説明

精米機

【課題】 空気圧縮装置や、風量の大きなファン等を用いることなく、風量の小さな小型ファンにより生成した噴風であっても確実に残留米を排出することができる精米機を提供する。
【解決手段】 送穀室(18)は、横軸(29)と同軸上の円筒(23)によって構成するとともに、該円筒(23)の下半部分を、前記送穀ロール(19)のネジ山部(19a)から円筒(23)内周面までの間隙(d1)が狭い小ハウジング部(24)と、ネジ山部(19a)から円筒(23)内周面までの間隙(d2)が広い大ハウジング部(25)と、前記小ハウジング部(24)と前記大ハウジング部(25)とを接合する傾斜面(26)とにより構成する一方、前記玄米供給路(17)の側壁には、前記円筒(23)の下半部分へ向けて吹掃する清掃用噴風孔(43)を穿設するとともに、該噴風孔(43)には、噴風管(45)を介して小風量の噴風を送給する小型ファン(44)を接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精米機に関するもので、特に、精米開始前または精米終了後に精米機内に残留した米粒等を除去する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原料の品種換えの際、あるいは精米終了後に、精米機内に残留した米粒等を除去するための残留米清掃装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された精米機について図7を用いて説明すると、横向きの除糠用多孔壁精白筒105内に精白転子111を軸架して、精白筒105と精白転子111との間隙に精白室103を形成し、該精白室103の一方側に抵抗蓋107を備えた米粒排出口108を設けるとともに、精白筒105の他方側に送穀室118を介して連通する米粒供給口109を設けた精米機において、前記送穀室118側壁には、前記精白室103及び送穀室118の底面に残留する米粒を吹掃する清掃用噴風孔116を設けるとともに、該噴風孔116に送管120を介して空気圧縮装置117に連絡したものであり、これにより、精米終了後に、精白室103及び送穀室118に残留する米粒が、噴風孔116からの噴風作用によって吹掃されて、抵抗蓋107が開口されたときに米粒排出口108から排出され、精白室103及び送穀室117が清掃されるのである。
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、清掃用噴風孔116が送穀室118側壁に設けられ、該清掃用噴風孔116からの噴風のみで送穀室118及び精白室103を吹掃することになるから、精白室103先端部にある米粒排出口108まで米粒を移送するためには、米粒が滞留しないよう空気圧縮装置117により圧縮された高圧空気により噴風したり、風量の大きなファン等で噴風したりする必要があり、風量の小さなファン等では代用することができないといった問題があった。
【0004】
また、送穀室118と精白室103との継ぎ目Aや、送穀室118や精白室103の形状によっては、噴風の流れが悪くなる箇所が生じ、この部分に米溜りが生じるおそれもあった。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−136442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点にかんがみ、空気圧縮装置や、風量の大きなファン等を用いることなく、風量の小さな小型ファンにより生成した噴風であっても確実に残留米を排出することができる精米機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、玄米ホッパー(16)と、該玄米ホッパー(16)と連通する玄米供給路(17)と、該玄米供給路(17)の流路を開閉する穀粒供給シャッター(10)と、前記玄米供給路(17)と連通する送穀室(18)と、該送穀室(18)内に回転可能に軸装した送穀ロール(19)と、前記送穀室(18)と連通した精白室(20)と、該精白室(20)内に回転可能に軸装した精白ロール(21)とを備えた精米機において、前記送穀室(18)は、横軸(29)と同軸上の円筒(23)によって構成するとともに、該円筒(23)の下半部分を、前記送穀ロール(19)のネジ山部(19a)から円筒(23)内周面までの間隙(d1)が狭い小ハウジング部(24)と、ネジ山部(19a)から円筒(23)内周面までの間隙(d2)が広い大ハウジング部(25)と、前記小ハウジング部(24)と前記大ハウジング部(25)とを接合する傾斜面(26)とにより構成する一方、前記玄米供給路(17)の側壁には、前記円筒(23)の下半部分へ向けて吹掃する清掃用噴風孔(43)を穿設するとともに、該噴風孔(43)には、噴風管(45)を介して小風量の噴風を送給する小型ファン(44)を接続する、という技術的手段を講じた。
