説明

精神医学的障害の治療用のコポリマー1を含む方法及びワクチン

コポリマー1、コポリマー1関連ペプチド、コポリマー1関連ポリペプチド、及びそれらを用いて活性化されたT細胞は、精神医学的な障害、疾患又は状態を治療する方法及び組成物に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神医学的障害の治療用の組成物及び方法に、詳細には、そのような組成物及び方法で使用するコポリマー1並びに関連するペプチド及びポリペプチド並びにそれで処理されるT細胞に関する。
【0002】
略語:AMPH:D−硫酸アンフェタミン;ASR:音響驚愕反応;BDNF:脳由来神経栄養因子;CBC:遮断行動基準;CFA:完全フロイントアジュバント;CNS:中枢神経系;COP−1:コポリマー1;EPM:高架式十字迷路;MBP:ミエリン塩基性タンパク質;MK−801:(+)マレイン酸ジゾシルピン;MWM:モリス水迷路;PNS:末梢神経系;PPI:プレパルス抑制;PTSD:心的外傷後ストレス障害;SCID:重症複合免疫不全;Teff:エフェクターT細胞;Treg:制御性T細胞;WT:野生型。
【背景技術】
【0003】
精神障害は、行動の異常だけでなく、肉体の徴候によっても特徴付けられることが現在知られている。いくつかの精神医学的障害で、神経変性の構成成分が同定されている。例えば、統合失調症では、海馬の体積の減少及び海馬ニューロンの死滅(Liebermanら、2001;Velakoulisら、1999)、並びに背外側前頭前野での興奮性ニューロンの解剖学的分子的異常(McCullumsmithら、2002;Lewisら、1999)がある。遺伝的な素因が重要な因子であるという一般的な合意があるが(Brzustowiczら、2002;Falkaiら、2003)、統合失調症の病因及び病原性は依然として不明である。
【0004】
統合失調症の症状は、陽性陰性症状評価尺度(Positive and Negative Symptom Scale)などの標準的な評価尺度を用いることによって、陽性症状、陰性症状及び認知症状と分類することができる(Javittら、1999)。陽性症状には、幻覚、興奮及び妄想があり、陰性症状は、周囲環境中での対人的意欲及び正常な関心の喪失を反映し、認知症状には概念的な解体及び見当識障害がある(Javittら、1999)。陽性症状は、(パーキンソン病の誘発など顕著なかつ破壊的な副作用を有するが)ドーパミン受容体アンタゴニストに通常よく反応する一方、陰性症状及び認知欠陥は通常存続し、病的状態は慢性となり長期転帰は不良となる(Rummelら、2003)。
【0005】
全く最近まで、ストレス刺激に対する身体の主要な適応応答は、視床下部−下垂体−副腎皮質軸に起因すると考えられていた(de Kloet、2003)。免疫系と、精神障害又は急性の心理的ストレスで認められる認知能力、不安及び感覚運動機能障害との関係は、そのような関係が存在するだけでなく、治療法の設計において考慮すべき重要な事項である可能性があることを示唆する一連の証拠が増大しているにもかかわらず、ありそうもない又はほとんど重要ではないと一般にみなされてきた(Raisonら、2001)。
【0006】
長年保たれてきた考えに反して、神経系に対する免疫系の効果も有益である可能性がある。最近の研究から、損傷したCNSが、うまく調節された適応免疫の存在から益を得ることができることが示された(Schwartzら、1999a、1999b;Wekerle、2002)。傷害の部位に存在するタンパク質に特異的に反応するT細胞は、損傷後のニューロンの生存及び機能回復を促進する(Haubenら、2000;Mizrahi、2002)。部位特異的なタンパク質に対する自己免疫性T細胞のこの有益な損傷後応答が自発的に惹起されることがさらに示された(Yolesら、2001;Kipnisら、2002)。
【0007】
免疫異常が統合失調症患者で報告されており、統合失調症と自己免疫疾患との関係を見つける試みが多数なされている。しかし、統合失調症を自己免疫疾患と認定することに向けられた最近60年間にわたる研究は、今まで成功していない(Amital及びShoenfeld、1993)。
【0008】
神経変性状態に対処する能力がCD4T細胞に依存するという最近の知見によって、脳の維持と末梢の適応免疫との関連が示唆された(Moalemら、1999;Kipnisら、2001;Yolesら、2001)。変性の媒介体と闘う際のCD4T細胞の有益な効果は、損傷の部位内に存在する抗原に特異的であることが見出された。天然に存在するCD4CD25制御性T細胞(Treg)は、この神経保護応答を自発的に惹起する能力を通常抑制し、その応答は、Tregを弱めることにより(Kipnisら、2002)、或いは自己抗原又はコポリマー1など自己抗原の弱いアゴニストのうまく調節された予防接種により(Kipnisら、2000)容易に促進できる。
【0009】
コポリマー1は、Cop1とも呼ばれ、無作為な非病原性合成コポリマーであり、L−グルタミン酸(E)、L−アラニン(A)、L−チロシン(Y)及びL−リジン(K)のアミノ酸4種を、おおよその比率1.5:4.8:1:3.6で含むが、均一な配列を有さないポリペプチドの不均一な混合物である。その作用様式は議論の余地が残されているが、Cop1は明らかに、ヒトの多発性硬化症(MS)、及びマウスで研究されているそれに関連する自己免疫状態である実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の進行を遅延させる助けとなる。酢酸グラチラマーとして知られるCop1の一形態は、商標コパクソン(Copaxone)(登録商標)(Teva Pharmaceutical Industries社、Petach Tikva、イスラエル)の下で、いくつかの国で多発性硬化症の治療用に承認されている。
【0010】
Cop1又はCop1−活性化T細胞の予防接種で、外傷性の中枢神経系(CNS)傷害後に保護的な自己免疫が高まり、それによってさらなる損傷誘導性障害が低下し、グルタミン酸の毒性からCNS細胞をさらに保護することができることが本発明者らによって示された。出願人の公開された国際出願WO01/52878及びWO01/93893に言及がなされ、これらは、Cop1、Cop1関連ペプチド及びポリペプチド並びにそれによって活性化されるT細胞が、ニューロンの変性を防止又は抑制し、CNS又は末梢神経系(PNS)で神経の再生を促進し、グルタミン酸の毒性からCNS細胞を保護することを開示する。
【0011】
主発明者Schwartz教授及びその共同発明者は、Cop1が広範な自己反応性T細胞を活性化する低親和性抗原として働き、CNSの白質と灰白質のどちらの変性に対しても有効である神経保護的な自己免疫をもたらすことを示した(Kipnis及びSchwartz、2002)。Cop1予防接種の神経保護効果は、本発明者らにより、視神経損傷(Kipnisら、2000)、頭部外傷(Kipnisら、2003)、緑内障(Schoriら、2001)、筋萎縮性側索硬化症(Angelovら、2003)など急性及び慢性の神経障害の動物モデルで、並びに本出願人の特許出願WO01/52878、WO01/93893及びWO03/047500で実証された。
【0012】
「精神医学的障害の治療用の組成物及び方法(Compositions and methods for treatment of psychiatric disorders)」という名称の、イスラエル特許庁/受理官庁に同日に出願された同出願人の同時係属中の国際出願に言及がなされているが、その中で本発明は明示的に除外されている。
【0013】
本明細書における任意の文書の引用は、そのような文書が、本願の任意の請求項の特許性に対する関連した従来技術、又は考慮された材料であることを認めるものではない。任意の文書の内容又は日付についての任意の記載は、出願時点で出願人に入手可能な情報に基づいており、そのような記載の正確さについて認めるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明によれば、コポリマー1の予防接種によって、MK−801又はアンフェタミンによって誘導されるドーパミン不均衡を被ったマウスにおいて行動異常を軽減し、認知機能を改善できることが現在見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では、本発明は、精神医学的な障害、疾患又は状態に罹った個人を治療する方法であって、そのような治療を必要とする前記個人に、(i)コポリマー1、(ii)コポリマー1関連ペプチド、(iii)コポリマー1関連ポリペプチド、及び(iv)(i)、(ii)又は(iii)で処理されたT細胞からなる群から選択される有効量の作用物質を投与するステップを含む方法に関する。
【0016】
他の態様では、本発明は、製剤上許容される担体と、(i)コポリマー1、(ii)コポリマー1関連ペプチド、(iii)コポリマー1関連ポリペプチド、及び(iv)(i)、(ii)又は(iii)で処理されたT細胞からなる群から選択される作用物質とを含む精神医学的な障害、疾患又は状態の治療用の薬剤組成物、好ましくはワクチンに関する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、精神医学的な障害、疾患又は状態の治療用の薬剤組成物、好ましくはワクチンの調製のための、(i)コポリマー1、(ii)コポリマー1関連ペプチド、(iii)コポリマー1関連ポリペプチド、及び(iv)(i)、(ii)又は(iii)で処理されたT細胞からなる群から選択される作用物質の使用に関する。
【0018】
さらに他の態様では、本発明は、包装材料と、その包装材料内に入っている薬剤組成物とを含む製品であって、前記薬剤組成物がコポリマー1、コポリマー1関連ペプチド、及びコポリマー1関連ポリペプチドからなる群から選択される作用物質を含み、前記包装材料が治療上前記作用物質が精神医学的な障害、疾患又は状態の治療に有効であることを示す表示を含む製品を提供する。
【0019】
本発明に従って治療することができる精神医学的な障害、疾患又は状態には、(i)恐怖症、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害及び全般性不安障害を含む不安障害、(ii)抑うつ、気分変調性障害、双極性障害及び気分循環性障害を含む気分障害、(iii)短期的な精神障害、統合失調症様障害、統合失調性感情障害及び妄想性障害などの統合失調症及びその関連障害、(iv)アルコール依存、アヘン依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、幻覚剤依存及びフェンシクリジンの使用など薬物の使用及び依存、並びに(v)健忘症、或いはアルツハイマー型痴呆又は非アルツハイマー型痴呆、例えば多発梗塞性痴呆に伴う記憶喪失、或いはパーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルトヤコブ病、頭部外傷、HIV感染、甲状腺機能低下症及びビタミンB12欠乏に伴う記憶喪失などの記憶喪失障害がある。
【0020】
好ましい実施形態では、その精神医学的な障害は、統合失調症、ストレス又は心的外傷後ストレス障害などの不安障害、或いは抑うつや双極性障害などの気分障害である。
【0021】
最も好ましい実施形態では、精神医学的な障害、疾患又は状態に罹った個人をコポリマー1で免疫感作する。本発明によれば、コポリマー1はまた、統合失調症、双極性障害、加齢関連の痴呆やHIVの痴呆など特定の精神医学的な障害によって引き起こされる認知機能障害をも治療する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、精神医学的な障害、疾患又は状態を治療する方法に関し、その方法は、そのような治療を必要とする個人に、(i)コポリマー1、(ii)コポリマー1関連ペプチド、(iii)コポリマー1関連ポリペプチド、及び(iv)(i)、(ii)又は(iii)で処理されたT細胞からなる群から選択される有効量の作用物質を投与するステップを含む。
【0023】
本発明において、正常条件下と、神経伝達物質の不均衡によって生じる異常な状況下の両方で適応免疫が高次脳機能に役割を果たすかどうかを調べた。全身性の免疫不全により認知機能障害が生じたが、T細胞の補充によってそれを反転させることができたことが本明細書において示される。さらに、広範な自己反応性T細胞クローンの合成低親和性アゴニストであるCop−1の予防接種で、おそらく、関連するCNS抗原と交差反応することができるT細胞の数を増加させたことによって、薬物誘導性の精神病が防止され、認知機能障害が軽減された。
【0024】
本明細書において、その結果はまた、末梢の適応免疫系の統合性によって決定的に影響を受ける別の脳機能が認知であることを示すものである。(ストレスを生じる作業に従事させて)NWMで試験したとき、免疫不全マウスは、認知機能の障害を示し、それは免疫系の統合性の回復によって妨げられた。観察された認知活動の障害は、この場合では免疫系は無傷であったが脳が神経伝達物質の不均衡を被ったときに起こり、このことから、末梢の免疫系が、毎日出現し、正常な認知能力を可能とするが、認知機能障害を引き起こす病的な不均衡に対処することができない神経伝達物質レベルの小さな変動を含む可能性があることが示唆される。したがって、後者の状況では、関連するT細胞を増加させる必要がある。増加は、本発明ではCop−1の予防接種によって実現され、それによって精神異常発現薬によって誘導される認知機能障害が有意に妨げられた。本発明者らのマウスモデルでは、MK−801又はAMPAを投与してから15分以内に行動異常も認知異常も観察され、1週間早く行ったCop−1の予防接種の効果によって相殺された。本明細書で用いる実験的な枠組内で起こる症状の急速な発現により、マウスは、精神病が誘導される前に予防接種しなければならなかった。しかし、本発明に従った予防接種が予防的使用だけでなく、慢性患者用の改善的な療法としての使用も包含し、疾患のどの段階での介入も有益なはずであることに留意されたい。
【0025】
薬物の精神病効果を相殺する際にCop−1−反応性T細胞が迅速であることから、免疫感作によってすでに誘発されたT細胞が、健常な脳を巡回していたことが示唆される。健常な動物にCop−1を予防接種すると、実際にCNSでT細胞の蓄積が増加し、BDNFが局所産生されることが最近示された(Kipnisら、2000)。早期の免疫感作の結果、有意な数のCop−1−反応性T細胞が血中に循環し、ストレス下にあるときのみそれらが関連部位に定着し、このことが、例えば(AMPHの注射による)ドーパミンの、又は(MK−801の注射による)グルタミン酸の脳レベルの病的変化によって引き起こされることも考えられる。エフェクターT細胞が血中を循環しているのか、又は脳内に存在するのかにかかわらず、神経伝達物質の不均衡に対するT細胞の応答の迅速性は、脳の毎日の維持においてうまく機能している適応免疫の重要性の証拠となる(Kipnis及びSchwartz、2002)。これらの結果から、不均衡な免疫低下、脳内における代謝及び神経伝達物質の不均衡の増大を被ることが知られている老齢者の集団において、何故痴呆の発生率が増大するのかも説明することができる(Wickら、2003)。
【0026】
