説明

粳餅様食品の製造方法及びその供食方法並びに粳餅様食品

【課題】この発明は、粳米を用いて米粒を含んだ包装餅を製造することを目的としたものである。
【解決手段】この発明は、水洗し、水に浸漬して十分吸水させた粳玄米乃至粳精白米を、蒸煮して、澱粉をα化させた後、臼と杵で餅搗し、米粒が10%〜60%(体積)の時に餅搗を終了し、水分30%〜60%の米粒入り粳餅とすることを特徴とした粳餅様食品の製造方法により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粳米を大量消費させる為に、パンに匹敵する食用率を得ることのできる餅片を提供し、かつ美味で外観上目新しく、サンドウィッチ様食品を手軽に提供することを目的とした粳餅様食品の製造方法及びその供食方法並びに粳餅様食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来粳餅は、米菓(せんべい)素材として多用され、我が国独特の菓子として確立している。また粳米による餅様食品として提供されたり、玄米食品として提案されている。
【0003】
我が国においては、古来から粳米を主食として採用している事実があり、現に主食としての立場はゆらぐおそれはない。
【特許文献1】特開平3−33303
【特許文献2】特開平6−327422
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記における粳米は、主食として多量に消費されているが、現在は、食の多様化が普及しているので、炊飯した粳米のみならず、主食であって、炊飯米以外の形態について考察し、粳米の多量消費を促進させようとするものである。
【0005】
現に使用されている粳米は、炊飯し主食として食用に供されている量が断然多いのは当然であるが、その外に米菓原料として用いられている。
【0006】
また前記特許文献に示されたように、餅様食品としての提案があるが、餅については、糯米が圧倒的に多い現状であり、食の多様化に伴い、粳米の消費量が低下する問題点がある。
【0007】
然して前記引用文献の餅様食品は、原料が粳米で、外観を糯米餅にしようとするものであって、餅としては、糯米に一歩を譲る問題点があった。
【0008】
そこで糯米餅に近付くことなく、むしろ粳米を使用した第三の食品を目指し、研究開発し、この発明を完成したのである。特に抵抗もなく食用に供せられること、外観上も良好で、糯米餅と異なることなどを目標としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、粳米の特性を生かし、栄養価を維持すると共に、独特の旨味と、外観の多様性を究明し、製品の多様化と、供食手段の改善を目論見、他食品との融合を目指すことも大目標として掲げたものである。
【0010】
これを整理すると、粳米の特質を維持して、その栄養価と旨味を可及的に保存すると共に、形態に工夫を加えて他食品との融和を図り、手軽に食用に供せられるべく供食形態の変化にも対応させたもので、この点に関し、今後当分の間生長を期待するものである。
【0011】
即ちこの発明は、水洗し、水に浸漬して十分吸水させた粳玄米乃至粳精白米を、蒸煮して、澱粉をα化させた後、臼と杵で餅搗し、米粒が10%〜60%(体積)の時に餅搗を終了し、水分30%〜60%の米粒入り粳餅とすることを特徴とした粳餅様食品の製造方法であり、水洗し、水に浸漬して十分吸水させた粳玄米乃至粳精白米を、蒸煮して、澱粉をα化させた後、50℃〜100℃の温水に5分〜15分入れて吸水させ、再び蒸煮した後、臼と杵で餅搗し、米粒が10%〜60%(体積)の時に餅搗を終了し、水分30%〜60%の米粒入り粳餅とすることを特徴とした粳餅様食品の製造方法である。
【0012】
また他の発明は、水洗し、水に浸漬して十分吸水させた粳玄米乃至粳精白米を蒸し、又は温水に浸漬して水分を吸収させた後、再度蒸して澱粉を完全にα化したのち、臼と杵で餅搗し、米粒が10%〜60%(体積)の時に餅搗を終了し、水分30%〜60%の米粒入り粳餅とし、これを所定の厚さとした後、冷蔵庫に収容して0℃〜7℃で2日〜3日間冷蔵した後、取り出し、切断して所定の大きさに整形した後、不通気性フィルムで密封し、脱酸状態にして冷蔵又は常温保存することを特徴とした粳餅様食品の製造方法であり、餅の含有水分30%〜60%は、粳米の蒸し方、炊飯の仕方、又は餅搗時の水分補給により調整するものであり、請求項1又は2記載の粳餅様食品を厚さ2mm〜10mm、面積50cm〜100cmに切断成形し、これを折り曲げて具材を包み、又は具材を巻き込んで、具材入り食品として食用に供するものである。
