説明

精液サンプルにおけるインサイチュの癌腫の検出

本発明は、同じ細胞における少なくとも2種のマーカーの存在についてサンプルをスクリーニングすることによって、精巣癌および/もしくはその前駆体の検出するための方法を提供する。ここで上記サンプルは、ヒト男性からの精液サンプルおよび/もしくは射精液である。本発明は、高特異性および正確性でCISを早期非侵襲性に検出するための方法を提供する。本発明の方法の主な利点は、精巣癌を検出するための現在使用中の/先行技術において開示されてきた方法と比較すると、本明細書で開示される方法の非侵襲性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願で引用される全ての特許および非特許参考文献は、それら全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ヒト男性由来の射精した精液サンプルにおいて少なくとも2種のマーカーを同定することによって、精巣上皮内癌(CIS)および/もしくは関連状態(例えば、精巣癌)を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
精巣の胚細胞腫瘍(精巣癌としても公知)は、過去数十年にわたって発生率が増大してきた。このことから、今日では若年の男性において最も一般的な癌になっている。上記疾患は、代表的には、若年男性(15歳〜45歳)および最も代表的には、上記男性が20代半ばである間に存在する。精巣胚細胞腫瘍(TGCT)を獲得してしまう生涯リスクは、全ての男性で0.5〜1%である。
【0004】
精巣上皮内癌(CIS)は、若年成人に存在するほぼ全ての精巣胚細胞腫瘍(TGCT)の一般的な前駆体である(Skakkebaek,1972)。疫学的証拠および胚細胞の免疫組織化学分析に基づく証拠は、CISが生涯の早期に、最も好ましくは、成熟精原細胞へと分化できなかった精母細胞から始まることを示す(Rajpert−De Meyts 2006)。CIS細胞は、次いで、思春期後に明白なTGCTへと進行する。上記精母細胞から上記CIS細胞への変化の開始の根底にある分子事象の正確な性質は、未だ解明されておらず、明白な腫瘍への次の進行は、大抵は未知のままである。しかし、CIS細胞の存在は、生涯の後期のある段階において、ほぼ必ず腫瘍を生じることが公知である。
【0005】
精巣癌は、全ての癌の中で最高の治癒率を有するものである:広範囲には転移せず、処置に対して抗療性である奇形腫の形態へと変化もしない場合、90%超;および100%近く。悪性癌が広く広まった比較的少ない症例についてすら、化学療法は、少なくとも85%の治癒率を今日提供する。しかし、任意の癌に関して、精巣癌に対する良好な結果は、初期診断に依存する。さらに、精巣癌患者は、実際に診断からもれる(survive the diagnosis)可能性があるが、上記疾患は、しばしば、他の癌および心血管疾患を発症させるという増大したリスクの他に、受精能の問題(しばしば、完全な不妊症(テストステロン置換療法が必要))の増大したリスクを含むことがさらに大きく推定される。
【0006】
精巣癌を有する患者における主要な診断所見は、青年期もしくは若年成人男性において拡大もしくは疼痛ありまたはなしの、精巣において触診可能な塊である。上記精巣の超音波検査は、予備的様式で上記塊を評価するために必要である。それが固形腫瘍に似ている場合、選択される処置は、精巣摘出術であり、凍結組織サンプルの術中評価により、稀な良性の塊(例えば、ライディッヒ細胞腺腫(これは、上記塊の精巣保存的切除で処置され得る))の可能性を排除する。胚細胞腫瘍の全ての場合、精巣全体が、精巣上体および精索のような付属構造と共に、除去されなければならない。部分的切除は、ほぼ全ての場合において、前浸潤性のCIS細胞が、上記腫瘍に隣り合う正常組織におそらく存在しているので、妥当でない手順である。同時に、反対側の精巣の生検は、しばしば、両側性の疾患の可能性を排除するために行われる。腫瘍タイプおよび拡がった腫瘍の存在の後の評価を確実にすることに基づいて、さらなる処置は、化学療法、もしくは放射線療法を含み得る。
【0007】
明らかに、塊(これは、腫瘍そのものである)の存在は、精巣癌を診断する後期である。精巣癌は、CISの前侵襲性ステージでより早期に診断され得る。しかし2つの理由から、このことは、まれにしか起こらない:第1に、CISは、通常は無症候性である;第2に、CISの診断は、外科的生検の後にのみ行われ得、この診断手順は、一般に、リスクのある(例えば、停留精巣の経歴のある、または疑わしい結果(萎縮精巣)および超音波検査法(微石症もしくは非常に異例なエコーパターン)を有する臨床結果後に)患者において行われるのみである(Rothら,2000)。このような場合において、現在利用可能な唯一の診断手順は、外科的生検であり、組織サンプルの開放切開としておよびときおり針生検として最も頻繁に行われる。適切な組織学的処理の後に、上記サンプルは、病理学者によって調べられなければならない。CISもしくは腫瘍細胞の局所的微小浸潤性の拡がりという所見は、両側性の精巣癌(もしくは上記患者が精巣を片方のみ有する場合)を除いて、精巣摘出術によって処置される大部分のケースに存在し、これは、放射線療法によって、ときおり補助的化学療法で、処置される。
【0008】
現在の診断法の侵襲性および高コスト、ならびに上記疾患のより後期のステージの処置の明らかな負の影響に起因して、精液サンプルにおいてCISを検出するための方法を開発することに大きな努力が注ぎ込まれてきた。精巣癌を有する患者に由来する精液は、異常な形態を有する細胞を含むが、上記形態単独では、CISを検出するには不十分であり、確実性がない。なぜなら、精子細胞以外の精管上皮細胞(seminal cell)に形態は、あまり保存されていないからである(Czarplickiら,1987)。従って、CISの検出のための生化学的マーカーの使用は、目的の分野であり、適切なマーカーを見いだす試みが為されてきた:M2Aに対する抗体は、免疫細胞化学によって精液中のCIS細胞を検出することが見いだされ(Giwercmanら,1988b;Mengら,1996)、異数性DNA含有量およびときおりイソ染色体(isochomosome)i(12p)が存在することは、染色体インサイチュハイブリダイゼーションによって使用されてきた(Giwercmanら,1990;Mengら,1998)。しかし、これら方法の両方が、時間浪費型であり、臨床状況において診断目的に使用されるには信頼性が不十分であることが判明した。偽陽性及び偽陰性の結果の両方が、精液中の細胞の部分的分解および細胞表面抗原に起因して得られた。
【0009】
見込みのある結果が、精液サンプルに関して、AP−2γ(AP−2gamma)(TFAP2C)に対する抗体で得られた(Hoei−Hansenら,2005)。TGCTおよび他の癌を有する患者は、代表的には、処置前に凍結保存のためのいくつかの精液サンプルを出している。なぜなら、外科的処置、低線量放射線処置もしくは化学療法処置は、不妊症を生じるからである。凍結保存からの余剰材料を、徴兵名簿からのコントロール材料および低受精能患者からの材料の余剰と組み合わせて使用した。この材料内で、乏精子症を有する低受精能の男性を、精液中のCIS細胞の免疫細胞化学的AP−2γ検出によって首尾よく診断した(Hoei−Hansenら,2005a)。この最初の調査において、健常なコントロールおよび他の癌を有する患者の中では陽性染色は見いだされなかった(Hoei−Hansenら,2005)。Hoei−Hansenら(2007)は、患者およびコントロールの大規模な群に対してAP−2γを用いた彼らの最初の結果を確認および詳述した。その研究において、OCT3/4を用いて類似の結果を得たのに対して、NANOG(転写因子)およびPLAP(胎盤アルカリホスファターゼ)は、かなりの非特異的反応に起因して、精液サンプルにおける免疫細胞化学染色によるCIS検出には不適切であることが分かった。偽陽性の結果は排除できず、その結論は、行われた分析が、根拠の確実なかつ感度の高い診断分析を満たさないということであった。
【0010】
従って、高い特異性および正確性を有するCISの初期の非侵襲的検出のための方法が未だ検討されていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、高特異性および正確性でCISを早期非侵襲性に検出するための方法を提供する。本発明の方法の主な利点は、精巣癌を検出するための現在使用中の/先行技術において開示されてきた方法と比較すると、本明細書で開示される方法の非侵襲性である。本発明の方法は、射精液/精液サンプルの試験に依存し、従って、生検もしくは精巣摘出術を必要としない。上記射精液/精液サンプルの分析は、特異的様式で行われ、偽陽性および偽陰性結果を得るリスクを軽減する。
【0012】
本発明は、複数マーカーの使用が、射精液/精液サンプルをCIS、TGCTおよび/もしくは誘導された癌(例えば、精巣癌)の存在についてスクリーニングすることを可能にするという発見に基づく。
【0013】
本発明の主な局面は、同じ細胞における少なくとも2種のマーカーの存在についてサンプルをスクリーニングすることによって、精巣癌および/もしくはその前駆体を検出するための方法に関し、ここで上記サンプルは、ヒト男性に由来する精液サンプルおよび/もしくは射精液である。
【0014】
精巣CIS/癌の精液診断において有用であると判明したマーカーは、核に位置するが、本明細書で示されるように、尿生殖路の上皮細胞のサブセットにおいても発現される。精液/射精液は、尿生殖系(すなわち、精管、精巣上体、および尿道)を通過するので、上皮細胞は、上記射精液へと剥落し;この理由から、これらマーカーは、偽陽性結果を引き起こすことが以前見いだされた。本発明は、射精液/精液サンプル中で良好なCIS検出能を有する核マーカーが、他の非核マーカー(これは、尿生殖路の上皮で発現されない)と組み合わせて使用されることによる新たな方法を開示する。射精液/精液サンプルにおいて非核マーカーを使用することは、新しい。なぜなら、射精液/精液サンプル中の細胞は、最大で3週齢までであり、従って、非核マーカーの検出のための最適な品質よりは低い。数週間の過程にわたって、上記非精子細胞は、上記射精液/精液サンプルに最終的になる流体中に取り囲まれ、ここで上記細胞は、プロテアーゼおよび上記細胞の形態に重篤に損傷を与える他の因子に曝される。実際に、その形質膜は、しばしば傷つけられ、従って、上記細胞は、細胞質および他の細胞要素を漏らす。よって、これらの課題を克服し、よって精巣癌および/もしくはその前駆体(例えば、精巣CIS細胞)の検出のための非侵襲性スクリーニング法の長年にわたる必要性に対する解決を提供する方法が開発されたことは、非常に驚くべきことである。
【0015】
従って、本発明の重要な局面は、マーカーの組み合わせ(例えば、射精液/精液サンプル中で癌細胞/CIS細胞を検出するための少なくとも1種の核マーカーおよび1種の非核マーカー)の使用に関する。
【0016】
さらなる実施形態は、射精液/精液サンプルにおいて癌細胞/CIS細胞をスクリーニングする間に、少なくとも1種の核マーカーおよび1種の非核マーカーを検出するための免疫染色アッセイおよび/もしくは酵素アッセイの使用に関する。
【0017】
さらに、本発明の一実施形態は、全体の射精液/精液サンプルの使用に関する。好ましくは、上記全体の射精液サンプルは、1手順で上記サンプル全体を加工処理することを可能にする様式で処理される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ヒト男性の生殖器系を示す。
【図2】図2は、精巣発育不全症候群(TDS)、その原因および結果を示す。
【図3】図3は、尿生殖路に由来する上皮におけるCISマーカーおよび活性の発現の免疫組織化学的調査および酵素活性調査を示す。
【図4】図4は、尿生殖器組織において選択されたCISマーカーのRT−PCRを示す。
【図5】図5は、アルカリホスファターゼ活性およびAP−2γ免疫組織化学の両方を使用した、精液サンプル中のCIS細胞の染色を示す。
【図6】図6は、精巣生検においてCIS細胞を有することが後に分かった、不妊症男性の射精液中に見いだされた代表的細胞を示す。
【図7】図7は、不妊症男性から採取した精巣生検におけるPLAPに対する免疫組織化学染色(4個の陽性精子サイトスピンのうちの4個とも)を示す。A)大きな全体図。B)高解像度。