精神的な外傷は、CNSへの物理的な傷害のように、神経及び神経ホルモンの機能において広範な長期にわたる変化を引き起こすことができ、それは形態変化に関係すると思われる(Markowitschら、1998)。統合失調症の行動と認知の経時的な徴候の悪化はどちらも、脳の特定の領域で生じる神経変性に相関していると考えるのが妥当である(Deutschら、2001)。神経変性が統合失調症及び他の精神疾患で役割を果たすという認識が高まっていることと相まって、マウス中のCop−1−反応性T細胞が、ヒトでの統合失調症の症状と一部類似するMK−801誘導性又はアンフェタミン誘導性の精神病の防止を媒介するという本知見から、免疫を基礎とする神経保護の開発により、統合失調症の陽性症状にも陰性症状にも、場合によっては加齢関連及びHIV関連の痴呆を含めた他の精神医学的状態の症状にも対処する全体的な治療法がもたらされる可能性があることが示唆される。
【0027】
本明細書において、脳と適応免疫系(T細胞)とのクロストークが、精神的な外傷の単一例の結果に影響を及ぼすことを示す。ここで完全なT細胞欠損は精神的ストレスへの適応不全と相関することが見出されたが、T細胞の部分集団である、天然に存在する制御性T細胞(Treg)のみを除去すると、ストレスへの適応能力が改善した。このことから、外傷性の精神的ストレスにさらされた正常動物では、天然に存在する制御性T細胞によって抑制されるので、T細胞が媒介する応答がその完全な潜在的治療可能性に到達できないことが示唆される。本明細書で示すように、Cop−1によるTregの下方制御は有益であり、ストレスの多い条件に抵抗し対処する個人の能力を改善することができる。
【0028】
本発明者らの結果は、自己様抗原Cop−1に対するT細胞の応答を高めると、認知機能障害が有意に軽減し、統合失調症関連の症状を有する動物モデルでの精神病が緩和したことを実際に示すものである。本発明者らのマウスモデルでは、精神異常発現薬MK−801又はAMPHを投与してから15分以内に行動異常も認知異常も観察され、1週間早く行ったCop−1の予防接種の効果によって相殺された。薬物の精神病効果を相殺する際にCop−1−反応性T細胞が迅速であることから、T細胞が免疫感作によってすでに誘発され、不活性化状態であるが、警戒態勢で、必要ならいつでも活動できる状態で健常な脳を巡回していたことが示唆される。或いは、免疫感作の結果、まだ活性化されていない有意な数のCop−1−反応性T細胞が、必要なときに恐れのある部位にいつでも定着できる状態で血中を循環していることも考えられる。(アンフェタミンの注射による)ドーパミンの、又は(MK−801の注射による)グルタミン酸の脳レベルの病的変化は、これらのT細胞を活性化し、それによって神経伝達物質の不均衡の破壊的な効果に対する迅速な保護が可能となるのかもしれない。
【0029】
精神異常発現薬によって誘導された精神病の緩和に対するCop−1の観察された効果から、新世代の抗精神病薬の開発に最適な候補であることが示唆される。
【0030】
グルタミン酸不均衡は、神経変性障害及び精神障害に共通する特徴である。CNSに対する損傷後、CNSに関連する自己抗原に対するT細胞はCNS維持に関与し、それにはグルタミン酸の毒性に対する保護が含まれる。この神経保護効果は、Cop−1などの自己抗原のアゴニストによって高めることができる。本発明によれば、類似するT細胞依存的機構が脳内の神経伝達物質不均衡を保護し、行動及び認知の機能障害を導くことが示される。Cop−1の予防接種により、(統合失調症の症状を模擬する)MK−801又はアンフェタミンによって誘導される精神病性の行動及び認知の機能障害からマウスが保護された。Cop−1−反応性T細胞が、関連する自己抗原(MBP)との遭遇後、統合失調症の脳内で保護的であり、双極性障害の発生と関連し、神経活動、記憶機能及び気分と関係があることが知られているニューロトロフィンである脳由来神経栄養因子(BDNF)を産生したことも本明細書において示される。
【0031】
本明細書において、「Cop−1」及び「コポリマー1」という用語は、同義的に用いられる。本発明の目的では、「コポリマー1関連ペプチド又はコポリマー1関連ポリペプチド」は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)と機能的に交差反応し、抗原提示においてMHCクラスII上でMBPと競合することができる無作為なコポリマーを含めた、任意のペプチド又はポリペプチドを含むものとする。
【0032】
本発明の組成物又はワクチンは、グルタミン酸やアスパラギン酸などの(好ましくは少量の)陰性荷電アミノ酸と組み合わせて、場合によっては、充填剤として働くアラニンやグリジンなどの非荷電中性アミノ酸と組み合わせて、場合によっては、チロシン又はトリプトファンのような芳香族アミノ酸などコポリマーに免疫原的特性を与えるように適合されたアミノ酸と組み合わせて、リジンやアルギニンなどの陽性荷電アミノ酸を適切な量含む無作為なコポリマーを活性な作用物質として含んでもよい。そのような組成物は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれているWO00/05250で開示されているコポリマーのうちいずれかを含んでもよい。
【0033】
より具体的には、本発明で使用する組成物は、(a)リジン及びアルギニン、(b)グルタミン酸及びアスパラギン酸、(c)アラニン及びグリジン、並びに(d)チロシン及びトリプトファンの群のうち少なくとも3つのそれぞれから選択される1種のアミノ酸を含む無作為なコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のコポリマーを含む。
【0034】
本発明で使用するコポリマーは、L−アミノ酸又はD−アミノ酸或いはその混合物から構成することができる。当業者に知られているように、L−アミノ酸は、ほとんどの天然タンパク質中に存在する。しかし、D−アミノ酸は市販されており、本発明で使用するターポリマー及び他のコポリマーを作製するのに使用するアミノ酸の一部又は全部をそれと置換することができる。本発明は、D−アミノ酸とL−アミノ酸をどちらも含むコポリマー、並びに、基本的にL−アミノ酸又はD−アミノ酸からなるコポリマーの使用を意図するものである。
【0035】
より好ましい実施形態では、本発明の薬剤組成物又はワクチンは、基本的におおよその比率1.5:4.8:1:3.6でアミノ酸L−グルタミン酸(E)、L−アラニン(A)、L−チロシン(Y)及びL−リジン(K)からなる無作為ポリペプチドの混合物であるコポリマー1を含み、それは正味の全体の電荷が陽性であり、分子量が約2KDa〜約40KDaである。好ましい一実施形態では、Cop1は、平均分子量が約2KDa〜約20KDaであり、より好ましくは約4.7KDa〜約13KDaであり、さらにより好ましくは約4KDa〜約8.6KDa、約5KDa〜約9KDa、又は約6.25KDa〜約8.4KDaである。他の好ましい実施形態では、Cop1は、平均分子量が約13KDa〜約20KDaであり、より好ましくは約13KDa〜約16KDa、又は約15KDa〜約16KDaである。40KDaより小さいCop1の他の平均分子量も本発明に包含される。前記分子量範囲のコポリマー1は、当技術分野で知られている方法によって、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,800,808号に記載のプロセスによって調製することができる。コポリマー1は、長さが約15〜約100アミノ酸、好ましくは約40〜約80アミノ酸であるポリペプチドでもよい。好ましい一実施形態では、Cop1は、一般名酢酸グラチラマーで知られている酢酸塩の形態であり、商品名コパクソン(登録商標)(Teva Pharmaceuticals社の商標、Petach Tikva、イスラエル)の下で、いくつかの国で多発性硬化症(MS)の治療用に承認されている。本明細書で開示されるコポリマー1のワクチン活性は、グルタミン酸をアスパラギン酸にする置換、アラニンをグリジンにする置換、リジンをアルギニンにする置換、及びチロシンをトリプトファンにする置換のうち1種又は複数種の置換を行っても残存することが予想されている。
【0036】
本発明の他の実施形態では、Cop−1関連ペプチド又はポリペプチドは、それぞれが群(a)〜(d)のうち3つの群の異なる1つの群に由来する3つの異なるアミノ酸のコポリマーである。これらのコポリマーは、本明細書においてターポリマーと呼ばれる。
【0037】
一実施形態では、Cop−1関連ペプチド又はポリペプチドは、チロシン、アラニン、及びリジン(以下YAKと呼ぶ)を含むターポリマーであり、そのアミノ酸の平均モル比は様々であり得る:チロシンはモル比約0.05〜0.250で、アラニンはモル比約0.3〜0.6で、リジンはモル比約0.1〜0.5で存在する可能性がある。より好ましくは、チロシン、アラニン及びリジンのモル比はそれぞれ約0.10:0.54:0.35である。リジンをアルギニンに、アラニンをグリジンに、かつ/又はチロシンをトリプトファンに置換することが可能である。
【0038】
他の実施形態では、Cop−1関連ペプチド又はポリペプチドは、チロシン、グルタミン酸、及びリジン(以下YEKと呼ぶ)を含むターポリマーであり、そのアミノ酸の平均モル比は様々であり得る:グルタミン酸はモル比約0.005〜0.300で存在する可能性があり、チロシンはモル比約0.005〜0.250で存在する可能性があり、リジンはモル比約0.3〜0.7で存在する可能性がある。より好ましくは、グルタミン酸、チロシン及びリジンのモル比はそれぞれ約0.26:0.16:0.58である。グルタミン酸をアスパラギン酸に、リジンをアルギニンに、かつ/又はチロシンをトリプトファンに置換することが可能である。
【0039】
他の好ましい実施形態では、Cop−1関連ペプチド又はポリペプチドは、リジン、グルタミン酸、及びアラニン(以下KEAと呼ぶ)を含むターポリマーであり、そのアミノ酸の平均モル比は様々であり得る:グルタミン酸はモル比約0.005〜0.300で存在する可能性があり、アラニンはモル比約0.005〜0.600で、リジンはモル比約0.2〜0.7で存在する可能性がある。より好ましくは、グルタミン酸、アラニン及びリジンのモル比はそれぞれ約0.15:0.48:0.36である。グルタミン酸をアスパラギン酸に、アラニンをグリジンに、かつ/又はリジンをアルギニンに置換することが可能である。
【0040】
好ましい実施形態では、Cop−1関連ペプチド又はポリペプチドは、チロシン、グルタミン酸、及びアラニン(以下YEAと呼ぶ)を含むターポリマーであり、そのアミノ酸の平均モル比は様々であり得る:チロシンはモル比約0.005〜0.250で、グルタミン酸はモル比約0.005〜0.300で、アラニンはモル比約0.005〜0.800で存在する可能性がある。より好ましくは、グルタミン酸、アラニン、及びチロシンのモル比はそれぞれ約0.21:0.65:0.14である。チロシンをトリプトファンに、グルタミン酸をアスパラギン酸に、かつ/又はアラニンをグリジンに置換することが可能である。
【0041】
ターポリマーYAK、YEK、KEA及びYEAの平均分子量は、約2KDa〜40KDaの間で、好ましくは約3KDa〜35KDaの間で、より好ましくは約5KDa〜約25KDaの間で様々であり得る。
【0042】
コポリマー1並びにその関連ペプチド及びポリペプチドは、当技術分野で知られている方法によって、例えば、溶液中の所望のアミノ酸モル比を用いた縮合条件下で、又は固相合成の手順によって調製することができる。縮合条件には、一方のアミノ酸のカルボキシル基と他方のアミノ酸のアミノ基を縮合してペプチド結合を形成するのに適した温度、pH、及び溶媒の条件が含まれる。縮合剤、例えばジシクロへキシルカルボジイミドを使用してペプチド結合の形成を促進することができる。ブロック基を使用して、側鎖部分や、一部のアミノ基又はカルボキシル基などの官能基を望ましくない副反応から保護することができる。
【0043】
例えば、コポリマーは、米国特許第3,849,550号で開示されているプロセスによって調製することができ、チロシンのN−カルボキシ無水物、アラニン、γ−ベンジルグルタミン酸及びN−ε−トリフルオロアセチルリジンを、周囲温度(20℃〜26℃)で、ジエチルアミンを開始剤として無水ジオキサン中で重合する。グルタミン酸のγ−カルボキシル基は、氷酢酸中で臭化水素によって脱ブロック化することができる。トリフルオロアセチル基は、1Mピペリジンによってリジンから除去される。グルタミン酸、アラニン、チロシン又はリジンのいずれか1つに関係する反応を選択的に除去することにより、そのプロセスを調整して、所望のアミノ酸、すなわちコポリマー1内のアミノ酸4種のうち3種を含むペプチド及びポリペプチドを作製できることは、当業者に容易に理解される。
【0044】
コポリマーの分子量は、ポリペプチド合成中、又はコポリマーを作製した後に調整することができる。ポリペプチド合成中に分子量を調整するために、合成条件又はアミノ酸の量を、ポリペプチドが望ましいおおよその長さに達したときに合成が停止するように調整する。合成後、分子量サイズ分画カラム又はゲル上でのポリペプチドのクロマトグラフィーや所望の分子量範囲の収集など、任意の利用可能なサイズ選択の手順によって所望の分子量のポリペプチドを得ることができる。例えば、酸又は酵素によって加水分解し、次いで精製してその酸又は酵素を除去することにより、コポリマーを部分的に加水分解して高分子量種を除去することもできる。
【0045】
一実施形態では、保護されているポリペプチドを臭化水素酸と反応させて所望の分子量プロファイルを有するトリフルオロアセチルポリペプチドを形成させるステップを含むプロセスにより、所望の分子量のコポリマーを調製することができる。1回又は複数回の試験反応によって予め決定した時間及び温度でその反応を行う。試験反応中に、時間と温度を変化させ、所与のバッチの試験ポリペプチドの分子量範囲を決定する。そのバッチのポリペプチドの最適な分子量範囲をもたらす試験条件をそのバッチに使用する。したがって、試験反応によって予め決定した時間及び温度で保護されているポリペプチドを臭化水素酸と反応させるステップを含むプロセスにより、所望の分子量プロファイルを有するトリフルオロアセチルポリペプチドを生成することができる。次いで、所望の分子量プロファイルを有するトリフルオロアセチルポリペプチドを水性ピペリジン溶液でさらに処理して、所望の分子量を有する毒性の低いポリペプチドを形成させる。
【0046】
好ましい実施形態では、所与のバッチの保護されているポリペプチドの試験試料を臭化水素酸と温度約20〜28℃で約10〜50時間反応させる。いくつかの試験反応を実行することによって、そのバッチの最良の条件を決定する。例えば、一実施形態では、その保護されているポリペプチドを臭化水素酸と温度約26℃で約17時間反応させる。
【0047】
MSに関連するHLA−DR分子へのCop1の結合モチーフが知られているので(Fridkis−Hareliら、1999)、Fridkis−Hareliら(1999)の刊行物中に記載のように、確定した配列を有するCop1に由来するポリペプチドを容易に調製し、HLA−DR分子のペプチド結合溝に結合するかどうか試験することができる。そのようなペプチドの例は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれているWO00/05249及びWO00/05250で開示されているものであり、それには下記の配列番号1〜32のペプチドが含まれる。
【0048】
【表1】

