説明

精子採取装置用ホルダ、及び精子採取装置ユニット

【課題】従来の精子採取装置を操作する際の問題点であった腕等の疲労や、回転方向への操作の困難性という問題を一挙に解決して円滑な精子採取作業を実施することができる精子採取装置用ホルダを提供する。
【解決手段】精子採取装置50を着脱自在に保持する回転ホルダ2と、該回転ホルダを回転自在に保持する固定ホルダ10と、該回転ホルダに対して回転自在に連結されたグリップ20と、を備え、固定ホルダを固定しつつグリップを軸方向に進退させたときに回転ホルダを回転させつつ軸方向へ進退させる螺旋機構30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精子採取装置用ホルダに関し、特に医学的な研究、治療のための要請や、性犯罪防止、買春防止、及び性病の蔓延防止等の社会的な要請に基づいて従来から使用されてきた精子採取装置の操作性を高めるための改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医学的な研究や治療上の必要から、男性の精子を採取するための精子採取装置が種々提案されている。例えば、夫婦間の不妊の原因を究明するために採取した精子から夫の性機能を検査したり、性機能障害を治療したり、人工授精のために精子を確保、保管する等の医学的な必要性のために精子採取装置が使用される。更に、個人的な性的欲求を解消させることによる性犯罪の予防、買春防止、性感染症感染者数の減少等の種々の社会的なニーズを満たすためにも、従来から低廉に入手することができ、しかも使い捨てタイプであるために衛生上、健康上の問題も惹起しない簡易な精子採取装置が知られている。
また、最近では健常者のみならず、各種養・介護施設における高齢者や障害者の性的欲求処理の必要性が着目されており、このような要請を満たすことができる簡易な精子採取装置の開発が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、円筒状の容器本体内に、内部に深い凹部空間を有するゲル状の合成樹脂製(スチレン系熱可塑性エラストマー)の内装材を設け、当該内装材の内面には凹部空間へ突出した複数の小突起、及び、襞状部を設けると共に、上記内装材の周囲を覆うようにウレタン樹脂からなる外装材を設けた精子採取器が提案されている。この精子採取器は、所要の硬度、肉厚を有したプラスチック製の円筒体から成る容器本体内に収納されたゲル状合成樹脂の内装材の凹部空間内にペニスを挿入した状態で容器本体を把持してペニス摺擦のための往復操作を行うように構成されている。
また、本出願人は、特許文献2〜5において、容器本体内にゲル状樹脂製のコア部材を収容した精子採取装置を提案した。
【0004】
しかし、従来の精子採取装置を用いたペニス摺擦の為の操作は、容器本体外面を片手で把持して前後方向に往復動作させる必要があったため、利用者の腕に負担がかかって疲労し易いという問題があった。また、人手によって精子採取装置を操作する場合、前後方向への往復動作は比較的実施し易い一方で、回転方向への動作を円滑に行うことは極めて困難であった。従って、ペニスに対する刺激という点で限界があった。
【特許文献1】実用新案登録第3076627号
【特許文献2】WO2006/132125A1
【特許文献3】特開2006−334176公報
【特許文献4】特開2006−340870公報
【特許文献5】特開2006−340871公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように従来の精子採取装置は、直接採取装置を把持して行うマニュアル操作であったため、作業性が悪く、使用者が短時間で肉体疲労を感じたり、或いは単純な往復動作による刺激であったためにペニスに対する刺激付与が不十分であった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、従来の精子採取装置を操作する際の問題点であった腕等の疲労や、回転方向への操作の困難性という問題を一挙に解決して円滑な精子採取作業を実施することができる精子採取装置用ホルダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る精子採取装置用ホルダは、精子採取装置を着脱自在に保持する回転ホルダと、該回転ホルダを回転自在に保持する固定ホルダと、該回転ホルダに対して回転自在に連結されたグリップと、を備え、前記固定ホルダを固定しつつ前記グリップを軸方向に進退させたときに前記回転ホルダを回転させつつ軸方向へ進退させる螺旋機構を備えていることを特徴とする。
