材は、特に光学用フィルム部材や光学用ガラス部材の貼り合わせに好適に用いられる。
【実施例】
【0023】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
[I]測定方法
物性測定は、下記のとおりに行った。
(1)剥離力の測定方法
23℃の恒温室において、JIS Z 0237に従い、粘着樹脂層と、測定対象となる剥離フィルム層との剥離力を、23℃の雰囲気中、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で測定した。剥離に要する力を、(株)島津製作所製オートグラフAGS−500Dによって測定し、これを剥離フィルム層の剥離力とした。
【0024】
実施例1
(1)剥離フィルム層の製造
製膜装置として住友重機械モダン社製共押出Tダイフィルム製膜機(押出機スクリュー径:50mm、Tダイ開口長:600mm)を用いた。
剥離フィルム層を構成する材料としてエチレン−ヘキセン−1共重合体(住友化学(株)社製「スミカセンE FV101」、MFR=0.9g/10分、密度=923kg/mを用い、押出機温度を260℃としてTダイから押出し、引取速度3m/分、冷却ロール30℃でフィルム製膜を行い、厚み200μmのフィルムを得た。
次に、得られたフィルムを寺尾製作所製のロール延伸機にセットし、3本の予熱ロール(110℃)、2本の熱セットロール(110℃)及び1本の冷却ロール(25℃)の順番にフィルムを通過させ、予熱ロール群と、熱セットロールおよび冷却ロール群との間に5.3倍の周速度比を与えることによって縦方向への一軸延伸を行った。このとき、熱セットロールおよび冷却ロール群の周速度は10m/分であった。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであった。
(2)粘着部材の製造
架橋型のアクリル系粘着剤からなる粘着樹脂層と、その両面をポリエステル製剥離フィルムで貼合された積層体を準備した。該ポリエステル製剥離フィルムは表面にシリコーン系化合物が塗布されたものであった。ポリエステル製剥離フィルムが貼合された積層体の片側面のポリエステル剥離フィルムを剥離して取り去り、これに替えて、上記(1)で製造した剥離フィルム層を質量2kgのゴム被覆ローラーで貼合速度300mm/分で1往復させて圧着させた。さらに、反対面のポリエステル剥離フィルムを剥離して取り去り、300mm×200mmのサイズの粘着部材を得た。コロナ処理が施された厚み38μmのポリエステルフィルムを、該粘着部材の粘着樹脂層面に貼合し、縦方向が長手方向となるよう25(mm)幅の試片に切り出した。剥離フィルム層の剥離力を表1に示す。
【0025】
実施例2
剥離フィルム層を構成する材料としてエチレン−ブテン−1共重合体(住友化学(株)社製「スミカセンL HR150」MFR=0.71g/10分、密度=922kg/m)を用い、ロール延伸機の周速比を5.0倍とした他は、実施例1と同様に一軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは45μmであった。得られた剥離フィルム層を用い、実施例1と同様にして粘着部材を製造した。剥離フィルム層の剥離力を表1に示す。
【0026】
比較例1
製膜装置として住友重機械モダン社製共押出Tダイフィルム製膜機(押出機スクリュー径:50mm、Tダイ開口長:600mm)を用いた。
剥離フィルムを構成する材料として、エチレン−ヘキセン−1共重合体(住友化学(株)社製「スミカセンE FV101」MFR=0.9g/10分、密度=923kg/m)を用い、押出機温度を260℃としてTダイから押出し、引取速度12m/分、冷却ロール30℃でフィルム製膜を行い、厚み50μmのフィルムを得た。
このフィルムを延伸することなく、剥離フィルム層として用い、実施例1と同様にして粘着部材を製造した。剥離フィルム層の剥離力を表1に示す。
【0027】
比較例2
剥離フィルムを構成する材料として高圧法低密度ポリエチレン(住友化学(株)社製「スミカセン F200−0」MFR=2.0g/10分、密度=923kg/m)を用い、比較例1と同様に厚み50μmのフィルムを得た。このフィルムを延伸することなく剥離フィルム層として用い、実施例1と同様にして粘着部材を製造した。剥離フィルム層の剥離力を表1に示す。
【0028】
参考例1
剥離フィルムを構成する材料として高圧法低密度ポリエチレン(住友化学(株)社製「スミカセン F200−0」MFR=2.0g/10分、密度=923kg/m)を用い、引取速度を3m/分として厚み200μmの無延伸フィルムを得た。このフィルムを実施例1と同様に一軸延伸を行ったが、フィルムが破断し、延伸フィルムを得ることができなかった。
【0029】
参考例2
剥離フィルムを構成する材料としてエチレン−ヘキセン−1共重合体(住友化学(株)社製「スミカセンE FV401」MFR=4.0/10分、密度=905kg/m)を用い、実施例1と同様に厚み200μmの無延伸フィルムを得た。このフィルムを実施例1と同様に一軸延伸を行ったが、フィルムが予熱ロールに巻きついて延伸フィルムを得ることができなかった。
【0030】
表1

【0031】
表2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が910kg/m〜940kg/mであるエチレン−α−オレフィン共重合体を含み、縦延伸されてなる剥離フィルム層と、粘着樹脂層とから構成される粘着部材。
【請求項2】
前記剥離フィルム層の延伸倍率が3〜15倍である、請求項1に記載の粘着部材。

【公開番号】特開2010−228431(P2010−228431A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81640(P2009−81640)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】