【0049】
Cop1に由来するそのようなペプチド及び他の類似したペプチドは、Cop1と類似した活性を有することが予想される。そのようなペプチド及び他の類似したペプチドはまた、Cop1関連ペプチド又はポリペプチドの定義内にあるとみなされ、その使用は、本発明の一部であるとみなされる。
【0050】
本発明に従った「Cop1関連ペプチド又はポリペプチド」の定義は、Fridkis−Hareliら、2002で記載されている(多発性硬化症の治療用の候補である)無作為な4アミノ酸コポリマー、すなわちアミノ酸フェニルアラニン、グルタミン酸、アラニン及びリジン(ポリFEAK)、又はチロシン、フェニルアラニン、アラニン及びリジン(ポリYFAK)を含むコポリマー(14−、35−及び50−mer)や、Cop1と類似した普遍的な抗原であると考えられることが見出されている他の任意の類似したコポリマーなど、他の合成アミノ酸コポリマーを包含することを意味するものである。
【0051】
他の実施形態では、本発明は、精神医学的な疾患、障害又は状態の治療に関し、必要とする個人に、好ましくはCop1、或いはCop1関連ペプチド又はポリペプチドの存在下で、活性化されているT細胞を投与するステップを含む。そのようなT細胞は、好ましくは自己由来であり、最も好ましくは表現型がCD4及び/又はCD8であるが、血縁供与者、例えば兄弟姉妹、両親、子供、或いはHLAが適合した又は部分的に適合した、半同種異系の又は完全同種異系の供与者に由来する同種異系のT細胞でもよい。この目的でのT細胞は、WO01/93893に対応するUSSN09/756,301及びUSSN09/765,644中に記載され、そのそれぞれ及びすべては、本明細書において完全に開示されるかのようにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
投与するCop1の量は、患者の年齢及び疾患の段階に従って医師によって決定され、1〜80mgの範囲から選択してもよく、好ましくは20mgであるが、他のどんな適切な投与量も本発明に包含されている。好ましくは、治療は、適切な時間間隔での、好ましくは1、4又は6週間毎の反復投与によって実施すべきであるが、免疫感作の他のどんな適切な間隔も、治療する精神医学的疾患、患者の年齢及び状態に従って、本発明により予想される。
【0053】
本発明に従って使用する薬剤組成物は、1種又は複数種の生理的に許容される担体又は賦形剤を用いて従来の方法で製剤することができる。(複数の)担体は、組成物の他の成分と適合するという意味で「許容」されなければならず、その受容者にとって有害であってはならない。
【0054】
本発明の目的で、保護的な自己免疫を付与する療法中でコポリマー1或いはコポリマー1関連ペプチド又はポリペプチドを含む組成物を投与する(神経保護予防接種用ワクチンとも呼ばれることがある)。そのようなワクチンは、望ましい場合、ヒトへの臨床使用に適したアジュバント中で乳化したコポリマー1を含んでよい。
【0055】
したがって、本作用物質によれば、アジュバントを用いずに活性な作用物質を投与することもでき、或いはヒトへの臨床使用に適したアジュバント中でそれを乳化することもできる。アジュバントは、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムゲル及びヒドロキシリン酸アルミニウム、又はヒトへの臨床使用に適することが分かっている他の任意のアジュバントから選択される。好ましい実施形態では、ワクチンアジュバントは、等電点が酸性であり、Al:Pの比が1:1である無定形のヒドロキシリン酸アルミニウム(本明細書においてAlum−phosと呼ぶ)である。これが一例として示すものにすぎず、構成成分と、構成成分の相対的割合のどちらに関してもワクチンが様々である可能性があることは明らかである。
【0056】
投与の方法には、それだけに限らないが、非経口、例えば、静脈内、腹腔内、筋内、皮下、粘膜(例えば、経口、鼻内、口内、膣、直腸、眼内)、鞘内、局所及び皮内の経路がある。投与は全身的でもよく、局所的でもよい。
【0057】
本発明によれば、Cop1或いはCop1関連ペプチド又はポリペプチドは、単独の治療薬として使用することもでき、或いは精神医学的な障害、疾患又は状態の治療用の1種又は複数種の薬物と組み合わせて使用することもできる。精神医学的な障害、疾患又は状態の治療に適した他の薬物又は複数の薬物と一緒に使用するとき、予防接種と同じ日に、その後毎日又は他の任意の間隔で、製造業者の説明書に従って、ワクチン療法とは関係なくさらなる薬物又は複数の薬物を投与する。
【0058】
次に、下記の非限定的な実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0059】
材料及び方法
(i)動物。近交系成体雄の野生型及びnu/nuのBALB/c及びC57Bl/6Jマウス、成体雌Lewisラット及びBALB/c/OLAマウス、並びに重症複合免疫不全(SCID)であるBALB/c/OLAマウス(RAG1/2ノックアウトに起因)及びヌードマウス(成熟T細胞欠損)は、すべて8〜12週齢で、ワイズマン科学研究所(The Weizmann Institute of Science)の動物飼育センター(Animal Breeding Center)(Rehovot、イスラエル)により供給された。光及び温度が管理された室内で動物を飼育し、各実験でその齢数を合わせた。IACUC(所内動物管理使用委員会)によって考案された規定に従って動物を取り扱った。
【0060】
(ii)抗原。コポリマー1(Cop−1)は、Teva Pharmaceuticals社(Petach Tikva、イスラエル)から購入した。
【0061】
(iii)免疫感作。各動物に、マイコバクテリアH37RA(Difco)を5mg/ml含む等体積の完全フロイントアジュバント(CFA)中で乳化したCop−1を合計100μg注射した。乳剤を側腹部に合計体積0.1mL注射し、1週間後そのマウスに精神異常発現薬を初めて注射した。対照マウスにCFA中で乳化したリン酸緩衝食塩水(PBS)を等体積注射した。
【0062】
(iv)T細胞系。Cop−1での免疫感作から10日後、CFA中で乳化したCop−1で免疫感作したLewisラットから得られた流入領域リンパ節細胞からT細胞系を作製した。以前に報告されているように(Kipnisら、2000)、リンパ節を外科的に取り出し、解離し、洗浄し、次いで刺激用培地中で抗原(10μg/ml)で活性化した。刺激及び増殖を反復することによってT細胞系を増殖させた。
【0063】
(v)酵素結合免疫吸着検定。T細胞反応性Cop−1細胞を増殖用培地で1週間増殖させ、次いでPBSで洗浄し、刺激用培地中で再懸濁させた。次いで、照射胸腺細胞(10個/mL)の存在下で、コンカナバリンA(ConA;1.25μg/mL)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP;10μg/mL)、Cop−1(10μg/mL)、オボアルブミン(OVA;10μg/mL)とともに、又は抗原を入れずに、培養したT細胞(0.5×10個/mL)を刺激用培地中でインキュベートした。48時間後、細胞を遠心し、その上清を収集し試料とした。感度のよいサンドイッチELISAで試料中の脳由来神経栄養因子(BDNF)の濃度を決定した。簡潔に述べると、96穴平底プレートを、ニワトリ抗ヒトBDNF抗体(Promega、Madison、ウィスコンシン州)の0.025M NaHCO及び0.025M NaCO(pH8.2)溶液で被覆した。組換えヒトBDNF(標準試料として使用;Research Diagnostics、Flanders、ニュージャージー州)を、PBS(pH8.2)中にウシ血清アルブミンを3%、ポリオキシエチレン−ソルビタンモノラウレート(Tween−20)を0.05%、ウシ胎児血清を1%含むブロッキング溶液中の連続希釈液中で使用した。ブロッキング溶液中のマウス抗ヒトBDNF抗体(Research Diagnostics)と、次いでペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch、West Grove、ペンシルベニア州)とともにプレートをインキュベートすることによって結合したBDNFを検出した。3,3’,5,5’−テトラメチル−ベンジジン液基質システム(Sigma−Aldrich)を用いてプレートを発色させた。1MのHPOを添加することによって反応を停止し、450nmで光学的密度を決定した。刺激用培地とともにインキュベートした照射胸腺細胞のバックグラウンドレベルを減じた後、各実験の結果を試料1mL当たりに分泌したBDNFの量として算出した。
【0064】
(vi)薬物溶液。各バッチのマウスについて、生理食塩水(0.9%NaClの滅菌蒸留水溶液)中でマレイン酸ジゾシルピン(MK−801;Sigma−Aldrich)の新鮮溶液を調製した。生理食塩水は、D−硫酸アンフェタミン(AMPH;Sigma)の溶媒としても使用した。合計体積体重1kg当たり5mlで、MK−801(0.1mg/kg)又はAMPH(2.5mg/kg)又は食塩水を腹腔内注射した。マウスにMK−801、AMPH又は溶媒を注射してから15分後に行動試験を施した。
【0065】
(vii)モリス水迷路(MWM)行動試験。MWMにおける海馬依存的な視空間学習作業に対する成績によって空間学習/記憶を評価した。直径1.4mのプール内にある、水面から1.5cm下に位置する隠れた足場を発見させるために、マウスに1日に4回、4日間連続して試行させた。試験室内では、水浸させた足場の位置について、遠位にある視空間的な手がかりのみがマウスに利用可能であった。逃避潜時、すなわちマウスが足場を発見しその上に登るのに要する時間を最大60秒間記録した。各マウスを足場上に30秒間そのままにし、次いでその迷路から、そのホームケージへと移動させた。マウスが120秒以内に足場を見つけられなかった場合、手動でそれを足場に置き、30秒後にそのホームケージに戻した。試行間の間隔は30秒であった。5日目に足場をプールから除去し、各マウスをプローブ試行により60秒間試験した。6〜7日目に、足場を反対の位置に置き、マウスを4回の試行期間で再訓練した。EthoVision自動化追跡システム(Noldus Information Technology、Wageningen、オランダ)を用いることによってデータを記録した。
【0066】
(viii)プレパルス抑制(PPI)。PPIの試験の全試行期間は、驚愕試行(パルス単独)、プレパルス試行(プレパルス+パルス)、及び無刺激試行(無刺激(no−stim))からなった。パルス単独試行は、40ミリ秒、120dBのパルスの広帯域雑音からなった。20ミリ秒のプレパルス、100ミリ秒の遅延、次いで40ミリ秒、120dBの驚愕パルスからなるプレパルス+パルス試行によって音響PPIを測定した。開始と開始の間隔は120ミリ秒であった。音響プレパルス強度は、バックグラウンド雑音の65dBより4、8、13及び16dB大きかった(すなわち69、73、78、及び81dB)。無刺激試行はバックグラウンド雑音のみからなった。試験期間の音響試行期間を開始し、パルス単独試行を5回与えて終了した;その間に、音響又は無刺激試行型はそれぞれ、擬似乱数の順に10回与えた。試行間の平均時間は15秒であった(範囲:12〜30秒)。マウスを驚愕チャンバーに入れた後、65dBのバックグラウンド雑音を5分間与えて馴化し、次いで試験期間の間中ずっとそれを与えた。
【0067】
百分率スコアとして、各音響プレパルス試行型についてPPIを算出した:%PPI=100−{[(プレパルス+パルスの驚愕反応)/(パルス単独の驚愕反応)]×100}。音響驚愕反応の大きさは、パルス単独試行すべてに対する平均反応として算出し、5回の各パルス単独試行のうち最初及び最後のブロックは除外した。簡潔にするため、プレパルス強度の主要な効果は(常にかなり大きいものであったが)、本明細書で論じない。得られた値が驚愕刺激を含む試行の値と比べてごくわずかであるので、無刺激試行のデータは実施例中に含まれない。
【0068】
(ix)心理的ストレスの誘導。実験群中のマウスを(ネコによって2日間使用され、糞便についてふるいにかけた)完全に汚れているキャットリターに10分間さらした。対照(WT)マウスを使用されていないリターに同じ時間さらした。
【0069】
行動試験:
(x)高架式十字迷路(EPM)。ファイル(File)により記載のように(Griebelら、1995)、使用した迷路は、黒く不透明なパースペックスの台に十字型に4本のアームが付いており、地面より78cm高い高架になっていた。各アームは、長さが24cmであり、幅が7.5cmであった。向かい合うアームの一方の対は「クローズド」であり、すなわちそのアームは、高さ20.5cmのパースペックスの壁に両側及び台の外側の端を囲われ、他方の対は「オープン」であり、オープン領域中で動物の触知できるガイドとして働く高さ3mmのパースペックスの縁のみに囲われていた。オープンアームでもクローズドアームでも40〜60ルクスをもたらす暗赤色光でその装置を照明した。マウスを中央の台に1匹ずつ置き、無作為な順で異なる日に異なるアームの方に向くようにした。各試験期間の間に迷路を5%エタノール水溶液で掃除し、完全に乾燥させた。
【0070】
EthoVisionプログラム(Noldus)を用いてEPM上での行動を記録し、5分の試験時間にわたるマウスの位置を記録した。そのソフトウェアにより、分析に選択された種々のパラメーターの正確なモニタリングが行われたことを裏付けるために、無作為に選択したマウスの行動のビデオテープ再生を、経験のある観察者が精査した。
【0071】
5種の行動パラメーターを評価した:(1)オープンアーム内で費やした時間、(2)クローズドアーム内で費やした時間、(3)オープンアーム内への進入の数、(4)クローズドアーム内への進入の数、(5)すべてのアーム内への進入の合計数。4本の足すべてがオープンアームとクローズドアームの境界線を通過したときのみ、オープン又はクローズドアームに進入したとしてマウスを記録した。迷路の任意のアーム内への進入の数(総アーム進入)を「探索活性」として定義した。