【図8】図8は、抗体の組み合わせを使用する場合に、改善された染色強度を示すTCam−2コントロール細胞の免疫染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(定義)
対立遺伝子:多くの一対のもしくは一連の、遺伝子の異なる形態。通常は、対立遺伝子は、コード配列であるが、ときおり、上記用語は、非コード配列に言及するために使用される。対立遺伝子は、DNA配列、RNA配列もしくはタンパク質配列における公知のもしくは認識された差異である。
【0020】
CIS:「上皮内癌」の略語。
【0021】
停留精巣:陰嚢から離れて、一方もしくは両方の精巣が存在しないこと。
【0022】
細胞質:核を除き、形質膜によって仕切られた真核生物細胞の内容物全体。「サイトゾル」と交換可能に使用され、サイトゾルは、細胞質の液相である。
【0023】
サイトスピン:集められたサンプルを、遠心分離によって顕微鏡用スライド上に固定する。
【0024】
検出:本明細書では、本明細書で開示される方法による癌細胞(すなわち、精巣癌/CIS細胞)の観察。
【0025】
射精液:とりわけ、精子を含む、男性陰茎から発せられた液体。上記射精液は、精子細胞(sperm cell)(精子細胞(spermatozoa))を含んでいても含んでいなくてもよく、本明細書では、表現「精液サンプル」と交換可能に使用される。
【0026】
偽陰性:「タイプIIエラー」、「第2種のエラー」、「βエラー」としても公知;対立仮説が真(the true state of nature)である場合に、帰無仮説を棄却できないエラー。言い換えると、これは、実際は差異がある場合に、差異を観察できないエラーである。
【0027】
偽陽性:「タイプIエラー」、「第1種のエラー」、「αエラー」としても公知;帰無仮説が実際には真である場合に、帰無仮説を棄却してしまうエラー。簡潔に言えば、実際には差異が存在しない場合に、差異が観察される場合がある。偽陽性は、通常、検定が陽性ではない場合に、検定が何か陽性であることに注目することを意味する。
【0028】
免疫細胞化学:目的のタンパク質に対して特異的な抗体を使用し、上記抗体が上記タンパク質に結合することを可能にし、考えられる細胞下局在の可視化を可能にする方法を使用することによって、細胞中のタンパク質の位置をつきとめるプロセス。
【0029】
免疫組織化学:目的のタンパク質に対して特異的な抗体を使用し、上記抗体が上記タンパク質に結合することを可能にする一方で、生物学的組織切片中の比較的ネイティブな状況にある方法を使用することによって、組織切片の細胞中のタンパク質の位置をつきとめるプロセス。
【0030】
マーカー:マーカーに依存して、生物学的系の状態、曝露、感受性などの尺度を与える、生物学的系もしくはサンプル中の事象もしくは状態を表示するインジケーター。マーカーは、本明細書で、遺伝子もしくはその生成物の存在であり、単独でもしくは他のマーカーと組み合わせてその存在もしくは相対的レベルが、新生物状態および/もしくは癌状態を示し得る。
【0031】
変異体:遺伝子もしくはその生成物に適用される用語であり、この用語は、上記遺伝子もしくはその生成物の「野生型」もしくはネイティブな形態と考えられるものとは異なり、上記差異は、最も代表的には、変異に起因して生じる。
【0032】
非核(の):真核生物細胞の任意の部分に関する場合、核ではないもの。本明細書で、種々のマーカーについての位置/発現パターンの説明として主に使用される。一般に、本明細書では、非核位置は、細胞質位置において検出可能であると理解される。
【0033】
核(の):真核生物細胞の核に関する。本明細書では、種々のマーカーについての位置/発現パターンの説明として主に使用される。
【0034】
前駆体:本明細書において、前駆体は、実際の腫瘍形成(例えば、新生物細胞および上皮内癌(CIS)細胞)の前に存在する、癌発生の間のステージの細胞である。
スクリーニング:サンプルが含み得る少数の異常型細胞/癌細胞を拾い上げるための、サンプルの試験。スクリーニングは、手動で行われてもよいし、自動化プロセスで行われてもよい。
【0035】
精液サンプル:精液は、一般に、射精の間に放出されるのと同じ液体である;本明細書では、精液サンプルは、例えば、精子を含む任意のサンプルを含み、例えば、精巣もしくは男性生殖器系における他の場所から直接吐き出されるもの(expiration)によって採取され得る。用語「射精液」と交換可能に使用され得る。
【0036】
スライド:本発明に従うスライドは、顕微鏡用スライドを含むことを意味する;標準化された顕微鏡用スライドは、鏡検のための物体(例えば、細胞もしくは組織)を保持するために使用されるガラスシートの形態にある。
【0037】
精巣癌:精巣の悪性の腫瘍もしくは細胞。
【0038】
TGCT:「精巣胚細胞腫瘍」の略語。
【0039】
PLAP:胎盤様アルカリホスファターゼは、本明細書において「アルカリホスファターゼ」およびALPPL2と交換可能に使用される。
【0040】
AP−2γ:AP−2ガンマ、AP2γは、本明細書においてTFAP2Cと交換可能に使用される。
【0041】
OCT3/4:POU5F1と交換可能に使用される。
【0042】
本発明は、精液サンプルもしくは射精液サンプルにおいて状態(例えば、精巣上皮内癌(CIS)、ならびに/または精巣癌および/もしくはその前駆体)の検出のための少なくとも2種のマーカーを使用することに関する。好ましい実施形態において、核マーカーおよび細胞質マーカーは、同時に使用される。
【0043】
(発明の詳細な説明)
ヒト男性生殖器系は、生殖プロセスの一因となる、身体の外側におよび男性の骨盤領域の周りに位置した一連の器官である。射精の間に、精子は、陰茎から出て精液と言われる液体中にある。この液体は、3つのタイプの腺によって生成される;精嚢、前立腺、およびカウパー腺(球尿道腺)。男性生殖器系は、図1に概説される。
【0044】
(精巣発育不全症候群)
男性生殖器系の健康状態における多くの有害な状態は、共通する原因;胎児の精巣発生の間の特定のエラーにそれらの根拠があると提唱されてきた。この障害の集合は、精巣発育不全症候群(TDS)と認識されており、多くの場合において環境因子によって、および他の場合においては、稀な遺伝的障害によって引き起こされるようである。両方とも、主に、胎児ホルモンレベルにおける変化をもたらし、このことは、繰り返すと、観察される疾患および機能不全をもたらす(図2)(Skakkebaekら,2001)。図2は、TDSの2つの原因、環境因子および遺伝的欠陥、ならびにそれらの結果を同定する。セルトリ細胞機能における破壊を介する1つの影響の経路は、精液の質の低下および精巣癌をもたらす。他方は、ライディッヒ細胞機能に対する影響を介し、尿道下裂および停留精巣を引き起こす。従って、共通する原因であるTDSは、一連の関連する健康への影響をもたらす。
【0045】
少なくとも4つの健康への影響が、TDSに帰するとされる可能性がある:精巣癌、停留精巣、尿道下裂、および精液の質の低下。4つの状態は全て、罹患した男性において同時に起こる傾向にあり、以下のパターンが観察されてきた:
・精巣癌のいくつかの症例は、稀な遺伝子変異によって引き起こされる。それらが起こる場合、それらはしばしば、停留精巣および尿道下裂と合わせて存在する。
【0046】
・精巣癌を有する男性は、停留精巣を経験したことがある可能性が正常より高いようである。
【0047】
・停留精巣を有する男性は、正常な男性より不妊症クリニックに行く可能性が高い;停留精巣は、しばしば、損なわれた(もしくは停止した)精子生成を含む、誤って導かれた発生に関連する明らかな問題である。
【0048】
・精巣癌を有する男性の反対側の非癌性精巣は、しばしば、TDSに関連する一連の形成異常を有する。
【0049】
・一方の精巣が精巣癌である男性は、極めて低い性指数を有し、一方の機能的精巣の喪失に基づいて予測されるものより遙かに低い。
【0050】
・後に精巣癌を発症した男性の精子数に関する研究から、異常な精液の特徴(精巣癌の発生前から低精子数であることが挙げられる)の存在が確認されている。
【0051】
・精巣癌を後に発症する男性は、正常な男性より子供が少ない(受精能の低下のしるし)および子をなした男性の子供が少ないようである。
【0052】
TDSに関連する疾患および障害、ならびに本発明は、以下に総説される。
【0053】
本発明は、非侵襲性の方法によって精巣中に起こる上皮内癌(CIS)細胞の検出に関する。本発明の一局面は、上記方法が、全ての男性からの射精液/精液サンプルに対して使用され得ることである。上記方法は、精巣発育不全症候群の特徴を示す1つ異常の障害もしくは疾患と診断された男性に特別に関連しているものである。
【0054】
(CISおよび精巣癌)
上皮内癌(CIS)もしくは管内胚細胞新生物(intratubular germ cell neoplasm)は、周辺組織の侵襲が存在しないことによって定義される初期の癌の形態である。言い換えると、新生物細胞は、それらの正常な生存環境、よって、「インサイチュ」という名称(ラテン語では、「その場所で」)の中で増殖する。上記精巣のCIS細胞は、精上皮腫もしくは非精上皮腫のいずれかへと変形し得る。上記精上皮腫は、胚細胞用の表現型を保持するのに対して、非精上皮腫もしくは奇形腫として公知の腫瘍は、胚性幹細胞の特徴;多能性および実質的に全ての体細胞組織へと分化する能力、を保持する。非精上皮腫は、胎生期癌(EC)、分化した奇形腫の組織成分の種々の混合物、および胚外組織(例えば、卵黄嚢腫瘍および絨毛癌)を含む。CISに加えて、生殖腺芽細胞腫;CIS用病変は、異発生した(dysgenetic)精巣および間性の生殖腺において生じ、間性の生殖腺は、頻繁に、多少の卵巣構造を有する。CISと、生殖腺芽細胞腫戸の間の唯一の差異は、周辺の生殖腺における病変の構造全体に関係する(CISは、通常、基底膜にそって1層に(in single row)なっており、CIS細胞と、精細管の管腔との間のセルトリ細胞の単一層が存在する一方で、生殖腺芽細胞腫は、小さな体細胞性果粒膜様細胞によって、ときおり精祖細胞様細胞によって囲まれたCIS様細胞の集団(凝集物)を含む)。CIS細胞および生殖腺芽細胞腫細胞の形態および遺伝子発現パターンは、区別できないので、さらに本願において、用語CISは、両方の前駆体病変について使用される。さらに、用語CISは、本明細書において精巣CISの検出のために使用される。
【0055】
精巣癌およびそれらの原因は、以下のように分類され得る:
精巣の胚細胞腫瘍(TGCT)
・40% 混合(通常は、奇形腫+別のもの)
・35% 精上皮腫(精巣の胚細胞腫)
・20% 胎生期癌
・5% 奇形腫(単一組織型(pure))
・<1% 卵黄嚢腫瘍
・<1% 絨毛癌
・生殖腺芽細胞腫(性分化の障害を有する男性において)
・<1% 精母細胞性精上皮腫(高齢の男性において、CISとは関連せず、通常は良性)。
【0056】
精巣の非胚細胞腫瘍
・セルトリ細胞腫瘍(通常は、小児に)
・ライディッヒ細胞腫瘍(通常は、良性)
・横紋筋肉腫もしくは平滑筋肉腫。
【0057】
精巣の続発性腫瘍
・リンパ腫
・精巣の白血病性浸潤
・転移性腫瘍。
【0058】
広い用語では、精巣癌は、以下のステージにわたって進行する:
・ステージI:癌が、精巣に位置したままである
・ステージII:癌が、精巣を包み、後腹膜リンパ節および/もしくは大動脈周囲リンパ節(横隔膜より下にあるリンパ節)への転移。
【0059】
・ステージIII:癌が精巣を包み、後腹膜リンパ節および大動脈周囲リンパ節を超えて転移。ステージIIIは、巨大腫瘤がない(non bulky)ステージIIIおよび巨大腫瘤がある(bulky)ステージIIIへとさらに細分化される。
【0060】