単独の精子採取装置を使用する場合には軸方向への操作しかできないために使用目的を十分に達成できないことが多々あるが、この発明によれば、グリップを軸方向へ進退させる動作によって回転ホルダにより保持された精子採取装置が軸方向移動しつつ回転(旋回運動)するため、ペニスに対する刺激を高めて精子採取という目的を確実に達成することが可能となる。しかも、このホルダは、精子採取装置を交換することにより多数回の使用が可能である。
請求項2の発明は、請求項1において、記グリップは、前記回転ホルダの一端部により回転自在に支持されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記グリップの一部は、前記固定ホルダの外周面にオーバーハングしていることを特徴とする。
オーバーハング部は、回転ホルダの外側に位置する固定ホルダの外周面の外側に位置しているため、片手の掌でグリップを把持しやすくなり、操作性を高めることができる。
請求項4の発明は、請求項3において、前記オーバーハング部は、筒体であることを特徴とする。
オーバーハング部を筒体とすることにより、片手の掌での把持が確実となり操作性をより高めることが可能となる。
請求項5の発明は、請求項1において、前記グリップは、前記回転ホルダの外周面に対して回転自在に支持されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか一項において、回転ホルダの内面には、前記筒状容器を該回転ホルダ内に装着した際の相対回転、又は/及び軸方向位置ずれを禁止するためのストッパ部を備えていることを特徴とする。
使用中における精子採取装置の位置ずれ、脱落を有効に防止できる。
【0008】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか一項において、前記固定ホルダの軸方向長は、前記回転ホルダの軸方向長よりも短いことを特徴とする。
固定ホルダは片手の掌で把持できればよいため、回転ホルダよりも短くても良い。固定ホルダを短尺化した場合には、回転ホルダを固定しておき、固定ホルダ側を軸方向に進退させることにより、精子採取装置を回転運動させることも可能となり、操作内容に多様性を持たせ、付与する刺激内容に変化をもたせることが可能となる。
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れか一項において、前記固定ホルダは、軸方向に着脱自在に分割される第1のパーツと、第2のパーツとから構成されており、何れか一方のパーツには前記螺旋機構の一部が配置されていることを特徴とする。
これによれば、操作内容に多様性を持たせ、付与する刺激内容に変化をもたせることが可能となる。
【0009】
請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れか一項において、前記回転ホルダの軸方向長は、前記精子採取装置の軸方向長よりも短いことを特徴とする。
回転ホルダは精子採取装置を確実に保持できればよいため、精子採取装置よりも短く構成してコンパクト化してもよい。
請求項10の発明は、請求項1乃至9の何れか一項において、前記精子採取装置は、一端が開口した筒状容器と、該筒状容器内に収容されて一端面の挿入口から内部に延びる挿入空所を有したゲル状樹脂製のコア部材と、を少なくとも備えていることを特徴とする。
請求項11の発明に係る精子採取装置ユニットは、請求項1乃至10の何れか一項に記載の精子採取装置用ホルダを構成する前記回転ホルダの前記開口部内に精子採取装置を装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来完全な手作業によって操作する必要があったために操作効率が悪く疲労感を伴っていた精子採取装置による精子採取作業を、シンプルな構成のホルダを用いて効率的に操作することを可能とした。