【0072】
(xi)音響驚愕反応(ASR)。驚愕チャンバー内で対のマウスを試験した。2つの通風型驚愕チャンバー(SR−LABシステム、San Diego Instruments、San Diego、カリフォルニア州)を用いて、ASR及びプレパルス抑制を測定した。各チャンバーは、通風型音響減衰チャンバーの内部にある台上に置かれたプレキシグラスの円筒からなる。チャンバーの内部にある高周波拡声器は、68dBの連続した広帯域バックグラウンド雑音も、異なる音響刺激も発生させる。管内部での運動は、骨組の下に位置する圧電加速度計によって検出される。音響パルスに対する全身のASRの振幅は、パルス開始から収集した100ミリ秒毎の加速度計の読み取り値100回の平均として定義された。これらの読み取り値(シグナル)をデジタル化し、コンピュータに保存した。音響レベル計測器(Radio Shack、San Diego Instruments)を用いて各試験チャンバー内の音響レベルを定期的に測定して、確実に音響を一貫して与えるようにした。SR−LAB校正装置を定期的に使用して、経時的に確実に試験チャンバー間の重心計の感度の一貫性が得られるようにした(Swerdlow及びGeyer、1998)。マウスを管の内部に入れ、68dBのバックグラウンド雑音レベルに5分間馴化させて驚愕試行期間を開始し、その試行期間の間中ずっとそれを維持した。
【0073】
(xii)「遮断行動基準」(CBC)を決定する試験の設計
2ステップで試験を設計した:
ステップI−影響に差がある部分集団の区別を試みる前に、本発明者らのゼロ仮説(zero−hypothesis)の正確さを確認することを、すなわちストレス要因にさらされると、対照と比較して、各試験において集団としてストレスにさらされた動物に対する実際に著しい全体的な行動的効果があったことを実証することを意図するストレスにさらされる集団の全体的な反応の予備的な評価を定期的に行った。そのデータから、行動変化の度合の範囲が様々であることが実証されることも確認される。
【0074】
十字迷路上での極度に妥協的な探索行動や、適応を全く経ない驚愕反応の著明な上昇などの行動変化は、不安様の行動、すなわち恐怖心及び過敏性を反映する。Blanchard及びBlanchard(Blanchardら、1990;Blanchardら、1993;Blanchardら、1998)、Adamec(Adamecら、1998;Adamecら、1999a)並びにCohen(Cohenら、1996;Cohenら、2000;Cohenら、2003)の研究に従うと、この時点で観察される行動は、比較的長期の持続的な変化を反映すると考えられる。入り込んだ一群の症状についての動物モデルを設計することが今まで可能でなかったため、1週間以上にわたって持続するこのような変化は、動物モデルに関してPTSD様の症状の適正な発現を表すものと考えられる。
【0075】
ステップII−CBCをストレスにさらされた動物に適用する:
ストレス要素が動物に影響があり、すべての動物が同じようにそれに反応するわけではないことが明らかになったので、一方では極端な行動変化を示し、或いは他方では事実上変化を示さない動物のみに注目する。
【0076】
動物を「影響を受けている」と定義する明確性を最大にするために、そして「偽陽性」を含める機会を最小にするために、行動遮断基準を定義して、2つの継続的な行動の典型例それぞれにおける行動障害の最も極端な程度を表す。「影響を受けている」と定義するために、個々の動物は、どちらの組の基準にも連続的に適合しなければならない。反対に、全く反応しないとみなされるために、動物は、「正常に近い」行動についての極限の基準にも等しく適合しなければならない。基準の妥当性は、ストレスにさらされていない大半の対照動物が後者に適合し、前者には全く、又はほとんど全く適合しないことを確認することにより、各試験において再度肯定される。上記のように決定したCBCは、下記の通りであった:(a)不適応:1)クローズドアームで5分費やし、オープンアームへの進入がゼロ(0)回である;2)(110Dbでの)驚愕反応の平均振幅>800単位であり、音響驚愕反応に馴化されない;(b)適応:1)クローズドアームで0〜1分費やし、オープンアームへの進入が≧8回である;2)(110Dbでの)驚愕反応の平均振幅<600単位であり、音響驚愕反応に正常に馴化される。
【0077】
(xiii)補足情報。捕食動物の臭いにさらしたマウスの行動の結果は、PTSDのモデルとして使用されている(Adamecら、1999b;Cohenら、2003)。簡潔に述べると、マウス又はラットを、逃避できる状態でネコ又はネコの臭いにさらすと、その脅威を除去した後に何時間も可視的隠れ穴システム(visible burrow system)中で観察される防御的な行動が増大する(Rodgersら、1990)。その長続きする行動異常は、捕食動物ストレス(すなわちPTSD)に対する不適応と見られる。本研究で使用するストレス要因及び時間尺度により、下記の基準(Yehuda及びAntelman、1993)に従ってその結果をPTSDとの関連として見ることを正当化することができる:(a)ストレス要因が強く一時的であり、尾への電気ショックなど他の型のストレス要因によって与えられるより自然な設定をもたらす(Adamecら、1997)。(b)ストレスを受けたマウスによって費やされるEPMのオープンアームでの時間の減少が観察されることが、PTSD患者で見られる回避行動を連想させる。ストレスを受けたマウスは、EPMにおいて、ストレスを受けていないマウスより少なくはない合計進入回数を示した。この知見は、歩行の非特異的な機能障害ではなく不安と一致するものである。DSM−IVは、この症状を、外傷を連想させるものの持続的な回避、及び反応性の麻痺と定義する。これらのマウスにおける外傷事象がオープン空間で起こっているので、それはこの定義と一致する。(c)通常3年間生存するマウスの一生において7日は、ヒトの一生72年におけるおよそ6ヶ月に等しい(Adamecら、1997)。したがって、外傷の7日後における本発明者らのマウスの評価は実際、急性ストレス応答ではなくPTSDを指すものであると思われる。
【0078】
(xiv)抗体及び試薬。マウス組換えIL−2(mrIL−2)及び抗マウスζ−CD3(抗CD3;クローン145−2C11)は、R&D Systems(Minneapolis、ミネソタ州)から購入した。ラット抗マウスフィコエリスリン(PE)−結合CD25抗体(PC61)は、Pharmingen(Becton−Dickinson、Franklin Lakes、ニュージャージー州)から購入した。
【0079】
(xv)パラフィン包埋脳切片の組織学的免疫組織化学的分析。正常集団の野生型脾細胞を補充した不適応ヌードマウスの、又はTreg細胞を除去した野生型脾細胞を補充した適応ヌードマウスのパラフィン包埋脳組織を厚さ4μmの冠状切片に切断し、キシレンで脱パラフィン処理し、エタノール溶液の段階的な系列で脱水した。次いで、その切片をルクソールファストブルー(Luxol fast blue)(Sigma−Aldrich、イスラエル)で染色し、ファストレッド(Fast Red)(Sigma、イスラエル)で対比染色した。免疫組織化学的分析では、脱パラフィン処理し脱水した切片を、Hを3%、濃HClを1%含むメタノールに(30分)浸して内因性ペルオキシダーゼ活性を遮断し、正常ウサギ血清を20%、トライトン(Triton)X−100を0.3%含むpH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)で(1時間)処理し、抗CD3抗体(Serotec、Oxford、英国;正常ウサギ血清を2%含むPBSで1:50に希釈)とともに室温で1晩インキュベートした。その切片をPBSで洗浄し、最初にビオチン化抗ウサギIgG、次いでアビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体(Vector Laboratories、Burlingame、カリフォルニア州)とともに30分間インキュベートした。3,3’−ジアミノベンジジンの溶液中でのペルオキシダーゼ活性を光学顕微鏡で視覚化した。
【0080】
(xvi)脾細胞の調製。(最大10週齢の)ラットの供与脾細胞は、脾臓を破裂させ、次に従来の手順を行うことによって得た。脾細胞を低張緩衝液(ACK)で洗浄して、赤血球を溶解した。
【0081】
(xvii)リンパ球の調製。メッシュを通して供与マウスの(腋窩、鼠径、浅頚、下顎、及び腸間膜)リンパ節を破裂させた。リンパ球を低張緩衝液(ACK)で洗浄して、赤血球を溶解した。
【0082】
(xviii)CD4CD25及びCD4CD25T細胞の精製。リンパ節を採取しすりつぶした。ネガティブ選択によってT細胞を濃縮し、CD3−細胞カラム(MTCC−25; R&D Systems)で精製した。濃縮したT細胞を抗CD8マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)とともにインキュベートし、PBS/2%ウシ胎児血清中で、ネガティブ選択されたCD4T細胞をPE結合抗CD25(細胞10個当たり30μg)とともにインキュベートした。次いでそれを洗浄し、抗PEマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)とともにインキュベートし、AutoMACS(Miltenyi Biotec)を用いて磁性分離を施した。保持された細胞を、精製CD4CD25細胞としてカラムから溶出した。ネガティブ分画は、CD4CD25T細胞からなった。FACSort (Becton−Dickinson)で細胞の純度を調べ、通常88%〜95%であった。精製した細胞を24穴プレート(1ml)中で培養した。
【0083】
(xix)CD4CD25制御性T細胞の活性化。精製した制御性T細胞(Treg;0.5×10個/ml)を、L−グルタミン(2mM)、2−メルカプトエタノール(5×10−5M)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、ペニシリン(100IU/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、非必須アミノ酸(1ml/100ml)、及び自己血清2%(体積/体積)を補充したRPMI培地中で、mrIL−2(5ng/ml)及び可溶性抗CD3抗体(1ng/ml)の存在下で活性化した。照射(2500rad)した脾細胞(1.5×10個/ml)をその培養物に添加した。細胞を24時間又は96時間活性化した。
【0084】
(xx)抑制アッセイ(TeffとTregの同時培養)。96穴平底プレート中で、抗CD3抗体を補充した照射脾細胞(10個/ml)の存在下で、ナイーブエフェクターT細胞(Teff;50×10個/穴)を、数が減少している活性化Tregと72時間同時培養した。培養の最後16時間に[H]−チミジン(1μCi)を添加した。細胞を回収した後、その分析[H]−チミジン含量を、γ線計測器の使用により分析した。
【0085】
(実施例1)
Cop−1の予防接種は抗精神病効果があり、精神異常発現作用物質によって誘導される感覚運動機能障害から保護する
マレイン酸ジゾシルピン((+)MK−801、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体チャネルのアンタゴニスト)及びAMPHは、精神異常発現作用物質として働き、神経伝達物質の不均衡を介して、健常な個人に精神病症状を誘導し、統合失調症患者の精神病症状を悪化させる(Lahtiら、2001)。したがって、動物モデルでこの2つの化合物を使用して、統合失調症に関連した行動及び細胞の異常を刺激する精神病性の行動を誘導した(Tennら、2003)。
【0086】
MK−801又はAMPHによって誘導される神経伝達物質の不均衡は、統合失調症患者の別の特徴的な性質である感覚運動機能障害も引き起こす。(下記で示すように)T細胞に基づく治療により、認知に対するこれらの薬物の効果が相殺されたので、これらの薬物によって障害される他の機能が同様に影響を受けることを想定した。音響驚愕反応の薬物誘導PPIによって、感覚運動ゲーティングを実験的に評価することができる。MK−801又はAMPHを投与する1週間前に、C57BL/6JマウスにCop−1/CFA又はPBS/CFAを接種した。精神異常発現薬を注射してから15分後にPPIを測定した(Van den Buuseら、2003)。予想通り、処置しなかった正常マウスのPPIは、プレパルス強度が増大するにつれて増大したが(図1a)、MK−801(C57BL/6J)又はAMPH(図1d)を注射したマウスでは、PPI反応は異常であった。PBS/CFAではなくCop−1/CFAの予防接種により、MK−801によって誘導される異常行動が妨げられた(図1b、1c)。Cop−1の免疫感作を行った場合(図1d)及び行わなかった場合(図1e)のAMPHでも同様の結果が得られた。したがって、それぞれの精神異常発現作用物質の投与によって誘導される感覚運動機能障害は、Cop−1/CFAの予防接種により妨げられ、又は部分的に回復した。
【0087】
本明細書で用いた実験の典型例で生じる症状の発生が急速であるので、精神病が誘導される前にマウスに予防接種しなければならなかった。治療の介入について時間帯を広げたさらなる実験から、ラットを精神異常発現薬にさらした後のCop−1の予防接種が有用であることが実際に示された(データは示さず)。
【0088】
(実施例2)
認知機能はT細胞の不在下で障害される