【発明の効果】
【0008】
送穀室(18)を形成する円筒(23)の下半部分において、前記送穀ロール(19)のネジ山部(19a)から円筒(23)内周面までの間隙(d1)が狭い小ハウジング部(24)と、ネジ山部(19a)から円筒(23)内周面までの間隙(d2)が広い大ハウジング部(25)と、前記小ハウジング部(24)と前記大ハウジング部(25)とを接合する傾斜面(26)とにより構成しているから、小ハウジング部(24)においてはネジ山部(19a)から円筒(23)内周面までの間隙(d1)が狭いために円筒(23)の体積が小さくなり、送穀ロール(19)による送穀作用と噴風口(43)からの噴風作用とによって、比較的弱い噴風であっても小ハウジング部(24)内の隅々に噴風が行き渡り、残留米が滞留しにくく、確実に清掃することができる。そして、小ハウジング部(24)から排出された残留米は、傾斜面(26)および大ハウジング部(25)を転動して精白室(20)に移送されるため、送穀室(18)と精白室(20)との継ぎ目に米溜りが生じるおそれはない。また、精白室(20)においても同様に、精白ロール(21)の回転による送穀作用と噴風口(43)からの噴風作用とによって残留米を排出口(28)から排出して完全に清掃される。これにより、高価な空気圧縮装置や大風量の大型ファンを用いることなく、安価な小型ファンにより残留米除去装置を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の実施形態に係る精米機を示す斜視図であり、図2は同精米機の正面図であり、図3は図2に示す精米機本体のA−A’線縦断面図である。
【0010】
本実施形態の精米機1は全体構成として、穀粒投入ホッパー2が架設された架台3上に、箱形状の精米機本体4と、石抜き機5と、揚穀コンベア6と、除糠サイクロン7とを一体的に立設したものであり、例えば、コインタイマー等(図示せず)を電気的に接続してコインの投入により精米機本体4、石抜き機5、揚穀コンベア6及び除糠サイクロン7の各モータが所定時間駆動されるように構成し、利用者が玄米を持ち込んで各自で精米を行う無人精米施設にすることができる。
【0011】
精米機本体4には、その上方に揚穀コンベア6により揚穀された穀粒を貯留する穀粒タンク8が載置される一方、精米機本体4の前面には精白室内の調圧ダイヤル9、穀粒供給シャッター10用のノブ10a、操作パネル11及び精品排出樋12が設けられている。該精品排出樋12は二方向切換弁13を介して石抜き機投入樋14と玄米戻し樋15とに分岐されており、玄米戻し樋15によって精米初期及び精米終期に生じるムラ搗き米を再搗精することができる。
【0012】
石抜き機5は、内部に送風ファンが内装された箱形の機枠5aと、該機枠5aに対して揺動可能に支持された多孔選別板からなる選別ケース5bとから主要部が構成され、前記機枠5aの揺り上げ側には石屑を排出する石抜き樋5cが、揺り下げ側には精品を排出する精品排出樋5dがそれぞれ設けられている。符号5eは石抜き樋5cからの石屑や選別ケース5b上に溜まった残留米を回収するための石・残留米回収箱であり、符号5fは選別ケース5bの多孔選別板を通過した砕米を回収するための砕米回収箱である。なお、符号Sは精品を袋詰めするための紙袋であり、符号Nは除糠サイクロン7からの糠を袋詰めするための紙袋である。
【0013】
精米機本体4は、図3に示すように、前記穀粒タンク8と連通するホッパー16と、前記穀粒供給シャッター10下方に設けられた供給路17と、送穀室18と、送穀ロール19と、精白室20と、精白ロール21とを備えており、ホッパー16に供給された玄米が送穀室18へ供給され、この送穀室18内の玄米を送穀室18内の送穀ロール19によって精白室20へと移送し、この精白室20の排出口28をバネ36の付勢力によって押圧する抵抗蓋37、及び精白室20内で回転する精白ロール21によって玄米を攪拌しながら搗精圧力をかけて糠層を除去する周知の構成である。
【0014】
前記供給路17内には、該供給路17内の流路幅を調整する流量調整シャッター22が設けられており、ホッパー16に供給された玄米を一定流量で安定的に送穀室18へ供給することができる。前記送穀室18は、横軸29と同軸上の円筒23によって構成されており、該円筒23の下半部分は、図4に示すように、送穀ロール19のネジ山部19aから円筒23内周面までの間隙d1(クリアランス)が狭い(約0.5mm)小ハウジング部24と、ネジ山部19aから円筒23内周面までの間隙d2(クリアランス)が広い(約4.0mm)の大ハウジング部25と、前記小ハウジング部24と前記大ハウジング部25とを接合する傾斜面26とによって構成され、特に、大ハウジング部25を精白室20側に、小ハウジング部24を供給路17側に配置して傾斜面26で接合してある。また、前記供給路17側壁には、前記円筒23の下半部分に向けて吹掃する清掃用噴風孔43を穿設してあり、該噴風孔43には、噴風管45を介して小風量の噴風を送給する小型ファン44(例えば、最大静圧470[Pa]、最大風量2.5[m3/min]、65[w]程度のファン)を接続している。