なお、コア部材内部にローションを充填して潤滑剤とした場合、採取した精液にローションが混入した状態となるため、医学上、医療上の利用が妨げられる旨の懸念も想定されるが、性病検査、その他の用途においては、ローションが混入した精液であっても十分に検査目的を達成し得る場合が多い。特に、検査目的で精液を採取する際に、ペニスにコンドームを装着した状態で本発明の精子採取装置を違和感なく使用することが可能であり、この場合にはコンドーム内に射出された精液中にローションが混入する虞が全くないため、上記の懸念は杞憂に過ぎない。また、非検査目的で精子採取装置を使用する場合であってもコンドームを併用することにより、コア部材内部に精液が存在しない状態を維持できるので、コア部材内部の衛生状態を維持することができ、繰り返し使用が可能となり、経済的である。
【0011】
本発明に係る精子採取装置は、確かに医学的な目的以外にも、個人的な性欲を解消するための手段として使用されることはあるが、この様な用途に供されることのある精子採取装置だからといって公序良俗を乱す商品であると断定するのは、早計であり、偏見である。この種の商品が性犯罪防止、性病の拡散防止等に如何に役立つか、という広い視野に立って特許権を付与する価値があるか否かをご判断頂きたい。
因みに以下の3つの事例は事実に基づいており、これらの社会的要請を満たす手段として精子採取装置が役立つことは疑いのない事実である。なお、当然のことながら、本発明に係る精子採取装置自体は未公開、未公知の状態にある。
【0012】
まず、本出願人からの要請により、タイ赤十字エイズ研究センター(The Thai Red Cross AIDS Research Center: http://www.redcross.or.th/english/aboutus/aids.php4)
及びPDA(Population and Community Development Association http://www.pda.or.th/eng/)が、本出願人の開発に係る各種精子採取装置を使用した男性の性行動調査を行うべく準備中である。本調査内容は、精子採取装置を使用することで、男性(HIV感染者、非感染者、ゲイ、バイセクシュアル、ノーマル含む)の性欲の高まりを鎮めたり、性的リスク行動を抑制したりする効果が認められるか否かを調査するものである。現在同センターで調査の準備を進めている。
【0013】
また、本出願人は、自ら開発した精子採取装置を、神奈川県相模原市にある特別養護老人ホームに無償提供しており、高齢者の性的欲求の解消のための試行を行っている。即ち、高齢者のQOL(クオリティオブライフ)にとって「性」の部分の重要性は昨今指摘されている通りであり、こういった施設で起こるトラブルの8割方が男女問題、言うなれば色恋事と密接に絡んでいると言われる。本出願人が過去に製造、販売してきた精子採取装置は、高齢男性が「性」を楽しむ補助となっており「生きがい」や「生きる喜び・愉しみ」を提供することを通じ、QOLの向上に貢献していることが明らかとなっている。
また、我が国ではこれまで障害者の「性」に関してはなぜか長らく語られてこなかった。人間の根源的な欲求の一つであるはずの「性欲」を、障害者には無いものとし、蓋をし続けてきた。本出願人は、「誰もが性を楽しめる社会づくり」という理念実現の一環として、障害者の性に対してもアプローチを続けている。障害児を持つ親への商品提供、中等養護学校教諭から、自閉症児へのマスターベーション指導に関する相談への対応等を行っている。また、現在、北海道にある知的障害者施設でのマスターベーション介助のために、本出願人が開発した各種の精子採取装置の使用を薦めている最中である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示した実施形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る精子採取装置用ホルダの構成を示す斜視図、図2(a)及び(b)はこのホルダの組付け状態を示す正面図、及び各構成要素の構成を示す正面図である。
なお、全ての図面において、図示説明の便宜上から固定ホルダ内に位置する回転ホルダを実線で描いている。
精子採取装置用ホルダ(以下、ホルダ、という)1は、後述する精子採取装置50を一方の端部に設けた開口からその内部に着脱自在に保持する回転ホルダ(インナーカラー)2と、回転ホルダ2を回転自在且つ軸方向移動自在に保持する固定ホルダ(アウターカラー)10と、回転ホルダ2に対して回転自在に連結されたグリップ20と、から概略構成されている。