学習及び記憶のプロセスが免疫系の統合性に依存するかどうかを明らかにするために、海馬依存的な視空間学習/記憶作業であるMWMを使用することにより、野生型及びSCID BALB/c/OLAマウスの空間学習/記憶を比較した。SCIDマウスは、その野生型の対応マウスと比べて空間記憶の著しい障害を示した(図2a〜2c)。NWM作業の習得期(図2a)、消去期(図2b)、及び反転期(図2c)の間、適応免疫を欠いているマウスは、野生型マウスと比較して、隠れ足場を見つける際の潜時の延長を有意に示した(図2a〜2c)。野生型と異なり、免疫不全(SCID)マウスは、前日の訓練試行のデータを想起することができなかった(図2a、2c)。さらに、SCIDマウスは、野生型より低レベルの成績から開始し、このことから、作業を実施する際のその一般技能が、少なくともある程度障害されていたことが示唆される(図2a)。その2群は、視覚的な足場の作業の成績、或いは遠位にある手がかりを除去し、マウスに1日1回4日間試験した試験、或いはその水泳の方策、距離、又は速度に違いはなかった(データは示さず)。
【0089】
上記の一連の実験において、ヌードマウス(成熟T細胞の欠損のみ)ではなくSCIDマウス(T細胞とB細胞の両方の応答欠損)を使用して、免疫系の活性における単なる違いにではなく(ヌードマウスで)毛がないことに起因する可能性がある違いを除外したことが強調されるべきである。しかし、SCIDマウスの免疫欠損は、RAG1/2遺伝子のノックアウトの結果である。RAG1が正常マウスの脳で発現するので(Kimら、2003)(そのそこでの機能は依然として不明であるが)、SCIDと野生型マウスの間で観察された違いがT細胞の免疫に起因する可能性があるという本発明者らの結論をさらに実証することが必要であった。したがって、正常T細胞集団を補充したヌードマウスを、補充しなかったヌードマウスと比較した(図2)。適合する野生型マウスのT細胞をヌードマウスに補充し、3週間後にMWM作業で試験した(図2d〜2f)。習得期及び反転期の間で、T細胞を補充したヌードマウスは、隠れ足場を見つける際に、補充しなかったヌードマウスより有意に短い潜時を示した。消去期では、補充したマウスは、試行の訓練の四半分において、補充しなかったマウスより有意に少ない時間しか必要としなかった。さらに、補充しなかったマウスは、前日の訓練試行のデータを想起できることが有意に少なく、補充したその対応マウスより有意に遅い学習速度を示した(図2d〜2f)。
【0090】
(実施例3)
Cop−1の予防接種は、精神異常発現作用物質によって誘導される認知障害に対して保護的である
上記の結果により、例えば神経伝達物質の不均衡によって認知機能が障害されているマウスで、(例えば、T細胞に基づく予防接種によって)関連するT細胞を増加させることが治療効果を有する可能性を調べることが促された。
【0091】
上記で述べたように、MK−801及びAMPHは、ヒトにおいて精神病症状を誘導する。マウスでは、そのような症状は明らかに、統合失調症に関連する認知障害及び行動異常を刺激する(Tennら、2003)。幾人かの著者が、MK−801が誘導する、空間記憶の獲得(Whishawら、1989;Ahlander、1999)及び非空間記憶作業(Griesbachら、1998)の欠損を報告している。
【0092】
T細胞に基づく予防接種が、神経伝達物質の不均衡から生じる行動異常及び認知障害を克服できるかどうかを調べるために、マウスをCop−1で免疫感作した。この合成抗原は明らかに、広範な自己反応性T細胞の弱いアゴニストとして働き、それによって、CNS抗原と交差反応し、神経変性状態の克服に必要なT細胞によって媒介される反応が刺激される(Kipnisら、2000)。ミエリン関連抗原及び他のCNS関連抗原と異なり、CNS特異的タンパク質と交差反応しない(オボアルブミンなどの)抗原は、健常な脳中に蓄積せず、保護効果を有さない(Kipnisら、2000;Moalemら、2000)ことが強調されるべきである。
【0093】
精神異常発現薬を投与する1週間前に、CFA中で乳化したCop−1、又はCFA中で乳化したPBSでC57BL/6Jマウスを免疫感作した。ナイーブ正常マウスの行動と比較して、MWMでの空間学習及び記憶を必要とする作業の成績は、逃避潜時が有意に高いことから示唆されるように、MK−801又はAMPHを注射したマウスで有意に障害された(図3a、3b)。MWM作業の習得期(図3c、3e)及び反転期(図3d、3f)の間で、どちらかの精神異常発現薬を投与したPBS/CFA注射マウスは、空間的な進路決定作業を完全に習得できた場合、それを習得するのに、対応するCop−1/CFA予防接種マウスより有意に長くかかった。消去期では、ナイーブ正常マウスは、連続した試行にわたって訓練の四半分に費やす時間の減少を示した(図3g)。MK−801の注射により、Cop−1/CFAで免疫感作したマウスではなく(図3i)、PBS/CFAで免疫感作したマウス(図3h)でこの特徴的な性質が弱められた。アンフェタミン注射マウスでも同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0094】
それぞれの精神異常発現薬を注射したCop−1/CFA予防接種マウスは、連続した試行中で潜時が減少したことから示唆されるように、隠れ足場へと泳ぐことを学習し、その上に登り、そこにとどまることによってそれを避難場所として利用した。その一方で、対応するPBS/CFA注射マウスが隠れ足場に遭遇したとき、それは異常で不適応な形でふるまった。隠れ足場を突き止められなかった試行後にその上に直接置いたときでも、このマウスは、でたらめかつ無秩序な形で速く歩き又は飛び込み、泳ぎ続けた。これらの作業すべてで、正常なナイーブマウスと、正常なCFA/PBS注射マウスの行動は同一であった(データは示さず)。
【0095】
図4は、ナイーブ正常マウス、及びCop−1/CFA又はPBS/CFAで免疫感作したMK−801処置マウスの行動を描くものであり、これから、Cop−1/CFA免疫感作マウスが、PBS/CFA免疫感作マウスと異なり、正常なマウスで見られるものと同様の整然とした水泳の方策を選んだことが示される。したがって、精神異常発現薬を注射したCop−1/CFA予防接種マウスは、壁から離れて泳いでプールの内部で足場を探し、足場を見つけたときそれを避難場所として使用することを学習した。その一方で、精神異常発現薬を注射したPBS/CFA処置マウスの行動は、活動過剰となり、足場を越えて泳ぎ、目的もなく泳ぎ回ることを含めた重度の障害を示した。しかし、高架式十字迷路の作業におけるその後のその成績から、MWMでこの2群のマウス間で観察された空間学習能力の違いが、不安の違いによって生じたのではないことが示唆された。さらに、社会行動試験では、Cop−1を予防接種したマウスはまた、対照より良好な伝達行動をも示した(データは示さず)。
【0096】
(実施例4)
心理的ストレスに耐える能力に対する系統依存性及びT細胞依存性
CNSでの神経変性状態に対する保護はT細胞依存的である。心理的外傷は、物理的なCNS傷害のように、神経及び神経ホルモンの機能において広範な長期にわたる変化を引き起こすことができ、それは構造変化に関係すると思われる(Markowitschら、1998;Myhrer、1998)。精神/情動の状態が免疫系の状態に直接影響を及ぼす証拠がある(de Grootら、2002;McEwen、2002;Dhabhar及びMcEwen、1999)。したがって、心理的外傷に耐える能力に対するCD4+(適応免疫)T細胞の効果を調べることは興味の対象であった。
【0097】
本明細書において、T細胞がまた、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を連想させる行動変化を伴う(例えば、捕食動物の臭いによって生じる)心理的ストレスに耐えるマウスの能力にも役割を果たすかどうかを調べた。以前の研究から、ラット又はマウスを、捕食動物(ネコ)又は捕食動物の臭い(完全に汚れているキャットリター)に10分間さらすと、これらの動物に大きなストレスを引き起こすことが示されている(Adamecら、1997、1999a、1999b;Cohenら、1996、2000、2003)。このストレスモデルを本明細書で使用した。
【0098】
捕食動物の臭いにさらした後のマウスにおける行動適応(音響驚愕反応及び回避行動)の測定から、野生型(17%)よりも免疫不全マウス(62%)で不適応が有意に優勢であった(χ=10.6、P<0.001)ことが明らかとなった。正常マウスにおける不適応の優勢は、自己免疫を通常抑制する、天然に存在するTreg細胞の除去後に小さくなった。ストレスに対処する能力は、脳でのT細胞の動員と相関した。これらの知見から、脳と免疫系の間でのうまく調節されたT細胞依存的なやりとりが、「健全なる身体に宿る健全なる精神(mens sana in corpore sano)」に必要であることが示唆される。
【0099】
最初に、以前に記載されている通り(Cohenら、2003)、2系統(C57Bl/6J及びBALB/c)のナイーブ成体マウスをネコの臭いにさらした。7日後、連続して施行される2つの行動課題であり、選択された遮断行動基準(CBC)の枠組を一緒になす高架式十字迷路(EPM)及び音響驚愕反応(ASR)に対するその行動反応を評価した。試験マウスを「不適応」又は「適応」と分類することによって、より重度に影響を受けている動物の優勢率を決定することができた。
【0100】
2つの系統(C57Bl/6J及びBALB/c)は、課された心理的外傷に対するその全体的な適応に差異があった(図5a〜5c)。C57Bl/6Jマウスでの不適応の発生率は36.8%であったが、BALB/cマウスではわずか10.5%であった(χ=3.7、P<0.05;図5a)。その違いは、EPMのクローズドアーム内で費やされる時間ではなく(図5c)、ASRで有意に示された(図5b)。この知見は、グルタミン酸の毒性及び視神経損傷に耐える、系統に関連したマウスの能力に関しての以前の観察結果と一致する(Kipnisら、2001)。
【0101】
その結果により、(CD4+T細胞に代表される)適応免疫系が、外傷性精神ストレスの行動結果、及びそのようなストレスへの適応に影響を及ぼすかどうかを調べることが促された。したがって、うまく機能している免疫系の不在下で心理的ストレスに適応できるかどうかを調べた。BALB/cマウスで不適応の発生率が比較的低いので(図5a)、この系統を用いて、野生型(WT)でのストレスに対する反応を、遺伝的背景が同じである重症複合免疫不全(SCID)マウスのものと比較した。WTよりSCIDマウスにおいて有意に多くのマウスが不適応の症状を示した(17.2%に対して61.9%;χ=10.6、P<0.001;図5d)。ヌードマウス(成熟T細胞のみの欠損)とWTのデータで同じ比較を行っても、同様の結果が得られ(17.2%に対して70%;χ=13.9、P<0.0002;図5d)、このことから、観察された違いが成熟T細胞の不在に起因することが実証された。WTマウスと、SCIDとヌードマウスの両方の間にある違いは、ASR(図5e)、並びにEPMのクローズドアーム内で費やされる時間(図5f)で有意に示された。
【0102】
(実施例5)
心理的ストレスに対する行動適応
図6は、捕食動物の臭いに単回10分さらした後、Cop−1で免疫感作したマウスが、PBSで処置したマウス(対照)と比べて心理的ストレスに耐える能力があることを示すものである。この単回さらした行為により、(CFAで乳化したPBSで免疫感作した)雄C57Bl/6J対照マウスでは40.8%で行動変化が生じたが、Cop−1で免疫感作したマウスでは14.8%でしか行動変化が生じなかったことが認められる。PTSDの症状に類似している不適応は、Cop−1で免疫感作したマウスより対照マウスで優勢であり(P<0.05)、このことから、観察された違いが、保護的なCop−1反応性T細胞の存在に起因することが実証された。
【0103】
(実施例6)
脳タンパク質に遭遇した後のCop−1反応性T細胞によるBDNFの産生
いくつかの研究グループは、Cop−1に反応性のT細胞がCNS中の病変部位に定着し(Kipnisら、2000;Aharoniら、2002)、様々なCNS関連自己抗原と交差反応することができる活性化したCop−1反応性T細胞が、損傷したCNS組織に神経保護を与える能力があることが知られるBDNFなどの神経栄養因子を産生できる(Kipnisら、2000;Aharoniら、2002;Kerschensteinerら、2003)ことを報告している。統合失調症患者でBDNF欠損が報告されている(Weickertら、2003、Eganら、2003);しかし、その欠損が原因であるか又は結果であるか、BDNFに基づく治療が有益となるかどうかは不明である。
【0104】
T細胞による神経栄養因子の産生は、T細胞の活性化の状態に依存する(Moalemら、2000)。したがって、Cop−1反応性T細胞による神経栄養因子の産生は、このT細胞が認識することができる、常在する抗原提示細胞からの局所シグナルを明らかに必要とする。したがって、in vitroの実験を実施して、CNSのミエリンと遭遇した後にCop−1反応性T細胞がBDNFを産生するかどうかを判定した。
【0105】
刺激用培地中で、Cop−1、MBP、オボアルブミン、又はコンカナバリンAとともにCop−1反応性T細胞を48時間培養した。T細胞の上清を収集し、サンドイッチELISAにかけた。表2は、Cop−1反応性T細胞によるBDNFの産生が、このT細胞がその特異的な抗原(Cop−1)だけでなく、CNS関連自己抗原のMBPとも遭遇したときに増大したことを示すものである。刺激しなかったT細胞と比べて、Cop−1反応性T細胞によるBDNFの分泌は、特異的抗原(Cop−1)での、又はCop−1と交差反応する自己抗原(MBP)でのT細胞の刺激後に有意に増大した。数値は、種々の抗原による刺激に反応して、Cop−1特異的T細胞によって分泌されたBDNF量の平均値(pg/ml)+/−(独立した3回の実験の)SEである。
【0106】
【表2】