本発明の目的は、精巣のCIS細胞、新生物細胞および/もしくは精巣癌を検出するための非侵襲性の方法を提供することである。上記方法の非侵襲性は、より容易なスクリーニングを可能にし、このことは、種々の癌ステージ(好ましくは、CIS)のより早期の検出を可能にする。癌細胞の任意のタイプが、本明細書で提供される方法によって検出され得る。しかし、上記少なくとも1個の癌細胞は、好ましくは、精巣に由来する。用語「癌細胞」とは、以降、変化した(すなわち、新生物の)CIS、良性、もしくは悪性癌細胞の任意のタイプを網羅するために使用される。上記癌細胞は、上記でまとめられるように、発生中の任意のステージの癌に由来し得、従って、例えば、新生物細胞、CIS細胞、および/もしくは転移性癌細胞であり得る。上記癌細胞は、元は、任意のタイプの組織(好ましくは、癌の定義(上皮細胞から発生するとして)と一致するような上皮組織)の細胞であり得る。上記癌細胞は、上記の任意のタイプのものであり得る。それらタイプとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:精巣の胚細胞腫瘍(TGCT)(例えば、奇形腫、精上皮腫、胎生期癌、単一組織型奇形腫、絨毛癌、生殖腺芽細胞腫、管内胚細胞新生物);精巣の非胚細胞腫瘍(例えば、セルトリ細胞もしくはライディッヒ細胞腫瘍);および精巣の続発性腫瘍(例えば、リンパ腫、精巣の白血病性浸潤、および転移性腫瘍)。
【0061】
好ましくは、本発明の方法は、精巣の胚細胞腫瘍(TGCT)を検出し、最も好ましくは、初期ステージ(例えば、CISステージ)においてこれらを検出する。従って、本発明の目的は、精巣の胚細胞腫瘍を検出すること、および好ましくは、精巣から生じる上皮内癌細胞(CIS細胞)を検出することである。
【0062】
上記方法は、好ましくは、雄性哺乳動物に由来する射精液/精液サンプルに対して使用される。
【0063】
従って、本発明の一局面は、本明細書で開示される方法による、上皮内癌(CIS)の検出に関する。また、ある局面は、精巣の続発性腫瘍(例えば、リンパ腫、精巣の白血病性浸潤もしくは転移性腫瘍)の検出に関する。同様に、別の局面は、混合腫瘍、精上皮腫、胎生期癌、奇形腫、絨毛癌もしくは管内胚細胞新生物(CIS)の検出に関する。さらなる局面は、精巣の非胚細胞腫瘍(例えば、セルトリ−ライディッヒ細胞腫瘍)の検出に関する。
【0064】
(停留精巣)
停留精巣は、陰嚢に精巣の一方もしくは両方が存在しないことである。このことは、通常、腹腔内位置から胎児発生の間に、鼠径管を通って、同側性の陰嚢へと精巣が移動できないこと、または「降り」られなかったことを表す。月満ちて生まれてきた男児のうちの約3%および早産の男児のうちの30%が、少なくとも一方の停留精巣を伴って生まれてきており、このことが、停留精巣を、男性外生殖器の最も一般的な先天的欠損症にしている。しかし、大部分の精巣は、1歳まで(大部分は3ヶ月以内に)降りてくるので、停留精巣の真の発生率は、全体で約1%になる。
【0065】
停留精巣は、精巣発育不全症候群の診断の下に入る健康上の影響のうちの1つである。従って、本発明の一局面は、停留精巣と診断された任意の時点の個体における癌細胞(例えば、CIS細胞)の検出のための方法を提供することである。
【0066】
(尿道下裂)
尿道下裂は、異常に配置された内尿道口(開口部)を伴う男性における、尿道の先天的欠損症である。陰茎の亀頭の先端で開口している代わりに、下裂した尿道(hypospadic urethra)が、棒状部(shaft)の下側(腹側面)にそって先端から、陰茎と、陰嚢もしくは会陰部との接合点へと延びるライン(尿道溝)に沿って、どこででも開口している。尿道口は、症例の約50〜75%において陰茎亀頭で開口する;これらは、1度の尿道下裂として分類される。2度(尿道が棒状部で開口している場合)、および3度(尿道が会陰部で開口している場合)は、それぞれ、症例の最大20%および30%で起こる。より重度のものは、尿道索と関連するか、陰茎が会陰部から不完全にしか分離していないか、または結合組織によって下側になおつながれているか、または降りていない精巣(停留精巣)と関連する可能性が高い。
【0067】
尿道下裂は、精巣発育不全症候群の診断の下に入る別の健康上の影響である。従って、本発明の一局面は、尿道下裂と診断された任意の時点の個体における癌細胞(例えば、CIS細胞)の検出のための方法を提供することである。
【0068】
(精液の質−低精子数)
精液の質は、精液が受精を達成する能力の尺度である。従って、精液の質は、男性における受精能の尺度である。それは、重要な、精液における精子であり、よって、精液の質は、精子の量および精子の質の両方を含む。低精子数/低い精液の質は、多くの異なる要因(あるものは遺伝的であるし、あるものは環境的である)に起因し得る。無精子症、無精液症、精子過少症および乏精子症は全て、精子の少なさもしくは無精子に関する診断であり、従って、本発明の1局面である。主に、男性における低受精能もしくは無受精能の任意の診断は、いくつかの理由から、懸念材料であり、よって、本発明の一局面は、精子数が低い、精液の質が低いもしくは悪い、低受精能もしくは不妊症と診断された任意の時点の個体における癌細胞(例えば、CIS細胞)の検出のための方法を提供することである。さらに、精液の質が低いことは、精巣発育不全症候群の診断の下に入る健康上の影響のうちの1つであり、このことは、本発明の一局面を、低受精能もしくは無受精能と診断された男性由来の精液サンプルおよび/もしくは射精液において、癌細胞(例えば、CIS細胞)を検出するための方法を提供することにしている。
【0069】
(マーカー)
本発明は、精液サンプル/射精液サンプルにおけるCIS細胞の特異的かつ感度の高い検出に関する。このことは、新規かつ驚くべきアプローチである。なぜなら、細胞質マーカーもしくは細胞膜マーカーの使用は、以前、精液サンプル中でCIS細胞を他の非精子細胞から識別するにあたって、正確性および/もしくは特異性が欠落していることに起因して、信頼性がないと見なされてきたからである。上記CIS細胞は、精子とともに移動し、尿生殖器系を通って、精巣の管から、表皮を通って、そして精管を介して射精管へ、および最終的には、尿道へと精液の量が増え、これらは全て、上皮細胞で裏打ちされた組織である。従って、最終的な射精液は、これら構造の裏打ちに由来する剥がれた細胞を一貫して含む。これらはCIS細胞ではないが、それらの遺伝子発現パターンに起因して、それにも拘わらず、CISマーカーとして公知のマーカーの多くを発現する。例えば、AP−2γ、OCT3/4を含む周知の核CISマーカーの多くは、基底上皮、ならびに精管、精巣上体、精嚢(貯精嚢)、および前立腺の結合組織を自己再生することにおいて見いだされた。これらマーカーの存在は、以前は、精液サンプルにおいて偽陽性染色を生じた。対照的に、ある範囲の非核/細胞ゾルマーカーは、本調査(実施例を参照のこと)ともに、精管に接続される組織において発現されることは見いだされず、従って、CISに対するより選択的なマーカーであることが分かった。本発明は、CISの非核マーカーおよび核マーカーの組み合わせを使用して、CIS細胞の特異的検出および尿生殖路から発生する偽陽性細胞の回避を生じる。
【0070】
本発明の目的は、雄性哺乳動物に由来する精液サンプルおよび/もしくは射精液サンプル中で癌細胞を検出するための方法を提供することである。上記検出方法は、CISのマーカーとして使用され得る特定の遺伝子および/もしくはそれらの生成物を検出することに依存する。遺伝子および/もしくはそれらの生成物は、目的の遺伝子、ならびにその任意の対立遺伝子および/もしくは変異体、ならびにそれらの転写生成物および考えられるその後の翻訳生成物(プレmRNA、hnRNA、mRNA、smRNA、任意のアンチセンスもしくは調節RNA(例えば、miRNA、siRNA、piRNA、およびさらにsmRNA、snoRNA、tRNA、rRNAが挙げられるが、これらに限定されない)、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、改変(例えば、翻訳後修飾)されたタンパク質、ペプチドおよび/もしくはポリペプチド、あるいは上記目的の遺伝子および/もしくはそれらの対立遺伝子および/もしくは変異体によってコードされるタンパク質および/またはポリペプチドのフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない)の存在の検出を意味する。
【0071】
本発明の一局面は、癌細胞の検出のための少なくとも1種のマーカー(好ましくは、癌細胞の検出のための少なくとも2種のマーカー)の使用に関する。従って、任意の数のマーカー(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種以上のマーカー)が、精液サンプルおよび/もしくは射精液サンプル中で癌細胞を検出するために組み合わせて使用され得る。好ましくは、1種のマーカーが単独で、または2種もしくは3種のマーカーが、精液サンプルおよび/もしくは射精液サンプル中で癌細胞を検出するために組み合わせて使用される。最も好ましくは、2種のマーカーが、精液サンプルおよび/もしくは射精液サンプル中で癌細胞を検出するために組み合わせて使用される。
【0072】
本発明のさらなる局面は、癌細胞を検出するために使用されるマーカーの細胞下位置に関する。哺乳動物の細胞は、代表的な真核生物細胞であり、細胞膜内に核および細胞質を含み、細胞質は、核を囲んでいる。細胞質内には、オルガネラおよび核以外の構造が見いだされ得る;これらとしては、以下が挙げられる:小胞体(粗面および滑面)、ゴルジ装置、ミトコンドリア、小胞、液胞、中心小体、細胞骨格、ペルオキシソームおよびリソソーム、および核内には:核小体、および染色体。さらに、リボソームおよび他の非常に大きな複合体は、顕微鏡、ならびに当業者に公知の染色および他の方法によって同定され得る。好ましくは、本発明のマーカーは、上記癌細胞の核、細胞質および/もしくはミトコンドリアに位置し/検出され得る。
【0073】
本発明の目的は、少なくとも1種の、および好ましくは、異なる細胞下位置を有する2種以上のマーカーを使用することによって、癌細胞を検出するための方法を提供することである。従って、上記マーカーは、上述のオルガネラおよび/もしくは構造のうちのいずれかに結合し得るか、またはその中に、その上に、もしくはその周りに見いだされ得る。上記マーカーは、同時に位置し得る。すなわち、上記マーカーは、同じ細胞下区画に位置してもよいし、異なる細胞下区画に位置してもよい。好ましい実施形態において、上記少なくとも2種の異なるマーカーは、異なる細胞下区画に位置する。好ましくは、上記少なくとも2種のマーカーは、核に位置するか、または位置しない(これによって、例えば、細胞質を意味する)。従って、好ましくは、一方のマーカーは、核に位置し、他方のマーカーは、他のどこかに位置する。核でない位置は、好ましくは、細胞質である。
【0074】
目的の遺伝子、よって、本発明に関連するタンパク質などとしては、癌(好ましくは、精巣の癌)に関して示差的にもしくはもっぱら発現される任意の遺伝子および/もしくはタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。示差的に発現されるとは、上記癌細胞において、癌でないおよび/もしくは変化していない細胞(好ましくは、同じ起源(例えば、組織もしくは細胞タイプ)の細胞)において観察されるレベルより高いもしくは低い発現のレベルを意味する。このような遺伝子および/もしくはタンパク質としては、例えば、cDNAマイクロアレイ分析を使用して検出される895個の遺伝子(これらは、コントロールサンプル中より、ヒト胚性幹(ES)細胞および胚性癌細胞株において顕著に高いレベルで発現される)が挙げられるが、これらに限定されない。これら895個の遺伝子は、多能性非分化表現型の維持(新生物発生およびCISをもたらし得る現象)における関与についての候補である。これら遺伝子は、Spregerら;「Gene expression patterns in human embryonic stem cells and human pluripotent germ cell tumors」,(PNAS,100:13350−13355,2003)において見いだされるはずであり、これによって、全て本明細書に参考として援用される。Almstrupら 2007においてCISマーカーとして同定された同様の遺伝子/タンパク質は、全て本明細書に参考として援用される。精巣上皮内癌およびそこから由来した癌のマーカーであることが見いだされた、WO2005/103703に同定された生体マーカー(本願の表1を参照のこと)が、特に関連する。上記生体マーカーは、発現プロフィール(例えば、マイクロアレイ)において有用であることが見いだされ、全て本明細書に参考として援用される。
【0075】
以下に概説される手順のうちのいずらかによって、本発明に従う検出に有用な好ましい細胞質マーカーおよび核マーカーの列挙は、以下の表1に与えられ、最も好ましいマーカー遺伝子/タンパク質の列挙は、以下の表2に与えられる。