更に、ホルダ1は、固定ホルダ10を固定しつつグリップ20を軸方向に進退させる力を加えたときに回転ホルダ2をその中心軸線を中心として回転させつつ軸方向へ進退させる螺旋機構30を備えている。
【0015】
回転ホルダ2は所定の強度を備えた樹脂材料により形成された中空円筒体であり、先端開口部からその内部に精子採取装置50を軸方向へ差し込むことにより装着し、逆方向へ引き抜くことにより離脱させることができるように構成されている。回転ホルダ2の内周面適所には軸方向へ延びるガイド突起3aを形成し、このガイド突起3aは精子採取装置50の外面に形成された軸方向へ延びる被ガイド溝51に嵌合して軸方向への着脱に際してのガイドとなると共に、装着後は精子採取装置が回転ホルダに対して相対回転することを防止する回転止めとして機能する。また、回転ホルダ2の内周面に形成された周方向へ延びる係止突起3bは、精子採取装置50の外面に形成された周方向へ延びる係止溝52を嵌合させることにより精子採取装置の位置決めを行うと共に、軸方向への抜け落ちを防止する。なお、精子採取装置側にガイド溝と、係止溝を設け、回転ホルダ内周面側にガイド溝及び係止溝と係合する突起を設けても良い。
【0016】
固定ホルダ10は、回転ホルダ2の外面に着脱自在、且つ緊密に嵌合されて軸方向及び回転方向へ相対移動することができる中空円筒体であり、回転ホルダ2と同様の樹脂材料により形成される。また、固定ホルダの一端開口部周縁にはクッションパッドを設けて利用者の身体との間の摺擦を防止するように構成する。このクッションパッドは、以下に説明する他の実施形態においても共通して適用することができる。
グリップ20は、回転ホルダ2の他端部に設けた支持部4により回転自在且つ抜け落ち不能に支持されている。即ち、この例では、回転ホルダ2の端部に設けたベアリング5によってグリップ20の軸部20aを回転自在に軸支している。軸部20aは、回転ホルダ2の中心軸と一致した位置に配置されている。ベアリング5は、例えば支持部4に固定されたベアリングケースと、該ケース内に回転自在に且つ環状に配置された複数個のボールベアリングと、該ボールベアリング群によって回転自在に支持された回転部材とから構成し、この回転部材に軸部20aを固定する等、任意の構成を採用することができる。或いは、支持部4の上部壁部を貫通する軸部20aの先端に抜け落ち防止用のストッパ部材を固定することにより支持部4の壁部によってグリップ20を回転自在に軸支してもよい。
なお、上記実施形態ではベアリング5を回転ホルダ2側に配置したが、これとは逆にベアリングをグリップ20側に配置し、支持部4により回転自在に軸支された軸部をベアリングによって回転自在に軸支するようにしてもよい。
【0017】
螺旋機構30は、回転ホルダ2の外周面に所定の周方向間隔を隔てて形成された2組の傾斜突条群31と、固定ホルダ10の内周に形成されて各傾斜突条群31と噛み合う傾斜突条群35と、から構成されている。傾斜突条群31はほぼ同形状の短尺な傾斜突条31aを互いに平行かつ軸方向に沿って等間隔に配列した構成を備えており、この例では2つの傾斜突条群31を180度の周方向間隔を隔てて対向配置しているが、3組以上の傾斜突条群31を所要の周方向間隔にて配置するようにしてもよい。傾斜突条群35は傾斜突条31aよりも長尺の傾斜突条35aを固定ホルダ10の周方向全長に達するように等ピッチにて配置した構成を有している。傾斜突条群35の軸方向長は固定ホルダ10の軸方向全長に亘る必要はなく、図示のように軸方向一端部寄りに形成すればよい。
【0018】
傾斜突条群35を構成する傾斜突条35a間に、傾斜突条群31を構成する傾斜突条31aを嵌合させた状態で固定ホルダ10に対して回転ホルダ2を回転させることにより、回転ホルダ2は回転しながら固定ホルダ10に対して軸方向へ進退することができる。可能な限り短尺化した傾斜突条31aを傾斜突条35aに係合させているため、固定ホルダ10に対して回転ホルダ2を相対回転させる際の回転抵抗は極めて小さくなる。
また、回転ホルダ2は精子採取装置の少なくとも一部を十分な保持力で保持できればよいため、その軸方向長は精子採取装置と同等である必要はなく短くても良い。例えば、回転ホルダ2は精子採取装置の1/2以下の軸方向長であってもよい。また、固定ホルダ10は使用者の片手(2〜3本の指、或いは掌)で保持し得る程度の軸方向長があればよいため、その軸方向長は回転ホルダ2よりも短くても良い。