【0013】
また他の発明は、請求項1又は2記載の粳餅様食品であって、厚さ2mm〜10mm、面積50cm〜100cmの板餅の一面中央部に折目用の薄層部を設けたことを特徴とする粳餅様食品である。
【0014】
前記のように、この発明は、製造方法に工夫を加えて、形態上従来の粳餅と一歩を画すと共に、旨味を保有させると共に、供食方法と、食味に工夫を加えて、パン用の供食方法も加味したものである。
【0015】
また粳米独特の風味を保有させることにより、米飯の特性を秘めると共に、形態上、菓子、パンなどの第三の食品を示し、これによる供食手段の多様化を示すものである。
【0016】
然してバランスのとれた栄養成分をそのまま保有させて、主食としての風格を備え、かつ他食品との融和性も図り、即席性と保存性により現代社会の要請にも十分応え得るようにしたものである。
【0017】
前記粳玄米の5分つき米、7分つき米、精白米の栄養成分は表1のとおりである。
【表1】

【0018】
この発明は、米粒を10%〜60%(体積)残すことにより粳米独特の風味と、旨味を残すことができる。米粒が10%未満になると、粳米粒の風味と旨味が薄くなり、60%を越すと、食感に粒の感触が多くなる問題点を生じる。但し、栄養成分に変化はない。
【0019】
また水分30%未満では、硬さが目立ち、加温した際の柔軟性が乏しくなる問題点がある。また60%を越えると、水分過多が目立ち、風味にも悪影響を及ぼすおそれがある。硬軟両様の好みに合致するのは、水分40%〜50%である。
【0020】
この発明において、玄米を用いると、栄養成分は豊富であるが、風味などが独特になり、食用者の好みにより良否が分かれ易く、精白米は、栄養成分の低下と、風味の多様化が失われるおそれがあるので、3分づき〜7分づきが一般的であり、この場合は胚芽も含まれて風味の向上と健康及び美容に寄与するが、精白米で製餅する場合もある。
【0021】
一般に粳米は糯米より粘性が低下しているけれども、水分を多くし、又は蒸煮に工夫を加え、風味に特異性があって、粳餅を好む人もある。この点残留米粒の多寡及び水分によって、餅食品の多様性を支えている。
【0022】
前記において、再蒸煮する前に温水に浸漬するのは、水分を補給する為であって、水温は50℃〜70℃、浸漬は5分〜15分が適当である。この時間は、含水量を勘案して定める。
【0023】
次に供食性については、厚さ(例えば2mm〜10mm)及び大きさ(例えば50cm〜100cm)を工夫し、更に二枚重ね、折り重ね、又は巻き込みなどの多様性と、添加具材の多様化を図ることにより、新規食品を提供することができる。
【0024】
前記具材としては制限はないが、米飯に合う食品(例えば、のり、つくだに、漬物、煮物など)と、パンに合う食品(例えば、バター、チーズ、ハム、ソーセージ、野菜など)も抵抗感なく食用に供することができる。
【0025】
前記の他にも、惣菜の形態を変え(例えば、つくだにその他の食品をペースト状にする)、又は外形、調理方法を変えて、粳餅に塗布したり、挟み込んだり、又は餅の中に入れたり、或いは餅を小片に切って、これを具材又は惣菜と混合して調理するなど、各種の新しい調理法の新素材として採用することもできる。
【0026】
従って、和食のみならず、洋食の主要食材として各種態様で使用することもできる。
【0027】
また通常密封包装のまま冷蔵することにより、水分を保つことができると共に、食用時の調理が、加温から焼成まであって具材に見合う調理が好ましい。例えば、米菓様食感には軽く色づく程度に焼き、米飯様には、60℃〜70℃程度に加温すればよいと思われる。この場合に、耐熱性包装フィルム(例えば、ポリプロピレン、塩化ビニリデン)」の場合には、包装したまま加温することができるので、水分を保有させることができる。
【発明の効果】
【0028】
栄養価が高く、米飯でない餅様食品を提供し得る効果があるので、嗜好性が多様化できる利点がある。
【0029】
また包装し、冷蔵することにより、同一風味を長く(例えば1ヶ月以上)保有し得ると共に、加温により直ちに食用に供し得て、手軽であり、かつ日本食、洋食の両方の具材(惣菜)に合う食品である。
【0030】