【0076】
核に位置するCISの好ましいマーカーは、TFAP2C、POU5F1、NANOG、SOX2、SOX15、SOX17、E2F1、IFI16、TEAD4、TLE1、TATDN2、NFIB、LMO2、MECP2、HHEX、XBP1、RRS1、MYCN、ETV4、ETV5、MYCL1、HIST1H1C、WDHD1、RCC2、TP53、およびMDC1が挙げられるが、これらに限定されない。精液サンプル/射精液サンプル中のCISの検出のために、本発明に従う方法において使用するための最も好ましい核マーカーは、以下である:TFAP2C、POU5F1、NANOGおよびTP53。精液サンプル/射精液サンプル中のCIS/癌細胞の検出のために使用される少なくとも1種のマーカーが、上記のマーカーのうちの少なくとも一方を含むことは、本発明の一局面である。別の局面において、上記マーカーのうちの少なくとも2種のマーカーが、精液サンプルにおけるCIS細胞の検出のために、同時位置づけによって、使用される。
【0077】
核に位置しないCISの好ましいマーカーとしては、ALPPL2、ALPL、DPPA4、TCL1A、CDH1、GLDC、TCL1A、DPPA4、CDK5、CD14、FGD1、NEURL、HLA−DOA、DYSF、MTHFD1、ENAH、ZDHHC9、NME1、SDCBP、SLC25A16、ATP6AP2、PODXL、PDK4、PCDH8、RAB15、EVI2B、LRP4、B4GALT4、CHST2、FCGR3A、CD53、CD38、PIGL、CKMT1B、RAB3B、NRCAM、KIT、ALK2、PDPN、HRASLS3、およびTRA−1−60が挙げられるが、これらに限定されない。精液サンプル/射精液サンプル中のCISの検出のために本発明に従う方法において使用するための最も好ましい非核マーカーは、ALPPL2、ALPL、KITおよびPDPNである。本発明の一局面は、精液サンプル/射精液サンプル中のCIS/癌細胞の検出のために使用される少なくとも1種のマーカーは、上記のマーカーのうちの少なくとも1種を含むことである。別の局面において、上記で言及したマーカーのうちの少なくとも2種のマーカーは、精液サンプル中のCIS細胞の検出のために、同時に位置づけることによって使用される。
【0078】
【表1−1】

【0079】
【表1−2】

【0080】
【表1−3】

【0081】
【表2】

上記のように、本発明の一実施形態は、少なくとも1個の癌細胞/CIS細胞内の異なる区画に位置する2種以上のマーカーの使用に関する。これら区画は、好ましくは、核区画および非核区画である。従って、異なる区画に位置するマーカーの組み合わせの非限定的であるが好ましい例に含まれる本明細書のマーカーとしては、以下が挙げられる:以下の非核マーカー:ALPPL2、ALPL、KITおよび/もしくはPDPNのうちの少なくとも1種と組み合わせて使用される核マーカーTFAP2C;同様に、以下の非核マーカー:ALPPL2、ALPL、KITおよびPDPNのうちのいずれかと組み合わせて使用されるPOU5F1(核マーカー);同様に、以下の非核マーカー:ALPPL2、ALPL、KITおよび/もしくはPDPNのうちの少なくとも1種/いずれかと組み合わせて使用される核マーカーNANOG;ならびにTP53(核マーカー)はまた、好ましくは、以下の非核マーカー:ALPPL2、ALPL、KITおよび/もしくはPDPNのうちのいずれかと組み合わせて使用される。例えば、非核マーカーALPPL2を、以下の核マーカー:TFAP2C、POU5F1、NANOGおよび/もしくはTP53のうちの少なくとも1種/いずれかと組み合わせて使用する、逆の組み合わせもまた、明らかに好ましい。最も好ましくは、TFAP2Cは、ALPPL2と組み合わせて使用される。
【0082】
非核/細胞ゾルマーカー(例えば、ALPPL2)および核マーカー(例えば、TFAP2C)の両方を使用する利点は、細胞ゾルおよび核から来るシグナルの同時位置づけである。このことは、CISマーカーの検出のためにサンプルを分析することから、偽陽性読み取りのリスクを多いに軽減する。
【0083】
上記核CISマーカーは、射精されるまで精細管にそれらのインサイチュの位置から保持される一方で、上記細胞質マーカーはときおり、この移動の間に分解される。しかし、上記核マーカーは、本明細書で示されるように、尿生殖路の上皮においても発現され、ときおり、浸潤性リンパ球によっても発現され、このことは、単一核染色に基づいた場合、偽陽性細胞を生じ得る。さらに、単一の染色手順に関する分析は、常に、陽性染色を与える人工品を取り扱わなければならない。しかし、強力な核マーカーと、細胞ゾルマーカーとの組み合わせを使用すると、上記アッセイの特異性が顕著に増強される。
【0084】
(試験されるべき個体)
癌細胞(特に、精液サンプルおよび/もしくは射精液サンプル中のCIS細胞)を検出するための方法は、任意の哺乳動物男性に由来する精液サンプル/射精液サンプルに対して使用され得る。好ましくは、上記方法は、ヒト男性由来の射精された精液サンプルに対して行われる。
【0085】
精巣癌は、若年男性において最も一般的な癌であり、従って、本明細書で開示される非侵襲性の方法によって、全ての若年性男性をスクリーニングすることは、重要である。従って、本発明の一局面は、上記男性に由来する精液サンプルおよび/もしくは射精液サンプル中で少なくとも1種、好ましくは、2種のマーカーの検出によって、精巣癌(すなわち、CIS)について全ての男性(特に、より若年の男性)をスクリーニングことである。さらに、精巣発育不全症候群ならびに/またはこれに関連する疾患および/もしくは障害のうちのいずれかと診断された任意の男性をスクリーニングすることに関する。このことは、低受精能/低精子数を有するかまたはそのように診断されたことがある男性、尿道下裂、停留精巣および精巣癌と以前に診断された男性を含む。本明細書で記載される方法はまた、例えば、精巣癌についての処置の効力を追跡し、上記処置を中止した後の個体の健康状態をモニターして、上記癌の再発(relapse)/再発(reoccurrence)を抑える手段として使用され得る。
【0086】
CISおよび関連障害のマーカーの存在について分析されるべきサンプルは、リスク群の中で行われるべきであると優先順位を付けられ得るか、または男性(好ましくは、より若年の男性、すなわち、精巣癌の通常の開始年齢の前)におけるスクリーニング方法として使用され得る。上記男性としては、以下の群が挙げられるが、これらに限定されない:
・男性(ヒト男性)
・より若年の男性(すなわち、精巣癌の通常の開始年齢の前)
・生殖年齢の男性(ここで上記生殖年齢は、思春期(性的成熟)後の年齢群を含む)
・処置前および処置後に他の手段によって判明した精巣癌を有する男性
・停留精巣もしくは尿道下裂の先天的な病歴を有する男性
・超音波検査によって疑わしい微石症パターンを示す男性
・受精能に問題を有する男性。
【0087】
CISの存在についてスクリーニングされるべきより若年の男性は、5〜50歳(例えば、5〜10、例えば、10〜15歳、例えば、15〜20歳、例えば、20〜25歳、例えば、25〜30歳、例えば、30〜35歳、例えば、35〜40歳、例えば、40〜45歳、例えば、45〜50歳)の年齢範囲にあり得る。好ましくは、上記より若年の男性は、5〜40歳(例えば、10〜35歳、例えば、15〜35歳、例えば、15〜30歳、もしくは例えば、15〜25歳)の年齢範囲にある。
【0088】
スクリーニングは、生殖年齢にある全ての男性に関連し、上記生殖年齢は、思春期後の年齢であり、よって、本発明の一局面は、生殖年齢にある男性の精液サンプル/射精液サンプル中のCIS細胞の存在を検出することである。
【0089】
本発明の一局面は、利用可能であり得る任意の精液もしくは射精液サンプルに対する本明細書で開示される方法の使用に関する。例えば、不妊症の問題を有する男性は、通常、精子の質を試験するために、精液サンプルが調べられる;上記サンプルはまた、CISについてスクリーニングするために使用され得る。同様に、任意の拡大された健康状態の調査は、精巣癌についてのスクリーニングを含み得る;例えば、これは、全ての男性に対して行われ得、考えられる兵役/徴兵のために報告する。
【0090】
(サンプルの採取および取り扱い)
上記試験されるべきサンプルは、いくつかの方法のうちの1つ以上によって集められ得る。サンプル回収の主な方法は、自慰行為からか、または前立腺を機械的に刺激することによって、または射精を機械的に刺激する他の手段によって射精液を集める。別の方法は、シリンジでの吸引(expiration)により精巣から直接精液を回収することである。あるいは、上記サンプルは、性交後に集められ得る。本発明の方法はまた、分析前に保存された(例えば、凍結されたか、もしくは別の方法で保存された)精液サンプルに対して行われ得る。
【0091】
好ましくは、上記精液サンプル/射精液は、所定の禁欲期間後に出される。ここで上記禁欲期間は、以前の射精からの一定期間として理解される。上記禁欲期間は変動し得るが、所定の範囲の日数が最適である。本発明の一実施形態において、上記射精液を回収する前の禁欲期間は、1〜10日間であり、例えば、1〜2日間、例えば、2〜3日間、例えば、3〜4日間、例えば、4〜5日間、例えば、5〜6日間、例えば、6〜7日間、例えば、7〜8日間、例えば、8〜9日間、例えば、9〜10日間である。本発明の別の実施形態において、上記射精液を回収する前の禁欲期間は、少なくとも1日間、例えば、2日間、例えば、3日間、例えば、4日間、例えば、5日間、例えば、6日間、例えば、7日間、例えば、8日間、例えば、9日間、例えば、10日間である。
【0092】
本発明の一実施形態において、上記禁欲期間は、10日間を超えない。なぜなら、これは、上記サンプルの質を落とすからである。
【0093】
本発明のさらなる実施形態において、精巣に由来する新生物細胞/CIS細胞の放出は、上記射精液サンプル/精液サンプルを集める前に刺激され得る。上記精巣の刺激としては、超音波、精巣もしくは前立腺のマッサージ、反復される射精もしくは薬物(例えば、コルヒチンもしくはバイアグラが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられ得る。
【0094】
ヒト男性についての平均射精液容積は、約2ml〜5mlである。本発明の一実施形態において、射精液全容積は、分析のために使用される。これは、CISマーカーを発現する細胞を有するサンプルを得る確率を増大させる。別の実施形態において、全容積のサブセットは、10〜90%(例えば、10〜20%、例えば、20〜30%、例えば、30〜40%、例えば、40〜50%、例えば、50〜60%、例えば、60〜70%、例えば、70〜80%、例えば、80〜90%)の範囲で使用される。従って、本発明に従う検出のために使用される上記容積は、射精液サンプルのデフォルト容積または標準化された溶液(例えば、5ml、4.75ml、4.5ml、4.25ml、4.0ml、3.75ml、3.5ml、3.25ml、3.0ml、2.75ml、2.5ml、2.25ml、もしくは2.0ml)のデフォルト容積であり得る。上記容積は、上記サンプルの一部を除去することによって調節され得るか、または当業者に公知である場合に、等張性の液体を添加することによって調節され得る。さらなる実施形態において、上記精子は、分析前に除去され、精液および任意のCIS、ならびに他の剥がれた細胞を上記分析されるべきサンプル中に残す。同様に、精子以外の細胞は、種々の手段(すなわち、勾配遠心分離もしくは免疫沈降)によって濃縮され得る。
【0095】
(サンプル調製)
上記サンプルは、ラベルが貼られた容器中に集められ得るか、またはラベルが貼られた容器に入れられる。上記容器のラベルは、特有の識別番号を含み得、上記ラベルの一部は、スライドへと貼り替えられ得る。
【0096】
上記サンプルは、上記サンプルの保存および上記サンプル中のシグナル/マーカーの量の保存を補助する安定化剤を含み得る容器に集められる。安定化剤としては、pH緩衝化剤、プロテアーゼインヒビター、RNaseインヒビター、固定剤および当業者に公知の他の化合物/成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
集められたサンプルは、適切な温度において収集場所で保存されてもよいし、調製のために現地の実験室もしくは外部の実験室に輸送されてもよい。
【0098】