【0019】
図3(a)乃至(d)は本発明のホルダを組み付ける手順を示す図であり、一端開口部から内部に精子採取装置50を組み付けた回転ホルダ2を図3(a)(b)に示すように固定ホルダ10の一端開口からその内部に挿入する。挿入の過程で各傾斜突条31aが各傾斜突条35a間に入り込んでゆくため、回転ホルダ2を回転させることによりスムーズに固定ホルダ内部に入り込むことができる。一方、回転ホルダ2の他端部にはグリップ20が回転自在に軸支されているため、グリップ20を保持して固定ホルダ10の軸方向へ回転ホルダを押し込むことによって回転ホルダ2は傾斜突条群35に沿って回転しながら軸方向へ移動することができる(図3(c)(d))。図3(d)の収納状態にある回転ホルダを固定ホルダから抜く方向へ移動させる場合にも固定ホルダを固定させた状態でグリップ20を保持して抜く方向へ軸方向移動させることにより回転ホルダは回転しながら同方向へ移動する。
なお、精子採取装置50は、回転ホルダ2を固定ホルダ10に装着した後に回転ホルダに装着しても良い。
【0020】
次に、図4(a)(b)及び(c)は本発明のホルダの変形実施形態を示す断面図である。
図4(a)のホルダ1はグリップ20の断面形状がH型である点が特徴的である。このグリップ20は外形が円筒状(或いは多角柱状)の把持部(オーバーハング部)21aと、把持部内部に配置された中間部材21bと、から成り、中間部材21bを回転ホルダ2の他端部に設けた支持部4により回転自在且つ抜け落ち不能に支持されている。即ち、この例では、回転ホルダ2の端部に設けたベアリング5によってグリップ20の軸部21cを回転自在に軸支している。軸部21cは、回転ホルダ2の中心軸と一致した位置に配置されている。
グリップ20の把持部21aは、円筒状であるために片手によって把持し易くなっている。使用に際してはグリップ20から露出した固定ホルダ10の外面を片手で把持する一方で、グリップを他方の手で把持して軸方向へ進退させることにより回転ホルダを回転させることが可能となる。
【0021】
次に、図4(b)のホルダ1は、グリップ20の断面形状がコ字状の筒状体となっている。このグリップ20は、外形が円筒状(或いは多角柱状)の把持部(オーバーハング部)22aと、中間部材22bとから成り、中間部材22bを回転ホルダ2の他端部に設けた支持部4により回転自在且つ抜け落ち不能に支持されている。即ち、この例では、回転ホルダ2の端部に設けたベアリング5によってグリップ20の軸部22cを回転自在に軸支している。軸部22cは、回転ホルダ2の中心軸と一致した位置に配置されている。
なお、図4(a)(b)においてオーバーハング部とは、回転ホルダ2の端部により回転自在に支持されたグリップの基部から更に回転ホルダ2の外周面と並行に延びている部分を指称する。
【0022】
グリップ20の把持部22aは、円筒状であるために片手によって把持し易くなっている。本実施形態のように把持部22aによって固定ホルダ10の外面のほぼ全体が覆われているため、固定ホルダ10の他端には把持片10aを設けて固定ホルダを把持し易くしている。使用に際してはグリップ20から露出した固定ホルダ10の外面を片手で把持する一方で、グリップを他方の手で把持して軸方向へ進退させることにより回転ホルダを回転させることが可能となる。
図4(c)のホルダ1に係るグリップ20は図2のグリップをより把持し易くしたものである。
【0023】
次に、図5は本発明の変形例に係るホルダの各構成要素を示す図であり、固定ホルダ10を軸方向に2分割することにより、第1のパーツ10Aと、傾斜突条群35を有した第2のパーツBとから構成した点が特徴的である。第1のパーツ10Aの一端に対して第2のパーツ10Bの一端は着脱自在に連結可能に構成されており、両パーツを連結した際には図1、図2に示した固定ホルダ10と同程度の軸方向長となる。一方、両パーツを分割した際には図5に示すように短尺の第2のパーツ10Bのみを使用することとなる。この場合には第2のパーツ10Bを固定保持した状態で、グリップ20を把持して回転ホルダ2を軸方向へ移動させることにより、回転ホルダ2により保持された精子採取装置50が回転しながら軸方向へ移動することとなる。