更に軽く焼成することにより、芳香と旨味を増強し、主食兼間食の特性を備える効果がある。
【0031】
次に米飯食と、パン食の特性を共に備え、必要に応じビタミン(例えばビタミンB12)その他を補給し、かつ連続的に食用に供しても、飽くことが少ないなどの効果がある。
【0032】
水分が多い為に、保存食の形態には若干重いけれども、水分の少ない製品を選び、調理時に水分を補給することもできる。
【0033】
前記餅を小さく切り(例えば、0.5cm〜1cm)、熱湯に入れると、餅かゆができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
この発明は、5分づき精白処理した粳米を水(水温20℃)に8時間浸漬し(水分30%位)、取り出して水切りし、蒸籠(100℃の蒸気で蒸す)でα化すると共に、水分40%位に蒸し上げる。ついで水温60℃の温水に10分浸漬した後、再び蒸籠で蒸し、水分を補給する。
【0035】
次に、この蒸米を、臼に入れて杵で搗き上げ、米粒40%位になった時に、餅搗を終了する。この米粒の割合は、臼に入れる蒸米量と、餅搗時間を変えて測定すれば、餅搗時間を規制することにより、求める米粒の残留割合を規制することができる。前記餅搗をコンベア上の伸し餅箱(例えば、深さ5mm)に入れ、上に蓋を置いて、上下のローラで挟着加圧すれば、餅箱の深さと同一厚さの伸し餅ができる(図3)。
【0036】
前記伸し餅を、コンベア上に移し、進行方向に平行な切断と、進行方向に直角な切断により、例えば縦横10cm、厚さ5mmの餅片が連続的に製造される。
【0037】
前記餅片を一つ宛又は複数個宛、耐熱性合成樹脂(例えば、ポリプロピレンフィルム)で包装すると共に、脱酸剤を封入すれば、この発明の包装粳餅様食品ができる。
【0038】
前記各餅片の中央部に凹入部を設けて折り曲げ容易にすれば、チーズその他の具材を容易に挟み込むことができる。
【実施例1】
【0039】
この発明の実施例を図1について説明すると、粳玄米を除糠処理(例えば5分づき、糠50%除去)した後、水(15℃〜20℃)を入れた水槽に所定量(例えば4kg)を入れて、浸漬(8時間)し、水分30%とする(5.2kg)。前記水は例えばアルカリイオン水を使用する(γ−アミノ酪酸の強化を図る)。
【0040】
次にこの粳米を取り出して水切りした後、蒸籠に入れてα化する(約20分間)。前記α化した蒸米(水分40%)を取り出して、90℃の熱水に10分間入れて吸水させた後、再蒸煮(蒸籠で蒸す)した後、臼に入れて餅搗する。約5分間で米粒50%になるので、この餅を臼から取り出して伸し餅の成形装置に入れて伸し餅とし、ついでこの伸し餅を縦横に切断して一辺が10cmの正方形の餅片とすると共に、中央部に凹入部を設ける。前記熱水を使用することにより、生菌類の消滅を図る利点がある。
【0041】
前記において、粳米を炊飯して水分を十分吸収させれば、再蒸煮する必要はない。
【0042】
前記餅片1個と、脱酸剤を不通気性の耐熱性フィルムで密封包装すれば、この発明の包装粳餅様食品が出来上がる。
【0043】
前記包装粳餅様食品を冷蔵(5℃以下)して流通させれば、1ヶ月以上の保存期間がある(風味不変期間)。前記熱水に代えて温水を使用することもあるが、生菌処理としては、熱水(80℃〜100℃)の方が優れている。
【0044】
上記実施例の製品について保存試験した所、表2の結果を得た。冷蔵にすれば、保存期間は更に長くすることができる。
【表2】

【実施例2】
【0045】
この発明の実施例を図2について説明すると、5分づき粳米1(胚芽付米)4kgを水槽2に入れて8時間浸漬し、水分30%にした後、蒸籠3に入れて20分間蒸し、米粒をα化する。この場合の水分は40%位である。
【0046】
次に、前記蒸米を60℃の温水を入れた水槽2aに10分間入れた後、再び蒸籠3aに入れて蒸した水分40%の米飯を臼4に入れて、杵5で餅搗する。餅中の米粒が50%位になったときに餅搗の杵5を止めて、餅搗を終了し、餅6を伸し板7上へ取り出す。
【0047】
ついでコンベア8上に前記餅6を置いて厚さ5mmに成形して、これを冷蔵庫16に入れ、5℃前後で2日〜3日冷却した後、取り出して、切断し、所定の大きさの餅片9(例えば、10cm×10cm)に成形し、中央部に凹入部9aを設ける。
【0048】
前記餅片7と脱酸剤11を、ポリプロピレンフィルム12、12により密封包装し、四周をシールすれば、この発明の包装餅10が完成する。