上記サンプルは、上記サンプル中に存在する任意の新生物細胞/CIS細胞から最適なシグナルを得るために、異なる方法で加工処理され得る。上記サンプルを加工処理する工程としては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない;濾過、沈殿、免疫沈降、フローソーティング、分解(lyzing)、遠心分離、冷却、凍結、加熱もしくは当業者に公知の任意の他の方法。好ましくは、上記サンプルは、潜在的なCIS細胞の最適な検出を可能にするように処理される。これは、例えば、上記サンプルの細胞がインタクトなまま残り、かつ可能な限りそれらの本来の形態のままであることを可能にする様式で、上記サンプルを処理することにとって行われる。さらに、選択された分析方法に依存して、その詳細については以下を参照し、上記サンプルは、上記分析に合うように調製される。
【0099】
(サンプルの分析)
上記サンプルを、種々の分析を使用して、CISもしくは関連障害の検出のために、マーカーの存在について分析され得る。これら分析は、mRNA転写物および/もしくはタンパク質を検出するための方法を含み、上記方法としては、イムノアッセイ、免疫染色、免疫蛍光、免疫組織化学(IHC)、直接IHC、間接IHC、免疫細胞化学、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光ISH(FISH)、FISH In Suspension(FISH−ISTM)、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、FACS(蛍光活性化セルソーティング)、ImageStream、Turtle Probes、標的刺激(target primed)ローリングサークルPRINS、Luminexアッセイ、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、qRT−PCR(定量的逆転写酵素PCRもしくは「リアルタイムPCR」)、ネステッドPCR、質量分析、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ;もしくは酵素イムノアッセイEIA)、間接ELISA、サンドイッチELISA、競合的ELISA、ローリングサークル複製(もしくはローリングサークル増幅)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、磁性式イムノアッセイ(MIA)、ラテラルフロー試験(もしくはラテラルフローイムノクロマトグラフィーアッセイ)、濁度測定、補体固定試験、DNAマイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイ、ノーザンブロット、ドットブロットおよび酵素活性が挙げられるが、これらに限定されない。従って、本発明の目的は、本明細書で開示されるかもしくは言及されるマーカーのいずれかを検出するための任意の方法が、精液サンプル/射精液サンプルにおけるCIS細胞を検出するために使用され得ることである。
【0100】
一実施形態において、上記集められたサンプルの細胞は、遠心分離もしくは他の手段(例えば、塗抹)によって、顕微鏡用スライド上に固定され得る。一実施形態において、サイトスピン技術(Shandon industries)が使用され、上記サンプルは、本明細書中以降、精液サイトスピンといわれる。上記精液サイトスピンは、その後、通常の顕微鏡用スライドとして扱われる。
【0101】
好ましい実施形態において、上記分析は、上記少なくとも2種のマーカーを検出するために上記サンプルを免疫染色することを包含する。上記染色は、1工程で同時に行われてもよいし、2つ以上のその後の染色手順で行われ得る。第1の工程は、上記サンプルにおいて、非核マーカー/細胞質マーカーもしくは核マーカーについて染色する工程を含む。第2の工程は、「反対の」マーカー(すなわち、第1のマーカーが細胞質マーカー/非核マーカーであれば、核マーカーを染色。逆もまた同様)を染色する工程を含む。上記サンプルは、精液サイトスピンであり得る。精液サンプル/射精液サンプルにおいて、本明細書で開示されるかもしくは言及されるマーカーのうちのいずれかに対して特異的な抗体の使用は、全ての以前刊行された結果と対照的である(ここでこの方法は、実現不可能であると判明した)。所定のマーカーに対して特異的な抗体は、単独でもしくは組み合わせて使用され得る。抗体の組み合わせは、例えば、同じマーカー上の特異的エピトープかつ最も頻繁に異なるエピトープに対して指向される2種以上の抗体の組み合わせである。例えば、図8を参照のこと。ここでAP−2γのC末端およびN末端それぞれに対して指向される抗体の組み合わせによる染色は、C末端に対する抗体単独よりも改善され、より強い染色を与える。上記染色をスコア付けする際に、上記染色タイプと、上記染色/上記細胞の形態との間の相関が重要である:核の形状の核染色は、核として直ぐに同定可能ではない形態の核染色より高いスコアが与えられる。同じことが、上記染色が、免疫化学、酵素アッセイもしくは他によって得られようと、細胞質タンパク質もしくは他の形態的に特異的なマーカーの染色について示される。
【0102】
好ましい実施形態において、精液サンプルは回収され、精液サイトスピンへと加工処理され、少なくとも1種、および好ましくは、上記のもしくは言及したマーカーのうちのいずれか1種に対して各々特異的な2種以上の抗体を使用して免疫(細胞)染色することによって、分析に供される。好ましくは、上記マーカーは、表1に列挙されるマーカーのうちの少なくとも1種であり、より好ましくは、上記少なくとも1種のマーカーは、表2に列挙されるマーカーである。最も好ましくは、は、2種のマーカーは、免疫染色を使用するために検出されることが求められる。一方のマーカーは、核の位置でのマーカーであり、他方は、非核の位置でのマーカーである。さらに、以下の核マーカーのうちのいずれかは、サイトスピンもしくは他の調製された精液サンプル中のCISの検出のために使用されることが好ましい:TFAP2C、POU5F1、NANOGおよびTP53。同様に、以下の非核マーカーのうちのいずれかが、サイトスピンもしくは他の調製された精液サンプル中のCISの検出のために使用されることが好ましい:ALPPL2、ALPL、KITおよびPDPN。本発明の目的が、核マーカーに対して特異的な2種以上の抗体および/もしくは同じマーカーもしくは空間的に別個のマーカーに対する酵素アッセイが、同時に、別個におよび/もしくは連続して使用され得ることもまた、結果として起こる。
【0103】
本発明の目的は、酵素アッセイの使用によって、少なくとも1種のマーカー(例えば、ALPP/ALPPL2が挙げられるが、これらに限定されない)の検出によって、精液サンプル/射精液サンプル中の癌細胞の検出に関する。従って、一実施形態は、ALPP/ALPPL2のアルカリホスファターゼ活性を測定することによって、ALPP/ALPPL2の直接アッセイに関する。このアッセイは、BCIP(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート;PLAP基質)およびNBT(ニトロブルーテトラゾリウムクロリド;酸化剤)(これは、顕微鏡で可視化され得る青色の沈殿物に変換される)の使用を含むが、これらに限定されない。必要に応じて、キール染色(kiel staining)およびレバミゾール(内因性ホスファターゼのインヒビター)も、使用され得る。好ましくは、上記酵素活性は、固定されていない材料(例えば、精液サイトスピン)に対して行われる。この方法は、PLAPを染色する抗体と、他の本明細書で開示されるマーカーのうちのいずれかを組み合わせて使用され得る。
【0104】
好ましい実施形態において、TFAP2Cは、免疫染色によって検出され、ALPP/ALPPL2は、酵素アッセイによって、好ましくは、上記の酵素アッセイによって検出される。
【0105】
上記染色された精液サイトスピンは、異なる方法で分析され得るが、1つの好ましい実施形態において、これは、自動化顕微鏡スキャンおよびその後の自動化画像分析によって行われる。あるいは、その結果は、例えば、色の深さ/強度/位置パターンもしくは当業者に公知の他のパラメーターを示すスコアリングボードとの比較によって、手動顕微鏡によってスコア付けされ得る。
【0106】
一実施形態において、自動化スライドスキャナーは、スライドをスキャンし、その画像が、コンピューターシステムに保存される。次いで、上記画像は、上記精液サイトスピン中の癌細胞/CIS細胞を同定するように設計されたアルゴリズムによって分析される。
【0107】
(図面の詳細な説明)
図1 ヒト男性の生殖器系。射精の間の精巣からのthe route cellを示す男性生殖器系の模式図。細胞を射精液に与える主要な腺は、精巣上体、精嚢、および前立腺である。
図2 精巣発育不全症候群(TDS)、その原因および結果。精巣発育不全症候群の要素と臨床的発現との間の病理的関係の模式図(Skakkebakら 2001から改作)。男性生殖器の健康状態における有害な状態は、共通の起源にそれらの根本がある;胎児精巣の発生の間の特定のエラー。この障害のあつまりは、精巣発育不全症候群(TDS)といわれる。
図3 CISマーカーの発現および尿生殖路由来の上皮における活性の免疫組織化学調査および酵素活性調査:尿生殖器組織における選択されたマーカーの免疫組織化学染色。A−T:パラフィン切片。U−Y:凍結切片。A−D:AP−2γ IHC。A:精巣上体。B:前立腺。C:精嚢。D:精細管(testicular tubules)(マイヤーのヘマトキシリンで対比染色)。E−F:AP−2γ ISH(挿入図:センスコントロール)。E:精巣上体。F:前立腺。G−J:OCT3/4 IHC。G:精巣上体。H:前立腺。I:精嚢。J:精細管(testicular tubules)(マイヤーのヘマトキシリンで対比染色)。K−L:OCT3/4 ISH(挿入図は、センスコントロール)。K:精巣上体。L:前立腺。M−P:NANOG IHC。M:精巣上体。N:前立腺。O:精嚢。P:精細管(testicular tubules)(マイヤーのヘマトキシリンで対比染色)。Q−R:NANOG ISH(挿入図は、センスコントロール)。Q:精巣上体。R:前立腺。S:PLAP IHC 精巣上体。T:AGGRUS(ポドプラニン) IHC 前立腺。U:アルカリホスファターゼ HC(青色)およびAP−2γ IHC(赤色)について染色した精巣上体。V:アルカリホスファターゼ HC(青色)およびOCT3/4 IHC(赤色)について染色した前立腺。X:アルカリホスファターゼ HC(青色)およびOCT3/4 IHC(赤色)について染色した精嚢。Y:CISをアルカリホスファターゼ HC(青色)について染色した精細管(testicular tubules)。HC:組織化学、IHC:免疫組織化学、ISH:インサイチュハイブリダイゼーション。結果を、表3で概説し、実施例1でさらに説明する。
図4 尿生殖器組織における選択されたCISマーカーのRT−PCR。4つの異なる精巣上体(E1−E4)、3つの前立腺(P1−P3)、2つの精嚢(S1およびS2)、胚性幹細胞(ESC)、セルトリ細胞のみ(SCO)、および正常精子形成(NS)における多能性関連転写因子のmRNA発現を示すRT−PCR。精巣上体由来のサンプルを、頭部(hE)、体部(bE)、および尾部(tE)に分離する。
図5 アルカリホスファターゼ活性およびAP−2γ免疫組織化学の両方を使用した、精液サンプル中のCIS細胞の染色。上のパネルは、青色および赤色両方を示す一方で、真ん中は、赤色(常に核にある)を示し、下のパネルは、青色(主に細胞質にある)を示す。画像Aは、疑いなくCIS細胞である、青色染色した細胞質および赤い核を有する2個の細胞を示す。しかし、スライドに固定された核および細胞質の空間的配置はまた、図5B、D、GおよびHに図示されるように、核の上に細胞質とともに配置され得る。本発明者らはまた、使用した上記2種のマーカーのいずれかについて陽性であった細胞を観察した。図5Cは、図5EにおいてAP−2γのみでの染色を示し、Fは、アルカリホスファターゼについてのみ陽性である細胞が示される(p28 l19〜20がよく分かりませんでした)。
図6 CIS細胞の後の診断が、精巣生検において確認された、不妊症男性に由来する射精液中で見いだされた代表的細胞。この図は、白黒で示される:記号「赤色」は、核のAP−2γ染色であり、「青色」は、アルカリホスファターゼ活性である。「オリジナル」は、2種の染色「赤色」および「青色」の重ね合わせである。