なお、第2のパーツ10Bの開口端部であって利用者の身体と接する部位にもクッションパッドを配置するのが好ましい。
この実施形態に係るホルダによれば、軸方向移動を伴った回転運動(螺旋運動)と、回転運動のみの何れかを選択することが可能となり、一つのユニットによって両動作を実現できるというメリットを得ることができる。
【0024】
次に、図6(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係るホルダの全体構成を示す正面図、及び各構成要素の構成説明図である。
この実施形態に係るホルダ1は、環状のグリップ20が回転ホルダ2の外周面に対して回転自在に支持されている構成が特徴的である。即ち、グリップ20は回転ホルダ2の開口部側に設けた支持部4の外周面に設けたガイド及びベアリングによって回転自在且つ脱落不能に支持されている。精子採取装置50は回転ホルダ2の開口部側(支持部4側)から内部に挿着される。回転ホルダ2と固定ホルダ10との間は前記各実施形態と同様に螺旋機構30によって連結されている。
このため、使用に際しては、図7(a)(b)及び(c)に示すように片手でグリップ20を把持した状態で固定ホルダ10を軸方向へ往復動させることにより回転ホルダ2は軸方向移動せずにその場で正逆回転することができる。
グリップ20の軸方向長は、図示の状態よりも長くしてもよい。
或いは、本実施形態において、回転ホルダ2の支持部4と反対側に精子採取装置50を装着する開口部を設けてもよい。この場合には固定ホルダ10が開口部よりも突出することがないように固定ホルダの軸方向長を短く設定する。
【0025】
次に、図8(a)(b)に示した正面図、及び断面図に基づいて本発明のホルダによって保持される精子採取装置についてその概要を説明する。
この精子採取装置50は、長手方向一端面が開口した非円筒状の容器本体56、及び容器本体56の開口部56aに脱着してこれを開閉するキャップ57から成る容器55と、容器本体56内に収容され、長手方向一端面の挿入口61から内部に延びる挿入空所62を有したゲル状樹脂製のコア部材60と、を備えている。コア部材60と容器本体内壁との間には必要に応じてスポンジ層を配置する。
コア部材60は、エラストマーのような粘性を有したゲル状の樹脂、或いはゲル状のゴム等から構成された袋状体であり、その挿入側端部を容器本体56の開口部56aの内周に固定する。挿入空所62内には任意の配置にて突起、襞等が形成されている。挿入空所62内には潤滑液としてのローション等を適量予め充填しておく。
【0026】
キャップ57を取り外すことによって露出させた挿入口61内にペニスを挿入し、容器本体56の外面を片手で把持して軸方向へ往復動させることにより挿入空所62の内壁とペニスを摺擦させて射精を促進することができる。
キャップ57を取り外した精子採取装置50を図2、図3等に示すように回転ホルダ内に装着して使用する際には、挿入口61内にペニスを挿入した状態で片手で固定ホルダ10を保持する一方で、他方の手でグリップ20を保持して軸方向へ往復動させることにより回転ホルダ2と一体的に精子採取装置50が回転しつつ軸方向移動する。このため、コア部材60の挿入空所62内壁とペニスとの間には軸方向への摺擦のみならず回転方向への摺擦も加わり、刺激を増大させて精子採取効率を高めることが可能となる。
【0027】
精子採取装置用ホルダに精子採取装置を装着することにより精子採取装置ユニットが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る精子採取装置用ホルダの構成を示す斜視図である。
【図2】(a)及び(b)はこのホルダの組付け状態を示す正面図、及び各構成要素の構成を示す正面図である。
【図3】(a)乃至(d)は本発明のホルダを組み付ける手順を示す図である。
【図4】(a)(b)及び(c)は本発明のホルダの変形実施形態を示す断面図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係るホルダの各構成要素の構成説明図である。
【図6】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係るホルダの全体構成を示す正面図、及び各構成要素の構成説明図である。
【図7】(a)(b)及び(c)は図6のホルダの使用状態を示す図である。