【0107】
(実施例7)
天然に存在するCD4CD25制御性T細胞(Treg)は、心理的ストレスに耐える能力を抑制する
CNSに対する機械的(例えば圧挫)損傷の後遺症又は(例えばグルタミン酸の毒性からの)生化学的障害と闘う自発的な能力(Kipnisら、2002)は、天然に存在するTregによって抑制され、それはCD4T細胞集団の約10%を占める(Shevach、2000)。この細胞は、例えば軸索損傷によって負わされたCNSにおける変性状態と闘う能力を抑制することが示された(Kipnisら、2002)。
【0108】
この細胞が、精神的ストレスと闘う自発的な能力を調節する可能性を検討するために、Tregを除去した(Tregを欠いた)、WTマウスから得られた脾細胞を補充したヌードBALB/cマウスを、正常の(すなわちTregを含んだ)脾細胞集団を補充したヌードマウスと比較した。Tregがない脾細胞を補充したヌードマウスでは、不適応の優勢率は、TregもエフェクターT細胞も含む正常のT細胞集団を補充したマウス(50%)より有意に低かった(20%)(χ=4.0、P<0.046(図7a)。2群間の有意差は、ASRでも(図7b)、EPMのクローズドアーム内で費やされる時間でも(図7c)観察された。
【0109】
(実施例8)
ストレスを受けたマウスの脳でのT細胞の蓄積は行動適応と相関する
神経変性状態に罹ったマウス及びラットでは、T細胞の有益な効果は、損傷の部位でのT細胞の蓄積と相関する(Butovskyら、2001;Haubenら、2000)。T細胞反応の観察された有益な効果と、ストレスの多い心理的状態にさらされた結果との間の関係を決定するために、CNSへのT細胞の定着がそれに関与するかどうかを調べた。これは、Tregを除去した脾細胞を補充したマウスから得られた脳切片におけるT細胞の免疫細胞化学的染色を、脾細胞集団全体を補充したマウスのものと比較することによって行った。ヘマトキシリン及びエオジンでの脳切片の染色から、この2群とWTマウスとの間で海馬又は小脳扁桃における構造変化はなかったことが明らかとなった(データは示さず)。ミエリン反応性についてのルクソールファストブルー染色から、WT(図8ci)と比較して、不適応マウス(図8ai、8aiii)と適応マウス(図8bi、8biii)との間で違いがなかったことも示された。しかし、抗CD3抗体での染色から、これらの脳領域において適応マウス(図8aii、8aiv)では多数のT細胞が認められ、不適応マウス(図8bii、8biv)又は正常なWTマウス(図8cii)ではほとんど認められないことが明らかとなり、このことから、脳へのT細胞の動員が、精神的ストレスに対する抵抗性と相関することが示唆される。しかし、T細胞の蓄積全体があまり多くないが、それが決してPTSDが炎症から益を得られることを意味するものではなく、むしろうまく調節された適応免疫が、物理的ストレスと同様に、同じ機構を介して精神的ストレスの結果に抵抗する助けとなることを意味するものであることを強調したい。
【0110】
(実施例9)
Cop−1は、Tregによって媒介される抑制活性を緩和する
ナイーブTeff細胞(50×10個/穴)を、抗CD3及びmrIL−2で24時間活性化したTreg細胞とともに、その数を徐々に減らしながら(50、25、12.5及び6.5×10個/穴)同時培養した。Cop−1(対照)の不在下でTreg細胞の活性化を行い、又は24時間後、活性化したTreg細胞をCop−1(PBS中20μg/ml)とともに2時間インキュベートし、その後Teffとともにこれらを同時培養し、次いでTeffとTregの同時培養物にCop−1(20μg/ml)を添加し(Tregcop+cop)、その同時培養物をさらにインキュベートした。図9は、活性化Treg(reg)をCop−1と2時間インキュベートし、その後それをTeff(eff)と同時培養し、その同時培養物をCop−1とともにさらにインキュベートすると、対照と比べてTeffの抑制が緩和されたことを示すものである。Teffの増殖も、活性化Tregの濃度が低下するにつれて増大した。Tregとともに同時培養したエフェクターT細胞中への[H]−チミジンの取り込みにより、T細胞の増殖についてアッセイを行った。記録した値は、3回のうち代表的な1回の実験のものであり、複製物4個の平均値±SDとして表す。
【0111】
(参考文献)





