図7 不妊症男性から採取された精巣生検におけるPLAPについての免疫組織化学染色(4つのうち4つが、陽性の精液サイトスピン)。上記サイトスピンは、CIS細胞が各サイトスピンにおいて見いだされるという点で陽性であった。A)大きな全体像。B)高解像度。
図8 C末端単独(図に示される)もしくはN末端(示されない)に対する抗体と比較して、AP−2γタンパク質の異なる部分(C末端およびN末端)に対して指向される抗体の組み合わせを使用した場合に、改善した染色強度を示すTCam−2コントロール細胞の免疫染色。
【実施例】
【0108】
(実施例1)
ヒト精液中のCISに関する非侵襲性試験を行うための方法を提供するために、本発明者らは、精巣上体、前立腺および精嚢に対して、ALPP/ALPPL2、POU5F1、TFAP2C、NANOG、KITおよびMAGE−A4に対する抗体を用いて、免疫組織化学分析を行った。
【0109】
以下において、本発明者らの所見が示される:胎盤様アルカリホスファターゼ(ALPP/ALPPL2)の組織化学(酵素)的検出およびAp−2γ(TFAP2C)の免疫細胞化学的検出に基づく、精液サンプル中のCISについての細胞化学的調査についての二重染色。
【0110】
(材料および方法)
(組織サンプル)
デンマークの医学研究倫理についての地方委員会が、このプロジェクトのためにヒト組織サンプルの使用を承認した。サンプルは、病理部(Rigshospitalet)のアーカイブの精巣上体、前立腺および貯精嚢、ならびに大学の成長および生殖部門(Rigshospitalet)のアーカイブの悪性精巣材料を含んだ。さらなる材料および新鮮な材料を、前立腺癌および精巣癌手術後の組織の余剰物から得た。
【0111】
(免疫組織化学(IHC))
精巣上体、前立腺および貯精嚢に由来する組織サンプルを、緩衝化ホルマリンもしくは4% パラホルムアルデヒド PFA中、4℃で一晩固定した;アーカイブからの同じ固定剤中の陽性コントロール材料(CIS、精上皮腫もしくは胎生期癌)を、必要時に使用した。以下の抗体を使用した:OCT 3/4(POU5F1)(モノクローナルマウス抗体C−10;sc5279,Santa Cruz Biotechnology Inc.,Santa Cruz,CA,)、NANOG(ヤギ抗NANOG AF1997;R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)、C−kit(KIT)(モノクローナルマウス抗ヒトC−kit CD117,Dako,Copenhagen)、Ap−2γ(TFAP2C)(モノクローナルマウス抗体6E4/4;sc12762,Santa Cruz)、PLAP(ALPPL2)(モノクローナルマウス抗ヒト胎盤アルカリホスファターゼ,クローン8A9,Dako)およびMAGE−A4(G.Spagnoli(Ludwig Institute for Cancer Research,Lausanne,Switzerland)から)。OCT3/4、NANOG、PLAPおよびAp2γは、CISについての優れたマーカーであるのに対して、少なくともいくつかのCIS細胞は、C−kitおよびMAGE−A4に対して陽性である。
【0112】
精巣組織に対して使用される抗体に関する免疫組織化学(IHC)プロトコルは、以前に記載された;OCT3/4(POU5F1)(Rajpert De−Meytsら,2004)、NANOG(Hoei−Hansenら,2005b)、C−Kit(KIT)(Rajpert−De Meytsら,2003a)、Ap2γ(TFAP2C)(Hoei−Hansenら,2004)、PLAP(ALPPL2)(Jacobsen and Norgaard−Pedersen,1984)およびMAGE−A4(Aubryら,2001)。要するに、標準的な間接IHCプロトコルを使用した。切片を脱パラフィン(de−wax)し、再水和し、NANOG、MAGE−A4およびC−Kitについては、10mM クエン酸緩衝液(pH 6.0)中、Ap2γおよびOCT3/4については5% 尿素(pH8.5)中、ならびにPLAPについてはTEG緩衝液(pH9.0;トリス 6.06g/5lおよびEGTA)中、マイクロ波処理によって脱マスク(de−mask)した。その後、上記切片を、0.5% Hに曝して、内因性ペルオキシダーゼを阻害した。非特異的結合部位のブロックを、NANOG(TBS中ヒト血清 1:4を使用した)を除く全ての抗体について2% 非免疫ヤギ血清(Zymed Histostainキット95−6543,USA)で行った。抗体を以下の希釈で載せ;OCT3/4(1:250)、NANOG(1:20)、Ap2γ(1:50)、PLAP(1:100)、MAGE−A4(1:200)およびC−Kit(1:400)、4℃で一晩インキュベートした。上記使用した抗体の濃度は、悪性精巣材料に対して通常使用されるものと同じであった。ビオチン化ヤギ抗マウスIgG(Zymed Hitostainキット,USA)を、上記モノクローナル抗体に対する2次抗体として使用し、ビオチン化ウサギ抗ヤギ抗体(Zymedキット81−1640)を、NANOGに対して使用し、ペルオキシド結合体化ストレプトアビジン複合体を、3次層にとして使用した。アミノエチルカルバゾール(Zymed Histostainキット)で可視化を行った。
【0113】
精液サンプル中の状況を可能な限り模倣するために、上記OCT3/4抗体およびAp2γ抗体を、精巣上体および前立腺に由来する凍結切片材料に対しても使用した。これら凍結実験を、アルカリホスファターゼについてのBCIP/NBT反応とも組み合わせて行った(以下を参照のこと)。Nikon Microphot−FXA顕微鏡(Nikon,Japan)で試験を行い、結果を、2名の調査者がスコア付けした。染色を、染色強度の恣意的な半定量的スコアを使用して評価した:
+++:強い染色
++:中程度の染色
+:弱い染色
+/−:非常に弱い染色
neg:染色なし。
【0114】
(細胞化学)
アルカリホスファターゼ活性(ALPP/ALPPL2)を、基質5−ブロモ−4−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)(Sigma−Aldrich,USA)を用いて、固定していない材料上で直接可視化し得る。本発明者らは、レバミゾール;内因性ホスファターゼのインヒビターなしでNielsenら(2003)に示されたプロトコルを使用した。アルカリホスファターゼについてのBCIP/NBT染色を、ヒト精液の凍結切片に対して、およびサイトスピンに対して行った。この目的のために、本発明者らは、科学的調査のために彼らの精液の余剰物の使用について了承する署名をした不妊症男性、潜在的精巣癌患者および精巣癌患者の残りを使用した。精液を、D−PBS(Gibco,Paisley,UK)中、約25×10精子/mlの濃度に希釈した。100μlの希釈精液のサンプル、続いて400μl PBSを、were applied to Shandon二重細胞漏斗(double cyto−funnel)(5991039,Anatomical Pathology International Runcorn,UK)に載せ、Shandon サイトスピン 2 遠心分離器を使用して1500rpmで5分間、SuperFrostPlus顕微鏡用スライド(Menzel−Glaser,Braunschwieg,Germany)上に遠心分離した。得られたスライドを、75% エタノール中で固定し、風乾し、発色緩衝液に10秒間曝し、続いて、BCIP/NBT基質に90秒間曝し、水道水を流して洗浄した。最終的に、上記スライドを、IHCプロトコルに曝す前に、4% PFA中で10分間固定した。
【0115】
(RT−PCR)
RT−PCRを、他の箇所(Hoie−Hansenら 2005)で記載されるように、標準的手順を使用して行った。簡潔には、総RNAを、製造業者(Macherey−Nagel,Duren,Germany)が説明するとおり、NucleoSpin RNAIIキットを使用して精製し、サンプルを、DNAse消化した。cDNAを、オリゴdTおよびランダムヘキサマープライマーを用いて合成し、特定のプライマーを、各遺伝子について設計した。PCR負荷およびcDNA合成の制御のために、マーカー遺伝子RPS20の発現を、分析した。PCR生成物を、1.5% アガロースゲルで泳動し、エチジウムブロミド染色によって可視化した。
【0116】
(インサイチュハイブリダイゼーション(ISH))
ISHについてのプローブを、イントロン−エキソン境界にまたがる特異的プライマーを使用することによって、RT−PCR増幅により調製した。プローブを、NANOG1および偽遺伝子を検出するために設計したが、記載されたNANOG2(Q8N7Ro,Ensemble.org)転写物については設計しなかった。第1のプライマー組み合わせ CTGCTAAGGACAACATTGATAGおよびATACAAGACCTCTTTCTACAAAG、第2のプライマー組み合わせ
【0117】
【化1】

(後者は、それぞれ、付加されたT3プロモーター配列もしくはT7プロモーター配列を含む(プロモーター配列は、下線を付加した))。
【0118】
同様に、上記AP−2γプローブについてのプライマー:第1のプライマー組み合わせ AAGAGTTTGTTACCTACCTTACTおよびCATCAATTTGACATTTCAATGGC、第2のプライマー組み合わせ
【0119】
【化2】

同様に、POU5F1プローブについて:第1のプライマー組み合わせ GGGTGGAGGAAGCTGACAACおよびGCATAGTCGCTGCTTGATCG、第2のプライマー組み合わせ
【0120】
【化3】

PCR条件は、以下を含んだ;95℃で5分;95℃で30秒、45℃で1分、72℃で1分を5サイクル;および95℃で30秒、65℃で1分、72℃で1分を20サイクル、ならびに最後に72℃で5分。得られたPCR生成物を、2% 低融解点アガロースゲルで精製し、付加したT3タグおよびT7タグに対して相補的なCy5標識プライマーを使用して両方の末端から配列決定した。約200ngのアリコートを、製造業者(Ambion/ABI,USA)によって記載されるように、MEGAscript−T3(センス)もしくはMEGAscript−T7(アンチセンス)キットを使用して、インビトロ転写物標識のために使用した。超および標識有効性を評価するために、標識したRNA生成物のアリコートを、アガロースゲル電気泳動によって分析した。ISHを、以前に記載されたように行った(Nielsenら,2003)。簡潔には、切片を、4% PFA中で再固定し、プロテイナーゼK(Sigma−Aldrich,USA)(1.0〜5.0μg/ml)で処理し、PFAで再固定し、50℃で1時間予備ハイブリダイズし、50℃でビオチン化アンチセンスおよびセンスコントロールプローブと一晩ハイブリダイズした。0.1×標準的クエン酸塩類(standard saline citrate)(60℃)で過剰なプローブを除去した。アルカリホスファターゼと結合体化したストレプトアビジン(1:1000)(Roche Diagnostics,Germany)を使用し、続いて、BCIP/NBTでの発色により、可視化を行った。
【0121】
(結果)
AP−2γ(TFAP2C):精巣上体、前立腺および精嚢上皮は、IHC実験に従って、AP−2γについて陽性であり、精巣上体および前立腺についての結果を、ISHによって確認した。精巣上体において、AP−2γについてのIHC染色は、強力〜中程度であり、ほぼ完全に核であった。前立腺において、上記IHC染色は、強力〜中程度であり、最も強力およびときおりかろうじて染色を、核に対して確認した。いくつかの場合において、明らかにほとんど遊離した、強力に染色された核が、上皮の表面で観察された。精嚢上皮において、上記AP−2γ IHC検出は、主に核膜にあった。このことは、調査した上皮の他の2種においてより概して弱い染色が理由であり得る。IHCを、凍結切片材料に対して行った。再び精巣上体の状におよび前立腺についても陽性であった。上記凍結実験に使用した精巣上体材料を、頭部、体部、および尾部に分けた。尾部および体部において、上記検出は、核にあったのに対して、細胞質から核膜染色は、頭部において観察された。
【0122】