【0015】
前記精白室20は、多孔板又は網体によって形成される多孔壁除糠筒27によって構成され、図3に示すように、該多孔壁除糠筒27の右端部は前記円筒23のフランジ23aに固定され、多孔壁除糠筒27の左端部は排出口28を形成するフランジ28aに固定されている。
【0016】
前記精白ロール21及び送穀ロール19は、主軸29に軸装されており、その軸端部に軸着した回転プーリ30と、回転用モータ31に軸着したモータプーリ32との間に巻回されたベルト33によって、所定の回転数で回転するように構成されている。符号34はテンションプーリである。なお、前記主軸29を中空状するとともに、精白ロール21に噴風溝35を設けて、主軸29から噴風溝35を介して精白室20内に除糠用の噴風を送給する構成としてもよい。
【0017】
前記精白室20の排出口28をバネ36の付勢力によって押圧する抵抗蓋37は、機壁の外方に延びる連結棒38が連結され、該連結棒38の中間部には前記バネ36が嵌装され、前記調圧ダイヤル9の回転に伴って連結棒38が左右に摺動してバネ36の付勢力の強弱が調整できる構成となっている。
【0018】
符号39は除糠室40を形成する集糠樋であり、集糠管41を介して図1及び図2に示す除糠サイクロン7に連絡している。また、図3の符号42は、穀粒タンク8に穿設された開口部であり、揚穀コンベア6の排出樋が連絡されている。
【0019】
以下、上記構成における作用を説明する。精米機利用者が原料となる玄米を穀粒投入ホッパー2内に投入するとともに、あらかじめ玄米戻し樋15側に二方向切換弁13を切換え、調圧ダイヤル9を「0」にセットしておく。次いで、精米に必要な所定金額を図示しないコインタイマーに投入すると、操作パネル11が操作可能となり、この状態で運転スイッチをオンすると精米機1の各駆動部が所定時間駆動することになる。これにより、穀粒投入ホッパー2内の玄米は揚穀コンベア6により揚穀され、穀粒タンク8を介して下方の精米機本体4に供給される。精米機本体4では、穀粒供給シャッター10のノブ10aを引いてシャッター10を開き、前記調圧ダイヤル9を所望の位置にセットし直す。玄米は、供給路17であらかじめ調整した流量調整シャッター22よって一定流量で安定的に送穀室18へ供給されることになる。
【0020】
送穀室18へ供給された玄米は、送穀ロール19の回転作用によって精白室20に送り込まれ、この精白室20の排出口28を押圧する抵抗蓋37、及び精白室20内で回転する精白ロール21によって玄米を攪拌しながら搗精圧力をかけて糠層を除去し、精米が行われる。この際、除去される糠は、除糠室40から集糠管41を介して除糠サイクロン7に集糠された後、除糠サイクロン7下方の紙袋Nに回収されることになる。
【0021】
玄米から糠層が除去された米粒は、排出口28および精品排出樋12を介して機外に取り出されることになる。このとき、搗精初期は精白室20内の圧力が低いためムラ搗きになりやすく、二方向切換弁13、玄米戻し樋15、穀粒投入ホッパー2、揚穀コンベア6、穀粒タンク8を介して精米機本体4に返還され、再搗精されることになる。そして、利用者が目視により所望の白度に達したと判断すれば、二方向切換弁13を石抜き機投入樋14側に切換えて石抜き作業が開始される。
【0022】
精米機本体4から排出された白米及び当該白米に混入する石屑は、石抜き機5の選別ケース5b上に供給され、白米は精品排出樋5dから排出されて紙袋Sに袋詰めされるとともに、石屑は揺り上げ側に寄せられて石抜き樋5cから排出されることになる。また、選別ケース5b上に溜まった残留米は石・残留米回収箱5eに、選別ケース5bの多孔選別板を通過した砕米は砕米回収箱5fにそれぞれ回収されることになる。
【0023】
以上のように精米処理が行われるのであるが、精米終了時に一部の米粒が送穀室18および精白室20に残留することになる。そこで、本発明の精米機1では、精米終了後、前記穀粒供給シャッター10を閉鎖し、送穀ロール19および精白ロール21を回転させながら小型ファン44を作動することにより送穀室18および精白室20に残留した残留米を確実に清掃することができる。
【0024】