【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】Cop−1の免疫感作による、C57BL/6Jマウスにおける音響驚愕反応(ASR)のプレパルス抑制(PPI)障害の回復を示す図である。C57BL/6Jマウスを、Cop−1/CFA又はPBS/CFAで免疫感作した。ナイーブマウスを対照として使用した。1週間後、MK−801(0.1mg/kg、i.p.;1b、1c)を、又はD−硫酸アンフェタミン(AMPH)(2.5mg/kg、i.p.;1d及び1c)を免疫感作マウスに注射した。対照マウスにおけるASRのPPIを基線として使用した(1a)。MK−801を注射した溶媒免疫感作マウスは、著しく乱れたPPIを示した(1b)。Cop−1/CFAで免疫感作したマウスでは、PPIは、プレパルス強度の関数として単調に増大した(1c;F(1,9)=14.05、P<0.005)。AMPHを注射した溶媒免疫感作マウスも、著しく乱れたPPIを示した(1d)。Cop−1/CFAで免疫感作したマウスでは、PPIは、プレパルス強度の関数として単調に増大した(4e;F(1,10)=8.6、P<0.015)。
【図2】認知活動が免疫系の統合性によって影響を受けることを示す図である。モリス水迷路(MWM)行動試験で空間学習記憶作業を試みている間、BALB/c/OLAの野生型(WT)、ヌード、及びSCIDマウスをモニターした。(2a〜2c)WTマウスとSCIDマウスの比較である。作業の習得期(2a)、消去期(2b)、及び反転期(2c)の間で、SCIDマウスは、必要な空間学習を習得するのにWTマウスより有意に長くかかった(3方向ANOVA、反復測定:習得期について、群、df(1,20)、F=23.0、P<0.0001;試行、df(3,60)、F=10.995、P<0.00001;日数、df(1,60)、F=4.6、P<0.006;及び反転期について、群、df(1,20)、F=7.9、P<0.01;試行、df(3,60)、F=10.77、P<0.00001;日数、df(1,20)、F=34.4、P<0.001)。提示した結果は、行った2回のうち1回の実験に由来し、各実験で1群当たりマウス10匹である。(2d〜2f)ヌードマウスと、MWMで試験する3週間前にT細胞を補充したヌードマウスの比較である。作業の習得期(2d)、消去期(2e)、及び反転期(2f)の間で、補充しなかったヌードマウスは、空間学習を習得するのに、ナイーブ野生型マウスのT細胞を補充したヌードマウスより有意に長くかかった(3方向ANOVA、反復測定:習得期について、群、df(1,18)、F=32.3、P<0.00001;試行、df(3,54)、F=10.1、P<0.00001;日数、df(3,54)、F=20.56、P<0.00001;及び反転期について、群、df(1,18)、F=58.6、P<0.00001;試行、df(3,54)、F=12.6、P<0.00001;日数、df(1,18)、F=19.2、P<0.0004)。提示した結果は、行った2回のうち1回の実験に由来し、各実験で1群当たりマウス10匹である。
【図3】精神異常発現薬の投与後のC57BL/6Jマウスによる、MWMにおける空間学習/記憶作業の成績に対するCop−1の予防接種の効果を示す図である。MWMにおける空間学習作業の習得は、習得期(3a)及び反転期(3b)において、ナイーブ(PBS注射)C57BL/6Jマウスより、MK−801(0.1mg/kg、i.p.)又はAMPH(2.5mg/kg、i.p.)を注射したマウスで有意に長くかかった。Cop−1/CFAで免疫感作すると、MK−801(3c、3d)又はアンフェタミン(3e、3f)の注射後、習得期及び反転期で逃避潜時が低下した[MK−801(3c、3d);3方向ANOVA、反復測定:習得期について、群、df(1,9)、F=56.6、P<0.0001;試行、df(3,27)、F=54.0、P<0.00001;日数、df(3,27)、F=15.6、P<0.00001;及び反転期について、群、df(1,9)、F=42.7、P<0.0001;試行、df(3,27)、F=24.4、P<0.00001;日数、df(1,9)、F=7.9、P<0.02;又はAMPH(3e、3f);3方向ANOVA、反復測定:習得期について、群、df(1,10)、F=9.8、P<0.01;試行、df(3,30)、F=29.9、P<0.00001;日数、df(1,30)、F=21.3、P<0.00001;及び反転期について、群、df(1,10)、F=53.7、P<0.00003;試行、df(3,30)、F=16.1、P<0.00002;日数、df(1,10)、F=5.0、P<0.05]。Cop−1で免疫感作したマウスの成績には、正常の行動との有意な差はなかった(3h)。対照マウスで得られた、訓練の四半分で費やす時間の低下は、MK−801の注射後に消失した(3g);しかし、Cop−1で免疫感作したマウスは、WTマウスと同様に行動した(3i)。
【図4】MK−801の注射後のモリス水迷路におけるCop−1免疫感作マウス及び対照マウスの追跡を示す図であり、MK−801によって誘導された学習及び記憶の障害をCop−1が相殺したことを示す。この図は、Cop−1/CFA又はPBS/CFAで免疫感作し、1週間後にMK−801を注射したC57BL/6Jマウスの水泳の方策を描くものである。ナイーブマウスは、MWMにおける成績についての対照として使用した。薬物の投与後2日目に、5分間隔での4回連続した試行で成績について試験した。Cop−1予防接種マウスは、ナイーブマウスのように、壁から離れて泳いでプール内50%中で足場を探し、足場を見つけたときそれを避難場所として使用することを学習した。溶媒で免疫感作したMK−801注射マウスは、有意に効率のよくない方策を使用していた。
【図5】心理的ストレスに耐える能力に対する系統依存性及びT細胞依存性を示す図である。(図5a、5d)マウスの系統は、心理的ストレスに適応する能力において差異がある。捕食動物の臭いに単回10分さらすと、雄C57BL/6Jマウスでは36.8%で行動変化が生じたが、雄BALB/cマウスでは10.5%でしか行動変化が生じなかった(χ=3.7、P<0.05)。(図5b、5e)BALB/c系統では、不適応は、野生型(17.2%)よりSCIDマウス(61.9%)で有意に優勢であった(χ=10.6、P<0.001)。(図5c、5f)不適応は、同様にヌードマウス(成熟T細胞のみの欠損)で野生型より優勢であり(それぞれ70%及び17.2%;χ試験:P<0.0002)、このことから、観察された違いが成熟T細胞の不在に起因することが実証された。
【図6】捕食動物の臭いに単回10分さらした後の、PBS処置マウス(対照)と比較した、Cop−1で免疫感作したマウスの心理的ストレスに耐える能力を示す図である。
【図7】天然に存在するCD4CD25制御性T細胞が、心理的ストレスに耐える能力を抑制することを示す図である。(図7a)捕食動物の臭いに単回10分さらすと、ヌード雄BALB/cマウスの70%で不適応となった(図6を参照)。不適応の優勢率は、野生型BALB/cマウスの正常な脾細胞を補充したヌードマウスでいくらか低下した(50%)。Tregを除去した脾細胞集団を補充したヌードマウスでは、不適応の優勢率(20%)は、対照(補充しなかった)ヌードマウスより有意に低かった(χ=6.7、P<0.009)。(図7b)Tregを除去した脾細胞を補充したヌードマウスの驚愕反応(平均±SD)は、正常な脾細胞集団を補充したヌードマウスより(P<0.03)、又は対照ヌードマウスより(F(df=2,37)=9.2、P<0.0006)有意に弱かった。(図7c)Tregを除去した脾細胞集団を補充したヌードマウスは、正常な脾細胞集団を補充したヌードマウスより(P<0.02)、又は対照ヌードマウスより(F(df=2,37)=8.7、P<0.0008)高架式十字迷路のクローズドアームの探索に費やす時間が有意に少なかった。
【図8】脳内でのT細胞の免疫組織化学的分析結果が、心理的ストレスに対する適応と相関することを示す顕微鏡写真である。野生型マウスの正常な脾細胞集団を補充したヌードマウスの群の不適応動物、及びTregを除去した野生型マウスの脾細胞を補充したヌードマウスの群の適応動物を屠殺し、その脳を取り出し、灌流し、パラフィン中に包埋し、組織分析用に薄切した。海馬領域、及び海馬の海馬采の脳切片を、有髄化した軸索があるかどうかルクソールで染色し、エオジンで対比染色し、又はT細胞が存在するかどうか抗CD3抗体で染色し、ヘマトキシリンで対比染色した。(図8a)不適応マウスの脳切片では、T細胞が染色されないことが示された(ii及びiv)。(図8b)適応マウスの脳切片では、ミエリン反応性(ルクソール陽性領域;i及びiii)と対応する、海馬領域でのT細胞の反応性(ii及びiv)が示された。(図8c)ストレスにさらされなかった野生型マウスでは、予想された通り、脳切片中でT細胞反応性が認められないことが示された。この顕微鏡写真は、各マウスの少なくとも6枚の、かつ各群中で少なくとも3匹のマウスの脳切片のうち代表的な結果を示すものである。
【図9】Cop−1が、Treg(CD4CD25)によって媒介される抑制活性を緩和することを示す図である。Tregとともに同時培養したエフェクターT細胞(Teff)中への[H]−チミジンの取り込みにより、T細胞の増殖についてアッセイを行った。記録した値は、3回のうち代表的な1回の実験のものであり、複製物4個の平均値±SDとして表す。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図1e】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図2e】