OCT3/4(POU5F1):OCT3/4についての免疫組織化学(IHC)染色は、精巣上体、前立腺および精嚢において弱〜非常に弱いであった。上記IHC染色を、3種の全ての腺における上皮に制限した。精巣上体において、上記染色は、主に核(1つのサンプルは、細胞質で陽性であった)にあった。核中の小さい丸い物体が、頻繁に、非常に強く染色された。前立腺および精嚢において、核染色および細胞質染色の両方を行った。精巣上体および前立腺におけるこれら検出は、ISHで確認できた。
【0123】
NANOG:精巣上体、前立腺および精嚢上皮は、IHCでNANOGについて弱陽性であった。精巣上体において、NANOGについての全体的な染色は、強力〜中程度であり、上記染色の大部分は、上記上皮の細胞質中のより弱い染色と合わせて、核膜に位置したが、このことからの多くのずれが見いだされた。例えば、細胞質中で強力な染色を有するばらばらになった単一の上皮細胞、あるいは核の大きさの丸い物体、または各細胞中のもしくは細胞あたりかなりの量の遙かに小さなものの強力な染色を有するばらばらになった細胞。いくつかの精細管において、管腔に対する強力な染色が、観察された;このことは、人工物が細胞境界の縁部に抗体をより接近しやすくする場合を説明し得る。精巣上体において胎生期癌(NANOGについて強陽性)を有する一例において、上記腫瘍に最も近い精細管上皮は、上記腫瘍から遠い精細管よりかなり弱く染色された。上記精細管を囲む平滑筋の核の弱い染色は、そこここで観察された。上記NANOG mRNAを、精巣上体上皮においてインサイチュハイブリダイゼーションによって検出した。前立腺上皮において、NANOGについての上記IHC染色は、強力〜中程度であった。NANOGは、主に細胞質に見いだされた。ごく僅かな核の検出が見いだされ、繰り返すと、ばらばらになった細胞が、より強く反応した。精嚢は、NANOGについて陽性〜弱い細胞質IHCを有した。
【0124】
C−Kit(KIT):精巣上体、前立腺および精嚢の上皮細胞膜は、上記KIT抗体でのIHC染色を使用して陰性であった。
【0125】
PLAP(ALPPL2)およびMAGE−A4:精巣上体、前立腺および精嚢の上皮は、IHC分析において、PLAP抗体およびMAGE−A4抗体を使用して陰性であったが、取り囲んでいる平滑筋細胞は、上記PLAP抗体で強く染色された。上記Dako PLAP抗体での平滑筋線維の染色は、悪性の精巣生検の慣用的な調査では未知であった。この反応は、筋様細胞における未知のエピトープによって引き起こされるバックグラウンド反応であるとみなされるが、他のPLAP抗体のうちのいくつかは、異なる制限を有する。陰性PLAP反応を確認するために、本発明者らは、精巣上体、前立腺および精嚢由来の凍結切片化材料でアルカリホスファターゼのBCIP/NBT反応を使用した。見いだされた唯一の陽性反応は、小血管の内皮細胞であった。
【0126】
上皮反応
【0127】
【表3】

(RT−PCR)
図4は、多能性に関連する選択された遺伝子のRT−PCRを示す。多能性は、CIS細胞の周知の顕著な特徴であり、胚の特徴のうちのいくつかは、明白な精上皮腫においてすら保持されている。図4は、上記多能性表現型を担う遺伝子の多くがまた、尿生殖器上皮において発現されることを示す。RT−PCRによって分析される遺伝子は、全て転写因子であり、これらは、核に位置し、これらのうちの多くはまた、CIS細胞において発現される。このことは、CISの核マーカーがまた、尿生殖器上皮において発現されることが見いだされるので、CIS細胞について分析される精液サイトスピンにおける偽陽性染色を引き起こし得ることをさらに強調する。
【0128】
(精液細胞学)
ある範囲の精液サンプルを、二重染色手順およびAP−2γ染色およびアルカリホスファターゼ染色の各々について与えられたスコアで分析した。陽性の異なる組み合わせを、図5で概説されるように観察した。明らかに、赤色の核染色と図5Aにおいて示されるように青色染色とは、疑いなく陽性CIS細胞である。しかし、スライド上に固定された核および細胞質の空間的配置はまた、図5B、D、GおよびHに図示されるように、核の上に細胞質とともにあり得る。本発明者らはまた、上記使用される2種のマーカーのうちのいずれかについて陽性であり、図5CにおいてAP−2γ、ならびに図5EおよびFにおいてアルカリホスファターゼで示される細胞を観察した。AP−2γについての陽性染色は、真に陽性のCIS細胞についての高い可能性を示し、このことは、アルカリホスファターゼについての場合ではない。なぜなら上記反応は、以前に記載される(Giwercmanら 1990;Hoei−Hansen,C.Eら 2007)ように、いくらか非特異的であるからである。しかし、図5AもしくはBにおけるような組み合わせでのAP−2γおよびアルカリホスファターゼ両方の陽性染色は、真に陽性のCIS細胞を有する可能性を顕著に増大させる。
【0129】
(議論)
この調査は、CISについての伝統的な良好な核マーカー:AP−2γ(TFAP2C)、OCT3/4(POU5F1)およびNANOGがまた、生殖器系の上皮において発現されることを示す。従って、精液サンプルにおいて生じる偽陽性は、これら上皮由来の遊離した細胞に起因する可能性が十分にあり得る。
【0130】
この実験における本発明者らの懸念は、これまでCISの染色についてのプロトコルに集中しており、これらの結果と、精巣上体、前立腺および精嚢に対するこの研究によって得られたものと比較する。
【0131】
OCT3/4、NANOGおよびAP−2γでの尿生殖器上皮の核染色は、精液/射精液中の剥がれた上皮細胞の存在に起因して、CIS精液試験において問題を引き起こし得る。精巣癌患者由来の精巣上体のHE染色は、核内に種々の大きさのエオシン(赤色)陽性の球形の物体を頻繁に示し、細胞質においては;同じ検鏡視野において類似の球形の物体が、精細管の管腔の中に遊離されるようである。Rigshospitaletの病理部は、これらヒアリンの球形の構造が、抗体の非特異的結合を引き起こし得ることを経験している。これら構造は、NANOGおよびOCT3/4での強力な染色とともに本発明者らが観察したものと同じであり得る。核の大きさのこれら球形の物体は、CIS精液試験において問題となり得、さらに偽陽性結果を引き起こす。明らかに、AP−2γ陽性核は、前立腺上皮から遊離しているので、精液へと遊離し得る。
【0132】
OCT 3/4およびNANOGについて陽性であるこれら上皮の生物学的意義は、上皮の連続的再生の必要性であり得、それによって、これら遺伝子が純粋に幹細胞遺伝子と主にみなされる必要性であり得る。上皮中の核が全て陽性に染色されることは驚くべきことである。本発明者らは、これら上皮中のAP−2γ位置の裏にある生物学に関して、何ら示唆はない。
【0133】
PLAP抗体でのIHC染色について得られた陰性結果を、これら上皮における凍結切片上のアルカリホスファターゼについての陰性組織化学染色で観察した。これは、驚くべきことに、尿生殖器上皮において同様に発現されるCISについての他の十分に特徴付けられたマーカーとは対照的に、PLAP(ALPPL2)がそこで発現されないことを示す。従って、本発明者らは、本明細書で示されるように、アルカリホスファターゼについてはBCIP/NBTおよびAP−2γ免疫染色を用いた癌細胞/CIS細胞の二重染色によって、精液サンプル/射精液サンプル中の癌細胞の検出のための方法を示す。
【0134】
(実施例2:精液サンプルの二重染色による、精巣癌についての不妊症男性のスクリーニング)
この研究の目的は、低受精能の男性のリスク群の中で、無症候性CIS病変を有する患者を同定するために、スクリーニングツールとして本発明の免疫細胞学的アッセイを使用する可能性を追跡することであった。さらに、本発明者らは、精巣癌を有することが既知の患者に由来する精液サンプルを使用して、この患者群におけるアッセイの能力を評価した。
【0135】
本明細書において、細胞学的方法をさらに改善し、本発明者らは、不妊症が原因で病院に照会した311名の低受精能の男性のコホートで能力を試験した。
【0136】
4名の患者を、陽性であると同定し、現在では、1名が、外科的生検によってCISと後に診断された。11名の患者は、境界型であると同定され、292名は陰性であった。
【0137】
(材料および方法)
(精液、組織および細胞株サンプル)
デンマークの医学研究倫理についての地方委員会が、このプロジェクトのために、精液サンプルを含むヒト組織の使用を承認した(許可番号H−KF−012006−3472)。
【0138】
(精液サンプル)
この手順を、慣用的な精液分析後に、新鮮な精液サンプルに対して行った。必要であれば、上記サンプルを、PBS(Invitrogen)中25×10 精子/mlの濃度へと希釈した。100μlの希釈精液のサンプルを、Shandon二重細胞漏斗に載せ、100μl PBSを添加し、その後に上記サンプルを、Shandon サイトスピン 2遠心分離器(Anatomical Pathology International,Runcorn,UK)を使用して1500rpmで5分間、SuperFrost Plus 顕微鏡用スライド(Menzel−Glaser,Braunschweig,Germany)上で遠心分離した。サイトスピンを、75% エタノール中で前固定し、BCIP/NBT基質中に5分間沈め、続いて、洗浄し、4% PFA中で10分間後固定することによって、アルカリホスファターゼ活性について最初に染色した。TCam−2細胞のサイトスピンを、陽性コントロールとして、並行して処理した。サイトスピンを、その後、対比染色を省略したこと以外精液サンプルについて以前に刊行されたIHCプロトコル(Howi−Hansenra,2007)に従って、AP−2γについて染色する前に、冷蔵庫中で最大4日間保存した。上記染色したサイトスピンの検鏡を、少なくとも2名の無関係の調査者によって、光学顕微鏡を使用して行った。
【0139】
ヒト精上皮腫に由来する上記TCam−2細胞株(de Jongら,2008)を、成功裏の染色のために陽性コントロールとして使用した。なぜなら、これらは、TFAP2CおよびPLAPの両方について陽性であるからである。TCam−2細胞を、RPMI1640(10% ウシ胎仔血清およびペニシリン/ストレプトマイシン(全てInvitrogen(San Diego,CA,USA)製)を補充した)を使用して、37℃で5% 二酸化炭素のインキュベーター中、以前に記載される(Goddardら,2007)ように培養した。
【0140】
(組織サンプル)
組織サンプルを、急速凍結するか、または4℃で、緩衝化ホルマリンもしくは4% パラホルムアルデヒド(PFA)中で一晩固定した。パラフィン切片に対する免疫組織化学を、(Hoei−Hansenら,2005a)において記載されるように、TFAP2C(モノクローナルマウス抗体,MAb 6E4/4;sc−12762,Santa Cruz Biotechnology Inc.,Santa Cruz,USA)、(Rajpert−De Meytsら,2004)によって記載されるように、POU5F1(MAb C−10;sc.5279,Santa Cruz)、および(Givercmanら,1991;Jacobsen and Noergaard−Pedersen,1984)に記載されるように、胎盤様アルカリホスファターゼ(PLAP)(MAb,クローン8A9,DAKO,ALPPおよびALPPL2の両方を認識)を使用して、標準的な間接ペルオキシダーゼ法を使用して行った。
【0141】
(患者)
精液サンプルを、精液分析および/もしくは凍結保存用に、本発明者らの男性病学クリニックにかかっている311名の患者から得た。上記患者を、書面でのインフォームド・コンセントの後に、および上記サンプルのうちの少なくとも100μl(マイクロリットル)が、標準的な精液分析および凍結保存の後に利用可能であった場合、上記研究に登録した。
【0142】
2つの異なる患者カテゴリーを分析した:不妊症が理由で生殖医療クリニック(fertility clinic)にかかっていて、父親になるために病院に来たのみの患者、および精巣癌を有する疑いがある患者。
【0143】
(結果)
(低受精能男性のスクリーニング)
8ヶ月間で、本発明者らは、311名の低受精能患者に由来する439個のサイトスピンを分析した。大部分の場合において、患者1名あたり1つもしくは2つの射精液を分析したが、いくらかの場合では、同じ患者に由来する最大4個のサンプルを、分析した(4サンプル n=2;3サンプル n=2;2サンプル n=119;1サンプル n=188)。上記射精液のごく小さな画分(100〜400μl)を、慣用的な精液分析後に分析した。平均精子濃度は、19.4×10E6 精子/mlおよび平均年齢34.2であった。