【0049】
前記コンベア8上に移した伸し餅6は、例えばローラ13、13で所定の厚さに伸した後、並列回転刃14で進行方向に平行に数条に切断した後、昇降刃15で、進行方向と直角に切断し、前記餅片9とする。この切断成形については、前記回転切断刃14又は昇降切断刃15によることなく、他の手段によることができる。
【0050】
例えば、幅を規制した帯状餅を作れば、昇降切断刃15のみにより前記帯状餅を進行方向に直角に切断すれば方形に成形できる。
【0051】
前記実施例において、餅片9を1個宛包装したが、数個宛包装しても同様であり、その形状も平面正方形又は矩形が一般的である。
【0052】
前記包装餅10を密封状態で冷蔵(5℃以下)すれば、30日〜40日は同一風味で、食用に供することができる。
【0053】
前記餅搗後、直ちに冷蔵すれば品質が安定し、若干硬化するので、良質の製品となり、かつ切断が容易になる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の実施例のブロック図。
【図2】同じく製造工程の流れ図。
【図3】同じく包装餅の一部断面拡大図。
【符号の説明】
【0055】
1 粳米
2 水槽
3 蒸籠
4 臼
5 杵
6 餅
7 伸し板
8 コンベア
9 餅片
10 包装餅
11 脱酸剤
12 ポリプロピレンフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗し、水に浸漬して十分吸水させた粳玄米乃至粳精白米を、蒸煮して、澱粉をα化させた後、臼と杵で餅搗し、米粒が10%〜60%(体積)の時に餅搗を終了し、水分30%〜60%の米粒入り粳餅とすることを特徴とした粳餅様食品の製造方法。
【請求項2】
水洗し、水に浸漬して十分吸水させた粳玄米乃至粳精白米を、蒸煮して、澱粉をα化させた後、50℃〜100℃の温水に5分〜15分入れて吸水させ、再び蒸煮した後、臼と杵で餅搗し、米粒が10%〜60%(体積)の時に餅搗を終了し、水分30%〜60%の米粒入り粳餅とすることを特徴とした粳餅様食品の製造方法。
【請求項3】
水洗し、水に浸漬して十分吸水させた粳玄米乃至粳精白米を蒸し、又は温水に浸漬して水分を吸収させた後、再度蒸して澱粉を完全にα化したのち、臼と杵で餅搗し、米粒が10%〜60%(体積)の時に餅搗を終了し、水分30%〜60%の米粒入り粳餅とし、これを所定の厚さと、大きさに整形した後、不通気性フィルムで密封し、脱酸状態にして冷蔵することを特徴とした粳餅様食品の製造方法。
【請求項4】
水洗し、水に浸漬して十分吸水させた粳玄米乃至粳精白米を蒸し、又は温水に浸漬して水分を吸収させた後、再度蒸して澱粉を完全にα化したのち、臼と杵で餅搗し、米粒が10%〜60%(体積)の時に餅搗を終了し、水分30%〜60%の米粒入り粳餅とし、これを所定の厚さとした後、冷蔵庫に収容して0℃〜7℃で2日〜3日間冷蔵した後、取り出し、切断して所定の大きさに整形した後、不通気性フィルムで密封し、脱酸状態にして冷蔵又は常温保存することを特徴とした粳餅様食品の製造方法。
【請求項5】
餅の含有水分30%〜60%は、粳米の蒸し方、炊飯の仕方、又は餅搗時の水分補給により調整することを特徴とした請求項1、2又は3記載の粳餅様食品の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の粳餅様食品を厚さ2mm〜10mm、面積50cm〜100cmに切断成形し、これを折り曲げて具材を包み、又は具材を巻き込んで、具材入り食品として食用に供することを特徴とした粳餅様食品の供食方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載の粳餅様食品であって、厚さ2mm〜10mm、面積50cm〜100cmの板餅の一面中央部に折目用の薄層部を設けたことを特徴とする粳餅様食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−14330(P2007−14330A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162301(P2006−162301)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(305031774)株式会社 仁志 (2)
【Fターム(参考)】