【図2f】

【図3a】

【図3b】

【図3c】

【図3d】

【図3e】

【図3f】

【図3g】

【図3h】

【図3i】

【図5a】

【図5b】

【図5c】

【図5d】

【図5e】

【図5f】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神医学的な障害、疾患又は状態を治療する方法であって、そのような治療を必要とする個人に、(i)コポリマー1、(ii)コポリマー1関連ペプチド、(iii)コポリマー1関連ポリペプチド、及び(iv)(i)、(ii)又は(iii)で活性化されたT細胞からなる群から選択される有効量の作用物質を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
コポリマー1、コポリマー1関連ペプチド、及びコポリマー1関連ポリペプチドからなる群から選択される治療有効量の作用物質で前記個人を免疫感作する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作用物質がコポリマー1である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記作用物質がコポリマー1関連ペプチド又はコポリマー1関連ポリペプチドである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記作用物質が、コポリマー1によって活性化されているT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記精神医学的な障害、疾患又は状態が、(i)恐怖症、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害及び全般性不安障害を含む不安障害、(ii)抑うつ、気分変調性障害、双極性障害及び気分循環性障害を含む気分障害、(iii)短期的な精神障害、統合失調症様障害、統合失調性感情障害及び妄想性障害などの統合失調症及びその関連障害、(iv)アルコール依存、アヘン依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、幻覚剤依存及びフェンシクリジンの使用など薬物の使用及び依存、並びに(v)健忘症、或いはアルツハイマー型痴呆又は非アルツハイマー型痴呆、例えば多発梗塞性痴呆に伴う記憶喪失、或いはパーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルトヤコブ病、頭部外傷、HIV感染、甲状腺機能低下症及びビタミンB12欠乏に伴う記憶喪失などの記憶喪失障害からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記精神医学的な障害が統合失調症である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記精神医学的な障害が、ストレス又は心的外傷後ストレス障害などの不安障害である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記精神医学的な障害が、抑うつ又は双極性障害などの気分障害である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
製剤上許容される担体と、(i)コポリマー1、(ii)コポリマー1関連ペプチド、(iii)コポリマー1関連ポリペプチド、及び(iv)(i)、(ii)又は(iii)で活性化されたT細胞からなる群から選択される活性な作用物質とを含む、精神医学的な障害、疾患又は状態の治療用の薬剤組成物。
【請求項11】
前記活性な作用物質がコポリマー1である、請求項10に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
前記活性な作用物質が、コポリマー1関連ペプチド又はコポリマー1関連ポリペプチドである、請求項11に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
前記精神医学的な障害、疾患又は状態が、(i)恐怖症、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害及び全般性不安障害を含む不安障害、(ii)抑うつ、気分変調性障害、双極性障害及び気分循環性障害を含む気分障害、(iii)短期的な精神障害、統合失調症様障害、統合失調性感情障害及び妄想性障害などの統合失調症及びその関連障害、(iv)アルコール依存、アヘン依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、幻覚剤依存及びフェンシクリジンの使用など薬物の使用及び依存、並びに(v)健忘症、或いはアルツハイマー型痴呆又は非アルツハイマー型痴呆、例えば多発梗塞性痴呆に伴う記憶喪失、或いはパーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルトヤコブ病、頭部外傷、HIV感染、甲状腺機能低下症及びビタミンB12欠乏に伴う記憶喪失などの記憶喪失障害からなる群から選択される、請求項10から12までのいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項14】
前記精神医学的な障害が統合失調症である、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
前記精神医学的な障害が、ストレス又は心的外傷後ストレス障害などの不安障害である、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項16】
前記精神医学的な障害が、抑うつ又は双極性障害などの気分障害である、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項17】
精神医学的な障害、疾患又は状態に罹った個人を免疫感作するワクチンであって、コポリマー1、コポリマー1関連ペプチド、及びコポリマー1関連ポリペプチドからなる群から選択される活性な作用物質を含むワクチン。
【請求項18】
前記活性な作用物質がコポリマー1である、請求項17に記載のワクチン。
【請求項19】
前記作用物質が、コポリマー1関連ペプチド又はコポリマー1関連ポリペプチドである、請求項17に記載のワクチン。
【請求項20】
前記ワクチンが、アジュバントを含まずに前記活性な作用物質を含む、請求項17から19までのいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項21】
前記ワクチンが、ヒトへの臨床使用に適したアジュバント中で乳化した前記活性な作用物質を含む、請求項17から19までのいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項22】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムゲル、及びヒドロキシリン酸アルミニウムからなる群から選択される、請求項21に記載のワクチン。
【請求項23】
(i)恐怖症、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害及び全般性不安障害を含む不安障害、(ii)抑うつ、気分変調性障害、双極性障害及び気分循環性障害を含む気分障害、(iii)短期的な精神障害、統合失調症様障害、統合失調性感情障害及び妄想性障害などの統合失調症及びその関連障害、(iv)アルコール依存、アヘン依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、幻覚剤依存及びフェンシクリジンの使用など薬物の使用及び依存、並びに(v)健忘症、或いはアルツハイマー型痴呆又は非アルツハイマー型痴呆、例えば多発梗塞性痴呆に伴う記憶喪失、或いはパーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルトヤコブ病、頭部外傷、HIV感染、甲状腺機能低下症及びビタミンB12欠乏に伴う記憶喪失などの記憶喪失障害から選択される精神医学的な障害、疾患又は状態に罹った個人を免疫感作する、請求項17に記載のワクチン。
【請求項24】
前記精神医学的な障害が統合失調症である、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
前記精神医学的な障害が、ストレス又は心的外傷後ストレス障害などの不安障害である、請求項23に記載のワクチン。
【請求項26】
前記精神医学的な障害が、抑うつ又は双極性障害などの気分障害である、請求項23に記載のワクチン。
【請求項27】
精神医学的な障害、疾患又は状態の治療用の薬剤組成物を調製するための、(i)コポリマー1、(ii)コポリマー1関連ペプチド、(iii)コポリマー1関連ポリペプチド、及び(iv)(i)、(ii)又は(iii)で活性化されたT細胞からなる群から選択される作用物質の使用。
【請求項28】
精神医学的な障害、疾患又は状態に罹った個人を免疫感作するワクチンを調製するための、コポリマー1、コポリマー1関連ペプチド、及びコポリマー1関連ポリペプチドからなる群から選択される作用物質の使用。
【請求項29】
前記ワクチンが、アジュバントを含まずに前記活性な作用物質を含む、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記ワクチンが、ヒトへの臨床使用に適したアジュバント中で乳化した前記活性な作用物質を含む、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムゲル、及びヒドロキシリン酸アルミニウムからなる群から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項32】
前記活性な作用物質がコポリマー1である、請求項27から31までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記作用物質が、コポリマー1関連ペプチド又はコポリマー1関連ポリペプチドである、請求項27から31までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記精神医学的な障害が、(i)恐怖症、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害及び全般性不安障害を含む不安障害、(ii)抑うつ、気分変調性障害、双極性障害及び気分循環性障害を含む気分障害、(iii)短期的な精神障害、統合失調症様障害、統合失調性感情障害及び妄想性障害などの統合失調症及びその関連障害、(iv)アルコール依存、アヘン依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、幻覚剤依存及びフェンシクリジンの使用など薬物の使用及び依存、並びに(v)健忘症、或いはアルツハイマー型痴呆又は非アルツハイマー型痴呆、例えば多発梗塞性痴呆に伴う記憶喪失、或いはパーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルトヤコブ病、頭部外傷、HIV感染、甲状腺機能低下症及びビタミンB12欠乏に伴う記憶喪失などの記憶喪失障害から選択される、請求項27又は28に記載の使用。
【請求項35】
前記精神医学的な障害が、統合失調症、ストレス若しくは心的外傷後ストレス障害などの不安障害、又は抑うつ若しくは双極性障害などの気分障害である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
包装材料と、前記包装材料内に入っている薬剤組成物とを含む製品であって、前記薬剤組成物が、コポリマー1、コポリマー1関連ペプチド、及びコポリマー1関連ポリペプチドからなる群から選択される作用物質を含み、前記包装材料が、治療上前記作用物質が精神医学的な障害の治療に有効であることを示す表示を含む製品。
【請求項37】
包装材料と、前記包装材料内に入っている薬剤組成物とを含む製品であって、前記薬剤組成物がコポリマー1を含み、前記包装材料が、治療上コポリマー1が精神医学的な障害の治療に有効であることを示す表示を含む製品。
【請求項38】
前記精神医学的な障害が、(i)恐怖症、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害及び全般性不安障害を含む不安障害、(ii)抑うつ、気分変調性障害、双極性障害及び気分循環性障害を含む気分障害、(iii)短期的な精神障害、統合失調症様障害、統合失調性感情障害及び妄想性障害などの統合失調症及びその関連障害、(iv)アルコール依存、アヘン依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、幻覚剤依存及びフェンシクリジンの使用など薬物の使用及び依存、並びに(v)健忘症、或いはアルツハイマー型痴呆又は非アルツハイマー型痴呆、例えば多発梗塞性痴呆に伴う記憶喪失、或いはパーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルトヤコブ病、頭部外傷、HIV感染、甲状腺機能低下症及びビタミンB12欠乏に伴う記憶喪失などの記憶喪失障害から選択される、請求項36又は38に記載の製品。


【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−520457(P2007−520457A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543716(P2006−543716)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/IL2004/001115
【国際公開番号】WO2005/056574
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(500370311)イエダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド (30)
【Fターム(参考)】