【図8】(a)及び(b)は本発明のホルダによって保持される精子採取装置の正面図、及び断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…ホルダ、2…回転ホルダ、3a…ガイド突起、3b…係止突起、4…支持部、5…ベアリング、10…回転ホルダ、10a…把持片、12…挿入空所、20…グリップ、20a…軸部、21a…把持部、21b…中間部材、21c…軸部、22a…把持部、22b…中間部材、22c…軸部、30…螺旋機構、31…傾斜突条群、31a…傾斜突条、35…傾斜突条群、35a…傾斜突条、50…精子採取装置、51…被ガイド溝、52…係止溝、55…容器、56…容器本体、56a…開口部、57…キャップ、60…コア部材、61…挿入口、62…挿入空所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精子採取装置を着脱自在に保持する回転ホルダと、該回転ホルダを回転自在に保持する固定ホルダと、該回転ホルダに対して回転自在に連結されたグリップと、を備え、
前記固定ホルダを固定しつつ前記グリップを軸方向に進退させたときに前記回転ホルダを回転させつつ軸方向へ進退させる螺旋機構を備えていることを特徴とする精子採取装置用ホルダ。
【請求項2】
前記グリップは、前記回転ホルダの一端部により回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の精子採取装置用ホルダ。
【請求項3】
前記グリップの一部は、前記固定ホルダの外周面にオーバーハングしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の精子採取装置用ホルダ。
【請求項4】
前記オーバーハング部は、筒体であることを特徴とする請求項3に記載の精子採取装置用ホルダ。
【請求項5】
前記グリップは、前記回転ホルダの外周面に対して回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の精子採取装置用ホルダ。
【請求項6】
回転ホルダの内面には、前記精子採取装置を該回転ホルダ内に装着した際の相対回転、又は/及び軸方向位置ずれを禁止するためのストッパ部を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の精子採取装置用ホルダ。
【請求項7】
前記固定ホルダの軸方向長は、前記回転ホルダの軸方向長よりも短いことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の精子採取装置用ホルダ。
【請求項8】
前記固定ホルダは、軸方向に着脱自在に分割される第1のパーツと、第2のパーツとから構成されており、何れか一方のパーツには前記螺旋機構の一部が配置されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の精子採取装置用ホルダ。
【請求項9】
前記回転ホルダの軸方向長は、前記精子採取装置の軸方向長よりも短いことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の精子採取装置用ホルダ。
【請求項10】
前記精子採取装置は、一端が開口した筒状容器と、該筒状容器内に収容されて一端面の挿入口から内部に延びる挿入空所を有したゲル状樹脂製のコア部材と、を少なくとも備えていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の精子採取装置用ホルダ。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の精子採取装置用ホルダを構成する前記回転ホルダの前記開口部内に精子採取装置を装着したことを特徴とする精子採取装置ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−289673(P2008−289673A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138439(P2007−138439)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(505167222)株式会社典雅 (8)
【Fターム(参考)】