【0144】
292名の男性を、陰性(グレード0〜2)としてスコア付けした(男性のうちの93.9%に等しい)。11名の男性(3.5%)を、境界型とみなした(グレード3)。4名の男性を、陽性と見いだした(グレード4〜5)(調査した低受精能の男性のうちの1.3%に等しい)。結果を、表4に概説する。
【0145】
4回の独立した射精液の各々を出した陽性男性のうちの2名および全4サンプルを、両方の場合において陽性であると見いだした。代表的な細胞を、図1に示す。精巣生検を、上記男性のうちの1名について採取し(4個の陽性サンプルのうちの4個)、CISと診断した(図2)。上記他の陽性の男性は、なお臨床追跡中であり、決定的な臨床的結論には未だ至っていない。
【0146】
境界型の症例の中で、1名を生検し、CISを同定できなかった。
【0147】
【表4】

(考察)
不妊症男性の群の中で、種々の数の精巣癌の症例を報告した。米国における不妊症について評価される22562名の男性の大きな予測研究において、精巣癌症例の発生率は、1.3であることが分かった。男性不妊症に評価を限定すると、発生率は、2.8へと増大した(Walshら,2009)。それぞれ、1.6および2.3といういくらか類似の発生率もまた、32 442名のデンマークの不妊症男性の中で見いだされた(Jacobsenら,2000)。これらの数は、この研究において同定されたCIS陽性の男性の発生率と非常によく適合する。ここで(311名のうち4名) 1.3%を、陽性と同定した。陰性所見を有する292名の男性の中で、それにも関わらず精巣癌を発症するものがいくらかいる可能性はり、おそらく、2〜3の境界型の症例はまた、CISを有する。従って、発生率は、増大し得る。
【0148】
本発明者らの群からの初期の研究(Hoei−Hansenら,2007)において、ある範囲の偽陽性の不妊症男性を同定し、上記アッセイ(これは、AP−2γ(TFAP2C)についての免疫細胞化学染色を含んだのみ)を使用した(これは、他の確立された技術(主に超音波)に対する補助としてのみ考えられ、リスク因子(停留精巣もしくは精巣発育不全の以前の病歴)を示す)。本研究において、本発明者らは、二重染色によってCIS同定のアッセイにおける最近の進歩を利用した。よって、AP−2γについての免疫細胞化学染色を、アルカリホスファターゼ酵素活性についてのさらなる細胞化学染色より先に行った。このことは、図1に図示されるように、CIS細胞の細胞質においてさらなる青色染色を生じ、グレード決定を、正確な形態と組み合わせて陽性二重染色としてより容易にし、陽性判定を最終的にもたらす。
【0149】
(実施例3)
抗体組み合わせ。AP−2γタンパク質のN末端およびC末端に対して指向される抗体の組み合わせは、C末端もしくはN末端単独を用いるよりよいAP−2γ染色の強度を与える。図8は、TCam−2コントロール細胞での並行加工処理サイトスピンにおける染色を示す。C末端抗体単独と比較すると、抗体の組み合わせで染色したサイトスピンにおける染色は、より濃いことに注意のこと。
【0150】
【数1】

【0151】
【数2】

【0152】
【数3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
精巣癌および/もしくはその前駆体の検出のための方法であって、該方法は、同じ細胞における少なくとも2種のマーカーの存在についてサンプルをスクリーニングする工程によるものであり、ここで該サンプルは、ヒト男性由来の精液サンプルおよび/もしくは射精液である、方法。
【請求項2】
前記少なくとも2種のマーカーのうち、少なくとも1種のマーカーは、核マーカーであり、少なくとも1種の他方のマーカーは、非核マーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2種のマーカーのうち、少なくとも2種は、核マーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2種のマーカーのうち、少なくとも2種は、細胞質マーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の核マーカーは、TFAP2C(Ap−2γ)、POU5F1(OCT3/4)、NANOG、SOX2、SOX15、SOX17、E2F1、IFI16、TEAD4、TLE1、TATDN2、NFIB、LMO2、MECP2、HHEX、XBP1、RRS1、MYCN、ETV4、ETV5、MYCL1、HIST1H1C、WDHD1、RCC2、TP53、およびMDC1からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の核マーカーは、TFAP2C(Ap−2γ)、POU5F1、NANOGおよびTP53からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞質マーカーは、ALPPL2(PLAP)、ALPL、DPPA4、TCL1A、CDH1、GLDC、TCL1A、DPPA4、CDK5、CD14、FGD1、NEURL、HLA−DOA、DYSF、MTHFD1、ENAH、ZDHHC9、NME1、SDCBP、SLC25A16、ATP6AP2、PODXL、PDK4、PCDH8、RAB15、EVI2B、LRP4、B4GALT4、CHST2、FCGR3A、CD53、CD38、PIGL、CKMT1B、RAB3B、NRCAM、KIT、ALK2、PDPN、HRASLS3、およびTRA−1−60からなる群より選択される、請求項1〜2、または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞質マーカーは、ALPPL2(PLAP)、ALPL、KITおよびPDPNからなる群より選択される、請求項1〜2、または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2種のマーカーは、Ap−2γ(TFAP2C)およびPLAP(ALPPL2)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記精液サンプルおよび/もしくは射精液の試験は、以下の方法のうちの少なくとも1つ:イムノアッセイ、免疫染色、免疫蛍光、免疫組織化学(IHC)、直接IHC、間接IHC、免疫細胞化学、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光ISH(FISH)、FISH In Suspension(FISH−ISTM)、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、FACS(蛍光活性化セルソーティング)、ImageStream、Turtle Probes、標的刺激ローリングサークルPRINS、Luminexアッセイ、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、qRT−PCR(定量的逆転写酵素PCRもしくは「リアルタイムPCR」)、ネステッドPCR、質量分析、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ;もしくは酵素イムノアッセイEIA)、間接的ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISA、ローリングサークル複製(もしくはローリングサークル増幅)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、磁性式イムノアッセイ(MIA)、ラテラルフロー試験(もしくはラテラルフローイムノクロマトグラフィーアッセイ)、濁度測定、補体固定試験、DNAマイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイ、ノーザンブロット、ドットブロットおよび/もしくは酵素活性、を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記精子/射精液の試験は、免疫染色および/もしくは酵素アッセイを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記酵素アッセイは、アルカリホスファターゼ活性の検出を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
TFAP2C(Ap−2γ)は、免疫染色によって検出され、PLAPは、請求項12に記載の方法によって検出される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
精巣癌は、精巣上皮内癌(CIS)、胚細胞腫瘍(TGCT)、精巣の非胚細胞腫瘍もしくは精巣の続発性腫瘍のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記精巣癌は、上皮内癌(CIS)である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記精巣胚細胞腫瘍は、混合腫瘍、精上皮腫、胎生期癌、奇形腫、絨毛癌もしくは管内胚細胞新生物(CIS)である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記射精液の総容積は、試験のために使用される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記総容積のサブセットが、10〜90%の範囲(例えば、10〜20%、例えば、20〜30%、例えば、30〜40%、例えば、40〜50%、例えば、50〜60%、例えば、60〜70%、例えば、70〜80%、例えば、80〜90%)において使用される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記射精液は、少なくとも1日の禁欲(例えば、2日間、例えば、3日間、例えば、4日間、例えば、5日間、例えば、6日間、例えば、7日間、例えば、8日間、例えば、9日間、例えば、10日間、の禁欲)の後に回収される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記射精液サンプルは、若年ヒト男性から採取され、該若年の男性は、5〜50歳の年齢範囲(例えば、10〜35歳、例えば、15〜35歳、例えば、15〜30歳、もしくは例えば、15〜25歳)である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記射精液サンプルは、処置の前および後に、他の手段によって、証明された精巣癌を有する男性から;停留精巣の前歴を有する男性から;超音波検査によって小結石(microlits)パターンの疑いを示す男性から;もしくは受精能問題を有する男性から得る、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記精液/射精液の、顕微鏡用スライド上への固定を含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記射精液は、サイトスピンによって固定される、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ヒト男性の精液/射精液サンプルにおいて精巣癌の存在に関しスクリーニングするための、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法の使用。

【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−506029(P2012−506029A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531355(P2011−531355)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050269
【国際公開番号】WO2010/043224
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511096709)
【出願人】(511096710)コーベンハブンス ウニベルシテト (3)
【Fターム(参考)】