すなわち、本発明の精米機1は、送穀室18を形成する円筒23の下半部分において、図4に示すように、送穀ロール19のネジ山部19aから円筒23内周面までの間隙d1が狭い(約0.5mm)小ハウジング部24と、ネジ山部19aから円筒23内周面までの間隙d2が広い(約4mm)大ハウジング部25と、前記小ハウジング部24と前記大ハウジング部25とを接合する傾斜面26とによって構成されているから、小ハウジング部24においてはネジ山部19aから円筒23内周面までの間隙d1が狭いために、円筒(23)の体積が小さくなり、送穀ロール19による送穀作用と噴風口43からの噴風作用とによって、比較的弱い噴風であっても小ハウジング部24内の隅々に噴風が行き渡り、残留米が滞留しにくく、確実に清掃することができる。そして、小ハウジング部24から排出された残留米は、傾斜面26および大ハウジング部25を転動して精白室20に移送されるため、送穀室18と精白室20との継ぎ目に米溜りが生じるおそれはない。また、精白室20においても同様に、精白ロール21の回転による送穀作用と噴風口43からの噴風作用とによって残留米を排出口28から排出して完全に清掃される。これにより、高価な空気圧縮装置や大風量の大型ファンを用いることなく、安価な小型ファンにより残留米除去装置を提供することが可能になった。
【0025】
なお、前記送穀室18を形成する円筒23の送穀ロール19下方部分は、小ハウジング部24、大ハウジング部25及び傾斜面26からなる鋳物で形成することが好ましいが、これに限定されることはなく、図5に示すように、図6に示すスペーサー23bを円筒23内に嵌合することで、小ハウジング部24、大ハウジング部25及び傾斜面26を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る精米機を示す斜視図である。
【図2】同精米機の正面図である。
【図3】図2に示す精米機本体のA−A’線縦断面図である。
【図4】精米機本体の送穀室の拡大断面図である。
【図5】図4の別実施形態を示す拡大断面図である。
【図6】送穀室に嵌合させるスペーサーを示す斜視図である。
【図7】従来の精米機における残留米清掃装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 精米機
2 穀粒投入ホッパー
3 架台
4 精米機本体
5 石抜き機
6 揚穀コンベア
7 除糠サイクロン
8 穀粒タンク
9 調圧ダイヤル
10 穀粒供給シャッター
11 操作パネル
12 精品排出樋
13 二方向切換弁
14 石抜き機投入樋
15 玄米戻し樋
16 ホッパー
17 供給路
18 送穀室
19 送穀ロール
20 精白室
21 精白ロール
22 流量調整シャッター
23 円筒
23a フランジ
23b スペーサー
24 小ハウジング部
25 大ハウジング部
26 傾斜面
27 多孔壁除糠筒
28 排出口
28a フランジ
29 主軸
30 回転プーリ
31 回転用モータ
32 モータプーリ
33 ベルト
34 テンションプーリ
35 噴風溝
36 バネ
37 抵抗蓋
38 連結棒
39 集糠樋
40 除糠室
41 集糠管
42 開口部
43 清掃用噴風孔
44 小型ファン
45 噴風管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄米ホッパー(16)と、該玄米ホッパー(16)と連通する玄米供給路(17)と、該玄米供給路(17)の流路を開閉する穀粒供給シャッター(10)と、前記玄米供給路(17)と連通する送穀室(18)と、該送穀室(18)内に回転可能に軸装した送穀ロール(19)と、前記送穀室(18)と連通した精白室(20)と、該精白室(20)内に回転可能に軸装した精白ロール(21)とを備えた精米機において、
前記送穀室(18)は、横軸(29)と同軸上の円筒(23)によって構成するとともに、該円筒(23)の下半部分を、前記送穀ロール(19)のネジ山部(19a)から円筒(23)内周面までの間隙(d1)が狭い小ハウジング部(24)と、ネジ山部(19a)から円筒(23)内周面までの間隙(d2)が広い大ハウジング部(25)と、前記小ハウジング部(24)と前記大ハウジング部(25)とを接合する傾斜面(26)とにより構成する一方、前記玄米供給路(17)の側壁には、前記円筒(23)の下半部分へ向けて吹掃する清掃用噴風孔(43)を穿設するとともに、該噴風孔(43)には、噴風管(45)を介して小風量の噴風を送給する小型ファン(44)を接続したことを特徴とする精米機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−155176(P2008−155176A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349780(P2006−349780)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】